(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コア部分に含まれる前記非ジエン系ポリマーを硬化させて硬化物を得た場合における前記硬化物のJIS A硬度が45以上を示し、かつ、伸びが200%以上を示す、請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のタイヤ用ゴム組成物、タイヤ用ゴム組成物の製造方法および空気入りタイヤについて説明する。
なお、本発明において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0012】
[タイヤ用ゴム組成物]
本発明のタイヤ用ゴム組成物(以下、単に「ゴム組成物」ともいう。)は、ジエン系ゴム(A)と、微粒子(B)と、を含有し、上記ジエン系ゴム(A)が、天然ゴムを60〜100質量%含む。
また、上記微粒子(B)が、上記ジエン系ゴム(A)と相溶しない非ジエン系ポリマーと、上記ジエン系ゴム(A)と相溶するジエン系ポリマーと、を含み、上記非ジエン系ポリマーを50質量%より多く含有するコア部分と、上記ジエン系ポリマーを50質量%より多く含有するシェル部分と、から構成されたコアシェル構造である。
また、上記コア部分に含まれる上記非ジエン系ポリマーと、上記シェル部分に含まれる上記ジエン系ポリマーと、が化学結合によって結合している。
また、上記微粒子(B)の平均粒子径が、0.001〜100μmである。
また、上記微粒子(B)の含有量が、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して1〜30質量部である。
【0013】
本発明においては、上記ジエン系ゴム(A)に対して上記微粒子(B)を配合することにより、空気入りタイヤの低発熱性および耐摩耗性が良好となる。
この理由の詳細は明らかになっていないが、およそ以下のとおりと推測される。
すなわち、上記微粒子(B)は、非ジエン系ポリマーを主体とするコア部分と、ジエン系ポリマーを主体とするシェル部分と、を有するコアシェル構造を有していることから、ジエン系ゴム(A)と混合した際に、微粒子(B)のシェル部分とジエン系ゴム(A)との相溶性が良好である。また、微粒子(B)におけるコア部分とシェル部分とは、化学結合しているため、シェル部分がジエン系ゴム(A)中に溶け出すことを抑制できる。これにより、ゴム組成物中における微粒子(B)の分散性が向上するので、ジエン系ゴム(A)と、微粒子(B)と、を分離する明確な界面が生じにくくなると考えられる。その結果、本発明のゴム組成物をタイヤとしたときの強靭性が向上して、タイヤの耐摩耗性が良好になったと推測される。
さらに、上記微粒子(B)におけるコア部分は、非ジエン系ポリマーを主体としているので、シリカなどの無機粒子に比べて変形しやすい。これにより、局所的にかかる歪みが分散され、応力も緩和されるので、タイヤの耐摩耗性が良好になったと推測される。
また、上記微粒子(B)は、分散性に優れていることから、ゴム組成物中において凝集しにくい傾向にある。その結果、低発熱性が良好になったものと推測される。
【0014】
〔ジエン系ゴム(A)〕
本発明のゴム組成物が含有するジエン系ゴム(A)は、天然ゴム(NR)を60〜100質量%含むゴム成分である。なお、「天然ゴムを100質量%含む」とは、上記ジエン系ゴム(A)として、天然ゴムのみを用いることを意味する。
ここで、ジエン系ゴム(A)における天然ゴムの含有量は、タイヤにしたときに耐チッピング性および耐カット性の観点から、ジエン系ゴム(A)の総質量の70〜100質量%であるのが好ましい。
【0015】
上記ジエン系ゴム(A)としては、天然ゴムを60〜100質量%含有するものであれば特に限定されない。
上記ジエン系ゴム(A)が、天然ゴム以外のジエン系ゴムを併用する場合、その具体例としては、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル−共役ジエン共重合ゴム(例えば、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR))、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(Br−IIR、Cl−IIR)、クロロプレンゴム(CR)等が挙げられる。
これらのうち、タイヤにしたときに耐摩耗性がより良好となり、また、耐チッピング性および耐カット性の観点から、ブタジエンゴムまたはスチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)を併用するのが好ましい。
【0016】
〔微粒子(B)〕
本発明のゴム組成物が含有する微粒子(B)は、上記ジエン系ゴム(A)と相溶しない非ジエン系ポリマーと、上記ジエン系ゴム(A)と相溶するジエン系ポリマーと、を含む。
「上記ジエン系ゴム(A)と相溶しない非ジエン系ポリマー」とは、上記ジエン系ゴム(A)に包含される全てのゴム成分に対して相溶しないポリマーという意味ではなく、上記ジエン系ゴム(A)と微粒子(B)のコア部分に含まれる各々の具体的な成分が、分子構造、極性、SP値(溶解度パラメータ)等の化学的特性が異なることで反発し、互いに相溶しない方向に働く成分であることを意味する。
