(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。なお、本願明細書において方向を示すために使用される「上」及び「下」を含む用語は、そのような用語を使用する記載で参照している添付図面に図示された蓄電素子の姿勢における方向を示すものであり、必ずしも実際の使用状態における方向と一致するものでない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る蓄電素子1をケース2のみ断面として内部を透視した図である。本実施形態の蓄電素子1は、リチウムイオン電池等の非水電解質二次電池である。ただし、本発明は、非水電解質二次電池に限定されず、キャパシタを含む種々の蓄電素子に適用できる。
【0021】
図1に示すように、蓄電素子1は、例えば略直方体のケース2を有する。ケース2は、上面開口部を有するケース本体3と、ケース本体3の上面開口部を塞ぐ蓋体4とを有する。ケース2には、少なくとも1つの電極体5と、電極体5を負極外部端子6に電気的に接続する負極集電体8と、電極体5を正極外部端子7に電気的に接続する正極集電体9と、電解液(図示せず)とが収容される。
【0022】
ケース本体3と蓋体4は、例えばアルミニウム又はアルミニウム合金等の金属製である。例えば樹脂からなる絶縁シート(図示せず)でケース本体3の表面を全体的に覆ってもよい。蓋体4は、ケース本体3の開口縁部に溶接されている。蓋体4には、正極及び負極の外部端子6,7と、正極及び負極の集電体8,9とが固定されている。
【0023】
各外部端子6,7は、蓋体4の上面に上パッキン11を介して例えばかしめによって固定されている。外部端子6,7は、例えばアルミニウム、銅、ニッケル等の金属製である。上パッキン11は、例えば樹脂等の絶縁性を有する材料からなる。
【0024】
負極集電体8は、蓋体4の下面に下パッキン12を介して例えばかしめによって固定された基部8aと、基部8aから下方へ延び、例えば超音波溶接により電極体5の負極リード部24に接合された脚部8bとを備える。脚部8bと負極リード部24とは、クリップ13で挟持された状態で互いに接合されている。基部8aは負極外部端子6に電気的に接続され、脚部8bは電極体5の負極リード部24に電気的に接続されている。負極集電体8の材料には、例えば、銅等の金属が用いられる。
【0025】
同様に、正極集電体9は、蓋体4の下面に下パッキン12を介して例えばかしめによって固定された基部9aと、基部9aから下方へ延び、例えば超音波溶接により電極体5の正極リード部28に接合された脚部9bとを備える。脚部9bと正極リード部28とは、クリップ13で挟持された状態で接合されている。基部9aは正極外部端子7に電気的に接続され、脚部9bは電極体5の正極リード部28に電気的に接続されている。正極集電体21の材料には、例えば、アルミニウム等の金属が用いられる。
【0026】
図2に示すように、電極体5は、帯状の負極電極板14、帯状の正極電極板15、及び2枚の帯状のセパレータ16が互いに積層されながら巻回された巻回体である。具体的には、負極電極板14、正極電極板15、及びセパレータ16は、巻回軸Xに平行な板状の巻回中心C周りに巻回され、これにより、扁平な巻回型の電極体5が形成されている。ケース2内において、電極体5は、巻回中心Cが略左右方向(水平方向)に沿う姿勢で配置される。
【0027】
セパレータ16は、負極電極板14と正極電極板15の間に介装されることで、両者を電気的に絶縁している。セパレータ16は、例えば、多孔性の樹脂フィルムで構成されている。
【0028】
負極電極板14は、負極金属箔21と、負極金属箔21の両方の表面21aに負極活物質を塗工して設けた負極活物質層22とを備える。負極活物質層22は、セパレータ16により全体が覆われる。負極電極板14の巻回軸方向一端部には、負極活物質が塗工されず負極金属箔21が露出している負極未塗工部23が設けられている。負極未塗工部23は、正極電極板15及びセパレータ16よりも巻回軸方向外側にはみ出して配置され、負極リード部24を構成している。
【0029】
負極金属箔21は、例えば銅からなるが、これ以外の金属を用いてもよい。負極活物質としては、例えばグラファイト層間化合物が用いられるが、他の炭素材料、リチウム金属、リチウム合金、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、ケイ素、一酸化ケイ素、スズ等のリチウム吸蔵可能な材料、またはこれらの混合物を用いてもよい。
【0030】
正極電極板15は、正極金属箔25と、正極金属箔25の両方の表面25aに正極活物質を塗工して設けた正極活物質層26とを備える。また、正極活物質層26の端縁26cに沿って後に詳述する絶縁層30が設けられている。正極活物質層26は、セパレータ16により全体が覆われる。正極電極板15の巻回軸方向一端部には、正極活物質が塗工されず正極金属箔25が露出している正極未塗工部27が設けられている。正極未塗工部27は、巻回軸方向において負極未塗工部23とは反対側に設けられている。正極未塗工部27は、負極電極板14及びセパレータ16よりも巻回軸方向外側にはみ出して配置され、正極リード部28を構成している。
【0031】
図3は、電極体5として形成されているときの正極電極板15及び負極電極板14の積層状態を積層方向から見た図であり、セパレータ16の図示は省略している。この
