(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部(3)は、前記空気調和機(1)の機器状態としてドレンパン(16)、フィルタ、および室内熱交換器(13)の少なくとも1つの汚れ量を取得し、前記汚れ量に基づいて前記汚れ抑制運転の要否を判定する
請求項3に記載の空気調和機。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<空気調和機>
以下、本実施形態に係る空気調和機1について説明する。
空気調和機1は、少なくとも冷房運転を行う。好ましくは、空気調和機1は、冷房運転および暖房運転を行う。空気調和機1は、制御部2を備える。具体的には、空気調和機1は、冷媒回路Cを含む。冷媒回路Cは、室内ユニット11の室内熱交換器13と、室外ユニット21の室外熱交換器22と、膨張弁23と、駆動部24としての圧縮機とを備える。制御部2は、膨張弁23および駆動部24を制御する。制御部2は、冷房運転において、空気の温度を目標温度になるように、駆動部24を制御する。目標温度は、空気調和機1を利用する利用者によって設定される室内目標温度である。
【0013】
制御部2は、さらに、汚れ抑制運転を実行する。汚れ抑制運転は、室内ユニット11の汚れを抑制するための運転である。汚れ抑制運転は、冷房運転の一種である。本実施形態では、汚れ抑制運転は、室内ユニット11の室内熱交換器13およびドレンパン16の少なくとも一方の汚れを抑制することを目的として、実行される。
【0014】
制御部2は、汚れ抑制運転において、室内ユニット11の室内熱交換器13に結露させるように、駆動部24を制御する。室内熱交換器13の結露によって、室内熱交換器13に付着した汚れが水とともに流れ落ちる。また、室内熱交換器13の結露によってドレンパン16に溜まる水は、ドレンポンプ17による排水によってドレンパン16から流れ出すため、ドレンパン16の汚れが抑制される。
【0015】
具体的には、制御部2は、判定部3と、設定部4とを備える。制御部2は、判定部3の要否判定結果に基づいて、設定部4によって設定された結露運転条件に従って空気調和機1の汚れ抑制運転を実行する。
【0016】
設定部4は、結露運転条件を設定する。結露運転条件は、空気調和機1の室内熱交換器13表面に結露水を発生させるための運転条件である。具体的には、結露運転条件は、室内熱交換器13の表面温度を室内空気の露点温度以下に低下させるような運転条件である。結露運転条件は、例えば、冷媒蒸発温度の目標温度を含む。デフロストが実行される環境では、結露運転条件としての冷媒蒸発温度の目標温度は、デフロスト時の冷媒蒸発温度よりも低い温度に設定される。このような冷媒蒸発温度の目標温度を早期に達成させるため、室外ユニット21のファン14の回転速度が調整される。結露運転条件は、ファン14の回転速度を含んでもよい。設定部4は、判定部3によって汚れ抑制運転が必要であると判定されるとき、上述のような結露運転条件を設定する。
【0017】
判定部3は、非冷房運転時期であるか否かに基づいて、空気調和機1の汚れ抑制運転の要否を判定する。非冷房運転時期は、冷房運転が行われない時期である。冷房運転が行われるときは、結露水があるため空気調和機1は汚れ難い。冷房運転が行われないときは、結露水が少ないため空気調和機1の汚れが進行し易い。判定部3は、非冷房運転時期であると判定するとき、空気調和機1の汚れ抑制運転が必要であると判定する。判定部3は、非冷房運転時期でないと判定するとき、空気調和機1の汚れ抑制運転が不要であると判定する。
【0018】
判定部3は、運転情報および環境情報の少なくとも一方に基づいて非冷房運転時期であるか否かを判定する。運転情報は、冷房運転および暖房運転のいずれの運転が実行されているかを示す情報である。環境情報は、空気調和機1が置かれている周囲の環境であって、特に、温度に関する環境情報である。
【0019】
