【実施例1】
【0010】
図1は、本発明に係るロータリ圧縮機の実施例を示す縦断面図であり、
図2は、実施例の第1の圧縮部及び第2の圧縮部の下方から見た横断面図である。
【0011】
図1に示すように、ロータリ圧縮機1は、密閉された縦置き円筒状の圧縮機筐体10の下部に配置された圧縮部12と、圧縮機筐体10の上部に配置され、回転軸15を介して圧縮部12を駆動するモータ11と、を備えている。
【0012】
モータ11のステータ111は、円筒状に形成され、圧縮機筐体10の内周面に焼きばめされて固定されている。モータ11のロータ112は、円筒状のステータ111の内部に配置され、モータ11と圧縮部12とを機械的に接続する回転軸15に焼きばめされて固定されている。
【0013】
圧縮部12は、第1の圧縮部12Sと第2の圧縮部12Tとを備えており、第2の圧縮部12Tが、第1の圧縮部12Sの上側に配置されている。
図2に示すように、第1の圧縮部12Sは、環状の第1シリンダ121Sを備えている。第1シリンダ121Sは、回転軸15の径方向に対して、環状の外周から張り出した第1側方張出部122Sを有する。第1側方張出部122Sには、第1吸入孔135Sと第1ベーン溝128Sが放射状に設けられている。また、第2の圧縮部12Tは、環状の第2シリンダ121Tを備えている。第2シリンダ121Tは、回転軸15の径方向に対して、環状の外周から張り出した第2側方張出部122Tを有する。第2側方張出部122Tには、第2吸入孔135Tと第2ベーン溝128Tが放射状に設けられている。
【0014】
図2に示すように、第1シリンダ121Sには、モータ11の回転軸15と同心に、円形の第1シリンダ内壁123Sが形成されている。第1シリンダ内壁123S内には、第1シリンダ121Sの内径よりも外径が小さい環状の第1ピストン125Sが配置され、第1シリンダ内壁123Sと第1ピストン125Sとの間に、冷媒を吸入し圧縮して吐出する第1シリンダ室130Sが形成される。第2シリンダ121Tには、モータ11の回転軸15と同心に、円形の第2シリンダ内壁123Tが形成されている。第2シリンダ内壁123T内には、第2シリンダ121Tの内径よりも外径が小さい環状の第2ピストン125Tが配置され、第2シリンダ内壁123Tと第2ピストン125Tとの間に、冷媒を吸入し圧縮して吐出する第2シリンダ室130Tが形成される。
【0015】
第1シリンダ121Sには、第1シリンダ内壁123Sから径方向に、シリンダ高さ全域に亘る第1ベーン溝128Sが形成され、第1ベーン溝128S内に、平板状の第1ベーン127Sが、摺動自在に嵌合されている。第2シリンダ121Tには、第2シリンダ内壁123Tから径方向に、シリンダ高さ全域に亘る第2ベーン溝128Tが形成され、第2ベーン溝128T内に、平板状の第2ベーン127Tが、摺動自在に嵌合されている。
【0016】
図2に示すように、第1ベーン溝128Sの径方向外側には、第1側方張出部122Sの外周部から第1ベーン溝128Sに連通するように第1スプリング穴124Sが形成されている。第1スプリング穴124Sには、第1ベーン127Sの背面を押圧する図示しない第1ベーンスプリングが挿入されている。第2ベーン溝128Tの径方向外側には、第2側方張出部122Tの外周部から第2ベーン溝128Tに連通するように第2スプリング穴124Tが形成されている。第2スプリング穴124Tには、第2ベーン127Tの背面を押圧する図示しない第2ベーンスプリングが挿入されている。
【0017】
ロータリ圧縮機1の起動時は、この第1ベーンスプリングの反発力により、第1ベーン127Sが、第1ベーン溝128S内から第1シリンダ室130S内に突出し、その先端が、環状の第1ピストン125Sの外周面に当接し、第1ベーン127Sにより、第1シリンダ室130Sが、第1吸入室131Sと、第1圧縮室133Sとに区画される。また、同様に、第2ベーンスプリングの反発力により、第2ベーン127Tが、第2ベーン溝128T内から第2シリンダ室130T内に突出し、その先端が、環状の第2ピストン125Tの外周面に当接し、第2ベーン127Tにより、第2シリンダ室130Tが、第2吸入室131Tと、第2圧縮室133Tとに区画される。
