特許第6705304号(P6705304)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6705304送信装置、受信装置、放送信号処理方法、及び放送受信機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705304
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】送信装置、受信装置、放送信号処理方法、及び放送受信機
(51)【国際特許分類】
   H04H 20/02 20080101AFI20200525BHJP
   H04N 21/2381 20110101ALI20200525BHJP
   H04H 20/51 20080101ALI20200525BHJP
   H04H 20/63 20080101ALI20200525BHJP
【FI】
   H04H20/02
   H04N21/2381
   H04H20/51
   H04H20/63
【請求項の数】16
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-126856(P2016-126856)
(22)【出願日】2016年6月27日
(65)【公開番号】特開2018-6821(P2018-6821A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】鈴鹿 拓也
【審査官】 佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−318459(JP,A)
【文献】 特開2010−034980(JP,A)
【文献】 特開2010−035034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04H 20/02
H04H 20/51
H04H 20/63
H04N 21/2381
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性が互いに異なり且つ同一周波数帯の放送信号である第1アナログ信号及び第2アナログ信号が偏波分割多重された放送波が受信アンテナで受信された際に、前記受信アンテナから出力され且つ前記放送波から分離された前記第1アナログ信号を第1デジタル信号に変換する第1変換部と、
前記放送波が前記受信アンテナで受信された際に、前記受信アンテナから出力され且つ前記放送波から分離された記第2アナログ信号を第2デジタル信号に変換する第2変換部と、
前記第1デジタル信号と前記第2デジタル信号の情報を含む第3デジタル信号を生成する生成部と、
前記生成部によって生成された前記第3デジタル信号を送信する送信部と、
を備える送信装置。
【請求項2】
前記第1アナログ信号及び前記第2アナログ信号の少なくとも一方を周波数変換する第3変換部を備え、
前記第1変換部及び前記第2変換部は、前記第3変換部によって周波数変換されたアナログ信号をデジタル信号に変換する、
請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記第1アナログ信号又は前記第2アナログ信号の所定周波数帯域のアナログ信号を通過させるフィルタを備え、
前記第3変換部は、前記フィルタによって通過されたアナログ信号を周波数変換する、
請求項2に記載の送信装置。
【請求項4】
前記生成部は、前記第1デジタル信号又は第2デジタル信号に関連する情報を含む第4デジタル信号を生成する、
請求項1から3の何れか1項に記載の送信装置。
【請求項5】
前記第4デジタル信号は、前記第1デジタル信号又は前記第2デジタル信号を変換した変換部を識別する信号を含む、
請求項4に記載の送信装置。
【請求項6】
前記第4デジタル信号は、前記第1デジタル信号又は前記第2デジタル信号の誤り訂正を行うための信号を含む、
請求項4又は5に記載の送信装置。
【請求項7】
前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号を圧縮する圧縮部を備え、
前記生成部は、圧縮された各デジタル信号の情報を含む前記第3デジタル信号を生成する、
請求項1から6の何れか1項に記載の送信装置。
【請求項8】
前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号を可逆圧縮する可逆圧縮部を備え、
前記生成部は、可逆圧縮された各デジタル信号の情報を含む前記第3デジタル信号を生成する、
請求項1から6の何れか1項に記載の送信装置。
【請求項9】
前記第1変換部及び前記第2変換部は、前記第1アナログ信号の時間波形及び前記第2アナログ信号の時間波形を、前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号にそれぞれ変換する、
請求項1から8の何れか1項に記載の送信装置。
【請求項10】
前記第1変換部及び前記第2変換部は、前記第1アナログ信号の周波数スペクトル及び
前記第2アナログ信号の周波数スペクトルを、前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号にそれぞれ変換する、
請求項1から8の何れか1項に記載の送信装置。
【請求項11】
前記第1変換部及び前記第2変換部は、前記第1アナログ信号及び前記第2アナログ信号を、所定の信号雑音比に応じた分解能で、前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号にそれぞれ変換する、
請求項1から10の何れか1項に記載の送信装置。
【請求項12】
極性が互いに異なり且つ同一周波数帯の放送信号である第1アナログ信号及び第2アナログ信号が偏波分割多重された放送波が受信アンテナで受信された際に、前記受信アンテナから出力され且つ前記放送波から分離された前記第1アナログ信号及び前記第2アナログ信号を基に生成されたデジタル信号を取得する取得部と、
前記デジタル信号から所定極性の放送信号である第1アナログ信号を基に生成された第1デジタル信号と前記所定極性とは異なる極性の放送信号である第2アナログ信号を基に生成された第2デジタル信号を抽出する抽出部と、
前記第1デジタル信号を出力する第1出力部と、
前記第2デジタル信号を出力する第2出力部と、
を備える受信装置。
【請求項13】
前記第1出力部から出力された第1デジタル信号を前記第1アナログ信号に変換する第1変換部と、
前記第2出力部から出力された第2デジタル信号を前記第2アナログ信号に変換する第2変換部と、
を備える請求項12に記載の受信装置。
【請求項14】
極性が互いに異なり且つ同一周波数帯の放送信号である第1アナログ信号及び第2アナログ信号が偏波分割多重された放送波が受信アンテナで受信された際に、前記受信アンテナから出力され且つ前記放送波から分離された前記第1アナログ信号を第1デジタル信号に変換する第1ステップと、
