(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について添付図面に基づいて説明する。
【0017】
本実施形態の旋回式作業機械は、クローラクレーンである。クローラクレーンは、
図1に示すように、上部旋回体1と、上部旋回体1に取り付けられるアタッチメント(図示せず)と、アタッチメントを起伏駆動する起伏装置2と、下部走行体3と、制御部7(
図6参照)とを備えている。
【0018】
以下においては、上部旋回体1の運転席の向きを基準に前後方向を決定し、特に説明がない場合には、上部旋回体1の前後方向と下部走行体3の進行方向とが平行な状態に基づいて説明する。また、前後方向に直角な水平面に沿った方向を左右方向として定義する。
【0019】
上部旋回体1は、下部走行体3に対して鉛直軸回りに旋回可能に取り付けられている。上部旋回体1には、前部にブームフットピンを介してアタッチメントが取り付けられる。アタッチメントは、例えば、荷を吊る部分であり、上部旋回体1に対して、前後方向に直交する水平軸廻りに回転自在に連結される。起伏装置2は、アタッチメントを起伏するように駆動する。
【0020】
下部走行体3は、地面に接地して移動することが可能な車体である。下部走行体3は上部旋回体1,アタッチメント,および起伏装置2を支持する。本実施形態の下部走行体3は、一対のクローラ48を有するクローラ式のキャリアにより構成されている。下部走行体3は、
図2に示すように、トラックフレーム4と、上部旋回体1を旋回駆動する駆動部43と、一対のクローラフレーム45と、一対のクローラ48と、クローラフレーム45を左右方向に移動させるクローラ伸縮シリンダ49と、ジャッキアップ装置5とを備えている。また、下部走行体3には、駆動部43と、クローラ伸縮シリンダ49と、後述のジャッキアップシリンダ51とを、外部から操作するための操作部8(
図6参照)が設けられている。なお、
図2においては、説明の便宜上、一対のクローラ43のうちの一方を省略している。
【0021】
トラックフレーム4は、下部走行体3の主体を構成するフレームである。トラックフレーム4の中央には、旋回ベアリング41が取り付けられており、この旋回ベアリング41を介して上部旋回体1が旋回可能に取り付けられる。旋回ベアリング41は、トラックフレーム4に固定された内側サークル410と、内側サークル410の外側に回転自在に取り付けられた外側サークル412とで構成されている。この内側サークル410の内周面には、全周にわたって旋回ギア411が形成されている。外側サークル412は、駆動部43によって、内側サークル410の外側を回転するように構成されている。
【0022】
駆動部43は、例えば、油圧モータにより構成される。駆動部43は、外側サークル412に固定された本体部と、出力軸に固定されると共に内側サークル410の旋回ギア411に対して噛み合うピニオン(図示せず)とを有している。出力軸を回転させると、本体部が内側サークル410に沿って周方向に移動し、これにより、外側サークル412が鉛直軸回りに回転する。外側サークル412は、上部旋回体1に固定されており、外側サークル412が回転することで、上部旋回体1を鉛直軸回りに旋回させることができる。
【0023】
トラックフレーム4の前後方向の両端部には、左右方向に延びた一対のアクスル44が設けられている。この一対のアクスル44には、一対のクローラフレーム45が左右方向に摺動可能に取り付けられる。
【0024】
クローラフレーム45は、前後方向に延びており、クローラ48を移動自在に支持する。クローラフレーム45の長手方向の一方の端部には、
図1に示すように、クローラ48を駆動するドライブスプロケット46が設けられ、長手方向の他方の端部にアイドラ47が設けられている。これらドライブスプロケット46およびアイドラ47により、クローラ48をクローラフレーム45の長手方向に沿って移動させる。
【0025】
クローラ48は、各クローラフレーム45に対して1つずつ設けられる。クローラ48は、
図2に示すように、左右方向に幅を有しており、前後方向に長さを有している。クローラ48は、複数のシューをピンで連結することで構成されており、長さ方向(長手方向)に無端状に形成されている。
【0026】
