(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記紐状部材は、一端が前記ステント本体部に接続され且つ前記係止部が形成される第1の紐状部材と、前記第1の紐状部材の他端側に取り外し可能に連結される第2の紐状部材と、を有する請求項3〜5のいずれかに記載の合成樹脂ステント。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0026】
<第1実施形態>
図1Aは、本発明の第1実施形態に係る合成樹脂ステントとしての生分解性ステント1の斜視図であり、
図1Bは、生分解性ステント1の側面図である。
図1A及びBに示すように、生分解性ステント1は、ステント本体部2と、拡径機構3と、規制機構4と、を備える。
【0027】
ステント本体部2は、合成樹脂製の繊維である生分解性の繊維20によって円筒状に形成される。より詳しくは、ステント本体部2は、複数本の繊維20で網目状に編み込まれ、外周に繊維20によって形成され且つ規則正しく配列される菱形の空孔を多数有する。
【0028】
本実施形態における繊維20としては、合成樹脂であれば特に限定されないが、材料として例えばL−乳酸、D−乳酸、DL−乳酸、ε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ―バレロラクトン、グリコール酸、トリメチレンカーボネート、パラジオキサノン等のモノマーから合成されるホモポリマー、コポリマー、及びそれらのブレンドポリマー等の生分解性樹脂が挙げられる。特に、ポリ−L−乳酸(以下、PLLAと言う場合がある)又は乳酸−カプロラクトン共重合体(以下、P(LA/CL)と言う場合がある)、もしくはそれらのブレンドポリマーからなる生分解性の繊維を用いることが好ましい。
【0029】
繊維20は、モノフィラメント糸であってもよいし、マルチフィラメント糸であってもよい。また、繊維20は、撚りをかけていてもよいし、かけていなくてもよい。ステント本体部2の径方向外側から加わる圧力に対する反発力を強くする観点から、繊維20はモノフィラメント糸であることが好ましい。
【0030】
繊維20の直径は、0.05〜0.7mmであることが好ましい。繊維20の直径が0.05mm未満であると、生分解性ステント1の強度が低下する傾向にある。繊維20の直径が0.7mmを超えると、後段で詳述する内視鏡の内部に挿入するデリバリーシステム等の細管状の部材に生分解性ステント1を収納し難くなる傾向にある。繊維20の直径の上限は、内径がより細いデリバリーシステムに収納する観点から、0.4mmであることがより好ましく、0.3mmであることが更に好ましい。繊維20の直径の下限は、高い強度を維持する観点から、0.2mmであることがより好ましい。
【0031】
拡径機構3は、ステント本体部2の軸方向の一端側(X方向側)に一端が接続されて、ステント本体部2の軸方向の他端側(Y方向側)に延びる紐状部材30を有する。より詳しくは、紐状部材30は、ステント本体部2のX方向側の端部に接続され、ステント本体部2の内部に配置される。紐状部材30は、繊維20と同様の生分解性の繊維によって構成される。
【0032】
規制機構4は、係止部41と、環状部42と、を有する。
係止部41は、紐状部材30に形成される。係止部41は、
図1A及びBに示すようにステント本体部2の内部に配置される。
係止部41は、紐状部材30の径方向外側に突出した形状に形成される。係止部41は、紐状部材30の結び目であってもよいし、紐状部材30に形成される三角形状の返し部材であってもよい。また、係止部41は、紐状部材30の一部をリング状に形成したものであってもよい。紐状部材30及び係止部41は、生分解性の素材で構成されていてもよいし、生分解性ではない素材によって構成されていてもよい。
【0033】