図3に示すように、負極活物質層22の幅は正極活物質層26の幅よりも広くなっており、電極体5の中では、正極活物質層26の幅方向の端縁26cよりも負極活物質層22の幅方向の端縁22aが突出するように(言い換えれば、正極活物質層26の端縁26cが負極活物質層22の端縁22aよりも内側に位置するように)、正極電極体15と負極電極板14が配置されている。
【0032】
正極金属箔12aの材料は、例えばアルミニウムからなるが、これ以外の金属を用いてもよい。正極活物質としては、例えば、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(LiNi
xCo
yMn
1−x−yO
2)、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO
4)、これらに置換添加物を用いたもの、又はこれらの混合物などが用いられるが、他のリチウム含有遷移金属酸化物を用いてもよい。
【0033】
また、
図4を参照すると、正極金属箔25の表裏両方の表面25aには、巻回軸方向における正極活物質層26の正極未塗工部27側の端縁26cに沿って絶縁層30が設けられている。
【0034】
絶縁層30の材料は、例えば、無機及び/又は有機の粒子と結着剤とを混合したものが用いられる。無機物粒子としては、例えば、アルミナ(Al
2O
3)、SiO
2、ZrO
2、TiO
2、MgOが用いられ、有機物粒子としては、例えば、ポリイミド粉末が用いられる。結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミド、ポリアミドイミドが用いられる。
【0035】
以下、正極活物質層26及び絶縁層30と、これらに関連する構成の種々の実施形態を説明する。
【0036】
(第1実施形態)
図4を参照して第1実施形態に係る正極活物質層26及び絶縁層30の構成を説明する。
図4は、電極体5における、正極活物質層26、絶縁層30、正極未塗工部27、及びそれらの周辺を正極電極板15の長手方向から見た断面図である(例えば、
図2の線III−IIIに沿った断面)。この点は、後に言及する
図12及び
図13についても同様である。
【0037】
正極活物質層26は、正極金属箔25の巻回軸方向の両端部のうち、正極未塗工部27とは反対側の端部から正極未塗工部27側の端部に向かって設けられた主面部26aを備える。主面部26aでは、正極金属箔25の表面25aから正極活物質層26の表面までの距離、すなわち正極活物質層26の厚さT1は概ね一定である。言い換えれば、主面部26aは正極金属箔25の表面25aに沿って延びている。
【0038】
正極活物質層26は、主面部26aの正極未塗工部27側の端部から正極活物質層26の正極未塗工部27側の端縁26cにかけて、傾斜面部26dを備える。傾斜面部26dでは、正極活物質層26の厚さT1は、主面部26aの正極未塗工部27側の端部から正極活物質層26の端縁26cに向けて減少する(端縁26cで正極活物質層26の厚さT1は零になる)。
【0039】
絶縁層30は、正極活物質層26の傾斜面部26dから正極金属箔25の表面25aにかけて正極活物質層26の端縁26cを覆うように設けられている。また、絶縁層30は傾斜面部26dをすべて覆っているのではない。具体的には、傾斜面部26dのうち符号Aで示す主面部26a側の領域は絶縁層30で覆われておらず、正極活物質層26が露出している。
【0040】
正極活物質層26の傾斜面部26dの、主面部26aの端部から正極金属箔25の表面25aに向かう下向きの傾斜は一定ではなく、符号26eで示す位置で主面部26aに対する傾斜角度が急激ないしは不連続に変化している。具体的には、位置26eよりも主面部26a側では傾斜面部26dの主面部26aに対する傾斜角度がθ1であるのに対して、位置26eよりも正極活物質層26の端縁26c側の傾斜面部26dの傾斜角度はθ1よりも十分小さいθ2である。言い換えれば、この位置は正極活物質層26の傾斜面部26dの傾斜角度がθ1からθ2に急激にないしは不連続に減少する折れ部26eを構成している。
【0041】
正極活物質層26に折れ部26eを設けたことで、正極活物質層26上に設けられた絶縁層30も、符号30bで示す位置(正極活物質層26の折れ部26eに対応する位置)で、主面部26aに対する傾斜角度が急激ないしは不連続に変化している。具体的には、位置30bよりも主面部26a側では絶縁層30は正極活物質層26の主面部26aに対する傾斜角度がθ1’であるのに対して、位置30bよりも正極活物質層26の端縁26c側の絶縁層30の正極活物質層26の主面部26aに対する傾斜角度は、θ1’よりも十分小さいθ2’である。言い換えれば、この位置は絶縁層30の傾斜角度がθ1’からθ2’に急激ないしは不連続に減少する折れ部30bを構成し、この折れ部30bは正極活物質層26の傾斜面部26dが備える折れ部26eの上方に位置している。
【0042】
絶縁層30は正極活物質層26の端縁26cからさらに外側に延びており、正極活物質層26の端縁26cから絶縁層30の端縁30aまでの間の領域Bでは、正極活物質層26が介在することなく、正極金属箔25の表面25aに絶縁層30が直接設けられている。本実施形態では、この領域Bにおいても、絶縁層30は主面部26aに対して傾斜角度θ2’を有する。
【0043】
正極活物質層26には、主面部26aと傾斜面部26dとの境界にも、正極金属箔25の表面25aに対する傾斜角度が変化する折れ部26wが形成されている。
