【実施例】
【0024】
以下には、本発明の複合体(負極/電解質複合体)を具体的に作製した例を実施例として説明する。下記実施例においては、負極活物質層(第1層)を負極支持体とも称し、固体電解質層(第2層)を電解質とも称する。なお、本発明は下記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0025】
(負極支持体(LiTO)の作製(CIP成形体A1、又は焼結体A2))
市販チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12;LiTO,エナマイトLT−106石原産業製)をポリエチレンポットに、ジルコニアボール、エタノールと共に入れ、60時間、ボールミル処理をした。ミル処理後の混合液からエタノールを蒸発させ、ペースト状の試料を回収した。そのペースト状の試料を110℃乾燥機中で一晩乾燥させたあと、アルミナ乳鉢で解砕しペレット用試料とした。ペレット金型に目標厚みとなる所定量の市販チタン酸リチウムを充填し、150kgf/cm
2で1分間保持し、予備成形体を得た。予備成形体をポリエチレン袋に入れ二重に真空パックした後に、300MPaで1分間保持する条件で冷間等方圧加工処理(CIP)を行い、そのCIP処理したものを回収し負極支持体(CIP成形体A1)を得た。また、得られたCIP成形体を焼成して、負極支持体(焼結体)を作製した。上記負極支持体(CIP成形体)の全体を出発原料の市販チタン酸リチウムで覆い焼成を行った。これにより、焼成時における負極支持体(CIP成形体)からのリチウム蒸散を抑制することができる。焼成条件は、大気中、昇温速度200℃/h、1000℃で4時間保持後とし、冷却は炉冷とした。得られた焼成体表面を研磨し、厚みを整えて負極支持体(焼結体A2)を得た。
【0026】
(負極支持体(LiTO)の作製(テープ体B))
上記市販チタン酸リチウムをポリエチレンポットに、ジルコニアボール、エタノールと共に入れ、ボールミル粉砕を行った。ミル粉砕後の混合液からエタノールを蒸発させ、ペースト状の試料を回収した。そのペースト状試料を110℃乾燥機中で一晩乾燥させたあと、アルミナ乳鉢で解砕しテープ用粉砕粉末とした。このテープ用粉砕粉末に、150質量%の有機溶媒予混合液(トルエン+エタノール+ポリビニルブチラール(PVB))と可塑剤及び混合撹拌用ジルコニアボールを加え、ボールミル混合を行うことでテープ成形用のスラリーを得た。次に、ドクタープレード装置を用いて、得られたスラリーを厚さ70〜100μmのテープ状に成形し、乾燥させ、テープ成形体を得た。更に、得られたテープ成形体を切断し、10枚重ねて積層テープ成形体Bとした。
【0027】
(電解質テープ状前駆体用チタン酸ランタン(板状粒子C)の合成)
ポットに直径3mmのジルコニアボールとエタノール(和光純薬工業(株)製、特級99.5%)を入れ、化学量論比でLa
2Ti
2O
7組成(La:Ti=1:1(モル))となるように、炭酸ランタン(La
2(CO
3)
3)粉末及び酸化チタン(TiO
2)粉末(平均粒径0.15μm)を加えて、ボールミリングを行い、混合スラリーを得た。次に、得られた混合スラリーを電気炉中で乾燥し、乾燥した混合粉末を解砕し、この混合粉末に対して、フラックスとして等量の塩化カリウム(KCl)を加えて白金るつぼに入れた。次に、白金るつぼを電気炉(粉体合成炉)で加熱し、短冊上の粒子(チタン酸ランタン粉末)を合成した。加熱処理の条件は、1200℃で8時間保持とした。冷却後に試料のKClを洗い流し、板状粒子C(LaTO)を得た。
【0028】
(電解質テープ状前駆体用チタン酸ランタン(粉砕粒子D)の合成)
ポットに直径3mmのジルコニアボールとエタノール(和光純薬工業(株)製、特級99.5%)を入れ、チタン酸ランタン(La
2Ti
2O
