特許第6705488号(P6705488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6705488粘着シート、積層体、およびディスプレイ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705488
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】粘着シート、積層体、およびディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20200525BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20200525BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20200525BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20200525BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20200525BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   C09J7/38
   C09J133/14
   C09J175/04
   B32B27/00 M
   G02F1/1335 510
   G09F9/00 342
   G09F9/00 313
【請求項の数】6
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2018-215786(P2018-215786)
(22)【出願日】2018年11月16日
(65)【公開番号】特開2020-83936(P2020-83936A)
(43)【公開日】2020年6月4日
【審査請求日】2019年9月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福田 克哲
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝行
【審査官】 高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−095654(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/141382(WO,A1)
【文献】 特開2016−156021(JP,A)
【文献】 特開2017−105892(JP,A)
【文献】 特開2019−085479(JP,A)
【文献】 特開2007−169377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J
B32B
G02F1/1335;1/13363
G09F9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性可撓性基材、粘着層、および偏光板を備える積層体の前記粘着層を形成するための粘着シートであって、
前記粘着層は、数平均分子量1000〜10000の重合性化合物(a)由来の構成単位と水酸基を有する共重合体(A)、および硬化剤の硬化物であり、
共重合体(A)は、数平均分子量1000〜10000の重合性化合物(a)、および水酸基を有するモノマーを含むモノマー混合物の共重合物であるアクリル系共重合体(A1)であり、
数平均分子量1000〜10000の重合性化合物(a)は、マクロモノマー(a1−1)を含み、
前記水酸基を有するモノマーは、前記モノマー混合物100質量%中、0.1〜5質量%であり、
前記硬化剤の含有量は、共重合体(A)100質量部に対して1〜15重量部であり、
前記粘着層は、温度25℃、相対湿度50%RH雰囲気下での屈曲試験における30万回屈曲前後のHAZE変化率が20%以下である、粘着シート。
【請求項2】
光透過性可撓性基材、粘着層、および偏光板を備える積層体の前記粘着層を形成するための粘着シートであって、
前記粘着層は、数平均分子量1000〜10000の重合性化合物(a)由来の構成単位と水酸基を有する共重合体(A)、および硬化剤の硬化物であり、
前記共重合体(A)は、ウレタンウレア系共重合体(A2)であり、
数平均分子量1000〜10000の重合性化合物(a)は、3官能ポリオール(a2−1)を含み、
前記粘着層は、温度25℃、相対湿度50%RH雰囲気下での屈曲試験における30万回屈曲前後のHAZE変化率が20%以下である、粘着シート。
【請求項3】
前記共重合体(A)は、モノマー混合物100質量%中、数平均分子量1000〜10000の重合性化合物(a)を1〜10質量%含むモノマー混合物の共重合物であるアクリル系共重合体(A1)である、請求項記載の粘着シート。
【請求項4】
前記共重合体(A)は、モノマー混合物100質量%中、数平均分子量1000〜10000の重合性化合物(a)を60〜90質量%含むモノマー混合物の共重合物であるウレタンウレア系共重合体(A2)である、請求項2記載の粘着シート。
【請求項5】
光透過性可撓性基材、粘着層、および偏光板を備え、
前記粘着層は、請求項1〜いずれか1項記載の粘着シートにより形成されてなる、積層体。
【請求項6】
請求項記載の積層体、および光学素子を備える、ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光透過性可撓性基材、粘着層、および偏光板を備える積層体を形成するための粘着シート、および該粘着シートにより形成されてなる粘着層を有する積層体に関する。前記積層体は、ディスプレイ用に好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイ(LCD)や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ(OLED)等の画像表示装置とタッチパネルを組み合わせて用いる入力装置が普及しつつある。タッチパネルに用いる透明導電性フィルムは、プラスチック等の基材に透明導電膜(ITO膜)を積層した構成が一般的であり、当該透明導電性フィルムは、他の部材に粘着層を介して積層されている。
【0003】
前記画像表示装置としては、ガラス基板を用いたフラットディスプレイが主流であったが、近年、プラスチック等の可撓性基板を用いたフォルダブルディスプレイ(Foldable display)やローラブルディスプレイ(Rollable display)等のフレキシブルディスプレイが開発されている。このようなフレキシブルディスプレイは、従来のガラス基板を用いたフラットディスプレイと比較して、軽量性、薄さ、可撓性等に優れており、また意匠性にも優れている等の種々の利点を有する。
【0004】
前記粘着層には、従来から高温環境や高温高湿環境で発泡や剥がれが生じない性質が必要であったが、近年ではさらに、ディスプレイ自体を曲げることができるフレキシブルディスプレイに使用することができるよう、折り曲げに対応することが必要である。
【0005】
これらの問題を解決すべく、特許文献1には、可撓性基材と透明導電性フィルム、および粘着層を含み、前記粘着層の貯蔵弾性率が0.1〜0.4MPaであることを特徴とする積層体が開示されている。また、特許文献2には、ベースポリマー、紫外線吸収剤、および色素化合物を含む粘着剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017−65217号公報
【特許文献2】特開2018−28974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の粘着シートでは、実用上問題の無いレベルでの耐熱性および耐湿熱性と、屈曲性を同時に満たすことができていないのが現状である。
【0008】
本発明は、透明性に優れ、さらに耐湿熱性および耐熱性と、屈曲性の両立が可能な粘着シート、および該積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得
ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、光透過性可撓性基材、粘着層、および偏光板を備える積層体の前記粘着層を形成するための粘着シートであって、前記粘着層は、数平均分子量1000〜10000の重合性化合物(a)由来の構成単位と水酸基を有する共重合体(A)、および硬化剤の硬化物であり、前記粘着層は、温度25℃、相対湿度50%RH環境下での屈曲試験における30万回屈曲前後のHAZE変化率が20%以下である、粘着シートにより解決される。
【発明の効果】
【0010】
上記の本発明により、透明性に優れ、さらに耐湿熱性、耐熱性および屈曲性も良好な粘着シート、および該粘着シートを用いた積層体の提供を目的とする。
また、本発明の粘着シート、および積層体を用いることで、視認性とコントラストも優れるディスプレイの提供を目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の粘着シートを部分的に示す概略断面図である。
図2】本発明の粘着シートの使用例である、積層体を部分的に示す概略断面図である。
図3】本発明の粘着シートの使用例である、ディスプレイを部分的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の粘着シート、積層体、およびディスプレイの構成例を説明するが、これに限定されない。
なお、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定するポリスチレン換算の値である。GPCの測定法の詳細は、実施例に記載する。
【0013】
《粘着シート》
本発明の粘着シートは、光透過性可撓性基材(カバーパネル)、粘着層、および偏光板を備える積層体における、前記粘着層を形成するために用いられる粘着シートであり、すなわち本発明の粘着シートは、光透過性可撓性基材と偏光板とを接合するために用いられる。
図1に、本発明の粘着シートを部分的に示す概略断面図の例を示す。図1において1は粘着層、2は剥離フィルムである。
【0014】
本発明の粘着シートは、図1で示すように、粘着層の両面に剥離フィルムが形成された構成を有しており、且つ剥離フィルムの間に形成されている粘着層が、水酸基を有する共重合体(A)と硬化剤の混合物により形成された粘着層である。
【0015】
「粘着層」
本発明の粘着層は、数平均分子量1000〜10000の重合性化合物(a)由来の構成単位と水酸基を有する共重合体(A)、および硬化剤の硬化物であり、前記粘着層は、温度25℃、相対湿度50%RH雰囲気下での屈曲試験における30万回屈曲前後のHAZE変化率が20%以下である。
【0016】
