特許第6705594号(P6705594)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6705594螺旋状隆起部を備えた管状膜と、そのような管状膜を生産する為の方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705594
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】螺旋状隆起部を備えた管状膜と、そのような管状膜を生産する為の方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 69/04 20060101AFI20200525BHJP
   B01D 69/10 20060101ALI20200525BHJP
   B01D 69/12 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   B01D69/04
   B01D69/10
   B01D69/12
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-543627(P2016-543627)
(86)(22)【出願日】2015年1月12日
(65)【公表番号】特表2017-502830(P2017-502830A)
(43)【公表日】2017年1月26日
(86)【国際出願番号】NL2015050016
(87)【国際公開番号】WO2015108415
(87)【国際公開日】20150723
【審査請求日】2018年1月4日
(31)【優先権主張番号】2012109
(32)【優先日】2014年1月20日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】504439045
【氏名又は名称】エックス−フロー ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】オボルニー, ラデク
(72)【発明者】
【氏名】クール, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ポトレック, イエンス
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−065908(JP,A)
【文献】 特公昭55−043807(JP,B1)
【文献】 特表2008−531276(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0201611(US,A1)
【文献】 特開昭49−134577(JP,A)
【文献】 特開昭58−104604(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第02188563(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
B29C 63/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持管と半透過性膜層とを備える管状膜において、
支持管は、1つ又は複数の多孔性支持材料の柔軟テープから作成され、前記1つ又は複数の多孔性支持材料柔軟テープは、互いに密封された重なり合うテープ縁部で螺旋状に管形状へと巻回され、前記支持管は、流体チャネルを画成し、
半透過性膜層は、前記支持管の内壁に前記流体チャネルに沿って堆積される膜形成材料で作られる、管状膜であって、
内部で突出する少なくとも1つの螺旋状隆起部を前記支持管の前記内壁に備え、前記螺旋状隆起部は、前記膜層の一部で覆われるか、前記膜層の一部を形成し、前記内部で突出する螺旋状隆起部は、乱流および二次流を促進する為に膜横断面に突出する、管状膜。
【請求項2】
前記隆起部は、前記支持管と同一の多孔性材料から作成される、請求項1に記載の管状膜。
【請求項3】
前記隆起部は、前記膜層と同一の半透過性材料から作成される、請求項1に記載の管状膜。
【請求項4】
前記隆起部は、柔軟なリボン状隆起部であり、前記リボン状隆起部は、前記テープに密封され、それと共に螺旋状に巻回されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の管状膜。
