(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の熱硬化性コーティング組成物は、アクリルポリオール(a)と、低分子ポリオール(b)と、シリカ粒子(c)と、ポリイソシアネート(d)と、触媒(e)を含有する。
【0021】
<アクリルポリオール(a)>
本発明のアクリルポリオール(a)は、主に、硬化膜に可とう性を付与する作用、基材である樹脂部材との密着性を付与する作用を有し、水酸基含有モノマーを含むラジカル重合性モノマーをラジカル重合して得られる、水酸基含有(メタ)アクリルポリマーである。
【0022】
<水酸基含有モノマー>
前記水酸基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基又はビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつ水酸基を有するものを特に制限なく用いることができる。水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルシクロアルカン(メタ)アクリレートが挙げられる。また、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートの6−ヘキサノリド付加重合物(重合度1〜6)、グリセリルモノ(メタ)アクリレート、グリセリル−1−(メタ)アクリロイルオキシエチルウレタン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等が挙げられる。水酸基含有モノマーは単独で又は組み合わせて使用できる。これらのなかでも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキルシクロアルカン(メタ)アクリレートが好適であり、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートがより好適である。
【0023】
<アルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレート>
前記水酸基含有モノマー以外のラジカル重合性モノマーとしては、硬化膜の可とう性を高める観点、及び基材との密着性を高める観点から、アルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。アルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、直鎖のアルキル基、分岐鎖のアルキル基、環状のシクロアルキル基等が挙げられる。アルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートは、硬化膜の可とう性をより高める観点、及び基材との密着性をより高める観点から、アルキル基の炭素数が1〜18であることが好ましく、3〜14であることが好ましく、5〜10であることがより好ましい。
【0024】
前記アルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、イソヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソへプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ウンデシルアクリレート、イソウンデシルアクリレート、n−ドデシルアクリレート、イソドデシルアクリレート、n−トリデシルアクリレート、イソトリデシルアクリレート、n−ミスチリルアクリレート、イソミスチリルアクリレート、n−ペンタデシルアクリレート、イソペンタデシルアクリレート、n−ヘキサデシルアクリレート、イソヘキサデシルアクリレート、n−ヘプタデシルアクリレート、イソヘプタデシルアクリレート、n−オクタデシルアクリレート、イソオクタデシルアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。アルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートは単独で又は組み合わせて使用できる。これらのなかでも、シクロアルカン(メタ)アクリレートが好適であり、シクロヘキシル(メタ)アクリレートがより好適である。
【0025】
前記ラジカル重合性モノマーとしては、その他のラジカル重合性モノマーとして、平均付加モル数2〜10のオキシエチレン基を有する、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロポキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のエーテル結合含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−メチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−エチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−ブチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−ヘキシルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート等の環状エーテル基含有モノマー;(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド系モノマー;メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル等のアルコキシシラン基を有する(メタ)アクリレート等を用いることができる。その他のラジカル重合性モノマーは単独で又は組み合わせて使用できる。