また、一対のクローラフレーム45は、互いに接離方向(左右方向)に移動可能に構成されており、これにより、下部走行体3の幅を変更することができる。一対のクローラフレーム45は、クローラ伸縮シリンダ49によって移動可能に構成される。具体的に、クローラ伸縮シリンダ49は、トラックフレーム4にシリンダチューブが固定され、ロッドに一対のクローラフレーム45が固定される。
【0027】
トラックフレーム4には、複数のジャッキアップ装置5が設けられる。ジャッキアップ装置5は、トラックフレーム4をジャッキアップすることができるように構成される。各ジャッキアップ装置5は、
図3に示すように、ジャッキアップシリンダ51と、フロート52と、アーム部53と、固定ピン56とを備えている。
【0028】
ジャッキアップシリンダ51は、長手方向が鉛直方向に沿うシリンダチューブ510と、シリンダチューブ510の長手方向に沿って進退可能なロッド511とを備えており、鉛直方向に伸縮可能に構成されている。ジャッキアップシリンダ51は、油圧シリンダにより構成されている。ロッド511の先端には、フロート52が着脱自在に取り付けられる。
【0029】
アーム部53は、ジャッキアップシリンダ51を保持する。アーム部53は、トラックフレーム4に鉛直軸55を介して連結されており、鉛直軸55回りに回転可能である。アーム部53は、トラックフレーム4から前後方向に突出した上下一対の突出片42に、鉛直軸55を介して連結される。アーム部53の先端には、ジャッキアップシリンダ51が固定されている。これにより、ジャッキアップシリンダ51は、鉛直軸55回りに移動可能に構成される。
【0030】
ジャッキアップシリンダ51は、
図2に示すように、アーム部53の鉛直軸55回りの回転により、第1の位置と、第2の位置と、第3の位置とに位置変更可能に構成される。
【0031】
第1の位置は、複数のジャッキアップ装置5によりトラックフレーム4がジャッキアップされた状態において、上部旋回体1が旋回しても、全周にわたって転倒しないジャッキアップ装置5の位置である(
図2における位置P1)。本実施形態において第1の位置は、「分解作業位置P1」という。ジャッキアップ装置5が分解作業位置P1にあると、
図4Aに示すように、平面視において、4つのジャッキアップシリンダ51を結ぶ領域A内に、旋回する上部旋回体1の重心が必ず位置する。
【0032】
第2の位置は、複数のジャッキアップ装置5によりトラックフレーム4がジャッキアップされた状態において、一対のクローラフレーム45の間の距離を変更することができるジャッキアップ装置5の位置である(
図2における位置P2)。本実施形態において第2の位置は、「丸積輸送位置P2」という。丸積輸送位置P2にあるジャッキアップ装置5は、クローラ48を装着したまま、下部走行体3をジャッキアップすることができる。丸積輸送位置P2にあるジャッキアップ装置5にあっては、左右方向に隣り合うジャッキアップ装置5の距離が、分解作業位置P1にあるジャッキアップ装置5間の距離よりも短い。
【0033】
ジャッキアップ装置5が丸積輸送位置P2にあるときに、トラックフレーム4がジャッキアップされた状態において、上部旋回体1が旋回すると、上部旋回体1の重心が支持される場合と支持されない場合とが生じ得る。ここで、上部旋回体1の重心が支持される場合とは、
図4Bに示すように、上部旋回体1の重心が、平面視において、4つのジャッキアップシリンダ51を結ぶ領域B内に位置する場合であり、上部旋回体1が中心線cに対して±α°の範囲内で旋回する場合をいう(この上部旋回体1の旋回領域を第一旋回領域という)。また、上部旋回体1の重心が支持されない場合とは、上部旋回体1の重心が、平面視において、4つのジャッキアップ装置5を結ぶ領域Bの外に位置する場合であり、上部旋回体1が中心線cに対して±α°の範囲にない位置で旋回する場合をいう(この上部旋回体1の旋回領域を第二旋回領域という)。このように上部旋回体1の旋回領域は、第一旋回領域と第二旋回領域とに分けられる。
【0034】
なお、上部旋回体1の重心の位置は、制御時に上部旋回体1の重量を測定して算出するのではなく、予め算出されており、上部旋回体1との位置関係で決められている。したがって、上部旋回体1の重心の位置は、上部旋回体1の旋回角度に対応付けて、制御部7に記憶される。
【0035】
第3の位置は、トラックフレーム4をトレーラ9に搭載する際のジャッキアップ装置5の位置である(
