特許第6705172号(P6705172)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6705172炭素繊維不織布、炭素繊維不織布の製造方法および固体高分子形燃料電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705172
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】炭素繊維不織布、炭素繊維不織布の製造方法および固体高分子形燃料電池
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/256 20060101AFI20200525BHJP
   D04H 1/4242 20120101ALI20200525BHJP
   H01M 4/96 20060101ALI20200525BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20200525BHJP
   H01M 8/02 20160101ALI20200525BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20200525BHJP
   D06M 101/40 20060101ALN20200525BHJP
【FI】
   D06M15/256
   D04H1/4242
   H01M4/96 M
   H01M4/96 H
   H01M8/10
   H01M8/02
   H01M4/88 C
   D06M101:40
【請求項の数】8
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-558260(P2015-558260)
(86)(22)【出願日】2015年11月20日
(86)【国際出願番号】JP2015082730
(87)【国際公開番号】WO2016093041
(87)【国際公開日】20160616
【審査請求日】2018年10月30日
(31)【優先権主張番号】特願2014-249550(P2014-249550)
(32)【優先日】2014年12月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】梶原 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】下山 悟
(72)【発明者】
【氏名】堀之内 綾信
(72)【発明者】
【氏名】堀口 智之
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/099720(WO,A1)
【文献】 特開2003−017076(JP,A)
【文献】 国際公開第91/006131(WO,A1)
【文献】 特開2006−331786(JP,A)
【文献】 特開2004−311276(JP,A)
【文献】 特開2014−135270(JP,A)
【文献】 特許第5621949(JP,B2)
【文献】 国際公開第2011/045889(WO,A1)
【文献】 国際公開第02/037586(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/012649(WO,A1)
【文献】 特開2009−059626(JP,A)
【文献】 特開2012−069260(JP,A)
【文献】 特開2004−327358(JP,A)
【文献】 特開2012−234791(JP,A)
【文献】 特開平08−287923(JP,A)
【文献】 特開2002−141071(JP,A)
【文献】 特開2002−203571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/4242
D06M 15/256
D06M 101/40
H01M 4/88
H01M 4/96
H01M 8/02
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方の面に畝を有し、該畝の形成ピッチが500μm未満であって、かつ撥水剤が付与されてなり、前記撥水剤が前記畝に局在している炭素繊維不織布。
【請求項2】
畝面積比が0.1〜0.9である、請求項1に記載の炭素繊維不織布。
【請求項3】
畝形成面の水滴接触角が100度以上である、請求項1または2に記載の炭素繊維不織布。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載の炭素繊維不織布からなるガス拡散電極と、平行溝型の流路が形成されたセパレーターとを備える固体高分子形燃料電池であって、前記ガス拡散電極の畝形成面が前記セパレーターの流路形成面と接するよう配置された固体高分子形燃料電池。
【請求項5】
前記セパレーターは、前記流路の延在方向が前記ガス拡散電極の畝の延在方向と略平行となるようにガス拡散電極と積層されている、請求項に記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項6】
