特許第6705340号(P6705340)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特許6705340-電池パック 図000002
  • 特許6705340-電池パック 図000003
  • 特許6705340-電池パック 図000004
  • 特許6705340-電池パック 図000005
  • 特許6705340-電池パック 図000006
  • 特許6705340-電池パック 図000007
  • 特許6705340-電池パック 図000008
  • 特許6705340-電池パック 図000009
  • 特許6705340-電池パック 図000010
  • 特許6705340-電池パック 図000011
  • 特許6705340-電池パック 図000012
  • 特許6705340-電池パック 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705340
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/10 20060101AFI20200525BHJP
   H01M 2/34 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   H01M2/10 M
   H01M2/34 B
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-168165(P2016-168165)
(22)【出願日】2016年8月30日
(65)【公開番号】特開2018-37215(P2018-37215A)
(43)【公開日】2018年3月8日
【審査請求日】2019年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】井上 拓
(72)【発明者】
【氏名】加藤 裕久
(72)【発明者】
【氏名】秋山 泰有
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩生
【審査官】 高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−051565(JP,A)
【文献】 特開2014−116447(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/035537(WO,A1)
【文献】 特開2005−237064(JP,A)
【文献】 実開平02−138481(JP,U)
【文献】 特開2015−172411(JP,A)
【文献】 特開2012−212597(JP,A)
【文献】 特開2015−050034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/10
H01M 2/34
H01M 10/44−10/46
B60K 1/04
B60R 16/04
B02G 3/22−3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池モジュールを収容する筐体と、
端子部とコネクタ部とを有し、前記端子部が前記筐体内に位置し前記コネクタ部が前記筐体から露出するように前記筐体に挿設された充電コネクタと、
前記筐体の内部において前記充電コネクタの前記端子部と接続され、前記電池モジュールと前記充電コネクタとを中継する中継端子と、
前記中継端子に対応する部分に設けられた前記筐体の開口を塞ぐ蓋と、
前記筐体から露出するように設けられ、前記電池モジュールの電力を出力する出力端子と、
前記出力端子に取り付けられ、前記電池モジュールの電力を外部機器へ送電するケーブルと、
前記ケーブルを保持し、かつ、前記蓋に固着された保持部材と
を備える、電池パック。
【請求項2】
前記出力端子が、前記筐体の開口の縁領域に設けられている、請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記出力端子に被せられ、かつ、前記ケーブルを前記蓋の向きに配向させるキャップをさらに備える、請求項2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記キャップが前記蓋を覆う位置まで張り出している、請求項3に記載の電池パック。
【請求項5】
前記蓋が、結合部材によって前記筐体と結合されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項6】
前記保持部材が、前記蓋の法線方向に沿った軸周りに回動自在に前記ケーブルを保持している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項7】
前記出力端子を一対備えるとともに、各出力端子に取り付けられた前記ケーブルを一対備え、