【0026】
本発明において、前記水酸基含有モノマーは、アクリルポリオール(a)を形成する全モノマー成分に対して、硬化膜の架橋密度を高める観点から、10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましい。水酸基含有モノマーは、アクリルポリオール(a)を形成する全モノマー成分に対して、硬化膜の可とう性を高める観点から、50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましい。
【0027】
本発明において、前記アルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートは、アクリルポリオール(a)を形成する全モノマー成分に対して、基材との密着性を高める観点から、50重量%以上であることが好ましく、60重量%以上であることがより好ましい。アルキル基をエステル末端に有するアルキル(メタ)アクリレートは、アクリルポリオール(a)を形成する全モノマー成分に対して、硬化膜の架橋密度を高める観点から、90重量%以下であることが好ましく、80重量%以下であることがより好ましい。
【0028】
<アクリルポリオール(a)の製造方法>
前記アクリルポリオール(a)の製造方法は、溶液重合、電子線やUV等の放射線重合、塊状重合、乳化重合等の各種ラジカル重合の公知の製造方法を適宜選択できる。また、アクリルポリオール(a)は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれでもよい。
【0029】
前記ラジカル重合において、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、ジアゾ系開始剤、レドックス系開始剤等の公知の重合開始剤;メルカプタン系連鎖移動剤、チオグリコール酸系連鎖移動剤等の連鎖移動剤;アニオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤等の乳化剤等は、特に限定されず適宜選択して使用できる。尚、アクリルポリオール(a)の重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0030】
前記溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、アルコール系、カルボン酸エステル系、ケトン系、アミド系、エーテル系、脂肪族及び芳香族炭化水素系の溶媒を用いることができる。アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2−ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、ターシャリーアミルアルコール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。カルボン酸エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸ブチル、ギ酸ブチル等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。アミド系溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、メトキシトルエン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。脂肪族及び芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ヘキサン、ペンタンキシレン、トルエン、ベンゼン等が挙げられる。重合溶媒は単独で又は組み合わせて使用できる。
【0031】
前記溶液重合の具体的な例としては、反応は窒素等の不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、40〜170℃程度で、4〜10時間程度の反応条件で行われる。
【0032】
前記アクリルポリオール(a)の重量平均分子量は、硬化膜の可とう性を高める観点から、5,000以上であることが好ましく、10,000以上であることがより好ましい。アクリルポリオール(a)の重量平均分子量は、熱硬化性コーティング組成物に含まれる成分との相溶性を高める観点から、200,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがより好ましい。
【0033】
前記アクリルポリオール(a)の重量平均分子量は、GPC法にて求めることができる。サンプルは、試料をTHFに溶解して0.3重量%の溶液とし、0.25μmのメンブレンフィルターでろ過したものを用い、以下の条件にて測定することができる。
<重量平均分子量(Mw)の測定>
・分析装置:TOSOH HLC−8320GPC
・カラム1、2:TSKgel SuperMulbipore HZ−M
・カラムサイズ:15 cm× 4.6 mmφ (2本すべて)
・溶離液:THF
・流量:0.35 ml/min
・検出器:RI
・カラム温度:40℃
・標準試料:ポリスチレン
【0034】