共重合体(A)が高分子量の重合性化合物由来の構成単位を有するため、粘着層の空間的な密度が高い部分と、低い部分を局在的に形成することができ、これにより粘着層に適度な柔軟性を付与することができる。結果、耐熱性と屈曲性の両立が可能となる。
また、このような共重合体(A)を含有することで、後述する硬化剤との架橋反応によりポリマーネットワークを形成することができ、粘着層に凝集力を付与することが可能となる。結果、耐熱性、耐湿熱性、および屈曲性が優れたものとなる。
【0017】
さらに、屈曲試験における30万回屈曲前後のHAZE変化率が20%以下であることで、本発明の粘着層をフォルダブルディスプレイ部材として適用した場合にも、視認性を損なわずに使用することができる。
【0018】
本発明におけるHAZE変化率は、屈曲試験により求めることができる。屈曲試験は、折り曲げ試験機(ユアサシステム機器社製)を用い、折り曲げた時の内径が6mm(屈曲半径=3mm)になるように条件設定し、折り曲げと180°開放とを1サイクルとして、1サイクル/1秒(屈曲速度=1回/1秒)、30万サイクル(屈曲回数30万回)繰り返し屈曲を行い、下記式1で表されるHAZE変化率により求められる。

(式1)
HAZE変化率(ΔHAZE)(%):
ΔHAZE=[(HAZE(E)−HAZE(S))/HAZE(S)]×100
ここで、
HAZE(S)は、屈曲試験前の粘着層のHAZEを表す。
HAZE(E)は、屈曲試験後の粘着層のHAZEを表す。
【0019】
HAZE変化率は、20%以下であり、10%以下がさらに好ましい。HAZE変化率が20%以下であることで、フォルダブルディスプレイ部材として適用された際にも、フォルダブルディスプレイの視認性を損なわない。
【0020】
<共重合体(A)>
共重合体(A)は、二種以上のモノマーを共重合してなる共重合体であり、水酸基を有し、かつ数平均分子量1000〜10000の重合性化合物(a)由来の構成単位を有していれば制限されず、例えばアクリル系共重合体、ウレタン系共重合体、ウレタンウレア系共重合体、アミド系共重合体、またはポリエステル系重合体等が挙げられる。なかでも、アクリル系共重合体(A1)または、ウレタンウレア系共重合体(A2)であることが好ましい。共重合体(A)としてアクリル系共重合体を使用した場合、耐熱試験時のHAZE変化率上昇を、とくに抑制することができるために好ましい。また、共重合体(A)としてウレタンウレア系共重合体を使用した場合、耐湿熱試験時のHAZE変化率上昇を、とくに抑制することができるために好ましい。
【0021】
なお、重合性化合物とは、共重合により、本発明の共重合体を構成する成分であって、モノマーもしくはオリゴマー成分であってもよく、ウレタン系樹脂を形成するためのポリオールやイソシアネート等も包含し、アクリル系共重合体における、開始剤等は含まれない。
【0022】
すなわち、共重合体を製造する際の重合性化合物の混合物とは、重合性化合物(a)、およびその他モノマーだけでなく、反応停止剤等、共重合体を構成する混合物全体をさす。具体的には、アクリル系共重合体では、モノマー等の不飽和二重結合を有する化合物等、ウレタン系共重合体では、イソシアネート化合物、およびポリオール、ウレタンウレア系共重合体では、イソシアネート化合物、ポリオール、ジアミノ化合物、および反応停止剤等、アミド系共重合体では、多価アミノ化合物、および多価カルボン酸等、ポリエステル系重合体では、ポリオール、および多価カルボン酸等である。
【0023】
[アクリル系共重合体(A1)]
共重合体(A)として好ましい、アクリル系共重合体(A1)(以下、単に「共重合体(A1)」と記述する場合がある。)は、数平均分子量1000〜10000の重合性化合物(a)由来の構成単位と水酸基を有するアクリル系共重合体である。アクリル系共重合体(A1)は、数平均分子量1000〜10000の重合性化合物(a)、および水酸基を有するモノマーを含むモノマー混合物を共重合することで得ることができる。
【0024】
アクリル系共重合体(A1)の重量平均分子量は、20万〜200万が好ましく、50万〜180万がより好ましく、100万〜180万がさらに好ましい。20万〜200万の範囲にあることで凝集力がより向上するため、高温環境下や高温高湿環境下における浮きおよび剥がれがより抑制できる上、耐汚染性もより向上する。
【0025】
(数平均分子量1000〜10000の重合性化合物(a1))
アクリル系共重合体(A1)に用いられる数平均分子量1000〜10000の重合性化合物(a1)は、数平均分子量がこの範囲である重合性化合物であれば制限されず、好ましくは数平均分子量が2000〜6000である。このような高分子量のモノマーを使用すると、アクリル系共重合体(A1)は、ハードセグメントとして高分子量の側鎖が形成されるため、アクリル系共重合体(A1)自体の凝集力が向上し、硬さが得られる。また、前記高分子量の側鎖の存在で共重合体(A)同士の分子の絡み合いの形成、ないしクラスターの形成が抑制される(絡み合いが緩和される)と推測している。これにより粘着層は、硬さと柔らかさの両立というトレードオフの性質が得られるため、耐熱性および屈曲性が向上する。
重合性化合物(a1)のなかでも、屈曲性、耐熱性の観点より、マクロモノマー(a1−1)、またはアルキレンオキシ基含有モノマー(a1−2)が好ましい。特に好ましくは、マクロモノマー(a1−1)がより好ましい。
【0026】
分子量1000〜10000の重合性化合物(a1)は、モノマー混合物100質量%中に、0.5〜10質量%を含むことが好ましく、1〜10質量%がより好ましく、1〜8質量%がさらに好ましく、1〜2質量%がさらに好ましい。含有量が1〜10質量%になると硬さかと柔らかさをより高い水準で両立でき、耐熱性および屈曲性を高度に両立できる。
【0027】
・マクロモノマー(a1−1)
マクロモノマー(a1−1)(以下、単に「モノマー(a1−1)」と記述する場合がある。)は、ポリマーユニットおよび重合性官能基ユニット(エチレン性不飽和基)を有する。マクロモノマー(a1−1)を用いることで屈曲性、耐熱性に優れたものとすることができるために好ましい。
【0028】
モノマー(a1−1)の重合性官能基としては、例えば、ビニル基、アリル基、および(メタ)アクリロイル基なる群から選択される少なくとも1つであることが好ましい。マクロモノマーを構成するポリマー鎖部分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの重合体が好ましい。
【0029】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、またはステアリル(メタ)アクリレート等のアルキルエステル(メタ)アクリレートの共重合で形成できる。
また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なアクリル系モノマーないしビニルモノマーも使用できる。
【0030】
モノマー(a1−1)の市販品を挙げると、例えば、分子末端がメタクリロイル基であって、ポリマー鎖がポリメチルメタクリレートであるマクロモノマー(製品名:AA−6、AA−6S、数平均分子量6000;東亞合成社製)、ポリマー鎖がポリスチレンであるマクロモノマー(製品名:AS−6S、AS−6、数平均分子量6000;東亞合成社製)、ポリマー鎖がスチレン/ アクリルニトリルの共重合体であるマクロモノマー(製品名:AN−6S、数平均分子量6000;東亞合成社製)、ポリマー鎖がポリブチルアクリレートのマクロモノマー(製品名:AB−6、数平均分子量6000;東亞合成社製)、またはポリマー鎖がポリブチルアクリレートのマクロモノマー(製品名:AB−8、数平均分子量8000;東亞合成社製)等が挙げられる。
これらの中でも耐熱性が向上する面で、分子末端がメタクリロイル基であって、ポリマー鎖がポリメチルメタクリレートであるマクロモノマー(製品名:AA−6、数平均分子量6000;東亞合成社製)、またはポリマー鎖がポリブチルアクリレートのマクロモノマー(製品名:AB−6、数平均分子量6000;東亞合成社製)が好ましい。
【0031】
・アルキレンオキシ基含有モノマー(a1−2)
アルキレンオキシ基含有モノマー(a1−2)(以下、単に「モノマー(a1−2)」と記述する場合がある。)は、例えば、下記一般式(2)で示す数平均分子量が1000〜10000のモノマーである。アルキレンオキシ基は、例えば、エチレンオキシ基、またはプロピレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基がより好ましい。
モノマー(a1−2)を使用すると共重合体(A)は、ハードセグメントとして高分子量の側鎖が形成されるため、共重合体(A1)自体の凝集力が向上し、硬さが得られる。また、前記高分子量の側鎖の存在で共重合体(A1)同士の分子の絡み合いの形成、ないしクラスターの形成が抑制される(絡み合いが緩和される)と推測している。これにより粘着層は、硬さと柔らかさの両立というトレードオフの性質が得られるため、耐熱性および屈曲性が向上する。なお、モノマー(a1−2)の数平均分子量は、1000〜2000がより好ましい。
一般式(2)
【0032】
【化1】

一般式(2)中、Rは、に水素原子またはメチル基、nは、繰り返し単位を表す整数であり、1≦n≦25である。
【0033】
一般式(2)で示すモノマーの市販品は、例えば、メトキシポリエチレングリコール#1000アクリレート(新中村化学工業社製:上記式(2)において、Rが水素原子、n=23)、メトキシポリエチレングリコール#1000メタクリレート(新中村化学工業社製:上記式(2)において、Rが水素原子、n=23)が挙げられる。
【0034】
これらの中でも耐熱性、耐湿熱性の向上、ならびに前記浮きおよび剥がれをより抑制できる面でメトキシポリエチレングリコール#1000アクリレートがより好ましい。
【0035】
モノマー(a1−1)、(a1−2)は、単独または2種以上を使用できる。
【0036】
アクリル系共重合体(A1)は、数平均分子量1000〜10000の重合性化合物(a)に加えて、少なくとも水酸基を有するモノマーを含むその他モノマー成分等を含有するモノマー混合物を共重合することで得ることができる。なお、これらのその他重合性化合物は、数平均分子量が1000〜10000である場合は、重合性化合物(a)である。
【0037】
・水酸基を有するモノマー
水酸基を有するモノマーとしては、分子内に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
水酸基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、または4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも耐熱性、および耐湿熱性をより向上できる面で2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートがより好ましい。