「上記ジエン系ゴム(A)と相溶するジエン系ポリマー」とは、上記ジエン系ゴム(A)に包含される全てのゴム成分に対して相溶するポリマーという意味ではなく、上記ジエン系ゴム(A)と微粒子(B)のシェル部分に含まれる各々の具体的な成分が、分子構造、極性、SP値(溶解度パラメータ)等の化学的特性が近似であるため、互いに相溶する方向に働く成分であることを意味する。
【0017】
微粒子(B)は、上記非ジエン系ポリマーを50質量%より多く含有するコア部分と、上記ジエン系ポリマーを50質量%より多く含有するシェル部分と、から構成されたコアシェル構造である。
コアシェル構造とは、コアである粒子の表面の少なくとも一部がシェルで被覆された構造のことをいう。
コア部分に含まれる非ジエン系ポリマーは、50質量%よりも多く100質量%以下であるが、70〜100質量%以下が好ましく、90〜100質量%以上であることがより好ましく、95〜100質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
シェル部分に含まれるジエン系ポリマーは、50質量%よりも多く100質量%以下であるが、70〜100質量%以下が好ましく、90〜100質量%以上であることがより好ましく、95〜100質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0018】
非ジエン系ポリマーとしては、上記ジエン系ゴム(A)と相溶しない架橋性オリゴマーまたはポリマー(b1)が有する架橋性官能基の少なくとも一部を反応させて得られたポリマーであることが好ましい。この場合には、非ジエン系ポリマーは、架橋性オリゴマーまたはポリマー(b1)に由来するポリマーということができる。
なお、上記ジエン系ゴム(A)と相溶しない架橋性オリゴマーまたはポリマー(b1)の詳細については後述する。
非ジエン系ポリマーとしては、例えば、ウレタン系ポリマー、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、オレフィン系ポリマー、エポキシ樹脂などが挙げられ、微粒子(B)の強靭性をより向上できるという観点から、ウレタン系ポリマーが好ましく、ポリエーテル骨格またはポリカーボネート骨格を有するウレタンポリマーがより好ましく、ポリカーボネート骨格を有するウレタンポリマーが特に好ましい。
【0019】
ジエン系ポリマーとしては、上記ジエン系ゴム(A)と相溶する架橋性オリゴマーまたはポリマー(b2)が有する架橋性官能基の少なくとも一部を反応させて得られたポリマーであることが好ましい。この場合には、ジエン系ポリマーは、架橋性オリゴマーまたはポリマー(b2)に由来するポリマーということができる。
なお、上記ジエン系ゴム(A)と相溶する架橋性オリゴマーまたはポリマー(b2)の詳細については後述する。
ジエン系ポリマーとしては、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエンなどが挙げられる。
【0020】
微粒子(B)は、コア部分に含まれる非ジエン系ポリマーと、シェル部分に含まれるジエン系ポリマーと、が化学結合によって結合している。これにより、シェル部分に含まれるジエン系ポリマーがジエン系ゴム(A)に溶解してしまうことを抑制できるため、ゴム組成物中における微粒子(B)の分散性が優れたものとなる。
コア部分に含まれる非ジエン系ポリマーと、シェル部分に含まれるジエン系ポリマーと、が化学結合したコアシェル構造を有する微粒子(B)を製造する方法としては、特に限定されるものではないが、後述するタイヤ用ゴム組成物の製造方法の項に記載の方法が好適である。
【0021】
微粒子(B)の平均粒子径は、0.001〜100μmであり、0.005〜80μmであるのが好ましく、0.01〜50μmであるのがより好ましい。
ここで、微粒子(B)の「平均粒子径」とは、タイヤ用ゴム組成物の加硫試験体の断面を電子顕微鏡(倍率:500〜2000倍程度)にて画像解析し、観察された弾性微粒子(B)の粒子の最大長を任意の10個以上の粒子で測定し、平均化した値をいう。
【0022】
コア部分を構成する粒子の平均粒子径は、微粒子(B)の平均粒子径とほぼ同様であり、平均粒子径が0.001〜100μmであるのが好ましく、0.005〜80μmであるのがより好ましく、0.01〜50μmであるのがさらに好ましい。コア部分を構成する粒子の平均粒子径の測定方法は、微粒子(B)と同様である。
【0023】
上記コア部分に含まれる上記非ジエン系ポリマーを硬化させて硬化物を得た場合における上記硬化物のJIS A硬度が45以上を示し、かつ、伸びが200%以上を示すことが好ましい。これにより、微粒子(B)の強靭性がより向上する傾向にある。
上記硬化物のJIS A硬度は、45以上を示すことが好ましく、48〜90を示すことがより好ましく、50〜80を示すことがさらに好ましい。
上記硬化物の伸びは、200%以上を示すことが好ましく、250〜800%を示すことがより好ましく、300〜800%を示すことがさらに好ましい。