前記セパレーターは、前記流路の延在方向が前記ガス拡散電極の畝の延在方向と交差するようにガス拡散電極と積層されている、請求項に記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項7】
前記セパレーターの流路の壁面の水滴接触角が100度未満である、請求項4〜6のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
【請求項8】
前記ガス拡散電極の引張強度が、前記セパレーターの流路の延在方向よりも、前記セパレーターの流路の延在方向と直交する方向で大きい、請求項4〜7のいずれかに記載の固体高分子形燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素繊維不織布および炭素繊維不織布をガス拡散電極として用いた固体高分子形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料と酸化剤を反応させることで発電する燃料電池システムのうち、特に固体高分子形燃料電池は100℃程度の比較的低温で発電可能であり、かつ出力密度が高いことから、電動モーターで走行する自動車の電源や、家庭用のコジェネレーションシステムなどで使用されている。
【0003】
通常、固体高分子形燃料電池は水素を含む燃料ガスと酸素を含む酸化剤ガスが電解質膜で分けられており、燃料ガスが供給される側をアノード側、酸化剤ガスが供給される側をカソード側と称する。アノード側のセパレーターの溝に供給された燃料ガスは、セパレーターと接するガス拡散電極内に拡散し、ガス拡散電極のもう一方の面(セパレーターと接する側と反対の面)に配されたアノード触媒層で電子とプロトンに分離される。電子は触媒層のカーボン粒子やガス拡散電極を構成する炭素繊維を介して燃料電池の外部の負荷(装置)と接続されていることで直流電流を取り出せる。この電子は、カソードのガス拡散電極を通して、アノード触媒層で生じたプロトンは、電解質膜を介してカソード触媒層に移動する。また、カソード側のセパレーターの溝には酸素を含む酸化剤ガスが供給され、セパレーターと接するガス拡散電極内に拡散し、ガス拡散電極のもう一方の面に配されたカソード触媒層でプロトン、電子とともに水を生成する。生じた水は、触媒層からガス拡散電極を介してカソード側のセパレーターの溝へ移動し、セパレーターの溝内を通って燃料電池外へ排出される。
【0004】
セパレーターの溝に接するガス拡散電極は、燃料ガスや酸化剤ガスが拡散し易い構造であることが求められていることから、一般に多孔質材料が用いられている。そして、その多孔質材料にさらに溝等の流路を設けることで、セパレーターの溝の機能を補助する技術が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、ガス拡散電極表面に溝や貫通する孔を形成させ、電気触媒層で生成した水の輸送、または、そこに向かう酸化剤の輸送を制御する技術が開示されている。さらに、溝の深さおよび幅を調整することも記載されている。これにより、溝や貫通孔を通じてガス拡散電極の厚み方向の物質輸送を向上することができる。
【0006】
また、特許文献2においても、セパレーターの溝だけではガスの拡散、通過性が不十分であることから、ガス拡散電極の溝をセパレーターの溝側に形成する技術が開示されている。
【0007】
特許文献3には、触媒層で生じた水をセパレーターの溝へ排出しやすくするため、ガス拡散電極にセパレーターの溝と平行な向きにスリットを設ける技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平11−511289号公報
【特許文献2】特開2003−17076号公報
【特許文献3】特開2009−140810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように、セパレーターの溝に加え、ガス拡散電極にも当該セパレーターの溝と対応する溝を形成することにより、水の排水性およびガスの拡散性を向上させることができる。しかし、本発明者らの検討によると、特に湿度が高い発電条件においては、水がガス拡散電極に形成された溝に滞留することで水の排出性が抑制され、その結果ガス拡散性がかえって低下するという問題が生じることがわかった。
【0010】
本発明は、特に湿度が高い発電条件においても良好な水の排出性を有し、高いガス拡散性を保つことができる、ガス拡散電極として適した炭素繊維不織布を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を達成するための本発明は、少なくとも一方の面に畝を有し、該畝の形成ピッチが500μm未満であって、かつ撥水剤が付与されてなる炭素繊維不織布である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の炭素繊維不織布をガス拡散電極として用いることにより、排水性に優れ、発電性能も良好な燃料電池を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る燃料電池のセル構成を模式的に示す断面図である。