前記放送波が前記受信アンテナで受信された際に、前記受信アンテナから出力され且つ前記放送波から分離された前記第2アナログ信号を第2デジタル信号に変換する第2ステップと、
前記第1デジタル信号と前記第2デジタル信号を結合し、結合されたデジタル信号を送信する第3ステップと、
前記結合されたデジタル信号を受信して、前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号を抽出する第4ステップと、
前記抽出された第1デジタル信号をアナログ信号に変換する第5ステップと、
前記抽出された第2デジタル信号をアナログ信号に変換する第6ステップとからなる、
放送信号処理方法。
【請求項15】
極性が互いに異なり且つ同一周波数帯の放送信号である第1アナログ信号及び第2アナログ信号が偏波分割多重された放送波が受信アンテナで受信された際に、前記受信アンテナから出力され且つ前記放送波から分離された前記第1アナログ信号を基に生成された第1デジタル信号及び、前記放送波が前記受信アンテナで受信された際に、前記受信アンテナから出力され且つ前記放送波から分離された前記第2アナログ信号を基に生成された第2デジタル信号を取得する第1取得部と、
前記第1デジタル信号をアナログ信号に変換する第1変換部と、
前記第2デジタル信号をアナログ信号に変換する第2変換部と、
前記第1変換部及び前記第2変換部で変換されたアナログ信号の少なくとも一方から、少なくとも1つの放送信号を選択する選局部と、
を備える放送受信機。
【請求項16】
前記所定極性の放送信号である第1アナログ信号及び前記所定極性とは異なる極性の放送信号である第2アナログ信号を基に生成されたデジタル信号を取得する第2取得部と、
前記デジタル信号から前記第1デジタル信号と前記第2デジタル信号を抽出する抽出部を備え、
前記第1取得部は、前記抽出部によって抽出された前記第1デジタル信号及び前記第2
デジタル信号を取得する、
請求項15に記載の放送受信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置、受信装置、放送信号処理方法、及び放送受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
電波を効率的に利用するため、周波数帯域が重複しかつ偏波が異なる複数の放送波を多重して送出する偏波分割多重が、例えば衛星放送システムで検討されている。偏波分割多重された放送波は、受信アンテナにて偏波ごとの放送信号に分離され出力される。
【0003】
分離された放送信号は、周波数帯域が重複しているため、例えば、各異なる信号ケーブルを用いて放送受信機に配信される。分離された放送信号を周波数変換し周波数分割多重することにより、単一の信号ケーブルを用いて配信する技術も知られている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3812599号公報
【特許文献2】特許第4800588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術によれば、次のような課題がある。
【0006】
放送信号ごとに異なる複数の信号ケーブルを用いる場合、信号ケーブルの材料及び敷設作業に係るコストの増大、及び信号ケーブルを設置するためのスペースの無駄がある。
【0007】
周波数分割多重を用いる場合、周波数変換や混合の操作で発生するイメージ信号に対する処置や周波数干渉の回避を検討する必要があり、システム設計の難度が高まる。また、周波数分割多重された信号の帯域は広く、外来の妨害波(以下、外乱とも言う)に対し脆弱であることから、当該外乱を排除するための検討がさらに必要になる懸念もある。
【0008】
そこで、本発明は、例えば偏波分割多重された、極性が異なる複数の放送信号であるアナログ信号を、単一の信号ケーブルを用いて簡便に配信することができる送信装置、放送信号処理方法、及び当該送信装置に適合する受信装置、放送受信機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る送信装置は、所定極性の放送信号である第1アナログ信号を第1デジタル信号に変換する第1変換部と、前記所定極性とは異なる極性の放送信号である第2アナログ信号を第2デジタル信号に変換する第2変換部と、前記第1デジタル信号と前記第2デジタル信号の情報を含む第3デジタル信号を生成する生成部と、前記生成部によって生成された前記第3デジタル信号を送信する送信部と、を備える。
【0010】
このような構成によれば、放送信号である前記第1及び第2アナログ信号を、前記第1及び第2デジタル信号にそれぞれ変換し、前記第3デジタル信号に多重化した上で、前記第3デジタル信号を単一の信号ケーブルを用いて配信できる。前記第1及び第2アナログ信号をアナログ信号のままで周波数分割多重して単一の信号ケーブルで配信する場合と異なり、周波数変換や混合の操作で発生するイメージ信号に対する処置や周波数干渉の回避を考慮する必要がない。そのため、システム設計が簡素化される。また、外乱の影響を受けにくくなることで、外乱の排除がより容易になることも期待される。その結果、例えば偏波分割多重された、極性が異なる複数の放送信号であるアナログ信号を、単一の信号ケーブルを用いて簡便に配信することができる送信装置が得られる。
【0011】
また、前記第1アナログ信号及び前記第2アナログ信号の少なくとも一方を周波数変換する第3変換部を備え、前記第1変換部及び前記第2変換部は、前記第3変換部によって周波数変換されたアナログ信号をデジタル信号に変換してもよい。
【0012】
このような構成によれば、例えば、前記第1又は第2アナログ信号の周波数が前記第1又は第2変換部で変換できるアナログ信号の周波数より高い場合でも、前記第1又は第2アナログ信号をダウンコンバートすることによってデジタル信号に変換し、前述の効果を得ることができる。
【0013】
また、前記第1アナログ信号又は前記第2アナログ信号の所定周波数帯域のアナログ信号を通過させるフィルタを備え、前記第3変換部は、前記フィルタによって通過されたアナログ信号を周波数変換してもよい。
【0014】
このような構成によれば、例えば、前記第1又は第2アナログ信号の周波数帯域幅が前記第1又は第2変換部で変換できるアナログ信号の周波数帯域幅より広い場合でも、前記第1又は第2アナログ信号を周波数分割することによってデジタル信号に変換し、前述の効果を得ることができる。
【0015】
また、前記生成部は、前記第1デジタル信号又は第2デジタル信号に関連する情報を含む第4デジタル信号を生成してもよい。
【0016】
具体的に、前記第4デジタル信号は、前記第1デジタル信号又は前記第2デジタル信号を変換した変換部を識別する信号を含んでもよく、また、前記第1デジタル信号又は前記第2デジタル信号の誤り訂正を行うための信号を含んでもよい。