7)を加えて、ボールミル粉砕を行った。ミル粉砕後の混合液からエタノールを蒸発させ、ペースト状の試料を回収した。ペースト状試料を110℃乾燥機中で一晩乾燥させたあと、アルミナ乳鉢で解砕しチタン酸ランタン粉砕粒子D(LaTO粉砕粒子)を得た。
【0029】
(板状粒子を含まないチタン酸リチウムランタン(仮焼粉末E)の合成)
ポットに直径3mmのジルコニアボールとエタノール(和光純薬工業(株)製、特級99.5%)を入れ、予めボールミルで粉砕したチタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、酸化チタン(TiO
2)及びチタン酸ランタン(La
2Ti
2O
7)を配合し、ボールミル混合を行い混合スラリーを得た。混合スラリーよりエタノールを蒸発させたあと、大気中で1000℃、4時間(昇降温速度200℃/h)で仮焼して仮焼粉末Eを得た。
【0030】
(板状粒子を含まないチタン酸リチウムランタン用原料(混合粉末F)の調整)
ポットに直径3mmのジルコニアボールとエタノール(和光純薬工業(株)製、特級99.5%)を入れ、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)、酸化チタン(TiO
2)及びチタン酸ランタン(La
2Ti
2O
7)をLa
0.62Li
0.16TiO
3となる比で配合し、ボールミル混合を行い混合スラリーを得た。混合スラリーよりエタノールを蒸発させたあと、アルミナ乳鉢で解砕しチタン酸リチウムランタン原料の混合粉末Fを得た。
【0031】
(電解質テープ状前駆体G:LaTO板状粒子と酸化チタン(TiO
2)との混合体)
板状粒子C(LaTO)とTiO
2粉末とを、これらが負極支持体LiTOと反応してLa
0.62Li
0.16TiO
3となる比で混合したテープ成形用のスラリーを作製した。上記二種類の粉末に、150質量%の有機溶媒予混合液(トルエン+エタノール+PVB)と可塑剤及び混合撹拌用ジルコニアボールを加え、ボールミル混合を行うことでテープ状前駆体用のスラリーを得た。次に、ドクターブレード装置を用いて、得られたスラリーを厚さ70〜100μmのテープ状に成形し、乾燥させ、テープ成形体を得た。更に、得られたテープ成形体を切断し、ロールプレスで厚さT=30μmへ調厚した電解質テープ状前駆体Gを得た。なお、以後述べるテープ状前駆体に関してもその調厚値は電池設計の重要な設計パラメータであり、また、得ようとする緻密な電解質膜と多孔な電解質膜との比で任意に変更可能である。本実施例では、薄く緻密な電解質膜を有し、かつ、正極材料をその体積と同等以上の電解質多孔層に含浸する構造を選択したので、ロールプレス厚をT=30μmに設定した。
【0032】
(電解質テープ状前駆体H:LaTO板状粒子とLaTO粉砕粒子と酸化チタンTiO
2との混合体)
板状粒子Cと粉砕粒子Dとの二種類のチタン酸ランタンを5:95(モル比)の割合で混合し、さらにTiO
2粉末を、これらが負極支持体LiTOと反応してLa
0.62Li
0.16TiO
3となる比で混合し、電解質テープ状前駆体用のスラリーを作製した。上記三種類の粉末に、150質量%の有機溶媒予混合液(トルエン+エタノール+PVB)と可塑剤及び混合撹拌用ジルコニアボールを加えボールミル混合を行うことでテープ状前駆体用のスラリーを得た。次に、ドクターブレード装置を用いて、得られたスラリーを厚さ70〜100μmのテープ状に成形し、乾燥させ、テープ成形体を得た。更に、得られたテープ成形体を切断し、ロールプレスで厚さT=15μmへ調厚した電解質テープ状前駆体Hを得た。
【0033】
(電解質テープ状前駆体I:チタン酸リチウムランタン(仮焼粉末E))
チタン酸リチウムランタン粉末(仮焼粉末E)95モル%に対して、反応すれば5モル%のチタン酸リチウムランタンとなる、板状粒子C(LaTO)、Li