図2】畝の形成状態を説明するための、本発明の炭素繊維不織布の一実施形態の断面図である。
図3A】セパレーターのカラム型の流路形状を示す模式図である。
図3B】セパレーターのパラレル型の流路形状を示す模式図である。
図3C】セパレーターのマルチパラレル型の流路形状を示す模式図である。
図3D】セパレーターのサーペンタイン型の流路形状を示す模式図である。
図3E】セパレーターのインターディジテート型の流路形状を示す模式図である。
図4】本発明の炭素繊維不織布の一態様の平面視写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔炭素繊維不織布〕
本発明において、炭素繊維不織布とは、炭素繊維により構成されたウエブまたはシートである。炭素繊維とは、炭素繊維前駆体繊維を不活性ガス雰囲気で加熱して炭化したものであり、炭素繊維不織布は、炭素繊維前駆体繊維不織布を不活性ガス雰囲気下で加熱して炭化させたものである。なお、炭素繊維前駆体繊維については後述する。ウエブとしては、乾式のパラレルレイドウエブまたはクロスレイドウエブ、エアレイドウエブ、湿式の抄造ウエブ、押出法のスパンボンドウエブ、メルトブローウエブ、エレクトロスピニングウエブ等を用いることができる。また、シートとしては、これらのウエブを機械的に交絡させたシート、加熱して融着させたシート、バインダーで接着させたシート等を用いることができる。
【0015】
炭素繊維の繊維径は、小さいほど高い見かけ密度を達成しやすく、導電性や熱伝導が優れる炭素繊維不織布が得られる一方、炭素繊維不織布の平均孔径が小さくなって、排水性やガス拡散性は低下する傾向がある。炭素繊維の繊維径は、炭素繊維不織布の用途に応じて適宜決定することが好ましいが、一般的なガス拡散電極として使用する場合には3〜30μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。
【0016】
炭素繊維不織布を構成する炭素繊維同士の接点にバインダーとして炭化物が付着していると、炭素繊維同士の接点で接触面積が大きくなり、優れた導電性と熱伝導性が得られる。このようなバインダーを付与する方法としては、炭化処理後の炭素繊維不織布に熱硬化性樹脂を含浸またはスプレーし、不活性雰囲気下で再度加熱処理する方法が挙げられる。この場合、熱硬化性樹脂としてはフェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂等を用いることができ、中でもフェノール樹脂を用いることが特に好ましい。また、後述するように、熱可塑性樹脂を炭素繊維前駆体不織布に混綿しておく方法も好ましく用いられる。
【0017】
本発明の炭素繊維不織布の平均孔径は、40μm以上であることが好ましく、45μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。平均孔径の上限は特に限定されないが、100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましい。平均孔径が40μm以上であれば、ガスの拡散と排水で高い性能が得られる。また、平均孔径が100μm以下であれば、ドライアウトを防止しやすい利点がある。なお、本明細書において、炭素繊維不織布の平均孔径とは水銀圧入法により測定される値を意味し、水銀の表面張力σを480dyn/cm、水銀と炭素繊維不織布との接触角を140°として計算した値である。水銀圧入法による測定は、例えば、PoreMaster(Quantachrome社製)などを用いて測定することができる。
【0018】
〔畝〕
本発明の炭素繊維不織布は、表面に畝が形成されている。畝とは、炭素繊維不織布の表面にそれぞれ略平行になるよう規則的に形成された線状の凸部である。このような畝の存在は、例えば、レーザー顕微鏡で、炭素繊維不織布の畝形成面側から、500μm〜5mmの視野でレーザースキャンして画像を取り込み、形状解析ソフトを用いて傾き補正を行い、高さに応じて色を変えて表示することにより判断することができる。
【0019】
畝は、炭素繊維不織布の両面に形成されていてもよいが、この場合、観察対象とする畝の形成された面の反対側の面に形成された畝の頂上部を通る平面を底面と考えるものとする。しかしながら、本発明の炭素繊維不織布をガス拡散電極として使用する場合、セパレーターとの接触面に発生する水滴の排出性を高める効果を発揮できれば足りるため、一方の面のみに畝が形成されていれば十分であり、また製造上も好ましい。そのため、本明細書では、以降、一方の面のみに畝が形成された炭素繊維不織布を中心に説明し、説明の中では当該畝が形成された面を「畝形成面」、その反対の畝が形成されていない面を「底面」と呼ぶこととする。また、以下特に断らない限り、本発明の炭素繊維不織布の底面を下にして水平に静置した状態を仮定して説明するものとし、畝形成面側を「上」、底面側を「下」と考えて表現する。
【0020】
なお、以下では本発明の典型的な実施形態である直線状の畝を有する炭素繊維不織布を例として、図2の符号を参照しつつ畝の形成状態を説明するが、これらの符号は何ら本発明を限定するものではない。
【0021】
