(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705591
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】統計分析装置、統計分析方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 16/338 20190101AFI20200525BHJP
G06F 16/35 20190101ALI20200525BHJP
G06Q 50/02 20120101ALI20200525BHJP
【FI】
G06F16/338
G06F16/35
G06Q50/02
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-61562(P2016-61562)
(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公開番号】特開2017-174274(P2017-174274A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年2月6日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度補正及び平成26年度 農林水産省 「革新的技術創造促進事業(異分野融合共同研究)公募(補完)研究、植物状態と作業行動記録による気づきナレッジの開発とその現場実証」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000232092
【氏名又は名称】NECソリューションイノベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002044
【氏名又は名称】特許業務法人ブライタス
(72)【発明者】
【氏名】沼野 なぎさ
(72)【発明者】
【氏名】久寿居 大
(72)【発明者】
【氏名】板倉 宏幸
【審査官】
齊藤 貴孝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−003981(JP,A)
【文献】
特開2015−177758(JP,A)
【文献】
特開2003−098267(JP,A)
【文献】
特開平07−056740(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2013/0311218(US,A1)
【文献】
島津 秀雄、外3名,産地の営農指導支援システムの研究開発,人工知能,日本,(一社)人工知能学会,2015年 3月 1日,第30巻,第2号,p.167−173
【文献】
曽我 真也、外1名,動向情報提示システムの構築,言語処理学会第12回年次大会ワークショップ「言語処理と情報可視化の接点」論文集,日本,言語処理学会 The Association for Natural Language Processing,2006年 3月13日,p.5−8
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00−16/958
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検索クエリを受付ける、検索クエリ受付部と、
複数の事象それぞれを、当該事象の原因及び関連する数値データと紐付けて登録するデータベースから、前記検索クエリと一致又は類似する事象又は原因を特定し、特定した事象又は原因に関連している数値データを抽出する、数値データ抽出部と、
抽出された前記数値データに対して、統計処理を行って統計値を算出する、統計処理実行部と、
統計処理の結果に基づいて、抽出された前記数値データのうち互いに類似している複数の数値データを特定する、類似データ特定部と、
特定された前記複数の数値データの統計値と、特定された前記複数の数値データが関連している前記事象又は原因とを、少なくとも提示する、情報提示部と、
を備えている、ことを特徴とする統計分析装置。
【請求項2】
前記統計処理実行部が、統計処理によって、前記数値データに対して、最新値、積算値、値が連続する範囲、変化率、変化量、最大値、最小値、及び最古値のうち、いずれか1つ又は2つ以上を算出する、
請求項1に記載の統計分析装置。
【請求項3】
前記数値データ抽出部が、前記データベースから、抽出した数値データと取得時期において共通している別の数値データを更に抽出し、
前記統計処理実行部が、前記別の数値データに対しても、統計値を算出し、
前記類似データ特定部が、抽出された前記数値データに、前記別の数値データも加えて、互いに類似している複数の数値データを特定する、
請求項1または2に記載の統計分析装置。
【請求項4】
前記事象が、農作物の栽培過程において農作物に生じている事象である、
請求項1〜3のいずれかに記載の統計分析装置。
【請求項5】
コンピュータが実行する方法であって、
(a)検索クエリを受付ける、ステップと、
(b)複数の事象それぞれを、当該事象の原因及び関連する数値データと紐付けて登録するデータベースから、前記検索クエリと一致又は類似する事象又は原因を特定し、特定した事象又は原因に関連している数値データを抽出する、ステップと、
(c)抽出された前記数値データに対して、統計処理を行って統計値を算出する、ステップと、
(d)統計処理の結果に基づいて、抽出された前記数値データのうち互いに類似している複数の数値データを特定する、ステップと、