【0044】
例えば、蓄電素子1がリチウムイオン電池である場合、充電時に正極活物質層26から放出されたリチウムイオン電池が負極活物質層22で確実に吸蔵される。そのため、
図3を参照して説明したように、正極活物質層26の端縁26cが負極活物質層22の端縁22aよりも内側(
図4において左側)に位置する必要がある。この理由で、正極電極板15の製造時に、正極活物質層26の端縁26cの位置を可能な限り高精度で検出することが要求される。
【0045】
本実施形態では、絶縁層30に傾斜角度がθ1’からθ2’に不連続に変化する折れ部30bを設けている。折れ部30bの前後で正極金属箔25の表面25aから絶縁層30の表面までの距離の変化率、すなわち厚さT2の変化率が急激にないしは不連続に変化する。また、正極活物質層26の折れ部26wでも、正極活物質層26の厚さの変化率が急激にないしは不連続に変化する。そのため、正極電極板15の厚さ分布測定により折れ部30b,26wの位置を正確に認識でき、認識された折れ部30bの位置を用いることで、正極活物質層26の端縁26cの位置をより高精度で検出できる。折れ部30b,26wにおける傾斜角度の変化は必ずしも不連続に変化している必要はないが、不連続に変化していることでより正確に折れ部30bの位置を認識できる。
【0046】
また、正極電極板15に光線を照射して輝度分布を測定した場合、折れ部30b,26wの前後で反射光の輝度が急激にないし不連続に変化する。詳細には、折れ部30b,26wの位置には、反射光の輝度差分の明確なピークが現れる。そのため、反射光の輝度分布測定により折れ部30b,26wの位置を正確に認識でき、認識された折れ部30bの位置を用いることで、正極活物質層26の端縁26cの位置をより高精度で検出できる。
【0047】
正極電極板15の製造時には、少なくとも正極活物質層26の主面部26aの端部の位置を検出する必要がある。本実施形態では、正極活物質26の主面部26aの端部は折れ部26wである。従って、厚さ分布測定や輝度分布測定により正極活物質26の主面部26aの端部(折れ部26w)の位置を確実に検出できる。また、厚さ分布測定や輝度分布測定により認識された折れ部30bの位置を用いることでも、主面部26aの端部の位置を確実に検出できる。
【0048】
後に詳述するように、認識された折れ部30bの位置を用いることで絶縁層30の端縁30aの位置も高精度で検出できる。従って、絶縁層30の端縁30aの位置を用いることで、正極活物質層26の端縁26cの位置や、主面部26aの端部の位置を高精度で検出できる。
【0049】
例えば、蓄電素子1がリチウムイオン電池である場合、互いに異なる極の部位が金属部分を介して接触すると、大きな電流が流れることがあり、負極活物質層22の端縁22aが正極金属箔25に接触するのを確実に防止するために、絶縁層30の端縁30aが負極活物質層22の端縁22aよりも外側(
図4において右側)に位置する必要がある。この理由で、電極体5の製造では、絶縁層30の端縁30aの位置を可能な限り高精度で検出することが要求される。本実施形態では、厚さ分布測定や輝度分布測定により絶縁層30に折れ部30bの位置を正確に認識でき、認識された折れ部30bの位置を用いることで、絶縁層30の端縁30aもより高精度で検出できる。
【0050】
正極活物質層26に傾斜面部26dを設けたことで、正極活物質層26の端縁26cを含む領域における正極金属箔層25の表面25aから絶縁層30の表面までの厚さT2の過度な増大を効果的に抑制できる。その結果、負極電極板14、正極電極板15、及びセパレータ16を積層しながら巻回して電極体5を形成するとき、絶縁層30の部分における電極体5の膨らみを防止でき、巻回作業を円滑に行うことができる。
【0051】
例えば、蓄電素子1はリチウムイオン二次電池で、負極金属箔21が銅箔で正極金属箔25がアルミニウム箔である。この場合、負極金属箔21から剥離した微細な銅片が電解液中を浮遊して正極活物質層26に付着すると、付着した銅は正極電位の影響を受けて電解液中に溶出する。溶出した銅イオンが負極電極板14に到達すると、その表面で析出する。銅の析出量が大きくなると、セパレータ16を突き破って正極電極板15に達して微小短絡回路が形成されることがある。この微小短絡回路によって、充電後もわずかな電流が流れることになる。充電後もわずかな電流が流れることにより、電池の容量が低下することがある。本実施形態では、傾斜面部26dに沿って絶縁層30を設けているので、負極金属箔21から剥離した微細な銅片の正極活物質層26への付着と、それに起因する電池容量低下とを防止できる。この点は、後述する第2実施形態(
図12)及び第3実施形態(
図13)についても同様である。
【0052】
次に、正極電極板15の製造方法を説明する。
【0053】
図5は、正極電極板15の製造装置の第1の例を示す。この製造装置は、巻出軸51と巻取軸52を備える。巻出軸51には、正極活物質層26と絶縁層30を形成する前の正極金属箔25がコイル状に巻回されている。巻出軸51から巻き出された正極金属箔25は、ガイドローラ53を含む搬送系により巻取軸52へ送られる。巻出軸51から巻取軸52に至る経路で、正極金属箔25に正極活物質層26と絶縁層30が形成される。
図5では、正極金属箔25の一方の表面25aに正極活物質層26と絶縁層30を形成する場合を概念的に示すが、他方の表面25aにも同様にして正極活物質層26と絶縁層30が形成される。この点は、後述する