本発明の炭素繊維不織布をガス拡散電極とした燃料電池においては、反応で生成した水滴は、畝間を移動するのではなく、畝の表面を移動して排出されることが意図されている。このような排水効果を発揮するため、畝の形成ピッチL2は500μm未満に設定されている。
【0022】
畝の形成ピッチとは、隣接する畝の中心線同士の距離の平均値であり、炭素繊維不織布の畝と直交する方向の幅に対する畝の本数から算出することができる。畝の形成ピッチが小さいほど撥水性が高まることから、畝の形成ピッチは450μm未満が好ましく、400μm未満がより好ましい。一方、畝の形成ピッチが大きいほうが、畝が損壊し難いため、20μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。
【0023】
本発明において、畝面積比は次のように定義される。
1)各畝間の最低部を通り、かつ底面に平行な面を畝の基準面とする。
2)畝の頂上から畝の基準面に向けて引いた垂線の中点を通り、かつ基準面(および底面)に平行な面Sを想定し、当該平面上における畝の幅をL1とする。
3)畝の形成ピッチをL2とし、L1/L2で表される数値を畝面積比とする。
畝の形成ピッチが上記範囲であれば、畝面積比が低いほど水滴と炭素繊維不織布表面の接触面積が低減されて撥水性能が向上するため、畝面積比は0.9以下が好ましく、0.7以下がより好ましく、0.5以下がさらに好ましい。一方、畝面積比を大きくすることで導電性や熱伝導性を向上できるため、畝面積比は0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましい。
【0024】
畝の面積比は、例えば、レーザー顕微鏡で、炭素繊維不織布の畝形成面側から、500μm〜5mmの視野でレーザースキャンして画像を取り込み、形状解析ソフトを用いて傾き補正を行い、畝の延在方向と直交する方向の高さプロファイルを表示し、畝の頂上から畝の基準面に引いた垂線の中点の高さで畝の幅を測定することにより測定できる。観察視野内の3箇所以上の高さプロファイルから得た畝の幅を平均した値を代表値とする。なお、それぞれの高さプロファイルにおいて、畝間の高さが最低部となり、底面と平行な面を基準面とする。
【0025】
畝の高さH1は10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。ここで、畝の高さとは、畝の頂上部から畝の基準面に向けて引いた垂線の長さである。畝の高さの上限は、炭素繊維不織布としての強度を保つことができる限り特に限定されない。
【0026】
また、畝間隔L3(=L2−L1)に対して十分な高さを有することで本発明の効果が顕著になる。このことから、特に、畝の高さH1を畝間隔L3で除した値が0.1以上であることが好ましく、0.2以上であることがより好ましい。
【0027】
さらに、本発明は、後述するように畝に対応する凹凸部を有する賦形部材を押し付けて該畝を形成することが好ましい態様である。この方法で得られる炭素繊維不織布は、畝と畝間で見かけ密度が異なる。その際、触媒層で生じた水が、密度の低い畝を優先的に通ってセパレーターの流路に移動し、ガスは密度の高い畝間を移動する。これによって排水性を向上しつつ、高いガス拡散性が得られる。このような機能を発揮するためには、畝と畝間で密度差を有する必要があることから、畝の高さH1を炭素繊維不織布の厚みH2で除した値(H1/H2)が、0.30を超えることが好ましく、0.35を超えることがより好ましい。
【0028】
また、畝の壁面は底面と略垂直に形成されていてもよいし、垂線方向から傾斜を有していてもよい。すなわち、畝の延在方向に垂直な断面は、矩形状であっても、台形状であっても、略半円状(逆U字状)であってもよい。
【0029】
畝形成面の平面視における畝の形態は、畝が線状であり、かつ規則的に形成されていることによりその形成ピッチが認識可能である限り特に限定されず、直線状であっても、直線が上下左右に複数回折れ曲がっているジグザグ状であっても、正弦波状のように曲率を有する形状であってもよい。畝の形態がジグザグ状や正弦波状等、直線状でない場合には、畝を直線に近似した場合の近似直線の延在方向を畝の延在方向と考えるものとする。
【0030】
畝形成面における水滴の移動性は、畝と直交する方向よりも、畝の延在方向の方が高い。すなわち、水滴は畝の延在方向に、より移動しやすい。このことから、本発明の炭素繊維不織布をガス拡散電極として燃料電池を構成する場合、セパレーターに形成された流路の延在方向と本発明の炭素繊維不織布の畝の延在方向が平行になるようにスタックすることで排水性能を高められるため、水過多な発電環境での使用に際して好ましい態様である。このとき、より高い排水性能が得るためには、畝は直線状であることが好ましい。一方、セパレーターに形成された流路の延在方向と本発明の炭素繊維不織布の畝の延在方向が交差するようにスタックすることで、保水性能を高められるため、水不足な発電環境での使用に際して好ましい態様である。
【0031】