具体的には、判定部3は、次の(a)〜(e)の少なくとも1つの条件に基づいて、非冷房運転時期であるか否かを判定する。(a)〜(e)の条件は、非冷房運転時期の成立条件である。
【0020】
(a)冷房運転が、所定期間にわたって実施されないこと。または、利用者が操作するリモコンにおいて冷房運転のスイッチが所定期間にわたって押されていないこと。所定期間は、たとえば、1週間である。冷房運転が1週間にわたって実行されていない場合、冷房運転が行われていない時期であると推定される。判定部3は、定期的に制御部2から冷房運転情報またはリモコンからの指令を取得することによって、(a)の条件が成立するか否かを判定する。
【0021】
(b)暖房運転から所定時間にわたって実施されていること。所定時間は、たとえば、1時間である。所定期間は、例えば、1日である。暖房運転が1時間以上にわたって実行されていると、冷房運転が行われていない時期であると推定される。または、利用者が操作するリモコンにおいて暖房運転のスイッチが所定期間において少なくとも1回、押されていること。暖房運転が1日において1回実行されていると、冷房運転が行われていない時期であると推定される。判定部3は、定期的に制御部2から暖房運転情報またはリモコンからの指令を取得することによって、(b)の条件が成立するか否かを判定する。
【0022】
(c)年月日が非冷房運転期間に該当すること。非冷房運転期間は、予め設定される。非冷房運転期間は、例えば、11月〜4月と設定される。判定部3は、非冷房運転期間が定義されたカレンダー情報を有し、年月日が非冷房運転期間に該当するか否かによって、(c)の条件が成立するか否かを判定する。
【0023】
(d)室内目標温度が、冬季の設定温度範囲内にあること。室内目標温度が、冬季の設定温度範囲内にある場合、冷房運転が行われていない時期であると推定される。判定部3は、定期的にリモコンから設定温度範囲に関する情報を取得することによって、(d)の条件が成立するか否かを判定する。
【0024】
(e)一日の平均室外温度が所定温度以下にあること。所定温度は、例えば、12度である。一日の平均室外温度が所定温度以下であるとき、冷房運転が行われていない時期であると推定される。判定部3は、室外温度を取得することによって、(e)の条件が成立するか否かを判定する。
【0025】
好ましくは、判定部3は、空気調和機1の機器状態を判定する。判定部3は、機器状態の判定結果に基づいて汚れ抑制運転の要否を判定する。空気調和機1の機器状態とは、汚れの状態を示す。制御部2は、空気調和機1の機器の汚れ量が、判定値を超えるとき、汚れ抑制運転が必要であると判定する。制御部2は、空気調和機1の機器の汚れ量が、判定値以下であるとき、汚れ抑制運転が不要であると判定する。
【0026】
例えば、制御部2は、空気調和機1の機器状態としてドレンパン16、フィルタ、および室内熱交換器13の少なくとも1つの汚れ量を取得する。制御部2は、汚れ量に基づいて汚れ抑制運転の要否を判定する。例えば、汚れ量は、後述の汚れ検出装置28によって検出される。汚れ量の一例は、後述の汚れ検出装置28によって算出される「汚れの進行度」である。一例では、制御部2は、汚れ量を、汚れ検出装置28の計算部32から取得する。後述のように、計算部32がネットワークN上に設けられている場合、制御部2は、ネットワークNを介して計算部32から汚れに関する情報(例えば、汚れの量)を取得する。
【0027】
好ましくは、制御部2は、室内ユニット11用の汚れ抑制運転が必要であると判定した場合、汚れ抑制運転により室内の快適性を損なわない冷房運転許容条件で汚れ抑制運転を実行する。
【0028】