図2に示すように、係止部41を紐状部材30の結び目により形成する場合、係止部41は、結び目部43と、輪部44と、を備える。結び目部43及び輪部44は、例えば、紐状部材30の一部により、輪を二重に作った後、大きな輪を小さな輪及び紐状部材30に複数回巻きつけるようにして結ぶことにより形成できる。
輪部44は、結び目部43からステント本体部2の一端側(X方向側)に向かって膨らむように形成される(
図4参照)。輪部44の大きさ(直径)は、環状部42の直径よりも大きく形成される。
【0034】
環状部42は、ステント本体部2のY方向側に接続され且つ環状に形成されて紐状部材30が挿通される。より詳しくは、環状部42は、ステント本体部2のY方向側の端部に、内側に延びるように接続される。
【0035】
図3A及びBも参照しつつ、生分解性ステント1の動作について説明する。
図3Aは、生分解性ステント1が拡径した状態を示す図(斜視図)であり、
図3Bは、生分解性ステント1が拡径した状態を示す図(側面図)である。
ステント本体部2は、紐状部材30をY方向側に向かって引くことによって、
図3A及びBに示すように軸方向に収縮して拡径される。
【0036】
規制機構4の係止部41は、紐状部材30をY方向側に向かって引くことで環状部42をX方向側からY方向側に通過する。環状部42を通過した係止部41は、環状部42に係止されて、環状部42をY方向側からX方向側に通過することはできない。このようにして、規制機構4(係止部41及び環状部42)は、ステント本体部2が拡径した状態から縮径することを規制することで、ステント本体部2を拡径した状態(
図3A及びB)に維持する。
【0037】
係止部41を、紐状部材30の結び目により形成した場合には、紐状部材30をY方向側に向かって引くことで、環状部42よりも大きな輪部44は、変形しながら環状部42をX方向側からY方向側に通過する。環状部42を通過した輪部44は、紐状部材30の弾性により元の形状に復元する。これにより、
図4に示すように、係止部41(輪部44)は、環状部42に係止される。また、
図4に示すように、輪部44を結び目部43からステント本体部2の一端側(X方向側)に向かって膨らむように形成することで、輪部44を環状部42により安定的に係止させられる。
【0038】
続いて、生分解性ステント1を患者の腸管内の狭窄部に留置する方法について説明する。
図5A〜Dは、生分解性ステント1を狭窄部に留置する方法について説明するための模式図である。
図4A〜Dでは、紐状部材30、係止部41及び環状部42は、それぞれステント本体部2の周方向に等間隔をあけて2つ配置される。
【0039】
図5Aに示すように、生分解性ステント1は、デリバリーシステム等の細管状の部材110に収納される。一方、内視鏡100の先端部は狭窄部Nに接近させる。生分解性ステント1を収納した細管状の部材110は、内視鏡100の図示しない鉗子口に挿入され、生分解性ステント1を内視鏡100の先端部まで運ぶ。
【0040】
続いて、
図5Bに示すように、生分解性ステント1は細管状の部材110から排出されて、狭窄部Nに囲まれた位置に配置される。細管状の部材110から排出された生分解性ステント1のステント本体部2は、わずかに拡径する。
【0041】
続いて、
図5Cに示すように、紐状部材30がY方向側に向かって引かれることで更にステント本体部2が拡径し、狭窄部Nが押し広げられる。そしてこの際に、係止部41が環状部42を通過する。
【0042】
最後に、
図5Dに示すように、細管状の部材110及び内視鏡100が患者の体外に取り出され、生分解性ステント1が狭窄部Nに留置される。この際、必要に応じて紐状部材30をはさみにより切断することで、紐状部材30の長さを調整することができる。
このようにして、係止部41は環状部42に係止されて、ステント本体部2は拡径した状態に維持される。
【0043】
第1実施形態に係る生分解性ステント1によれば、以下の効果が奏される。
(1)第1実施形態では、生分解性ステント1が、ステント本体部2が拡径した状態から縮径することを規制することで、ステント本体部2を拡径した状態に維持する規制機構4を備えるものとした。