前記保持部材は、前記一対のケーブルの両方を保持している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気自動車又はフォークリフトなど、車両のバッテリとして使用される電池パックが知られている。このような電池パックでは、電池セルの配列体を含む電池モジュールが筐体内に収容され、電池モジュールの充電に用いられる充電ケーブルが接続されるコネクタが筐体外部に設けられる。
【0003】
たとえば、下記特許文献1には、筐体内に、複数の電池モジュールと、ハーネス等によって電池モジュールと電気的に接続されるコネクタとを備えた電池パックが開示されている。
【0004】
このような電池パックにおいては、たとえば、コネクタの着脱を繰り返して端子接合部が摩耗してしまうと、コネクタの抵抗値が上昇して、通電部分の温度が高くなる。そのため、所定の温度以上になるようなコネクタは交換される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−207427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コネクタ交換作業の際、作業者は、筐体内に位置するコネクタの端子接合部にアクセスする必要がある。コネクタ交換作業を容易にするため、コネクタの端子接合部に対応する部分の筐体に開口を設け、その開口を塞ぐように蓋を取り付けることが考えられる。
【0007】
上述のコネクタ交換作業は、作業者が感電することがないように、通電を停止する等して、十分に安全性が確保されている。発明者らは、作業者が通電を停止する手順を誤らずに作業を進めることで、感電をより確実に回避し、それによりコネクタ交換作業時の安全性がより高まる技術を新たに見出した。
【0008】
本発明は、コネクタ交換作業の安全性の向上が図られた電池パックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態に係る電池パックは、電池モジュールを収容する筐体と、端子部とコネクタ部とを有し、端子部が筐体内に位置しコネクタ部が筐体から露出するように筐体に挿設された充電コネクタと、筐体の内部において充電コネクタの端子部と接続され、電池モジュールと充電コネクタとを中継する中継端子と、中継端子に対応する部分に設けられた筐体の開口を塞ぐ蓋と、筐体から露出するように設けられ、電池モジュールの電力を出力する出力端子と、出力端子に取り付けられ、電池モジュールの電力を外部機器へ送電するケーブルと、ケーブルを保持し、かつ、蓋に固着された保持部材とを備える。
【0010】
上記電池パックにおいては、ケーブルが保持部材によって蓋に固着されているため、ケーブルを出力端子から外した後でなければ、蓋を開けることができない、または蓋を開けることが極めて困難である。そのため、充電コネクタの交換作業のために筐体内の中継端子にアクセスしようとする作業者は、まずはケーブルを出力端子から取り外す作業をおこなう。それにより、電池パック内は通電状態ではなくなるため、その後に、蓋を開けて筐体内の中継端子にアクセスしても、作業者が感電する事態は起こり得ない。
【0011】
他の形態に係る電池パックは、出力端子が、筐体の開口の縁領域に設けられている。
【0012】
他の形態に係る電池パックは、出力端子に被せられ、かつ、ケーブルを蓋の向きに配向させるキャップをさらに備える。
【0013】
他の形態に係る電池パックは、キャップが蓋を覆う位置まで張り出している。
【0014】
他の形態に係る電池パックは、蓋が、結合部材によって筐体と結合されている。
【0015】
他の形態に係る電池パックは、保持部材が、蓋の法線方向に沿った軸周りに回動自在にケーブルを保持している。
【0016】
他の形態に係る電池パックは、出力端子を一対備えるとともに、各出力端子に取り付けられたケーブルを一対備え、保持部材は、一対のケーブルの両方を保持している。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コネクタ交換作業の安全性の向上が図られた電池パックが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施の一態様に係る電池パックを示した概略斜視図である。
図2図2は、図1に示した電池パックのII−II線断面図である。
図3図3は、図1に示した電池パックの要部拡大図である。
図4図4は、図3に示した要部のIV−IV線断面図である。
図5図5は、図3に示した要部の平面図である。
図6図6は、図3に示した保持部材の概略斜視図である。
図7図7は、図3に示したキャップの概略斜視図である。
図8図8(a)および(b)は、図1の電池パックのコネクタの交換作業の手順を示す図である。
図9図9は、図8に引き続き、図1の電池パックのコネクタの交換作業の手順を示す図である。
図10図10(a)および(b)は、図1とは異なる態様の電池パックを示した図である。
図11図11(a)および(b)は、図1とは異なる態様の電池パックを示した図である。
図12図12(a)および(b)は、図1とは異なる態様の電池パックを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