【請求項5】
前記内壁に沿って互いに間をあけて延びる、2つ以上の前記螺旋状隆起部が設けられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の管状膜。
【請求項6】
管状膜を生産する方法において、
マンドレルの巻回セクションの周りに、重なり合うテープ縁を用いて、管形状へと螺旋状に前記テープを巻回させることによって、1つ又は複数の多孔性支持材料の柔軟テープから支持管を作成するステップであって、前記支持管は、連続して回転し、前記マンドレルに関して前方に移動し、前記重なり合うテープ縁が互いに密封され、前記支持管が流体チャネルを画成する、前記ステップと、
前記流体チャネルに沿って膜形成材料を堆積することによって前記支持管の内壁に膜形成材料の半透過性膜層を作るステップと、
を含む、方法であって、
少なくとも1つの内部で突出する螺旋状隆起部が前記支持管の前記内壁に形成され、前記内部で突出する螺旋状隆起部は、乱流および二次流を促進する為に膜横断面に突出し、前記螺旋状隆起部は、前記支持管および膜層を形成する間、前記膜層の一部によって覆われるようになり、或いは、前記膜層の一部を形成する、方法。
【請求項7】
前記隆起部は、その形成中に、前記マンドレル内の1つ又は複数の溝を通して案内されるようになる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記膜層を作るステップは、
前記支持管を前記マンドレルのキャスティングセクション一面に導くことによって、前記膜形成材料の液滴を前記内壁に堆積する工程であって、前記キャスティングセクションには、圧縮された膜形成材料が繰り出される、前記工程と、
それらを前記マンドレルのドクタリングセクション一面に導くことによって、前記支持管の前記内壁に沿って、堆積された膜形成材料をドクタリング処理する工程であって、前記ドクタリング処理中、前記隆起部は、前記1つ又は複数の螺旋状溝のうちの第1螺旋状溝を通って導かれ、そのために、前記マンドレルの前記ドクタリングセクションに存在する、前記工程と、
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記膜層の前記キャスティングおよびドクタリング中、前記隆起部は、前記膜層上の、あるいは、前記膜層と共に、半透過性膜形成材料の流延部である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記膜層の前記キャスティングおよびドクタリングに先立ち、前記隆起部は、前記マンドレルの前記巻回セクションの周りを前記テープと共に螺旋状に巻回された柔軟なリボン形状隆起部によって形成され、
前記巻回の間、前記リボン形状隆起部は、前記1つ又は複数の螺旋状溝のうちの第2螺旋状溝を通して導かれ、そのために、前記マンドレルの前記巻回セクションに存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記リボン形状隆起部は、前記テープから前記巻回セクションに繰り出され、前記巻回セクションに沿って前記テープに密封されるようになる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の管状膜を生産する為の装置であって、
少なくとも巻回セクションおよびキャスティングセクションを有するマンドレルと、
前記巻回セクションに前記テープを繰り出す繰り出し手段と、
前記マンドレルに関して前記支持管を連続して回転させ、前方に移動させる駆動手段と、
互いに前記重なり合うテープ縁を密封する為に、前記巻回セクションに沿って位置される密封手段と、
圧縮された膜形成材料を前記キャスティングセクションに繰り出す為の繰り出し手段と、
を備え、
前記支持管の前記内壁で、内部で突出する螺旋状突起部の形成中を通じて、前記少なくとも一つの内部で突出する螺旋状隆起部を導く為に、1つ又は複数の螺旋状溝が前記マンドレルに設けられる、装置。
【請求項13】