これにより、ステント本体部2は、拡径した状態において径方向外側からの圧力が加わったとしても、規制機構4を備えることによって縮径し難い。従って、生分解性ステント1は、仮に繊維20の径を細くした場合であっても、拡径した状態において径方向外側から加わる圧力に対しての耐性を有する。
【0044】
(2)第1実施形態では、ステント本体部2を縮径した状態から拡径した状態に変形させる拡径機構3を生分解性ステント1が更に備えるものとした。
これにより、狭窄部に接近させた生分解性ステント1(ステント本体部2)を拡径させることができる。
【0045】
(3)第1実施形態では、拡径機構3が、ステント本体部2のX方向側に一端が接続されて、ステント本体部2のY方向側に延びる紐状部材30を有するものとした。更に、紐状部材30をY方向側に向かって引くことによってステント本体部2が軸方向に収縮して拡径されるものとした。
これにより、紐状部材30を引くだけで、ステント本体部2を拡径させることができる。従って、容易に、狭窄部に接近させた生分解性ステント1(ステント本体部2)を拡径させることができる。
【0046】
(4)第1実施形態では、規制機構4が、紐状部材30に形成される係止部41と、ステント本体部2のY方向側に接続され且つ環状に形成されて紐状部材30が挿通される環状部42と、を有するものとした。更に、紐状部材30をY方向側に向かって引いて係止部41を環状部42に係止させることで、ステント本体部2を拡径した状態に維持するものとした。
これにより、紐状部材30を引くだけで、ステント本体部2を拡径させた上に、規制機構4によって、ステント本体部2を拡径した状態に維持することができる。従って、より容易に、狭窄部に接近させた生分解性ステント1(ステント本体部2)を拡径させることができる上に、生分解性ステント1を拡径した状態に維持することができる。
【0047】
(5)第1実施形態では、紐状部材30を、ステント本体部2の内側に配置した。
これにより、ステント本体部2を拡径させる際に、紐状部材30が患者の狭窄部とステント本体部2との間に挟まれない。従って、紐状部材30を引いて、円滑にステント本体部2を拡径させることができる。
【0048】
(6)第1実施形態では、
図5A〜Dに示すように、紐状部材30が、ステント本体部2の周方向に等間隔で複数配置されるものとした。
これにより、紐状部材30を引いてステント本体部2を拡径させる際に、ステント本体部2にかかる力の重心が偏ってしまうのを防ぐことができる。従って、複数の紐状部材30を同時に引いて、円滑にステント本体部2を拡径させることができる。
【0049】
(7)第1実施形態では、繊維20の直径を、0.05〜0.7mmとした。
これにより、生分解性ステント1は、縮径した状態においてデリバリーシステム等の細管状の部材110に収納しやすくなる。
【0050】
(8)
図2及び
図4に示すように、係止部41を、紐状部材30の結び目により形成した場合には、紐状部材30を利用して係止部41を構成できるので、生分解性ステント1を構成する部品点数を削減できる。
また、係止部41を、結び目部43と輪部44とにより構成し、輪部44の大きさを環状部42の大きさよりも大きく形成することで、輪部44を変形させて環状部42を通過させられ、その後、紐状部材30の弾性により輪部44を元の形状に復元させられる。これにより、
図4に示すように、係止部41(輪部44)を、環状部42に安定的に係止させられる。
更に、輪部44を結び目部43からステント本体部2の一端側(X方向側)に向かって膨らむように形成することで、輪部44を環状部42により安定的に係止させられる。
【0051】
ところで、
図6Aは、第1実施形態の変形例に係る生分解性ステント1Aの斜視図であり、
図6Bは、生分解性ステント1Aの側面図である。生分解性ステント1Aのうち生分解性ステント1と同一の構成については、
図6A及びBにおいて生分解性ステント1と同様の符号を付して説明を省略する。