水酸基を有するモノマーは、単独または2種以上を使用できる。
【0038】
水酸基を有するモノマーは、モノマー混合物100質量%中に、0.1〜5質量%含むことが好ましく、0.2〜2質量%がより好ましい。含有量が0.1〜5質量%であると十分な凝集力が得やすく、耐湿熱性および屈曲性を高度に両立できるために好ましい。
【0039】
・その他モノマー
アクリル系共重合体(A1)は、重合性化合物(a)、水酸基を有するモノマー以外にその他モノマーを使用できる。その他モノマーは、数平均分子量1000〜10000ではないモノマーであって、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、カルボキシル基含有モノマー、アミド結合含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、またはビニルモノマー等が挙げられる。
【0040】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等が挙げられる。これらの中でも粘着性能がより向上する面で(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
【0041】
カルボキシル基含有モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸p−カルボキシベンジル、アクリル酸β−カルボキシエチル、マレイン酸、モノエチルマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0042】
アミド結合含有モノマーは、アミド結合またはアミド基を有するモノマーであり、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N、N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N−(ヒドロキシメチル)アクリルアミド、N−(ブトキシメチル)アクリルアミド、などの(メタ)アクリルアミド系の化合物、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、などの複素環を含有する化合物、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド等が挙げられる。
【0043】
エポキシ基含有モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジル、(メタ)アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル等が挙げられる。
【0044】
アミノ基含有モノマーは、例えば、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸モノメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸モノエチルアミノプロピルなどの(メタ)アクリル酸モノアルキルアミノエステル等が挙げられる。
【0045】
ビニルモノマーは、例えば酢酸ビニル、クロトン酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0046】
これらのその他モノマーは、単独または2種類以上を併用できる。
その他モノマーは、モノマー混合物100質量%中に、5〜99質量%を含むことが好ましく、50〜99質量%がより好ましい。含有量が5質量%以上であると、密着性がより向上する。また、含有量が90質量%以下であると、凝集力と密着性を両立し易いために好ましい。
【0047】
・アクリル系共重合体(A1)の製造方法
アクリル系共重合体(A1)は、モノマー混合物を重合することで合成できる。重合は、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合など公知の重合方法が可能であるが、溶液重合が好ましい。溶液重合で使用する溶媒は、例えば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アニソール、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどが好ましい。
重合温度は、60〜120℃の沸点反応が好ましい。重合時間は、5〜12時間程度が好ましい。
【0048】
重合に使用する重合開始剤は、ラジカル重合開始剤が好ましい。ラジカル重合開始剤は、過酸化物およびアゾ化合物が一般的である。
過酸化物は、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド;
t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル;シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;
2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレート、などのパーオキシケタール;
クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルシクロヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;
ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;
ビス(t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0049】
アゾ化合物は、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(略称:AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)などの2,2’−アゾビスブチロニトリル;
2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などの2,2’−アゾビスバレロニトリル;
2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などの2,2’−アゾビスプロピオニトリル;
1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)などの1,1’−アゾビス−1−アルカンニトリル等が挙げられる。
【0050】
重合開始剤は、単独または2種以上を併用できる。
重合開始剤は、モノマー混合物100質量部に対して、0.01〜10質量部を使用することが好ましく、0.1〜2質量部がより好ましい。
【0051】
[ウレタンウレア系共重合体(A2)]
共重合体(A)として好ましい、水酸基を有するウレタンウレア系共重合体(A2)(以下、単に「共重合体(A2)」と記述する場合がある。)は、分子量1000〜10000の重合性化合物(a)由来の構成単位と、水酸基を有するウレタンウレア系共重合体である。
ウレタンウレア系共重合体(A2)は、イソシアネート化合物、ポリオールおよびジアミノ化合物を共重合することで得られる。
なかでも、ウレタンウレア系共重合体(A2)は、分子内にイソシアネート基を2つ含有するイソシアネート化合物、分子内に水酸基を有する分子量2000〜10000のポリオール(a2)およびジアミノ化合物の混合物を共重合することで得られる共重合体であることが好ましい。
【0052】
ウレタンウレア系共重合体(A2)の重量平均分子量は、粘着層の粘着力を確保する観点から1万〜50万が好ましく、5万〜30万がより好ましい。
【0053】
(数平均分子量1000〜10000の重合性化合物(a2))
ウレタンウレア系共重合体(A2)に用いられる数平均分子量1000〜10000の重合性化合物(a2)は、分子量がこの範囲であるポリオールである。より好ましくは数平均分子量が1000〜2000である。
重合性化合物(a2)のなかでも、屈曲性、耐熱性の観点より、分子量1000〜10000の3官能ポリオール(a2−1)の使用が好ましい。
【0054】
分子内に水酸基を有する数平均分子量1000〜10000のポリオールとしては、公知のものが使用でき、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、これらの共重合体、及びその他のグリコール類などが挙げられる。以下に述べる具体的化合物は、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0055】
ポリオールの数平均分子量(Mn)は、粘着層の耐熱性を確保する観点から2000〜10000であることが好ましい。ポリオールの数平均分子量(Mn)が2000未満であると、粘着層に凝集力を付与するウレタン結合の増加を招き、屈曲性を損ない、数平均分子量(Mn)が10000よりも大きいと、粘着層に凝集力を付与するウレタン結合の減少を招き、粘着層の耐熱性を低下させる。
【0056】
ポリエーテルポリオール類としては、公知のポリエーテルポリオールを用いることができる。例えば、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン、エチレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの重合体、共重合体、及びグラフト共重合体;
ヘキサンジオール、メチルヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール若しくはこれらの混合物の縮合によるポリエーテルポリオール類などの、水酸基を2つまたは3つ有するポリエーテルポリオールを用いることができる。
更に、ビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類にエチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させたグリコール類を使用することができる。
【0057】
ポリエステルポリオール類としては、公知のポリエステルポリオールを用いることができる。ポリエステルポリオール類としては、例えば、2官能および3官能アルコール成分と二塩基酸成分とが縮合反応したポリエステルポリオールが挙げられる。
アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどの水酸基を2つ有する化合物、グリセリン、トリメチロールプロパン等の水酸基を3つ有する化合物が挙げられる。
【0058】