前記アクリルポリオール(a)の水酸基価は、硬化膜の架橋密度を高める観点から、1mg・KOH/g以上であることが好ましく、20mg・KOH/g以上であることがより好ましく、40mg・KOH/g以上であることがさらに好ましい。アクリルポリオール(a)の水酸基価は、硬化膜の可とう性を高める観点から、200mg・KOH/g以下であることが好ましく、180mg・KOH/g以下であることがより好ましく、160mg・KOH/g以下であることがさらに好ましい。尚、アクリルポリオール(a)の水酸基価は、アクリルポリオール(a)を形成する全モノマーの仕込み量から算出される理論値である。
【0035】
<低分子ポリオール(b)>
本発明の低分子ポリオール(b)は、1分子中に少なくとも2つ以上の水酸基を有する化合物であり、分子量が60〜500であり、かつ水酸基価が500〜2,000mg・KOH/gである。低分子ポリオール(b)は、主に、硬化膜の架橋密度を高め、硬化膜の耐擦傷性を向上させる作用を有する。
【0036】
前記低分子ポリオール(b)の分子量は、硬化膜の可とう性を高める観点、及び熱硬化性コーティング組成物への溶解性を高める観点から、70以上であることが好ましく、80以上であることがより好ましく、90以上であることがさらに好ましい。低分子ポリオール(b)の分子量は、硬化膜の架橋密度を高める観点から、400以下であることが好ましく、300以下であることがより好ましく、200以下であることがさらに好ましい。
【0037】
前記低分子ポリオール(b)の水酸基価は、硬化膜の架橋密度を高める観点から、600mg・KOH/g以上であることが好ましく、700mg・KOH/g以上であることがより好ましく、800mg・KOH/g以上であることがさらに好ましい。低分子ポリオール(b)の分子量は、硬化膜の可とう性を高める観点、及び熱硬化性コーティング組成物への溶解性を高める観点から、1,900mg・KOH/g以下であることが好ましく、1,800mg・KOH/g以下であることがより好ましく、1,700mg・KOH/g以下であることがさらに好ましい。
【0038】
前記低分子ポリオール(b)としては、例えば、エタンジオール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキシルジメタノール、メチルプロパンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ポリカプロラクトントリオール、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリカプロラクトンテトラオール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール等が挙げられる。低分子ポリオール(b)は単独で又は組み合わせて使用できる。前記ポリカプロラクトントリオールの市販品としては、例えば、Perstorp社製のPolyol3940、R3600、及びダイセル化学社製のプラクセル303等が挙げられる。また、前記ポリカプロラクトンテトラオールの市販品としては、Perstorp社製のPolyol4525、Polyol4800等が挙げられる。特に、シクロヘキシルジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ポリカプロラクトントリオール、ポリカプロラクトンテトラオールが好適である。
【0039】
<シリカ粒子(c)>
本発明のシリカ粒子(c)は、主に、硬化膜の形成時の体積収縮を抑制し、基材との密着性を高める作用、硬化膜の耐擦傷性を向上させる作用を有する。シリカ粒子(c)の平均粒子径は、硬化膜の光線透過率を高める観点から、できるだけ小さい粒子(微粒子)であることが好ましく、具体的には、300nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。
【0040】
前記シリカ粒子(c)は、公知のものを制限なく使用できるが、硬化膜の光線透過率を高める観点、及び硬化膜の耐擦傷性を高める観点から、有機溶媒に分散したシリカゾルの状態の、シリカ粒子(c)の分散体(コロイダルシリカ)を用いることが好ましい。有機溶媒に分散された状態において、シリカ粒子(c)の表面は、通常、各種のシラン化合物(シランカップリング剤)等によって予め表面処理されているので、シリカ粒子(c)の表面は疎水性を有する。表面処理されたシリカ粒子(c)を用いることで、硬化膜の耐薬品性、耐候性が良好となる。
【0041】
前記シリカ粒子(c)の分散体(コロイダルシリカ)の市販品としては、例えば、日産化学社製の、メタノール分散シリカゾル(商品名:MA−ST)、イソプロピルアルコール分散シリカゾル(商品名:IPA−ST)、n−ブタノール分散シリカゾル(商品名:NBA−ST)、エチレングリコール分散シリカゾル(商品名:EG−ST)、キシレン/ブタノール分散シリカゾル(商品名:XBA−ST)、エチルセロソルブ分散シリカゾル(商品名:ETC−ST)、ブチルセロソルブ分散シリカゾル(商品名:BTC−ST)、ジメチルホルムアミド分散シリカゾル(商品名:DBF−ST)、ジメチルアセトアミド分散シリカゾル(商品名:DMAC−ST)、メチルエチルケトン分散シリカゾル(商品名:MEK−ST)、メチルイソブチルケトン分散シリカゾル(商品名:MIBK−ST)、酢酸エチル分散シリカゾル(商品名:EAC−ST)等が挙げられる。
【0042】
<ポリイソシアネート(d)>
本発明のポリイソシアネート(d)は、1分子中に少なくとも2つ以上のイソシアネート基を有する化合物であり、水酸基との硬化(架橋)反応、あるいはイソシアネート基同士の硬化(架橋)反応することで、主に、硬化膜の架橋密度を向上させる作用を有する。
【0043】