【0052】
生分解性ステント1Aは、生分解性ステント1と同様に拡径機構3Aと、規制機構4Aと、を備える。拡径機構3Aの有する紐状部材30Aは、上記実施形態のようにステント本体部2Aの内側には配置されず、ステント本体部2Aの外側に配置される(
図6A及びB)。更に、規制機構4Aの有する環状部42Aは、ステント本体部2AのY方向側の端部に、内側ではなく外側に形成される。このように生分解性ステント1Aにおいては、規制機構4Aがステント本体部2Aの外側に配置される。従って、生分解性ステント1A(ステント本体部2A)の内部における食物等の流通が、規制機構4Aによって妨げられない。
【0053】
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態に係る生分解性ステント1Bの斜視図である。生分解性ステント1Bのうち生分解性ステント1と同一の構成については、
図7において生分解性ステント1と同様の符号を付して説明を省略する。
【0054】
生分解性ステント1Bは、生分解性ステント1と同様に拡径機構3Bと、規制機構4Bと、を備える。拡径機構3Bの有する紐状部材30Bは、第1の紐状部材31Bと、第2の紐状部材32Bとを有する。
第1の紐状部材31Bは、一端がステント本体部2Bに接続され且つ係止部41Bが形成される。第1の紐状部材31Bは、係止部41Bよりも他端側に配置され且つ環状に形成される連結部311Bを有する。
第2の紐状部材32Bは、第1の紐状部材31Bの他端側に取り外し可能に連結される。より詳しくは、第2の紐状部材32Bは、連結部311Bに挿通されて折り返されることで、第1の紐状部材31Bに取り外し可能に連結される。
【0055】
続いて、生分解性ステント1Bを患者の腸管内の狭窄部に留置する方法について説明する。
図8A〜Dは、生分解性ステント1Bを狭窄部に留置する方法について説明するための模式図である。
図8A〜Dでは、紐状部材30B、係止部41B及び環状部42Bは、それぞれステント本体部2Bの周方向に等間隔をあけて2つ配置される。
【0056】
図8Aに示すように、生分解性ステント1Bは、デリバリーシステム等の細管状の部材110Bに収納される。一方、内視鏡100Bの先端部は狭窄部Nに接近させる。生分解性ステント1Bを収納した細管状の部材110Bは、内視鏡100Bの図示しない鉗子口に挿入され、生分解性ステント1Bを内視鏡100Bの先端部まで運ぶ。
【0057】
続いて、
図8Bに示すように、生分解性ステント1Bは細管状の部材110Bから排出されて、狭窄部Nに囲まれた位置に配置される。細管状の部材110Bから排出された生分解性ステント1Bのステント本体部2Bは、わずかに拡径する。
【0058】
続いて、
図8Cに示すように、紐状部材30B(第2の紐状部材32B)がY方向側に向かって引かれることで更にステント本体部2Bが拡径し、狭窄部Nが押し広げられる。そしてこの際に、係止部41Bが環状部42Bを通過する。
【0059】
続いて、
図8Dに示すように、第2の紐状部材32Bが第1の紐状部材31Bから取り外されて、デリバリーシステム等の細管状の部材110B及び内視鏡100Bが患者の体外に取り出される。最後に、
図8Eに示すように、生分解性ステント1Bは狭窄部Nに留置される。
このようにして、係止部41Bは環状部42Bに係止されて、ステント本体部2Bは拡径した状態に維持される。
【0060】
第2実施形態に係る生分解性ステント1Bによれば、上記効果(1)〜(8)に加えて、以下の効果が奏される。
(9)第2実施形態では、紐状部材30Bが、一端がステント本体部2Bに接続され且つ係止部41Bが形成される第1の紐状部材31Bと、第1の紐状部材31Bの他端側に取り外し可能に連結される第2の紐状部材32Bと、を有するものとした。