【0018】
また、第1シリンダ121Sには、第1ベーン溝128Sの径方向外側と圧縮機筐体10内とを開口部R(
図1参照)で連通して圧縮機筐体10内の圧縮された冷媒を導入し、第1ベーン127Sに冷媒の圧力により背圧をかける第1圧力導入路129Sが形成されている。なお、圧縮機筐体10内の圧縮された冷媒は、第1スプリング穴124Sからも導入される。また、第2シリンダ121Tには、第2ベーン溝128Tの径方向外側と圧縮機筐体10内とを開口部R(
図1参照)で連通して圧縮機筐体10内の圧縮された冷媒を導入し、第2ベーン127Tに冷媒の圧力により背圧をかける第2圧力導入路129Tが形成されている。なお、圧縮機筐体10内の圧縮された冷媒は、第2スプリング穴124Tからも導入される。
【0019】
第1シリンダ121Sの第1側方張出部122Sには、第1吸入室131Sに外部から冷媒を吸入するために、第1吸入室131Sと外部とを連通させる第1吸入孔135Sが設けられている。第2シリンダ121Tの第2側方張出部122Tには、第2吸入室131Tに外部から冷媒を吸入するために、第2吸入室131Tと外部とを連通させる第2吸入孔135Tが設けられている。第1吸入孔135S及び第2吸入孔135Tの断面は円形である。
【0020】
また、
図1に示すように、第1シリンダ121Sと第2シリンダ121Tの間には、中間仕切板140が配置され、第1シリンダ121Sの第1シリンダ室130S(
図2参照)と第2シリンダ121Tの第2シリンダ室130T(
図2参照)とを仕切っている。中間仕切板140は、第1シリンダ121Sの上端部と第2シリンダ121Tの下端部を閉塞している。
【0021】
第1シリンダ121Sの下端部には、下端板160Sが配置され、第1シリンダ121Sの第1シリンダ室130Sを閉塞している。また、第2シリンダ121Tの上端部には、上端板160Tが配置され、第2シリンダ121Tの第2シリンダ室130Tを閉塞している。下端板160Sは、第1シリンダ121Sの下端部を閉塞し、上端板160Tは、第2シリンダ121Tの上端部を閉塞している。
【0022】
下端板160Sには、副軸受部161Sが形成され、副軸受部161Sに、回転軸15の副軸部151が回転自在に支持されている。上端板160Tには、主軸受部161Tが形成され、主軸受部161Tに、回転軸15の主軸部153が回転自在に支持されている。
【0023】
回転軸15は、互いに180°位相をずらして偏心させた第1偏心部152Sと第2偏心部152Tとを備え、第1偏心部152Sは、第1の圧縮部12Sの第1ピストン125Sに回転自在に嵌合し、第2偏心部152Tは、第2の圧縮部12Tの第2ピストン125Tに回転自在に嵌合している。
【0024】
回転軸15が回転すると、第1ピストン125Sが、第1シリンダ内壁123Sに沿って第1シリンダ121S内を
図2の反時計回りに公転し、これに追随して第1ベーン127Sが往復運動する。この第1ピストン125S及び第1ベーン127Sの運動により、第1吸入室131S及び第1圧縮室133Sの容積が連続的に変化し、圧縮部12は、連続的に冷媒を吸入し圧縮して吐出する。また、回転軸15が回転すると、第2ピストン125Tが、第2シリンダ内壁123Tに沿って第2シリンダ121T内を
図2の反時計回りに公転し、これに追随して第2ベーン127Tが往復運動する。この第2ピストン125T及び第2ベーン127Tの運動により、第2吸入室131T及び第2圧縮室133Tの容積が連続的に変化し、圧縮部12は、連続的に冷媒を吸入し圧縮して吐出する。
【0025】