(e)特定された前記複数の数値データの統計値と、特定された前記複数の数値データが関連している前記事象又は原因とを、少なくとも提示する、ステップと、
を有する、ことを特徴とする統計分析方法。
【請求項6】
前記(c)のステップにおいて、統計処理によって、前記数値データに対して、最新値、積算値、値が連続する範囲、変化率、変化量、最大値、最小値、及び最古値のうち、いずれか1つ又は2つ以上を算出する、
請求項5に記載の統計分析方法。
【請求項7】
前記(b)のステップにおいて、前記データベースから、抽出した数値データと取得時期において共通している別の数値データを更に抽出し、
前記(c)のステップにおいて、前記別の数値データに対しても、統計値を算出し、
前記(d)のステップにおいて、抽出された前記数値データに、前記別の数値データも加えて、互いに類似している複数の数値データを特定する、
請求項5または6に記載の統計分析方法。
【請求項8】
前記事象が、農作物の栽培過程において農作物に生じている事象である、
請求項5〜7のいずれかに記載の統計分析方法。
【請求項9】
コンピュータに、
(a)検索クエリを受付ける、ステップと、
(b)複数の事象それぞれを、当該事象の原因及び関連する数値データと紐付けて登録するデータベースから、前記検索クエリと一致又は類似する事象又は原因を特定し、特定した事象又は原因に関連している数値データを抽出する、ステップと、
(c)抽出された前記数値データに対して、統計処理を行って統計値を算出する、ステップと、
(d)統計処理の結果に基づいて、抽出された前記数値データのうち互いに類似している複数の数値データを特定する、ステップと、
(e)特定された前記複数の数値データの統計値と、特定された前記複数の数値データが関連している前記事象又は原因とを、少なくとも提示する、ステップと、
を実行させるプログラム。
【請求項10】
前記(c)のステップにおいて、統計処理によって、前記数値データに対して、最新値、積算値、値が連続する範囲、変化率、変化量、最大値、最小値、及び最古値のうち、いずれか1つ又は2つ以上を算出する、
請求項9に記載のプログラム。
【請求項11】
前記(b)のステップにおいて、前記データベースから、抽出した数値データと取得時期において共通している別の数値データを更に抽出し、
前記(c)のステップにおいて、前記別の数値データに対しても、統計値を算出し、
前記(d)のステップにおいて、抽出された前記数値データに、前記別の数値データも加えて、互いに類似している複数の数値データを特定する、
請求項9または10に記載のプログラム。
【請求項12】
前記事象が、農作物の栽培過程において農作物に生じている事象である、
請求項9〜11のいずれかに記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業分野において蓄積されたデータを分析するための、統計分析装置、統計分析方法、及びこれらを実現するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、農産物の生産は、生産者の経験と、経験に裏打ちされた勘とに基づいて行なわれており、経験の浅い生産者が、安定的に農産物を生産することは困難である。一方、我国では、経験豊富な生産者の高齢化が進んでいることから、経験の少ない生産者が短期間で安定的に農産物を生産できるようになることが求められている。
【0003】
このため、近年、農業分野においては、IT技術を活用することによって、生産者を支援する試みが行なわれている。例えば、特許文献1及び非特許文献1は、湿度センサ、温度センサ、照度センサ等の各種センサからのセンサデータに基づいて、農作物の生育状態をモニタリングし、異常が生じた場合にアラートを出力するシステムを提案している。このようなシステムによれば、経験の少ない生産者であっても、適切な農作業を実行できるので、安定的に農産物を生産できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−297690号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】株式会社協和エクシオ、「農業ICTソリューション」、[online]、協和エクシオ ネットワークインテグレーション、[平成28年2月1日検索]、インターネット<URL:https://www.exeo.co.jp/jigyou/ns/pdf/nougyou_sh.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1及び非特許文献1に開示されたシステムでは、アラートの設定はヒトによって行われている。このため、これらのシステムには、必要なアラートを漏れなく設定することが難しいという問題点がある。
【0007】
本発明の目的の一例は、上記問題を解消し、現場での作業工程で得られたデータを分析することによって、アラートの設定を支援し得る、統計分析装置、統計分析方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一側面における統計分析装置は、
検索クエリを受付ける、検索クエリ受付部と、
複数の事象それぞれを、当該事象の原因及び関連する数値データと紐付けて登録するデータベースから、前記検索クエリと一致又は類似する事象又は原因を特定し、特定した事象又は原因に関連している数値データを抽出する、数値データ抽出部と、
抽出された前記数値データに対して、統計処理を行って統計値を算出する、統計処理実行部と、