【0017】
このような構成によれば、前記第1又は第2アナログ信号を変換した変換部が前記第4デジタル信号に含まれる前記信号によって区別できるので、前記第1又は第2アナログ信号の復元が容易になる。また、前記信号を用いて前記第1又は第2デジタル信号の誤り訂正を行うことによって、デジタル信号の外乱への耐性を向上できる。
【0018】
また、前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号を圧縮する圧縮部を備え、前記生成部は、圧縮された各デジタル信号の情報を含む前記第3デジタル信号を生成してもよい。
【0019】
このような構成によれば、圧縮により前記第1及び第2デジタル信号が縮小され、効率的な伝送が可能になる。
【0020】
また、前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号を可逆圧縮する可逆圧縮部を備え、前記生成部は、可逆圧縮された各デジタル信号の情報を含む前記第3デジタル信号を生成してもよい。
【0021】
このような構成によれば、圧縮によって生じる前記第1及び第2デジタル信号の劣化を考慮する必要がないので、システム設計が簡素化される。
【0022】
また、前記第1変換部及び前記第2変換部は、前記第1アナログ信号の時間波形及び前記第2アナログ信号の時間波形を、前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号にそれぞれ変換してもよい。
【0023】
このような構成によれば、例えば、パルス符号変調などの周知の技術を用いて、前記第1及び第2アナログ信号を前記第1及び第2デジタル信号に変換することができる。
【0024】
また、前記第1変換部及び前記第2変換部は、前記第1アナログ信号の周波数スペクトル及び前記第2アナログ信号の周波数スペクトルを、前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号にそれぞれ変換してもよい。
【0025】
このような構成によれば、例えば、フーリエ変換などの周知の技術を用いて、前記第1及び第2アナログ信号を前記第1及び第2デジタル信号に変換することができる。
【0026】
また、前記第1変換部及び前記第2変換部は、前記第1アナログ信号及び前記第2アナログ信号を、所定の信号雑音比に応じた分解能で、前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号にそれぞれ変換してもよい。
【0027】
このような構成によれば、前記第1及び第2デジタル信号が占有する周波数帯域幅が抑えられることで、伝送の際のレベル減衰を軽減するとともに外乱への耐性を向上できる。
【0028】
また、本発明の一態様に係る受信装置は、所定極性の放送信号である第1アナログ信号及び前記所定極性とは異なる極性の放送信号である第2アナログ信号を基に生成されたデジタル信号を取得する取得部と、前記デジタル信号から所定極性の放送信号である第1アナログ信号を基に生成された第1デジタル信号と前記所定極性とは異なる極性の放送信号である第2アナログ信号を基に生成された第2デジタル信号を抽出する抽出部と、前記第1デジタル信号を出力する第1出力部と、前記第2デジタル信号を出力する第2出力部と、を備える。
【0029】
また、前記受信装置は、前記第1出力部から出力された第1デジタル信号を前記第1アナログ信号に変換する第1変換部と、前記第2出力部から出力された第2デジタル信号を前記第2アナログ信号に変換する第2変換部と、を備えてもよい。
【0030】
このような構成によれば、前記送信装置と共に用いられ、前記送信装置から出力された前記第3デジタル信号から、極性ごとの放送信号に対応する第1及び第2アナログ信号又は第1及び第2デジタル信号を抽出する受信装置が得られる。
【0031】
また、本発明の一態様に係る放送信号処理方法は、所定極性の放送信号であるアナログ信号を第1デジタル信号に変換する第1ステップと、前記所定極性とは異なる極性の放送信号であるアナログ信号を第2デジタル信号に変換する第2ステップと、前記第1デジタル信号と前記第2デジタル信号を結合し、結合されたデジタル信号を送信する第3ステップと、前記結合されたデジタル信号を受信して、前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号を抽出する第4ステップと、前記抽出された第1デジタル信号をアナログ信号に変換する第5ステップと、前記抽出された第2デジタル信号をアナログ信号に変換する第6ステップとからなる。
【0032】
このような方法によれば、放送信号である前記第1及び第2アナログ信号を、前記第1及び第2デジタル信号にそれぞれ変換し、前記第3デジタル信号に多重化した上で、前記第3デジタル信号を単一の信号ケーブルを用いて配信できる。前記第1及び第2アナログ信号をアナログ信号のままで周波数分割多重して単一の信号ケーブルで配信する場合と異なり、周波数変換や混合の操作で発生するイメージ信号に対する処置や周波数干渉の回避を考慮する必要がない。そのため、システム設計が簡素化される。また、外乱の影響を受けにくくなることで、外乱の排除がより容易になることも期待される。その結果、例えば偏波分割多重された、極性が異なる複数の放送信号であるアナログ信号、単一の信号ケーブルを用いて簡便に配信することができる放送信号処理方法が得られる。
【0033】
また、本発明の一態様に係る放送受信機は、所定極性の放送信号である第1アナログ信号を基に生成された第1デジタル信号及び前記所定極性とは異なる極性の放送信号である第2アナログ信号を基に生成された第2デジタル信号を取得する第1取得部と、前記第1デジタル信号をアナログ信号に変換する第1変換部と、前記第2デジタル信号をアナログ信号に変換する第2変換部と、前記第1変換部及び前記第2変換部で変換されたアナログ信号の少なくとも一方から、少なくとも1つの放送信号を選択する選局部と、を備える。
【0034】
また、本発明の一態様に係る受信装置は、前記所定極性の放送信号である第1アナログ信号及び前記所定極性とは異なる極性の放送信号である第2アナログ信号を基に生成されたデジタル信号を取得する第2取得部と、前記デジタル信号から前記第1デジタル信号と前記第2デジタル信号を抽出する抽出部を備え、前記第1取得部は、前記抽出部によって抽出された前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号を取得してもよい。
【0035】
このような構成によれば、前記送信装置と共に用いられ、前記送信装置から出力された前記第3デジタル信号から、極性ごとの放送信号に対応する第1及び第2アナログ信号又は第1及び第2デジタル信号を抽出し、選局を行う放送受信機が得られる。