前記ポリイソシアネート(d)は、公知のものを制限なく使用できるが、ジイソシアネート及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である化合物であることが好ましい。ジイソシアネートとしては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の、脂肪族、脂環式、及び芳香族ジイソシアネートが挙げられる。ジイソシアネートの誘導体としては、例えば、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等を出発原料として合成されたもので、ビュレット体、トリメチロールプロパンとのアダクト体、イソシアヌレート体、アロファネート体等の、脂肪族、脂環式、及び芳香族ジイソシアネートの誘導体等が挙げられる。ポリイソシアネート(d)は、硬化膜の架橋密度を高める観点から、脂肪族、脂環式、及び芳香族ジイソシアネートの誘導体が好ましい。また、ポリイソシアネート(d)は、硬化膜の耐候性を高める観点から、脂肪族又は脂環式ジイソシアネートの誘導体が好ましい。ポリイソシアネート(d)は単独で又は組み合わせて使用できる。尚、イソシアネート基はブロック剤等で保護されていてもよい。
【0044】
前記ポリイソシアネート(d)の市販品としては、例えば、旭化成ケミカルズ社製の、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体(商品名:デュラネート24A−100)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名:デュラネートTPA−100)、住化バイエルウレタン社製のヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体(商品名:デスモジュールXP2679)、三井化学社製の1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのトリメチロールプロパンアダクト体(商品名:タケネートD−120N)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート体(商品名:タケネートD−127N)、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体(商品名:タケネートD−140N)等が挙げられる。これらのなかでも、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体が好適である。
【0045】
<触媒(e)>
本発明の触媒(e)は、下記一般式(1)
【化3】
[式中、XはpKa=2〜12の酸を示す]及び/又は下記一般式(2)
【化4】
[式中、XはpKa=2〜12の酸を示す]で表される3級アミン塩であり、水酸基とイソシアネート基、あるいはイソシアネート基同士の硬化(架橋)反応を促進する作用を有する。
【0046】
前記一般式(1)中のカチオンは、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBNと称す)であり、前記一般式(2)中のカチオンは、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBUと称す)である。また、前記一般式(1)及び(2)中のXは、pKa=2〜12の酸を示す。前記酸としては、有機酸又は無機酸が挙げられる。触媒(e)は単独で又は組み合わせて使用できる。
【0047】
前記有機酸としては、例えば、カルボン酸として、飽和脂肪族カルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、メチルエチル酢酸、トリメチル酢酸、カプロン酸、イソカプロン酸、ジエチル酢酸、2,2−ジメチル酪酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、2−エチルヘキサン酸、n−ウンデシレン酸、ラウリン酸、n−トリデシレン酸、ミリスチン酸、n−ペンタデシレン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、n−ノナデシレン酸、アラキジン酸、n−ヘンアイコ酸等)、不飽和脂肪族カルボン酸(アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸、2−ペンテン酸、3−ペンテン酸、アリル酢酸、アンゲリカ酸、チグリン酸、3−メチルクロトン酸、2−ヘキセン酸、3−ヘキセン酸、4−ヘキセン酸、5−ヘキセン酸、2−メチル−2−ペンテン酸、3−メチル−2−ペンテン酸、4−メチル−2−ペンテン酸、4−メチル−2−ペンテン酸、4−メチル−3−ペンテン酸、2−エチルクロトン酸、2−へプテン酸、2−オクテン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、エレステアリン酸、アラキドン酸等)、飽和脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、メチルコハク酸、アジピン酸、エチルコハク酸、ピメリン酸、プロピルコハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等)、脂環式カルボン酸(シクロプロパンカルボン酸、シクロブタンカルボン酸、シクロブテンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロペンテンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキセンカルボン酸、シクロヘプタンカルボン酸、シクロヘプテンカルボン酸等)、芳香族カルボン酸(安息香酸、アルキル置換安息香酸(3−メチル安息香酸、4−メチル安息香酸、3−エチル安息香酸、4−エチル安息香酸等)、4−ヒドロキシ安息香酸、アルコキシ置換安息香酸(2−メトキシ安息香酸、3−メトキシ安息香酸、4−メトキシ安息香酸等)、メルカプト安息香酸、アミノ置換安息香酸、2−ナフトエ酸等)、ヒドロキシカルボン酸(アスコルビン酸等)、ケトカルボン酸(レブリン酸等)が挙げられる。
