【文献】
旭化成アミダス株式会社「プラスチックス」編集部,プラスチック・データブック,株式会社 工業調査会,1999年12月 1日,初版,p.354−355
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリエチレン系樹脂(A)からなる層とポリプロピレン系樹脂(B)からなる層とが相接する積層体の製造方法であって、前記積層体が、相接するポリエチレン系樹脂(A)からなる層とポリプロピレン系樹脂(B)からなる層を含む、少なくとも2層の積層体であり、ポリエチレン系樹脂(A)が下記条件(a)〜(c)を満たし、ポリプロピレン系樹脂(B)が下記条件(i)〜(iv)を満たすことを特徴とする積層体の製造方法。
ポリエチレン系樹脂(A)
(a)メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が、0.01g/10分以上、100g/10分以下であること。
(b)密度(JIS K7112)が、0.930g/cm3以上であること。
(c)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度が125℃以上であること。
ポリプロピレン系樹脂(B)
(i)メタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン系重合体からなること。
(ii)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度が100℃以上、110℃以下であること。
(iii)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が、0.01g/10分以上、100g/10分以下であること。
(iv)プロピレン単位の量が88〜99.9重量%であること。
相接するポリエチレン系樹脂(A)からなる層とポリプロピレン系樹脂(B)からなる層が共押出により形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
前記積層体のポリエチレン系樹脂(A)からなる層同士を100℃〜160℃の範囲において圧力0.2MPa、時間1秒の条件でヒートシールした際の最高ヒートシール強度が12N/15mm幅以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体の製造方法。
ポリエチレン系樹脂(A)からなる層とポリプロピレン系樹脂(B)からなる層とが相接する積層体であって、前記積層体が、相接するポリエチレン系樹脂(A)からなる層とポリプロピレン系樹脂(B)からなる層を含む、少なくとも2層の積層体であり、ポリエチレン系樹脂(A)が下記条件(a)〜(c)を満たし、ポリプロピレン系樹脂(B)が下記条件(i)〜(iv)を満たすことを特徴とする積層体。
ポリエチレン系樹脂(A)
(a)メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が、0.01g/10分以上、100g/10分以下であること。
(b)密度(JIS K7112)が、0.930g/cm3以上であること。
(c)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度が125℃以上であること。
ポリプロピレン系樹脂(B)
(i)メタロセン系プロピレン系重合体からなること。
(ii)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度が100℃以上、110℃以下であること。
(iii)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が、0.01g/10分以上、100g/10分以下であること。
(iv)プロピレン単位の量が88〜99.9重量%であること。
【背景技術】
【0002】
プラスチックシート又はフィルムの分野では、単一成分では達成困難な性質を発現させるために、複数の成分をブレンドする方法、複数の成分を積層する方法及びこれらの組合せ等種々検討され、多くの提案がなされている。そのなかでも、ポリプロピレンは、剛性に優れ、光沢が優れるなど、外観が良いためフィルムや各種成形品に広く用いられている。しかし、低温下での耐衝撃性に劣るという課題を有している。
【0003】
耐低温衝撃性を改良するため、ブロック共重合体を用いる方法が知られているが、光沢が低下するため、外観が劣るものとなってしまう。また、ポリプロピレンとエチレン系エラストマーや、ポリプロピレンとポリエチレンのブレンド物も知られているが、この場合も、光沢が低下するため、外観が劣るものとなってしまう。
【0004】