【発明の効果】
【0036】
本発明の送信装置及び放送信号処理方法によれば、放送信号である前記第1及び第2アナログ信号を、前記第1及び第2デジタル信号にそれぞれ変換し、前記第3デジタル信号に多重化した上で、前記第3デジタル信号を単一の信号ケーブルを用いて配信できる。前記第1及び第2アナログ信号をアナログ信号のままで周波数分割多重して単一の信号ケーブルで配信する場合と異なり、周波数変換や混合の操作で発生するイメージ信号に対する処置や周波数干渉の回避を考慮する必要がない。そのため、システム設計が簡素化される。また、外乱の影響を受けにくくなることで、外乱の排除がより容易になることも期待される。その結果、例えば偏波分割多重された、極性が異なる複数の放送信号であるアナログ信号を、単一の信号ケーブルを用いて簡便に配信することができる送信装置及び放送信号処理方法が得られる。
【0037】
また、本発明の受信装置及び放送受信機によれば、前記送信装置と共に用いられ、前記送信装置から出力された前記第3デジタル信号から、極性ごとの放送信号に対応する第1及び第2アナログ信号又は第1及び第2デジタル信号を抽出する受信装置、及び、さらに選局を行う放送受信機が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】実施の形態1に係る放送信号処理装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図2】A/D変換の分解能と量子化雑音との関係の一例を示す図である。
図3】実施の形態1に係るデータストリームのフォーマットの一例を示す図である。
図4A】実施の形態1に係るデジタル送信I/Fの機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図4B】実施の形態1に係るデジタル受信I/Fの機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図5A】実施の形態2に係る放送信号処理装置の要部の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図5B】実施の形態2に係る放送信号処理装置の要部の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図6A】実施の形態3に係る放送信号処理装置の要部の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図6B】実施の形態3に係る放送信号処理装置の要部の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図7】実施の形態3に係る放送信号処理装置で処理される放送信号の周波数帯域の一例を示す図である。
図8】実施の形態4に係る放送信号処理装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
図9】実施の形態4に係る放送信号処理装置の機能的な構成の他の一例を示すブロック図である。
図10】実施の形態5に係る放送信号処理装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。各図は、必ずしも各寸法または各寸法比等を厳密に図示したものではない。
【0040】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る放送信号処理装置は、偏波分割多重された放送波から対応アンテナによって分離された複数の放送信号を単一の信号ケーブルを用いて配信するための信号処理を行う装置である。放送信号処理装置は、偏波が異なる同一周波数帯の複数の放送信号を、デジタルデータの形式で多重化して、受信アンテナから放送受信機へ伝達することを特徴とする。ここで、偏波が異なる複数の放送信号は、極性が異なる複数のアナログ信号の一例である。
【0041】
図1は、実施の形態1に係る放送信号処理装置の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図1には、放送信号処理装置100とともに、受信アンテナ210、分配系220、及び放送受信機230が示されている。また、右旋アナログ信号及び左旋アナログ信号は、偏波が異なる同一周波数帯の放送信号の一例である。ここで、右旋アナログ信号及び左旋アナログ信号は、一例として、衛星放送の放送波に偏波分割多重されていてもよい。
【0042】
受信アンテナ210は、右旋及び左旋アナログ信号が偏波分割多重された放送波を受信し、当該放送波から右旋及び左旋アナログ信号を分離し、分離された右旋及び左旋アナログ信号を各独立して出力する。一例として、受信アンテナ210は、衛星放送受信用のパラボラアンテナであってもよい。ここで、前記右旋アナログ信号は、所定極性の放送信号である第1アナログ信号の一例ではり、前記左旋アナログ信号は、前記所定極性とは異なる極性の放送信号である第2アナログ信号の一例である。
【0043】
分配系220は、アンテナで受信後の放送信号を伝送するシステムである。分配系220は、信号ケーブル221及び分配器222を有し、前記放送信号を複数の場所に分配する。一例として、分配系220は、集合住宅の共聴システムであってもよい。また、信号ケーブル221は、同軸ケーブル又は光ケーブルで構成されてもよい。
【0044】
放送受信機230は、放送信号を取得し映像音声信号にデコードする一般的な受信器である。放送受信機230は、偏波が異なる同一周波数帯の複数の放送信号を取得するために、例えば、偏波ごとに独立した信号入力端子を有しているものとする。一例として、放送受信機230は、デジタルテレビ、レコーダー、又はセットトップボックスであってもよい。
【0045】
放送信号処理装置100は、送信装置300と受信装置400とで構成される。放送信号処理装置100は、例えば、デジタル信号プロセッサ又は専用のハードウェア回路、若しくはそれらの組み合わせにより構成されてもよい。
【0046】
送信装置300は、複数のアナログデジタル(A/D)変換器131、132と、デジタル送信インタフェース(I/F)140と、を有する。複数のA/D変換器131、132は、偏波分割多重された放送波から分離された複数の放送信号を取得し、複数のデジタルデータに変換する。デジタル送信I/F140は、複数のA/D変換器131、132で変換された前記複数のデジタルデータを単一のデータストリームに多重化して分配系220へ出力する。
【0047】
ここで、A/D変換器131、132は、それぞれ、送信装置における第1変換部及び第2変換部の一例であり、デジタル送信I/F140は、生成部及び送信部の一例である。また、前記複数のデジタルデータは、第1のデジタル信号及び第2のデジタル信号の一例であり、前記単一のデータストリームは、第3のデジタル信号の一例である。