【0048】
また、前記有機酸としては、例えば、モノアルキル炭酸(メチル炭酸及びエチル炭酸等);芳香族ヒロドキシ化合物{フェノール、アルキル置換フェノール(o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2−エチルフェノール、3−エチルフェノール、4−エチルフェノール、キシレノール、トリメチルフェノール、テトラメチルフェノール、ペンタメチルフェノール等)、アルコキシ置換フェノール(2−メトキシフェノール、3−メトキシフェノール、4−メトキシフェノール、2−エトキシフェノール、3−エトキシフェノール、4−エトキシフェノール等)、ハロゲン置換フェノール(フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール等)、ナフトール、アミノフェノール、ニトロフェノール、多価フェノール(カテコール、レソルシノール、ヒドロキノン、ビフェノール、ビスフェノール、ピロガロール、フロログルシノール、ヘキサヒドロキシベンゼン等)}、チオフェノール等が挙げられる。
【0049】
前記無機酸としては、例えば、炭酸、ホウ酸等が挙げられる。
【0050】
前記酸は、熱硬化性コーティング組成物への溶解性の高い観点から、有機酸が好ましく、有機酸としては、飽和脂肪族カルボン酸類、不飽和脂肪族カルボン酸類、芳香族ヒロドキシ化合物が好ましい。前記酸は、pKaが3以上であることが好ましく、10以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましい。
【0051】
前記触媒(e)の市販品としては、サンアプロ社製の、DBU−ギ酸塩(商品名:U−CAT SA603)、DBU−オクチル酸塩(商品名:U−CAT SA102)、DBU−オレイン酸塩(商品名:U−CAT SA106)、DBU−フェノール塩(U−CAT SA1)、DBN−オクチル酸塩(商品名:U−CAT SA1102)等が挙げられる。これらのなかでも、DBU−ギ酸塩、DBU−オクチル酸塩、DBU−オレイン酸塩、DBN−オクチル酸塩が好適である。
【0052】
以下に、本発明の熱硬化性コーティング組成物において、前記(a)〜(e)成分の含有量、配合量、又は使用量について説明する。
【0053】
前記アクリルポリオール(a)の含有量は、前記(a)〜(d)成分の合計重量に対して、0.5〜21重量%である。アクリルポリオール(a)の含有量は、基材への密着性を高める観点から、前記(a)〜(d)成分の合計重量に対して、2重量%以上であることが好ましく、4重量%以上であることがより好ましい。アクリルポリオール(a)の含有量は、硬化膜の耐擦傷性を高める観点から、前記(a)〜(d)成分の合計重量に対して、20重量%以下であることが好ましい。
【0054】
前記低分子ポリオール(b)の含有量は、前記(a)〜(d)成分の合計重量に対して、0.5〜17重量%である。低分子ポリオール(b)の含有量は、硬化膜の耐擦傷性を高める観点から、前記(a)〜(d)成分の合計重量に対して、1重量%以上であることが好ましい。低分子ポリオール(b)の含有量は、基材への密着性を高める観点から、前記(a)〜(d)成分の合計重量に対して、15重量%以下であることが好ましい。
【0055】
前記シリカ粒子(c)の含有量は、前記(a)〜(d)成分の合計重量に対して、36〜79重量%である。シリカ粒子(c)の含有量は、硬化膜の耐擦傷性を高める観点、硬化膜の透明性を高める観点、及び基材への密着性を高める観点から、前記(a)〜(d)成分の合計重量に対して、38重量%以上であることが好ましい。シリカ粒子(c)の含有量は、硬化膜の耐擦傷性を高める観点、硬化膜の透明性を高める観点、及び基材への密着性を高める観点から、前記(a)〜(d)成分の合計重量に対して、77重量%以下であることが好ましい。
【0056】
前記触媒(e)の使用量は、シリカ粒子(c)100重量部に対して、0.1〜2.2重量部である。触媒(e)の使用量は、硬化反応の進行を高める観点から、シリカ粒子(c)100重量部に対して、0.2重量部以上であることが好ましく、0.3重量部以上であることがより好ましい。触媒(e)の使用量は、基材への密着性を高める観点から、シリカ粒子(c)100重量部に対して、2.1重量部以下であることが好ましく、2.0重量部以下であることがより好ましい。
【0057】
前記アクリルポリオール(a)、低分子ポリオール(b)、及びポリイソシアネート(d)の配合量は、(d)のイソシアネート基/{(a)と(b)の合計の水酸基}の当量比が0.4〜2.4の割合である。前記当量比の割合は、硬化膜の耐擦傷性を高める観点から、0.5以上であることが好ましい。前記当量比の割合は、基材への密着性を高める観点から、2.2以下であることが好ましく、2.0以下であることがより好ましい。尚、ポリイソシアネート(d)は、イソシアネート基含有率(%)が、理論値、又は実測値(JIS K1603−1)で規定されるので、これらの値を用いて下記式数1で必要量を算出することができる。
【数1】
【0058】
<有機溶媒>