これらの問題を解決するため、ポリプロピレンとポリエチレンの積層体とし、ポリプロピレンの優れた外観と、ポリエチレンの優れた耐低温衝撃性を両立する手法が考えられるが、接着剤もしくは接着性樹脂を介さない場合、ポリプロピレンとポリエチレンの層間強度が低いため、実用上の問題があった。その理由は、ポリプロピレンもポリエチレンも類似の化学構造をとっていながらも、この両者は全く異なった結晶構造をとるために、ポリエチレンとポリプロピレンの界面強度が低く、実用には問題がある。
【0005】
層間強度を確保するために接着剤を利用する方法として、ドライラミネーション法などが知られているが、一般的に溶剤を用いるため、溶剤の乾燥工程が必要となり、設備が大掛かりになる、乾燥時に発生する溶剤臭の拡散に伴い作業環境が悪化する、火災発生の危険性が大である、塗布又は乾燥能力の限界で加工速度が上げられない等の問題がある。また、コストが高くなる問題もある。
【0006】
一方、接着性樹脂を利用する方法は、接着性樹脂自体が高価であり、また、共押出成形においては層数が増えるため、成形機のコストが高くなる問題がある。
【0007】
これらの問題を解決すべく、特定のポリプロピレン系樹脂と特定のポリエチレン系樹脂を積層する方法が提案されている(特開2006−142803号公報、特開2007−245453号公報参照)。しかし、実用上問題ない層間強度を得るためには、直鎖状低密度ポリエチレンをポリエチレン系樹脂として用いる方法に限定されていた。しかし、このような直鎖状低密度ポリエチレンは、一般に柔軟であるため、ポリプロピレンの特徴である剛性が損なわれる問題がある。
【0008】
この課題を解決するため、ポリエチレン系樹脂として高密度ポリエチレンを用いればよいが、この場合はやはり実用上問題のないレベルの層間強度を得ることが困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、相接する高密度ポリエチレン系樹脂からなる層とポリプロピレン系樹脂からなる層を備えるが、接着層無しで実用上問題のないレベルの層間強度を有する積層体を得ることが可能な積層体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定のメルトフローレート及びDSCによる融解ピーク温度を満たす高密度ポリエチレン系樹脂からなる層と、特定のメルトフローレート及びDSCによる融解ピーク温度を満たし、メタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン系重合体からなるポリプロピレン系樹脂からなる層とを含む積層体が、実用上問題のないレベルの層間強度を発揮できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、ポリエチレン系樹脂(A)からなる層とポリプロピレン系樹脂(B)からなる層とが相接する積層体の製造方法であって、前記積層体が、相接するポリエチレン系樹脂(A)からなる層とポリプロピレン系樹脂(B)からなる層を含む、少なくとも2層の積層体であり、ポリエチレン系樹脂(A)が下記条件(a)〜(c)を満たし、ポリプロピレン系樹脂(B)が下記条件(i)〜(iii)を満たすことを特徴とする積層体の製造方法が提供される。
ポリエチレン系樹脂(A)
(a)メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が、0.01g/10分以上、100g/10分以下であること。
(b)密度(JIS K7112)が、0.930g/cm
3以上であること。
(c)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度が125℃以上であること。
ポリプロピレン系樹脂(B)
(i)メタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン系重合体からなること。
(ii)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度が100℃以上、125℃未満であること。
(iii)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が、0.01g/10分以上、100g/10分以下であること。
【0013】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記ポリエチレン系樹脂(A)が、メタロセン触媒以外の触媒を用いて重合されたエチレン系重合体からなることを特徴とする積層体の製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は第2の発明において、相接するポリエチレン系樹脂(A)からなる層とポリプロピレン系樹脂(B)からなる層が共押出により形成されることを特徴とする積層体の製造方法が提供される。
【0015】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、前記積層体同士を100℃〜160℃の範囲において圧力0.2MPa、時間1秒の条件でヒートシールした際の最高ヒートシール強度が12N/15mm幅以上であることを特徴とする積層体の製造方法が提供される。