【0048】
受信装置400は、デジタル受信I/F150と、複数のデジタルアナログ(D/A)変換器161、162と、を有する。デジタル受信I/F150は、分配系220から前記データストリームを取得し、取得した前記データストリームから前記複数のデジタルデータを復元する。複数のD/A変換器161、162は、デジタル受信I/F150で復元された前記複数のデジタルデータを前記複数の放送信号に変換して放送受信機230へ出力する。ここで、デジタル受信I/F150は、取得部、抽出部、第1出力部、及び第2出力部の一例であり、D/A変換器161、162は、それぞれ、受信装置における第1変換部及び第2変換部の一例である。
【0049】
送信装置300と受信装置400とは、分配系220の入力端と出力端とにそれぞれ分離して配置される。送信装置300及び受信装置400の実装は、特には限定されないが、一例として、送信装置300は、独立した装置として受信アンテナ210と分配系220との間に配置されてもよく、受信アンテナ210又は分配系220に内蔵されてもよい。また、受信装置400は、独立した装置として分配系220と放送受信機230との間に配置されてもよく、分配系220又は放送受信機230に内蔵されてもよい。分配系220が集合住宅の共聴システムである具体例では、送信装置300は、共用設備として受信アンテナ210の近傍に設置され、受信装置400は、戸別設備として部屋ごとに設置されてもよい。
【0050】
このように構成される放送信号処理装置100によれば、偏波分割多重された放送波から分離された複数の放送信号は、デジタルデータに変換され単一のデータストリームに多重化されるので、単一の信号ケーブルを用いて配信できる。
【0051】
そのため、分配系220に偏波ごとの複数の信号ケーブルを設ける必要がない。また、前記複数の放送信号をアナログ信号のままで周波数分割多重して単一の信号ケーブルで配信する場合と比べて、周波数変換や混合の操作で発生するイメージ信号に対する処置や周波数干渉の回避を考慮する必要がないので、システム設計が簡素化される。さらには、外乱の影響を受けにくくなることで、外乱の排除がより容易になることも期待される。
【0052】
その結果、偏波分割多重された放送波を受信後、単一の信号ケーブルを用いて簡便に配信することができる放送信号処理装置が得られる。
【0053】
放送信号処理装置100の細部について説明を続ける。
【0054】
放送信号処理装置100において放送信号をデジタルデータに変換する際、A/D変換器131、132でのA/D変換の分解能の選択に応じて、変換後のデジタルデータのビットレートを抑えることができる。ビットレートを抑え、デジタルデータが占有する周波数帯域幅を縮小することで、データ配信時のレベル減衰を軽減し、かつ外乱の影響をさらに受けにくくすることができる。
【0055】
具体的に、A/D変換の分解能は、次のように選択してもよい。
【0056】
図2は、一般的な量子化雑音モデルに基づく、A/D変換の分解能[ビット数]と信号雑音比(SNR)[dB]との関係を示す図である。例えば正弦波の場合、A/D変換のSNR[dB]は、1.76[dB]+6.02[dB]×分解能[ビット数]で表される。実際にはA/D変換器のノイズフロアなど、装置自体のノイズも考慮する必要があるが、基本的には、A/D変換器のSNRと分解能との間には上式で示される線形関係がある。
【0057】
放送受信機230が放送信号をエラーなく受信することのできる最低限のSNRを所要SNRと呼び、所要SNRは放送受信機230の性能、及び受信しようとしている放送信号の種類により決まる。例えば、国内地上波デジタル放送を一般的な放送受信機で受信する場合の所要SNRは、約20dBである。
【0058】
放送信号処理装置100は所要SNRを満たす必要がある。そのため、所要SNRが例えば20dBである場合、A/D変換器131、132には、少なくとも20dBのSNRが必要であり、上式によれば、A/D変換の分解能を4ビット以上にする必要がある。実際には、放送電波環境やアンテナなどで生じるノイズの余裕を持たせた分解能を選択する必要はあるが、所要SNRに基づいて分解能を選択することで、分解能を無駄に上げる必要がなくなり、最適なビット数を選択することができる。
【0059】
なお、A/D変換器131、132は、前記複数の放送信号の時間波形を前記複数のデジタルデータに変換してもよい。信号の時間波形とは、信号レベルの瞬時値の時系列のことを言う。この場合、A/D変換器131、132は、例えば、パルス符号変調などの周知の技術を用いて、前記複数の放送信号を前記複数のデジタルデータに変換することができる。例えば、前記複数の放送信号は、個々の放送信号のレベルを、当該放送信号の最高周波数の2倍の周波数でサンプリングして得られたデジタル値の系列に変換される。1サンプルあたりのビット数は、前述の所要SNRを満たす数が用いられる。
【0060】
また、A/D変換器131、132は、前記複数の放送信号の周波数スペクトルを前記複数のデジタルデータに変換してもよい。信号の周波数スペクトルとは、信号の所定の時間窓ごとに含まれる周波数成分のことを言う。この場合、A/D変換器131、132は、例えば、フーリエ変換などの周知の技術を用いて、前記複数の放送信号を前記複数のデジタルデータに変換することができる。例えば、前記複数の放送信号は、個々の放送信号の所定の時間窓ごとに含まれる周波数成分の大きさを表すデジタル値に変換される。
【0061】
このようにして複数の放送信号から変換された複数のデジタルデータは、デジタル送信I/F140によって、単一のデータストリームに多重化され、分配系220で伝送される。
【0062】
図3は、データストリームのフォーマットの一例を示す図である。データストリーム500は、複数のフレーム510を連ねてなり、フレーム510のデータフィールド513には、前記複数のデジタルデータを所定サイズに分割して得られる1つの部分データが格納される。このようなフォーマットに従って、前記複数のデジタルデータは、フレームごとに効率的に処理できるデータストリーム500に多重化される。
【0063】
フレーム510のヘッダフィールド511には、フレームの先頭を示すスタート符号が格納されてもよい。ヘッダフィールド511に格納されたスタート符号よって、個々のフレームの分離が容易になる。
【0064】
フレーム510の送信元フィールド512には、当該フレームに格納されているデジタルデータを生成したA/D変換器を識別する送信元識別情報が格納されてもよい。送信元フィールド512に格納された送信元識別情報によって、当該フレームのデータフィールド513にどのデジタルデータの部分データが格納されているか直ちに特定されるので、元のデジタルデータの復元が容易になる。
【0065】