一方、ガス拡散電極の炭素繊維が面内で一方向に配向している炭素繊維不織布も好ましく用いられるが、その場合、畝は炭素繊維の配向方向と直交する方向に形成されていることが好ましい。このような炭素繊維不織布をガス拡散電極として用い、畝の延在方向とセパレーターの流路が平行になるように、すなわち、ガス拡散電極中の炭素繊維の配向方向とセパレーターの流路が直交するように配置することで、燃料電池の運転中に炭素繊維の配向方向への水とガスの拡散性が高くなり、ガス拡散電極内で生じた水がセパレーターの流路まで移動しやすくなる。なお、炭素繊維が面内で一方向に配向していることは、10°毎に18方向にそれぞれ4試料計72試料の引張強度を測定し、それぞれの角度の引張強度を極座標で楕円近似して算出した長軸と短軸の長さの比(長軸/短軸)が1.05を超えることで確認することができる。
【0032】
畝の形成は、炭化焼成後の炭素繊維不織布にレーザーや針等で削って加工する方法、炭素繊維をシート化する際にカーボンファイバーの配置を制御して畝を成形する方法、炭素繊維前駆体繊維で形成した不織布にプリントや型押しして畝を形成した後、熱処理により炭化する方法等適宜選択できる。中でも、炭素繊維の破損を防げ、高い導電性を得ることができる点からは、炭素繊維前駆体繊維で形成した不織布に型押しして畝を形成した後、熱処理により炭化する方法が好ましい。この方法の詳細については後述する。
【0033】
〔撥水剤〕
本発明の炭素繊維不織布の撥水性能を発揮させるためには、さらに撥水剤が付与されている必要がある。撥水剤は、炭素繊維不織布表面の水滴接触角を増大させる効果を有する物質であれば特に限定されないが、PTFE、FEP、PVDF等のフッ素系樹脂、PDMS等のシリコーン樹脂が例示できる。撥水処理は、これらの撥水剤を、パウダーでの付与、溶融含浸、溶液や分散液を用いたプリント、転写、含浸等の方法で炭素繊維不織布に付与することで行うことができる。なお、本明細書における水滴接触角とは、温度20℃、湿度60%の環境で、炭素繊維不織布の畝形成面上に10μLの水滴を10点滴下して測定した平均値であるものとする。水滴接触角は、例えば自動接触角計DMs−601(協和界面科学(株)社製)により測定することができる。
【0034】
本発明の炭素繊維不織布は、撥水剤の付与により、畝形成面の水滴接触角が100度以上となっていることが好ましい。燃料電池における排水性向上の観点からは撥水性は高い方が好ましいため、畝形成面の水滴接触角は120度以上とすることが好ましく、140度以上とすることがより好ましい。
【0035】
本発明の炭素繊維不織布においては、畝の表面を水滴が移動することから、撥水剤は畝にのみ付与されていれば足りる。また、撥水剤が畝に局在していると、燃料電池運転中のガス拡散電極に適度な保湿効果をもたらすことが期待でき、排水性能とガス拡散性能のバランスが得られやすい上、撥水剤の使用量が少なくて済む点からも好ましい態様である。
【0036】
撥水剤が畝に局在していることは、走査電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置(SEM/EDX)を用い、炭素繊維不織布の畝形成面側から、500μm〜5mmの視野でSEM画像に、撥水剤に特異的に含まれる原子、例えばフッ素系樹脂の場合はフッ素原子、シリコーン樹脂の場合はケイ素原子をマッピングし、SEM画像で観察される畝の位置に対応しているかで確認することができる。このような状態は、例えば、プリントや転写による方法、マスクしてスプレーで任意の位置に撥水剤を付着させる方法、溶液や分散液を含浸し、畝形成面側から加熱して乾燥することで乾燥が進みやすい畝の部分に選択的に撥水剤を付着させる方法等により形成することができる。
【0037】
<固体高分子形燃料電池>
固体高分子形燃料電池の単セルは、典型的には、図1に示されるように、電解質膜1と、電解質膜1の両側に配置された触媒層2と、そのさらに両側に配置されたアノード側ガス拡散電極およびカソード側ガス拡散電極10と、それらの更に両側に配置された1対のセパレーター20とから構成される。セパレーター20としては、発電反応により発生した水を排出するための平行溝型の流路21が表面に形成されたものが一般的に用いられている。ここで、平行溝型の流路、とは、凹部が直線状に連続した複数の溝がそれぞれ平行になるよう規則的に配置されている部分を主とする流路であり、例えば、図3Aに示すカラム型、図3Bに示すパラレル型、図3Cに示すマルチパラレル型、図3Dに示すサーペンタイン型、図3Eに示すインターディジテート型、またはこれらの組合せ等の流路形状を含む概念であるものとする。
【0038】
本発明の炭素繊維不織布を燃料電池のガス拡散電極として用いる場合には、炭素繊維不織布の畝形成面がセパレーターの流路形成面と接するよう配置する。畝形成面がセパレーターの流路と接することで、発生した水滴が流路を流れるガスに押されて畝11上を移動しやすくなるため、排水性能が向上する。
【0039】
また、セパレーターは、平行溝型の流路の延在方向がガス拡散電極の畝と平行となるように配置されていると、水滴の移動がよりスムーズになるため好ましい。このとき、炭素繊維不織布の炭素繊維が面内で一方向に配向しており、かつ炭素繊維の配向方向と直交する方向を延在方向として畝が形成されている炭素繊維不織布を用い、畝とセパレーターの流路が平行になるよう構成すると、ガス拡散電極内での排水性、ガス拡散性がさらに高まるため好ましい。
