(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献では、給紙経路上に、弛みを形成させている技術ではあるが、用紙の弛みは、用紙自体の搬送抵抗によって、その弛みの大きさが異なってしまう。
【0005】
ここで、
図5を参照して従来技術における課題を説明する。
図5は、従来技術における給紙装置50を示す断面図である。
図5(A)及び(B)の状態のように、用紙Pは、給紙ローラ52から給紙されたレジストローラ54に向けて、用紙Pが弛ませられるように搬送される。この従来技術では、搬送経路56上にて、この搬送抵抗が小さい用紙Pの場合には、給紙ローラ52が回転し、停止するまでに時間がかかってしまう。したがって、
図5(C)に示すように、その下流側のレジストローラ54で用紙Pをレジストさせるまでに、搬送量が増加し、弛みが大きく形成されてしまう。弛み部が大きく形成されてしまうと、たるんだ用紙が給紙ユニット周囲の部品へ押しあたってしまい、弾性変形でも回復されずに、用紙Pにわずかな折れ目がついてしまう。
【0006】
次に、
図5(D)に示すように、この用紙Pの折れ目が、そのまま搬送されてしまうと、その下流側のレジストローラ54でたるみが解消されなくなる現象が起こりうる。その結果、
図5(E)に示すように、用紙Pの弛みが搬送経路56上で巻き込まれてしまい、そのまま、レジストローラ54にニップされてしまうことにより、用紙PがZ形状に折れ曲がってしまう現象、すなわち、Z折れが発生してしまう。
【0007】
用紙のZ折れが発生してしまうと、印刷部におけるインクジェット方式や電子写真方式等の印刷時において、特にZ折れ部分に画像形成が適切にできないばかりか、Z折れによって用紙厚みが増すため、その後の用紙搬送プロセスで用紙を適切に搬送できなくなり、搬送不良になる虞がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑み、給紙される用紙に適切な弛み形状を形成させることができ、Z折れを防止できる給紙装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)
給紙台に設置された用紙束から用紙を送出する給紙ローラと、
前記給紙ローラの搬送方向下流側に配置され、印刷部に対する用紙の送出タイミングを調整するレジストローラと、
前記給紙ローラと前記レジストローラとの間に形成される給紙経路において、給紙に係る用紙が弛んだ際、用紙の弛み形状に沿うように所定の曲がり量で形成される曲線部を有する弛み案内部と、
を備えた給紙装置であって、
前記弛み案内部が鉛直方向視において前記給紙ローラの
前記レジストローラ側の外周縁に接して配置され、前記弛み案内部の下面が水平方向視において前記給紙ローラの上部に位置し、
用紙搬送方向に直交する、搬送される用紙の幅方向で、且つ、前記レジストローラに対して前記給紙ローラが左側になる方向から視て、前記用紙の弛みがS字状に形成されることを特徴とする給紙装置。
【0010】
(2)
前記弛み案内部は、前記給紙ローラから搬送方向下流側に突出して形成され、さらに非曲線部を有するように形成されること
を特徴とする(1)に記載の給紙装置。
【0011】
(3)
前記弛み案内部は、用紙当接方向に基づき可動に構成されること
を特徴とする(1)又は(2)に記載の給紙装置。
【0012】
(4)
前記弛み案内部は、さらに、用紙の接触を緩衝させる緩衝部材を備えること
を特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の給紙装置。
(5)
前記弛み案内部の前記曲線部は、その曲率半径が7.5mm以上に設定されたことを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の給紙装置。
(6)
(1)記載の給紙装置の給紙方法であって、
前記給紙ローラと前記レジストローラとの間に形成された前記用紙の弛みが前記弛み案内部に当接した後、前記弛みが前記給紙ローラから離れる方向に大きくなるまで前記給紙ローラにより前記用紙を送り、その後前記レジストローラを駆動して前記用紙の弛みを解消させる、給紙装置の給紙方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第一の給紙装置によれば、