フレーム510のパリティフィールド514には、当該フレームの誤り訂正を行うためのパリティ符号が格納されてもよい。パリティフィールド514に格納されたパリティ符号によって当該フレームの誤り訂正を行うことで、前記複数のデジタルデータの外乱への耐性を向上できる。
【0066】
図4Aは、デジタル送信I/F140の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0067】
デジタル送信I/F140は、マルチプレクサ141と、物理層アダプタ142と、を有する。
【0068】
マルチプレクサ141は、A/D変換器131、132から複数のデジタルデータを取得して所定サイズごとの部分データに分割し、当該部分データを用いて、例えば図3に示すフォーマットのデータストリームを表す多重化デジタルデータを生成する。マルチプレクサ141は、当該多重化デジタルデータに、前述したスタート符号、送信元識別情報、及びパリティ符号を格納してもよい。マルチプレクサ141は、生成した多重化デジタルデータを、物理層アダプタ142へ出力する。
【0069】
物理層アダプタ142は、多重化デジタルデータに対応するデジタル信号(つまり、データストリーム)を、分配系220へ出力する。物理層アダプタ142は、例えば、分配系220の信号ケーブル221が同軸ケーブルであるか光ケーブルであるかに応じて、同軸トランシーバ又は光トランシーバで構成され、データストリームを表す電気信号又は光信号を信号ケーブル221へ出力してもよい。つまり、物理層アダプタ142は、データストリームを表すデジタル信号を、分配系220の構成に応じて適した形式で出力する。
【0070】
限定されない一例として、物理層アダプタ142及び分配系220は、SDI(Serial Digital Interface)規格に従ってデータストリームを出力及び伝送してもよい。
【0071】
データストリームは、分配系220で分配された後、デジタル受信I/F150によって、元の複数のデジタルデータに復元される。
【0072】
図4Bは、デジタル受信I/F150の機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【0073】
デジタル受信I/F150は、物理層アダプタ151と、デマルチプレクサ152と、を有する。
【0074】
物理層アダプタ151は、分配系220からデータストリームを取得し、取得したデータストリームを表す多重化デジタルデータをデマルチプレクサ152へ出力する。物理層アダプタ151は、物理層アダプタ142と同様、分配系220の構成に応じて、同軸トランシーバ又は光トランシーバで構成されてもよい。
【0075】
デマルチプレクサ152は、多重化デジタルデータの各フレームから部分データを抽出して結合することにより元の複数のデジタルデータを復元し、復元した各デジタルデータをD/A変換器161、162の対応する一方に出力する。
【0076】
各フレームにスタート符号が格納されている場合、デマルチプレクサ152は、当該スタート符号を検出することにより、各フレームの範囲を特定してもよい。
【0077】
また、各フレームに送信元識別情報が格納されている場合、デマルチプレクサ152は、送信元識別情報が同一のフレームに含まれる部分データ同士を結合して、元のデジタルデータを復元してもよい。送信元識別情報は、デジタルデータのフレームへの格納順序をあらかじめ取り決めておくことで、省略することもできる。
【0078】
また、各フレームにパリティ符号が格納されている場合、デマルチプレクサ152は、当該パリティ符号を用いて当該フレームの誤り訂正を行い、誤り訂正後の部分データを結合して、元のデジタルデータを復元してもよい。
【0079】
データストリームから復元された複数のデジタルデータは、D/A変換器161、162によって元の複数の放送信号、つまり偏波分割多重された放送波から分離された複数の放送信号に変換され、放送受信機230へ出力される。
【0080】
以上説明したように、放送信号処理装置100によれば、偏波分割多重された放送波から分離された複数の放送信号を、デジタルデータに変換し単一のデータストリームに多重化して伝送する。その結果、偏波分割多重された放送波を受信後、単一の信号ケーブルを用いて簡便に配信することができる放送信号処理装置が得られる。
【0081】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る放送信号処理装置は、実施の形態1に係る放送信号処理装置100に、複数の放送信号をダウンコンバートするための周波数変換器を追加したものである。以下では、実施の形態1と同一の事項については適宜説明を省略し、主として実施の形態2で追加される事項を説明する。
【0082】
図5Aは、実施の形態2に係る放送信号処理装置の送信装置の要部101aの機能的な構成の一例を示すブロック図である。図5Aに示される要部101aは、図1の放送信号処理装置100の対応部分と比べて、A/D変換器131、132の前段に周波数変換器121、122が追加される点が異なる。ここで、周波数変換器121、122は、第3変換部の一例である。
【0083】
図5Aに例示されている右旋アナログ信号及び左旋アナログ信号は、一例として、約1GHzから約2GHzまでの周波数帯域をそれぞれ有しているものとする。従って、単純には、最高で約2GHzのアナログ信号をA/D変換する必要がある。
【0084】
そこで、複数の放送信号を、周波数変換器121、122でダウンコンバートする。例えば、右旋アナログ信号及び左旋アナログ信号を、それぞれ、0から約1GHzまでの周波数帯域へダウンコンバートする。そして、ダウンコンバート後の複数の放送信号を、A/D変換器131、132でA/D変換する。
【0085】
そうすることで、最高周波数に関するA/D変換器の性能要件が緩和され、より簡素で安価なA/D変換器131、132の利用が可能になる。また、ビットレートを抑え、デジタルデータが占有する周波数帯域幅を縮小することで、データ配信時のレベル減衰を軽減し、かつ外乱の影響をさらに受けにくくする効果が得られる。
【0086】
なお、周波数変換器121、122は、何れか一方のみを設けてもよく、例えば、右旋アナログ信号及び左旋アナログ信号のうち、最高周波数がより高い一方のみに対応して設けてもよい。
【0087】
送信装置の要部101aに対応して、受信装置での構成を次のように変更してもよい。
【0088】
図5Bは、実施の形態2に係る放送信号処理装置の受信装置の要部101bの機能的な構成の一例を示すブロック図である。図5Bに示される要部101bは、図1の放送信号処理装置100の対応部分と比べて、D/A変換器161、162の後段に周波数変換器171、172が追加される点が異なる。
【0089】