図2における位置P3)。本実施形態において第3の位置は、「分解輸送位置P3」という。ジャッキアップ装置5を分解輸送位置P3に位置させると、ジャッキアップ装置5が収納され、トレーラ9の荷台91に搭載したときに、荷台91からジャッキアップ装置5が突出しないようにすることができる。
【0036】
このように、アーム部53の回転によりジャッキアップシリンダ51が位置変更可能に構成されたジャッキアップ装置5は、分解作業位置P1,丸積輸送位置P2,および分解輸送位置P3のいずれかに位置した状態で、固定ピン56により位置保持される。
【0037】
固定ピン56は、
図5に示すように、トラックフレーム4とアーム部53とを、鉛直軸55とは別の位置で連結し、その位置でアーム部53を保持する。トラックフレーム4の上側の突出片42には、分解作業位置P1と丸積輸送位置P2と分解輸送位置P3とに対応する位置に、3つの貫通孔57が設けられている。また、アーム部53において鉛直軸55が挿通される部分よりも端部側には、固定ピン56が挿通される固定孔54が設けられている。3つの貫通孔57のうちのいずれかと固定孔54とが平面視で合致した状態で、固定ピン56が通され、これにより、アーム部53はトラックフレーム4に固定される。
【0038】
下部走行体3は、複数のジャッキアップ装置5の位置が分解作業位置P1(第1の位置)にあることを検知する検知部を備えている。本実施形態の検知部は、固定ピン56が分解作業位置P1でアーム部53を保持した状態を検知する複数のピン検知部61である。各ピン検知部61は、各ジャッキアップ装置5に対して設けられたリミットスイッチにより構成されている。ピン検知部61は、
図5Bに示すように、分解作業位置P1に対応する貫通孔57に固定ピン56が挿通されると、その旨検知するように構成される。ピン検知部61は、検知した検知情報を、制御部7に出力するように構成される。
【0039】
制御部7は、旋回式作業機械の駆動を制御する。制御部7は、
図6に示すように、ピン検知部61等の検知情報が入力されるコントローラ71と、上部旋回体1を旋回駆動する駆動部43を制御する旋回駆動制御部72と、ジャッキアップシリンダ51のジャッキアップの駆動を制御するジャッキアップ制御部73とを備えている。旋回駆動制御部72とジャッキアップ制御部73は、コントローラ71から入力された信号に基づいて、駆動部43またはジャッキアップシリンダ51を制御する。
【0040】
旋回駆動制御部72は、分解作業位置P1に対応する貫通孔57に固定ピン56が挿通された旨の検知情報が、すべてのジャッキアップ装置5について入力された場合にのみ、駆動部43による上部旋回体1の旋回駆動を許容し、それ以外には駆動部43による上部旋回体1の旋回駆動をさせないように制御する。したがって、アーム部53が、分解作業位置P1以外の位置である丸積輸送位置P2、または分解輸送位置P3にある状態でトラックフレーム4がジャッキアップされた場合には、上部旋回体1が旋回することはない。
【0041】
これにより、ジャッキアップ装置5が、例えば、丸積輸送位置P2において、トラックフレーム4をジャッキアップした状態で、第一旋回領域にある上部旋回体1が、第二旋回領域に向かって旋回することがなくなる。したがって、本実施形態の旋回式作業機械では作業者が誤ってジャッキアップ装置5を丸積輸送位置P2に位置させた場合にも、転倒するのを防ぐことができる。
【0042】
ジャッキアップ制御部73は、ジャッキアップ装置5が収縮しかつ丸積輸送位置P2にある状態で、上部旋回体1が第二旋回領域に位置する場合には、ジャッキアップシリンダ51を伸長させないように駆動制御する。
【0043】
ここで、本実施形態の旋回式作業機械は、例えば、ロータリーエンコーダからなる旋回角度検知部62によって、上部旋回体1の旋回角度が検知できるように構成されている。この旋回角度検知部62は、上部旋回体1の旋回角度を検知すると、検知した旋回角度情報をコントローラ71に出力することができる。
【0044】
ジャッキアップ制御部73は、コントローラ71から旋回角度情報が入力されると、上部旋回体1が第一旋回領域にあるか、あるいは第二旋回領域にあるかどうかを判断する。さらに、ジャッキアップ制御部73は、ピン検知部61から入力された検知情報(つまり、固定ピン56が分解作業位置P1に挿通されたか否かの情報)に基づいて、ジャッキアップ装置5が丸積輸送位置P2または分解輸送位置P3にあることを認識し、さらに、ジャッキアップシリンダ51の操作がされることで、ジャッキアップ装置5が丸積輸送位置P2にあると判断することができる。そして、ジャッキアップ制御部73は、これらの情報に基づいてジャッキアップシリンダ51の駆動を制御する。
