(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明を適用した動力伝達制御装置の動力伝動構成図であり、
図2(A)はアップロックが発生している状態の低速入力ギヤ及びスリーブの拡大図であり、(B)はスプライン結合した低速入力ギヤ及びスリーブの拡大図である。動力伝達制御装置1は、自家用車等の車両に搭載され、前記車両の左右一対の車輪2,3へ動力伝達を制御する。
【0015】
前記動力伝達制御装置1は、第1回転軸4と、車軸6,7と連動して回転する第2回転軸8と、前記第1回転軸4及び前記第2回転軸8とは異なる第3回転軸9と、前記第1回転軸4に動力を出力して前記第1回転軸4の回転数を調整できるように設けられたエンジン11と、前記第1回転軸4の回転数を調整できるように設けられた第1モータジェネレータ12と、前記第3回転軸9に動力を出力して前記第3回転軸9の回転数を調整できるように設けられた第2モータジェネレータ13とを備えている。
【0016】
さらに、前記動力伝達制御装置1は、前記第1回転軸4と前記第2回転軸8との間で動力伝達の断接切替を行う第1切替機構14と、前記第3回転軸9と前記第2回転軸8との間で動力伝達の断接切替を行う第2切替機構16とを備えている。
【0017】
前記エンジン11及び前記第1ジェネレータ12は第1動力源の一例であり、前記第2モータジェネレータ13は第2動力源の一例である。また、前記第1モータジェネレータ12は、回転数の調整を、前記エンジン11及び第2モータジェネレータ13よりも高精度に行うことができる。
【0018】
前記第1切替機構14は、前記第1回転軸4に一体回転するように装着されたハブ17と、前記第1回転軸4に遊転状態で装着された一対の入力ギヤ18,21と、前記第2回転軸8に一体回転するように装着された一対の出力ギヤ23,24と、前記ハブ17の外周に一体回転するように装着され且つ前記第1回転軸4の軸方向にスライド可能なスリーブ26とを備えている。
【0019】
前記一対の入力ギヤ18,21の一方は小径の低速入力ギヤ18になり、他方は大径の高速入力ギヤ21になる。前記ハブ17は、この一対の入力ギヤ18,21の間に配置されている。前記一対の出力ギヤ23,24の一方は低速入力ギヤ18と常時噛合う大径の低速出力ギヤ23になり、他方は高速入力ギヤ21と常時噛合う小径の高速出力ギヤ24になる。
【0020】
各入力ギヤ18,21には、前記ハブ17に向かって突出するピース19,22がそれぞれ一体的に形成されている。言換えると、ハブ17は一対のピース19,22に挟まれるように配置され、両者と隣接している。
【0021】
前記ハブ17の外周と、前記スリーブ26の内周とは、スプライン結合するように、スプライン歯26aが等間隔毎にそれぞれ形成されている。各ピース19,22の外周にも、スリーブ26の内周とスプライン結合可能となるように、スプライン歯19aが相互且つ等間隔に形成されている。ちなみに、
図2は、低速入力ギヤ18及びスリーブ26の状態を示しているが、高速入力ギヤ21及びスリーブ26の状態も同様になる。
【0022】
前記スリーブ26が前記低速入力ギヤ18に向かってスライド移動した場合、この低速入力ギヤ18のピース19の外周と、前記スリーブ26の内周とがスプライン結合され、前記ピース19を含む低速入力ギヤ18が前記ハブ17及びスリーブ26と共に一体回転する。この状態は、前記第1回転軸4の動力が第2回転軸8に低速伝動される低速状態になる。
【0023】
前記スリーブ26が前記高速入力ギヤ21に向かってスライド移動した場合、この高速入力ギヤ21のピース22の外周と、前記スリーブ26の内周とがスプライン結合され、前記ピース22を含む高速入力ギヤ21が前記ハブ17及びスリーブ26と共に一体回転する。この状態は、前記第1回転軸4の動力が第2回転軸8に高速伝動される高速状態になる。
【0024】
前記スリーブ26が隣接する一対のピース19,22の中間に位置する係合解除位置にスライド移動した場合、前記スリーブ26は、前記一対のピース19,22の何れにもスプライン結合せず、前記第1回転軸4の動力が第2回転軸8には伝動されない係合解除状態になる。