これにより、生分解性ステント1Bを狭窄部Nに留置した後に、第1の紐状部材31Bから第2の紐状部材32Bを取り外すことができる。従って、生分解性ステント1Bによれば、紐状部材30Bのうち、ステント本体部2Bを拡径した状態に維持するために必要のない部分を、はさみ等を用いることなく取り除くことができるので、患者及び操作者の負担を軽減できる。
【0061】
<第3実施形態>
図9は、本発明の第3実施形態に係る生分解性ステント1Cの側面図である。生分解性ステント1Cのうち生分解性ステント1と同一の構成については、
図9において生分解性ステント1と同様の符号を付して説明を省略する。
【0062】
生分解性ステント1Cは、生分解性ステント1と同様に拡径機構3Cと、規制機構4Cと、を備える。拡径機構3Cの有する紐状部材30Cは、ステント本体部2Cに接続された一端と環状部42Cとの間において、一部がステント本体部2Cに沿うように規制される。具体的には、
図9に示すように、紐状部材30Cは、X方向からY方向に延びる途中で繊維20Cによって形成される網目をステント本体部2Cの内側から外側に通過し、更にY方向側で繊維20Cによって形成される網目をステント本体部2Cの外側から内側に通過する。このようにして、紐状部材30Cは、一部がステント本体部2Cの外側を通るように配置される。
【0063】
第3実施形態に係る生分解性ステント1Cによれば、上記効果(1)〜(5)及び(7)に加えて、以下の効果が奏される。
(10)第3実施形態では、紐状部材30Cを、ステント本体部2Cに接続された一端と環状部42Cとの間において、一部がステント本体部2Cに沿うように規制した。
これにより、ステント本体部2Cを拡径する際に、紐状部材30Cをステント本体部2Cに沿うようにして引くことができる。従って、生分解性ステント1Cによれば、ステント本体部2Cを、円筒形状を維持しながらバランスよく且つ円滑に拡径することができる。
【0064】
<第4実施形態>
図10Aは、本発明の第4実施形態に係る生分解性ステント1Dの縮径した状態の側面図であり、
図10Bは、生分解性ステント1Dの拡径した状態の側面図である。生分解性ステント1Dのうち生分解性ステント1と同一の構成については、生分解性ステント1と同様の符号を付して説明を省略する。
【0065】
生分解性ステント1Dは、生分解性ステント1と同様に拡径機構3Dと、規制機構4Dと、を備える。拡径機構3D及び規制機構4Dは、ステント本体部2Dの両端部に両端がそれぞれ接続された紐状の弾性部材50Dである。つまり、弾性部材50Dは、拡径機構3Dであると共に規制機構4Dでもある。
図10Aに示すように、ステント本体部2Dが軸方向に伸長して縮径した状態において、弾性部材50Dは伸長する。そして、
図10Bに示すように、弾性部材50Dが収縮することにより、ステント本体部2Dは拡径する。弾性部材50Dは、収縮した状態でステント本体部2Dが拡径した状態から縮径することを規制することで、ステント本体部2Dを拡径した状態に維持する。
【0066】
第4実施形態に係る生分解性ステント1Dによれば、上記効果(1)、(2)及び(7)に加えて、以下の効果が奏される。
(11)第4実施形態では、拡径機構3Dを、ステント本体部2Dの両端部に両端がそれぞれ接続された紐状の弾性部材50Dとし、弾性部材50Dが、収縮した状態でステント本体部2Dを拡径した状態に維持するものとした。
これにより、より単純な構造によって、ステント本体部2Dを拡径し、更にステント本体部2Dを拡径した状態に維持することができる。
【0067】
<第5実施形態>
図11A及びBは、本発明の第5実施形態に係る生分解性ステント1Eを示す側面図であり、
図11Aは、生分解性ステント1Eが縮径した状態を示し、
図11Bは、生分解性ステント1Eが拡径した状態を示す。
第5実施形態の生分解性ステント1Eは、主として、ステント本体部2Eの形状及び拡径機構3Eの構成において第1実施形態と異なる。
【0068】
第5実施形態の生分解性ステント1Eは、ステント本体部2Eの両端部の径が中央部の径よりも大きくなるように形成されており、ステント本体部2Eの両端部がいわゆるフレア形状となっている。