前記(a)〜(e)成分を含有する熱硬化性コーティング組成物は、有機溶媒で希釈して調製することができる。
【0059】
前記有機溶媒としては、アルコール系、カルボン酸エステル系、ケトン系、アミド系、エーテル系、脂肪族及び芳香族炭化水素系の溶媒が挙げられる。アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール、2−メトキシエタノール(メチルセロソルブ)、2−エトキシエタノール(エチルセロソルブ)、2−ブトキシエタノール(ブチルセロソルブ)、ターシャリーアミルアルコール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。カルボン酸エステル系溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸ブチル、ギ酸ブチル等が挙げられる。ケトン系溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。アミド系溶媒としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。エーテル系溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、メトキシトルエン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン、1,1−ジメトキシメタン、1,1−ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。脂肪族及び芳香族炭化水素系溶媒としては、例えば、ヘキサン、ペンタンキシレン、トルエン、ベンゼン等が挙げられる。有機溶媒は単独で又は組み合わせて使用できる。これらのなかでも、ジアセトンアルコール、ターシャリーアミルアルコール等の3級アルコール系の極性溶媒が好適である。
【0060】
本発明の熱硬化性コーティング組成物は、硬化膜の耐候性を高めるため、あるいは硬化膜を透過した紫外線による基材となる樹脂部材の劣化を防止するため、紫外線吸収剤を用いることができる。
【0061】
前記紫外線吸収剤としては、公知のものを制限なく使用できるが、例えば、サリシレート系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物等が挙げられる。ベンゾフェノン系化合物としては、2−ヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクチロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン等、サリシレート系化合物としては、フェニルサリシレート、p−tert.−ブチルフェニルサリシレート、p−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)フェニルサリシレート、3−ヒドロキシフェニルベンゾエート、フェニレン−1,3−ジベンゾエート等、ベンゾトリアゾール系化合物としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert.−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert.−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert.−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物としては、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチロキシフェニル)−6−(2,4−ビス−ブチロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[4[(2−ヒドロキシ−3−(2’−エチル)ヘキシル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。紫外線吸収剤は単独で又は組み合わせて使用できる。これらのなかでも、塗膜形成成分の(a)〜(d)との相溶性が良く、紫外線領域における吸光係数が大きい観点から、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジンが好適である。
【0062】
本発明の熱硬化性コーティング組成物には、必要により、レベリング剤、酸化防止剤、消泡剤、レオロジーコントロール剤等の慣用の各種添加剤を配合することができる。
【0063】
<硬化膜>
本発明の熱硬化性コーティング組成物は、通常の塗料において行われる塗装方法により基材に塗装し、加熱硬化することによって、基材の表面に硬化膜を形成することができる。得られた硬化膜は、耐擦傷性、密着性、及び透明性に優れるため、いわゆる、ハードコート膜として用いることができる。
【0064】
前記基材としては、その種類は問わず、公知の樹脂基材(部材)が使用可能である。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂を問わず種々の樹脂基材(部材)が使用可能である。具体的には、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アセテート樹脂、ABS樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0065】
本発明の熱硬化性コーティング組成物を、樹脂基材(部材)に塗装する方法としては、特に限定がなく、バーコーター塗装、はけ塗り、流し塗り、浸漬塗り、スプレー塗り、スピンコート等の公知の方法が採用できる。