汚れ抑制運転は、非冷房運転時期に行われるが、汚れ抑制運転が実行されると、室内側では冷房運転になり室内の温度が下がる。室内に人がいる場合に汚れ抑制運転が実行されると、室内の快適性が低下する。このことを抑制するため、制御部2は、上述のように、冷房運転許容条件が成立するときに汚れ抑制運転を実行する。冷房運転許容条件は、例えば、室内ユニット11が設置されている部屋に人が居ないこと、室内ユニット11が設置されている部屋に人が居る時間帯でないこと、および、室内温度が目標温度よりも大きく乖離して高くなっていること、の少なくとも1つである。
【0029】
<汚れ検出装置>
以下に、汚れ検出装置28の一例を説明する。汚れ検出装置28は、対象物29の汚れを検出する。本実施形態における汚れは、付着汚れ、および水の濁りの少なくとも1つを含む。汚れの検出では、付着汚れを検出する場合と、濁りを検出する場合と、付着汚れと濁りとを区別せずに検出する場合とがある。
【0030】
汚れ検出の対象物29の好適な例は、水を貯留する容器、および、水が付着し易い装置である。例えば、汚れ検出の対象物29は、空気調和機1の室内ユニット11のドレンパン16、室内ユニット11の室内熱交換器13、空気調和機1のフィルタである。本実施形態では、汚れ検出装置28は、空気調和機1の室内ユニット11のドレンパン16の汚れを検出する。本実施形態では、対象物29はドレンパン16である。
【0031】
汚れ検出装置28は、制御部30を備える。制御部30は、対象物29の撮影画像40を取得する。制御部30は、対象物29の撮影画像40の色成分に基づいて、汚れの進行度を算出する。
【0032】
制御部30は、対象物29の撮影画像40を取得する取得部31と、対象物29の撮影画像40の色成分に基づいて汚れの進行度を算出する計算部32とを含む。取得部31は、カメラ36に接続される。取得部31と計算部32とは、ケースに収容されて1つの装置としてパッケージングされてもよいし、次に説明するように、取得部31と計算部32とは、ネットワークNに接続されて、それぞれの設置場所が分散されてもよい。本実施形態に係る制御部30の構成要素は、ネットワークNに分散される。
【0033】
取得部31は、空気調和機1自体に、または、空気調和機1の周辺に設けられる。
取得部31は、カメラ36から送られる撮影画像40を取得し、撮影画像40を記憶する。取得部31は、対象物29または対象物29を含む装置の識別情報を保持する。本実施形態では、取得部31は、空気調和機1の識別情報を保持する。好ましくは、取得部31は、対象物29または対象物29を含む装置の位置情報を保持する。位置情報は、対象物29の場所(緯度および経度、または住所)を含む。本実施形態では、取得部31は、ドレンパン16を備える空気調和機1の位置情報を保持する。さらに好ましくは、取得部31は、対象物29を含む装置の用途情報を保持する。用途情報は、対象物29が設置される部屋の用途の情報であって、例えば、店舗の種別を含む。取得部31は、入力操作によって識別情報、位置情報、および用途情報を取得する。取得部31は、通信部33に接続される。通信部33は、制御部30の構成要素とされてもよい。
【0034】
通信部33は、取得部31と計算部32との間の通信を制御する。通信部33は、内部指令および外部指令に基づいて、取得部31に保持されている撮影画像40を計算部32に出力する。好ましくは、通信部33は、内部指令および外部指令に基づいて、取得部31に保持されている識別情報、位置情報および用途情報の少なくとも1つを計算部32に出力する。内部指令は、予め設定された時刻に形成される指令である。例えば、内部指令は、通信部33の内部回路によって、所定条件(例えば、無線において受信感度が所定値よりも高い)が満たされるときに形成されたり、定期的に形成されたりする。外部指令は、クラウドサーバ35の計算部32からの要求に基づく指令である。通信部33と取得部31とは1つのケースに収容されてもよい。
【0035】
計算部32は、取得部31から情報が得られるところであれば、設置場所は制限されない。例えば、計算部32は、ネットワークNに接続されるクラウドサーバ35内に設けられる。
【0036】