統計処理の結果に基づいて、抽出された前記数値データのうち互いに類似している複数の数値データを特定する、類似データ特定部と、
特定された前記複数の数値データの統計値と、特定された前記複数の数値データが関連している前記事象又は原因とを、少なくとも提示する、情報提示部と、
を備えている、ことを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明の一側面における統計分析方法は、
(a)検索クエリを受付ける、ステップと、
(b)複数の事象それぞれを、当該事象の原因及び関連する数値データと紐付けて登録するデータベースから、前記検索クエリと一致又は類似する事象又は原因を特定し、特定した事象又は原因に関連している数値データを抽出する、ステップと、
(c)抽出された前記数値データに対して、統計処理を行って統計値を算出する、ステップと、
(d)統計処理の結果に基づいて、抽出された前記数値データのうち互いに類似している複数の数値データを特定する、ステップと、
(e)特定された前記複数の数値データの統計値と、特定された前記複数の数値データが関連している前記事象又は原因とを、少なくとも提示する、ステップと、
を有する、ことを特徴とする。
【0010】
更に、上記目的を達成するため、本発明の一側面におけるプログラムは、
コンピュータに、
(a)検索クエリを受付ける、ステップと、
(b)複数の事象それぞれを、当該事象の原因及び関連する数値データと紐付けて登録するデータベースから、前記検索クエリと一致又は類似する事象又は原因を特定し、特定した事象又は原因に関連している数値データを抽出する、ステップと、
(c)抽出された前記数値データに対して、統計処理を行って統計値を算出する、ステップと、
(d)統計処理の結果に基づいて、抽出された前記数値データのうち互いに類似している複数の数値データを特定する、ステップと、
(e)特定された前記複数の数値データの統計値と、特定された前記複数の数値データが関連している前記事象又は原因とを、少なくとも提示する、ステップと、
を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、現場での作業工程で得られたデータを分析することによって、アラートの設定を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態における統計分析装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態における統計分析装置の具体的構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態においてデータベースに登録されているデータの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態においてデータベースに登録されている数値データの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、類似する複数の数値データの特定方法の具体例を示す図であり、
図5(a)は、統計値の具体例を示し、
図5(b)〜(d)は一連の計算過程を示している。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態において端末装置の画面の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態における統計分析装置の動作を示すフロー図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施の形態における統計処理装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施の形態)
以下、本発明の実施の形態における、統計分析装置、統計分析方法、及びプログラムについて、
図1〜
図8を参照しながら説明する。
【0014】
[装置構成]
最初に、本実施の形態における統計分析装置の構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態における統計分析装置の概略構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示す本実施の形態における統計分析装置10は、データベース20に蓄積されているデータを分析して、ユーザによるアラートの設定を支援する装置である。データベース20は、複数の事象それぞれを、各事象の原因及び関連する数値データと紐付けて登録している。
【0016】
図1に示すように、統計分析装置10は、検索クエリ受付部11と、数値データ抽出部12と、統計処理実行部13と、類似データ特定部14と、情報提示部15とを備えている。
【0017】
検索クエリ受付部11は、検索クエリを受付ける。数値データ抽出部12は、データベース20から、検索クエリと一致又は類似する事象又は原因を特定し、特定した事象又は原因に関連している数値データを抽出する。
【0018】
統計処理実行部13は、抽出された数値データに対して、統計処理を行って統計値を算出する。類似データ特定部14は、統計処理の結果に基づいて、抽出された数値データのうち互いに類似している複数の数値データを特定する。情報提示部15は、特定された複数の数値データの統計値と、特定された複数の数値データが関連している事象又は原因とを、少なくとも提示する。
【0019】