図1に示すように、下端板160Sの下側には、下端板カバー170Sが配置されており、下端板160Sとの間に下マフラー室180Sを形成している。そして、第1の圧縮部12Sは、下マフラー室180Sに開口している。すなわち、下端板160Sの第1ベーン127S近傍には、第1シリンダ121Sの第1圧縮室133Sと下マフラー室180Sとを連通する第1吐出孔190S(
図2参照)が設けられ、第1吐出孔190Sには、圧縮された冷媒の逆流を防止するリード弁型の第1吐出弁200Sが配置されている。
【0026】
下マフラー室180Sは、1つの室であり、第1の圧縮部12Sの吐出側を、下端板160S、第1シリンダ121S、中間仕切板140、第2シリンダ121T及び上端板160Tを貫通する冷媒通路孔136(
図2参照)を通して上マフラー室180T内に連通させる連通路の一部である。下マフラー室180Sは、第1シリンダ室130Sからの吐出冷媒の圧力脈動を低減させる。また、第1吐出弁200Sに重ねて、第1吐出弁200Sの撓み開弁量を制限するための第1吐出弁押え201Sが、第1吐出弁200Sとともにリベットにより固定されている。第1吐出孔190S、第1吐出弁200S及び第1吐出弁押え201Sは、下端板160Sの第1吐出弁部200SVを構成している。下端板160Sは、第1吐出弁部200SV及び冷媒通路孔136の下端を覆っている。
【0027】
図1に示すように、上端板160Tの上側には、上端板カバー170Tが配置されており、上端板160Tとの間に上マフラー室180Tを形成している。上端板160Tの第2ベーン127T近傍には、第2シリンダ121Tの第2圧縮室133Tと上マフラー室180Tとを連通する第2吐出孔190T(
図2参照)が設けられ、第2吐出孔190Tには、圧縮された冷媒の逆流を防止するリード弁型の第2吐出弁200Tが配置されている。また、第2吐出弁200Tに重ねて、第2吐出弁200Tの撓み開弁量を制限するための第2吐出弁押え201Tが、第2吐出弁200Tとともにリベットにより固定されている。上マフラー室180Tは、第2シリンダ室130Tからの吐出冷媒の圧力脈動を低減させる。第2吐出孔190T、第2吐出弁200T及び第2吐出弁押え201Tは、上端板160Tの第2吐出弁部200TVを構成している。上端板160Tは、第2吐出弁部200TV及び冷媒通路孔136の上端を覆っている(上端板カバー170T及び上マフラー室180Tの詳細については後述する)。
【0028】
下端板カバー170S、下端板160S、第1シリンダ121S及び中間仕切板140は、下側から挿通されて第2シリンダ121Tに設けられたメネジにネジ込まれた複数(4本以上)の通しボルト175によって第2シリンダ121Tに締結されている。上端板カバー170T及び上端板160Tは、上側から挿通されて第2シリンダ121Tに設けられたメネジにネジ込まれた通しボルト175により第2シリンダ121Tに締結される。複数の通しボルト175等により一体に締結された下端板カバー170S、下端板160S、第1シリンダ121S、中間仕切板140、第2シリンダ121T、上端板160T及び上端板カバー170Tは、圧縮部12を構成している。圧縮部12のうち、上端板160Tの外周部が、圧縮機筐体10の内周面にスポット溶接により接合されており、圧縮部12が圧縮機筐体10に固定されている。
【0029】
円筒状の圧縮機筐体10の外周壁には、軸方向に離間して下部から順に、第1貫通孔101及び第2貫通孔102が、夫々第1吸入管104及び第2吸入管105を通すために設けられている。また、圧縮機筐体10の外側部には、独立した円筒状の密閉容器からなるアキュムレータ25が、アキュムホルダー252及びアキュムバンド253により保持されている。
【0030】
アキュムレータ25の天部中心には、冷媒回路の蒸発器に接続するシステム接続管255が接続されている。アキュムレータ25の底部に設けられた底部貫通孔257には、第1低圧連絡管31S及び第2低圧連絡管31Tが固定されている。第1低圧連絡管31S及び第2低圧連絡管31Tは、一端がアキュムレータ25の内部上方まで延設されており、他端が、夫々第1吸入管104及び第2吸入管105の他端に接続されている。