図1に示されるように、汚れ検出装置28は、空気調和システムSの構成要素とされてもよい。例えば、空気調和システムSは、汚れ検出装置28と、空気調和機1とを含む。空気調和機1は、汚れ検出装置28の制御部30の通信部33を介して、または、通信部33を介さずに直接に、ネットワークNに接続される。
【0037】
図2および
図3を参照して、空気調和機1について説明する。
図2は、空気調和機1の室内ユニット11の上壁を外して見た、室内ユニット11の内部構造の平面図である。
図3は、空気調和機1の室内ユニット11の側壁を外して見た、室内ユニット11の内部構造の側面図である。
【0038】
汚れ検査の対象となる空気調和機1の機種は、限定されない。例えば、天井埋込み型の空気調和機1が、汚れ検査の対象となる。天井埋込み型の空気調和機1の室内ユニット11は、内部検査に手間を要する。このため、天井埋込み型の空気調和機1の室内ユニット11に対するカメラ監視は、メンテナンス作業効率の改善に寄与する。そこで、本実施形態では、天井埋込み型であって、天井裏のダクトに接続される空気調和機1の室内ユニット11について説明する。室内ユニット11は、冷媒配管を介して室外ユニット21に接続される。室内ユニット11は、天井裏に設置される。
【0039】
図2および
図3に示されるように、本実施形態の室内ユニット11では、上述の制御部2と、室内熱交換器13とは、箱型のケース18に収容される。ケース18は、さらに、ファン14と、ファン14を回転させるファンモータ15と、ドレンパン16と、ドレンパン16内の水を排出するドレンポンプ17とを収容する。ドレンパン16は、室内熱交換器13の下に配置される。ケース18には、吸込口18aと吹出口18bとが設けられる。ドレンパン16の壁の色は、汚れが目立つ色であることが好ましい。ドレンパン16の壁の色は、白または白に近い色であることが好ましい。
【0040】
ケース18には、ケース18内を点検するための点検蓋18cが設けられる。点検蓋18cは、ドレンパン16およびドレンポンプ17の近くに設けられる。カメラ36は、点検蓋18cの内側に取り付けられる。カメラ36は、少なくともドレンパン16の底の一部が撮影されるように、点検蓋18cに取り付けられる。
【0041】
カメラ36は、撮影部37と、撮影制御部38とを備える(
図1参照)。撮影部37は、撮影制御部38によって制御されるタイミングでドレンパン16の一部を撮影し、撮影画像40を形成する。
【0042】
一例では、撮影部37は、静水面状態の条件でドレンパン16を撮影する。撮影制御部38は、静水面状態の条件が成立するか否かの判定を行う。静水面状態とは、ドレンパン16内の水面が動かない状態を示す。撮影制御部38は、静水面状態であるか否かについて、ドレンポンプ17の動作、ファン14の回転、および、連続撮影された複数の撮影画像40の比較によって得られる撮影画像40の変化のうち、少なくとも1つによって判定する。撮影制御部38は、静水面状態の条件が成立するとき、撮影部37に撮影の指示を出す。例えば、撮影制御部38は、付着汚れを検出する場合に、静水面状態の条件判定を行う。
【0043】
他の例では、撮影部37は、流水状態の条件でドレンパン16を撮影する。撮影制御部38は、流水状態の条件が成立するか否かの判定を行う。流水状態とは、ドレンパン16内の水が動く状態を示す。撮影制御部38は、流水状態であるか否かについて、ドレンポンプ17の動作、および、連続撮影された複数の撮影画像40の比較によって得られる撮影画像40の変化のうち、少なくとも1つによって判定する。撮影制御部38は、流水状態の条件が成立するとき、撮影部37に撮影の指示を出す。例えば、撮影制御部38は、汚れとして濁りの検出する場合に、流水状態の条件判定を行う。
【0044】
撮影制御部38は、上述のように撮影タイミングを制御する。また、撮影制御部38は、撮影部37によって形成された撮影画像40を取得部31に送信する。撮影制御部38は、内部指令に基づいて撮影画像40を取得部31に送信する。内部指令は、予め設定されている指令である。
