(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705615
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】画像読取装置、原稿サイズ検出方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20200525BHJP
H04N 1/10 20060101ALI20200525BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20200525BHJP
G03B 27/54 20060101ALI20200525BHJP
G03B 27/50 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
H04N1/04 106A
H04N1/10
G06T1/00 430J
G03B27/54 A
G03B27/50 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-45271(P2017-45271)
(22)【出願日】2017年3月9日
(65)【公開番号】特開2018-152631(P2018-152631A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100158757
【弁理士】
【氏名又は名称】▲濱▼田 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100121094
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 亮
(72)【発明者】
【氏名】楠畑 雅彦
【審査官】
花田 尚樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−258658(JP,A)
【文献】
特開平09−135330(JP,A)
【文献】
特開2017−034392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04 − 1/207
G03B 27/50
G03B 27/52 −27/56
27/66 −27/70
G06T 1/00
G06T 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に原稿を載置する透明な原稿台と、
前記原稿台の裏面側から表面側に光を照射する光源と、
前記原稿台の表面側から裏面側に入射する光を検出するラインセンサと、
前記ラインセンサによる検出を、前記光源をオフにした第1測定期間と、前記光源をオンにした第2測定期間と、前記光源をオフにした第3測定期間とで順次行ない、
前記第2測定期間で得られた前記ラインセンサの主走査方向の輝度分布と、前記第1測定期間と前記第3測定期間とを合わせた期間で得られた最大輝度の前記主走査方向の分布との差分に基づいて、前記主走査方向の原稿サイズを検出する原稿サイズ検出部と、
を備えたことを特徴とする画像読取装置。
【請求項2】
前記原稿台の表面を覆う開閉可能な原稿カバーをさらに備え、
前記原稿サイズ検出部は、
前記原稿カバーが開かれた状態から所定の中角度まで閉じられたことを検知すると前記主走査方向の原稿サイズを検出することを特徴とする請求項1に記載の画像読取装置。
【請求項3】
前記原稿サイズ検出部は、
前記原稿カバーが前記中角度からさらに所定の小角度まで閉じられたことを検知すると、前記光源をオンにした第4測定期間で前記ラインセンサによる検出を行ない、
前記原稿サイズの検出に代え、前記第2測定期間で得られた前記ラインセンサの主走査方向の輝度分布と、前記第1測定期間と前記第3測定期間とを合わせた期間で得られた最大輝度の前記主走査方向の分布との差分に基づいて、前記ラインセンサの主走査方向の光源オンオフ差分輝度分布を求め、
前記第4測定期間で得られた前記ラインセンサの主走査方向の輝度分布と、前記ラインセンサの主走査方向の前記光源オンオフ差分輝度分布との差分に基づいて、前記主走査方向の原稿サイズを検出することを特徴とする請求項2に記載の画像読取装置。
【請求項4】
前記ラインセンサは、前記第1測定期間と前記第3測定期間のそれぞれについて、前記検出を複数回繰り返し行なうことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像読取装置。
【請求項5】
表面に原稿を載置する透明な原稿台と、前記原稿台の裏面側から表面側に光を照射する光源と、前記原稿台の表面側から裏面側に入射する光を検出するラインセンサとを備えた画像読取装置における原稿サイズ検出方法であって、
前記ラインセンサによる検出を、前記光源をオフにした第1測定期間と、前記光源をオンにした第2測定期間と、前記光源をオフにした第3測定期間とで順次行ない、
前記第2測定期間で得られた前記ラインセンサの主走査方向の輝度分布と、前記第1測定期間と前記第3測定期間とを合わせた期間で得られた最大輝度の前記主走査方向の分布との差分に基づいて、前記主走査方向の原稿サイズを検出することを特徴とする原稿サイズ検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像読取装置に関し、特に、主走査方向の原稿サイズの検出技術に関する。
【背景技術】
【0002】
反射型フラットベッド方式の画像読取装置は、透明な原稿台に載置された原稿に、原稿台側から光を照射し、その反射光を読み取ることで原稿の画像情報を取得する。一般的には、光源とラインセンサとを搭載したキャリッジを副走査方向に移動させることで読取りを行なう。また、原稿台の上部には開閉式の原稿カバーが取り付けられている。
【0003】