前記ドクタリングセクションを覆って膜形成材料を導くことによって、前記堆積された膜形成材料を前記支持管の前記内壁に沿ってドクタリングする為に、前記マンドレルはドクタリングセクションを備え、前記1つ又は複数の螺旋状溝のうち第1螺旋状溝が前記マンドレルのドクタリングセクションに存在する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記1つ又は複数の螺旋状溝のうち第2螺旋状溝は、前記マンドレルの前記巻回セクションに存在する、請求項13に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持管を備える形式の管状膜の分野に関し、支持管は、互いに密封された重なり合うテープ縁を用いた、更に、支持管の内壁に膜形成材料で作られた半透過性膜層を用いた、管形状へと螺旋状に巻回された1つ又は複数の多孔性支持材料の柔軟テープでできている。この特定形式の管状膜は、螺旋状に巻回された管状膜と呼ばれるであろう。
【0002】
そのような螺旋状に巻回された管状膜と、それらを生産する為の方法および装置が、たとえば、GB-1 325 672から知られている。この公報は、マンドレルの巻回セクションに1つ又は複数の多孔性の繊維状テープを螺旋状に巻回し、単一または多層管を生産すること、さらに、マンドレル上に形成された管の内側に液体ドープ(dope)として半透過性膜を連続してキャスティングすることを記載する。キャスティングは、一回で(in one go)原位置において(in situ)、すなわち、管状膜がマンドレルで形成されるときに行われる。このために、キャスティングはマンドレルの巻回セクションに隣接するマンドレルのキャスティングセクションに沿って行われる。キャスティングの後、ドクタリングが行われ、そこでは、支持管の内壁一面に膜形成材料が所望の層厚で均等に配布される。ドクタリングも同様に、一回で原位置において、すなわち、管状膜がマンドレルで形成されるときに行われる。このために、ドクタリングは、マンドレルのキャスティングセクションに隣接するマンドレルのドクタリングセクションに沿って行われる。
【0003】
そのように作られた螺旋状巻回管状膜は、実質的に円滑で、丸い内面を有し、これらが、分離層として作用し、例えば、濾過処理の為のクロスフローモジュールに使用されるのに適する。濾過される流体が管状膜の外部端部の一つに繰り出される。膜層を通る透過流は、溶質および/または粒子が流体中に存在するが、残余分として退けられて排出される。そのような円滑な管状膜では、膜層の内面に沿って、主として層流が生じる。この層流は、境界層と呼ばれ、管状膜を通る流体の主流と(十分に)混合されない。
【0004】
そのような管状膜の濾過特性に対する最も顕著な制限は、膜層付近の濃度分極、膜層に沿ったケーキの蓄積、膜層の汚れ(fouling)である。濃度分極は、膜層付近で退けられた溶質の蓄積として定義されるが、これが、そこに存在する高い溶質濃度になる。膜層付近の退けられた溶質の濃度は、最大で100倍まで増える場合がある。溶質の濃度が高すぎると、ゲルは膜層に析出しはじめる。このゲルは、それから、固体ケーキの形成を助成する。
【0005】
退けられた溶質が膜層から遠ざけることができる唯一の方法は、濃度勾配の下方逆拡散による。境界層の溶質の主流への逆拡散速度は、それらの溶質の拡散率によって、更に、境界層の厚さによって管理される。退けられた溶質の拡散率は、物理的に決定されることから、このパラメータは、影響されない。しかしながら、境界層の厚さは、クロスフロー速度の変更および/または(局所的乱流および二次流れを促進させるように)管状膜内側のフローパターンに影響を与えることによって、操作することができる。
【0006】
このため、技術水準から周知であるのは、乱流エンハンサーおよび二次流れインデューサーを管状膜の内側に配置し、内部のフローパターンを修正し、特に、境界層の厚さの減少を助長させることである。
【0007】
たとえば、螺旋状コイルインサートを管状膜の内側に配置することが知られていた。これらのコイルインサートの巻回部は、そのとき、膜層に寄りかかるようになり、いわば、上部に隆起部を形成する。それらの隆起部は、それらの前後に生じるように、乱流および二次流れを引き起こすので、境界層を混合し、濃度分極、膜層に沿ったケーキの蓄積、汚れを最小限にするように助長する。
【0008】