図7から
図9の製造装置についても同様である。
【0054】
巻出軸51から巻き出された正極金属箔25は、活物質塗工部54に送られる。活物質塗工部54はダイヘッド55とバックアップローラ56を備える。ダイヘッド55には図示しない塗工液供給源(正極活物質を含む塗工液を蓄液するタンク、塗工液を加圧するポンプ等を含む)から塗工液が供給される。ダイヘッド55に供給された塗工液(正極活物質を含む)は、マニホールド55aを経てスリット状のノズル55bから正極金属箔25の表面25aに吐出される。ノズル55bのスリット長は、正極活物質層26の幅に対応している。また、ノズル55bのスリット幅はスリット長方向に一定である。そのため、活物質塗工部54で塗工される正極活物質の厚さ(正極活物質層26の厚さT1)は、巻回軸方向に一定である。
【0055】
活物質塗工部54を通過した正極金属箔25は、乾燥部57に送られる。乾燥部57は、活物質塗工部54で正極金属箔25の表面25aに塗工された正極活物質(正極活物質層26)を乾燥させる。乾燥部57を通過した正極金属箔25は、プレス部58に送られる。プレス部58は、メインプレス部59と、サブプレス部60を備える。
【0056】
図6を併せて参照すると、メインプレス部59は、正極活物質層26の幅と同一又はそれよりも僅かに長いローラ長を有するプレスローラ対59aを備える。プレスローラ対59aを通過することで、正極金属箔25の表面25aに形成された正極活物質層26は厚さ方向にプレスされる。その結果、正極活物質層26全体の厚さが均一化される。この厚さは、主面部26aの厚さに相当する。
【0057】
図6を併せて参照すると、サブプレス部60は、メインプレス部59でプレス済みの正極活物質層26の端縁付近(端縁自体とその近傍を含む)と、正極未塗工部27とをプレスできるローラ長を有するプレスローラ対60aを備える。プレスローラ対60aを通過することで、正極活物質層26の端縁付近が厚さ方向にプレスされる。その結果、
図4に図示したように、正極活物質層26には、主面部26aの正極未塗工部27側の端部から正極金属箔25の表面25aに向けて傾斜し、かつ折れ部26eを有する傾斜面部26dが形成される。
【0058】
メインプレス部59での正極活物質層26のプレスの際に、正極活物質層26と正極未塗工部27との境界の正極金属箔25にしわが形成される場合がある。しかし、サブプレス部60において正極活物質層26と正極未塗工部27との境界がプレスローラ対60aでプレスされることで、しわが伸ばされる。言い換えれば、メインプレス部59で形成されるしわは、サブプレス部60での部分的なプレスによって解消される。
【0059】
サブプレス部60を通過した正極金属箔25は、絶縁材塗工部61に送られる。絶縁材塗工部61は、ダイヘッド62とバックアップローラ63を備える。ダイヘッド62には図示しない塗工液供給源(絶縁材である塗工液を蓄液するタンク、塗工液を加圧するポンプ等を含む)から塗工液が供給される。ダイヘッド62に供給された塗工液(絶縁材)は、マニホールド62aを経てスリット状のノズル62bから正極活物質層26を形成済みの正極金属箔25の表面25aに吐出される。ノズル62bの位置(正極金属箔25の幅方向)及びスリット長は、正極活物質層26の傾斜面部26dのうち傾斜面部26dが主面部26aにつながる部分(
図4の符号A)を除く領域と、正極活物質層26の端縁26cよりも外側の正極未塗工部27の一定幅(
図4の符号B)とに対応している。
【0060】
絶縁材塗工部61で絶縁材を塗工済みの正極金属箔25は乾燥部57に送られる。乾燥部57は、絶縁材塗工部61で塗工された絶縁材(絶縁層30)を乾燥させる。前述のように、サブプレス部60で正極活物質層26には折れ部26eを有する傾斜面部26dが形成されているので、折れ部26eを覆う部分の絶縁層30には折れ部30bが形成される。乾燥部57を通過した正極金属箔25は、巻取軸52で巻き取られる。
【0061】
以上の工程の後、正極金属箔25の反対側の表面25aにも同様の工程が施され、正極活物質層26と絶縁層30が形成され、正極電極板15が完成する。
【0062】
反対側の表面25aへの正極活物質層26と絶縁層30の形成は、巻取軸52の巻取前に実行してもよい。例えば、
図4において活物質塗工部54で一方の表面25aへの活物質の塗工を行った後、乾燥部57に送る前に、反対側の表面25aへの活物質の塗工を行ってもよい。また、絶縁材塗工部61で一方の表面25aへの絶縁材の塗工を行った後、乾燥部57に送る前に反対側の表面25aへの活物質層の塗工を行ってもよい。
【0063】
サブプレス部60でのプレスは、一方の表面25aと反対側の表面25aとで個別に実行してもよいし、これらの面に対して一度に実行してもよい。
【0064】
これらの点は、後述する
図7、
図8、
図9に図示した製造装置を使用する場合も同様である。
【0065】
図7は、正極電極板15の製造装置の第2の例を示す。
図5に示す製造装置では、正極活物質層26を形成するための正極活物質の塗工と乾燥が完了した後、絶縁層30を形成するための絶縁材の塗工と乾燥を行っている。
図7の製造装置では、正極活物質層26を形成するための正極活物質の塗工後、絶縁層30を形成するための絶縁材の塗工が連続して実行される。その後、正極活物質層26と絶縁層30に対して乾燥とプレスが実行される。
【0066】