送信装置の要部101aにおいて放送信号はダウンコンバートされているので、D/A変換器161、162からは、ダウンコンバート後の周波数帯域の放送信号が出力される。そこで、当該放送信号を、周波数変換器171、172でアップコンバートすることによって、元の周波数帯域の放送信号を生成して、放送受信機230に供給する。これにより、放送受信機230をそのまま利用しつつ、ダウンコンバートによる効果を得ることができる。
【0090】
なお、アップコンバートは、周波数変換器171、172には限られず、例えば、D/A変換器161、162でのオーバーサンプリングなど、他の方法で行うこともできる。また、放送受信機を、ダウンコンバートされた周波数帯域の放送信号で動作するよう変更することで、アップコンバートを省略することもできる。
【0091】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る放送信号処理装置は、実施の形態1に係る放送信号処理装置100に、複数の放送信号の各々を複数の成分信号に周波数分割するための複数のフィルタ、及び周波数分割後の各成分信号をダウンコンバートするための周波数変換器を追加したものである。以下では、実施の形態1と同一の事項については適宜説明を省略し、主として実施の形態3で追加される事項を説明する。
【0092】
図6Aは、実施の形態3に係る放送信号処理装置の送信装置の要部102aの機能的な構成の一例を示すブロック図である。図6Aに示される要部102aは、図1の放送信号処理装置100の対応部分と比べて、A/D変換器131a、131b、132a、132bが変更され、フィルタ111a、111b、112a、112bと周波数変換器121a、121b、122a、122bとが追加される点で異なる。
【0093】
図6Aに例示されている右旋アナログ信号及び左旋アナログ信号は、図5Aと同様、それぞれ、約1GHzから約2GHzまでの周波数帯域を有しているものとする。従って、単純には、周波数帯域幅が約1GHzのアナログ信号をA/D変換する必要がある。
【0094】
そこで、複数の放送信号の各々を、まず、フィルタ111a、111b、112a、112bで周波数帯域が互いに異なる複数の成分信号に分割する。例えば、右旋アナログ信号を、周波数帯域の略下半分(約1GHzから約1.5GHzまで)の成分信号1aと略上半分(約1.5GHzから約2GHzまで)の成分信号1bとに周波数分割する。左旋アナログ信号放送信号も同様に、成分信号2aと成分信号2bとに周波数分割する。
【0095】
次に、複数の成分信号を、周波数変換器121a、121b、122a、122bでダウンコンバートする。例えば、成分信号1a、1b、2a、2bを、それぞれ、0から約0.5GHzまでの周波数帯域へダウンコンバートする。そして、ダウンコンバート後の複数の成分信号を、A/D変換器131a、131b、132a、132bでA/D変換する。
【0096】
そうすることで、最高周波数及び帯域幅に関するA/D変換器の性能要件が緩和されるので、より簡素で安価なA/D変換器131a、131b、132a、132bの利用が可能になる。また、ビットレートを抑え、デジタルデータが占有する周波数帯域幅を縮小することで、データ配信時のレベル減衰を軽減し、かつ外乱の影響をさらに受けにくくする効果が得られる。
【0097】
送信装置の要部102aに対応して、受信装置での構成を次のように変更してもよい。
【0098】
図6Bは、実施の形態3に係る放送信号処理装置の受信装置の要部102bの機能的な構成の一例を示すブロック図である。図6Bに示される要部102bは、図1の放送信号処理装置100の対応部分と比べて、D/A変換器161a、161b、162a、162bが変更され、周波数変換器171a、171b、172a、172bと、混合器181、182とが追加される点で異なる。
【0099】
送信装置の要部102aにおいて放送信号は周波数分割されかつダウンコンバートされているので、D/A変換器161a、161b、162a、162bからは、周波数分割及びダウンコンバート後の周波数帯域の放送信号が出力される。
【0100】
そこで、当該放送信号を、周波数変換器171a、171b、172a、172bでアップコンバートし、混合器181、182で混合することによって、元の周波数帯域の放送信号を生成して、放送受信機230に供給する。これにより、放送受信機230をそのまま利用しつつ、周波数分割及びダウンコンバートによる効果を得ることができる。
【0101】
なお、アップコンバートは、周波数変換器171a、171b、172a、172bには限られず、例えば、D/A変換器161a、161b、162a、162bでのオーバーサンプリングなど、他の方法で行ってもよい。
【0102】
また、周波数帯域の分割数は2に限られるものではなく、3以上であってもよい。また、分割後の成分信号のA/D変換の分解能についても、先述と同様、所要SNRに基づいて最適なビット数を選択することができる。
【0103】
ここで、放送信号処理装置100によって処理される放送信号の周波数帯域の具体的な数値例を示す。
【0104】
図7は、当該周波数帯域の一例を示す図である。図7に示されるように、右旋アナログ信号の成分信号1aは1032MHzから1489MHzまでの周波数帯域に割り当てられ、成分信号1bは1593MHzから2073MHzまでの周波数帯域に割り当てられている。成分信号1a、1bを混合した右旋アナログ信号が、受信アンテナから取り出される。
【0105】
右旋アナログ信号は、放送信号処理装置100の送信装置で、0MHzから457MHzまでの周波数帯域の成分信号1aと、0MHzから480MHzまでの周波数帯域の成分信号1bとに、周波数分割及びダウンコンバートされる。
【0106】
また、一例として、左旋アナログ信号の成分信号2aは1052MHzから1509MHzまでの周波数帯域に割り当てられ、成分信号2bは1573MHzから2053MHzまでの周波数帯域に割り当てられている。成分信号2a、2bを混合した左旋アナログ信号が、受信アンテナから取り出される。
【0107】
左旋アナログ信号は、放送信号処理装置100の送信装置で、0MHzから457MHzまでの周波数帯域の成分信号2aと、0MHzから480MHzまでの周波数帯域の成分信号2bとに、周波数分割及びダウンコンバートされる。
【0108】
放送信号処理装置100の受信装置では、成分信号1a、1bをアップコンバート及び信号混合することにより、元の右旋アナログ信号が復元される。また、成分信号2a、2bをアップコンバート及び信号混合することにより、元の左旋アナログ信号が復元される。
【0109】
(実施の形態4)
実施の形態4に係る放送信号処理装置は、構成要素の少なくとも一部を放送受信機に内蔵したものである。
【0110】