【0069】
第5実施形態では、拡径機構3Eは、2つの端部拡径機構31Eと、2つの中央部拡径機構32Eと、を備える。
2つの端部拡径機構31E及び2つの中央部拡径機構32Eは、それぞれ、対向して配置される。また、端部拡径機構31と中央部拡径機構32Eとは、ステント本体部2Eの周方向に90度ずれて配置される。
【0070】
端部拡径機構31Eは、ステント本体部2Eの端部側(フレア形状部分)を拡径させる。第5実施形態では、端部拡径機構31Eを構成する紐状部材311Eの一端側は、ステント本体部2Eの一端部(X方向側の端部)に接続され、ステント本体部2Eの他端側(Y方向側)に延びる。
中央部拡径機構32Eは、ステント本体部2Eの中央部(フレア形状部分以外の部分)を拡径させる。第5実施形態では、中央部拡径機構32Eを構成する紐状部材321Eの一端側は、ステント本体部2Eの一端側(X方向側)におけるフレア形状部分の基端部に接続され、ステント本体部2Eの他端側(Y方向側)に延びる。
【0071】
第5実施形態では、規制機構4Eは、端部規制機構41Eと、中央部規制機構42Eと、を備える。
端部規制機構41Eは、ステント本体部2Eの端部が拡径した状態を維持させる。端部規制機構41Eを構成する環状部412Eは、ステント本体部2Eの中央部における一端側(X方向側)に配置され、係止部411Eは、環状部412Eよりも一端側(X方向側)に配置される。
【0072】
中央部規制機構42Eは、ステント本体部2Eの中央部が拡径した状態を維持させる。中央部規制機構42Eを構成する環状部422Eは、ステント本体部2Eの中央部における他端側(Y方向側)に配置され、係止部421Eは、環状部422Eよりも一端側(X方向側)に配置される。
【0073】
即ち、第5実施形態では、端部規制機構41Eを構成する環状部412Eと、中央部規制機構42Eを構成する環状部422Eとは、ステント本体部2Eの軸方向においてずれた位置に配置される。
【0074】
第5実施形態の生分解性ステント1Eによれば、
図11Bに示すように、端部拡径機構31E及び端部規制機構41Eによりステント本体部2Eの端部(フレア形状部分)を拡径させると共にこの拡径させた状態を維持させられ、中央部拡径機構32E及び中央部規制機構42Eによりステント本体部2Eの中央部を拡径させると共にこの拡径させた状態を維持させられる。これにより、ステント本体部2Eの端部の径が中央部の径よりも大きく形成された場合であっても、ステント本体部2Eの端部及び中央部を好適に拡径させられ、また拡径させた状態を好適に維持させられる。
【0075】
第5実施形態に係る生分解性ステント1Eによれば、上記効果(1)〜(8)に加えて、以下の効果が奏される。
(12)第5実施形態では、端部拡径機構31E及び端部規制機構41Eによりステント本体部2Eの端部(フレア形状部分)を拡径させると共にこの拡径させた状態を維持させられ、中央部拡径機構32E及び中央部規制機構42Eによりステント本体部2Eの中央部を拡径させると共にこの拡径させた状態を維持させられる。これにより、ステント本体部2Eの端部の径が中央部の径よりも大きく形成された場合であっても、ステント本体部2Eの端部及び中央部を好適に拡径させられ、また拡径させた状態を好適に維持させられる。
また、端部規制機構41Eを構成する環状部412Eと、中央部規制機構42Eを構成する環状部422Eとを、ステント本体部2Eの軸方向においてずれた位置に配置した。これにより、複数の環状部を含んで生分解性ステント1Eを構成した場合であっても、複数の環状部によりステント本体部2Eの内部に部分的に狭くなった箇所が形成されることを防げる。
【0076】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【0077】
例えば、上記の第1から第3実施形態では、紐状部材30,30B,30Cを引くことでステント本体部2,2B,2Cを拡径させる構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、バルーンでステント本体部を拡径させる構成としてもよい。