二塩基酸成分としては、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸等の脂肪族あるいは芳香族二塩基酸が挙げられる。
【0059】
又、β−ブチロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−ヘプタノラクトン、α−メチル−β−プロピオラクトン等のラクトン類等の、環状エステル化合物の開環重合により得られるポリエステルポリオールも使用できる。
【0060】
ポリカーボネートポリオール類とは、下記一般式(3)で示される構造を、その分子中に有するものであり、公知のポリカーボネートポリオールを使用することができる。
一般式(3):
−[−O−R1−O−CO−]
(一般式(3)中、R1は2価の有機残基、mは1以上の整数を表す。)
【0061】
ポリカーボネートポリオール類は、例えば[i]グリコール又はビスフェノールと炭酸エステルとの反応、[ii]グリコール又はビスフェノールにアルカリの存在下でホスゲンを作用させる反応などで得られる。
【0062】
[i]の製法で用いられる炭酸エステルとしては、具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。
【0063】
[i]及び[ii]の製法で用いられるグリコール又はビスフェノールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール;あるいはビスフェノールAやビスフェノールF等のビスフェノール類;ビスフェノール類にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加させたビスフェノール類等も用いることができる。これらの化合物は、1種又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0064】
その他のグリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブタンジオール、プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール等の、水酸基を2つ有する化合物が挙げられる。
【0065】
本発明においてポリオールとしては、ポリプロピレングリコールおよび/またはポリエチレングリコールを使用することが好ましく、分子内に水酸基を3つ含有する3官能ポリオール(a2−1)を含むことが耐熱性、屈曲性の点からより好ましい。
【0066】
・イソシアネート化合物
分子内にイソシアネート基を2つ含有するイソシアネート化合物としては、従来公知のものを使用することができ、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、または脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。以下に述べる具体的化合物は、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0067】
芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等を挙げることができる。
【0068】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0069】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0070】
脂環族ポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(別名:IPDI)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0071】
本発明において、イソシアネート化合物としては、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(別名:IPDI)、キシリレンジイソシネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(別名:水添MDI)等の無黄変型、又は難黄変型のポリイシソアネート化合物を用いると、耐候性の点から好ましい。さらには、粘着層の透明性や反応性の制御の観点から、イソホロンジイソシアネート(別名:IPDI)を使用するのが好ましい。
【0072】
・ジアミノ化合物
ジアミノ化合物としては、公知のものが使用できる。以下に述べる具体的化合物は、複数種を組み合わせて使用してもよい。
【0073】
具体的には、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリアミノプロパン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)プロピレンジアミン、(2−ヒドロキシエチルプロピレン)ジアミン、(ジ−2−ヒドロキシエチルエチレン)ジアミン、(ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレン)ジアミン、(2−ヒドロキシプロピルエチレン)ジアミン、(ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレン)ジアミン、ピペラジン等の脂肪族ポリアミン;
イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン等の脂環式ポリアミン;
フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン,3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ビス−(sec−ブチル)ジフェニルメタン等の芳香族ジアミン;
及びダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン、末端に一級又は二級アミノ基を有するデンドリマーなどを例示できる。
【0074】
さらには、ジアミノ化合物とエチレン性不飽和化合物のマイケル付加反応物も使用することができる。
【0075】
ジアミノ化合物としては、イソホロンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンは、マイケル付加反応の制御が容易であり、マイケル付加反応させて得られる化合物を容易に得ることができる。
【0076】
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0077】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、イコシル(メタ)アクリレート、ヘンイコシル(メタ)アクリレート、ドコシル(メタ)アクリレート等の、炭素数1〜22のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。極性の調節を目的とする場合には、好ましくは炭素数2〜12、更に好ましくは炭素数2〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
【0078】
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。後に記述する硬化剤との反応性を考慮すると、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートが好ましい。
【0079】
ジアミノ化合物と、エチレン性不飽和化合物とのマイケル付加反応では、ジアミノ化合物中のアミノ基の活性水素1モルと、エチレン性不飽和化合物中のエチレン性不飽和基1モルとが反応する。ジアミノ化合物中のアミノ基は、電子吸引性の基を持つ化合物のエチレン性不飽和基に容易にマイケル付加をするため、エチレン性不飽和化合物としては(メタ)アクリル系化合物が好ましく、特にアクリレート系化合物が、マイケル付加反応の効率の点から最も好ましい。
【0080】
ジアミノ化合物にエチレン性不飽和化合物をマイケル付加反応させた化合物の合成方法としては、マイケル付加反応に関する公知方法をそのまま利用できる。エチレン性不飽和化合物が(メタ)アクリル系化合物、特にアクリレート系化合物等である場合、必要に応じてアルコール等の触媒下において10〜100℃で反応が進行する。使用するエチレン性不飽和化合物の種類にもよるが、40〜80℃の反応温度が好ましい。
エチレン性不飽和化合物が電子吸引性基を持たない場合には金属触媒の存在で反応が可能になり、この場合、触媒存在下で加熱しながら60〜100℃で反応させると、適度な反応速度となり好ましい。
合成のための溶剤は使用してもしなくても良く、その種類は特に限定しないが、メチルエチルケトン、トルエン、アセトン、ベンゼン等の公知の溶剤を使用できる。溶剤を使用する場合の溶液濃度は好ましくは20重量%以上、更に好ましくは50重量%以上である。 反応時間は、使用するエチレン性不飽和化合物の種類により異なるが、概ね30分〜5時間で終了する。
【0081】
一級アミノ基を2個以上有する化合物に付加させるエチレン性不飽和化合物の比率については、マイケル付加反応させた化合物中に少なくとも2個の一級又は二級のアミノ基が残存するように、一級アミノ基を2個以上有する化合物が有する一級アミノ基1モルに対して、好ましくは0.1〜1.0モル、更に好ましくは0.2〜1.0モルの割合でエチレン性不飽和化合物中のエチレン性不飽和基を反応させることが好ましい。
【0082】
ウレタンウレア系共重合体(A2)は、イソシアネート化合物、ポリオール(a2)およびジアミノ化合物を共重合することで得られるが、更に必要に応じて、反応停止剤としてモノアミノ化合物を共重合させることができる。すなわち、共重合体(A2)を合成する際、分子量を制御したり、共重合体(A2)末端の未反応で残るイソシアネート基と反応して樹脂の反応活性を安定化させたりする目的で、反応停止剤を使用することができる。この場合の共重合体(A2)は、イソシアネート化合物とポリオールとジアミノ化合物とを反応させてなるウレタンプレポリマーに、反応停止剤とを反応させてなるものである。
【0083】
反応停止剤としては、例えば、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジイソノニルアミン等のジアルキルアミン類の他、
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール等の水酸基を有するモノアミンを用いることができる。
【0084】