ここで、「上記コア部分に含まれる上記非ジエン系ポリマーを硬化させて硬化物を得た場合における上記硬化物のJIS A硬度が45以上を示し、かつ、伸びが200%以上を示す」とは、本発明のゴム組成物に含まれる微粒子(B)のコア部分に関する規定ではあるが、微粒子(B)のコア部分そのものの硬度や伸びを測定することは困難であるため、微粒子(B)のコア部分を構成する成分と同様の成分からなる(バルク状態の)硬化物の硬度および伸びについて規定したものである。
また、「JIS A硬度」とは、JIS K6253−3:2012に規定されるデュロメータ硬さであって、タイプAのデュロメータにより温度25℃において測定した硬さをいう。
また、「伸び」とは、硬化物からJIS3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251:2010に準拠して行い、温度25℃において測定した切断時伸び(E
B)[%]をいう。
【0024】
コア部分は、2以上の層から構成される複層構造であってもよい。
【0025】
微粒子(B)の含有量は、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して1〜30質量部であり、10〜30質量部であるのが好ましく、20〜30質量部であるのがより好ましい。微粒子(B)の含有量が上記範囲内にあることで、低発熱性および耐摩耗性が良好となる。一方、微粒子(B)の含有量が1質量部未満であると、低発熱性および耐摩耗性の少なくとも一方が不十分となる。また、微粒子(B)の含有量が30質量部を超えると、耐摩耗性が不十分となる。
また、上記微粒子(B)の含有量は、タイヤ用ゴム組成物の全質量に対して1〜50質量%であるのが好ましく、1〜40質量%であるのがより好ましく、5〜30質量%であるのがより好ましい。
【0026】
〔カーボンブラックおよび/または白色充填剤(C)〕
本発明のゴム組成物は、カーボンブラックおよび/または白色充填剤(C)を含有しているのが好ましい。
【0027】
<カーボンブラック>
上記カーボンブラックとしては、具体的には、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPE、SRF等のファーネスカーボンブラックが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記カーボンブラックは、ゴム組成物の混合時の加工性や空気入りタイヤの補強性等の観点から、窒素吸着比表面積(N
2SA)が10〜300m
2/gであるのが好ましく、20〜200m
2/gであるのがより好ましい。
ここで、N
2SAは、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K 6217−2:2001「第2部:比表面積の求め方−窒素吸着法−単点法」にしたがって測定した値である。
【0028】
<白色充填剤>
上記白色充填剤としては、具体的には、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化チタン、硫酸カルシウム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、補強性の観点から、シリカが好ましい。
【0029】
シリカとしては、具体的には、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらのうち、転がり抵抗、グリップ性能、耐摩耗性等のバランスという観点から、湿式シリカが好ましい。
【0030】
上記シリカは、混練性の観点から、CTAB吸着比表面積が50〜300m
2/gであるのが好ましい。
ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面への臭化n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの吸着量をJIS K6217−3:2001「第3部:比表面積の求め方−CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0031】
本発明においては、上記カーボンブラックおよび/または白色充填剤(C)を含有する場合の含有量は、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して20〜100質量部であるのが好ましく、30〜70質量部であるのがより好ましい。
また、上記カーボンブラックおよび/または白色充填剤(C)を含有する場合、上記微粒子(B)との合計の含有量が、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して20〜130質量部であるのが好ましく、30〜90質量部であるのがより好ましい。
ここで、カーボンブラックおよび/または白色充填剤(C)の含有量とは、カーボンブラックのみを含有する場合はカーボンブラックの含有量のことをいい、白色充填剤のみを含有する場合は白色充填剤の含有量のことをいい、カーボンブラックおよび白色充填剤を含有する場合はこれらの合計の含有量をいう。
【0032】
〔シランカップリング剤〕
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述した白色充填剤(特に、シリカ)を含有する場合、タイヤの補強性能を向上させる理由から、シランカップリング剤を含有するのが好ましい。