4Ti
5O
12粒子、TiO
2粒子を加え、これに150質量%の有機溶媒予混合液(トルエン+エタノール+PVB)と可塑剤及び混合撹拌用ジルコニアボールを加えボールミル混合を行うことでテープ成形用のスラリーを得た。次に、ドクターブレード装置を用いて、得られたスラリーを厚さ70〜100μmのテープ状に成形し、乾燥させ、テープ成形体を得た。更に、得られたテープ成形体を切断し、ロールプレスで厚さT=50μmへ調厚した電解質テープ状前駆体Iを得た。
【0034】
(電解質テープ状前駆体J:チタン酸リチウムランタン用原料混合粉末)
板状粒子Cと粉砕粒子Dとの二種類のチタン酸ランタンを5:95(モル比)の割合になり、且つそれと反応してチタン酸リチウムランタンが合成される比のLi
4Ti
5O
12粒子とTiO
2粒子とから成るチタン酸リチウムランタン用粉末(混合粉末)に、150質量%の有機溶媒予混合液(トルエン+エタノール+PVB)と可塑剤及び混合撹拌用ジルコニアボールを加えボールミル混合を行うことでテープ成形用のスラリーを得た。次に、ドクターブレード装置を用いて、得られたスラリーを厚さ70〜100μmのテープ状に成形し、乾燥させ、テープ成形体を得た。更に、得られたテープ成形体を切断し、ロールプレスで厚さT=50μmへ調厚した電解質テープ状前駆体Jを得た。
【0035】
(固相による負極(LiTO)/電解質(LLTO)複合体(実施例1)の作製)
負極支持体(CIP成形体A1、第1層の原料)上に電解質テープ状前駆体G(第2層の原料)を載せて、窒素中500℃、1hで脱脂したあと、300MPaでCIP処理を行った。さらに、負極支持体の下側及び周囲に、市販チタン酸リチウム粉末を配置したあと、1000℃で4h焼成し、第1層を負極活物質層とし第2層を固体電解質層とする実施例1の負極/電解質複合体を得た(
図2(a)参照)。
【0036】
(固相による負極/電解質複合体(実施例2)の作製)
負極支持体(CIP成形体A1の研磨品、第1層の原料)上に電解質テープ状前駆体Hを載せ、窒素中500℃、1hで脱脂したあと、250MPaでCIP処理を行った。さらに、負極支持体の下側及び周囲に市販チタン酸リチウム粉末を配置したあと、1000℃、4h焼成し、実施例2の負極/電解質複合体を得た(
図2(b)参照)。
【0037】
(固相による負極/電解質複合体(実施例3)の作製)
負極支持体(CIP成形体A1の研磨品、第1層の原料)上に電解質テープ状前駆体Iを載せ、窒素中500℃、1hで脱脂したあと、250MPaでCIP処理を行った。さらに、負極支持体の下側及び周囲に市販チタン酸リチウム粉末を配置したあと、1000℃、4h焼成し、実施例3の負極/電解質複合体を得た(
図2(c)参照)。
【0038】
(固相による負極/電解質複合体(実施例4)の作製)
負極支持体(CIP成形体A1の研磨品、第1層の原料)上に電解質テープ状前駆体Jを載せ、窒素中500℃、1hで脱脂したあと、250MPaでCIP処理を行った。さらに、負極支持体の下側及び周囲に市販チタン酸リチウム粉末を配置したあと、1000℃、4h焼成し、実施例4の負極/電解質複合体を得た(
図2(d)参照)。また、負極支持体をテープ体Bとし、80℃、5MPaで圧着した試料も同様に、脱脂、CIP処理、焼成した(
図2(e)参照)。
【0039】
(表面XRD分析)
作製した負極/電解質複合体(実施例1〜4)の表面をXRD測定した。XRD測定は、XRD測定器(リガク製、ULtima IV)を用いて、CuKα線を用い、印加電圧を40kV、電流40mAに設定し、2θ=10〜90°、10°/分の条件で測定した。
【0040】
(走査型電子顕微鏡(SEM)観察)
作製した負極/電解質複合体1〜4の断面をSEM観察した。SEM観察は、日立ハイテクノロジーズ社製S−3600N及びS−4300を用いて1000〜10000倍の条件で行った。