しかしながら、そのような螺旋状コイルインサートの使用には欠点があり、コイルインサートが、最初に管状膜自体の内径より細長くなるまで弾性的に伸ばされた後、管状膜を通って単独で引き抜かれてしまう。その後、それらは、慎重に管状膜を通して引っ張られなければならず、それらが弱い膜層を害しないように、それらの伸ばされた位置に残る。そのときだけ、コイルインサートは開放され、それらが、それらの当初位置に戻り、この位置で、管状膜の膜層に寄りかかるようになる。想像できるように、これは時間の浪費であり、特に、小さな直径の膜管にとって、産業規模で多数を実行できない難しい操作である。
【0009】
ジャーナル"Chemical Engineering Science"(55 (2000) 5049-5057)で、L. Broussous, P. Schmidtz, H. Boisson, E. Prouzet, A. Larbotの名義の論文"Hydrodynamic aspects of filtration antifouling by helically corrugated membranes"において、濾過中に表面近くに高レベルの乱流を維持する為に、膜表面に螺旋状浮き上がりスタンプを備えたセラミック管状膜ジオメトリについて言及されている。そのようなセラミック形式管状膜の生産のため、最初のステップ中、マクロ多孔性セラミック支持管は、押出加工されなければならない。浮き上がりスタンプは、セラミック支持管と共に共押出される。このために、特別は押出ヘッドが、回転内部品と共に必要である。押し出された波形のセラミック支持管は、後で、オーブンで焼き固められなければならない。その後、最終ステップにおいて、焼き固められた波形セラミック支持管は、その内壁に膜層が設けられなければならない。
【0010】
その欠点は、比較的に複雑な押出処理が必要になることである。さらに、それはセラミック支持管に限定されるが、これらの支持管は、製造コストが比較的に高い。最後に、この製造方法では、膜表面における浮き上がりスタンプとして、徐々に傾斜する波形しか得ることができないので、境界層の減少は限定され、性能の向上も限定される。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、1つ又は複数の前述した欠点を克服すること、又は、有用な代用を提供することを目的とする。特に、本発明は、局所的乱流および二次流れを促進する更なる改善手段を含み、適した装置を用いて産業的に生産する方法で経済的に製造可能な管状膜を提供することを目的とする。
【0012】
この目的は、請求項1に従う管状膜によって達成される。この管状膜は、前述したような螺旋状に巻回される形式の管状膜、すなわち、その管状膜は、互いに密封された重なり合うテープ縁で管形状へと螺旋状に巻回される多孔性支持材料の1つ又は複数の柔軟テープから作成される支持管を備える。膜形成材料で作られた半透過膜層が支持管の内壁に存在する。本発明によると、少なくとも1つの内部で突出する螺旋状隆起部が支持管の前記内壁に設けられる。この螺旋状隆起部は、膜層の一部で覆われるか膜層の一部を形成する。
【0013】
本発明によると、最初に、一体的な螺旋状隆起部で、螺旋状に巻回された管状膜を設けることが可能になった。この形式の螺旋状巻回管状膜に対して、管状膜の作成に必要な他の巻回およびキャスティングステップを用いて、1回で元位置において、それらの螺旋状隆起部を作ることが、さらに可能であるのは明らかであった。このために、本発明は、有益な生産方法および装置を提供し、これらを用いて、一体化された螺旋状隆起部を備えた本発明の螺旋状巻回管状膜が、経済的に産業規模で簡単に製造可能になる。以下、この方法および装置を詳細に取り扱う。
【0014】
隆起部は膜層で覆われるか膜層の一部を形成することから、膜層の残部の滑らかな表面と同一表面特性を都合良く得ているので、膜の透過性や保持特性を制限することはない。
【0015】
隆起部は、軸方向および径方向の寸法に、境界層において所望の乱流や二次流れを得るのに十分な大きさが与えられ、同時に、膜横断面を著しく遮断しないので、その障害物にはならない。このために、隆起部は、0.1−10mmの厚みおよび/または管状膜の内径の1−30%の厚みを有するのが好ましい。
【0016】
隆起部には、所望の乱流および二次流れが発生し始めることなく、隣接隆起部にわたって流体が流れ始めることを防止するのに十分な大きさのピッチを備えた螺旋形状を与えることができる。このために、螺旋状隆起部は、5−50mmのピッチを有するのが好ましい。