このように、本実施の形態では、一定の類似範囲にある数値データが特定され、この数値データと関連している事象又は原因が提示されるので、ユーザは、注意すべき状況を簡単に把握でき、有効なアラートを設定できる。つまり、本実施の形態によれば、現場での作業工程で得られたデータを分析することによって、アラートの設定を支援することができる。
【0020】
続いて、
図2及び
図3を用いて、本実施の形態における統計分析装置の具体的構成について説明する。
図2は、本発明の実施の形態における統計分析装置の具体的構成を示すブロック図である。
【0021】
まず、本実施の形態は、農業分野に適用されている。
図2に示すように、本実施の形態では、統計分析装置10は、ネットワーク40を介して、農産物の生産者の端末装置30に接続されている。また、検索クエリは、端末装置30上で生産者によって入力され、その後、端末装置30から送信される。検索クエリ受付部11は、本実施の形態では、端末装置30から送信されてきた検索クエリを受付ける。
【0022】
データベース20は、本実施の形態では、統計分析装置10に接続されている。ここで、
図3及び
図4を用いて、データベース20の具体例について説明する。
図3は、本発明の実施の形態においてデータベースに登録されているデータの一例を示す図である。
図4は、本発明の実施の形態においてデータベースに登録されている数値データの一例を示す図である。
【0023】
図3に示すように、本実施の形態1では、データベース20は、生産者によって入力された事象毎に、事象に対して生産者が行なった対処、事象の原因、及び対象の結果を関連付けて登録している。また、データベース20は、一部の事象及び原因については、関連する数値データも登録している。また、本実施の形態において、事象は、農作物の栽培過程において農作物に生じている事象である。
【0024】
図4に示すように、数値データとしては、例えば、特定の時間帯における気温データが挙げられる。また、
図4に示している例以外にも、数値データとしては、湿度データ、雨量データ、灌水量データ、日射量データ、収穫段、茎径、葉の全長、葉の全幅等も挙げられる。
【0025】
数値データ抽出部12は、本実施の形態では、例えば、検索クエリが「温度」であるとすると、データベース20から、原因が「温度」となっている行又は「温度」と類似している行(例えば、原因が「高温」となっている行)を特定する。なお、類似の判定は、予め用意されている類似語辞書を用いて行うことができる。
【0026】
更に、数値データ抽出部12は、特定した行のうち数値データが紐付けられている行を特定し、そしてこの行に紐付けられている数値データを抽出する。
図3の例であれば、数値データ抽出部12は、
図4に示す数値データ1〜3を抽出する。
【0027】
統計処理実行部13は、本実施の形態では、統計処理によって、数値データに対して、最新値、積算値、値が連続する範囲、変化率、変化量、最大値、最小値、及び最古値のうち、いずれか1つ又は2つ以上を算出する。
【0028】
ここで、最新値とは、数値データが時間の変化に応じて値が変化する場合における最新の値である。例えば、数値データが特定の時間帯における気温データであるとすると、時間帯の最新の時点での気温が最新値となる。
【0029】
積算値とは、数値データが時間の変化に応じて値が変化する場合において、値を積算することで得られた値である。例えば、数値データが特定の時間帯における1分毎の気温データであるとすると、1分毎の気温を積算して得られた値が積算値となる。
【0030】
値が連続する範囲とは、数値データにおいて、値が一定の幅に収まっている範囲である。また、値が連続する範囲には、この範囲での最大値及び最小値(一定の幅の上限値及び下限値)が含まれていても良い。
【0031】
変化率とは、数値データが時間の変化に応じて値が変化する場合において、特定の範囲における単位時間当りの変化率、例えば、最小値から最大値へと増加する際の単位時間当りの増加率、又は最大値から最小値へと低下する際の単位時間当りの低下率である。
【0032】
変化量とは、数値データが時間の変化に応じて値が変化する場合において、最小値から最大値へと増加する際の単位時間当りの増加量、又は最大値から最小値へと低下する際の単位時間当りの減少量である。
【0033】
最大値とは、数値データが時間の変化に応じて値が変化する場合の最大値である。最小値とは、数値データが時間の変化に応じて値が変化する場合の最小値である。最古値とは、数値データが時間の変化に応じて値が変化する場合における最も古い値である。
【0034】
類似データ特定部14は、算出された統計値を用いて、抽出された数値データの中から、互いに類似する数値データの組を特定する。また、本実施の形態において類似しているかどうかの判断は、算出対象となる複数の数値データそれぞれの統計値間の距離を求めることによって、更には、既存の類似関係を求める手法を用いることによって行うことができる。距離の求め方としては、ユークリッド距離、標準化(平均)ユークリッド距離、マハラノビス距離、マンハッタン距離、チェビシェフ距離、ミンコフスキー距離等が挙げられる。また、類似関係を求める手法としては、ウォード法、群平均法、最短距離法、最長距離法、メディアン法、重心法、可変法等が挙げられる。
【0035】
図5を用いて類似する算出データの組の特定の仕方について説明する。
図5は、類似する複数の数値データの特定方法の具体例を示す図であり、
図5(a)は、統計値の具体例を示し、
図5(b)〜(d)は一連の計算過程を示している。
図5(a)に示すように、数値データとして、特定の時間帯における気温データA〜Eが抽出され、統計値として最大値が算出されたとする。また、各気温データの最大値は、それぞれ、32℃、30℃、40℃、29℃、5℃である。