上記の反応停止剤のなかでも、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールなどのように水酸基を有するモノアミン化合物を用いると、末端が水酸基である保存安定性に優れたウレタンウレア樹脂を得ることができる。更に、末端が水酸基であるウレタンウレア樹脂は、この水酸基を後述する硬化剤との反応点として使用することができることから好ましい。尚、水酸基を有するモノアミンの場合、アミノ基と水酸基との両方が、ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基と反応可能であるが、アミノ基の反応性の方が高く、優先的にイソシアネート基と反応する。
【0085】
・ウレタンウレア系共重合体(A2)の製造方法
次にウレタンウレア系共重合体(A2)の製造方法について説明する。ウレタンウレア系共重合体(A2)の合成方法としては、種々の方法が可能であるが以下の2つの方法に大別される。
[方法I]イソシアネート化合物、数平均分子量1000〜10000のポリオールおよび、ジアミノ化合物を全量仕込んで共重合する方法(ウレタン化反応およびウレア化反応を一括で行う方法)。
[方法II]原料の一部であるイソシアネート化合物と数平均分子量1000〜10000のポリオールを仕込み共重合することで、少なくとも1つのイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得たのち、得られたウレタンプレポリマーとジアミノ化合物と必要に応じて反応停止剤とをさらに共重合する方法(ウレタン化反応を行った後、得られたウレタンプレポリマーをウレア化する方法)。
ここで、反応を精密に制御する場合は、[方法II]がより好ましい。
【0086】
[方法I]におけるウレタン化反応およびウレア化反応の反応温度は、30〜120℃であることが好ましく、更に好ましくは40〜90℃である。
【0087】
[方法II]におけるウレタン化反応の反応温度は、50〜150℃であることが好ましく、更に好ましくは70〜120℃である。
【0088】
[方法II]におけるウレア化反応の反応温度は、30〜90℃であることが好ましく、更に好ましくは40〜70℃である。
【0089】
ウレタンウレア系共重合体(A2)の合成時には、公知の触媒を使用することができる。例えば三級アミン系化合物、有機金属系化合物等が挙げられる。
三級アミン系化合物としてはトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、ジアザビシクロウンデセン(別名:DBU)等が挙げられ、単独で、もしくは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0090】
有機金属系化合物としては、錫系化合物、及び非錫系化合物を挙げることができる。
錫系化合物としてはジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(別名:DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、ジオクチル錫ジラウリレート(別名:DOTDL)、2−エチルヘキサン酸錫等が挙げられる。
【0091】
非錫系化合物としては、例えばジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライドなどのチタン系、オレイン酸鉛、2−エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛系、2−エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネートなどの鉄系、安息香酸コバルト、2−エチルヘキサン酸コバルトなどのコバルト系、ナフテン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛系、ナフテン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
【0092】
上記触媒の中で、ジブチル錫ジラウレート(別名:DBTDL)、ジオクチル錫ジラウリレート(別名:DOTDL)、2−エチルヘキサン酸錫等が、反応性および衛生性の点で好ましい。
【0093】
上記三級アミン系化合物、有機金属系化合物等の触媒は、単独でも使用できるが、併用することもでき、特にポリオール成分としてポリエステルジオール類とポリエーテルジオール類を併用する場合においては、ジブチル錫ジラウレートと2−エチルヘキサン酸錫を併用することにより、安定にウレタンウレア系共重合体(A2)が得られるので好ましい。
【0094】
上記ウレタンウレア系共重合体(A2)の合成時には、公知の溶剤が好適に使用される。溶剤の使用は反応制御を容易にする役割を果たす。こうした目的で使用される溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アセトン、ベンゼン、ジオキサン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、ジグライム、ジメトルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジメチルホルミアミド等が挙げられる。ウレタンウレア系共重合体(A2)の溶解性、溶剤の沸点の点から特に、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン又はこれらの混合溶剤が好ましい。溶剤を使用した場合の反応濃度は、樹脂固形分が好ましくは50〜95重量%、更に好ましくは60〜90重量%であり、
【0095】
イソシアネート化合物は、ウレタンウレア系共重合体(A2)100質量%中、粘着層の凝集力を維持し耐久性を付与する観点から5質量%以上であることが好ましく、樹脂の柔軟性の低下を防止して十分な接着力を確保する観点から50質量%以下であることが好ましく、更に好ましくは10〜30質量%である。ここで、「ウレタンウレア系共重合体(A2)100質量%中」とは、「ウレタンウレア系共重合体(A2)の合成原料100質量%中」であり、ウレタンウレア系共重合体(A2)の合成に使用するイソシアネート化合物、ポリオール(a2−1)、ジアミノ化合物、及び必要に応じて使用する反応停止剤の合計100質量%中、という意味である(以下の記載においても同様の意味である。)。
【0096】
数平均分子量1000〜10000の重合性化合物(a2)であるポリオールの使用量は、ウレタンウレア系共重合体(A2)100質量%中、粘着層の凝集力を維持し耐久性を付与する観点から60〜90質量%であることが好ましい。含有量が60〜90質量%であると、共重合体の柔軟性の低下を防止して十分な接着力を確保することができ、耐熱性および屈曲性を高度に両立できるために好ましい。更に好ましくは75〜90質量%である。
【0097】
ジアミノ化合物の使用量は、ウレタンウレア系共重合体(A2)100質量%中、粘着層の凝集力を維持し耐久性を付与する観点から0.5〜20質量%であることが好ましい。含有量が0.5〜20質量%であると、樹脂の柔軟性の低下を防止して十分な接着力を確保することができ、耐熱性および屈曲性を高度に両立できるために好ましい。更に好ましくは1〜5質量%である。
【0098】
反応停止剤を使用する場合の使用量は、ウレタンウレア系共重合体(A2)100質量%中、共重合体の反応安定性を確保する観点から0.05質量%以上であることが好ましく、樹脂の質量平均分子量(Mw)を適切に制御して粘着層の耐久性を確保する観点から5質量%以下であることが好ましい。
【0099】
<硬化剤>
硬化剤は、本発明の粘着層を構成する共重合体(A)の水酸基と反応し、粘着層の凝集力が向上することに加え、耐熱性、および耐湿熱性を向上し、高温雰囲気下または高温高湿雰囲気下における浮きおよび剥がれを抑制することができる。
【0100】
硬化剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、または金属キレート等が挙げられる。
【0101】
イソシアネート化合物は、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネートである。イソシアネート化合物は、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等のイソシアネートモノマー、ならびにこれらのビュレット体、ヌレート体、およびアダクト体が好ましい。
【0102】
芳香族ポリイソシアネートは、例えば、1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等が挙げられる。
【0103】
脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HMDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0104】
芳香脂肪族ポリイソシアネートは、例えば、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0105】
脂環族ポリイソシアネートは、例えば、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI、イソホロンジイソシアネート)、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0106】
前記ビュレット体は、イソシアネートモノマーが自己縮合したビュレット結合を有する自己縮合物である。ビュレット体は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体が挙げられる。
【0107】
前記ヌレート体は、イソシアネートモノマーの3量体である。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの3量体、イソホロンジイソシアネートの3量体、トリレンジイソシアネートの3量体などが挙げられる。
【0108】
前記アダクト体は、イソシアネートモノマーと2官能以上の低分子活性水素含有化合物が反応した2官能以上のイソシアネート化合物である。アダクト体は、例えば、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとキシリレンジイソシアネートとを反応させた化合物、トリメチロールプロパンとイソホロンジイソシアネートとを反応させた化合物、1,6−ヘキサンジオールとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物等が挙げられる。
【0109】