【0045】
これにより、ジャッキアップ装置5が、ジャッキアップする前に、例えば、丸積輸送位置P2にある場合において、トラックフレーム4をジャッキアップしても、転倒することがなくなる。すなわち、ジャッキアップ装置5がジャッキアップする前に、丸積輸送位置P2にある場合において、上部旋回体1が第二旋回領域に位置していると、ジャッキアップと同時に転倒することになるが、本実施形態においては、この場合にはジャッキアップさせないため、転倒を未然に防ぐことができる。
【0046】
このような構成の旋回式作業機械は、トレーラ9により作業現場に運搬された後、例えば、次のように組み立てられる。
【0047】
旋回式作業機械は、
図7Aに示すように、トレーラ9の荷台91において、トラックフレーム4および上部旋回体1が搭載された状態で運搬される。このとき、ジャッキアップ装置5は、分解輸送位置P3に固定されており、トラックフレーム4がトレーラ9の荷台91の全幅(およそ3200mm)内に収まっている。また、上部旋回体1は、中心線cに対して90°旋回した第二旋回領域に位置した状態で搬送される。なお、旋回式作業機械は、トラックフレーム4からクローラフレーム45が取り外された状態で運搬される。
【0048】
作業現場にトラックフレーム4が搬入されると、作業者は、ジャッキアップ装置5を分解作業位置P1に移動させ、固定ピン56を用いてトラックフレーム4に固定する。その後、作業者は、ジャッキアップシリンダ51のロッド511の先端にフロート52を取り付ける。
【0049】
次いで、作業者は、操作部8を操作し、ジャッキアップシリンダ51を伸長させ、トラックフレーム4をジャッキアップする。このとき、ジャッキアップ装置5が間違って丸積輸送位置P2に固定されている場合には、上部旋回体1が第二旋回領域に位置しているため、ジャッキアップシリンダ51は伸長しない。この後、トラックフレーム4がジャッキアップされた状態において、
図7Bに示すように、トレーラ9を前方に移動させる。
【0050】
次いで、作業者は、操作部8を操作し、上部旋回体1を90°旋回させる。このとき、ジャッキアップ装置5が分解作業位置P1以外の位置にある場合、上部旋回体1は旋回しない。
【0051】
次いで、作業者は、トラックフレーム4のアクスル44にクローラフレーム45を取り付ける。
【0052】
なお、トレーラ9に旋回式作業機械を搭載する作業は、上述の工程を逆に行うことになるため、説明は省略する。
【0053】
また、クローラフレーム45の幅を変更する場合には、
図8に示すように、ジャッキアップ装置5を丸積輸送位置P2に固定した状態で、クローラフレーム45を移動させる。このとき、ジャッキアップ装置5が分解作業位置P1にはないため、制御部7は、上部旋回体1の旋回を禁止する。
【0054】
図9,10には、制御部7のフローチャートを示す。以下、このフローチャートに基づいて、制御部7の動作を説明する。
【0055】
作業者は、操作部8を操作し、ジャッキアップシリンダ51を伸長させる指示を出す。すると、
図9に示すように、制御部7は、操作部8からジャッキアップシリンダ51を伸長する指示を受けた後、ピン検知部61から入力された検知情報に基づいて、分解作業位置P1に対応する貫通孔57に固定ピン56が挿通されているか否かを判断する(S1〜S2)。分解作業位置P1に対応する貫通孔57に固定ピン56が挿通された場合には、制御部7はジャッキアップシリンダ51を伸長させる(S3)。
【0056】
一方、分解作業位置P1に対応する貫通孔57に固定ピン56が挿通されていない場合、旋回角度検知部62から入力された情報により、上部旋回体1が第一旋回領域に位置しているか否かを判断する(S4)。上部旋回体1が第一旋回領域に位置している場合には、制御部7はジャッキアップシリンダ51を伸長させる(S3)。上部旋回体1が第一旋回領域に位置していない場合(つまり、上部旋回体1が第二旋回領域に位置する場合)、ジャッキアップシリンダ51を伸長させない。
【0057】
また、作業者が、操作部8を操作し、上部旋回体1を旋回させる指示を出す。すると、