上記シランカップリング剤を配合する場合の含有量は、上記白色充填剤100質量部に対して、0.1〜20質量部であるのが好ましく、4〜12質量部であるのがより好ましい。
【0033】
上記シランカップリング剤としては、具体的には、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2−トリエトキシシリルエチル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3−ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
これらのうち、補強性改善効果の観点から、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドおよび/またはビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用することが好ましく、具体的には、例えば、Si69[ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド;エボニック・デグッサ社製]、Si75[ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド;エボニック・デグッサ社製]等が挙げられる。
【0035】
〔その他の成分〕
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述した成分以外に、炭酸カルシウムなどのフィラー;ジニトロソペンタメチレンテトラアミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、ジニトロソペンタスチレンテトラミン、オキシビスベンゼンスルフォニルヒドラジド(OBSH)、ベンゼンスルフォニルヒドラジド誘導体、二酸化炭素を発生する重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、重炭酸ナトリウム、窒素を発生するトルエンスルホニルヒドラジド、P−トルエンスルホニルセミカルバジド、ニトロソスルホニルアゾ化合物、N,N′−ジメチル−N,N′−ジニトロソフタルアミド、P,P′−オキシービス(ベンゼンスルホニルセミカルバジド)などの化学発泡剤;硫黄等の加硫剤;スルフェンアミド系、グアニジン系、チアゾール系、チオウレア系、チウラム系などの加硫促進剤;酸化亜鉛、ステアリン酸などの加硫促進助剤;ワックス;アロマオイル;老化防止剤;可塑剤;等のタイヤ用ゴム組成物に一般的に用いられている各種のその他添加剤を配合することができる。
これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。例えば、ジエン系ゴム(A)100質量部に対して、硫黄は0.5〜5質量部、加硫促進剤は0.1〜5質量部、加硫促進助剤は0.1〜10質量部、老化防止剤は0.5〜5質量部、ワックスは1〜10質量部、アロマオイルは5〜30質量部、それぞれ配合してもよい。
【0036】
[タイヤ用ゴム組成物の製造方法]
本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法(以下、単に「ゴム組成物の製造方法」ともいう。)は、ジエン系ゴム(A)の準備工程と、コアシェル構造の微粒子(B)を得る工程と、ゴム組成物を得る工程と、を有する。
以下、本発明のゴム組成物の製造方法について、工程毎に詳細に説明する。
【0037】
〔ジエン系ゴム(A)の準備工程〕
ジエン系ゴム(A)を準備する工程は、天然ゴムを60〜100質量%含むジエン系ゴム(A)を準備する工程である。本工程で準備するジエン系ゴム(A)は、上述した「タイヤ用ゴム組成物」の項で説明したジエン系ゴム(A)と同様であるので、その説明を省略する。
【0038】
〔コアシェル構造の微粒子(B)を得る工程〕
コアシェル構造の微粒子(B)を得る工程は、上記ジエン系ゴム(A)と相溶しない架橋性オリゴマーまたはポリマー(b1)を水および有機溶媒の少なくとも一方を含む分散媒中で架橋してコア部分を形成した後に、上記ジエン系ゴム(A)と相溶する架橋性オリゴマーまたはポリマー(b2)を反応させて上記コア部分の表面にシェル部分を形成して、コアシェル構造の微粒子(B)を得る工程である。
これにより得られる上記微粒子(B)は、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(b1)に由来する非ジエン系ポリマーと、上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(b2)に由来するジエン系ポリマーと、を含み、上記非ジエン系ポリマーを50質量%より多く含有する上記コア部分と、上記ジエン系ポリマーを50質量%より多く含有する上記シェル部分と、から構成されており、上記コア部分に含まれる上記非ジエン系ポリマーと、上記シェル部分に含まれる上記ジエン系ポリマーと、が化学結合によって結合している。本工程により得られる微粒子(B)は、上述した「タイヤ用ゴム組成物」の項で説明した微粒子(B)と同様であるので、その説明を省略する。
【0039】