【0031】
冷媒回路の低圧冷媒を、アキュムレータ25を介して第1の圧縮部12Sに導く第1低圧連絡管31Sは、吸入部としての第1吸入管104を介して、第1シリンダ121Sの第1吸入孔135S(
図2参照)に接続されている。また、冷媒回路(冷凍サイクル)の低圧冷媒を、アキュムレータ25を介して第2の圧縮部12Tに導く第2低圧連絡管31Tは、吸入部としての第2吸入管105を介して、第2シリンダ121Tの第2吸入孔135T(
図2参照)に接続されている。すなわち、第1吸入孔135S及び第2吸入孔135Tは、冷媒回路の蒸発器に並列に接続されている。
【0032】
圧縮機筐体10の天部には、冷媒回路(冷凍サイクル)と接続し高圧冷媒を冷媒回路の凝縮器側に吐出する吐出部としての吐出管107が接続されている。すなわち、第1吐出孔190S及び第2吐出孔190Tは、冷媒回路の凝縮器に接続されている。
【0033】
圧縮機筐体10内には、およそ第2シリンダ121Tの高さまで潤滑油が封入されている。また、潤滑油は、回転軸15の下部に挿入される図示しないポンプ羽根により、回転軸15の下端部に取付けられた給油パイプ16から吸上げられ、圧縮部12を循環し、摺動部品(第1ピストン125S及び第2ピストン125T)の潤滑を行なうとともに、圧縮部12の微小隙間のシールをする。
【0034】
次に、
図3〜
図4を参照して、実施例1のロータリ圧縮機1の特徴的な構成について説明する。
図3は、実施例1の上端板カバーを下方から示す平面図であり、
図4は上端板カバーと吐出弁部及び冷媒通路孔との位置関係を上端板カバーの下方から示す平面図である。
【0035】
図3及び
図4に示すように、実施例1の上端板カバー170Tは、鋼板をプレス成形して平面視で円形に形成されるとともに、上マフラー室180Tの外郭となる凹部171Tが形成されている。上端板カバー170Tの外縁部を構成する平板部172Tには、通しボルト175を通す5つのボルト孔173Tが配置されている。5本の通しボルト175により、上端板カバー170Tと上端板160Tと第2シリンダ121Tとが締結されている。
【0036】
上端板カバー170Tは、上端板160Tの第2吐出弁部200TV及び冷媒通路孔136の上端を覆い(
図4参照)、上端板160Tとの間に上マフラー室180Tを形成する。回転軸15に直交する平面上において、上マフラー室180Tは、回転軸15の中心から放射状に通しボルト175(ボルト孔173T)間に張出す5つ(複数)の張出し部181Tと、各々の張出し部181Tの間を繋ぐとともに通しボルト175(ボルト孔173T)と干渉しないように通しボルト175から離れて、通しボルト175よりも回転軸15の中心側に形成された5つの小径部182Tと、を有している。5つの張出し部181Tの各々には、マフラー吐出孔183Tが設けられている。マフラー吐出孔183Tは、上マフラー室180Tを圧縮機筐体10の内部に連通させる。
【0037】
図4に示すように、第2吐出弁部200TVを構成する第2吐出孔190T、及び下マフラー室180Sと上マフラー室180Tとを連通する冷媒通路孔136は、上マフラー室180Tの張出し部181Tに開口している。第2吐出孔190Tと冷媒通路孔136とは、回転軸15に対して互いに反対側の位置に配置されている。なお、第1、第2吐出孔190S、190Tから吐出された吐出冷媒を上マフラー室180T内に籠らせることで吐出冷媒の圧力脈動を低減させるために、5つのマフラー吐出孔183Tの総開口面積は、第1、第2吐出孔190S、190Tの総開口面積と同等以下とする。
【0038】