【0017】
この形式の螺旋状巻回管状膜に、そのような螺旋状隆起部を追加することによって、螺旋状隆起部のちょうど前後に乱流および二次流れが発生するのは明らかであった。それらの乱流および二次流れは、境界層が、管状膜を通って流れる流体の残部と良好に混合される状態を保つのに役立つ。膜層の表面において、境界層の内側における乱流および二次流れの発生は、薄い境界層になり、濃度分極(concentration polarization)が低く、ケーキ形成(cake formation)が小さくなる。これは、多少の高い圧力降下を犠牲にするが、そのような螺旋状隆起部を持たない滑らかな円筒状の膜と比べると、高い透過流束を可能にする。実際、この形式の螺旋状巻回管状膜の性能が50%以上高められることが、さらに明らかであった。そのような高い作動流束は、必要とされる小さな膜領域のため、重要な資本節約になり、さらに/または、低い特定エネルギー消費(取り扱われる流体のkWh/m3)にも貢献する可能性がある。それらの利点は、精密濾過、限外濾過、ナノ濾過から逆浸透まで、全範囲の管状膜をベースにした濾過を得ようと努めることが明らかであり、それら全てが、本発明から利益を得る可能性がある。
【0018】
特定実施形態において、螺旋状隆起部は、多孔性または半透過性材料から作成されることが明らかであった。これが有する利点は、隆起部の表面特性が膜層と同一であるばかりか、透過水が全体の隆起部を通って流れることである。そのため、隆起部は、透過水の流れ自体に対して障害物を形成しない。
【0019】
更なる実施形態において、隆起部は、全体として、半透過性の膜層と同一または同様の膜材料から作成することができる。これは、たとえば、PES、PSF、PVDF、PP、PAまたは、これらの混合物でもよい。その後、膜層の形成と共に、1つのキャスティングステップで隆起部を作ることができる。
【0020】
代替において、支持管が形成される柔軟テープと同一または同様の多孔性支持材料から、隆起部も作成することができる。これは、たとえば、PP,PET,PA,PBTまたは、これらの混合物でもよい。その後、隆起部は、管形状へとテープの螺旋状巻回で、1回で作ることができ、後に、膜層で覆われる。
【0021】
管状膜の更に好ましい実施形態は、従属形式の請求項で述べられる。
【0022】
また、本発明は、そのような螺旋状巻回管状膜を、請求項7に従う一体的な螺旋状隆起部で生産する為の方法に関する。この方法は、マンドレルの巻回セクションの周りに、重なり合うテープ縁を用いて、管形状へと螺旋状に巻回させることによって、多孔性支持材料の1つ又は複数の柔軟テープから支持管を作成するステップを含む。この支持管は、マンドレルに関して、連続して回転し、前方に移動し、その一方で、重なり合うテープ縁は互いに密封される。次のステップにおいて、膜形成材料の半透過性膜層は、支持管の内壁に作られる。本発明の思想によると、少なくとも1つの内部で突出する螺旋状隆起部が支持管の前記内壁に形成される。この螺旋状隆起部は、支持管および膜層を作成中、膜層で覆われ、或いは、膜層の一部を形成する。
【0023】
特定の実施形態において、隆起部は、その形成中、マンドレル内の1つ又は複数の螺旋状溝を通って導かれるようになる。これは、有利に、生産処理の為に1つの同一のマンドレルを使用することを可能にする。
【0024】
好ましい実施形態において、膜層を作るステップには、支持管をマンドレルのキャスティングセクションにわたって導くことによって、支持管の前記内壁で膜形成材料の液滴を堆積する工程が含まれる。このステップ中、キャスティングセクションは、圧縮された膜形成材料を用いて繰り出される。次のステップとして、ドクタリングは、マンドレルのドクタリングセクションにわたって、堆積された膜形成材料を導くことによって、支持管の前記内壁に沿って、堆積された膜形成材料で行われてもよい。このドクタリング中、一体的に形成された隆起部は、マンドレルのドクタリングセクションに存在する前記1つ又は複数の螺旋状溝のうちの最初の一つを通って導かれる。
【0025】