「上記ジエン系ゴム(A)と相溶しない架橋性オリゴマーまたはポリマー(b1)」とは、上記ジエン系ゴム(A)に包含される全てのゴム成分に対して相溶しないオリゴマーまたはポリマーという意味ではなく、上記ジエン系ゴム(A)と微粒子(B)のコア部分に用いる各々の具体的な成分が、分子構造、極性、SP値(溶解度パラメータ)等の化学的特性が異なることで反発し、互いに相溶しない方向に働く成分であることを意味する。
また、「上記ジエン系ゴム(A)と相溶する架橋性オリゴマーまたはポリマー(b2)」とは、上記ジエン系ゴム(A)に包含される全てのゴム成分に対して相溶するオリゴマーまたはポリマー成分という意味ではなく、上記ジエン系ゴム(A)と微粒子(B)のシェル部分に用いる各々の具体的な成分が、分子構造、極性、SP値(溶解度パラメータ)等の化学的特性が近似であるため、互いに相溶する方向に働く成分であることを意味する。
【0040】
<コア部分の製造方法>
微粒子(B)のコア部分は、架橋性オリゴマーまたはポリマー(b1)を水および有機溶媒の少なくとも一方を含む分散媒中で架橋することにより得られる。架橋性オリゴマーまたはポリマー(b1)は、架橋性を有するオリゴマーまたはポリマーであれば特に限定されない。
【0041】
上記架橋性オリゴマーまたはポリマー(b1)としては、例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリカーボネート系、飽和炭化水素系、アクリル系もしくはシロキサン系の重合体または共重合体等が挙げられる。
これらのうち、例えば、強靭なウレタンゴムを作製できる観点から、ポリエーテル系もしくはポリカーボネート系の共重合体であるのが好ましく、ポリカーボネート系の共重合体であるのがより好ましい。
【0042】
上記ポリカーボネート系の共重合体としては、例えば、ジアルキルカーボネートとポリオール化合物(例えば、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール等)とのエステル交換反応により得られるもの;ポリカーボネートジオールとジイソシアネート化合物(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等)との縮合反応により得られるもの(以下、「ポリカーボネートウレタンプレポリマー」とも略す。);等が挙げられる。
【0043】
架橋性オリゴマーまたはポリマー(b1)は、架橋性官能基を有するオリゴマーまたはポリマーであることが好ましい。架橋性官能基としては、例えば、水酸基、加水分解性シリル基、シラノール基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、カルボキシ基、酸無水物基、エポキシ基等が挙げられる。
これらのうち、作製される空気入りタイヤの耐摩耗性がより良好となる理由から、イソシアネート基、加水分解性シリル基または酸無水物基を有しているのが好ましい。
なお、本明細書においては、「(メタ)アクリロイルオキシ基」とは、アクリロイルオキシ基(CH
2=CHCOO−)またはメタクリロイルオキシ基(CH
2=C(CH
3)COO−)を意味するものとする。
【0044】
上記コア部分の製造は、比較的均一の形態を形成しやすい理由から、上述した架橋性オリゴマーまたはポリマー(b1)を、水および有機溶媒(例えば、MEK、MIBK、ブチルセロソルブ、シクロヘキサノンなど)の少なくとも一方を含む分散媒中で架橋して微粒子化することにより行われる。
また、上記コア部分の製造において、上記分散媒で微粒子化する際に、界面活性剤、乳化剤、分散剤、シランカップリング剤等の添加剤を用いることが好ましい。
なお、コア部分となる微粒子は、上記分散媒を除去して一旦粉末化することで得られた微粒子であってもよい。
得られたコア部分となる微粒子は、後述する架橋性オリゴマーまたはポリマー(b2)と反応させる必要があるため、架橋性を有する。具体的には、コア部分となる微粒子は、架橋性オリゴマーまたはポリマー(b1)に由来する架橋性官能基の一部、すなわち未反応の架橋性官能基を有していることが好ましい。
【0045】
コア部分は、2以上の層から構成される複層構造として製造されてもよい。
【0046】
<シェル部分の製造方法>
シェル部分は、上記ジエン系ゴム(A)と相溶する架橋性オリゴマーまたはポリマー(b2)を反応させることで、上記コア部分の表面に形成される。このようにして、コア部分の少なくとも一部がシェル部分で覆われたコアシェル構造の微粒子(B)が得られる。
【0047】
架橋性オリゴマーまたはポリマー(b2)としては、例えば、ジエン系ポリマーが挙げられる。
ジエン系ポリマーとしては、例えば、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体などの液状ジエン系ポリマー、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン等が挙げられる。
ここで、シェル部分と上述したコア部分とが化学結合したコアシェル構造の微粒子(B)を得るために、架橋性オリゴマーまたはポリマー(b2)は、架橋性であることが必要であり、具体的には架橋性官能基を有することが好ましい。
このような架橋性官能基としては、例えば、水酸基、加水分解性シリル基、シラノール基、イソシアネート基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、カルボキシ基、酸無水物基、エポキシ基等が挙げられる。