図7の製造装置では、巻出軸51から巻き出された正極金属箔25は、塗工部65に送られる。塗工部65は正極活物質を塗工するためのダイヘッド55と、絶縁材を塗工するためのダイヘッド62と、バックアップローラ56を備える。後者のダイヘッド62は前者のダイヘッド55よりも正極金属箔25の搬送方向下流側に配置されている。
【0067】
図示しない塗工液供給源から上流側のダイヘッド55に供給された塗工液(正極活物質)が、マニホールド55aを経てスリット状のノズル55bから正極金属箔25の表面25aに吐出される。続いて、図示しない別の塗工液供給源から下流側のダイヘッド62に供給された塗工液(絶縁材)が、マニホールド62aを経てスリット状のノズル62bから正極金属箔25の表面25aに吐出される。
【0068】
上流側のダイヘッド55のノズル55bのスリット長は、正極活物質層26の幅に対応している。また、ノズル55bのスリット幅はスリット長方向に一定である。そのため、活物質塗工部54で塗工される正極活物質の厚さ(正極活物質層26の厚さT1)は、巻回軸方向に一定である。下流側のダイヘッド62のノズル62bの位置(正極金属箔25の幅方向)及びスリット長は、正極活物質層26の端縁近傍(端縁自体とその近傍を含む)と、その外側の正極未塗工部27の一定幅に対応するように設定されている。
【0069】
塗工部65を通過した正極金属箔25は、乾燥部57に送られる。乾燥部57は、活物質塗工部54で正極金属箔25の表面25aに塗工された正極活物質(正極活物質層26)と絶縁材(絶縁層30)を乾燥させる。乾燥部57を通過した正極金属箔25はプレス部58(メインプレス部59とサブプレス部60を備える)に送られる。
【0070】
メインプレス部59では、メインプレス部59は、正極活物質層26の幅と同一又はそれよりも僅かに長いローラ長を有するプレスローラ対59aを備える。メインプレス部59でのプレスにより、正極活物質層26全体の厚さが均一化される。この厚さは、主面部26aの厚さに相当する。
【0071】
サブプレス部60は、メインプレス部59でプレス済みの正極活物質層26の端縁付近(端縁自体とその近傍を含む)と、正極未塗工部27とをプレスできるローラ長を有するプレスローラ対59aを備える。サブプレス部60でのプレスにより、正極活物質層26には折れ部26eを有する傾斜面部26dが形成され、絶縁層30にも折れ部30bが形成される。また、サブプレス部60でのプレスにより、正極活物質層26と正極未塗工部27との境界の正極金属箔25に形成されたしわが伸ばされる。
【0072】
プレス部58を通過した正極金属箔25は、巻取軸52で巻き取られる。
【0073】
図7の製造装置の他の構成及び作用は、
図5の製造装置と同様である。
【0074】
図8及び
図9は、それぞれ正極電極板15の製造装置の第3及び第4の例を示す。
図5及び
図7の製造装置では、サブプレス部60で正極活物質層26の端縁付近(端縁自体とその近傍を含む)をプレスすることで、傾斜面部26dを形成する。これに対し、
図8及び
図9の製造装置では、プレスではなく、正極活物質の塗工時に正極金属箔25への正極活物質の供給量にスリット長方向の分布を持たせることで、傾斜面部26dを形成している。従って、
図8及び
図9の製造装置は、サブプレス部60を備えていない。
【0075】
図8の製造装置が備える活物質塗工部54と
図9の製造装置が備える塗工部55のダイヘッド55のノズル55bは、
図10に概念的に示すような構成を有する。具体的には、ノズル55bのスリット幅は、スリット長方向に一定ではなく、第1のスリット幅S1を有する部分(スリット長方向の領域L1)と、第1のスリット幅S1よりも狭い第2のスリット幅S2を有する部分(スリット長方向の領域L2)とを有する。例えば、ノズル55bへの正極活物質の供給圧がスリット幅方向に均一である場合、狭いスリット幅S2の領域L2からの正極活物質の吐出量(単位時間当たりの吐出流量)は、広いスリット幅S1の領域L1からの正極活物質の吐出量よりも少ない。従って、領域L1の位置及び長さを正極活物質層26のうち主面部26aに対応するように設定し、領域L2の位置及び長さを正極活物質層26のうち傾斜面部26dに対応するように設定することで、
図4に図示するような断面形状の正極活物質層26が得られる。本実施形態では、領域L2におけるスリット幅S2を端部に向けて漸減することで、正極活物質層26に確実に傾斜面部26dが形成されるようにしている。ただし、領域L2にけるスリット幅S2は一定であってもよい。
【0076】
図11は、
図8及び
図9の製造装置における正極活物質を塗工するためのダイヘッド55の代案を示す。この代案では、ダイヘッド55のノズル55bのスリット幅はスリット長方向で一定である。吐出圧力、ノズル55bまでの絶縁材の供給経路を含む種々の要因を調整することで、スリット長方向の領域L1におけるノズル55bからの正極活物質の吐出量よりも、スリット長方向の領域L2におけるノズル55bからの正極活物質の吐出量を少なく設定している。この場合も、領域L1の位置及び長さを正極活物質層26のうち主面部26aに対応するように設定し、領域L2の位置及び長さを正極活物質層26のうち傾斜面部26dに対応するように設定することで、
図4に図示するような断面形状の正極活物質層26が得られる。本実施形態では、領域L2における活物質の吐出量は端部に向けて漸減する分布を有し、それによって正極活物質層26に確実に傾斜面26dが形成されるようにしている。ただし、領域L2における吐出量は、領域L1における吐出量よりも少ない一定量であってもよい。