【0020】
図1、2に示される電池パック1は、たとえば自動車やフォークリフト等の車両に搭載される。電池パック1は、筐体10と、複数(本実施形態では7個)の電池モジュール20と、中継装置51と、中継端子80と、コネクタ70と、を備えている。
【0021】
筐体10は、開口部を有する箱状部材11と、箱状部材11の開口部を覆う蓋部材15とを有する。箱状部材11は、四角板状の底板11bと、底板11bと対向して設けられる天板11cと、底板11bの周縁から立設されるL字状の右側板11d、矩形状の左側板11eおよび後側板11fと、を有している。なお、図1では、蓋部材15の後側を透視するように記載している。
【0022】
筐体10は、車両に搭載された際に、底板11bが鉛直方向下方に位置し、天板11cが鉛直方向上方に位置するように配置される。以下、筐体10において、底板11bが設けられる方向を「下」として、天板11cが設けられる方向を「上」として、筐体10の蓋部材15が設けられる方向を「前」として、後側板11fが設けられる方向を「後」として、右側板11dが設けられる方向を「右」として、左側板11eが設けられる方向を「左」として説明を行う。なお、これらの方向は説明の便宜のためであり、本発明を限定するものではない。
【0023】
筐体10の右側面、すなわち、箱状部材11の右側面は、後方側が凹んだ領域であるコネクタ配置領域14aが形成されている。コネクタ配置領域14aは、後段にて詳述するコネクタ70が配置される。具体的には、コネクタ配置領域14aは、右側板11dから左方向にオフセットした第一側面11g、後側板11fから前方向にオフセットした第二側面11i、および天板11cから下方向にオフセットすると共に右方向に下方傾斜する第三側面11hによって形成されている。第一側面11gには、コネクタ70が挿設されている。具体的には、第一側面11gにはコネクタ70を内挿可能な貫通孔12cが形成されており、コネクタ70は貫通孔12cに内挿された状態で筐体10に固定されている。
【0024】
天板11cには、上方に突出すると共に後述する中継装置51が配置される部品配置領域14bが形成されている。部品配置領域14bの上方には、二つの作業孔12a、12bが形成されている。また、部品配置領域14bよりも右側の天板11c上には、作業孔13b(開口)が形成されている。作業孔13bは、後段にて詳述する中継端子80に対応する筐体部分に形成されており、具体的には、中継端子80の上方に形成されている。作業孔13bの開口部の大きさは、作業者が手を入れて中継端子80とコネクタ70との交換作業が可能な程度に形成されている。作業孔13bには、その開口部分を覆う蓋13aが配置されている。蓋13aは、結合部材14によって、作業孔13b周縁の筐体10の天板11cに結合されている。本実施形態において、結合部材14は6つのネジであり、蓋13aは天板11cにネジ止めされている。作業孔13bの縁領域に、後述する出力端子85a、85bが設けられている。
【0025】
図2および図4に示されるように、筐体10は、その内部において電池モジュール20が配置される領域A1と、コネクタ70と中継装置51との接続箇所である中継端子80が配置される領域A2と、をそれぞれ隔てて区画する区画部17を有している。区画部17によって画成された領域A2のサイズは、たとえば、左右方向に180mm、前後方向に170mm、上下方向に120mmとすることができる。
【0026】
区画部17は、第一区画板17aと、第二区画板17bと、を有している。図4および図5に示されるように、第一区画板17aは、前方向から見た時に上下方向に延びる第一鉛直部18aと、水平方向に延在すると共に中継端子80が配置される部品載置部18bと、部品載置部18bから下方に延びる第二鉛直部18cと、を有している。図2に示されるように、第二区画板17bは、第一鉛直部18aと、部品載置部18bと、第二鉛直部18cと、天板11cと、第一側面11gと、によって囲まれる空間に対して前後方向に直交する面である。
【0027】
図2に示されるように、筐体10には、7個の電池モジュール20と、中継装置51と、中継端子80と、コネクタ70と、が格納されている。7個の電池モジュール20のうち、4個の電池モジュール20は蓋部材15に固定され、3個の電池モジュール20と、中継端子80と、コネクタ70とは、箱状部材11に固定される。
【0028】