【0045】
撮影画像40は、次のように計算部32に送信される。カメラ36の撮影部37によって形成された撮影画像40は、取得部31に出力されて、取得部31の記憶部31aに記憶される。取得部31内に記憶された撮影画像40は、通信部33の内部指令または外部指令によって、ネットワークNを介してクラウドサーバ35の計算部32に送信される。
【0046】
図4を参照して、制御部30の計算部32について説明する。
計算部32は、利用者の指令または所定のタイミングで、対象物29の汚れを数値化する。具体的には、計算部32は、ドレンパン16の撮影画像40を構成する各画素について色相を算出する。撮影画像40がRGB形式によって形成された画像である場合、計算部32は、RGB形式からHSV形式への変換式に基づいて、撮影画像40を変換し、各画素について色相(H)の値を得る。
【0047】
ドレンパン16の汚れについて説明する。ドレンパン16の汚れの色相を分析すると、汚れは、赤味を帯びた黄緑色(色相10〜30)または緑色(色相30〜60)を有する。汚れの色相は、10以上60以下の範囲にある。付着汚れは、緑色または緑色周辺の色であり、付着汚れの色相は、30以上60以下の範囲にある。濁りは、赤に近い黄緑色であり、濁りの色相は、10以上30未満の範囲にある。ドレンパン16の付着汚れおよび濁りの色相は、ドレンパン16の壁の色相と異なる。このため、ドレンパン16の汚れを、色相に基づいて検出できる。また、付着汚れの色相と濁りの色相とは異なるため、付着汚れと濁りとを色相によって判別できる。
【0048】
ドレンパン16の汚れを精確に検出するため、撮影画像40において、汚れの検出の対象となる対象範囲40aが設定されることが好ましい。撮影画像40には、室内熱交換器13の一部およびドレンポンプ17の一部が含まれ得る。この場合、撮影画像40から、室内熱交換器13およびドレンポンプ17が除かれた領域が、汚れの検出の対象範囲40aとされる。対象範囲40aは、予め設定される。計算部32は、対象範囲40aにおいて汚れを検出する。
【0049】
図5〜
図9を参照して、対象範囲40aの設定の一例を説明する。
図5は、撮影画像40を示す図である。
図6は、マスク41を示す図である。
図7は、マスク41が重ねられた撮影画像40の図である。
図7において、濃いドットの領域は、付着汚れの領域を示し、薄いドットの領域は濁りの領域を示す。
図7の撮影画像40において、視覚の上では、付着汚れの領域と薄いドットの領域とを明確に区別することはできない。
図8は、テンプレート撮影画像43と撮影画像40とのマッチングを示す図である。
図9は、テンプレートマスク42とマスク41との関係を示す図である。
【0050】
計算部32は、撮影画像40に重ねるためのマスク41を保持する。マスク41において撮影画像40の対象範囲40a以外のところは、色相を有しない黒色である。マスク41において撮影画像40の対象範囲40a内は透明である。マスク41が重ねられた撮影画像40は、対象範囲40a以外のところが黒色になる。黒色は、色相が対応づけられないため、撮影画像40に対して色相の面積を算出すると、黒色の部分の面積は0となる。このため、計算部32が、マスク41が重ねられた撮影画像40全体において各色相の面積を算出すると、結果として、撮影画像40の対象範囲40a内における各色相の面積が算出される。このようにマスク41を用いることによって、撮影画像40の対象範囲40a内における各色相の面積の算出が簡単になる。
【0051】
計算部32は、空気調和機1の機種ごとに予め用意されたテンプレート撮影画像43と、空気調和機1の機種ごとに予め作成されたテンプレートマスク42と、を保持する。機種が同じ空気調和機1であっても、カメラ36の取り付けばらつきによって、撮影画像40内におけるドレンパン16の位置が異なる。このため、汚れの検出の対象となるドレンパン16に対して、精確に汚れを検出するためには、個々の空気調和機1のドレンパン16にマッチングされたマスク41を用いることが好ましい。例えば、計算部32は、テンプレート撮影画像43の特徴点と、汚れ検出の対象にされる撮影画像40の特徴点とをマッチングし(