【0036】
この場合、ユークリッド距離Lは、下記の数1によって算出することができ、結果、
図5(b)に示す通りとなる。また、数1は1次元のため、ユークリッド距離Lは、引き算の絶対値と同一となる。なお、下記の数1において、x、yは、各気温データの最大値である。
【0038】
数1によるユークリッド距離の計算結果は、
図5(b)に示す通りである。次に、
図5(c)に示すように、ユークリッド距離Lのうち、閾値未満となる場合については、対応する項目が結合され、結合された項目において平均値が算出される。そして、この状態で、数1を用いて、改めてユークリッド距離Lが計算される。また、再計算によってもまだ閾値未満となるユークリッド距離Lが存在するので、更に、同様の計算が実行される。これにより、
図5(d)に示すように、閾値未満のユークリッド距離は存在しなくなる。この結果、気温データA、B、Dは類似していると判断される。
【0039】
情報提示部15は、本実施の形態では、例えば、互いに類似している複数の数値データそれぞれの統計値を特定する。そして、情報提示部15は、検索クエリを入力した生産者の端末装置30に、類似している複数の数値データと、特定した統計値と、各数値データが関連している事象又は原因とを送信し、これらを画面上に表示させる。なお、情報提示部15は、数値データが関連しているのが事象のみである場合に、データベース20に登録されている同じ行の原因も端末装置30に送信しても良い。逆の場合も同様である。
【0040】
図6を用いて端末装置30の画面の具体例について説明する。
図6は、本発明の実施の形態において端末装置の画面の一例を示す図である。
図6の例では、生産者の端末装置30の画面上には、気温データの変化率の類似度が高い4つの気温データが表示されている。また、
図6の例では、気温データに加えて、変化率、事象、及び原因も送信されており、これらも表示されている。生産者は、画面に表示された各データを確認することで、適切なアラートを設定することができる。例えば、生産者は、変化率がA%となり、気温の最大値がB℃を超えたときを条件として、アラートを設定する。
【0041】
[装置動作]
次に、本発明の実施の形態における統計分析装置10の動作について
図7を用いて説明する。
図7は、本発明の実施の形態における統計分析装置の動作を示すフロー図である。以下の説明においては、適宜
図1〜
図6を参酌する。また、本実施の形態では、統計分析装置を動作させることによって、統計分析方法が実施される。よって、本実施の形態における統計分析方法の説明は、以下の統計分析装置の動作説明に代える。
【0042】
最初に、
図7に示すように、検索クエリ受付部11は、端末装置30から送信されてきた検索クエリを受付ける(ステップA1)。また、検索クエリ受付部11は、受付けた検索クエリを数値データ抽出部12に入力する。
【0043】
次に、数値データ抽出部12は、データベース20から、検索クエリと一致又は類似する事象又は原因を特定する(ステップA2)。更に、数値データ抽出部12は、ステップA2で特定した事象又は原因に関連している数値データを抽出する(ステップA3)。
【0044】
次に、統計処理実行部13は、ステップA3で抽出された数値データに対して、統計処理を実行する(ステップA4)。具体的には、統計処理実行部13は、ステップA3で抽出された数値データに対して、最新値、積算値、値が連続する範囲、変化率、変化量、最大値、最小値、及び最古値のうち、いずれか1つ又は2つ以上を算出する。
【0045】
次に、類似データ特定部14は、ステップA4で算出された統計値を用いて、ステップA3で抽出された数値データの中から互いに類似する複数の数値データを特定する(ステップA5)。具体的には、ステップA5では、類似データ特定部14は、
図5(a)〜(d)を用いて説明したように、ユークリッド距離Lを算出する。
【0046】
次に、情報提示部15は、ステップA5で特定した複数の数値データそれぞれの統計値を特定する(ステップA6)。ステップA6では、情報提示部15は、複数の数値データそれぞれが関連している事象又は原因も特定する。そして、情報提示部15は、ステップA6で特定した統計値及び数値データと、この数値データ関連している事象又は原因とを、提示する(ステップA7)。具体的には、情報提示部15は、ステップA6で特定した統計値及び数値データと、この数値データ関連している事象又は原因とを、検索クエリを入力した端末装置30に送信し、これらをその画面上に表示させる。
【0047】
[実施の形態における効果]
以上のように本実施の形態では、検索クエリに関係する数値データが抽出され、これらは、統計値に基づいて、類似しているかどうか判断され、一定の類似範囲にある数値データについて、統計値、関連する事象及び原因のユーザ(生産者)への提示が行われる。このため、本実施の形態によれば、生産者は、経験が浅くとも、通常であれば見逃してしまうような状況を把握することができる。つまり、通常、経験の浅い生産者は、経験の長い生産者に比べて、農作物の状況を正確に把握できないため、最適なアラートを設定するのが難しいが、本実施の形態であれば、経験の浅い生産者であっても、農作物の状況を正確に把握できるので、最適なアラートを設定できる。また、本実施の形態は、農業分野以外にも、プラントシステムの運用、鉄鋼炉の制御、各種機械のメンテナンス等のアラートの設定が必要な各種の分野に有用である。
【0048】
[変形例]