【0041】
(固相による負極/電解質複合体(実施例1〜4)の特性)
図4は、固相により作製した実施例1の負極/電解質複合体1の電解質側表面に対するXRD測定結果である。
図5は、固相により作製した実施例1の負極/電解質複合体の断面SEM写真である。
図6は、固相により作製した実施例2の負極/電解質複合体の電解質側表面に対するXRD測定結果である。
図7は、固相により作製した実施例2の負極/電解質複合体の断面SEM写真である。
図8は、固相により作製した実施例3の負極/電解質複合体の電解質側表面に対するXRD測定結果である。
図9は、固相により作製した実施例3の負極/電解質複合体の断面SEM写真である。
図10は、固相により作製した実施例4の負極/電解質複合体の電解質側表面に対するXRD測定結果である。
図11は、固相により作製した実施例4の負極/電解質複合体の断面SEM写真である。各SEM写真には、反射電子像と二次電子像とを示し、任意位置の拡大写真も適宜示した。
図4、6、8、10に示す様に、実施例1〜4では、チタン酸リチウムランタン(Li
0.16La
0.62TiO
3)の電解質層が検出された。また、
図5、7、9、11に示す様に、負極支持体(基材)であるチタン酸リチウム上には、チタン酸リチウムランタンの緻密層が被覆しており、この緻密層の上に多孔質層が形成されていることがわかった。実施例1、2においては、電解質層の原料にリチウム源はないことから、負極支持体のリチウムが第2層へ拡散したものと推察された。また、負極支持体と固体電解質との間の界面に抵抗層のような物質は確認されなかった。したがって、これらの複合体では、リチウム伝導性が好適であるものと推察された。実施例1〜4の作製方法によれば、負極/電解質複合体の接合性をより向上することができることがわかった。また、緻密層を固体電解質層とすれば、その厚さは1μm〜2μm程度であり、極薄の固体電解質層を形成することができることもわかった。また、負極支持体をCIP体(A1)からテープ成形体Bに変えても、結果は変わらなかった。
【0042】
次に、液相による負極/電解質複合体を作製した例について説明する。
【0043】
(塗布溶液の作製)
窒素雰囲気中にてチタンイソプロポキシドとランタンイソプロポキシドをモル比がおよそ1:1.305となるように、それぞれ3.724g、3.17gをメトキシエタノール10mLに溶解させて混合溶液を作製した。上記の溶液を118℃で3h攪拌還流したあと、120〜123℃で溶媒を3h減圧蒸発させた。その後、メトキシエタノール10mLを加えて上記の操作を繰り返し、配位子を置換した。得られたLaメトキシエトキシド(La(OEM)
3)、Tiメトキシエトキシド(Ti(OEM)
4)の混合溶液を希釈して0.1MのLa(OEM)
3、0.1305MのTi(OEM)
4の塗布溶液を作製した。
【0044】
(液相による負極/電解質複合体(実施例5)の作製)
CIP成形体A1(チタン酸リチウム成形体)に上記の塗布溶液をスピンコートにて塗布した。チタン酸リチウム成形体を2000rpm−20sで回転させながら2mLの注射器を用いて塗布溶液10滴を滴下してLa(OEM)
3、Ti(OEM)
4を塗布した。塗布後にチタン酸リチウム成形体の温度を300℃、450℃の順に各1分加熱してLa(OEM)
3、Ti(OEM)
4を熱分解させ、300℃、室温の順にそれぞれ1分、2分静置して冷却した。上記の操作を20回繰り返して前駆体薄膜をチタン酸リチウム成形体上に作製した。得られたチタン酸リチウムランタン前駆体薄膜/チタン酸リチウム成形体を空気中950℃、1h焼成して実施例5の負極/電解質接合体(LLTO/LiTO構造体)を得た。なお、チタン酸リチウムランタンの膜厚に関しては固相式と同様、電池設計の重要な設計パラメータであり、主にスピンコートの繰り返し回数で当然任意に制御可能である。本実施例では、1μmのチタン酸リチウムランタン薄膜をチタン酸リチウム成形体上に形成するものとし、スピンコート繰り返し回数は20回とした。