第1実施形態において、隆起部は、先に流延され修繕された膜層において、膜形成材料で流延、修繕され、或いは、膜層のキャスティングおよびドクタリングと共に流延および修繕される。マンドレルのキャスティングおよびドクタリングセクションに沿った隆起部の、このキャスティングおよびドクタリング中、隆起部は、マンドレルのドクタリングセクション内に設けられる螺旋状溝を滑り始める自由度を得る。
【0026】
第2実施形態において、隆起部は、柔軟なリボン形状隆起部によって形成され、柔軟なリボン形状隆起部は、マンドレルの巻回セクションの周りにテープと共に螺旋状に巻回される。このリボン形状隆起部は、好ましくは、多孔性材料で作られる。この第2実施形態のため、リボン形状隆起部は、既にテープ上に存在し、テープに接続され、マンドレルの巻回セクションの周りでテープと共に自動的に螺旋状に巻回されるようになるか、あるいは、マンドレルの巻回セクションに別個の部品として供給され、そこで、テープと共に螺旋状に巻回され、テープに密封されるようになる。リボン形状隆起部がマンドレルの巻回セクションの周りでテープと共に螺旋状に巻回される間、リボン形状隆起部は、マンドレルの巻回セクションに設けられる螺旋状溝を通って滑る自由度を得る。
【0027】
生産方法の更なる好ましい実施形態は、従属形式の請求項で述べられている。
【0028】
また、本発明は、そのような螺旋状巻回管状膜を、請求項13に従う一体的螺旋状隆起部を用いて生産する為の装置に関する。本発明によると、この装置は、支持管の内壁に形成する間を通して内部に突出する螺旋状隆起部の少なくとも1つを導くことによって、外周壁に1つ又は複数の螺旋状溝が設けられるマンドレルを備える。隆起部が巻回段階中に作られる場合、第1螺旋状溝および第2螺旋状溝は、マンドレルの巻回セクションおよびドクタリングセクションの両方に存在する必要がある。隆起部がキャスティング/ドクタリング段階中に作られる場合、単に螺旋状溝がマンドレルのドクタリングセクションに存在すればよい。
【0029】
当該装置の更なる好ましい実施形態は、従属形式の請求項で述べられている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
図1図1は、本発明に従う管状膜を生産する為の装置の第1実施形態を概略的に示す。
図2図2は、図1の装置で作られた管状膜の縦断面を示す。
図3図3は、本発明に従う管状膜を生産する為の装置の第2実施形態を概略的に示す。
図4図4は、図3の装置で作られた管状膜の縦断面を示す。
図5図5は、本発明に従う管状膜を生産する為の装置の第3実施形態を概略的に示す。
図6図6は、図5の装置で作られた管状膜の縦断面を示す。
図7図7は、本発明に従う管状膜を生産する為の装置の第4実施形態を概略的に示す。
図8図8は、図1のマンドレルのキャスティング及びドクタリングセクションの変形例の側面および斜視図を示す。
図9図9は、2つの隆起部を備えた本発明に従う管状膜の変形例の縦断面を示す。
【詳細な説明】
【0031】
図1において、螺旋状に巻回された管状膜を生産する為の装置は、マンドレルを備える。このマンドレルは、巻回セクション1、キャスティングセクション2、ドクタリング(doctoring)セクション3を備える。多孔性支持材料の柔軟テープ5は、適した繰り出し手段、例えば、リール(図示せず)から、巻回セクション1の方に供給される。このテープ5は、織布および/または不織布多孔性材料(例えば、ポリエステル)の1つ又は複数の層から形成され、巻回セクション1の周りに管形状へと重なり合うテープ縁6で螺旋状に巻回される。重なり合うテープ縁6は、適した密封手段7(例えば、超音波シール手段)によって互いに密封される。そのため、螺旋状に巻回され密封された支持管8が形成される。
【0032】
被駆動エンドレスベルト9は、巻回セクション1の端部近くの支持管8の周りを滑るが、これは、マンドレルセクション1−3に対して、目指された速度で支持管8を連続して回転させ、前方に移動させる為の駆動手段として設けられている。
【0033】