【0077】
図8の製造装置のその他の構成及び作用は、
図5と同様である。また、
図9の製造装置のその他の構成及び作用は、
図7と同様である。
【0078】
(第2実施形態)
図12は、第2実施形態に係る正極活物質層26及び絶縁層30の構成を示す。第1実施形態と同様に、正極活物質層26の傾斜面部26dの主面部26aに対する傾斜角度がθ1からθ2に急激にないしは不連続に減少する折れ部26eを設け、絶縁層30の傾斜角度がθ1’からθ2’に急激ないしは不連続に減少する折れ部30bを設けている。絶縁層30には、折れ部30bよりも外側(絶縁層30の端縁30a側)に、さらに折れ部30cを設けている。符号30cで示す位置、すなわち正極活物質層26の端縁26cに対応する位置よりも主面部26a側では、絶縁層30の正極活物質層26の主面部26aに対する傾斜角度がθ2’である。これに対し、位置30cよりも絶縁層30の端縁30a側では、絶縁層30の正極活物質層26の主面部26aに対する傾斜角度はθ2’よりも十分小さいθ3’である。言い換えれば、この位置は絶縁層30の傾斜角度がθ2’からθ3’に急激ないしは不連続に減少する折れ部30cを構成している。
【0079】
絶縁層30に折れ部30bに加えさらに折れ部30cを設けることで、活物質層26の端縁26cの位置をさらに高精度で検出できる。つまり、厚さ分布測定や輝度分布測定によって、2個の折れ部30b,30cの位置を正確に認識でき、認識された2個の折れ部30b,30cの位置を用いることで、活物質層26の端縁26cの位置をさらに高精度で検出できる。また、正確に認識された2個の折れ部30b,30cの位置を用いることで、絶縁層30の端縁30aもより高精度で検出できる。
【0080】
正極活物質層26に傾斜面部26dを設けたことで、正極活物質層26の端縁26cを含む領域における正極金属箔層25の表面25aから絶縁層30の表面までの厚さの過度な増加を効果的に抑制できる。その結果、電極体5の絶縁層30の部分における電極体5の膨らみを防止できる。
【0081】
(第3実施形態)
図13は、第3実施形態に係る正極活物質層26及び絶縁層30の構成を示す。第2実施形態と同様の折れ部30b,30cに加え、これらの折れ部30b,30cの間にさらに折れ部30dを設けている。
【0082】
正極活物質層26には、傾斜面部26dの主面部26aに対する傾斜角度がθ1からθ2に急激ないし不連続に減少する折れ部26eを設けている。正極活物質層26に折れ部26eを設けたことで、絶縁層30に正極活物質層26の傾斜面部26dの主面部26aに対する傾斜角度がθ1’からθ2’に急激にないしは不連続に減少する折れ部30bが形成されている。
【0083】
正極活物質層26には、折れ部26eよりも正極活物質層26の端縁26c側に、傾斜面部26dの主面部26aに対する傾斜角度がθ2からθ3に急激ないし不連続に増加する折れ部26fを設けている。正極活物質層26に折れ部26fを設けたことで、絶縁層30に正極活物質層26の傾斜面部26dの主面部26aに対する傾斜角度がθ2’からθ3’に急激にないしは不連続に増加する折れ部30dが形成されている。
【0084】
絶縁層30の折れ部30cは、正極活物質層26の端縁26cの上方に設けられている。正極活物質層26の端縁26cに対応する位置よりも主面部26a側では、絶縁層30は正極活物質層26の主面部26aに対する傾斜角度がθ3’である。これに対して、正極活物質層26の端縁26cに対応する位置よりも絶縁層30の端縁30a側では、絶縁層30の正極活物質層26の主面部26aに対する傾斜角度はθ3’よりも十分小さいθ4’である。
【0085】
絶縁層30に設けられた3個の折れ部30b,30c,30dの位置を厚さ分布測定や輝度分布測定によって正確に認識でき、認識された3個の折れ部30b,30c,30dの位置を用いることで、正極活物質層26の端縁26cの位置をさらに高精度で検出できる。また、認識された3個の折れ部30b,30c,30dの位置を用いることで、絶縁層30の端縁30aもより高精度で検出できる。
【0086】
正極活物質層26に傾斜面部26dを設けたことで、正極活物質層26の端縁26cを含む領域における正極金属箔層25の表面25aから絶縁層30の表面までの厚さの過度な増加を効果的に抑制できる。その結果、電極体5の絶縁層30の部分における電極体5の膨らみを防止できる。
【0087】
第2及び第3実施形態のような構造を有する正極電極板25も、第1実施形態(
図4)に関連して説明した
図5から
図9に示す製造装置と同様の装置により製造できる。
【0088】
(第4実施形態)
図14は、第4実施形態に係る正極活物質層26及び絶縁層30を示す。本実施形態における正極活物質層26は、主面部26aの巻回軸方向一端部(正極未塗工部27側)に、第1の縦面部26g、横面部26h、及び第2の縦面部26iを備える。第1の縦面部26gは、主面部26aに対して、巻回軸方向の正極未塗工部27側に連続して設けられている。横面部26hは、第1の縦面部26gに対して、巻回軸方向の正極未塗工部27側に連続して設けられている。第2の縦面部26iは、横面部26hに対して、巻回軸方向の正極未塗工部27側に連続して設けられている。第2の縦面部26iは、正極活物質層26の正極未塗工部27側の端縁26cを含む。
【0089】