【0048】
架橋性オリゴマーまたはポリマー(b2)は、市販品を用いることができ、液状ポリイソプレンの市販品としては、例えば、水酸基を有するPoly ip(出光興産社製)等が挙げられる。
また、液状ポリブタジエンとしては、水酸基を有するPoly bd(出光興産社製)などの1,2−結合型ブタジエンと1,4−結合型ブタジエンとのコポリマータイプ等が挙げられる。
【0049】
コアシェル構造を有する微粒子(B)は、上述したようにコア部分とシェル部分とが化学的に結合している。
このように化学結合により結合させる方法としては、例えば次の方法が挙げられる。
まず、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリカーボネートジオール、水酸基含有ポリイソプレン、水酸基含有ポリブタジエン等の水酸基含有オリゴマーに、ジイソシアネート化合物を付加させてイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを合成した後に、このウレタンプレポリマーを水中でトリメチロールプロパンと反応させることによりウレタン結合で架橋させたコア部分となる微粒子を形成する。このようにして得られたコア部分となる微粒子は、未反応の架橋性官能基としてイソシアネート基を有する。
次いで、コア部分となる微粒子のイソシアネート基と、コア部分を被覆する材料である水酸基含有ポリイソプレンの水酸基と、を反応させることで、コア部分とシェル部分とをウレタン結合により結合させる。このようにして、コアシェル構造の微粒子(B)が得られる。
【0050】
〔ゴム組成物を得る工程〕
ゴム組成物を得る工程は、上記ジエン系ゴム(A)と、上記微粒子(B)と、を混合して、タイヤ用ゴム組成物を得る工程である。
微粒子(B)の配合量は、上記ジエン系ゴム(A)100質量部に対して1〜30質量部であるのが好ましく、10〜30質量部であるのがより好ましく、20〜30質量部であるのがさらに好ましい。微粒子(B)の配合量が上記範囲内にあることで、低発熱性および耐摩耗性が良好となる。
また、上記微粒子(B)の配合量は、タイヤ用ゴム組成物の全質量に対して1〜50質量%であるのが好ましく、1〜40質量%であるのがより好ましく、5〜30質量%であるのがより好ましい。
【0051】
ゴム組成物を得る工程では、上述したジエン系ゴム(A)および微粒子(B)の他に、例えば、上述したカーボンブラック、白色充填剤、およびその他の成分を添加して、混合してもよい。
【0052】
各成分を混合する方法としては、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等)を用いて、混練する方法等が挙げられる。
また、得られたゴム組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【0053】
[空気入りタイヤ]
本発明の空気入りタイヤは、上述した本発明のタイヤ用ゴム組成物を、タイヤトレッドに用いた空気入りタイヤである。
図1に、本発明の空気入りタイヤの実施態様の一例を表すタイヤの模式的な部分断面図を示すが、本発明のタイヤは
図1に示す態様に限定されるものではない。
【0054】
図1において、符号1はビード部を表し、符号2はサイドウォール部を表し、符号3は本発明のタイヤ用ゴム組成物から構成されるトレッド部を表す。
また、左右一対のビード部1間においては、繊維コードが埋設されたカーカス層4が装架されており、このカーカス層4の端部はビードコア5およびビードフィラー6の廻りにタイヤ内側から外側に折り返されて巻き上げられている。
また、タイヤトレッド3においては、カーカス層4の外側に、ベルト層7がタイヤ1周に亘って配置されている。
また、ビード部1においては、リムに接する部分にリムクッション8が配置されている。
【0055】
本発明の空気入りタイヤは、低発熱性および耐摩耗性に優れるため、特に重荷重タイヤに好適である。
【0056】
本発明の空気入りタイヤは、例えば従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常のまたは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を用いて、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0058】
[実施例1〜10のゴム組成物]
<微粒子1の製造>
ポリカーボネートジオール(T6001、旭化成製)200gと、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(ミリオネートMT、日本ポリウレタン工業製)100gとを、80℃で5時間反応させ、末端イソシアネートポリカーボネートウレタンプレポリマー(反応物1)を得た。
次いで、得られたウレタンプレポリマー(反応物1)44gに、メチルイソブチルケトン(MIBK)3.5g、ジメチロールブタン酸(DMBA)2.0g、および、トリエチルアミン(TEA)1.5gを混合し、10分間撹拌した。