図2に示されるように、中継装置51は、電池モジュール20とコネクタ70との間の接続を中継する。中継装置51は、たとえば、ハーネスおよびバスバー等の接続部材と、中継端子80と、を介してコネクタ70に対し電気的に接続されている。同様に、中継装置51は、筐体10内に収容される各電池モジュール20と電気配線41を介して電気的に接続されている。また、中継装置51は、電池モジュール20の監視および制御等を行う電池制御ECU(Electronic Control Unit)(図示せず)を搭載している。電池制御ECUは、たとえば、各電池モジュール20に搭載された制御部と通信することにより、各電池モジュール20の状態(たとえば、充電状態等)に関する情報を取得したり、各電池モジュール20の動作(たとえば、充放電等)を制御したりする。電池制御ECUは、たとえば、コネクタ70に装着されるコネクタの種類に応じて、電池パック1の制御を行うように構成されている。以上の構成により、コネクタ70に充電器の充電コネクタが装着された場合には、電池モジュール20の充電が行われ、コネクタ70にジャンパコネクタが装着された場合には、車両への電力の供給が行われる。
【0029】
中継端子80は、たとえば、ハーネスおよびバスバー等の接続部材によって中継装置51に電気的に接続されている。また、中継端子80は、コネクタ70の端子部74〜76(本実施形態では、第一ハーネス74、第二ハーネス75、および第三ハーネス76)に電気的に接続されている。中継端子80の上方には、天板11cの作業孔13bが形成されている。
【0030】
図4に示されるように、コネクタ70は、係止板71と、コネクタ部73と、嵌合部73aと、第一ハーネス74と、第二ハーネス75と、第三ハーネス76と、通信用ハーネス77とを有している。コネクタ70は、貫通孔12cに内挿された状態で筐体10に固定されている。更に詳細には、コネクタ70は、コネクタ部73に一体的に固定された係止板71を介して筐体10に固定されている。係止板71は、平板状の部材であり、充電器が接続される方向からコネクタ70を見た際の外形から突出している。コネクタ70は、貫通孔12cに内挿された状態、かつ、当該コネクタ70に一体的に固定された係止板71が筐体10の第一側面11gに接触された状態で当該筐体10に固定されている。
【0031】
コネクタ70は、電池パック1の充電時には、充電器の充電コネクタ(図示せず)が装着され、電池パック1の電力出力時には、ジャンパコネクタ(図示せず)が装着される。コネクタ部73は、樹脂等の材料により形成されている。嵌合部73aは、充電コネクタ又はジャンパコネクタに設けられた被嵌合部(図示せず)との接続部分であり、互いの装着を確実にする部分である。
【0032】
第一ハーネス74は、中継端子80および中継装置51を介して電池モジュール20に接続される正極線である。第二ハーネス75は、中継端子80および中継装置51を介して電池モジュール20に接続される負極線であると共に、中継端子80を介して車両用の出力端子85bに接続される負極線でもある。すなわち、充電器の充電コネクタが、正極端子および負極端子に接続されることにより、各電池モジュール20が充電される。第三ハーネス76は、中継端子80を介して車両用の出力端子85aに電気的に接続されている。すなわち、ジャンパコネクタが、正極端子同士を互いに接続することにより、車両に電力を供給することが可能になる。通信用ハーネス77は、充電コネクタが通信用端子77aに接続された際に、充電器と電池制御ECUとの間で情報をやり取りするための通信線である。
【0033】
図5に示すように、一対の出力端子85a、85bで構成される出力端子85には、一対のケーブル86a、86bで構成されるケーブル86の一端部が取り付けられる。ケーブル86の他端部は、車両(外部機器)に接続されるコネクタ86cに接続される。
【0034】
ケーブル86は、その中間部において保持部材90により保持されている。保持部材90は、ケーブル86を保持するとともに、筐体10の蓋13aに固着されている。
【0035】
保持部材90は、図6に示すように、保持部92と固着部94とを有している。保持部92は、ケーブル86a、86bがそれぞれ挿通される挿通孔92a、92bを有し、各挿通孔92a、92bは蓋13aに対して平行に延在している。固着部94は、保持部92の下側において保持部92を支持するとともに、蓋13aに固着される部分である。固着部94は、逆U字状に屈曲された板状体であり、両端部においてたとえば溶接により蓋13aに固着される。なお、保持部92と固着部94とは、蓋13aの法線に沿った軸C周りに回動可能となるように結合されている。固着部94は蓋13aに固着されているため、保持部材90全体としては、蓋13aの法線方向に沿った軸周りに回動自在にケーブル86a、86bを保持している。それにより、保持部92は、蓋13aに平行な面内のあらゆる方向にケーブル86a、86bを配向させることができる。この場合、保持部材90はケーブル86a、86bの配向を実質的に規制しないため、ケーブル86a、86bが保持部材90で保持された状態で、ケーブル86a、86bの一端部を出力端子85に取り付ける作業を容易におこなうことができる。また、ケーブル86a、86bが曲がる等に起因してケーブル86a、86bに過度の応力(引張応力や圧縮応力)が加わったときには、保持部材90が回動することで応力を緩和し、ケーブル86a、86bの劣化や緩み(たとえば出力端子取り付け箇所における緩み)を抑制することができる。
【0036】
出力端子85には、ケーブル86が取り付けられた状態で、図7に示すキャップ100が被せられている。
