【実施例1】
【0015】
図1は本発明に適用されるインバータ装置の構成図を示したものである。
図6と同様に構成された単相フルブリッジ構成のインバータ回路IV−1〜IV−3の3台を、共通の直流電源である順変換回路Covに並列に接続されてそれぞれには直流電圧Edcが印加される。Lは各インバータ回路IV−1〜IV−3の各出力端子に接続されたリアクトル、U,VはU相及びV相の出力端子である。また、1〜6は各インバータ回路IV−1〜IV−3を構成する各IGBT素子に対するゲート信号の印加順番を示したもので、各インバータ回路IV−1〜IV−3のIGBT素子は1〜6の順序でオン制御されて
図2で示すように制御順に対応した電圧が出力される。
【0016】
すなわち、オン制御の順番1では、インバータ回路IV−1のU相アームにおける第1のIGBT素子Tu1-1とV相アームの第2のIGBT素子Tv1-2を同時オンする。電流は、P→Tu1-1→U→V→Tv1-2→Nのルートで流れる。
順番2では、インバータ回路IV−2のV相アームにおける第1のIGBT素子Tv2-1とU相アームの第2のIGBT素子Tu2-2を同時オンする。電流は、P→Tv2-1→V→U→Tu2-2→Nのルートで流れる。
順番3では、インバータ回路IV−3のU相アームにおける第1のIGBT素子Tu3-1とV相アームの第2のIGBT素子Tv3-2を同時オンする。電流は、P→Tu3-1→U→V→Tv3-2→Nのルートで流れる。
【0017】
次に、順番4では、インバータ回路IV−1のV相アームにおける第1のIGBT素子Tv1-1とU相アームの第2のIGBT素子Tu1-2を同時オンする。電流は、P→Tv1-1→V→U→Tu1-2→Nのルートで流れる。
以下同様にして順番5,6とそれぞれ対応するIGBT素子を駆動し、順番1〜順番6→順番1→…の順番の繰返し制御となる。
【0018】
図3はIGBT素子のゲート電圧とコレクタ・エミッタ間電圧の関係を示したもので、(a)はインバータ回路IV−1におけるIGBT素子Tu1-1のゲート電圧、(b)はIGBT素子Tu1-1のコレクタ・エミッタ間電圧、(c)はインバータ回路IV−2におけるIGBT素子Tu2-2のゲート電圧、(c)はIGBT素子Tu2-2のコレクタ・エミッタ間電圧である。
【0019】
IGBT素子のターンオン・ターンオフ時の波形は
図5で示すように直線的には動作しないが、
図3では直線的動作として表示している。
図3(a)でTu1-1に対するゲート電圧が立ち上がり、Tu1-1のターンオン(ton)後にはTu1-1のコレクタ・エミッタ間電圧は略定常の順方向電圧にまで低下する。Tu1-1に対するゲート電圧がなくなる時刻t1からターンオフ(toff)する時刻t3で、コレクタ・エミッタ間電圧は略定常のオフ電圧まで回復する。
【0020】
図1で示すインバータ装置の駆動時において、順番1のIGBT素子の駆動時から順番2でのIGBT素子への転流時にはTu1-1とTu2-2が直列接続された状態となる。この転流時には、
図3で示されるようにTu1-1のゲート電圧がなくなった時刻t1からターンオフする時刻t3までは導通し、この直後にオフする。本発明では、Tu1-1からTu2-2への転流時には、時刻t3前の時刻t2でTu2-2に対してゲート信号を印加してデッドタイム期間を短縮している。すなわち、デッドタイムは、toff−tonとなっている。
以下、Tv2-1とTv3-2、Tu3-1とTu1-2…の関係についても同様である。
【0021】
図3の例において、制御順番が先になる正極側のIGBT素子Tu1-1から、このTu1-1と同相の、次番で制御される負極側IGBT素子Tu2-2へ転流する時刻t1〜t3間において、「Tu1-1のコレクタ・エミッタ間電圧CE+Tu2-2のコレクタ・エミッタ間電圧CE=直流電圧Edc」が成立していればTu1-1からTu2-2への短絡電流は流れない。しかし、実際の波形によっては、