【0040】
排水性を高める観点からは、セパレーターの流路はパラレル型またはインターディジテート型であることが好ましく、流路での圧力損失を小さくすることが容易なパラレル型であることが特に好ましい。
【0041】
<炭素繊維不織布の製造方法>
本発明の炭素繊維不織布の好ましい製造方法の一例として、工程A:炭素繊維前駆体繊維不織布の表面に畝を形成する工程であって、畝に対応する凹凸部を有する賦形部材を前記炭素繊維前駆体繊維不織布の表面に押し付けて畝を形成する工程と、工程B:工程Aで得られた炭素繊維前駆体繊維不織布を炭化処理する工程と、工程C:工程Bで得られた炭素繊維不織布に撥水剤を付与する工程と、を有する製造方法が挙げられる。
【0042】
〔炭素繊維前駆体繊維不織布〕
炭素繊維前駆体繊維とは、焼成により炭素繊維化する繊維である。炭素繊維前駆体繊維は、炭化率が15%以上の繊維であることが好ましく、30%以上の繊維であることがより好ましい。本発明に用いられる炭素繊維前駆体繊維は特に限定されないが、不融化したポリアクリロニトリル(PAN)系繊維(PAN系耐炎繊維)、不融化したピッチ系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、セルロース系繊維、不融化したリグニン系繊維、不融化したポリアセチレン系繊維、不融化したポリエチレン系繊維、ポリベンゾオキサゾール系繊維などを挙げることがでる。中でも強伸度が高く、加工性の良いPAN系耐炎繊維を用いることが特に好ましい。なお、炭化率は、以下の式から求めることができる。
炭化率(%)=焼成後重量/焼成前重量×100
炭素繊維前駆体繊維不織布は、炭素繊維前駆体繊維により形成されたウエブまたはシートである。ウエブとしては、乾式のパラレルレイドウエブまたはクロスレイドウエブ、エアレイドウエブ、湿式の抄造ウエブ、押出法のスパンボンドウエブ、メルトブローウエブ、エレクトロスピニングウエブを用いることができる。また、シートとしては、これらのウエブを機械的に交絡させたシート、加熱して融着させたシート、バインダーで接着させたシート等を用いることができる。溶液紡糸法で得たPAN系繊維を不融化してウエブ化する場合は、均一なシートを得やすいことから、乾式ウエブまたは湿式ウエブが好ましく、中でも工程での形態安定性を得やすいことから、乾式ウエブを機械的に交絡させたシートが特に好ましい。
【0043】
また、カードを用いるパラレルレイドウエブによって、炭素繊維前駆体繊維を面内で一定の方向に配向させることが可能である。また、クロスレイドウエブもクロスさせる頻度を増やすことによって、抄造ウエブも工程速度を増すことによって同様に、炭素繊維前駆体繊維を面内で一定の方向に配向させることができる。さらに、工程でウエブまたは不織布に張力を掛けることでも炭素繊維前駆体繊維を面内で一定の方向に配向させることは可能である。
【0044】
また、前述のように、炭素繊維不織布の炭素繊維同士の交点にバインダーとして炭化物が付着していると導電性と熱伝導性に優れる点で好ましい。このような炭素繊維不織布は、炭素繊維前駆体繊維不織布に炭化物前駆体を付与しておくことで製造することができる。炭化物前駆体を付与せる方法は特に限定されないが、炭素繊維前駆体繊維不織布に炭化物前駆体溶液を含浸またはスプレーする方法や、予め炭素繊維前駆体繊維不織布に炭化物前駆体となる熱可塑性樹脂製繊維を混綿しておく方法が挙げられる。
【0045】
炭素繊維前駆体繊維不織布に炭化物前駆体溶液を含浸またはスプレーする場合には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フラン樹脂といった熱硬化性樹脂を用いることができ、中でも炭化収率が高いことからフェノール樹脂が特に好ましい。ただし、熱硬化性樹脂溶液を含浸した場合は、炭化工程で炭素繊維前駆体繊維とバインダー樹脂の収縮の挙動の差異が生じることによって、炭素繊維不織布の平滑性が低下しやすく、また乾燥時に炭素繊維不織布表面に溶液が移動するマイグレーション現象も生じ易いため、均一な処理が難しくなる傾向がある。
【0046】
これに対し、予め炭素繊維前駆体繊維不織布にバインダーとなる熱可塑性樹脂製繊維を混綿しておく方法は、炭素繊維前駆体繊維とバインダー樹脂の割合を不織布内で均一にすることができ、炭素繊維前駆体繊維とバインダー樹脂の収縮挙動の差異も生じにくいことから、最も好ましい方法である。このような熱可塑性樹脂製繊維としては、比較的安価なポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリロニトリル繊維が好ましい。
【0047】
バインダーの配合量は、炭素繊維不織布の強度、導電性、熱伝導性の向上のため、炭素繊維前駆体繊維100質量部に対し、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。また、排水性向上のため、80質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。
【0048】