次いで、水77gとソルビタン酸系界面活性剤(TW−0320V、花王製)4.0gとジブチルチンジラウレート(DBTL)0.06gとを投入し、ディゾルバー付き撹拌装置で、ディゾルバー回転数1000rpmで10分間撹拌した。その後、70℃まで徐々に昇温し、1時間撹拌を続け、乳白色エマルジョン溶液を得た。
次に、得られた乳白色エマルジョン溶液に、先のウレタンプレポリマー(反応物1)44gと、水酸基含有液状ポリイソプレン(Poly ip、出光興産株式会社製)40gと、メチルイソブチルケトン(MIBK)37gとを投入し、回転数1000rpmで10分間撹拌した。
次いで、水77gとソルビタン酸系界面活性剤(TW−0320V、花王製)4.0gとをさらに投入し、ディゾルバー付き撹拌装置で、ディゾルバー回転数1000rpmで10分間撹拌した。その後、70℃まで徐々に昇温し、30分間撹拌を続け、乳白色エマルジョン溶液を得た。
この溶液をガラスプレート上に塗布し、水を蒸発させてレーザー顕微鏡で観察すると、コア部分とシェル部分が観察されるコアシェル構造を有する、平均粒子径が5μmの球状微粒子が生成していることが確認された。
この溶液を撹拌しながら80℃まで昇温して水分を蒸発させ、白色の粉末を得た。これを微粒子1とする。
【0059】
また、微粒子1のコア部分の硬度(JIS A硬度)および伸び(切断時伸び)を測定したところ、硬度は51であり、伸びは315%であった。
なお、微粒子1のコア部分の硬度および伸びの測定は、以下のようにして作製した粉末をバルクにしたものを用いて行った。
まず、ポリカーボネートジオール(T6001、旭化成製)200gと、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(ミリオネートMT、日本ポリウレタン工業製)100gとを、80℃で5時間反応させ、末端イソシアネートポリカーボネートウレタンプレポリマー(反応物1)を得た。
次いで、得られたウレタンプレポリマー(反応物1)44gに、メチルイソブチルケトン(MIBK)3.5g、ジメチロールブタン酸(DMBA)2.0g、および、トリエチルアミン(TEA)1.5gを混合し、10分間撹拌した。
次いで、水77gとソルビタン酸系界面活性剤(TW−0320V、花王製)4.0gとジブチルチンジラウレート(DBTL)0.06gとを投入し、ディゾルバー付き撹拌装置で、ディゾルバー回転数1000rpmで10分間撹拌した。その後、70℃まで徐々に昇温し、1時間撹拌を続け、乳白色エマルジョン溶液を得た。
このようにして得られた乳白色エマルジョン溶液を撹拌しながら80℃まで昇温して水分を蒸発させ、粉末を得た。
【0060】
<実施例1〜10のゴム組成物の製造>
下記第1表に示す成分を、下記第1表に示す割合(質量部)で配合した。
具体的には、まず、下記第1表に示す成分のうち硫黄および加硫促進剤を除く成分を、1.7リットルの密閉型ミキサーで5分間混練(混合)し、150℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。
次に、得られたマスターバッチに硫黄および加硫促進剤をオープンロールで混練し、実施例1〜10の各ゴム組成物を得た。
【0061】
[比較例1〜8のゴム組成物]
下記第1表に示す成分を、下記第1表に示す割合(質量部)で配合した以外は、実施例1〜10と同様にして、比較例1〜8の各ゴム組成物を得た。
【0062】
[比較例9のゴム組成物]
<比較微粒子1の製造>
水酸基末端液状ポリイソプレン(Poly ip、重量平均分子量2500、水酸基価46.6、出光興産社製)120gと、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(A−1310、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)24.7gとを80℃で8時間撹拌し、加水分解性シリル基末端ポリイソプレンを得た。
また、液状ポリイソプレン(クラプレンLIR−50、重量平均分子量54,000、クラレ社製)56gと、プロセスオイル(PS−32、出光興産社製)24gとを50℃で1時間撹拌した。その後、ポリカーボネートジオール(デュラノールT5652、重量平均分子量2,000、水酸基価56、旭化成ケミカルズ社製)25.94gと、XDI(タケネート500、三井化学社製)3.7gと、グリセリン0.4gとを添加し、80℃で8時間撹拌した。室温まで冷却後、これに先に合成した加水分解性シリル基末端ポリイソプレン90gを添加して30分間撹拌した後に真空脱泡し、白濁したペースト状生成物を調製した。
このペースト状生成物をレーザー顕微鏡で観測すると、平均粒子径10〜30μmの微粒子(骨格:ポリカーボネート,架橋:ウレタン結合)が生成し、液状ポリイソプレンおよび加水分解性シリル基末端ポリイソプレン中に分散していることが確認できた。なお、このペースト状生成物中の微粒子の含有量(質量%)は、計算上15質量%であった。
【0063】
<比較例9のゴム組成物の製造>
下記第1表に示す成分を、下記第1表に示す割合(質量部)で配合した以外は、実施例1〜10と同様にして、比較例9のゴム組成物を得た。なお、第1表に示す比較微粒子1の配合量は、固形分換算値である。
【0064】
[評価試験]
<低発熱性(tanδ(60℃))>