【0066】
本発明の熱硬化性コーティング組成物を加熱硬化する温度は、使用する基材樹脂の耐熱性や熱変形性等に応じて適宜調整すればよいが、50℃以上150℃以下であることが好ましく、80℃以上150℃以下であることがより好ましい。加熱時間は、加熱温度により異なるが、数分から数時間程度である。尚、本発明の熱硬化性コーティング組成物は、100℃〜120℃程度の加熱温度においても、10分〜20分程度で硬化(架橋)反応することができるため、生産効率性に優れる。
【0067】
前記硬化膜の膜厚は、基材となる樹脂基材(部材)の耐候性を高める観点から、0.5μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。硬化膜の膜厚は、硬化膜の密着性を高める観点、硬化膜の硬化時のクラックの発生を抑制する観点から、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施によりなんら限定されるものではない。
【0069】
<原料>
実施例又は比較例で使用した化合物を以下に示す。
<アクリルポリオール(a)>
<アクリルポリオール(a−1)の製造>
攪拌装置、窒素導入管及び冷却管を備えた反応容器に、重合溶媒としてジアセトンアルコール(DAA)を723.8重量部仕込み、窒素ガスを吹き込みながら85℃に加熱した。これに、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを100重量部(0.77mol)、シクロヘキシルメタクリレートを207.7重量部(1.23mol)、及びラジカル重合開始剤としてt−ヘキシルペルオキシピバレートの炭化水素希釈品(固形分濃度:70重量%、日油社製、商品名:パーヘキシルPV)4.4重量を含む混合物を2時間かけて滴下した。さらに2時間重合を行った後、室温まで冷却し、アクリルポリオール(a−1)の溶液(固形分濃度:30重量%、重量平均分子量:50,000、理論水酸基価:140mg・KOH/g)を得た。
【0070】
<アクリルポリオール(a−2)の製造>
攪拌装置、窒素導入管及び冷却管を備えた反応容器に、重合溶媒としてDAAを784.2重量部仕込み、窒素ガスを吹き込みながら85℃に加熱した。これに、2−ヒドロキシエチルメタクリレートを50.0重量部(0.38mol)、シクロヘキシルメタクリレートを283.3重量部(1.68mmol)、及びラジカル重合開始剤としてt−ヘキシルペルオキシピバレートの炭化水素希釈品(固形分濃度:70重量%、日油社製、商品名:パーヘキシルPV)4.8重量を含む混合物を2時間かけて滴下した。さらに2時間重合を行った後、室温まで冷却し、アクリルポリオール(a−2)の溶液(固形分濃度:30重量%、重量平均分子量:45,000、理論水酸基価:65mg・KOH/g)を得た。
【0071】
<低分子ポリオール(b)>
(b−1)トリメチロールプロパン(分子量:135、水酸基価:1,254mg・KOH/g)
(b−2)シクロヘキシルジメタノール(分子量:144、水酸基価:778mg・KOH/g)
(b−3)グリセリン(分子量:92、水酸基価:1,800mg・KOH/g)
(b−4)ポリカプロラクトンテトラオール(分子量:426、水酸基価:525mg・KOH/g、Perstorp社製、Polyol4525)
【0072】
<シリカ粒子(c)>
(c−1)メチルイソブチルケトン分散シリカゾル(固形分濃度:30重量%、平均粒子径:10〜20nm、日産化学社製、MIBK−ST)
(d−2)酢酸エチル分散シリカゾル(固形分濃度:30重量%、平均粒子径:10〜20nm、日産化学社製、EAC−ST)
【0073】
<ポリイソシアネート(d)>
(d−1)ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(固形分濃度:100重量%、イソシアネート基含有率23.0%、旭化成ケミカル社製、デュラネートTPA−100)
(d−2)ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体(固形分濃度:80重量%、イソシアネート基含有率15.5%、住化バイエルウレタン社製、デスモジュールXP2679)
【0074】
<触媒(e)>
DBU−ギ酸塩(サンアプロ社製、U−CAT SA603、ギ酸のpKa:3.8)
DBU―オクチル酸塩(サンアプロ社製、U−CAT SA102、オクチル酸のpKa:4.9)
DBU−オレイン酸塩(サンアプロ社製、U−CAT SA106、オレイン酸のpKa:4.8)
DBU−フェノール塩(サンアプロ社製、U−CAT SA1、フェノールのpKa:9.9)
DBN−オクチル酸塩(サンアプロ社製、U−CAT SA1102、オクチル酸のpKa:4.9)
【0075】
<上記触媒(e)に該当しないその他の触媒>
ジラウリン酸ジブチルスズ
DBU
DBN
酢酸ナトリウム
DBU−パラトルエンスルホン酸塩(サンアプロ社製、U−CAT SA506、パラトルエンスルホン酸のpKa:−2.8)
【0076】
<有機溶媒>
ジアセトンアルコール(DAA)
<レベリング剤>
ポリエーテル変性ポリジメリルシロキサン(ビックケミー社製、BYK−333)
【0077】
<熱硬化性コーティング組成物の製造>