給紙ローラとレジストローラとの間に形成される給紙経路において、給紙に係る用紙の弛みがS字状に形成され、用紙種によらずに用紙の弛みを大きくして斜行補正を行いつつZ折れを防止できる。
【0014】
本発明の第二の給紙装置によれば、給紙ローラから突出して形成され、さらに非曲線部を有することで、金型成形する際に、製造しやすい効果がある。
【0015】
本発明の第三の給紙装置によれば、弛み案内部が用紙当接方向に基づき可動に構成されることにより、用紙に合わせて適切な弛みを形成させることができる。
【0016】
本発明の第四の給紙装置によれば、弛み案内部が用紙の接触を緩衝させる緩衝部を備えることにより、用紙の衝突があってもその衝撃を緩衝させることができる。
本発明の第五の給紙装置によれば、弛み案内部の曲線部は、その曲率半径が7.5mm以上となっているため、用紙のZ折れを防止することができる。
本発明の第六の給紙装置の給紙方法によれば、給紙ローラとレジストローラとの間に形成された用紙の弛みが弛み案内部に当接した後、弛みが給紙ローラから離れる方向に大きくなるまで給紙ローラにより用紙を送り、その後レジストローラを駆動して用紙の弛みを解消させることにより、用紙の弛みを大きく形成しつつ斜行補正を行い、Z折れを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。また、この実施の形態によって本発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者等により考え得る実施可能な他の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれるものとする。
【0019】
図1は、インクジェット印刷装置の給紙部および印刷部の概略構成図である。
【0020】
以下の説明において、特に言及しない限り、
図1の紙面に直交する方向を前後方向とし、紙面表方向を前方とする。また、
図1における紙面の上下左右を上下左右方向とする。
図1において、左から右へ向かう方向が印刷媒体である用紙Pの搬送方向である。以下の説明における上流、下流は、搬送方向における上流、下流を意味する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係るインクジェット印刷装置1は、給紙部2と、印刷部3と、制御部4とを備える。給紙部2は、用紙Pを印刷部3へ給紙する。
図1に示すように、給紙部2は、給紙台11と、給紙ローラ12と、給紙モータ13と、レジストローラ14と、レジストモータ15とを備える。
【0022】
給紙台11は、印刷に用いられる用紙Pが積載されるものである。
【0023】
給紙ローラ12は、1次給紙を行う。1次給紙は、給紙台11からレジストローラ14への給紙である。具体的には、給紙ローラ12は、給紙台11から用紙Pを1枚ずつピックアップして搬送し、用紙Pをレジストローラ14に突き当てて停止させる。
【0024】
給紙モータ13は、図示しないクラッチを介して、給紙ローラ12を回転駆動させる。
【0025】
レジストローラ14は、2次給紙を行う。2次給紙は、レジストローラ14から印刷部3への給紙である。具体的には、レジストローラ14は、給紙ローラ12により搬送されてきた用紙Pを一旦止めた後、印刷部3に向けて搬送する。レジストローラ14は、給紙ローラ12の下流側に配置されている。
【0026】
レジストモータ15は、レジストローラ14を回転駆動させる。
【0027】
印刷部3は、用紙Pを搬送しつつ印刷する。印刷部3は、給紙部2の下流側に配置されている。印刷部3は、搬送部21と、4つのインクジェットヘッド22とを備える。
【0028】
搬送部21は、給紙部2により給紙された用紙Pを搬送する。搬送部21は、搬送ベルト31と、駆動ローラ32と、従動ローラ33,34,35と、ベルトモータ36と、エンコーダ37と、プラテンプレート38と、ファン39と、ベルトポジションセンサ40とを備える。
【0029】
搬送ベルト31は、用紙Pを吸着保持して搬送する。搬送ベルト31は、駆動ローラ32および従動ローラ33〜35に掛け渡される環状のベルトである。搬送ベルト31は、可塑性を有し、用紙Pとの間に適度な摩擦力を発生させるゴム、樹脂等の材料により構成される。
【0030】
駆動ローラ32は、搬送ベルト31を
図1における時計回り方向に回転させる。
【0031】