【0045】
(固相による負極/電解質接合体の作製:比較例1〜3)
電解質テープ状前駆体用に調整した板状粒子を含まないチタン酸リチウムランタン(仮焼粉末E)を、目標厚みとする所定量充填し、150kgf/cm
2で1分間保持し、予備成形体を得た。予備成形体をポリエチレン袋に入れ二重に真空パックした後に、300MPaで1分間保持する条件でCIP処理したものをCIP処理済み焼成前電解質試料とした。負極支持体(CIP成形体A1)上に上記CIP処理済み焼成前電解質試料を載せ、負極支持体の下側及び周囲に市販チタン酸リチウム粉末を配置したあと、1000℃、6h焼成し、比較例1の負極/電解質接合体を得た。また、焼成温度を1100℃とした以外は、比較例1と同様の工程を経て得られた負極/電解質接合体を比較例2とした。また、焼成温度を1200℃とした以外は、比較例1と同様の工程を経て得られた負極/電解質接合体を比較例3とした。
【0046】
(負極/電解質複合体(実施例5、比較例1〜3)の特性)
図12は、液相により作製した実施例5の負極/電解質複合体のXRD測定結果である。
図13は、液相により作製した実施例5の負極/電解質複合体のSEM写真である。
図14は、固相により作製した比較例2、3の負極/電解質複合体のXRD測定結果である。
図12、13に示す様に、液相で第2層(電解質層)を形成した実施例5においても、固相で第2層を形成した実施例1〜4と同様に、チタン酸リチウムランタンの緻密層が形成されていることがわかった。電解質層の原料にリチウム源はないことから、負極支持体のリチウムが第2層へ拡散したものと推察された。比較例1〜3では、いずれの条件でも、チタン酸リチウムランタン(LLTO)は負極支持体(LiTO)と部分的には接合しているものの、全体が密着した緻密な界面は得られなかった。また、
図14に示す様に、第2層と接していない第1層表面のXRD測定結果から、比較例2、3に示すように、1000℃を超える高温では、TiO
2やLi
2Ti
3O
7などが検出されており、負極支持体の分解が進むことがわかった。
【0047】
(電解質LLTOの焼結密度を検討する試料の作製:比較例4〜6)
ポットに直径3mmのジルコニアボールとエタノール(和光純薬工業(株)製、特級99.5%)を入れ、電解質テープ状前駆体Hに用いた粉末(LaTOとして板状粒子Cと粉砕粒子Dとを5:95(モル比)の割合で混合し、さらにTiO
2粉末をこれらが負極支持体LiTOと反応してLa
0.62Li
0.16TiO
3となる比で混合した粉末)を加え、ボールミル混合を行い混合スラリーを得た。混合スラリーよりエタノールを蒸発させたあと、アルミナ乳鉢で解砕しチタン酸リチウムランタン原料の混合粉末Kを得た。この混合粉末Kをペレット金型に目標厚みとする所定量充填し、150kgf/cm
2で1分間保持し、予備成形体を得た。この予備成形体をポリエチレン袋に入れ、二重に真空パックしたのちに、300MPaで1分間保持する条件でCIP処理することによりCIP体を得た。このCIP体の下側及び周囲(上側以外)に市販チタン酸リチウム粉末を配置したのち、1100℃、6時間で焼成し、得られたものを比較例4の電解質焼結体とした。また、焼成温度を1200℃とした以外、比較例4と同様の工程を経て得られたものを比較例5とした。また、焼成温度を1350℃とした以外、比較例4と同様の工程を経て得られたものを比較例6とした。
【0048】
比較例4〜6の電解質焼結体の相対密度を測定したところ、それぞれ78.0体積%、94.0体積%、98.1体積%であった。この結果より、1100℃、1200℃の焼成条件であっても、相対密度が低い焼結体しか得られないことがわかった。このため、比較例4〜6では、イオン伝導度の向上は期待できないことが予想された。