実施例1のロータリ圧縮機1は、回転軸15に直交する平面上において、上マフラー室180Tが、回転軸15の中心から放射状に通しボルト175(ボルト孔173T)間に張出す複数の張出し部181Tと、各々の張出し部181Tの間を繋ぐとともに通しボルト175(ボルト孔173T)と干渉しないように通しボルト175から離れて、通しボルト175よりも回転軸15の中心側に形成された複数の小径部182Tと、を有する。マフラー吐出孔183Tは、複数の張出し部181Tの各々に設けられ、上マフラー室180T内に開口する上端板160Tの第2吐出弁部200TVの第2吐出孔190Tと冷媒通路孔136とは、回転軸15に対して互いに反対側の張出し部181Tに配置されている。これにより、第2吐出孔190Tから吐出された冷媒は、第2吐出孔190T側に配置されたマフラー吐出孔183Tから圧縮機筐体10内に排出され、冷媒通路孔136から吐出された冷媒は、冷媒通路孔136側に配置されたマフラー吐出孔183Tから圧縮機筐体10内に排出される。
【0039】
そのため、上マフラー室180T内において、第2の圧縮部12Tで圧縮された冷媒と、第1の圧縮部12Sで圧縮され下マフラー室180S及び冷媒通路孔136により圧力脈動が低減された圧力脈動成分が異なる冷媒とが合流し難い。これにより、冷媒の圧力脈動が増幅されることが抑えられ、圧力脈動の増幅に伴う騒音の増大を抑制することができる。
【0040】
図5は、実施例1の上端板カバーを用いたロータリ圧縮機の騒音と従来のロータリ圧縮機の騒音とを比較したグラフである。
図5は、中心周波数100[Hz]〜20000[Hz](横軸)において、1/3オクターブのJIS規格に定められたバンドパスフィルタを通して測定した各々の1/3オクターブ周波数帯域毎の騒音値[dB(A)](縦軸)を示す。横軸のO.A.は、各1/3オクターブ周波数帯域毎の騒音値をエネルギー量で合計した値(オーバーオール値)である。
図5に示すように、実施例1のロータリ圧縮機1は、1/3オクターブ周波数800Hz〜2500Hz、5000Hz〜20000Hz及びオーバーオール値において、従来のロータリ圧縮機よりも騒音値を小さくすることができた。
【実施例2】
【0041】
図6は、実施例2の上端板カバーを下方から示す平面図である。
図6に示すように、実施例2の上端板カバー170T2は、鋼板をプレス成形して平面視で円形に形成されるとともに、上マフラー室180T2の外郭となる凹部171T2が形成されている。上端板カバー170T2の外縁部を構成する平板部172T2には、通しボルト175を通す5つのボルト孔173T2が配置されている。5本の通しボルトにより、上端板カバー170T2と上端板160Tと第2シリンダ121Tとが締結される。
【0042】
実施例2の上端板カバー170T2は、上端板160Tの第2吐出弁部200TV及び冷媒通路孔136の上端(
図4参照)を覆い、上端板160Tとの間に上マフラー室180T2を形成する。上マフラー室180T2は、回転軸15に直交する平面上において、回転軸15の中心から放射状に通しボルト175(ボルト孔173T2)間に張出す2つの張出し部181T2と、各々の張出し部181T2の間を繋ぐとともに通しボルト175(ボルト孔173T2)と干渉しないように通しボルト175から離れて通しボルト175よりも回転軸15の中心側に形成された5つの小径部182T2と、を有している。2つの張出し部181T2の各々には、マフラー吐出孔183T2が設けられている。マフラー吐出孔183T2は、上マフラー室180T2を圧縮機筐体10の内部に連通させる。
【0043】
第2吐出弁部200TVを構成する第2吐出孔190T(
図4参照)、及び下マフラー室(図示せず)と上マフラー室180T2とを連通する冷媒通路孔136(
図4参照)は、上マフラー室180T2の張出し部181T2に開口している。第2吐出孔190Tと冷媒通路孔136とは、回転軸15に対して互いに反対側の位置に配置されている。なお、第1、第2吐出孔190S、190Tから吐出された吐出冷媒を上マフラー室180T2内に籠らせることで吐出冷媒の圧力脈動を低減させるために、2つのマフラー吐出孔183T2の総開口面積は、第1、第2吐出孔190S、190Tの総開口面積と同等以下とする。
【0044】