また、上記実施形態では、内視鏡を用いて生分解性ステント1を狭窄部Nに留置させたが、本発明の生分解性ステントを狭窄部に留置する方法はこれに限定されない。例えば、カテーテルを用いて生分解性ステントを狭窄部に接近・留置させてもよい。
また、規制機構4の有する係止部41及び環状部42の位置は、所望される、拡径した状態のステント本体部2の直径に応じて適宜変更することが可能である。
【0078】
また、上記の第1から第3実施形態では、環状部42,42B,42Cを、ステント本体部2,2B,2Cの内側に伸ばして構成し、上記の第1実施形態の変形例では、環状部42Aを、ステント本体部2Aの外側に伸ばして構成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、環状部を、ステント本体部の端部からステント本体部の軸方向に延びるように形成してもよい。
【0079】
また、上記の第3実施形態では、紐状部材30Cを、一部がステント本体部2Cの外側を通るように配置することで、紐状部材30Cの一部がステント本体部2Cに沿うように規制したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ステント本体部の内側の一端側から他端側の間に所定の間隔を開けて複数の環状部材を配置し、その環状部材に紐状部材を通すことで、紐状部材の一部がステント本体部に沿うように規制してもよい。
【0080】
また、ステント本体部にX線不透過性マーカーを付与することで、体内における生分解性ステントの位置を確認できるようにしてもよい。
【0081】
また、上記の第2実施形態では、第1の紐状部材31Bと、第2の紐状部材32Bとは、係止部41Bの近傍に設けられた連結部311Bにおいて連結されていたが、これに限らない。即ち、
図12に示すように、連結部311Bを、係止部41Bから離れた位置に設け(つまり、係止部41Bを第1の紐状部材31Bの端部から離れた位置に形成し)、第1の紐状部材31Bと第2の紐状部材32Bとを連結してもよい。これにより、拡径機構3Bの操作性をより向上させられる。
【0082】
また、上記の第5実施形態では、複数の拡径機構3E(紐状部材311E,321E)を、全てステント本体部2Eの内部を通るように配置したが、これに限らない。即ち、複数の紐状部材を含んで構成する場合、一部の紐状部材をステント本体部の外部を通るように配置し、他の紐状部材をステント本体部の内部を通るように配置してもよい。
【0083】
また、上記の各実施形態では、合成樹脂ステントとして、生分解性の繊維により構成した生分解性ステントを用いたがこれに限らない。即ち、生分解性を有さない合成樹脂繊維を用いてステントを構成してもよい。
【0084】
また、係止部41を、紐状部材30の結び目により形成する場合の結び方は、
図2に示す結び方に限らない。即ち、他の結び方により係止部を形成してもよい。
【実施例】
【0085】
次に、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0086】
[実施例1]
PLLAからなる繊維(直径0.25mm)24本を網目状に編み込むことで円筒形状のステント本体部(直径17mm、長さ76mm)を作製した。また、PLLAからなる繊維(直径0.2mm)に結び目(係止部)を形成した紐状部材を2本作製し、これらの一端をステント本体部の一方側の端部に、ステント本体部の周方向に等間隔を開けて接着させた。更に、ステント本体部の他方側の端部に環状部材を接着して固定することで生分解性ステントを作製した(
図1A及びB参照)。
【0087】
[比較例1]
紐状部材に係止部を形成しない点及びステント本体部に環状部材を接着させない点以外は、実施例1と同様に生分解性ステントを形成した。つまり、比較例1の生分解性ステントは規制機構を有さない。