図8参照)、マッチングの結果に基づいて射影変換行列を形成する。計算部32は、形成された射影変換行列によってテンプレートマスク42を変換することによって(
図9参照)、マスク41を形成する。
【0052】
計算部32は、次のように汚れの進行度を算出する。一例では、汚れの進行は、汚れた領域の拡大によって評価される。
(a)第1の例では、計算部32は、撮影画像40の対象範囲40aにおいて所定色相範囲内にある領域の面積に基づいて、汚れの進行度を算出する。具体的には、計算部32は、上述のようにテンプレートマスク42に基づいて、撮影画像40に適したマスク41を形成する。計算部32は、マスク41が重ねられた撮影画像40に基づいて、対象範囲40aにおける所定色相範囲内にある領域の面積を算出する。例えば、計算部32は、付着汚れの面積を算出する場合、マスク41が重ねられた撮影画像40に対して、色相が30以上60以下である画素の数をカウントすることによって、付着汚れの面積を求める。計算部32は、濁りの面積を算出する場合、マスク41が重ねられた撮影画像40に対して、色相が10以上30未満である画素の数をカウントすることによって、濁りの面積を求める。また、計算部32は、付着汚れの面積および濁りの面積の合計を、汚れの面積として算出してもよい。計算部32は、汚れの面積を、汚れの進行度として出力する。計算部32は、付着汚れの面積を「付着汚れの進行度」として出力してもよいし、計算部32は、濁りの面積を「濁りの進行度」として出力してもよい。
【0053】
(b)第2の例では、計算部32は、撮影画像40の対象範囲40aの面積と、撮影画像40の対象範囲40aにおいて所定色相範囲内にある領域の面積との面積比に基づいて、汚れの進行度を算出する。この場合、汚れ進行度は、パーセンテージで示される。汚れ進行度が100%であるとき、汚れが最も進行していることを示す。
【0054】
本実施形態の作用を説明する。
空気調和機1は、様々な要因で汚れる。空気の汚れに起因して、室内熱交換器13やドレンパン16に汚れが蓄積する。また、ドレンパン16に水が滞留すると、菌が増殖してドレンパン16の汚れが拡大する。室内熱交換器13やドレンパン16の汚れが拡大すると、ドレンポンプ17が詰まり易くなる。汚れの拡大は、特に、非冷房運転時期であることが分かってきた。冷房運転時期は、結露水によって室内ユニット11の室内熱交換器13およびドレンパン16の汚れが流される。一方、非冷房運転時期は、結露水が発生し難いため、室内ユニット11の室内熱交換器13およびドレンパン16の汚れが拡大し易い。特に、非冷房運転時期を過ぎた時期であって、冷房運転を開始する直前の時期には、ドレンパン16またな室内熱交換器13に汚れの堆積物が見られる場合がある。このような状況において冷房運転が行われると、結露水によって汚れの堆積物が一機に流されるようになってドレンポンプ17の詰まりが生じやすい。
【0055】
本実施形態の空気調和機1は、非冷房運転時期に汚れ抑制運転を行う。これによって、室内熱交換器13およびドレンパン16の汚れの形成または蓄積を抑制する。このようにして、汚れに起因する故障を抑制できる。
【0056】
本実施形態の効果を説明する。
(1)空気調和機1の制御部2は、判定部3と、設定部4とを備える。判定部3は、非冷房運転時期であるか否かに基づいて、空気調和機1の汚れ抑制運転の要否を判定する。設定部4は、空気調和機1の室内熱交換器13表面に結露水を発生させる結露運転条件を設定する。制御部2は、判定部3の要否判定結果に基づいて、設定部4によって設定された結露運転条件に従って空気調和機1の汚れ抑制運転を実行する。