【0016】
また、本発明の第5の発明によれば、ポリエチレン系樹脂(A)からなる層とポリプロピレン系樹脂(B)からなる層とが相接する積層体であって、前記積層体が、相接するポリエチレン系樹脂(A)からなる層とポリプロピレン系樹脂(B)からなる層を含む、少なくとも2層の積層体であり、ポリエチレン系樹脂(A)が下記条件(a)〜(c)を満たし、ポリプロピレン系樹脂(B)が下記条件(i)〜(iii)を満たすことを特徴とする積層体が提供される。
ポリエチレン系樹脂(A)
(a)メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が、0.01g/10分以上、100g/10分以下であること。
(b)密度(JIS K7112)が、0.930g/cm
3以上であること。
(c)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度が125℃以上であること。
ポリプロピレン系樹脂(B)
(i)メタロセン系プロピレン系重合体からなること。
(ii)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度が100℃以上、125℃未満であること。
(iii)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が、0.01g/10分以上、100g/10分以下であること。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、相接するポリエチレン系樹脂からなる層とポリプロピレン系樹脂からなる層を備えるが、接着層無しで実用上問題のないレベルの層間強度を有する積層体を得ることができ、その上、安価に製造可能であるので、産業上有用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の積層体の製造方法について詳細に説明する。本発明の積層体の製造方法は、ポリエチレン系樹脂(A)からなる層とポリプロピレン系樹脂(B)からなる層とが相接する積層体の製造方法であって、前記積層体が、相接するポリエチレン系樹脂(A)からなる層とポリプロピレン系樹脂(B)からなる層を含む、少なくとも2層の積層体であり、ポリエチレン系樹脂(A)が特定のメルトフローレート及びDSCによる融解ピーク温度を満たす高密度ポリエチレン系樹脂であり、ポリプロピレン系樹脂(B)が特定のメルトフローレート及びDSCによる融解ピーク温度を満たし、メタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン系重合体からなるポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする。
【0019】
本発明の積層体の製造方法によれば、実用上問題のないレベルの層間強度を発揮できる。具体的には、得られる積層体同士を100℃〜160℃の範囲において圧力0.2MPa、時間1秒の条件でヒートシールした際の最高ヒートシール強度を12N/15mm幅以上にすることができる。また、ポリエチレン系樹脂(A)からなる層とポリプロピレン系樹脂(B)からなる層を接着剤や接着性樹脂を介して積層させる必要がないため、相接するポリエチレン系樹脂(A)からなる層とポリプロピレン系樹脂(B)からなる層を含む積層体を安価に製造可能である。更に、本発明の製造方法により得られる積層体は、例えば特開2006−142803号公報や特開2007−245453号公報に記載されるようなポリエチレン系樹脂を使用する必要がないため、ポリプロピレンの特徴である剛性が損なわれることもなく、積層体の剛性を飛躍的に向上させることができる。このため、上記積層体は、ポリエチレン系樹脂に由来する優れた耐低温衝撃性とポリプロピレン系樹脂に由来する優れた剛性及び外観とを併せ持つ積層体であり、産業上有用である。
【0020】
1.ポリエチレン系樹脂(A)
ポリエチレン系樹脂(A)は、積層体を構成するポリプロピレン系樹脂(B)層と相接する層に用いられる樹脂であり、下記に詳細に説明する条件(a)〜(c)を満たす限り特に制限されるものではない。ポリエチレン系樹脂(A)は、1種類又は2種類以上のエチレン系重合体からなるが、ここで、ポリエチレン系樹脂(A)が2種類以上のブレンド物からなる場合、このブレンド物が条件(a)〜(c)を満たせばよい。
【0021】
エチレン系重合体は、エチレン単独重合体やエチレンと他のα−オレフィン(例えば炭素数3〜12のα−オレフィン)との共重合体から選ばれるものであるが、好ましくはエチレン単独重合体である。エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体における他のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができる。エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体である場合、エチレン単位の量は60〜99.9重量%が好ましく、60〜95重量%がより好ましい。なお、これらエチレン系重合体は、1種単独でも、2種以上のブレンドとして用いてもよい。