なお、バインダーの付与は、後述の工程Aにおいて炭素繊維前駆体繊維不織布に畝を形成した後に、バインダー溶液を含浸またはスプレーすることにより行うこともできる。また、後述の工程Bにおいて焼成処理を行った後の炭素繊維不織布にバインダー溶液を含浸またはスプレーし、再度焼成する工程を経ることによっても行うことができる。しかしながら、畝形成後にバインダーを付与すると、畝周辺にバインダー溶液が溜まって付着量が不均一になる傾向があるため、バインダーの付与は畝形成前に行うことが好ましい。
【0049】
バインダーとなる熱可塑性樹脂製繊維や、含浸またはスプレーする溶液に導電助剤を添加しておくことは、導電性向上の観点からさらに好ましい。このような導電助剤としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、炭素繊維のミルドファイバー、黒鉛等を用いることができる。
【0050】
一方、バインダーを付与しない炭素繊維不織布は、導電性は劣るものの柔軟性に富むため破壊しにくい長所があり、これも好ましい態様である。
【0051】
〔工程A〕
工程Aは、炭素繊維前駆体繊維不織布の表面に畝を形成する工程である。工程Aにおいては、形成する畝に対応する凹部を有する賦形部材を前記炭素繊維前駆体繊維不織布の表面に押し付ける方法、すなわちエンボス加工により畝を形成することが好ましい。例えば、、ウォータージェット法で連続的に畝を付与することもできるが、流体で処理するため、前述の畝の高さを畝間隔L3で除した値が0.1以上というシャープな形状を付与することが困難だという問題がある。エンボス加工の方法としては、畝と畝間に対応する凹凸を形成したエンボスロールとフラットロールで連続プレスする方法や、同様の凹凸を形成したプレートとフラットプレートでバッチプレスする方法を挙げることができる。
【0052】
炭素繊維前駆体繊維不織布は焼成するとやや縮むため、畝を形成するための賦形部材の凹部の形成ピッチ形成しようとする炭素繊維不織布の畝の形成ピッチよりもやや大きくしておく必要がある。そのため、凹部の形成ピッチは一般的には600μm以下であることが好ましいが、用いる炭素繊維前駆体繊維の種類や焼成条件に応じて当業者は適宜決定することができる。
【0053】
プレスの際には、後述する工程Bにおける焼成処理において形態が復元する(畝がなくなる)ことのないように、ロールやプレートは加熱したものを用いることが好ましい。このときの加熱温度は、炭素繊維前駆体繊維の不織布構造体に形成した畝の形態安定性の点から160℃〜280℃が好ましく、180℃〜260℃がより好ましい。
【0054】
また、最終的に得られる炭素繊維不織布の密度や厚みを制御するため、凹凸の無いロールやプレートでのプレスを工程Aの前または後に実施することも好ましい態様である。
【0055】
〔工程B〕
工程Bは、工程Aで得られた炭素繊維前駆体繊維不織布を炭化処理する工程である。炭化処理の方法は特に限定されず、炭素繊維材料分野における公知の方法を用いることができるが、不活性ガス雰囲気下での焼成が好ましく用いられる。不活性ガス雰囲気下での焼成は、大気圧で、窒素やアルゴンといった不活性ガスを供給しながら、室温から2時間以上かけて800℃以上まで昇温して炭化処理を行い、2時間以上をかけて室温まで降温することが好ましい。炭化処理の温度は、優れた導電性と熱伝導性を得やすいために1500℃以上が好ましく、1900℃以上がより好ましい。一方、加熱炉の運転コストの観点を考慮すると、3000℃以下であることが好ましい。
【0056】
炭素繊維不織布を固体高分子形燃料電池のガス拡散電極として用いる場合、炭化後に厚みが30〜400μm、密度が0.2〜0.8g/cmとなるように炭素繊維前駆体繊維不織布の形態や炭化処理条件を調整することが好ましい。
【0057】
〔工程C〕
工程Cは、工程Bで得られた炭素繊維不織布に撥水剤を付与する工程である。撥水処理は、PTFE、FEP、PVDF等のフッ素系樹脂、PDMS等のシリコーン樹脂などの撥水剤を、パウダーの流動層等での振動含浸、溶融含浸、溶液や分散液を用いたプリント、転写、含浸等の方法で炭素繊維不織布に付与することで行うことができる。本発明の好ましい態様のひとつである、畝の部分に選択的に撥水剤を付着させる方法として、プリントや転写、マスクを用いてスプレーで任意の位置に撥水剤を付着させる方法、溶液や分散液を含浸し、畝形成面側から加熱して乾燥することで、畝の部分に選択的に撥水剤を付着させる方法を挙げることができる。炭素繊維不織布を固体高分子形燃料電池のガス拡散電極として用いる場合、撥水剤の分散液にカーボンブラックなどの導電補助材を混合しておくことも、電気伝導性、熱伝導性を高められる点で好ましい態様のひとつである。
【実施例】
【0058】
実施例中のデータは以下の方法で測定した。ここで、実施例3は、参考例1と読み替えるものとする。
【0059】
1.水滴接触角
自動接触角計(DM−501、協和界面科学社製)により、畝形成面に10μLの水滴を載せて測定した。異なる位置で測定した10点の測定値の最大値と最小値を除いた8点の測定値の平均値をそれぞれの接触角とした。
【0060】
2.撥水剤の付着状態