イソシアネート化合物は、十分な架橋構造を形成する観点から、3官能のイソシアネート化合物が好ましい。イソシアネート化合物は、イソシアネートモノマーと3官能の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体、及びヌレート体がより好ましい。イソシアネート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、トリレンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体が好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、ヘキサメチレンジイソシアネートのヌレート体、トリレンジイソシアネートのヌレート体、イソホロンジイソシアネートのヌレート体がより好ましい。
【0110】
エポキシ化合物は、例えばグリセリンジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、N,N,N',N'−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1、3−ビス(N、N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N',N'−テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。
【0111】
アジリジン化合物は、例えばN,N’−ジフェニルメタン−4,4'−ビス(1−アジリジンカルボキサイト)、トリス−2,4,6−(1−アジリジニル)−1、3、5−トリアジン、4,4’−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等が挙げられる。
【0112】
カルボジイミド化合物は、カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミドが好ましい。前記高分子量ポリカルボジイミドの市販品は、日清紡績社のカルボジライトシリーズが好ましい。その中でもカルボジライトV−03、07、09は有機溶剤との相溶性に優れており好ましい。
【0113】
金属キレートは、例えば、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物が好ましい。金属キレートは、例えば、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムアルキルアセトアセテート・ジイソプロピレートが挙げられる。
【0114】
硬化剤は、単独または2種以上を併用できる。
硬化剤は、水酸基を有する共重合体(A)100質量部に対して0.01〜20質量部含むことが好ましく、1〜15質量部含むことがより好ましい。含有量が0.01質量部以上になると凝集力がより向上し、20質量部以下になると凝集力と柔軟性を両立しやすくなるために好ましい。
【0115】
<有機シラン化合物>
本発明の粘着層は、さらに有機シラン化合物を含有できる。
有機シラン化合物は、例えば、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシランなどのビニル基を有するアルコキシシラン化合物;
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリプロポキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物;
3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基を有するアルコキシシラン化合物;
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物;
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン化合物;
3−クロロプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−デシルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、1,3,5−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、分子内にアルコキシシリル基を有するシリコーンレジンなどが挙げられる。
【0116】
有機シラン化合物は、共重合体(A)100質量部に対して、0.01〜2質量部を使用することが好ましく、0.05〜1質量部がより好ましい。
【0117】
本発明の粘着層には、課題を解決できる範囲であれば、任意成分として各種樹脂、オイル、軟化剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤及び帯電防止剤等を含有できる。
【0118】
「剥離フィルム」
剥離フィルムとしては、特に制限されないが、透明プラスチック基材を好適に用いることができる。透明プラスチック基材の素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリシクロオレフィン等のプラスチック材料などが挙げられる。なお、プラスチック材料は単独で又は2 種以上組み合わせて使用することができる。
【0119】
剥離フィルムとしては、前述のような透明プラスチック基材のなかでも、耐熱性が優れた透明プラスチック基材、すなわち、高温、高温高湿などの苛酷な条件下において、変形が抑制または防止されている透明プラスチック基材を好適に用いることができる。透明プラスチック基材としては、特に、PETフィルム又はシートが好適である。
【0120】
透明プラスチック基材の厚さは、特に限定されず、例えば、10〜200μmが好ましく、25〜150μmがより好ましい。
【0121】
なお、剥離フィルムは単層および複層のいずれの形態を有していてもよい。また、透明基材表面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理、下塗り処理等の化学的処理などの適宜な表面処理が施されていてもよい。
【0122】
「粘着シートの製造方法」
本発明の粘着シートは、通常の粘着シートの製造方法に従って製造することができる。例えば、剥離フィルムの剥離処理面に、共重合体(A)と硬化剤の混合物(以下、単に「粘着剤組成物」と記述する場合がある。)を、乾燥後の厚さが所定の厚さとなるように直接塗工して粘着層を形成し、剥離フィルムを貼付する方法や、2枚の剥離フィルムの剥離処理面に、粘着剤組成物を乾燥後の厚さが所定の厚さとなるように塗工して、2つの粘着層をそれぞれ形成した後、各粘着剤層を貼付する方法等により作製することができる。
【0123】
粘着層の厚みとしては、特に制限されず、例えば、10〜500μmが好ましく、50〜200μmがより好ましい。粘着層の厚みが10〜500μmであると、十分な凝集力が得やすく、耐熱性、耐湿熱性および屈曲性を高度に両立できるために好ましい。
【0124】
なお、粘着剤組成物の塗工に際しては、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、またはスプレーコーターなどを用いることができる。
【0125】
前記粘着シートとしては、適宜の幅に裁断し、ロール状に巻回することにより、ロール状に巻回した粘着テープの形態を有していてもよい。
【0126】
《積層体》
本発明の積層体は、光透過性可撓性基材、粘着層、および偏光板を備え、前記粘着層は、本発明の粘着シートを用いて形成されてなる。
【0127】
本発明の積層体は、耐湿熱性、耐熱性および屈曲性に優れた粘着シートにより形成されるため、耐湿熱性、耐熱性および屈曲性に優れる。
【0128】
図2に、本発明の粘着シートの使用例である、積層体を部分的に示す概略断面図の例を示す。図2において3は光透過性可撓性基材(カバーパネル)、4は粘着層、5は偏光板である。
【0129】
図2で示される積層体では、光透過性可撓性基材(カバーパネル)が、本発明の粘着剤組成物からなる粘着層を介して、偏光板に貼付されている。このように、本発明の粘着シートは、前記粘着剤組成物から形成された透明粘着層が、光透過性可撓性基材(カバーパネル)および偏光板に貼付される形態で用いることができる。
【0130】
光透過性可撓性基材(カバーパネル)としては、特に制限されないが、透明プラスチック基材を好適に用いることができる。透明プラスチック基材の素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリシクロオレフィン等のプラスチック材料などが挙げられる。なお、プラスチック材料は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0131】
光透過性可撓性基材(カバーパネル)としては、前述のような透明プラスチック基材のなかでも、耐熱性が優れた透明プラスチック基材、すなわち、高温、高温高湿などの苛酷な条件下において、変形が抑制または防止されている透明プラスチック基材を好適に用いることができる。透明プラスチック基材としては、特に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリシクロオレフィンが好適である。
【0132】
光透過性可撓性基材(カバーパネル)の厚さは、特に限定されず、例えば、100〜2000μmが好ましく、200〜1000μmがより好ましい。
【0133】
《ディスプレイ》
ディスプレイは、本発明の積層体、および光学素子を備える。光学素子としては、特に限定されず、例えば、液晶素子、有機EL素子等が挙げられる。
【0134】
本発明のディスプレイは、耐湿熱性、耐熱性および屈曲性に優れた積層体を有するため、耐湿熱性、耐熱性および屈曲性に優れる。
【0135】
図3に、本発明の粘着シートの使用例である、ディスプレイを部分的に示す概略断面図の例を示す。図3において、3は光透過性可撓性基材(カバーパネル)、4は粘着層、5は偏光板、6は偏光板用粘着層、7は窒化ケイ素等のバリア層、8は有機EL層、9はポリイミド等の支持体、10は有機ELセルである。なお、ディスプレイの構成が図3に限定されることはない。
【0136】
図3で示されるディスプレイでは、光透過性可撓性基材(カバーパネル)が、本発明の粘着剤組成物からなる粘着層を介して、偏光板に貼付され、さらに偏光板用粘着層を介して有機ELセルに貼付されている。このように、本発明の粘着シートは、前記粘着剤組成物から形成された透明粘着層が、光透過性可撓性基材(カバーパネル)および偏光板に貼付され、さらに偏光板用粘着層を介して積層体が有機ELに貼付される形態で用いることができる。
偏光板用粘着層は、従来公知の粘着剤組成物により形成することができる。
【0137】
ディスプレイの使用用途としては、特に制限はないが、有機ELテレビをはじめ、有機ELスマートフォン、有機ELタブレット、有機ELスマートウォッチ等が挙げられる。
【実施例】
【0138】