【0022】
エチレン系重合体は、様々な触媒を用いた重合により製造でき、かかる触媒としては、特に制限されず、メタロセン触媒、チーグラー触媒、フィリップス触媒等を使用できる。例えば、メタロセン触媒で重合されたエチレン系重合体をポリエチレン系樹脂(A)として用いる場合、比較的高い層間強度を得ることができる。しかしながら、本発明においては、ポリエチレン系樹脂(A)が、メタロセン触媒以外の触媒(例えば、チーグラー触媒、フィリップス触媒等)を用いて重合されたエチレン系重合体を用いても、実用上問題のないレベルの層間強度を有し、かつポリエチレン系樹脂に由来する優れた耐低温衝撃性とポリプロピレン系樹脂に由来する優れた剛性及び外観とを併せ持つ積層体を得ることができる。なお、本発明に用いるエチレン系重合体や後述するプロピレン系重合体は、市販品を用いてもよい。
【0023】
エチレン系重合体やプロピレン系重合体は、触媒の選択により、分子量、分子量分布、分岐構造等の構造的特徴を制御できることが知られており、当業者であれば、触媒の種類により重合体の種類を区別することも可能であり、例えば、メタロセン触媒で重合されたエチレン系重合体やプロピレン系重合体をメタロセン系エチレン系重合体やメタロセン系プロピレン系重合体と称したり、メタロセン触媒以外の触媒で重合されたエチレン系重合体やプロピレン系重合体を非メタロセン系エチレン系重合体や非メタロセン系プロピレン系重合体と称したりする場合もある。
【0024】
・条件(a)メルトフローレート
ポリエチレン系樹脂(A)は、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が、0.01g/10分以上、100g/10分以下であり、好ましくは0.1〜60g/10分、より好ましくは0.1〜30g/10分、特に好ましくは1〜30g/10分である。ポリエチレン系樹脂(A)のメルトフローレートが0.01g/10分以上であれば、積層体の成形時の負荷が増すことがなく、積層体の成形自体が容易となる。ポリエチレン系樹脂(A)のメルトフローレートが100g/10分以下であれば、成形の安定性、特に、押出成形に用いた場合の成形安定性が良好である。
なお、メルトフローレート(MFR)は、JIS K6922−2に準拠し、190℃、2.16kg荷重にて測定される。
【0025】
・条件(b)密度(JIS K7112)
ポリエチレン系樹脂(A)は、密度が0.930g/cm
3以上であり、好ましくは0.935g/cm
3以上、より好ましくは0.940g/cm
3以上、更に好ましくは0.945g/cm
3以上、特に好ましくは0.950g/cm
3以上である。ポリエチレン系樹脂(A)の密度が0.930g/cm
3以上であれば、得られた積層体が高い剛性を発現しつつ高い耐衝撃性を発現できる。ポリエチレン系樹脂(A)の密度の上限は特に規定しないが、一般的にポリエチレン系重合体の密度は0.990g/cm
3以下である。
なお、密度は、JIS K7112によるD法(密度こうばい管法)で測定される値である。
【0026】
・条件(c)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度
ポリエチレン系樹脂(A)は、融解ピーク温度(Tm)が、125℃以上であり、好ましくは127℃以上であり、より好ましくは130℃以上であり、特に好ましくは131℃以上である。ポリエチレン系樹脂(A)の融点が125℃以上であれば、得られた積層体が高い剛性を発現しつつ高い耐衝撃性を発現できる。融点の上限は特に規定しないが、一般的にポリエチレン系重合体の融点は150℃以下である。
本発明において、融解ピーク温度(Tm)は、示差走査型熱量計を用いて測定して得たチャートに見られるピーク値であるが、本発明で用いるポリエチレン系樹脂(A)において複数のピークが観測される場合は、高いほうのピーク値を融解ピーク温度(Tm)とする。
【0027】
2.ポリプロピレン系樹脂(B)
ポリプロピレン系樹脂(B)は、積層体を構成するポリエチレン系樹脂(A)層と相接する層に用いられる樹脂であり、下記に詳細に説明する条件(i)〜(iii)を満たす限り特に制限されるものではない。ポリプロピレン系樹脂(B)は、1種類又は2種類以上のプロピレン系重合体からなるが、ここで、ポリプロピレン系樹脂(B)が2種類以上のブレンド物からなる場合、このブレンド物が条件(i)〜(iii)を満たせばよい。
【0028】
プロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体やプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体から選ばれるものである。プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体における他のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ヘプテン、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−ヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1等を挙げることができる。プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体である場合、プロピレン単位の量は特に制限はないが、88〜99.9重量%が好ましく、91〜99重量%がより好ましい。なお、これらプロピレン系重合体は、1種単独でも、2種以上のブレンドとして用いてもよい。
【0029】
・条件(i)メタロセン触媒
ポリプロピレン系樹脂(B)は、メタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン系重合体からなる。メタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン系重合体からなるポリプロピレン系樹脂(B)であれば、ポリエチレン系樹脂(A)との接着性に優れる。なお、この条件(i)に関しては、上記プロピレン系重合体が実質的にメタロセン触媒を用いて重合されていればよい。ここで、「実質的に」とは、プロピレン系重合体を構成するモノマー単位のうち50重量%を超える部分がメタロセン触媒を用いて重合されていることを言う。
【0030】
なお、メタロセン触媒とは、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要により、(iii)有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、公知の触媒はいずれも使用できる。
【0031】
・条件(ii)示差走査熱量測定(DSC)による融解ピーク温度
ポリプロピレン系樹脂(B)は、融解ピーク温度(Tm)が、100℃以上、125℃未満であり、好ましくは105℃〜122℃、更に好ましくは105℃〜120℃、特に好ましくは105℃〜118℃である。ポリプロピレン系樹脂(B)の融解ピーク温度が100℃以上であれば、ポリエチレン系樹脂(A)との積層体の剛性を高いものにする上で好適である。ポリプロピレン系樹脂(B)の融解ピーク温度が125℃未満であれば、得られた積層体においてポリエチレン系樹脂(A)との層間強度が優れたものになる。
本発明において、融解ピーク温度(Tm)は、示差走査型熱量計を用いて測定して得たチャートに見られるピーク値であるが、本発明で用いるポリプロピレン系樹脂(B)において複数のピークが観測される場合は、高いほうのピーク値を融解ピーク温度(Tm)とする。
【0032】
・条件(iii)メルトフローレート
ポリプロピレン系樹脂(B)は、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が、0.01g/10分以上、100g/10分以下であり、好ましくは0.1〜60g/10分、より好ましくは0.1〜30g/10分、特に好ましくは1〜30g/10分である。ポリプロピレン系樹脂(B)のメルトフローレートが0.01g/10分以上であれば、積層体の成形時の負荷が増すことがなく、積層体の成形自体が容易となる。ポリプロピレン系樹脂(B)のメルトフローレートが100g/10分以下であれば、成形の安定性、特に、押出成形に用いた場合の成形安定性が良好である。
なお、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重にて測定される。
【0033】
3.その他の配合成分
上記ポリエチレン系樹脂(A)やポリプロピレン系樹脂(B)には、本発明の目的を阻害しない範囲で、その他の樹脂または添加剤等、各種の他の成分を、添加して用いることができる。
【0034】
上記ポリエチレン系樹脂(A)やポリプロピレン系樹脂(B)には、本発明の効果を妨げない限り、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂に添加できる酸化防止剤などの添加剤を、適宜配合することができる。