【0025】
すなわち、前記第1切替機構14は、前記断接切替と共に、接続状態においては変速切替も行う。また、前記構成によって、前記ハブ17、一対のピース19,22及びスリーブ26は、スプライン結合・結合解除によって動力を断接するドグクラッチ27,28を構成している。言換えると、前記第1切替機構14はドグクラッチ形式の切替機構になる。
【0026】
前記スリーブ26のスライド範囲内の両端寄りには、それぞれ、このスリーブ26が前記低速入力ギヤ18のピース19と完全にスプライン結合される係合完了位置が設定されている。前記スリーブ26を、前記スライド範囲において、係合完了位置よりもさらに端寄りにスライドした場合、図示しないストッパと当接して押付けられる押付け完了状態になる。
【0027】
前記スリーブ26のスライド範囲内における係合完了位置と係合解除位置との間には、前記スリーブ26及び前記ピース19,22のスプライン歯19a,26a同士が接触し且つ動力は伝動されない係合開始状態になる係合開始位置が設定されている。
【0028】
ちなみに、前記ハブ17と前記スリーブ26とは常にスプライン結合しているが、前記スリーブ26と前記ピース19,22とは、常時スプライン結合はされておらず、スプライン結合が解除された状態及びスプライン結合させる状態の一方から他方及び他方から一方への切替が行われる。このため、スリーブ26のスライドに伴って前記ピース19,22と前記スリーブ17とがスムーズにスプライン結合されるように、両者のスプライン歯19a,26aの向い合う先端部同士には、それぞれ楔状に尖ったチャンファ19a1,26a1が形成されている。
【0029】
このチャンファ19a1,26a1の作用を利用して、一方のスプライン歯19a1が他方のスプライン歯19a1,19a1の間に形成された歯溝に正確に位置していない場合でも、両者を噛合わせることが可能になる。
【0030】
ただし、前記ピース19,22及びスリーブ26の位相が完全に一致してチャンファ19a1の周方向位置が一致して回転位相が同一な状態のまま、前記スリーブ26を前記係合完了位置にスライドさせようとすると、
図2(A)に示すように、前記チャンファ19a1,26a1の先端同士が当接するアップロックが発生し、前記係合が妨げられる。
【0031】
このアップロックの発生を防止し、
図2(B)に示すように、前記係合をスムーズに完了させるためには、チャンファ19a1,26a1の押し分け作用が発生するように、前記ピース19,22及びスリーブ26の回転位相を完全に一致させていない状態で、このスリーブ26を前記係合完了位置にスライドさせる必要がある。
【0032】
また、前記ピース19,22の回転数N1と、スリーブ26の回転数N2との回転数差ΔNが大きい場合、ピース19,22及びスリーブ26の回転位相関係がそもそも安定的しないため、前記ピース19,22の前記係合完了位置へのスライド作動をスムーズに行うことが困難になる。一方、前記回転数差ΔNを0とすると、前記ピース19,22及びスリーブ26の回転位相が完全に一致していた場合、前記アップロックが発生する。
【0033】
すなわち、前記回転数差ΔNが前記回転数N1及び前記回転数N2よりも十分に小さい値であって且つ0よりも大きい範囲である最適範囲内で保持されるように回転数の制御を実行する。
【0034】
ちなみに、この際、前記ピース19,22と前記スリーブ26との回転位相関係を正確に把握できれば、シンクロナイザリング等の同期手段を用いることなく、ドグクラッチ27,28の切断状態から接続状態への切替をスムーズに行うことが可能になる。さらに、その精度が向上させれば、チャンファ19a1,26a1を設ける必要もなくなる。
【0035】
前記第1切替機構14の前記回転位相の制御は、主に、前記エンジン11又は前記第1モータジェネレータ12によって行うが、前記第2切替機構16が接続状態であれば、前記第2モータジェネレータ13を補助的に用いてもよい。
【0036】
ちなみに、前記スリーブ26のスライド操作は、
図3に示す第1アクチュエータ29によって行う。