【0088】
[比較例2]
PLLAとP(LA/CL)とを質量比(PLLAの質量/P(LA/CL)の質量)が90/10となるように混合したブレンドポリマーからなる繊維(直径0.6mm)16本を網目状に編み込むことで生分解性ステント(ステント本体部、直径17mm)を作製した。比較例2の生分解性ステントは紐状部材及び規制機構を有さない。
【0089】
[参考例1]
ブレンドポリマーからなる繊維の直径を0.7mmとし且つ繊維を16本とした以外は、実施例1と同様に生分解性ステントを作製した。
【0090】
[参考例2]
ブレンドポリマーからなる繊維の直径を0.8mmとし且つ繊維を16本とした以外は、実施例1と同様に生分解性ステントを作製した。
【0091】
<圧縮強度の測定>
実施例1、比較例1及び2の生分解性ステントを圧縮強度の測定に供した。
実施例1の生分解性ステントは、紐状部材を引くことで、ステント本体部を軸方向に収縮させて拡径した。この際、係止部を環状部材(環状部)に係止させた。係止部が環状部材に係止されることで、ステント本体部は拡径した状態(直径19mm、長さ40mm)に維持される。この拡径した状態における、径方向の圧縮強度(ステント本体部の直径が2分の1になるために必要な負荷)をJIS T 0401に準拠する方法で測定した。測定後において、生分解性ステントの破損は観察されなかった。
【0092】
比較例1及び2の生分解性ステントについても、ステント本体部を拡径させた状態(直径17mm、長さ40mm)における径方向の圧縮強度を実施例1と同様の方法により測定した。
実施例1、比較例1及び2の生分解性ステントの圧縮強度を測定した結果を
図5のグラフに示した。圧縮強度は相対的な値を示した。なお、参考例として、金属製の大腸ステント(WallFlex Colonic、ボストン・サイエンティフィックジャパン株式会社製)と金属製の食道ステント(フレックスエラ−J、株式会社バイオラックスメディカルデバイス製)の圧縮強度を、実施例1の生分解性ステントと同様の方法により測定した。これらの測定結果も
図5に示した。
【0093】
<収納性試験>
実施例1及び比較例2の生分解性ステントについて、内径2.4mmのチューブへの収納性を確認した。実施例1の生分解性ステントは、円滑にチューブ内に収納することができた。一方、比較例2の生分解性ステントは、直径2.4mmまで縮径することができず、チューブに挿入できなかった。
【0094】
参考例1及び2の生分解性ステントについて、内径3.5mmのチューブへの収納性を確認した。参考例1の生分解性ステントは、直径3.5mm未満に縮径することができ、内径3.5mmのチューブへ収納することができた。一方、参考例2の生分解性ステントは、直径3.5mm未満に縮径することができず、内径3.5mmのチューブへ収納することができなかった。
【0095】
圧縮強度の測定結果(
図9)から、実施例1の生分解性ステントの圧縮強度は、規制機構を備えない比較例1の生分解性ステントの圧縮強度よりも高いことが分かった。また、実施例1の生分解性ステントは繊維の直径が0.25mmであるにも関わらず、繊維の直径が0.6mmである比較例1の生分解性ステントより圧縮強度が高いことが分かった。更に、実施例1の生分解性ステントの圧縮強度は、金属製のステントの圧縮強度と比較しても遜色ないことも分かった。
これらの結果から、ステント本体部を拡径した状態に維持する規制機構を備える生分解性ステントは、細管状の部材に収納するために生分解性の繊維を細くした場合であっても径方向外側から加わる圧力に対して十分な耐性を有することが確認された。
【0096】
なお、収納性試験の結果から、内径3.5mmのチューブに参考例1の生分解性ステントは収納可能であるが、参考例2の生分解性ステントは収納できないことが分かった。この結果から、繊維の直径を0.7mm以下の生分解性ステントであれば、内径3.5mmのデリバリーシステム等の細管状の部材への収納が可能であることが確認された。