次に、実施例を示して更に詳細を説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。例中、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示し、「RH」は相対湿度を意味する。また、表中の配合量は、質量部である。
なお、重合性化合物および共重合体の重量平均分子量、および数平均分子量の測定方法は、下記に示す通りである。
【0139】
<重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の測定>
重量平均分子量(Mw)の測定は、島津製作所社製GPC「LC−GPCシステム」を用いた。重量平均分子量(Mw)の決定は、分子量既知のポリスチレンを標準物質とした換算で行った。
装置名:島津製作所社製、LC−GPCシステム「Prominence」
カラム:東ソー社製GMHXL 4本、東ソー社製HXL-H 1本を連結した。
移動相溶媒 : テトラヒドロフラン
流量 : 1.0ml/分
カラム温度 : 40℃
【0140】
<アクリル系共重合体の製造例>
(アクリル系共重合体(A1−1))
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下装置、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と記述する。)に、マクロモノマーAB−6(東亜合成社製、片末端メタクリロイル基アクリル酸ブチル)(AB−6)10部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)1部、n−ブチルアクリレート(BA)89部、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(以下、単に「AIBN」と記述する。)0.2部を仕込み、この反応容器内の雰囲気を窒素ガスで置換した。その後、窒素雰囲気下で撹拌しながら、50℃まで加熱し反応を開始した。その後、反応溶液を50℃で4時間反応させた。反応終了後、冷却し、酢酸エチルで希釈して不揮発分30%、粘度3000mPa・sの共重合体(A1−1)溶液を得た。得られた共重合体(A1−1)の重量平均分子量は140万であった。
【0141】
(アクリル系共重合体(A1−2〜11)、(AC−1〜4))
表1記載の組成および配合量(質量部)に変更した以外は、アクリル系共重合体(A1−1)の製造と同様の方法で共重合体(A1−2〜12)および共重合体(AC−1〜4)を合成した。得られた共重合体(A1)、および共重合体(AC)の重量平均分子量(Mw)を表1に示す。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
【0142】
【表1】
【0143】
表中の略号は以下の通りである。
AB−6:分子末端がメタクリロイル基であって、ポリマー鎖がポリブチルアクリレートのマクロモノマー(Mn=6000)
AA−6:分子末端がメタクリロイル基であって、ポリマー鎖がポリメチルメタクリレートであるマクロモノマー(Mn=6000)
APEG23:メトキシポリエチレングリコール#1000アクリレート(式(2)において、Rが水素原子、nが23のモノマー)(Mn=1099)
MPEG23:メトキシポリエチレングリコール#1000メタクリレート(式(2)において、Rがメチル基、nが23のモノマー)(Mn=1113)
HEA:2‐ヒドロキシエチルアクリレート(Mn=116)
HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート(Mn=144)
APEG14:メトキシポリエチレングリコール#1000アクリレート(式(2)において、Rが水素原子、nが14のモノマー)(Mn=672)
BA:n−ブチルアクリレート(Mn=128)
EHA:2−エチルヘキシルアクリレート(Mn=184)
【0144】
<ウレタンウレア系共重合体の製造例>
(ジアミノ化合物の合成)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下ロートを備えた4口フラスコにイソホロンジアミン(IPDA)39.9部、トルエン39.9部を仕込みブチルアクリレート(BA)60.1部を室温で滴下した。滴下終了後、80℃で2時間反応させた後、トルエン60.1部を加えた。更に酢酸エチルを加え固形分を25%に調整し、ジアミノ化合物(b−1)溶液を得た。
【0145】
[方法I]
イソシアネート化合物、ポリオールおよびジアミノ化合物を全量仕込んで共重合する方法(ウレタン化反応およびウレア化反応を一括で行う方法)
(ウレタンウレア系共重合体(A2−1))
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコにイソホロンジイソシアネート(IPDI、商品名:IPDI EVONIK製)(IPDI)10.6部、クラレポリオールP−2010(PE−2000、脂肪族ポリエステルポリオール、数平均分子量(Mn)=2000 株式会社クラレ製)(PE2−2000)84.2部、イソホロンジアミン(IPDA、商品名:VESTAMIN EVONIK製)(IPDA)5.2部、トルエン100部を仕込み、100℃まで徐々に昇温し4時間反応を行い、ウレタンウレア共重合体(A2−1)溶液を得た。得られた共重合体の重量平均分子量は8万であった。
【0146】
(ウレタンウレア系共重合体(A2−2〜6、AC−5、6))
表2記載の組成および配合量(質量部)に変更した以外は、ウレタンウレア系共重合体(A2−1)の製造と同様の方法で共重合体(A2−2〜6)および共重合体(AC−5、6)を合成した。得られた共重合体(A2)、および共重合体(AC)の重量平均分子量(Mw)を表2に示す。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
【0147】
[方法II]
原料の一部であるイソシアネート化合物とポリオールを仕込み共重合することで、少なくとも1つのイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを得たのち、得られたウレタンプレポリマーとジアミノ化合物と必要に応じて反応停止剤とをさらに共重合する方法(ウレタン化反応を行った後、得られたウレタンプレポリマーをウレア化する方法)。
【0148】
(ウレタンウレア系共重合体(A2−7))
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計を備えた4口フラスコにイソホロンジイソシアネート(IPDI、商品名:IPDI EVONIK製)(IPDI)31.1部、(PE2−2000)61.2部、トルエン100部を仕込み、100℃まで徐々に昇温し4時間反応を行い、ウレタンプレポリマー溶液を得た。次に得られた溶液を40℃まで冷却し、イソホロンジアミン(IPDA、商品名:VESTAMIN EVONIK製)(IPDA)7.2部、トルエン50部を30分かけて均一に滴下し、その後1時間反応させた。さらに、アミノメチロールプロパン(AMP)0.5部を反応させることでウレタンウレア共重合体(A2−7)溶液を得た。得られた共重合体の重量平均分子量は8万であった。
【0149】
(ウレタンウレア系共重合体(A2−8〜12、AC−7〜10))
表3記載の組成および配合量(質量部)に変更した以外は、ウレタンウレア系共重合体(A2−7)の製造と同様の方法で共重合体(A2−8〜12)および共重合体(AC−7〜10)を合成した。得られた共重合体(A2)、および共重合体(AC)の重量平均分子量(Mw)を表3に示す。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
なお、ウレタンウレア系共重合体(AC−7、AC−8)は水酸基を有さない共重合体である。
【0150】
【表2】
【0151】
【表3】
【0152】
表中の略号は以下の通りである。
IPDI:イソホロンジイソシアネート(Mn=222)
HMDI:ヘキサメチレンジイソシアネート(Mn=168)
PP3−5000:プライムポール FF−3500(3官能ポリプロピレングリコール,Mn=5000 三洋化成工業製)
PE2−1000:クラレポリオール P−1010(2官能脂肪族ポリエステルポリオール,Mn=1000 株式会社クラレ製)
PE2−2000:クラレポリオール P−2010(2官能脂肪族ポリエステルポリオール,Mn=2000 株式会社クラレ製)
PP2−2000:サンニックス PP−2000(2官能ポリプロピレングリコール,Mn=1000 三洋化成工業製)
PP2−500:サンニックス PP−500(2官能ポリプロピレングリコール,Mn=500 三洋化成工業製)
IPDA:イソホロンジアミン(Mn=170)
DBA:ジブチルアミン(Mn=73)
AMP:アミノメチロールプロパン(Mn=89)
PA:プロピルアルコール(Mn=60)
【0153】
(実施例1)
<粘着剤組成物の調製>
アクリル系共重合体(A1−1)不揮発分100部に対して、硬化剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンのアダクト体(I−1)2.5部、有機シラン化合物として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(S−1)0.1部、を不揮発分が20%となるように酢酸エチルを配合し撹拌して粘着剤組成物を得た。
【0154】
<粘着シートの製造>
得られた粘着剤組成物を、厚み50μmの剥離フィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)、「E7004」、シリコーン系剥離層、東洋紡社製)上に、乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥することで粘着層を形成した。次いで、この粘着層に、厚み38μmの剥離フィルム(ポリエチレンテレフタレート、「SP−PET3811」、シリコーン系剥離層、リンテック社製)の片面を貼り合せ、「剥離性シート/粘着層/剥離性シート」の積層体を作製した。次いで、得られた積層体を温度25℃相対湿度55%RHの条件で1週間熟成させて、粘着シートを得た。
【0155】
(実施例2〜13、比較例1〜4)
表4、5に示す通り、共重合体、硬化剤、およびシランカップリング剤の種類と配合量
(質量部)を変更した以外は実施例1と同様にして、粘着シートを得た。
ただし、実施例6〜9、14〜17、20〜23は参考例である。
【0156】
(比較例5、6)
比較例5、6として、下記特許文献の実施例に記載の粘着剤を用い、本明細書の実施例1と同様の粘着シート作製方法と同様にして、粘着シートをそれぞれ得た。
比較例5:特開2017−65217号公報に記載されている実施例1の粘着剤
比較例6:特開2018−28974号公報に記載されている実施例1の粘着剤
【0157】