【0037】
前記第2回転軸8の動力は、ドライブギヤ31及びドリブンギヤ32を介して、差動機構33に伝動される。前記差動機構33は、前記第2回転軸8からの動力を、左右の前記車軸6,7に分配する。ちなみに、左右の車輪2,3は、車両の後輪であってもよいし、前輪であってもよい。
【0038】
前記第2切換機構16は、前記第3回転軸9に一体回転するように装着されたハブ34と、前記第3回転軸9に遊転状態で支持され且つ前記ドライブギヤ31と常時噛合うギヤ36と、前記ハブ34の外周に一体回転するように装着され且つ前記第3回転軸9の軸方向にスライド可能なスリーブ38とを備えている。前記ギヤ36は、前記ハブ34に向かって突出するピース37を一体的に有している
【0039】
前記ハブ34、前記ピース37を含む前記ギヤ36及び前記スリーブ38は、前記ハブ17、前記ピース19,22を含む入力ギヤ18,21及び前記スリーブ26と同一又は略同一に構成されている。このため、前記ピース37及び前記スリーブ38はドグクラッチ39を構成している。すなわち、前記第2切替機構16も前記第1切替機構14と同様にドグクラッチ形式の切替機構になる。
【0040】
前記スリーブ38を、前記ハブ34に隣接する前記ピース37にスライド移動した場合、前記スリーブ38が前記ハブ34及び前記ピース37の両方にスプライン結合し、ドグクラッチ39の接続切替が行われ、前記第2モータジェネレータ13によって回転駆動される第3回転軸9の動力が第2回転軸8に伝動されるモータ作動状態に切替る。
【0041】
前記スリーブ38を、前記ギヤ36から離れた位置にスライド移動した場合、このスリーブ38が前記ハブ34のみとスプライン結合し、前記ドグクラッチ39の切断切替が行われ、前記第2モータジェネレータ13によって回転駆動される第3回転軸9の動力が前記第2回転軸8に伝動されないモータ非作動状態に切換る。
【0042】
ちなみに、このドグクラッチ39の接続切替の際にも、ピース19,22及びスリーブ26の場合と同様、回転位相関係は正確に把握する必要がある。両者の回転位相関係を正確に把握できれば、シンクロナイザリング等の同期手段を用いることなく、前記ドグクラッチ39の接続切替をスムーズに行うことが可能になる。
【0043】
前記第1切替機構16の前記回転位相の制御は、主に、前記第2モータジェネレータ13によって行うが、前記第1切替機構14が接続状態であれば、前記エンジン11又は前記第1モータジェネレータ12を補助的に用いてもよい。
【0044】
また、前記スリーブ38をスライドする操作は、
図3に示す第2アクチュエータ41によって行われる。
【0045】
ところで、
図1では、前記第1回転軸4の回転位相と、前記第2回転軸8の回転位相と、前記第3回転軸9の回転位相とが、エンコーダ等の回転センサで常時把握できれば、前記ドグクラッチ27,28,39の接続切替をスムーズに行うことが可能になる。
【0046】
しかし、この場合は、回転センサの数が多くなり、コスト高いになり、デメリットが大きい。本例では、前記第1回転軸4の回転位相を検出する
図3に示す第1回転位相検出部12aと、第3回転軸9の回転位相を検出する
図3に示す第3回転位相検出部13aとによって、前記接続切替の円滑な実行を実現する。ちなみに、前記第1回転位相検出部12aは、前記第1モータジェネレータ12に内蔵されたレゾルバによって構成され、前記第3回転位相検出部13aは、前記第2モータジェネレータ13に内蔵されたレゾルバによって構成されている。
【0047】
このドグクラッチ27,28,39の断接切替の制御は、
図3に示す制御部42によって行う。
【0048】
図3は制御部の構成を示すブロック図である。前記制御部42は、1つのマイコンによって構成されるか、或いはCAN等によって相互接続された複数のマイコンによって構成される。ちなみに、前記制御部42を構成する複数のマイコンのうちの1つが前記エンジン2を制御する専用のマイコンであるECUであってもよい。前記制御部42はROM等によって構成される記憶部42aを有している。なお、この記憶部42aは、制御部42によるデータのリード・ライトが可能であれば、内蔵タイプではなく、外付けタイプのものでもよい。