具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(BASFジャパン社製商品名「IRGANOX 1010」)やn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(BASFジャパン社製商品名「IRGANOX 1076」)で代表されるフェノール系安定剤、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどで代表されるホスファイト系安定剤、オレイン酸アミドやエルカ酸アミド等の高級脂肪酸アミドや高級脂肪酸エステルやシリコーンオイルで代表される滑剤、炭素原子数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールエステルなどで代表される帯電防止剤、ソルビトール系造核剤(例えば、新日本理化社製商品名「ゲルオールMD」)、芳香族燐酸エステル類(例えば、ADEKA社製商品名「アデカスタブNA−21」や「アデカスタブNA−11」)、ミリケン社製商標名「Millad」シリーズ、ミリケン社製商標名「Hyperform」シリーズ、新日本理化社製商標名「エヌジェスターNU−100」、タルク、高密度ポリエチレンなどで代表される造核剤、シリカ、炭酸カルシウム、タルクなどで代表されるブロッキング防止剤や有機過酸化物などで代表される分子量調整剤や架橋助剤、ステアリン酸カルシウムなどの高級脂肪酸金属塩やハイドロタルサイト類に代表される中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、金属不活性剤、過酸化物、充填剤、抗菌防黴剤、抗菌剤、制菌剤、蛍光増白剤、防曇剤、難燃剤、着色剤、顔料、天然油、合成油、ワックス、更には用途に応じて有機系、無機系の難燃剤などを、添加してもよく、配合量は適宜量である。
【0035】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の他の重合体を混合することもできる。
これら重合体のうち市販されているものの例としては、例えばエチレン・α−オレフィン共重合体としては、日本ポリエチレン(株)製カーネルシリーズやノバテックLLシリーズが、オレフィン系エラストマーとしては、三井化学(株)製タフマーPシリーズやタフマーAシリーズが例示できる。また、プロピレン・α−オレフィンブロック共重合体としては、日本ポリプロ(株)製ノバテックPPシリーズやニューコンシリーズなどが例示できる。
【0036】
4.積層体
本発明の積層体の製造方法によれば、ポリエチレン系樹脂(A)とポリプロピレン系樹脂(B)の2種類のみを溶融共押出して、相接するポリエチレン系樹脂(A)からなる層とポリプロピレン系樹脂(B)からなる層を含む積層体を製造することができる。しかし、同積層体の一方の表面、又は両表面に他の固体状フィルム又はシートを基材層として配置することもできる。他の層をC層とすると、A/B/C、B/A/Cの3層構造、C/A/B/C、A/B/C/C、B/A/C/C(Cのそれぞれは同じでも、異なっていてもよい)の4層構造等が例示できる。積層体を構成する層は、ドライラミネート法、押出ラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出法等により、C層に押出コーティング或いはC層と共押出することによって、ラミネートされた各種積層体を得ることができる。C層には、紙、アルミニウム箔、セロファン、織布、不織布、高分子重合体、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリプロピレン、ポリー1−ブテン、ポリ−4−メチルペンテン−1等のオレフィン重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のビニル共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン7、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ポリメタキシリレンアジパミド等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート等を挙げることができる。更に上記フィルム1種類単独でも、2種類以上の複合使用でもよく、また、基材の種類によっては延伸加工を行ったものでもよく、一軸又は二軸延伸ポリプロピレンフィルム、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリエチエンテレフタレートフィルム、延伸ポリスチレンフィルムなども用いられる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその趣旨を逸脱しない限り、これによって限定されるものではない。なお、実施例における各種物性値の測定方法、用いた材料は以下の通りである。
【0038】
1.測定方法
(1)MFR(単位:g/10分):
ポリエチレン系樹脂は、JIS K6922−2 付属書に準拠し190℃、2.16kg荷重で測定し、ポリプロピレン系樹脂は、JIS K7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重で測定した。
(2)密度:
高密度ポリエチレン系樹脂は、JIS K7122に準拠して測定した。直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、JIS K6992−1,2に準拠して測定した。