従動ローラ33〜35は、駆動ローラ32とともに搬送ベルト31を支持する。従動ローラ33〜35は、搬送ベルト31を介して駆動ローラ32に従動する。従動ローラ33は、駆動ローラ32と同じ高さで、駆動ローラ32の左方に配置されている。従動ローラ34,35は、駆動ローラ32および従動ローラ33の下方において、互いに左右方向に離間して、同じ高さに配置されている。
【0032】
ベルトモータ36は、駆動ローラ32を回転駆動させる。
【0033】
エンコーダ37は、従動ローラ33の所定の回転角度ごとにパルス信号を出力する。
【0034】
プラテンプレート38は、駆動ローラ32と従動ローラ33との間において搬送ベルト31の下側に配置され、搬送ベルト31の下面を摺動可能に支持する。プラテンプレート38は、金属、樹脂等からなる。
【0035】
ファン39は、下方向への気流を生じさせ、プラテンプレート38の吸引孔(図示せず)を介して空気を吸引して負圧を発生させ、用紙Pを搬送ベルト31上に吸着させる。ファン39は、プラテンプレート38の下方に配置されている。
【0036】
ベルトポジションセンサ40は、搬送ベルト31に形成された基準孔(図示せず)を検出する。
【0037】
インクジェットヘッド22は、搬送部21により搬送される用紙Pにインクを吐出して画像を印刷する。4つのインクジェットヘッド22は、それぞれブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを吐出する。インクジェットヘッド22は、搬送部21の上方に配置されている。
【0038】
制御部4は、インクジェット印刷装置1の各部の動作を制御する。制御部4は、CPU、RAM、ROM、ハードディスク等を備えて構成される。
【0039】
具体的には、制御部4は、給紙部2により用紙Pを給紙し、給紙された用紙Pを搬送部21により搬送しつつ、インクジェットヘッド22からインクを吐出して用紙Pに印刷するよう制御する。
【0040】
次に、インクジェット印刷装置1の動作について説明する。動作の流れとしての処理は、インクジェット印刷装置1に印刷ジョブが入力されることにより開始となる。次に、制御部4は、搬送部21を起動させる。具体的には、制御部4は、ベルトモータ36により駆動ローラ32を起動させる。これにより、搬送ベルト31の周回駆動が開始される。制御部4は、搬送ベルト31による用紙Pの搬送速度が所定の印刷搬送速度になるように駆動ローラ32を駆動させる。また、制御部4は、ファン39を起動させる。
【0041】
次いで、制御部4は、給紙モータ13により図示しないクラッチを介して給紙ローラ12を駆動させて1次給紙を行う。具体的には、制御部4は、給紙ローラ12が用紙Pを給紙台11からピックアップした後、用紙Pをレジストローラ14に突き当て、弛ませて停止させるよう制御する。これにより、用紙Pの斜行が補正される。
【0042】
その後、用紙Pは、先端が搬送ベルト31に到達すると、先端側から徐々に搬送ベルト31に吸着されつつ、搬送ベルト31およびレジストローラ14により搬送される。
【0043】
次いで、制御部4は、用紙Pがインクジェットヘッド22の下方の所定位置に達した後、インクジェットヘッド22による印刷を開始させる。
【0044】
次いで、制御部4は、レジストローラ停止タイミングになったか否かを判断する。レジストローラ停止タイミングは、用紙Pの搬送方向における後端がレジストローラ14を抜けるタイミングである。レジストローラ停止タイミングは、用紙Pの搬送方向における長さに応じて設定される。
【0045】
レジストローラ停止タイミングになったと判断した場合、制御部4は、レジストローラ14を停止させる。後端がレジストローラ14を抜けた後、用紙Pは、印刷部3において搬送ベルト31により搬送されつつ印刷される。
【0046】
次いで、制御部4は、印刷部3における用紙Pの印刷および搬送が終了したと判断した場合、制御部4は、搬送部21を停止させる。具体的には、制御部4は、駆動ローラ32を起動させるとともに、ファン39を停止させる。これにより、一連の動作が終了となる。
【0047】
次に、
図2を参照して、本実施形態における給紙装置100の概略構成図を用いて説明する。給紙装置100は、用紙を給紙する給紙ローラ102とこの給紙ローラ102で給紙された用紙をレジストするためのレジストローラ104を備える。
【0048】
また、給紙装置100は、給紙ローラ102とレジストローラ104の間に、搬送経路106を形成する。本実施形態においては、給紙装置100は、給紙ローラ102によって給紙され、給紙に係る用紙が弛んだ際に、用紙の弛み形状に沿うように形成されるような曲線部を有する弛み案内部108を備える。