【0049】
前記制御部42の入力側には、前記第1回転位相検出部12a及び前記第2回転位相検出部13aと、前記スリーブ26のスライド位置を検出する第1位置センサ43と、前記スリーブ38のスライド位置を検出する第2位置センサ44とが接続されている。前記第1位置センサ43及び前記第2位置センサ44は前記ドグクラッチ27,28,39の接続状態、切断状態等を検出可能な位置検出部の一種である。
【0050】
前記制御部42の出力側には、前記エンジン11、前記第1モータジェネレータ12、前記第2モータジェネレータ13、前記第1アクチュエータ29及び第2アクチュエータ41がそれぞれ接続されている。
【0051】
前記第1アクチュエータ29及び前記第2アクチュエータ41は、前記スリーブ26,38をスライド操作させる駆動力を発生させる電動モータ等を含み、通常、前記電動モータと前記スリーブ26,38との間には、ダンパー機構等の緩衝手段が設けられ、この緩衝手段によって変速ショック等の低減を図っているが、本例では、回転位相の適切な調整よって変速ショックが低減されるため、前記緩衝手段を設けることが必須ではない。
【0052】
前記制御部42は、走行状態の変化や運転者の操作に起因したシフト指令を図示しない受信部によって受信すると、前記第1位相検出部12a及び前記第2位相検出部13aの検出結果に基づいて、前記エンジン11、第1モータジェネレータ12又は第2モータジェネレータ13により回転位相の最適制御を行うとともに、第1アクチュエータ29又は第2アクチュエータ41によって前記スリーブ26,39のスライド操作を行う。
【0053】
具体的に説明すると、前記制御部42は、車両の走行中、走行状態や運転者からのアクセス操作又はブレーキ操作等の情報に基づき、前記第1切替機構14によって前記高速状態又は前記低速状態への切替を行うとともに前記第2切替機構16によって前記モータ非作動状態への切替を行うエンジン走行モードと、前記第1切替機構14によって前記ニュートラル状態への切替を行うとともに前記第2切替機構16によって前記モータ作動状態への切替を行うモータ走行モードとの何れかを選択する。
【0054】
前記エンジン走行モード及び前記モータ走行モードの一方から他方、他方から一方への切替を行う際、前記第1切替機構14及び前記第2切替機構16の少なくとも何れか一方は、動力を伝動する状態で保持され、前記第1切替機構14及び前記第2切替機構16の両方が動力を切断する状態にはならないようにする。この際、前記第3回転位相検出部13a及び前記第1回転位相検出部12aによって取得される回転位相の情報は、逐次、記憶部42aに記憶される。前記記憶部42aに記憶された過去の回転位相の情報は、必要に応じて読出され、ドグクラッチ27,28,39の接続切替が可能となるように前記エンジン11、前記第1モータジェネレータ12又は前記第2モータジェネレータ13によって回転位相を調整する制御に利用される。
【0055】
具体的に説明すると、前記第1切替機構14及び前記第2切替機構16における一方の切替機構14,16の一のドグクラッチ27,28,39の接続切替を行うとともに、他方の切替機構14,16の一のドグクラッチ27,28,39の切断切替を行うことにより、前記モード切替を行う。
【0056】
このようなモータ切替を行うにあたり、前記制御部42は、まず、前記一方の切替機構14,16における接続切替の対象になっている一の前記ドグクラッチ27,28,39の接続切替を後述する手段によって行う同時接続処理を行う。
【0057】
前記制御部42は、前記同時接続処理を実行した後、前記第1回転位相検出部12aで検出した前記第1回転軸4の回転位相及び前記第3回転位相検出部13aで検出した前記第3回転軸9の回転位相を前記記憶部42aに記憶する位相記憶処理を行う。ちなみに、このようにした記憶した回転位相の情報は、前記切断切替の対象になっている一の前記ドグクラッチ27,28,39の切断切替を行った後、再び、接続切替を行う場合における回転位相の調整に利用される。
【0058】