実施例2のロータリ圧縮機は、回転軸15に直交する平面上において、上マフラー室180T2が、回転軸15の中心から放射状に通しボルト175(ボルト孔173T2)間に張出す複数(2つ)の張出し部181T2と、各々の張出し部181T2の間を繋ぐとともに通しボルト175(ボルト孔173T2)と干渉しないように通しボルト175から離れて通しボルト175よりも回転軸15の中心側に形成された複数(2つ)の小径部182T2と、を有する。マフラー吐出孔183T2は、複数(2つ)の張出し部181T2の各々に設けられている。上マフラー室180T2内に開口する上端板160Tの第2吐出弁部200TVの第2吐出孔190Tと冷媒通路孔136とは、回転軸15に対して互いに反対側の張出し部181T2に配置されている。これにより、第2吐出孔190Tから吐出された冷媒は、第2吐出孔190T側に配置されたマフラー吐出孔183T2から圧縮機筐体10内に排出され、冷媒通路孔136から吐出された冷媒は、冷媒通路孔136側に配置されたマフラー吐出孔183T2から圧縮機筐体10内に排出される。
【0045】
実施例2の小径部182T2は、実施例1の小径部182Tよりも周方向における長さが長いので、上マフラー室180T2内で、第2の圧縮部12Tで圧縮された冷媒と、第1の圧縮部12Sで圧縮され下マフラー室及び冷媒通路孔136により圧力脈動が低減され圧力脈動成分が異なる冷媒とが、実施例1の上マフラー室180Tよりもさらに合流し難く、冷媒の圧力脈動が増幅され難く、
図5に示す実施例1のロータリ圧縮機1における騒音抑制効果以上に、冷媒の吐出に伴う騒音を抑制することができる。
【実施例3】
【0046】
図7は、実施例3の上端板カバーを示す斜視図である。
図8は、実施例3の上端板カバーを示す分解斜視図である。
図9は、実施例3の上端板カバーを上方から示す平面図である。
図10は、実施例3の上端板カバーのマフラー吐出孔と第2吐出孔及び冷媒通路孔との位置関係を上端板カバーの下方から示す平面図である。
【0047】
実施例3のロータリ圧縮機は、
図7及び
図8に示すように、第2シリンダ121Tの上側を閉塞する上端板160T3と、上端板160T3との間に上マフラー室180T3を形成する上端板カバー170T3と、を備えている。また、実施例3のロータリ圧縮機は、上端板160T3に設けられて第2圧縮室133Tと連通する第2吐出孔190Tと、下端板160S、第1シリンダ121S、中間仕切板140、上端板160T3、第2シリンダ130Tを貫通する冷媒通路孔136N(
図1、8参照)と、を備えている。また、実施例3のロータリ圧縮機は、上端板カバー170T3を貫通して上端板カバー170T3の外縁部に略同心円上に設けられた複数のボルト孔173T3と、上端板カバー170T3側からボルト孔173T3に挿入されて上端板カバー170T3を第2シリンダ121Tに締結する通しボルト175(
図1参照)と、を備えている。上端板カバー170T3は、圧縮機筐体10の内部に連通するマフラー吐出孔183T3を有しており、上端板160T3の第2吐出孔190T及び冷媒通路孔136Nの開口を覆うことで上マフラー室180T3を形成する。
【0048】
図7、
図8及び
図9に示すように、回転軸15に直交する平面上において、上端板カバー170T3の上マフラー室180T3は、回転軸15の中心Oから通しボルト175の間に向かって張出す複数の張出し部181T3と、張出し部181T3の間を繋ぐとともに通しボルト175(ボルト孔173T3)から離れて通しボルト175よりも回転軸15の中心O側に形成された複数の小径部182T3と、を有する。各張出し部181T3には、マフラー吐出孔183T3がそれぞれ設けられている。張出し部181T3内において、マフラー吐出孔183T3は、上端板カバー170T3の外周側の内壁近傍に配置されている。
【0049】