図4で示すように「Tu1-1のコレクタ・エミッタ間電圧CE+Tu2-2のコレクタ・エミッタ間電圧CE<直流電圧Edc」となる可能性がある。
【0022】
「Tu1-1のコレクタ・エミッタ間電圧CE+Tu2-2のコレクタ・エミッタ間電圧CE<直流電圧Edc」の式が成立する期間が生じると、直流電圧Edc−(Tu1-1のコレクタ・エミッタ間電圧CE+Tu2-2のコレクタ・エミッタ間電圧CE)(=vとする)の電圧が電源となり、P側からリアクトルLを通してN側に短絡電流が流れる。この電流を所定の値△Iに抑制するためにリアクトルLを挿入している。所定の値△Iはおおよそ(1)式で求める。
【0023】
【数1】
【0024】
以上第1の実施例によれば、デッドタイムの短縮が可能となる。また、例えIGBT素子のオン・オフのスイッチ速度によるインバータ装置のデッドタイム不足に陥った場合でも、単相のインバータ回路の出力側に接続したリアクトルによって、インバータ回路間の短絡を防ぎつつデッドタイム短縮が可能となるものである。したがって、IGBT素子の不導通期間が少なくなり、直流電圧に対して最大の出力電圧を発生させることができる。
【実施例2】
【0025】
図5は、第2の実施例によるインバータ装置の構成図を示したもので、
図1で示す第1の実施例と同一部分に同一符号を付してその説明を省略する。すなわち、この実施例は、各インバータ回路IV−1〜IV−3に設けられた平滑コンデンサC1〜C3と順変換回路Covとの間に、それぞれリアクトルL1〜L6を接続したものである。なお、リアクトルL1´〜L6´は配線インダクタンスである。
【0026】
各インバータ回路IV−1〜IV−3のIGBT素子は、1〜6の順序でオン制御されて
図6で示すように制御順に対応した電圧が出力される。
図1と同様に、オン制御の順番1では、インバータ回路IV−1のU相アームにおける第1のIGBT素子Tu1-1とV相アームの第2のIGBT素子Tv1-2を同時オンする。また、順番2では、インバータ回路IV−2のV相アームにおける第1のIGBT素子Tv2-1とU相アームの第2のIGBT素子Tu2-2を同時オンする。
【0027】
順番1から2への動作時でU相からV相へ流れる負荷電流は、主に平滑コンデンサC1から供給され、順番2から3への動作時でV相からU相へ流れる負荷電流は、主に平滑コンデンサC2から供給される。通常動作でのU相からV相への電流経路は、C1(P)→Tu1-1→U→負荷→V→Tv1-2→C1(N)のルートで流れる。また、V相からU相への電流経路は、C2(P)→Tv2-1→V→負荷→U→Tu2-2→C2(N)のルートで流れる。
【0028】
次に、順番1から2への転流動作時に短絡が起きた場合、Tu1-1,Tu2-2に通電される短絡電流経路と電流は、
(C1(P)→Tu1-1→Tu2-2→L4´→L4→L2→L2´→C1(N))+
(C2(P)→L3´→L3→L1→L1´→Tu1-1→Tu2-2→C2(N))
のルートで流れる。
【0029】
同様に、Tv2-1,Tv1-2に通電される短絡電流経路と電流は、
(C2(P)→Tv2-1→Tv1-2→L2´→L2→L4→L4´→C2(N))+
(C1(P)→L1´→L1→L3→L3´→Tv2-1→Tv1-2→C1(N))
のルートで流れる。
【0030】
上記のように、インバータを時分割運転するものにおいて、平滑コンデンサC1〜C3と順変換回路Covとの間に、それぞれリアクトルL1〜L6を接続したことにより、平滑コンデンサC1〜C3の接続関係から正常時の負荷電流と上下アーム短絡時の短絡電流に通電経路に違いが成立し、正常時には出力電流に影響を与えず、各リアクトルL1〜L6は上下アーム短絡時の短絡電流のみを抑制することができる。
【0031】
したがって、この実施例によれば、IGBT素子の電流、電圧責務の過大および損失増大防止のために設けられるデッドタイムの最短化が可能となる。