前記制御部42は、前記位相記憶処理を実行した後、前記他方の切替機構14,16の切断切替の対象になっている一のドグクラッチ27,28,39の切断切替を、前記同時接続処理によって接続切替を行った一のドグクラッチ27,28,39の接続状態を保持させた状態で行う切断処理を行う。
【0059】
続いて、前記第1切替機構14又は前記第2切替機構16の接続切替を、一の前記ドグクラッチ27,28,39の接続切替によって行う制御について、説明する。前記制御部42は、まず、接続切替の対象になっているドグクラッチ27,28,39が直近で切断切替された際に、前記位相記処理によって記憶された前記第1回転軸4の回転位相及び前記第3回転軸9の回転位相の情報を、前記記憶部42aから取得し、続いて、この回転位相の情報を利用して、前記エンジン11、前記第1モータジェネレータ12又は前記第2モータジェネレータ13を用いて、前記第1回転軸4及び前記第3回転軸9の回転位相を調整して制御する位相調整処理を行う。
【0060】
前記制御部42は、前記位相調整処理の実行後、前記接続切替の対象になっているドグクラッチ27,28,39の接続切替を行う接続処理を実行する。
【0061】
なお、回転位相の情報は前記記憶部42aに逐次記憶され、前記位相調整処理の処理内容に基づく位相調整処理の結果の良し悪しも検出可能であるため、これらの情報を機械学習させ、前記位相調整処理又は前記接続処理の精度がより高めてもよい。
【0062】
次に、前記制御部42の具体的な処理内容を
図4乃至
図7のフロー図に基づいて説明する。
【0063】
図4は、エンジン走行モードからモータ走行モードへのモード切替の処理フロー図である。同図に示す処理は、所定間隔毎に定期的に実行される。処理はステップS101から開始される。ステップS101では、モータ走行モードへの切替条件を満たしているか否かを確認し、満たしていなければ処理を終了させる一方で、満たしていればステップS102に進む。ちなみに、前記切替条件の判断の際は、上述した通り、運転手の操作や車両の走行状態等を利用する。
【0064】
ステップS102では、前記第2切替機構16の前記ドグクラッチ39が断続状態であるか否かを前記第2位置センサ44によって確認し、切断状態であればステップS103に進む。ステップS103では、前記ドグクラッチ39を一番最近切断切り替えした際に前記記憶部42aに記憶させた過去の前記第1回転軸4及び前記第3回転軸9の回転位相の情報を、前記記憶部42aから取得し、ステップS104に進む。
【0065】
ステップS104では、前記ドグクラッチ39が接続切り替えできるように、前記ステップS103で取得した回転位相の情報を利用して、前記第2モータジェネレータ13により、前記第1回転軸4及び第3回転軸9の回転位相を調整して制御し、ステップS105に進む。
【0066】
ちなみに、前記ステップS103及び前記ステップS104の処理が前記位相調整処理に該当する。
【0067】
ステップS105では、前記第2アクチュエータ41によって、ドグクラッチ39の接続切替を行い、ステップS106に進む。
【0068】
ちなみに、前記ステップS105の処理が前記接続処理に該当するとともに、前記第1切替機構14及び前記第2切替機構16の両方の接続状態とする同時接続処理にも該当する。
【0069】
ステップS106では、前記第1切替機構14において切断切替の対象になっている一の前記ドグクラッチ27,28の回転位相の関係を将来利用する目的で、前記第1回転位相検出部12aによって前記第1回転軸4の回転位相を検出するとともに、前記第3回転位相検出部13aによって前記第3回転軸9の回転位相を検出し、これらの回転位相の情報を記憶部42aに記憶し、ステップS107に進む。
【0070】
ちなみに、前記ステップS106の処理が前記位相記憶処理に該当する。
【0071】