図8は、実施の形態4に係る放送信号処理装置100の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図8に示される放送信号処理装置100では、D/A変換器161、162が放送受信機231に内蔵される。つまり、放送受信機231は、前述した一般的な放送受信機230とD/A変換器161、162とを含む。放送受信機231は、偏波ごとのデジタルデータを、各独立した信号入力端子233、234で取得し、映像音声信号にデコードする。
【0111】
ここで、信号入力端子233、234が、所定極性の放送信号である第1アナログ信号を基に生成された第1デジタル信号及び所定極性とは異なる極性の放送信号である第2アナログ信号を基に生成された第2デジタル信号を取得する第1取得部の一例である。また、D/A変換器161が、前記第1デジタル信号をアナログ信号に変換する第1変換部の一例であり、D/A変換器162が、前記第2デジタル信号をアナログ信号に変換する第2変換部の一例である。また、放送受信機230には、前記第1変換部及び前記第2変換部で変換されたアナログ信号の少なくとも一方から、少なくとも1つの放送信号を選択する選局部が含まれている。
【0112】
図9は、実施の形態4に係る放送信号処理装置100の機能的な構成の他の一例を示すブロック図である。図9に示される放送信号処理装置100では、デジタル受信I/F150及びD/A変換器161、162が放送受信機232に内蔵される。つまり、放送受信機232は、前述した一般的な放送受信機230と、デジタル受信I/F150と、D/A変換器161、162とを含む。放送受信機232は、偏波ごとのデジタルデータが多重化されたデータストリームを、単一の信号入力端子235で取得し、映像音声信号にデコードする。
【0113】
ここで、信号入力端子235が、所定極性の放送信号である第1アナログ信号及び前記所定極性とは異なる極性の放送信号である第2アナログ信号を基に生成されたデジタル信号を取得する第2取得部の一例である。また、デジタル受信I/F150が、前記デジタル信号から前記第1デジタル信号と前記第2デジタル信号を抽出する抽出部の一例である。前記第1取得部の一例である信号入力端子233、234は、前記抽出部によって抽出された前記第1デジタル信号及び前記第2デジタル信号を取得する。
【0114】
このような構成によれば、分配系220から取得された信号を処理するための構成要素の少なくとも一部が放送受信機231、232に内蔵されるので、分配系220と放送受信機231、232との間に独立して配置する必要がある外付け部品が削減され、放送信号処理装置100の構成を簡素化できる。
【0115】
(実施の形態5)
実施の形態5に係る放送信号処理装置は、放送信号処理装置と放送受信機との接続を簡素化するものである。
【0116】
図10は、実施の形態5に係る放送信号処理装置103の機能的な構成の一例を示すブロック図である。図10に示される放送信号処理装置103は、図1の放送信号処理装置100と比べて、受信装置403に周波数多重化器190が追加される点が異なる。
【0117】
周波数多重化器190は、D/A変換器161、162で変換後の偏波ごとの放送信号を単一の多重化信号に周波数分割多重して、放送受信機240へ出力する。周波数多重化器190は、例えば、偏波ごとの放送信号を各異なる周波数帯域の放送信号に周波数変換する周波数変換器と、周波数変換後の放送信号を混合する混合器とで構成されてもよい。
【0118】
ここで、放送受信機240は、偏波ごとの放送信号を周波数分割多重した多重化信号を単一の信号入力端子で取得し、映像音声信号にデコードできるものとする。
【0119】
放送信号処理装置103によれば、前記多重化信号を、放送信号処理装置103から放送受信機240へ、単一の信号ケーブルで伝送できるので、放送信号処理装置103と放送受信機240との接続を簡素化できる。この構成は、周波数干渉が少ない室内での配線(特には放送受信機240の近傍での配線)を簡素化する上で有効である。
【0120】
以上、本発明の実施の形態に係る放送信号処理装置について説明したが、本発明は、個々の実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の一つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0121】
例えば、放送信号処理装置における送信装置は、A/D変換器131、132で変換後の複数のデジタルデータ(つまり、第1デジタル信号及び第2デジタル信号)を圧縮する圧縮部を備え、デジタル送信I/F140(つまり、生成部)は、圧縮された各デジタル信号の情報を含むデータストリーム(つまり、第3デジタル信号)を生成してもよい。
【0122】
また、放送信号処理装置における送信装置は、A/D変換器131、132で変換後の複数のデジタルデータ(つまり、第1デジタル信号及び第2デジタル信号)を可逆圧縮する可逆圧縮部を備え、デジタル送信I/F140(つまり、生成部)は、可逆圧縮された各デジタル信号の情報を含むデータストリーム(つまり、第3デジタル信号)を生成してもよい。
【0123】
ここで、前記圧縮及び前記可逆圧縮には、周知の圧縮方法を適宜用いることとし、具体的な圧縮方法は特には限定しない。
【0124】
このような構成によれば、圧縮により前記第1及び第2デジタル信号が縮小され、効率的な伝送が可能になる。特に、可逆圧縮を用いる場合、圧縮によって生じる前記第1及び第2デジタル信号の劣化を考慮する必要がないので、システム設計が簡素化される。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、放送信号処理装置として、例えば、集合住宅や各種施設などに設けられる共聴システムに利用できる。
【符号の説明】
【0126】
100、103 放送信号処理装置
101a、101b、102a、102b 放送信号処理装置の要部
111a、111b、112a、112b フィルタ
121、121a、121b、122、122a、122b 周波数変換器
131、131a、131b、132、132a、132b A/D変換器
140 デジタル送信I/F
141 マルチプレクサ
142 物理層アダプタ
150 デジタル受信I/F
151 物理層アダプタ
152 デマルチプレクサ
161、161a、161b、162、162a、162b D/A変換器
171、171a、171b、172、172a、172b 周波数変換器
181、182 混合器
190 周波数多重化器
210 受信アンテナ
220 伝送系
220 分配系
221 信号ケーブル
222 分配器
230、231、232、240 放送受信機
233、234、235 信号入力端子
300 送信装置
400、403 受信装置
500 データストリーム
510 フレーム
511 ヘッダフィールド
512 送信元フィールド
513 データフィールド
514 パリティフィールド
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10