【0037】
キャップ100は、筐体10の天板11cに固定される土台部102と、出力端子85を覆う被覆部104とを有する。土台部102は、絶縁樹脂等の絶縁材料で構成されており、出力端子85を露出させる開口(図示せず)を有する。土台部102は、その四隅において天板11cに固定されている。被覆部104は、土台部102同様に絶縁樹脂等の絶縁材料で構成されており、土台部102の開口に嵌め込まれて該開口から露出する各出力端子85を覆う。被覆部104は、出力端子85a、85bをそれぞれ収容するドーム状部分105a、105bと、出力端子85a、85bに取り付けられたケーブル86a、86bを収容する部分であってドーム状部分105a、105bからそれぞれ延びるアーチ状断面の配向部106a、106bと、ドーム状部分105a、105b間および配向部106a、106b間に渡された連結部107を有する。
【0038】
キャップ100は、図5に示すように、配向部106a、106bが蓋13a側に向くように設けられており、配向部106a、106bによって、ケーブル86a、86bは出力端子85から蓋13aの方向に向かって延びる。また、キャップ100の配向部106a、106bおよび連結部107は、蓋13aを覆う位置まで張り出している。
【0039】
また、図5に示すように、天板11c上には、信号線88が這い回されている。信号線88は、電池制御ECUに接続された信号端子87に接続され、電池制御ECUと車両側の制御部(不図示)との間で信号のやりとりをおこなう。
【0040】
続いて、以上に説明した電池パック1におけるコネクタ70の交換手順について、図8(a)、図8(b)および図9を参照しながら説明する。
【0041】
コネクタ70の交換作業の際、作業者は、まず、ケーブル86を出力端子85から取り外す。より詳しくは、キャップ100の被覆部104を土台部102から外して出力端子85を露出させ、その後に、出力端子85からケーブル86を取り外す。
【0042】
上述のとおりケーブル86を出力端子85から取り外すことで、蓋13aが取り外せる状態になる。なぜなら、ケーブル86を保持する保持部材90が蓋13aに固着されているため、ケーブル86を出力端子85から外さない限り、蓋13aを取り外すことができないからである。加えて、図5に示したように、キャップ100の被覆部104の配向部106a、106bおよび連結部107が蓋13aを覆う位置まで張り出しているため、キャップ100の被覆部104を外さない限り、蓋13aを取り外すことができない。特に、図5に示すように、キャップ100の被覆部104の配向部106a、106bおよび連結部107が、蓋13aを結合している結合部材14の一部(図5では、6つの結合部材のうちの一つ)に被っている場合には、キャップ100の被覆部104を外さない限り、作業者は結合部材14を扱うことができず、蓋13aを取り外せない。
【0043】
図8(a)に示すように、ケーブル86を出力端子85から取り外した後、天板11cに設けられた作業孔13bを覆う蓋13aを取り外す。本実施形態では、結合部材14はネジであるため、天板11cにネジ止めされた蓋13aの各ネジを外す。電池パック1は、蓋13aが取り外されると、図8(b)に示されるように、中継端子80に接続された第一ハーネス74、第二ハーネス75および第三ハーネス76にアクセス可能な状態となる。第一ハーネス74は、圧着端子74bを介して第一端子82aに接続され、第二ハーネス75は、圧着端子75bを介して第二端子82b接続され、第三ハーネス76は、圧着端子76bを介して第三端子82cに接続されている。
【0044】
なお、蓋13aが外されたときには、すでにケーブル86が出力端子85から取り外されているため、中継端子80は通電状態ではなくなっている。
【0045】
作業者は、作業孔13bを介して、第一ハーネス74、第二ハーネス75および第三ハーネス76と中継端子80との接続を解除する。また、作業者は、筐体10の第一側面11gに固定されている係止板71のボルト72(図4参照)を取り外す。そして、作業者は、図9に示されるように、筐体10の第一側面11gの貫通孔12cに挿通された状態で固定されているコネクタ70を右方向に引っ張り出す。これにより、電池パック1からコネクタ70を取り外すことができる。なお、コネクタ70を取り付ける場合には、作業者は、上記で説明した取外手順とは逆の手順を実施する。このような一連の手順により、電池パック1のコネクタ70を交換することができる。
【0046】
以上において説明したとおり、電池パック1は、複数の電池モジュール20を収容する筐体10と、端子部とコネクタ部とを有し、端子部が筐体内に位置しコネクタ部が筐体から露出するように筐体に挿設されたコネクタ70と、筐体10の内部において充電コネクタの端子部と接続され、電池モジュール20と充電コネクタ70とを中継する中継端子80と、中継端子80に対応する部分に設けられた筐体の開口を塞ぐ蓋13aと、筐体10から露出するように設けられ、電池モジュールの電力を出力する出力端子85と、出力端子85に取り付けられ、電池モジュールの電力を外部機器へ送電するケーブル86と、ケーブル86を保持し、かつ、蓋13aに固着された保持部材90とを備える。