ステップS107では、前記切断切替の対象になっている一の前記ドグクラッチ27,28の切断切替を前記第1アクチュエータ29によって行い、前記第1切替機構14が動力を遮断する状態とし、処理を終了させる。ステップS102において、前記第2切替機構16のドグクラッチ39が接続状態の場合には、前記ステップS106に進む。ちなみに、図示する例では、ステップS106及びステップS107において、前記ドグクラッチ27が切断切替対象になっており、低速状態のエンジン走行モードからモータ走行モードに切り替えているが、勿論、高速状態のエンジン走行モードからモータ走行モードに切り替える場合もあり、この場合は、ステップS106及びステップS107において、前記ドグクラッチ28が切断切替対象になる。
【0072】
図5は、モータ走行モードからエンジン走行モードへのモード切替の処理フロー図である。同図に示す処理は、所定間隔毎に定期的に実行される。処理はステップS201から開始される。ステップS201では、エンジン走行モードへの切替条件を満たしているか否かを確認し、満たしていなければ処理を終了させる一方で、満たしていればステップS202に進む。ちなみに、この切替条件の判断の際も運転手の操作や車両の走行状態等が利用される。
【0073】
ステップS202では、前記第1切替機構14において接続対象になっている一のドグクラッチ27,28が切断状態であるか否かを確認し、切断状態であればステップS203に進む。ちなみに、前記第1切替機構14において接続対象外のドグクラッチ27,27は当然に切断状態になっている。また、図示する例では、前記ドグクラッチ27が接続対象になっており、モータ走行モードから低速状態のエンジン走行モードへの切替を行うが、モータ走行モードから高速状態のエンジン走行モードへの切替を行うことも勿論可能であり、この場合は、前記ドグクラッチ28が接続対象になる。
【0074】
ステップS203では、前記第1切替機構14において接続対象になっている一のドグクラッチ27,28を一番最近切断させた際に、前記記憶部42aに記憶させた前記第1回転軸4及び前記第3回転軸9の回転位相の情報を、前記記憶部42aから取得し、ステップS204に進む。
【0075】
ステップS204では、前記接続対象になっている一のドグクラッチ27,28が接続切り替えが可能になるように、前記ステップS203で取得した回転位相の情報を利用して、前記エンジン11又は前記第1モータジェネレータ12により、前記第1回転軸4及び第3回転軸9の回転位相を調整して制御し、ステップS205に進む。
【0076】
ちなみに、前記ステップS203及び前記ステップS204の処理が前記位相調整処理になる。
【0077】
ステップS205では、前記第1アクチュエータ29によって、前記接続対象のドグクラッチ27の接続切替を行い、ステップS206に進む。
【0078】
ちなみに、前記ステップS205の処理が前記接続処理に該当するとともに、前記第1切替機構14及び前記第2切替機構16の両方の接続状態とする同時接続処理にも該当する。
【0079】
ステップS206では、切断切替の対象になっている前記第2切替機構16の前記ドグクラッチ39の回転位相の関係を将来の接続切替の際に利用する目的で、前記第1回転位相検出部12aによって前記第1回転軸4の回転位相を検出するとともに、前記第3回転位相検出部13aによって前記第3回転軸9の回転位相を検出し、これらの回転位相の情報を記憶部42aに記憶し、ステップS207に進む。
【0080】
ちなみに、前記ステップS206の処理が前記位相記憶処理に該当する。
【0081】
ステップS207では、前記切断切替の対象になっている前記ドグクラッチ39の切断切替を前記第2アクチュエータ41によって行い、前記第2切替機構16が動力を遮断する状態とし、処理を終了させる。ステップS202において、前記第1切替機構14において接続対象になっている前記ドグクラッチ27,28が接続状態の場合には、前記ステップS206に進む。
【0082】
図6は第1切替機構による変速切替時の処理における前半の流れを示すフロー図であり、
図7は第1切替機構による変速切替時の処理における後半の流れを示すフロー図である。これらの図に示される処理は、所定間隔毎に定期的に実行される。処理はステップS301から開始される。ステップS301では、低速状態から高速状態への変速切替の必要があるか否かを判断し、必要がなければ処理を終了させる一方で、必要がある場合にはステップS302に進む。ちなみに、前記ステップS301の判断の際も運転手からのシフト指令の有無や車両の走行状態に関する情報を利用する。