回転軸15に直交する平面上において、複数の張出し部181T3のうち、1つの張出し部181T3Aの内部には、上端板160T3の第2吐出弁部200TVの第2吐出孔190T及び2つの冷媒通路孔136Nが位置している。この1つの張出し部181T3Aのマフラー吐出孔183T3A(以下、メインマフラー吐出孔183T3Aと称する)の開口面積は、他の各張出し部181T3Bのマフラー吐出孔183T3B(以下、サブマフラー吐出孔183T3Bと称する)の開口面積よりも大きい。
【0050】
メインマフラー吐出孔183T3Aの直径は、例えば、サブマフラー吐出孔183T3Bの直径の2倍程度大きく形成されている。また、実施例3におけるサブマフラー吐出孔183T3Bの直径は、実施例1、2におけるマフラー吐出孔183T、183T2の直径と比べて、例えば25%程度小さく形成されている。また、各実施例1〜3においては、例えば、マフラー吐出孔183T、183T2、183T3の開口面積の合計がそれぞれ同等に設定されている。
【0051】
なお、本実施例3における上マフラー室180T3は、1つのメインマフラー吐出孔183T3Aと、4つのサブマフラー吐出孔183T3Bとを有するが、サブマフラー吐出孔183T3Bの個数はこれに限定されるものではない。
【0052】
図10に示すように、2つの冷媒通路孔136Nは、円形孔であり、回転軸15に直交する平面上において、メインマフラー吐出孔183T3A及び第2吐出孔190Tの位置に対して、上端板カバー170T3の外周側に、互いに隣り合って配置されている。2つの冷媒通路孔136Nそれぞれの少なくとも一部は、1つの張出し部181T3Aの内壁面の外側に重なっており、この張出し部181T3A内に開口する位置に、2つの冷媒通路孔136Nが配置されている。また、2つの冷媒通路孔136Nの総開口面積は、実施例1のロータリ圧縮機1の冷媒通路孔136の開口面積と同等に設定されている。このように2つの冷媒連通孔136Nに分割されることで回転軸15(主軸受部161T)の径方向に対して冷媒連通孔136Nが占める寸法が相対的に小さくなる。このため、回転軸15の中心から冷媒通路孔136Nの最外周までの半径を、実施例1のロータリ圧縮機1の主軸受部161Tの中心から冷媒通路孔136の最外周までの半径よりも小さくすることが可能になり、上端板160T3の第2吐出弁部200TVが配置される空間を、上端板160T3の径方向に対して小さくすることができる。なお、冷媒通路孔136Nの個数は、3つ以上であってもよい。
【0053】
本実施例3のように、上マフラー室180T3の1つの張出し部181T3に冷媒通路孔136Nと第2吐出孔190Tとが配置された構成の場合には、この1つの張出し部181T3内に集中的に吐出される吐出冷媒の吐出量が多くなるので、1つの張出し部181T3のマフラー吐出孔183T3から、吐出冷媒を十分に吐出することが困難となる。この構成の場合、1つの張出し部180T3に吐出された吐出冷媒のうち、マフラー吐出孔183T3から吐出されなかった吐出冷媒が、他の張出し部181T3へ流れ込み、各張出し部181T3のマフラー吐出孔183T3からそれぞれ吐出されることになる。しかし、1つの張出し部181T3から、他の張出し部181T3の各マフラー吐出孔183T3までの距離がそれぞれ異なるので、各張出し部181T3のマフラー吐出孔183T3からの冷媒の吐出に伴う騒音の周波数成分がそれぞれ異なる。このため、各マフラー吐出孔183T3で生じる騒音の異なる周波数成分が混在することで、騒音低減の効果の低下を招くおそれがある。
【0054】
そこで、実施例3では、上述のように、冷媒通路孔136Nと第2吐出孔190Tとが配置された1つの張出し部181T3Aのメインマフラー吐出孔183T3Aの開口面積が、他の各張出し部181T3Bのサブマフラー吐出孔183T3Bの開口面積よりも大きくされることで、メインマフラー吐出孔183T3Aの吐出性が適正に高められ、他の各張出し部181T3Bのサブマフラー吐出孔183T3Bからの冷媒の吐出量が適正に抑えられている。
【0055】