第1及び第2の縦面部26g,26iは、正極活物質層26の主面部26aと正極金属箔25の表面25aとに対して概ね垂直に延びている。ただし、これら第1及び第2の縦面部27g,26iは、主面部26aや表面25aに対して垂直な方向に対してある程度傾斜していてもよい。横面部26hは、正極活物質層26の主面部26aと正極金属箔25の表面25aとに対して、概ね平行に延びている。ただし、横面部26hは、主面部26aや表面25aに対して水平な方向に対してある程度傾斜していてもよい。
【0090】
主面部26aと第1の縦面部26gとの境界部分で、正極金属箔25の表面25aに対する傾斜角度が急激ないしは不連続に変化している。そのため、正極活物質層26には、主面部26aと第1の縦面部26gとの境界部分に、折れ部26jが形成されている。また、横面部26hと第2の縦面部26iとの境界部分でも、正極金属箔層25の表面25aに対する傾斜角度が急激ないしは不連続に変化している。そのため、正極活物質層26には、横面部26hと第2の縦面部26iとの境界部分にも、折れ部26kが形成されている。
【0091】
絶縁層30は、正極活物質層26の第1の縦面部26g(横面部26hとの境界付近)から、正極金属箔25の表面25aにかけて正極活物質層26の端縁26cを覆うように設けられている。正極活物質層26の端縁26cから絶縁層30の端縁30aまでの間の領域では、正極活物質層26が介在することなく、正極金属箔25の表面25aに絶縁層30が直接設けられている。
【0092】
主面部26aと第1の縦面部26gとの境界部分にある正極活物質層26の折れ部26jは、絶縁層30に覆われることなく露出されている。
【0093】
一方、横面部26hと第2の縦面部26iとの境界部分にある正極活物質層26の折れ部26kは、絶縁層30で覆われている。そのため、絶縁層30には、正極活物質層26の折れ部26kに対応する位置に折れ部30eが形成されている。
【0094】
正極活物質層26の折れ部26jでは、正極金属箔層25の表面25aから正極活物質層26や絶縁層30の表面までの距離、すなわち厚さの変化率が急激ないしは不連続に変化する。同様に、絶縁層30の折れ部30eでも、正極金属箔層25の表面25aから絶縁層30の表面までの距離(厚さ)の変化率が急激ないしは不連続に変化する。そのため、正極電極板15の厚さ分布測定により折れ部26j,30eの位置を正確に認識でき、認識された折れ部26j,30eの位置を用いることで、正極活物質層26の端縁26cの位置をより高精度で検出できる。
【0095】
また、正極電極板15に光線を照射して輝度分布を測定した場合、折れ部26j,30eの前後で反射光の輝度が急激にないし不連続に変化し、折れ部26j,30eの位置で、反射光の輝度差分の明確なピークが現れる。そのため、反射光の輝度分布測定により折れ部26j,30eの位置を正確に認識でき、認識された折れ部26j,30eの位置を用いることで、正極活物質層26の端縁26cの位置をより高精度で検出できる。
【0096】
本実施形態の正極電極板15は、第1実施形態の場合と同様の方法により製造できる。まず、本実施形態の正極電極板15は、
図5に示すものと同様の製造装置で製造できる(以下、
図5を参照する)。巻出軸51から巻き出された正極金属箔25は、活物質塗工部54に送られ、ダイヘッド55のノズル55bから吐出される塗工液(正極活物質を含む)が正極金属箔25の表面25aに吐出される。ノズル55bのスリット幅はスリット長方向に一定である。
【0097】
活物質塗工部54を通過した正極金属箔25は、乾燥部57を経てプレス部58に送られる。プレス部58のメインプレス部59でプレスされることで、正極活物質層26全体が主面部26aの厚さに相当する厚さに均一化される。続いて、プレス部58のサブプレス部60で正極活物質層26の端縁付近が厚さ方向にプレスされることで、第1の縦面部26g、横面部26h、及び第2の縦面部26iが形成される。
【0098】
プレス部58を通過した正極金属箔25には、絶縁材塗工部61のダイヘッド62で絶縁材が塗工され、絶縁層30が形成される。絶縁材塗工部61を通過した正極金属箔25は乾燥部57を経て巻取軸52で巻き取られる。
【0099】
本実施形態の正極電極板15は、
図8に示すものと同様の製造装置でも製造できる(以下、
図8を参照する)。ダイヘッド55のノズル55bから吐出される塗工液(正極活物質を含む)が正極金属箔25の表面25aに吐出される。
図15に概念的に示すように、ノズル55bのスリット幅は、スリット長方向に一定ではなく、第1のスリット幅S1を有する部分(スリット長方向の領域L1)と、第1のスリット幅S1よりも狭い一定幅の第2のスリット幅S2を有する部分(スリット長方向の領域L2)とを有する。領域L1,L2間のスリット幅S1,S2の相違により、正極活物質層26は、主面部26aの形成と同時に、第1の縦面部26g、横面部26h、及び第2の縦面部26iが形成される。
【0100】
活物質塗工部54を通過した正極金属箔25は、乾燥部57を経て絶縁材塗工部61に送られる。乾燥部57と絶縁材塗工部61との間には、プレス部58は設けられておらず、正極金属箔25は、プレスされることなく絶縁材塗工部61に送られる。絶縁材塗工部61では、ダイヘッド62により正極金属箔25に絶縁材が塗工され、絶縁層30が形成される。絶縁材塗工部61を通過した正極金属箔25は乾燥部57を経て巻取軸52で巻き取られる。