【0083】
ステップS302では、前記第2切替機構16の前記ドグクラッチ39が断続状態であるか否かを確認し、切断状態であればステップS303に進む。ステップS303では、前記ドグクラッチ39を一番最近切断切り替えした際に前記位相記憶処理によって前記記憶部42aに記憶した前記第1回転軸4及び前記第3回転軸9の回転位相の情報を、前記記憶部42aから取得し、ステップS304に進む。
【0084】
ステップS304では、前記ステップS303において前記記憶部42aから取得した直近の回転位相の情報を利用して、前記ドグクラッチ39が接続切替可能になるように、前記第2モータジェネレータ13によって、前記第1回転軸4及び前記第3回転軸9の回転位相を調整する制御を行い、ステップS305に進む。
【0085】
ちなみに、前記ステップS303及び前記ステップS304の処理も前記位相調整処理に該当する。
【0086】
ステップS305では、第2アクチュエータ41によって、前記ドグクラッチ39の接続切替を行い、ステップS306に進む。
【0087】
ちなみに、前記ステップS305の処理が前記接続処理に該当するとともに、前記第1切替機構14及び前記第2切替機構16の両方の接続状態とする同時接続処理にも該当する。
【0088】
ステップS306では、前記第1切替機構14において、これから切断切替を行う対象の前記ドグクラッチ27の将来の接続切替が可能になるように、その時点での位相関係の情報を、記第1回転位相検出部12aによる前記第1回転軸4の回転位相の検出と、前記第3回転位相検出部13aによる前記第3回転軸9の回転位相の検出とによって取得し、この情報を前記記憶部42aに記憶し、ステップS307に進む。
【0089】
ちなみに、前記ステップS306の処理も前記位相記憶処理に該当する。
【0090】
ステップS307では、前記第1アクチュエータ29によって、前記対象の前記ドグクラッチ27の切断切替を行い、ステップS308に進む。
【0091】
ちなみに、前記ステップS307の処理も前記切断処理に該当する。
【0092】
ステップS308では、前記第1切替機構14において、これから接続切替を行う対象の前記ドグクラッチ28を一番最近切断切り替えした際に前記位相記憶処理によって前記記憶部42aに記憶した前記第1回転軸4及び前記第3回転軸9の回転位相の情報を、前記記憶部42aから取得し、ステップS309に進む。
【0093】
ステップS309では、前記ステップS308において前記記憶部42aから取得した直近の回転位相の情報を利用して、前記対象の前記ドグクラッチ28が接続切替可能になるように、前記エンジン11又は第1モータジェネレータ12によって、前記第1回転軸4及び前記第3回転軸9の回転位相を調整する制御を行い、ステップS310に進む。
【0094】
ちなみに、前記ステップS308及び前記ステップS309の処理も前記位相調整処理に該当する。
【0095】
ステップS310では、前記第1アクチュエータ29によって、前記対象の前記ドグクラッチ28の接続切替を行い、ステップS311に進む。ステップS311では、前記第2切替機構16の前記ドグクラッチ39の切断切替を行い、処理を終了する。
【0096】
なお、ステップS311の処理は必須ではなく、省略も可能である。
【0097】
また、同図は低速状態から高速状態への切替を例に説明したが、高速状態から低速状態への切替でも、前記ドグクラッチ27と前記ドグクラッチ28とで切断切替の対象と、接続切替の対象とを反対にすれば、同様の考えをそのまま適用可能である。
【0098】
以上のように構成される動力伝達制御装置1によれば、少ないセンサ数で、しかもモータジェネレータ12,13に内蔵されたレゾルバを用いて、前記ドグクラッチ27,28,39の断接制御を行うため、低コスト化を容易に図ることが可能である。また、機械学習によって、その制度の順次高めることも容易である。