また、1つの張出し部181T3Aのメインマフラー吐出孔183T3Aの開口面積は、上端板160T3の第2吐出孔190Tの開口面積と同等以上である。これにより、第2吐出孔190T及び冷媒通路孔136Nから吐出された吐出冷媒が、メインマフラー吐出孔183T3Aを円滑に通過し、圧縮機筐体10内へ吐出される。このため、張出し部181T3Aから、他の張出し部181T3Bのサブマフラー吐出孔183T3Bへ流れる吐出冷媒の流量が適正に抑えられ、圧力脈動の成分を十分に減衰することが可能になる。このため、騒音低減の効果を更に高めることができる。
【0056】
また、複数の張出し部181T3(181T3A、181T3B)の各々に設けられたマフラー吐出孔183T3(183T3A、183T3B)の総開口面積は、下端板160Sの第1吐出孔190S及び上端板160T3の第2吐出孔190Tの各々の総開口面積と同等以下である。これにより、第1、第2吐出孔190S、190Tから上マフラー室180T3内に吐出された冷媒を、上マフラー室180T3内に適正に籠らせることで、吐出冷媒の圧力脈動を低減させることができる。
【0057】
図11は、実施例3の上端板カバー170T3を用いたロータリ圧縮機の騒音と従来のロータリ圧縮機の騒音とを比較したグラフである。
図11において、縦軸が騒音値[dB(A)]を示し、横軸が1/3オクターブ周波数を示す。
図11に示すように、実施例3のロータリ圧縮機は、1/3オクターブ周波数の800Hz〜1250Hz帯域において、従来のロータリ圧縮機よりも騒音値を小さくすることができた。なお、
図11は、従来のロータリ圧縮機として、
図5における従来のロータリとは異なるものを用いて測定した測定結果である。
【0058】
上述したように、実施例3によれば、上マフラー室180T3が有する複数の張出し部181T3のうちの1つの張出し部181T3Aに、上端板160T3の第2吐出孔190T及び冷媒通路孔136Nが位置する場合に、1つの張出し部181T3Aのメインマフラー吐出孔183T3Aの開口面積が、他の各張出し部181T3Bのサブマフラー吐出孔183T3Bの開口面積よりも大きい。これにより、張出し部181T3Aに排出された冷媒を、メインマフラー吐出孔183T3Aからスムースに排出するとともに、他の張出し部の各サブマフラー吐出孔183T3Bからも適正に排出することが可能になる。このため、実施例3は、上マフラー室180T3からの冷媒の吐出に伴う騒音を抑制することができる。
【0059】
図10に示す実施例3では、2つの冷媒通路孔136Nを有するが、冷媒通路孔の個数や開口形状はこれに限定されるものではない。
図12は、実施例3の変形例における上端板カバーを下方から示す平面図である。
図13は、実施例3の他の変形例における上端板カバーを下方から示す平面図である。実施例3の変形例において、実施例3と同一の構成部材には実施例3と同一符号を付けて説明を省略する。
【0060】
図12に示すように、長穴状の冷媒通路孔136Mは、長径が第2吐出孔190Tの周方向に沿う長孔である。冷媒通路孔136Mの開口面積は、実施例1のロータリ圧縮機1の冷媒通路孔136の開口面積と同等に設定されており、実施例3と同様に、主軸受部161Tの中心から冷媒通路孔136Mの最外周までの半径を、実施例1よりも小さくすることが可能になり、上端板160T3の第2吐出弁部200TVが配置される空間を、上端板160T3の径方向に対して小さくすることができる。なお、実施例3においても、
図13に示すように、1つの冷媒通路孔136Pを有する構成とされてもよい。
【0061】
以上、実施例を説明したが、上述した内容により実施例が限定されるものではない。また、上述した構成要素には、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、上述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。