(実施例14)
<粘着剤組成物の調製>
ウレタンウレア系共重合体(A2−1)不揮発分100部に対して、硬化剤としてトリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンのアダクト体(I−1)2.5部、有機シラン化合物として3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(S−1)0.1部、を不揮発分が20%となるように酢酸エチルを配合し撹拌して粘着剤組成物を得た。
【0158】
<粘着シートの製造>
得られた粘着剤組成物を、厚み50μmの剥離フィルム(ポリエチレンテレフタレート(PET)、「E7004」、シリコーン系剥離層、東洋紡社製)上に、乾燥後の厚さが50μmになるように塗工し、110℃で3分間乾燥することで粘着層を形成した。次いで、この粘着層に、厚み38μmの剥離フィルム(ポリエチレンテレフタレート、「SP−PET3811」、シリコーン系剥離層、リンテック社製)の片面を貼り合せ、「剥離性シート/粘着層/剥離性シート」の積層体を作製した。次いで、得られた積層体を温度25℃相対湿度55%RHの条件で1週間熟成させて、粘着シートを得た。
【0159】
(実施例15〜26、比較例7〜12)
表6、7に示す通り、共重合体、硬化剤、およびシランカップリング剤の種類と配合量(質量部)を変更した以外は実施例14と同様にして、粘着シートを得た。
【0160】
【表4】
【0161】
【表5】
【0162】
【表6】
【0163】
【表7】
【0164】
≪粘着シートの物性測定および評価≫
得られた粘着シートを用いて、以下の物性測定と、耐熱および耐湿熱後のHAZE変化率、透明性、耐熱性、耐湿熱性、耐屈曲性とを評価した。結果を表8、9に示す。
【0165】
なお、試験用粘着シートは、得られた粘着シートの一方の剥離フィルムを剥がし、露出した粘着層を25℃、相対湿度50%RH雰囲気下で厚さ100μmのPETフィルム(東洋紡績社製、A−4300)にラミネーターを用いて貼着し、PETフィルム/粘着層/剥離フィルムからなる試験用粘着シートを作製した。
【0166】
<HAZE変化率(温度25℃、相対湿度50%RH)>
実施例および比較例により得られた粘着シートの粘着層における、温度25℃、相対湿度50%RH雰囲気下での屈曲試験における30万回屈曲前後のHAZE変化率は、下記の方法で求めた。
得られた粘着シートを幅112mm×長さ200mm(9インチ型ディスプレイに相当)のサイズに切り出して剥離フィルム/粘着層/剥離フィルムからなる粘着シート1を作製した。
次いで粘着シート1を、常態試験測定として25℃、相対湿度50%RH雰囲気にて、折り曲げ試験機(ユアサシステム機器社製)にて折り曲げた時の内径(直径)が6mmになるように条件設定し、折り曲げと180°開放とを1サイクルとして30万サイクル繰り返し行った。次いで、粘着シートの剥離フィルムを剥離し、粘着層のHAZEを日本電色工業社製Turbidimeter NDH5000Wを用いて測定した。次いで得られたHAZE値を用い、HAZE変化率を算出した。
HAZE変化率(温度25℃、相対湿度50%RH)の値は、表1〜3に示す。
例えば、実施例1の粘着シートのHAZE変化率は、常態試験測定で5%であった。
また、比較例11、12のHAZE変化率は、それぞれ、25%、および26%であった。

(式1)
HAZE変化率(ΔHAZE):
ΔHAZE=[(HAZE(E)−HAZE(S))/HAZE(S)]×100
ここで、
HAZE(S)は、屈曲試験前の粘着シート1の粘着層のHAZEを表す。
HAZE(E)は、屈曲試験後の粘着シート1の粘着層のHAZEを表す。
【0167】
<HAZE変化率(耐熱:85℃、耐湿熱:温度60℃、相対湿度95%RH)>
実施例および比較例により得られた粘着シートを幅112mm×長さ200mm(9インチ型ディスプレイに相当)のサイズに切り出して剥離フィルム/粘着層/剥離フィルムからなる粘着シート1を作製した。
次いで粘着シート1を、耐熱試験測定として85℃雰囲気下にて、また、耐湿熱試験測定として60℃、相対湿度95%RH雰囲気において、折り曲げ試験機(ユアサシステム機器社製)にて折り曲げた時の内径(直径)が6mmになるように条件設定し、折り曲げと180°開放とを1サイクルとして30万サイクル繰り返し行った。次いで、粘着シートの剥離フィルムを剥離し、粘着層のHAZEを日本電色工業社製Turbidimeter NDH5000Wを用いて測定した。次いで得られたHAZE値を用い、HAZE変化率を算出した。

(式1)
HAZE変化率(ΔHAZE):
ΔHAZE=[(HAZE(E)−HAZE(S))/HAZE(S)]×100
ここで、
HAZE(S)は、屈曲試験前の粘着シート1の粘着層のHAZEを表す。
HAZE(E)は、屈曲試験後の粘着シート1の粘着層のHAZEを表す。
【0168】
<透明性;透明性[1]>
試験用粘着シートを幅112mm×長さ200mm(9インチ型ディスプレイに相当)のサイズに切り出してPETフィルム/粘着層/剥離フィルムからなる試験用粘着シート1を作製した。
この試験用粘着シート1から剥離フィルムを剥がし、露出した粘着層を25℃、相対湿度50%RH雰囲気で無アルカリガラス板(EN−A1:旭硝子社製)にラミネーターを用いて貼着し、HAZEを測定した。なお、HAZEは日本電色工業社製Turbidimeter NDH5000Wを用いて測定した。評価基準は以下の通りである。

○:HAZEが1.0未満(良好)。
×:HAZEが1.0以上(不良)。
【0169】
<湿熱経時後透明性;透明性[2]>
試験用粘着シートを幅112mm×長さ200mm(9インチ型ディスプレイに相当)のサイズに切り出してPETフィルム/粘着層/剥離フィルムからなる試験用粘着シート2を作製した。
この試験用粘着シート2から剥離フィルムを剥がし、露出した粘着層を25℃、相対湿度50%RH雰囲気で無アルカリガラス板(EN−A1:旭硝子社製)にラミネーターを用いて貼着し、PETフィルム/粘着層/ガラスからなる試験用積層体を得た。次いで試験用積層体を85℃、相対湿度85%RH雰囲気で1000時間放置し、25℃、相対湿度50%RH雰囲気にて冷却した後、HAZEを測定した。なお、HAZEは日本電色工業社製Turbidimeter NDH5000Wを用いて測定した。評価基準は以下の通りである。
本試験条件は、通常の耐久試験に求められる、温度60℃、相対湿度95%RHよりもより過酷な試験条件である。

○:HAZEが2.0未満(良好)。
×:HAZEが2.0以上(不良)。
【0170】
<耐熱性・耐湿熱性(無アルカリガラス[X])>
試験用粘着シートを幅112mm×長さ200mm(9インチ型ディスプレイに相当)のサイズに切り出してPETフィルム/粘着層/剥離フィルムからなる試験用粘着シート3を作製した。
この試験用粘着シート3から剥離フィルムを剥がし、露出した粘着層を25℃、相対湿度50%RH雰囲気で無アルカリガラス板(EN−A1:旭硝子社製)にラミネーターを用いて貼着し、PETフィルム/粘着層/ガラスからなる試験用積層体を得た。次いで、耐熱性試験として105℃の条件下に500時間放置し、25℃、相対湿度50%RH雰囲気にて冷却した後、気泡の発生および試験用積層体の浮きや剥がれを以下の条件で目視評価した。又、耐湿熱性の評価として、上記試験用積層体を60℃、相対湿度95%RH雰囲気で500時間放置し、25℃、相対湿度50%RH雰囲気にて冷却した後、気泡の発生および粘着シートの浮きや剥がれを以下の条件で目視評価した。耐熱性、耐湿熱性について、下記の3段階の評価基準に基づいて評価を行った。

◎:気泡の発生、浮き・ハガレが全く認められず、実用上全く問題がない。
○:気泡の発生、浮き・ハガレがわずかに認められるが、実用上問題がない。
×:気泡の発生、浮き・ハガレが顕著に認められ、実用不可。
【0171】
<耐熱性・耐湿熱性(偏光板[Y])>
別途作製した試験用粘着シート3の被着体を無アルカリガラス板から(層構成:トリアセチルセルロースフィルム/ポリビニルアルコールフィルム/ ポリメチルメタクリレートフィルム)に変更した以外は、上記同様に行い耐熱性試験および耐湿熱性試験を行った。評価基準も上記同様である。
本試験条件は、無アルカリガラス[X]よりもより過酷な試験条件である。
【0172】
<耐屈曲性:耐屈曲性[1]、[2]、[3]>
試験用粘着シートを幅112mm×長さ200mm(9インチ型ディスプレイに相当)のサイズに切り出してPETフィルム/粘着層/剥離フィルムからなる試験用粘着シート5を作製した。
この試験用粘着シート5から剥離フィルムを剥がし、露出した粘着層を25℃、相対湿度50%RH雰囲気で(層構成:トリアセチルセルロースフィルム/ポリビニルアルコールフィルム/ ポリメチルメタクリレートフィルム)にラミネーターを用いて貼着し、PETフィルム/粘着層/偏光板からなる試験用積層体を得た。次いで試験用積層体を、常態試験として25℃、相対湿度50%RH雰囲気にて耐屈曲性[1]、耐熱試験として85℃雰囲気下にて耐屈曲性[2]、また、耐湿熱試験として60℃、相対湿度95%RH雰囲気下にて耐屈曲性[3]、それぞれ折り曲げ試験機(ユアサシステム機器社製)にて折り曲げた時の内径(直径)が6mmになるように条件設定し、折り曲げと180°開放とを1サイクルとして30万サイクル繰り返し行った。屈曲性は、試験後の外観を下記観点で評価した。

外観:試験用積層体の気泡の有無および粘着層の浮きや剥がれの有無を以下の条件で目視評価した。
◎:気泡の発生、浮き・ハガレが全く認められず、実用上全く問題がない。
○:気泡の発生、浮き・ハガレがわずかに認められるが、実用上問題がない。
×:気泡の発生、浮き・ハガレが顕著に認められ、実用上問題がある。
【0173】
【表8】
【0174】
【表9】
【0175】
透明性[1];25℃、相対湿度50%RH雰囲気
透明性[2];85℃、相対湿度85%RH雰囲気、1000時間
耐屈曲性[1];25℃、相対湿度50%RH雰囲気
耐屈曲性[2];85℃雰囲気
耐屈曲性[3];60℃、相対湿度95%RH雰囲気
[X];無アルカリガラス
[Y];偏光板
【0176】
表8、9の結果から実施例1〜26の粘着シートは、透明性、耐熱性、耐湿熱性、および屈曲性のすべてが良好であることが確認できた。これにより、本発明の粘着シートを使用した積層体および、ディスプレイは、透明性、耐熱性、耐湿熱性、および屈曲性に優れている。さらには、本発明のディスプレイは、視認性、コントラストも優れていた。
一方、比較例1〜12の粘着シートは、前記特性の全てを満たすことはできなかった。
【符号の説明】
【0177】
1 粘着層
2 剥離フィルム
3 光透過性可撓性基材(カバーパネル)
4 粘着層
5 偏光板
6 偏光板用粘着層
7 バリア層
8 有機EL層
9 支持体
10 有機ELセル
図1
図2
図3