【0047】
上記電池パック1においては、ケーブル86が保持部材90によって蓋13aに固着されているため、ケーブル86を出力端子85から外した後でなければ、蓋13aを開けることができない、または蓋13aを開けることが極めて困難である。そのため、充電コネクタ70の交換作業のために筐体10内の中継端子80にアクセスしようとする作業者は、まずはケーブル86を出力端子85から取り外す作業をおこなう。それにより、電池パック1内は通電状態ではなくなるため、その後に、蓋13aを開けて筐体10内の中継端子80にアクセスしても、作業者が感電する事態は起こり得ない。すなわち、電池パック1では、コネクタ交換作業の際、作業者は、通電を停止する手順を誤らずに正しい手順で作業を進めることができ、コネクタ交換作業時における安全性向上が実現されている。
【0048】
また、出力端子85に被せられたキャップ100の配向部106a、106bにより、ケーブル86は蓋13aの向きに配向されているため、出力端子85近傍のケーブル86が蓋13aを覆い、蓋13aを取り外す作業の邪魔になっている。そのため、作業者は、蓋13aを取り外す作業の前に、ケーブル86を取り外す作業が必要であることを容易に認識する。
【0049】
さらに、キャップ100の被覆部104の配向部106a、106bおよび連結部107が蓋13aを覆う位置まで張り出しているため、蓋13aを取り外す作業の邪魔になっている。キャップ100の被覆部104を外さない限りは蓋13aを取り外すことができないため、作業者は、蓋13aを取り外す作業の前に、ケーブル86を取り外す作業をおこなわざるを得ない。
【0050】
本実施形態では、図5に示すように、キャップ100の被覆部104の配向部106a、106bおよび連結部107が、蓋13aを結合している結合部材14の一部に被っているため、キャップ100の被覆部104を外さない限りは、作業者は結合部材14を扱うこともできず、蓋13aを取り外すことができない。
【0051】
以上、一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0052】
たとえば、図10(a)、(b)〜図12(a)、(b)に示すような構成の電池パックにすることもできる。
【0053】
図10(a)、(b)は、変形例に係る電池パック1Aは示しており、図10(a)は電池パック1Aを右側板11d側から見た側面図であり、図10(b)は電池パック1Aを後側板11f側から見た側面図である。図10(a)、(b)に示すように、電池パック1Aは、中継端子80にアクセスするための作業孔13bを覆う蓋13aが天板11cではなく右側板11dに設けられている点で上述した電池パック1と異なり、その他の点は電池パック1と同じである。
【0054】
図11(a)、(b)は、変形例に係る電池パック1Bは示しており、図11(a)は電池パック1Bを右側板11d側から見た側面図であり、図11(b)は電池パック1Bを後側板11f側から見た側面図である。図11(a)、(b)に示すように、電池パック1Bは、出力端子85が天板11cではなく右側板11dに設けられている点で上述した電池パック1と異なり、その他の点は電池パック1と同じである。
【0055】
図12(a)、(b)は、変形例に係る電池パック1Cは示しており、図12(a)は電池パック1Cを右側板11d側から見た側面図であり、図12(b)は電池パック1Cを後側板11f側から見た側面図である。図12(a)、(b)に示すように、電池パック1Cは、中継端子80にアクセスするための作業孔13bを覆う蓋13aおよび出力端子85の両方が天板11cではなく右側板11dに設けられている点で上述した電池パック1と異なり、その他の点は電池パック1と同じである。
【0056】
上述した変形例に係る電池パック1A〜1Cのいずれにおいても、出力端子85に取り付けられたケーブル86を保持する保持部材90が蓋13aに固着されていることで、上述した実施形態に係る電池パック1と同様の作用および効果を奏する。
【0057】
上述した実施形態においては、一対の出力端子および一対のケーブルを有する電池パックを例に説明したが、1つの出力端子に取り付けられた1本のケーブルであっても、ケーブルを保持する保持部材が蓋に固着されていることで、上述した実施形態と同様の作用および効果を奏する。筐体と蓋とを結合する結合部材には、上述したネジ以外に、ヒンジを用いることもできる。
【符号の説明】
【0058】
1、1A、1B、1C…電池パック、10…筐体、11c…天板、13a…蓋、13b…作業孔、14…結合部材、20…電池モジュール、51…中継装置、70…コネクタ、80…中継端子、85、85a、85b…出力端子、86、86a、86b…ケーブル、90…保持部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12