【0057】
冷房運転時期では、室内熱交換器13が結露し、ドレンパン16に水が溜まる。水は、ドレンパン16から排水される。冷房運転時期では、結露水は、室内熱交換器13からドレンパン16を通って排水されるため、室内熱交換器13およびドレンパン16の汚れは、水とともに排出される。一方、非冷房運転時期は、水の流れが乏しいため、室内熱交換器13およびドレンパン16に汚れが溜まり易い。この点、上記構成によれば、制御部2は、非冷房運転時期であるか否かの結果に基づいて汚れ抑制運転を行うため、不適切な時期に汚れ抑制運転が行われることが抑制されて、非冷房運転時期の汚れの蓄積を抑制できる。
【0058】
(2)判定部3は、運転情報および環境情報の少なくとも一方に基づいて非冷房運転時期であるか否かを判定する。
この構成によれば、適切に、非冷房運転時期を判定できる。
【0059】
(3)判定部3は、空気調和機1の機器状態を判定し、機器状態の判定結果に基づいて汚れ抑制運転の要否を判定する。この構成によれば、汚れ抑制運転が必要なときにだけ汚れ抑制運転が行われるため、無駄な汚れ抑制運転を少なくできる。
【0060】
(4)判定部3は、空気調和機1の機器状態としてドレンパン16、フィルタ、および室内熱交換器13の少なくとも1つの汚れ量を取得し、汚れ量に基づいて汚れ抑制運転の要否を判定する。この構成によれば、ドレンパン16、フィルタ、および室内熱交換器13の少なくとも1つについて、汚れの蓄積を抑制できる。
【0061】
(5)判定部3は、汚れ抑制運転が必要であると判定した場合、汚れ抑制運転により室内の快適性を損なわない冷房運転許容条件で汚れ抑制運転を実行する。この構成によれば、室内の快適性を損なうことなく、汚れ抑制運転を行うことができる。
【0062】
<変形例>
本開示の汚れ検出装置28は、上記各実施の形態以外に、例えば以下に示される変形例、及び相互に矛盾しない少なくとも二つの変形例を組み合わせた形態としてもよい。
【0063】
・上記実施形態において、1つの室外ユニット21に対して複数の室内ユニット11が接続されている空調システムにおいては、空調システムの管理装置は、複数の室内ユニット11について順番に、汚れ抑制運転を実行させてもよい。
【0064】
・判定部3が取得する汚れ量について、汚れ量の検出手段は、上記の手段に限られない。上記実施形態では、汚れ検出装置28が、色成分に基づいてドレンパン16の汚れ進行度(汚れ量)を検出する。これに対して、汚れ量は、光の反射率によって定義されてもよい。
【0065】
・上記実施形態では、汚れ検出装置28は、ドレンパン16の汚れを検出するが、フィルタの汚れまたは室内熱交換器13の汚れ量を検出してもよい。この場合、判定部3は、これらの汚れ量に基づいて、汚れ抑制運転の要否を判定する。
【0066】
・汚れ検出装置28の取得部31と制御部30とは、1つのユニットとして構成されてもよい。このような汚れ検出装置28は、空気調和機1の近くに配置される。この場合、汚れ検出装置28は、ネットワークNを介さずに、直接、外部装置(例えば、利用者端末)と通信してもよい。
【0067】
以上、本装置の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本装置の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【解決手段】空気調和機(1)は、冷房運転可能な空気調和機(1)であって、前記空気調和機(1)の駆動部(24)を制御する制御部(2)を備える。制御部(2)は、非冷房運転時期であるか否かに基づいて、空気調和機(1)の汚れ抑制運転の要否を判定する判定部(3)と、空気調和機(1)の室内熱交換器(13)表面に結露水を発生させる結露運転条件を設定する設定部(4)と、を備える。判定部(3)の要否判定結果に基づいて、設定部(4)によって設定された結露運転条件に従って空気調和機(1)の汚れ抑制運転を実行する。