図10に示すように、制御部7は、操作部8から上部旋回体1を旋回させる指示を受けた後、ピン検知部61から入力された検知情報に基づいて、分解作業位置P1に対応する貫通孔57に固定ピン56が挿通されているか否かを判断する(S11〜S12)。分解作業位置P1に対応する貫通孔57に固定ピン56が挿通されている場合、制御部7は上部旋回体1を旋回させる(S13)。一方、分解作業位置P1に対応する貫通孔57に固定ピン56が挿通されていない場合、制御部7は上部旋回体1を旋回させない。
【0058】
(効果)
以上、説明したように、本実施形態の旋回式作業機械は、トラックフレーム4と、トラックフレーム4に旋回可能に取り付けられた上部旋回体1と、上部旋回体1を旋回駆動する駆動部43と、駆動部43を制御する旋回駆動制御部72と、トラックフレーム4をジャッキアップする複数のジャッキアップ装置5とを備える。複数のジャッキアップ装置5は、第1の位置と、この第1の位置とは異なる位置である第2の位置とに位置変更可能に構成される。第1の位置は、複数のジャッキアップ装置5によりトラックフレーム4がジャッキアップされた状態において、上部旋回体1が旋回しても転倒しない位置である。旋回式作業機械は、複数のジャッキアップ装置5の位置が第1の位置にあることを検知する検知部をさらに備える。旋回駆動制御部72は、複数のジャッキアップ装置5によりトラックフレーム4がジャッキアップされている状態において、複数のジャッキアップ装置5が第1の位置にあることを検知部が検知した場合にのみ、上部旋回体1を旋回駆動可能とするように駆動部43を制御する。この構成によれば、第1の位置でジャッキアップされた場合にのみ上部旋回体1が旋回するので、作業者が、万が一、ジャッキアップ装置5の位置を誤り、第1の位置以外の位置に移動させた場合に、旋回式作業機械が転倒するのを防ぐことができる。
【0059】
また、本実施形態の旋回式作業機械は次の付加的な構成を有する。すなわち、本実施形態の複数のジャッキアップ装置5の各々は、鉛直方向に伸縮可能なジャッキアップシリンダ51と、ジャッキアップシリンダ51を保持すると共にトラックフレーム4に対して鉛直軸55回りに回転可能に連結されたアーム部53と、固定ピン56とを有する。固定ピン56は、アーム部53とトラックフレーム4とを鉛直軸55とは別の位置で連結し、これにより第1の位置でアーム部53を保持する。旋回式作業機械は、固定ピン56が第1の位置でアーム部53を保持した状態を検知する検知部をさらに備える。旋回駆動制御部72は、複数のジャッキアップ装置5のすべてについて、検知部により第1の位置でアーム部53を保持した状態を検知した場合にのみ、上部旋回体1を旋回駆動可能とするように前記駆動部43を制御する。この構成によれば、作業者がアーム部53の固定を忘れた場合や、別の位置で固定した場合には、上部旋回体1が旋回しないため、旋回式作業機械の転倒を、より効果的に防止できる。
【0060】
また、本実施形態の旋回式作業機械は次の付加的な構成を有する。すなわち、本実施形態の旋回式作業機械は、トラックフレーム4に対して移動可能に設けられ、それぞれにクローラ48が設けられる一対のクローラフレーム45をさらに備える。第2の位置は、一対のクローラフレーム45の間の距離を変更するための位置である。この構成によれば、クローラフレーム45の間の距離を変更する途中に、上部旋回体1を旋回させることができなくなり、このときに起こる転倒を防止できる。
【0061】
また、本実施形態の旋回式作業機械は次の付加的な構成を有する。すなわち、本実施形態の旋回式作業機械は、上部旋回体1の旋回角度を検知する旋回角度検知部62と、ジャッキアップ装置5のジャッキアップの駆動を制御するジャッキアップ制御部73をさらに備える。ジャッキアップ制御部73は、複数のジャッキアップ装置5が第2の位置にある状態での上部旋回体1の重心の位置が、第一旋回領域にあるか、第二旋回領域にあるかを判断する。第一旋回領域は、複数のジャッキアップ装置5が第2の位置にある状態での上部旋回体1の重心の位置が、複数のジャッキアップ装置5に支持される領域である。第二旋回領域は、複数のジャッキアップ装置5が第2の位置にある状態での上部旋回体1の重心の位置が、複数のジャッキアップ装置5に支持されない領域である。また、ジャッキアップ制御部73は、複数のジャッキアップ装置5が第2の位置にある状態でかつ上部旋回体1が第二旋回領域に位置する場合に、ジャッキアップ装置5によりトラックフレーム4をジャッキアップさせないように制御する。この構成によれば、ジャッキアップ装置5によるジャッキアップ前に、予め、上部旋回体1が転倒可能性のある位置に位置していた場合の転倒を未然に防ぐことができる。