【0049】
上述した特許文献1(特開2013−105646号公報)では、ランタン源の粒子を300nm以下とし、チタン源の粒子を50nm以下とするなど、ナノ粒子を出発原料とすることでチタン酸リチウムランタンの固体電解質を、700℃〜900℃の比較的低温で焼成して形成するものとしている。しかしながら、この固体電解質では、イオン伝導度が低いものも存在しており、十分とはいえなかった。あるいは、特開2008−59843号公報においては、1150℃で12hで焼成したのち1350℃で6h成形焼結するなど、高温で処理するものとしている。非特許文献1(NIST Phase Equilibria Diagrams Online Vol.06,Fig.06355-System Li
2O-TiO
2. Mater.Res.Bull.,15[11]1655-1660(1980))に示されたチタン酸リチウムの組成と温度との関係を表す相図によれば、チタン酸リチウムは、1015℃付近で分解することが明らかである。ここで、特許文献1の表2に示されているように、固体電解質は900℃など比較的低温で合成できているが、イオン伝導度は、900℃では不足する場合がある(条件1より)。しかし、第2条件(1150℃×12hの仮焼後、1350℃×6hの本焼成)であれば、比較的良好なイオン伝導度を示す。この低いイオン伝導度は、イオン伝導度を測る供試体(バルク体)の焼結体の密度不足によるものと本発明者は考えた。しかしながら、特許文献1の第2条件で電解質が合成できたとしても、上記相図により、1015℃以上でチタン酸リチウムは分解する可能性が高い。したがって、負極活物質(チタン酸リチウム)と固体電解質(チタン酸リチウムランタン)とを共焼成し、良好な界面を形成する条件に第2条件は適さない。固体電解質の単体が合成できてもその後の正極又は負極活物質との組み合わせ時に障害があり得る。
【0050】
固体電解質の緻密体を必要な部位(例えば活物質全面)に必要な厚み(できるだけ薄肉で)で形成する際に、負極活物質である第1層上でその場で緻密な固体電解質層である第2層を合成することを考えた。この際に必要な要件は、上述のように、第2層(LLTO)の電解質が合成できていること、及び第2層の固体電解質が緻密体であることである。この点において、上述した比較例1〜3では、固体電解質LLTOと負極活物質LiTOとは部分的に接合しているものの、全体が密着した緻密な界面は得られなかった。また、1000℃を超えた比較例2、3は、固体電解質LLTOと接していない面のX線回折測定結果より、負極活物質LiTOの分解を示唆するTiO
2やLi
2Ti
3O
7が検出された。これは、非特許文献1の相図により支持される結果であった。また、比較例4〜6は、焼成温度ごとにバルク体(LLTO)の焼結密度を比較したものであるが、固体電解質LLTO単体のバルク体焼結密度は、比較例6(1350℃焼成)以外では不足していることが確認された。よって、所望のイオン伝導度を示すバルク体単相電解質は、高温焼成した比較例6しか合成できないと推察される。しかし、比較例6の温度条件は比較例3と同様に、目的である固体電解質LLTOと負極活物質LiTOとの接合体を作成する温度条件には高すぎる。これに対して、本願発明では、原料のナノ粒子化や焼成温度の高温化を行わずに結晶成長の促進及び緻密化を図ることを検討した。そして、本願発明では、活物質である第1層に起因するリチウムをも原料として利用して固体電解質である第2層を形成するものとし、例えば、1100℃未満の焼成温度において、負極であるチタン酸リチウムと固体電解質であるチタン酸リチウムランタンとが緻密且つ良好な界面で共存したものとすることができたのである。