ガス拡散電極の畝形成面(セパレーター側)について、SEM/EDXでフッ素原子をSEM画像上にマッピングし、フッ素原子が畝部に局在しているものを○、畝部に局在している箇所を有するものを△、畝部に局在していないものを×として評価した。
【0061】
3.発電性能
セル温度を60℃、水素と空気の露点を60℃とし、流量はそれぞれ1000cc/分と2500cc/分、ガス出口は開放(無加圧)とし、電圧が0.2Vのときの電流密度を調べた。
【0062】
[実施例1]
凹凸のないローラーと、凹凸のあるローラー(凹部の幅225μm、凹部のピッチ450μm、凹部の深さ100μm)の組合せからなる連続プレス装置を用いて、パラレルレイドウエブをニードルパンチ処理したPAN系耐炎糸不織布を、260℃でプレスし、炭素繊維の配向方向と直交する方向を延在方向とする畝を形成した。次に、不活性雰囲気下で、室温から3時間かけて2200℃まで昇温し、15分間2200℃炭化処理を行った。その後、固形分濃度3wt%に調整したPTFE水性ディスパージョンをガス拡散電極に対する固形分付着量が5wt%になるよう含浸付与し、熱風乾燥機を用いて130℃の熱風を当てて乾燥して、一方の面に畝が形成され、かつ撥水剤が付与された炭素繊維不織布を得た。
【0063】
さらに、底面(畝を形成していない面)にカーボンブラックとPTFEが等量のペーストを20g/mになるように塗布・乾燥後、15分間380℃で加熱処理を行い、マイクロポーラス層を形成した。
【0064】
フッ素系電解質膜Nafion(登録商標)212(デュポン社製)の両面に、白金担持炭素とNafionからなる触媒層(白金量0.2mg/cm)をホットプレスによって接合し、触媒層被覆電解質膜(CCM)を作成した。
【0065】
CCMの両面に、撥水剤を付与した炭素繊維不織布を、底面がCCM側に向くように配して再びホットプレスを行い、膜電極接合体(MEA)とした。
【0066】
このMEAにおいて、炭素繊維不織布からなるガス拡散電極の畝の形成方向とセパレーターの流路(幅1mm、ピッチ2mm、深さ0.5mm)の形成方向が平行になるように(すなわち、ガス拡散電極の炭素繊維の配向方向とセパレーターの流路が直交するように)、パラレルタイプの平行流路が形成された、セパレーターを配して、発電面積5cmの固体高分子形燃料電池(単セル)とした。
【0067】
[実施例2]
凹部の幅113μm、凹部のピッチ450μm、凹部の深さ100μmの凹凸のあるローラーを有する連続プレス装置を用いた以外は実施例1と同様にして炭素繊維不織布を得た。得られた炭素繊維不織布を用いて、実施例1と同様にして固体高分子形燃料電池を作製した。
【0068】
[実施例3]
ガス拡散電極に付与したPTFE水性ディスパージョンを、常温で静置して乾燥した以外は実施例1と同様にして炭素繊維不織布を得た。得られた炭素繊維不織布を用いて、実施例1と同様にして固体高分子形燃料電池を作製した。
【0069】
[実施例4]
セパレーターとして、セパレーターの流路にPTFE水性ディスパージョンを塗布し、熱風乾燥機を用いて130℃で乾燥し、さらに、15分間380℃で加熱処理して撥水加工したものを用いた以外は実施例1と同様にして固体高分子形燃料電池を作製した。
【0070】
[実施例5]
炭素繊維不織布の畝とセパレーターの溝が直交するように(すなわち、ガス拡散電極の炭素繊維の配向方向とセパレーターの流路が平行になるように)配置してMEAを作製した以外は実施例1と同様にして固体高分子形燃料電池を作製した。
【0071】
[実施例6]
炭素繊維不織布に炭素繊維の配向方向と同一の方向を延在方向とする畝を形成した以外は実施例1と同様にして炭素繊維不織布を得た。得られた炭素繊維不織布の畝とセパレーターの溝が平行になるように配置した(すなわち、炭素繊維の配向方向とセパレーターの溝の方向が平行になるように配置した)以外は実施例1と同様にして炭固体高分子形燃料電池を作製した。
【0072】
[比較例1]
凹凸のあるローラーとして、凹部のピッチが1700μm、凹部の幅850μm、凹部の深さ100μmを用いた以外は実施例1と同様にして炭素繊維不織布を得た。得られた炭素繊維不織布を用いて、実施例1と同様にして固体高分子形燃料電池を作製した。
【0073】
[比較例2]
畝を形成しない炭素繊維不織布をガス拡散電極として用いた以外は実施例1と同様にして固体高分子形燃料電池とした。
【0074】
[比較例3]
炭素繊維不織布へのPTFEディスパージョン付与およびカーボンブラックとPTFEからなるペーストの塗布を行わなかった以外は実施例1と同様にして炭素繊維不織布を得た。得られた炭素繊維不織布を用いて、実施例1と同様にして固体高分子形燃料電池を作製した。
【0075】
各実施例、比較例で作製した固体高分子型燃料電池の構成および発電性能評価の結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【符号の説明】
【0077】
1 電解質膜
2 触媒層
10 ガス拡散電極(炭素繊維不織布)
11 ガス拡散電極(炭素繊維不織布)の畝
20 セパレーター
21 セパレーターの流路
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4