チャネル12は、巻回セクション1の中心に沿って走り、キャスティングセクション2で多くの出口開口13に接続し、出口開口13は、その周囲の周りで分割されている。出口開口13は、キャスティングセクション2と支持管8の間にある周囲繰り出し空間に広がっている。膜形成材料のドープの供給部に通じる繰り出し手段(図示せず)は、チャネル12に接続している。繰り出し手段は、圧力をかけて、膜形成材料14(例えば、ポリマー)のドープを、その空間に繰り出すように設計されている。そこでは、膜形成材料14が支持管8の内壁に堆積される。その後、支持管8と、そこに堆積された膜形成材料14は、ドクタリングセクション3に沿って、前方に回転して移動するように強いられるので、膜形成材料14は、自動的に膜層15へと修繕されるようになる。最終ステップにおいて、そのように形成された管状膜は、例えば、転相または凝固、および/または、空気中での乾燥によって、適した高温または低温流体内で硬化または浸出される。
【0034】
支持管8の内径d1および膜層15の内径d2を備えた管状膜を得るために、マンドレルのセクションは、以下の寸法で与えられる。巻回セクション1は、円筒状にされ、形成される支持管8の内径d1と実質的に対応する直径Dwを有する。ドクタリングセクション3も同様に円筒であり、形成される膜層15の内径d2と実質的に対応する直径Ddを有する。キャスティングセクション2は、ドクタリングセクション3の直径Ddより小さく、巻回セクション1の直径Dwより小さい直径Dcを有する。
【0035】
本発明によると、ドクタリングセクション3には、上流側螺旋状溝20が設けられ、上流側螺旋状溝20は、ドクタリングセクション3の全長にわたって延び、一端部で、キャスティングセクション2の周りの空間と接続する。膜層15のキャスティングおよびドクタリング中、螺旋状溝20は、自動的かつ同時に、膜形成材料の隆起部21を流延/修繕する。そのため、キャスティングセクション2から押し出されたドープは、全周に沿って単に均等には修繕されず、隆起部21を形成し始める。ドクタリングセクション3に沿った支持管の前進回転移動のため、この隆起部21は、支持管8の内壁に沿って連続した螺旋状に進むラインを辿り始める。図2を参照。生産中、この隆起部21は、全体のドクタリングセクション3に沿って支持管8の前進回転移動中、螺旋状溝20に広まり続ける。これが、膜層15の残部と一体的に適切に流延され修繕されるように、隆起部21に十分な時間を与える。そのため、膜層15は、支持管8で流延され修繕されるようになるばかりか、螺旋状隆起部21も同様である。螺旋状隆起部21は、同一材料から一回で作成されることから、いわば膜層15の一部を形成するので、一体的アセンブリを形成する。
【0036】
隆起部21の横断面形状および寸法は、溝20の形状および寸法によって望まれるように簡単に選択できる。形成される螺旋状隆起部21のピッチは、螺旋状溝20のピッチに依存するだろう。支持管8がマンドレルにわたって回転して前方に移動し始める速度は、螺旋状隆起部21が螺旋状溝20を通って滑り始める速度と対応するように慎重に調整される。
【0037】
図3において、同様の部品が同様の参照符合で与えられた装置の第2実施形態が示されている。この場合、テープ5’は巻回セクション1に供給され、巻回セクション1は、その上に一体的に接続または形成された隆起部21’を既に備えている。この隆起部21’は、テープ5’の残部と同一または同様の形式の多孔性材料から作成される。さらに、図3において、巻回セクション1には、下流側螺旋状溝30が設けられている。
【0038】
巻回中、隆起部21’は、下流側螺旋状溝30を通って滑り始めるので、管形状支持管8へと、巻回セクション1の周りをテープ5’の残部に沿って螺旋状に巻回する。支持管8が、その一体的隆起部21’と共に、後でキャスティングセクション2およびドクタリングセクション3に沿って通過するとき、膜層15は、支持管8の内壁および隆起部21’の両方で、均一な層厚で流延され修繕されるようになる。これは、図4で見られる。
【0039】
螺旋状隆起部21’が巻回セクション1の周りに巻回されるようになるピッチは、テープ5’が巻回されるようになるピッチに等しいので、テープ5’の幅、テープ縁6の重複量に依存する。螺旋状溝20,30は、螺旋状に巻回された隆起部21’の、このピッチに対応するようになっている。さらに、下流側螺旋状溝20は、上流側螺旋状溝30より僅かに大きな寸法になっており、膜層15は、隆起部21’で目指された層厚で流延および修繕が可能であることに留意されたい。
【0040】