【0101】
以下に言及する第5及び第6実施形態のような構造を有する正極電極板25も、本実施形態と同様の装置を用いて同様の方法により製造できる。
【0102】
(第5実施形態)
図17は、第5実施形態に係る正極活物質層26及び絶縁層30の構成を示す。特に言及しない構成は、第4実施形態と同様である。本実施形態における正極活物質層26は、主面部26aの巻回軸方向一端部(正極未塗工部27側)に、縦面部26mと傾斜面部26nとを備える。縦面部26mは、主面部26aに対して、巻回軸方向の正極未塗工部27側に連続して設けられている。傾斜面部26nは、縦面部26mに対して、巻回軸方向の正極未塗工部27側に連続して設けられている。傾斜面部26nは、正極活物質層26の正極未塗工部27側の端縁26cを含む。
【0103】
縦面部26mは、正極活物質層26の主面部26aと正極金属箔25の表面25aとに対して概ね垂直に延びているが、これら対してある程度傾斜していてもよい。傾斜面部26nは、縦面部36m側から端縁26c側に向けて概ね一定で厚さが減少している。ただし、傾斜面部26nの厚さの端縁26cに向かう減少の割合はある程度変化していてもよい。
【0104】
主面部26aと縦面部26mとの境界部分で、正極金属箔25の表面25aに対する傾斜角度が急激ないしは不連続に変化している。そのため、正極活物質層26には、主面部26aと縦面部26mとの境界部分に、折れ部26pが形成されている。一方、傾斜面部26nには正極金属箔25の表面25aに対する傾斜角度が急激ないしは不連続に変化している部分はなく、折り部は形成されていない。
【0105】
絶縁層30は、正極活物質層26の縦面部26m(傾斜面部26nとの境界付近)から、正極電極泊25の表面25aにかけて正極活物質層26の端縁26cを覆うように設けられている。前述のように、正極活物質層26の傾斜面部26nには折れ部は形成されていないので、絶縁層30にも折れ部は形成されていない。
【0106】
正極活物質層26の折れ部26pでは、厚さの変化率が急激ないしは不連続に変化する。そのため、正極電極板15の厚さ分布測定により折れ部26pの位置を正確に認識でき、認識された折れ部26の位置を用いることで、正極活物質層26の端縁26cの位置をより高精度で検出できる。
【0107】
正極電極板15に光線を照射して輝度分布を測定した場合、正極電極層26の折れ部26pの前後と、絶縁層30の端縁30aの前後とで、反射光の輝度が急激にないし不連続に変化し、これらの位置で、反射光の輝度差分の明確なピークが現れる。そのため、反射光の輝度分布測定により、正極電極層26の折れ部26pと絶縁層30の端縁30aの位置を正確に認識でき、認識されたこれらの位置を用いることで、正極活物質層26の端縁26cの位置をより高精度で検出できる。
【0108】
(第6実施形態)
図18は、第6実施形態に係る正極活物質層26及び絶縁層30の構成を示す。特に言及しない構成は、第4実施形態と同様である。本実施形態における正極活物質層26は、主面部26aの巻回軸一端部(正極未塗工部27側)に、縦面部26q、第1の傾斜面部26r、及び第2の傾斜面部26sを備える。縦面部26qは、主面部26aに対して、巻回軸方向の正極未塗工部27側に連続して設けられている。第1の傾斜面部26rは、縦面部26qに対して、巻回軸方向の正極未塗工部27側に連続して設けられている。第2の傾斜面部26sは、第1の傾斜面部26rに対して、巻回軸方向の正極未塗工部27側に連続して設けられている。第2の傾斜面部26sは、正極活物質層26の正極未塗工部27側の端縁26cを含む。
【0109】
主面部26aと縦面部26qとの境界部分で、正極金属箔25の表面25aに対する傾斜角度が急激ないしは不連続に変化している。そのため、正極活物質層26には、主面部26aと縦面部26qとの境界部分に、折れ部26tが形成されている。また、第1の傾斜面部26rと第2の傾斜面部26sとの境界部分で、正極金属箔25の表面25aに対する傾斜角度が急激ないしは不連続に変化している。そのため、正極活物質層26には、第1の傾斜面部26rと第2の傾斜面部26sとの境界部分に、折れ部26uが形成されている。
【0110】
絶縁層30は、正極活物質層26の縦面部26q(第1の傾斜面部26rとの境界付近)から、正極金属箔25の表面25aにかけて、正極活物質層26の端縁26cを覆うように設けられている。第1の傾斜面部26rと第2の傾斜面部26sとの境界部分にある正極活物質層26の折れ部26uは、絶縁層30で覆われている。そのため、絶縁層30には、正極活物質層の折れ部26uに対応する位置に折れ部30fが形成されている。
【0111】
正極活物質層26の折れ部26tと絶縁層30の折れ部30fでは、厚さの変化率が急激ないしは不連続に変化する。そのため、正極電極板15の厚さ分布測定により、折れ部26t,30fの位置を正確に認識でき、認識された折れ部26t,30fの位置を用いることで、正極活物質層26の端縁26cの位置をより高精度で検出できる。
【0112】
また、正極電極板15に光線を照射して輝度分布を測定した場合、折れ部26t,30fの前後で反射光の輝度が急激にないし不連続に変化し、これらの位置で反射光の輝度差分の明確なピークが現れる。そのため、反射光の輝度分布測定により折れ部26t,30fの位置を正確に認識でき、認識された折れ部26t,30fの位置を用いることで、正極活物質層26の端縁26cの位置をより高精度で検出できる。