得られた各ゴム組成物(未加硫)を、金型(15cm×15cm×0.2cm)中、148℃で30分間プレス加硫して、加硫ゴムシートを作製した。
次いで、得られた各加硫ゴムシートについて、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所社製)により、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hz、温度60℃の条件で、損失正接(tanδ(60℃))を測定した。
結果を第1表に示す。結果は、比較例1のtanδ(60℃)を100とする指数で表した。指数が小さいほどtanδ(60℃)が大きく、タイヤにしたときに低発熱性に優れる。
【0065】
<耐摩耗性>
上述のとおり作製した加硫ゴムシートについて、JIS K6264−1、2:2005に準拠し、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所製)を用いて、温度20℃、スリップ率50%の条件で摩耗減量を測定した。
結果を第1表に示す。結果は、比較例1の摩耗量を100として、次式により指数化したものを表した。指数が大きいほど摩耗量が小さく、タイヤにしたときに耐摩耗性に優れる。
耐摩耗性=(比較例1の摩耗量/試料の摩耗量)×100
【0066】
<強靭性>
(破断伸び)
作製した加硫ゴムシートについて、JIS K6251:2010に準拠し、JIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を打ち抜き、20℃、引張り速度500mm/分の条件で、破断伸び(EB)を測定した。
測定結果は、比較例1の値を100とする指数で表した。指数が大きいほど破断伸びが大きいことを意味する。
【0067】
(破断強度)
作製した加硫ゴムシートについて、JISK6251:2010に準拠し、JIS3号ダンベル型試験片(厚さ2mm)を打ち抜き、温度100℃、引張り速度500mm/分の条件で、破断強度(破断時の応力)を測定した。
測定結果は、比較例1の値を100とする指数で表した。指数が大きいほど破断強度が大きいことを意味する。
【0068】
<評価結果>
以上の評価試験の結果を以下の第1表に示す。
【表1】
【0069】
上記第1表中の各成分は、以下のものを使用した。
・NR:STR(日本ゼオン社製)
・BR:NIPOL BR1220(日本ゼオン社製)
・シリカ:Zeosil 1165MP(CTAB吸着比表面積:152m
2/g、ローディア社製)
・カーボンブラック:シースト9M(窒素吸着比表面積:142m
2/g、東海カーボン社製)
・微粒子1:上記のとおり製造したもの
・比較微粒子1:上記のとおり製造したもの
・シランカップリング剤1:ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(Si69、エボニックデグサ社製)
・亜鉛華:酸化亜鉛3種(正同化学工業社製)
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸YR(日油社製)
・老化防止剤:アミン系老化防止剤(サントフレックス 6PPD、フレクシス社製)
・硫黄:金華印油入微粉硫黄(鶴見化学工業社製)
・加硫促進剤1:加硫促進剤CBS(ノクセラーCZ−G、大内新興化学工業社製)
・加硫促進剤2:加硫促進剤DPG(ノクセラーD、大内新興化学工業社製)
【0070】
第1表に示す結果から、微粒子1を配合せず、シリカを配合した比較例2のゴム組成物は、微粒子1を配合せず、カーボンブラックを配合した比較例1のゴム組成物と比較して、低発熱性は改善されたが、耐摩耗性が劣ることが分かった(比較例2)。
また、シリカ配合し、微粒子1の含有量が1〜30質量部の範囲外である場合は、比較例1のゴム組成物と比較して、低発熱性は改善されたが、耐摩耗性が劣ることが分かった(比較例3および4)。
シリカおよび微粒子1を配合し、ジエン系ゴムにおける天然ゴムの含有量が50質量%である場合には、比較例1のゴム組成物と比較して、低発熱性は改善されたが、耐摩耗性が劣ることが分かった(比較例5)。
カーボンブラックを配合し、微粒子1の含有量が1質量部未満である場合は、比較例1のゴム組成物と同等の性能であることが分かった(比較例6)。
カーボンブラックを配合し、微粒子1の含有量が30質量部よりも多い場合には、比較例1のゴム組成物と比較して、低発熱性は改善されたが、耐摩耗性が劣ることが分かった(比較例7)。
カーボンブラックおよび微粒子1を配合し、ジエン系ゴムにおける天然ゴムの含有量が50質量%である場合には、低発熱性は改善されたが、耐摩耗性が劣ることが分かった(比較例8)。
また、微粒子1に代えて比較微粒子1を用いた場合には、破断強度および破断伸びが低下することが分かった(比較例9)。これは、比較微粒子1のシェル部分がゴム組成物中のジエン系ゴム中に溶け出してしまい、コア部分の粒子同士が凝集したことによるものと考えられる。また、比較例9のゴム組成物は、比較例1のゴム組成物と比較して、低発熱性および耐摩耗性が劣ることが示された。
【0071】
これに対し、天然ゴムの含有量が60〜100質量%となるジエン系ゴムを用い、微粒子1を所定量配合した場合には、低発熱性および耐摩耗性がいずれも良好となることが分かった(実施例1〜10)。