図5には、第3実施形態が示されている。今回、テープ5は、区別する分離したリボン形状隆起部50と共に、巻回セクション1の方に供給されている。このリボン形状隆起部50は、テープ5と同様の形式の多孔性材料で作られている。巻回中、リボン形状隆起部50は、下流側螺旋状溝30を通って滑り始める。巻回セクション1において、重なり合うテープ縁6が第1密封手段7によって互いに密封されるようになるばかりか、リボン形状隆起部50が第2密封手段51によってテープ5に密封されるようになる。そのキャスティングおよびドクタリングセクションのため、図5の装置は、図3と同一に保たれる。図6には、図5の装置で生産される管状膜が見られる。
【0041】
図7には、第4実施形態が示されている。今回は、何も螺旋状溝がマンドレルに設けられていない。その代わり、ドクタリングセクションの自由端には、ノズル/出口開口70が設けられ、これが、チャネル12に接続し、圧縮された膜形成材料をノズル/出口開口70に繰り出している。前方に移動する回転支持管8が、その既に流延および修繕された膜層15と共に、このノズル/出口開口70を通るとき、内部で突出する隆起部は、自動的に膜層15に形成されるようになる。そのように形成された管状膜を後に硬化、浸出および/または乾燥させることによって、図2と同様の形式、すなわち、螺旋状に巻回された支持管の内側に膜形成材料の半透過性螺旋状隆起部を得ることができる。
【0042】
上記の4つの実施形態の他、多数の変形例が可能である。例えば、螺旋状隆起部の寸法および形状は、簡単に変形できる。隆起部のプロファイルは、例えば、三角形、矩形、半円、他の形状にすることができる。示され説明された装置および方法と共に、5〜12mmの直径を有する管状膜が、産業規模で効率良く生産できることが明らかであった。もっとも、1−25mmの直径も同様に可能であることに留意されたい。マンドレルの様々なセクションの長さは、必要に応じて長くも短くもできる。また、様々なセクションを備えたマンドレルが1つ又は複数の部品から作成できることにも留意されたい。図8には、キャスティングセクション2およびドクタリングセクション3と、巻回セクションに接続する為の接続手段80とを主として備えるマンドレルの一部が示されている。これと共に、キャスティングセクション2は多少長くされており、その下流側セグメントにおいて、繰り出し空間に膜形成材料を供給する為に複数の出口開口13を備える一方、一部の追加の出口開口81が、螺旋状溝20の開始部付近の上流側セグメントに設けられている。そのため、十分な膜形成材料がキャスティングセクション2において繰り出され、同様に隆起部を形成することが十分に保証可能である。単に一つの螺旋状隆起部を形成する代わりに、螺旋状巻回管状膜の内側に複数の隆起部を形成することも可能である。このためには、第1実施形態のドクタリングセクションの内側に、相補的な数の螺旋状溝を設け、或いは、第2実施形態または第3実施形態の巻回セクションおよびドクタリングセクションの内側に、相補的な数の螺旋状溝を設ける一方、相補的な数の隆起部を備えたテープを供給し、或いは、第4実施形態のドクタリングセクションの自由端において、相補的な数のノズル/出口開口を設けることで十分である。そのときでさえ、それぞれの隆起部は、異なる寸法および形状で与えることができる。例えば、図9は、同一ピッチp1、p2を有する2つの螺旋状隆起部を備えた実施形態を示し、その第1隆起部90は、第2隆起部91の高さh2より高い高さh1を有する。そのため、乱流および二次流れが誘発され、それが、さらに改善された透過流束エネルギー率を導くことが明らかであった。
【0043】
そのため、適した装置で一回で作られる螺旋状に巻回された管状膜が設けられ、同時に、多孔性または半透過性螺旋状隆起部が上部に形成され、これが、有利な乱流および二次流れを濾過中に生じさせるので、かなり高い透過流束エネルギー率になる。本発明に従う管状膜は、簡単かつ素早く、自動的に低コストで作ることができる。「滑らかな」螺旋状に巻回された管状膜を形成する本装置は、簡単に、内部に螺旋状溝が形成されたマンドレルを配置することによって容易に、本発明に従う装置に変形可能である。本発明に従う管状膜は、(廃)水の濾過、ビールの濾過、酪農の濾過などのような全種類の濾過処理に対して有利に使用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9