【0049】
次に、
図3を参照して、本実施形態における給紙装置100において用紙Pがレジストローラ104に到達し、印刷部まで搬送される場合の給紙動作を示す概略構成図を用いて説明する。
【0050】
図3(A)に示すように、用紙Pは、給紙ローラ102から給紙され、レジストローラ104に突き当てられる。
【0051】
次に、
図3(B)に示すように、突き当てられた用紙Pは、給紙ローラ102により、搬送経路106上で搬送され、搬送ガイド部材110に沿って、徐々に用紙Pが弛むことによって弛みが形成される。
【0052】
次に、
図3(C)に示すように、さらに給紙ローラ102から用紙Pが搬送されると、搬送ガイド部材110に沿って形成された弛みがさらに大きくなり、所定の曲線部を有する弛み案内部108に沿い、用紙Pが山なり状になることで、弛みTが形成される。本実施形態においては、弛み案内部108の曲線部が所定の用紙曲がり量で形成されているため、用紙P上に折れ目が形成されることを防止できる。
【0053】
次に、
図3(D)に示すように、レジストローラ104が動作すると、弛みTが形成された用紙Pが搬送経路106上を、レジストローラ104の下流側に向かって搬送される。
図3(C)に示す状態で、所定の用紙曲がり量によって、十分大きい弛みTが形成されているため、
図3(E)に示すように、用紙Pが折れ曲がることなくレジストローラ104の下流側に搬送される。
【0054】
なお、本実施形態において、弛み案内部108は、所定の曲線部を有する形態を説明したが、これに限られず、用紙搬送方向下流側になるにしたがって非曲線部を備えてもよい。
図2に示すように、曲線部109と非曲線部111を備えることによって、本実施形態においては、弛み案内部108を金型により成形する際に、特に、非曲線部111を有することによって、金型の加工をしやすい効果がある。
【0055】
また、本実施形態において、弛み案内部108は、給紙装置100に固定された状態で用紙Pの弛み形成の挙動によっては動かない形態で説明したが、これに限られず、用紙Pの弛みが当接された際に可動する可動部材を備えて形成してもよい。本実施形態においては、用紙Pが当接した場合に、弛み案内部108に可動部材を設けることによって、さらに、用紙Pへの傷つけを防止し、用紙のZ折れをさらに防止することができる効果ある。
【0056】
また、本実施形態において、弛み案内部108は、用紙Pの弛みが当接された際に用紙の衝撃を緩衝する緩衝部材を備えて形成してもよい。本実施形態においては、用紙Pが当接した場合に、弛み案内部108に緩衝部材を設けることによって、さらに、弛み案内部108からの用紙への衝撃を防止することで、用紙のZ折れをさらに防止することができる効果ある。
【0057】
次に、
図4を参照して、本実施形態の給紙装置100において、弛み案内部108の曲線部を設定するために、用紙曲がり量を実験した結果を用いて説明する。
【0058】
図4(A)に示すように、本実施形態に置いて、複数種類の用紙に対して、2つの金属ブロックの間隙を設定することで、用紙曲がり量Dとし、複数種類の測定用紙を挟んだ後、その用紙を平面に載置した状態で、平面からの折れ量aを測定した。
【0059】
その結果として、
図4(B)に示すように、複数種類の用紙A乃至Cにおいて、2つの金属ブロックの間隙が小さい、すなわち用紙曲がり量Dが小さい場合、例えば、用紙曲がり量が5mmまでの場合には、いずれの用紙も、折れ量aが大きくなり、用紙がZ折れしやすい状態であった。
【0060】
しかし、2つの金属ブロックの間隙が大きい、すなわち用紙曲がり量Dが大きくなるにつれ、例えば、用紙曲がり量Dが15mm以上の場合には、折れ量aは、ほとんどゼロに近く非常に小さい状態であり、用紙のZ折れは起こりにくい状態であることが示される。
【0061】
本実施形態において、
図2に示すように、弛み案内部108は、曲線部を有し、その曲線部は、その半径をrとした場合に、用紙曲がり量D15mmを基準として、その半分である約7.5mm以上の値と設定した。この値に設定することによって、用紙のZ折れを防止する効果を有する。
【0062】
上記のように、本発明は、本実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。