【0062】
また、本実施形態の旋回式作業機械は次のように構成される。すなわち、本実施形態の旋回式作業機械は、トラックフレーム4と、トラックフレーム4に旋回可能に取り付けられた上部旋回体1と、トラックフレーム4をジャッキアップする複数のジャッキアップシリンダ51と、ジャッキアップシリンダ51の駆動を制御するジャッキアップ制御部73と、上部旋回体1の旋回角度を検知する旋回角度検知部62とを備える。ジャッキアップ制御部73は、上部旋回体1の重心の位置が、第一旋回領域にあるか、第二旋回領域にあるかを判断する。また、ジャッキアップ制御部73は、複数のジャッキアップシリンダ51によりトラックフレーム4がジャッキアップされていない状態において、上部旋回体1が第二旋回領域に位置する場合に、ジャッキアップシリンダ51によりトラックフレーム4をジャッキアップさせないように制御する。この構成によれば、ジャッキアップ装置5によるジャッキアップ前に、予め、上部旋回体1が転倒可能性のある位置に位置していた場合の転倒を未然に防ぐことができる。
【0063】
また、本実施形態の旋回式作業機械は次の付加的な構成を有する。すなわち、本実施形態の旋回式作業機械は、複数のジャッキアップシリンダ51は、第1の位置と、第2の位置とに位置変更可能に構成されている。旋回式作業機械は、複数のジャッキアップシリンダ51の位置が第1の位置にあることを検知する検知部をさらに備える。ジャッキアップ制御部73は、検知部によりジャッキアップシリンダ51が第1の位置にあることを検知した場合、ジャッキアップシリンダ51でトラックフレーム4をジャッキアップできるように制御する。検知部によりジャッキアップシリンダ51が第1の位置にないことを検知した場合、上部旋回体1が第一旋回領域にあるか第二旋回領域にあるかを判断し、上部旋回体1が第一旋回領域に位置するときにはジャッキアップシリンダ51でトラックフレーム4をジャッキアップできるように制御し、上部旋回体1が第二旋回領域に位置するときにはジャッキアップシリンダ51でトラックフレーム4をジャッキアップさせないように制御する。この構成によれば、ジャッキアップ装置5によるジャッキアップ前に、予め、上部旋回体1が転倒可能性のある位置に位置していた場合の転倒を未然に防ぐことができる。
【0064】
(応用)
本実施形態の旋回式作業機械は、旋回駆動制御部72による制御とジャッキアップ制御部73による制御とをいずれも行うものであったが、旋回駆動制御部72による制御のみを行うものであったり、ジャッキアップ制御部73による制御のみを行うものであったりしてもよい。旋回式作業機械の必要に応じて、いずれかまたは両方の制御を行うように構成すればよい。ジャッキアップ制御部73による制御のみを行う旋回式作業機械であれば、ジャッキアップ装置5は、位置変更可能でなくてもよく、例えば、常時、丸積輸送位置P2に位置する構成であってもよい。
【0065】
また、本実施形態の旋回式作業機械は、第1の位置が分解作業位置P1であり、第2の位置が丸積輸送位置P2であり、ジャッキアップ装置5が第2の位置にある場合に、上部旋回体1が旋回しないように構成されていたが、第2の位置が、例えば、分解輸送位置P3であってもよく、第2の位置については、本実施形態のものに限定されない。また、ジャッキアップ装置5の第1の位置は、上部旋回体1が旋回しても転倒しない位置であればよく、分解作業をするための位置でなくてもよい。
【0066】
第二旋回領域は、安全率を考慮して、実際の転倒可能性がある領域よりも広い範囲に設定してもよい。
【0067】
本実施形態のピン検知部は、分解作業位置に対応する貫通孔に挿通された固定ピン56を検知するリミットスイッチにより構成されたが、これに限られない。ピン検知部61は、全ての貫通孔に対して、固定ピン56の有無を検知するように構成されてもよい。また、ピン検知部はリミットスイッチのような接触式センサでなくてもよく、例えば近接センサなどの非接触式センサにより構成されてもよい。
【0068】
本実施形態の旋回式作業機械は、クローラクレーンであったが、本発明は、例えば、ショベルや、解体機、破砕機等であってもよい。
【0069】
また、この他、本実施形態の旋回式作業機械は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。