ここで、本実施の形態における変形例について説明する。本変形例においては、数値データ抽出部12は、データベース20から、最初に抽出した数値データと取得時期において共通している別の数値データを抽出する。具体的には、数値データ抽出部12は、最初に抽出した数値データが、12月25日の10:00−11:00の間の気温データであるとすると、同じ日時の同じ時間帯における別の数値データ(日射量データ、湿度データ等)も抽出する。
【0049】
この場合、統計処理実行部13は、新たに抽出された別の数値データに対しても、統計値を算出する。更に、類似データ特定部14は、最初に抽出された数値データに、新たに抽出された別の数値データも加えて、互いに類似している複数の数値データを特定する。
【0050】
このように、本変形例によれば、検索クエリから抽出できる数値データだけでなく、それに関連している可能性がある数値データも新たに抽出され、この新たな数値データも用いて、統計処理、類似度合の算出処理が行われる。このため、本変形例によれば、生産者は、農作物の状況をよりいっそう正確に把握できる。
【0051】
[プログラム]
本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータに、
図7に示すステップA1〜A7を実行させるプログラムであれば良い。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施の形態における統計分析装置と統計分析方法とを実現することができる。この場合、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)は、検索クエリ受付部11、数値データ抽出部12、統計処理実行部13、類似データ特定部14、及び情報提示部15として機能し、処理を行なう。
【0052】
また、本実施の形態におけるプログラムは、複数のコンピュータによって構築されたコンピュータシステムによって実行されても良い。この場合は、例えば、各コンピュータが、それぞれ、検索クエリ受付部11、数値データ抽出部12、統計処理実行部13、類似データ特定部14、及び情報提示部15のいずれかとして機能しても良い。
【0053】
[物理構成]
ここで、本実施の形態におけるプログラムを実行することによって、統計処理装置10を実現するコンピュータについて
図8を用いて説明する。
図8は、本発明の実施の形態における統計処理装置を実現するコンピュータの一例を示すブロック図である。
【0054】
図8に示すように、コンピュータ110は、CPU111と、メインメモリ112と、記憶装置113と、入力インターフェイス114と、表示コントローラ115と、データリーダ/ライタ116と、通信インターフェイス117とを備える。これらの各部は、バス121を介して、互いにデータ通信可能に接続される。
【0055】
CPU111は、記憶装置113に格納された、本実施の形態におけるプログラム(コード)をメインメモリ112に展開し、これらを所定順序で実行することにより、各種の演算を実施する。メインメモリ112は、典型的には、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性の記憶装置である。また、本実施の形態におけるプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体120に格納された状態で提供される。なお、本実施の形態におけるプログラムは、通信インターフェイス117を介して接続されたインターネット上で流通するものであっても良い。
【0056】
また、記憶装置113の具体例としては、ハードディスクドライブの他、フラッシュメモリ等の半導体記憶装置が挙げられる。入力インターフェイス114は、CPU111と、キーボード及びマウスといった入力機器118との間のデータ伝送を仲介する。表示コントローラ115は、ディスプレイ装置119と接続され、ディスプレイ装置119での表示を制御する。
【0057】
データリーダ/ライタ116は、CPU111と記録媒体120との間のデータ伝送を仲介し、記録媒体120からのプログラムの読み出し、及びコンピュータ110における処理結果の記録媒体120への書き込みを実行する。通信インターフェイス117は、CPU111と、他のコンピュータとの間のデータ伝送を仲介する。
【0058】
また、記録媒体120の具体例としては、CF(Compact Flash(登録商標))及びSD(Secure Digital)等の汎用的な半導体記憶デバイス、フレキシブルディスク(Flexible Disk)等の磁気記憶媒体、又はCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)などの光学記憶媒体が挙げられる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明によれば、現場での作業工程で得られたデータを分析することによって、アラートの設定を支援することができる。本発明は、アラートの設定が必要な各種分野に有用である。
【符号の説明】
【0060】
10 統計分析装置
11 検索クエリ受付部
12 数値データ抽出部
13 統計処理実行部
14 類似データ特定部
15 情報提示部
20 データベース
30 端末装置
40 ネットワーク
110 コンピュータ
111 CPU
112 メインメモリ
113 記憶装置
114 入力インターフェイス
115 表示コントローラ
116 データリーダ/ライタ
117 通信インターフェイス
118 入力機器
119 ディスプレイ装置
120 記録媒体
121 バス