(3)融解ピーク温度:
示差走査型熱量計(TA社製、Q2000型)を用い、サンプル量5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度Tmを測定した。
(4)ヒートシール強度(単位:N/15mm幅):
5mm×200mmのヒートシールバーを用い、得られたフィルムのヒートシール層面同士を100℃から160℃の範囲において、圧力0.2MPa、時間1秒のヒートシール条件下で溶融押出しした方向(MD)に垂直になるように10℃毎にシールした試料から15mm幅のサンプルを切り取り、引張試験器を用いて引張速度500mm/分にて引き離し、その最高ヒートシール強度を求めた。また、ヒートシール強度が高い場合は層間強度が高いと言える。最高ヒートシール強度が12N/15mm幅以上であればヒートシール強度に優れる。
【0039】
2.使用材料
(1)ポリプロピレン系樹脂
PP1(チーグラー触媒で重合したプロピレン単独重合体):日本ポリプロ(株)製商品名ノバテックPP FL4(融解ピーク温度Tm:164℃、MFR:5.0g/10分)。
PP2(メタロセン触媒で重合したプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体):下記<PP2の製造例>にて得られたものを用いた(融解ピーク温度Tm:110℃、MFR:5.6g/10分)。
PP3(メタロセン触媒で重合したプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体):日本ポリプロ(株)製商品名ウィンテックWFX4M(融解ピーク温度Tm:125℃、MFR:7.0g/10分)
(2)ポリエチレン系樹脂
PE1(メタロセン触媒以外の触媒で重合した高密度ポリエチレン):日本ポリエチレン(株)製商品名ノバテックHD HJ360(融解ピーク温度Tm:132℃、MFR5.5g/10分、密度0.951g/cm
3)
PE2(メタロセン触媒以外の触媒で重合した高密度ポリエチレン):日本ポリエチレン(株)製商品名ノバテックHD HJ560(融解ピーク温度Tm:135℃、MFR7.0g/10分、密度0.964g/cm
3)
PE3(メタロセン触媒で重合した直鎖状低密度ポリエチレン):日本ポリエチレン(株)製商品名カーネルKF380(融解ピーク温度Tm:106℃、MFR4.0g/10分、密度0.918g/cm
3)
PE4(チーグラー触媒で重合した直鎖状低密度ポリエチレン):日本ポリエチレン(株)製商品名ノバテックLL UF240(融解ピーク温度Tm:123℃、MFR2.1g/10分、密度0.920g/cm
3)
【0040】
<PP2の製造例>
(1)予備重合触媒の製造
珪酸塩の化学処理:
10リットルの撹拌翼の付いたガラス製セパラブルフラスコに、蒸留水3.75リットル、続いて濃硫酸(96%)2.5kgをゆっくりと添加した。50℃で、さらにモンモリロナイト(水澤化学工業(株)製商品名ベンクレイSL;平均粒径=50μm)を1kg分散させ、90℃に昇温し、6.5時間その温度を維持した。50℃まで冷却後、このスラリーを減圧濾過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を7リットル加え再スラリー化後、濾過した。この洗浄操作を、洗浄液(濾液)のpHが、3.5を超えるまで実施した。回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は707gであった。化学処理した珪酸塩は、キルン乾燥機により乾燥を実施した。
触媒の調製:
内容積3リットルの撹拌翼のついたガラス製反応器に上記で得た乾燥珪酸塩200gを導入し、混合ヘプタン1160ml、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.60M)840mlを加え、室温で撹拌した。1時間後、混合ヘプタンにて洗浄し、珪酸塩スラリーを2.0リットル調製した。次に、調製した珪酸塩スラリーにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M/L)9.6mlを添加し、25℃で1時間反応させた。並行して、〔(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウム〕(特開平10−226712号公報実施例に従って合成した。)2180mg(3mmol)と混合ヘプタン870mlに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)を33.1ml加えて、室温にて1時間反応させた混合物を、珪酸塩スラリーに加え、1時間撹拌した。
予備重合:
続いて、窒素で十分置換を行った内容積10リットルの撹拌式オートクレーブに、ノルマルヘプタン2.1リットルを導入し、40℃に保持した。そこに先に調製した珪酸塩/メタロセン錯体スラリーを導入した。温度が40℃に安定したところでプロピレンを100g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに2時間維持した。予備重合終了後、残モノマーをパージし、撹拌を停止させ約10分間静置後、上澄み約3リットルをデカントした。続いてトリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液9.5ml、さらに混合ヘプタンを5.6リットル添加し、40℃で30分間撹拌し、10分間静置した後に、上澄みを5.6リットル除いた。さらにこの操作を3回繰り返した。最後の上澄み液の成分分析を実施したところ有機アルミニウム成分の濃度は、1.23ミリモル/L、Zr濃度は8.6×10
−6g/Lであり、仕込み量に対する上澄み液中の存在量は0.016重量%であった。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M/L)のヘプタン溶液17.0mlを添加した後に、45℃で減圧乾燥を実施した。この操作により触媒1g当たりポリプロピレン2.16gを含む予備重合触媒が得られた。
【0041】
(2)PP2の製造
1台の縦型気相流動床よりなる反応器を用いる気相重合反応装置を用いた。反応器(内容積2.19m
3)に上記予備重合触媒を、重合体の生産量が20kg/hrとなるよう連続的に供給した。またトリイソブチルアルミニウムを6.0g/hrで連続的に供給した。反応器内の温度60℃、圧力3.0MPa、空塔速度0.35m/s、ベッド重量60kgを維持しながら、反応器内に水素及びエチレンを、それぞれ水素/プロピレン=2.4×10
−4モル比、エチレン/プロピレン=0.18モル比となるように連続的に供給をし、パウダー状のPP2を得た。尚、反応熱の除去は、主に冷却した循環ガスの顕熱を利用した。
パウダー状のPP2に酸化防止剤としてイルガノックス1010を1000ppm及びイルガノックス168を1000ppm添加し、ヘンシェルミキサーで混合後、Φ40mmの単軸造粒機にて、200℃の条件にて造粒し、ペレット状のPP2を得た。
得られたPP2は、融点110℃、MFR5.6g/10min、エチレン含有量は4.9wt%であった。
【0042】
(実施例1)
中間層用樹脂として、PP2を18mmφ、30mmφ、18mmφ三種三層Tダイ成形機の30mmφ押出機(中間層用)に、表面層用樹脂としてPP1を18mmφ押出機に、ヒートシール層用樹脂としてPE1を18mmφ押出機に投入し、押出温度200℃で幅150mmのTダイから溶融押出し、30℃に調整されたチルロールに巻き付けながら冷却固化し、毎分3mの速度で厚さ100μmのキャストフィルムを表面層:中間層:ヒートシール層の厚み比率が3:1:1となるように製造した。表1にフィルムの評価結果を示す。
【0043】
(実施例2)
実施例1のヒートシール層用樹脂において、PE1をPE2に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表1にフィルムの評価結果を示す。
【0044】
(比較例1)
実施例1の中間層用樹脂において、PP2をPP3に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表1にフィルムの評価結果を示す。最高ヒートシール強度が12N/15mm未満であり、層間強度が低いものであった。
【0045】
(比較例2)
実施例2の中間層用樹脂において、PP2をPP3に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表1にフィルムの評価結果を示す。最高ヒートシール強度が12N/15mm未満であり、層間強度が低いものであった。
【0046】
(参考例1)
実施例1のヒートシール層用樹脂において、PE1をPE3に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表1にフィルムの評価結果を示す。参考例3同様に高いヒートシール強度を示した。
【0047】
(参考例2)
実施例1のヒートシール層用樹脂において、PE1をPE4に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表1にフィルムの評価結果を示す。参考例4同様に高いヒートシール強度を示した。
【0048】
(参考例3)
実施例1の中間層用樹脂において、PP2をPP3に代え、ヒートシール層用樹脂において、PE1をPE3に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表1にフィルムの評価結果を示す。
【0049】
(参考例4)
実施例1の中間層用樹脂において、PP2をPP3に代え、ヒートシール層用樹脂において、PE1をPE4に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表1にフィルムの評価結果を示す。
【0050】
【表1】