蓋付きのポリプロピレンの容器に、上記で得られたアクリルポリオール(a−1)の溶液を56.7重量部(アクリルポリオール(a−1)が17.0重量部、溶媒としてDAAが39.7重量部含まれる)に、低分子ポリオール(b)としてトリメチロールプロパン(b−1)を3重量部、シリカ粒子(c)としてメチルイソブチルケトン分散シリカゾル(c−1)(MIBK−ST)を200重量部(シリカ粒子(c)が60重量部、溶媒としてMIBKが140.0重量部含まれる)、ポリイソシアネート(d)としてヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(d−1)(デュラネートTPA−100)を20.0重量部、触媒(e)としてDBU−ギ酸塩(U−CAT SA603)を0.6重量部、希釈溶媒としてDAAを153.7重量部、及びレベリング剤としてポリエーテル変性ポリジメリルシロキサン(BYK−333)を0.4重量部配合し、実施例1の配合物を得た。得られた配合物について、下記の(1)の評価を行った。結果を表3に示す。評価後、実施例1の熱硬化性コーティング組成物を得た。得られた熱硬化性コーティング組成物について、下記の(2)の評価を行った。結果を表3に示す。
【0078】
<実施例2〜20、比較例1〜15>
<熱硬化性コーティング組成物の製造>
表1〜4に示す組成及び割合で、実施例1に記載の方法により、実施例2〜20、及び比較例1〜15の配合物、及び熱硬化性コーティング組成物を得た。得られた配合物、及び熱硬化性コーティング組成物について、下記の(1)〜(2)の評価を行った。結果を表3及び4に示す。
【0079】
<硬化膜の作成>
25℃、40%RHの相対湿度に設定した環境下で、上記で得られた各熱硬化性コーティング組成物をポリカーボネート(PC)樹脂板(三菱ガス化学社製、ユーピロン、大きさ:5cm×8cm)に、硬化後の膜厚が10〜12μmになるように、バーコーター塗装法にて塗装を行い、115℃で20分間加熱硬化し、硬化膜を有する試験片を得た。得られた硬化膜を有する試験片を25℃で30分間放置した後、下記の(3)〜(5)の評価を行った。結果を表3及び4に示す。
【0080】
(1)触媒の溶解性の評価
得られた配合物をミックスローター(AS ONE社製、MIX−ROTAR MR5)を用いて25℃で混合し、触媒が全て溶解するまでの時間を測定した。
○:1時間未満
×:1時間以上
【0081】
(2)硬化性の評価
得られた熱硬化性コーティング組成物をシリコンウェハー(シリコンテクノロジー社製、大きさ:2cm×2cm)上に数滴塗工し、115℃×20分間での加熱処理の前後における赤外吸収スペクトルを透過法にて測定した。尚、加熱前においては溶媒のC−H伸縮ピーク強度の影響をできるだけ受けないように、窒素を吹きつけ溶媒を揮発させ、乾燥塗膜を得た後に赤外吸収スペクトルにて測定した。2270cm
−1に存在するN=C=O逆対称伸縮ピーク強度及び2952cm
−1に存在するC−H伸縮ピーク強度により、以下の式に基づいてイソシアネート(NCO)基消費率を求めた。また、得られたNCO基消費率に基づき、以下のように各触媒能を評価した。
【数2】
○:85%以上
×:85%未満
【0082】
(3)耐擦傷性の評価
荷重13.7KPaを載せたスチールウール(#000)を試験片の硬化膜の面上に置き、ラビングテスターで11往復させる試験条件で試験した後、ヘイズ(%)を測定すると共に、下記の評価基準で外観を評価した。
○:試験後のヘイズから試験前のヘイズを引いた値が5以下
×:試験後のヘイズから試験前のヘイズを引いた値が5よりも大きい
【0083】
(4)透明性の評価
ヘイズメーター(日本電色工業株式会社製、NDH5000)により、硬化膜を有する試験片のヘイズ(%)を測定すると共に、下記の評価基準で透明性を評価した。
○:ヘイズ5.0%以下
×:ヘイズ5.0%より大きい
【0084】
(5)密着性の評価
JIS K 5400 8.5.2に準じ、碁盤目テープ法にて試験片の硬化膜を貫通して素地面に達する切り傷を間隔1mmで碁盤目状につけて、ます目の数100とし、この碁盤目の上に粘着テープを貼り、次いでこのテープを剥がした後の塗膜の密着状態を目視により観察し、下記の評価基準で密着性を評価した。
○:剥がれなし
×:剥がれあり
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
実施例1〜20の配合物、及び熱硬化性コーティング組成物は、前記(1)及び(2)の評価基準を全て満たすことがわかった。また、実施例1〜20の硬化膜は、前記(3)〜(5)の評価基準を全て満たすことがわかった。よって、実施例1〜20の熱硬化性コーティング組成物によれば、シリカ粒子を含むウレタン組成物に、有機溶媒に対する溶解性が良好である触媒を用いながらも、合成樹脂の熱変形温度以下における温度でも十分に硬化(架橋)反応を進行させて、優れた耐擦傷性、透明性、及び密着性を有する硬化膜を形成できることがわかった。
【0090】
一方、比較例1のように、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズを用いた場合、硬化(架橋)反応が十分に進まないことが確認された。また、比較例2〜3のように、触媒としてDBU又はDBNを用いた場合、これら触媒が溶解せずに沈殿してしまうことがわかった。さらに、比較例4のように、触媒としてカルボン酸金属塩の酢酸ナトリウムを用いた場合、触媒の溶解に時間がかかることが確認された。また、比較例5のように、pKa:−2.8であるパラトルエンスルホン酸のDBU塩を用いた場合、硬化(架橋)反応が十分に進まないことがわかった。
【0091】
また、比較例6〜15の熱硬化性コーティング組成物では、(a)〜(e)成分の含有量、配合量、又は使用量が不適当であるため、少なくとも前記(2)〜(5)評価における一つの評価基準を満たすことができないことが確認された。