画像読取装置では、原稿の画像情報取得に先立ち、原稿サイズの検出が行なわれる。原稿サイズの検出は、主走査方向については、キャリッジで原稿の反射光を取得して判定し、副走査方向については、別途設けられたサイズ検知用反射センサを利用して判定する方法が、小型で安価な構成となるため広く用いられている。ここでは、キャリッジによる主走査方向の原稿サイズの検出に着目する。
【0004】
原稿サイズの検出は、原稿カバーが完全に閉じられる前に行なうようにしている。具体的には、原稿カバーが大きく開いた状態から所定の角度まで閉じられたことを検知すると、キャリッジの光源をオンにして反射光を読み取る。原稿カバーが閉じきっていない状態では、原稿載置部分では反射光が強く、原稿がない部分では反射光が弱くなる。このため、主走査方向の読取信号の輝度分布に基づいて原稿サイズを検出することができる。例えば、原稿判定用の閾値を設定し、輝度が閾値を超えている領域に原稿が存在していると判定することが行なわれている。
【0005】
このとき、照明や太陽等の外部光が原稿台に入射していると、読取信号の輝度分布に影響を与え、原稿サイズを誤検出するおそれがある。このため、
図9(a)〜(c)に示すように、光源オン時の読取りに加え、光源オフ時の読取りを行ない、前者の輝度分布から後者の輝度分布を引くことで、外部光の影響をキャンセルすることが従来から行なわれている。この手法を、光源オンオフ差分法と称するものとする。
【0006】
さらに、特許文献1には、外部光が蛍光灯のような点滅周期を有する場合であってもその影響を確実にキャンセルするために、光源オフ時において、外部光の点滅周期よりも長い測定期間中の最大値を読取信号の値とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−74254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
外部光は、白熱灯やLED照明のように強度が一定のものや、蛍光灯のように定常的な短い点滅周期を有するものとは限られない。例えば、窓を介して太陽光が原稿台に入射している場合に、陰り具合や、カーテン等の揺れに応じて光の強度が不規則に変化することもある。
【0009】
光源オンオフ差分法において、原稿サイズの検出時に外部光の強度が変化した場合に、
図10(a)に示すように、光源オン時の外部光よりも光源オフ時の外部光の方が強いときには、差分により外部光成分が負となる。このため、外部光の影響をキャンセルすることができる。
【0010】
しかしながら、
図10(b)に示すように、光源オフ時の外部光よりも光源オン時の外部光の方が強いときには、差分をとっても外部光成分が原稿の反射光成分と同じ正側に現われることになり、原稿サイズの検出精度が悪化するおそれがある。原稿判定の閾値を大きくすることにより、外部光成分を除くことも考えられるが、反射光の弱い濃色原稿等の検出精度が悪化するという弊害が生じてしまう。
【0011】
図10(b)に示した光源オフ時よりも光源オン時の外部光の方が強い状況は、具体的には、
図11(a)に示すように、光源オフ時の測定の後に光源オン時の測定を行なう仕様において、原稿サイズの検出時に外部光が強くなる変化をしている場合、あるいは、
図11(b)に示すように、光源オン時の測定の後に光源オフ時の測定を行なう仕様において、原稿サイズの検出時に外部光が弱くなる変化をしている場合に発生する。
【0012】
そこで、本発明は、原稿サイズの検出時に外部光の強さが変化している場合であっても、原稿サイズの検出精度が悪化することを防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様である画像読取装置は、表面に原稿を載置する透明な原稿台と、前記原稿台の裏面側から表面側に光を照射する光源と、前記原稿台の表面側から裏面側に入射する光を検出するラインセンサと、前記ラインセンサによる検出を、前記光源をオフにした第1測定期間と、前記光源をオンにした第2測定期間と、前記光源をオフにした第3測定期間とで順次行ない、前記第2測定期間で得られた前記ラインセンサの主走査方向の輝度分布と、前記第1測定期間と前記第3測定期間とを合わせた期間で得られた最大輝度の前記主走査方向の分布との差分に基づいて、前記主走査方向の原稿サイズを検出する原稿サイズ検出部と、を備えたことを特徴とする。
これにより、原稿サイズの検出時に外部光の強さが変化している場合であっても、原稿サイズの検出精度が悪化することを防ぐことができる。
ここで、前記原稿台の表面を覆う開閉可能な原稿カバーをさらに備え、前記原稿サイズ検出部は、前記原稿カバーが開かれた状態から所定の中角度まで閉じられたことを検知すると前記主走査方向の原稿サイズを検出するようにしてもよい。
これにより、原稿カバーが完全に閉じられる前に原稿読取指示を受けた場合であっても、原稿サイズは検出済であるため、即座に原稿読取り処理を開始することができる。
このとき、前記原稿サイズ検出部は、前記原稿カバーが前記中角度からさらに所定の小角度まで閉じられたことを検知すると、前記光源をオンにした第4測定期間で前記ラインセンサによる検出を行ない、前記原稿サイズの検出に代え、前記第4測定期間で得られた前記ラインセンサの主走査方向の輝度分布と、前記第1測定期間と前記第3測定期間とを合わせた期間で得られた最大輝度の前記主走査方向の分布との差分に基づいて、前記主走査方向の原稿サイズを検出するようにしてもよい。
これにより、原稿カバーが閉じられた際に開閉差分法による原稿サイズ検出を行なうことができる。
また、前記ラインセンサは、前記第1測定期間と前記第3測定期間のそれぞれについて、前記検出を複数回繰り返し行なうようにしてもよい。
検出を複数回繰り返すことにより、最大輝度の検出精度を高めることができる。
上記課題を解決するため、本発明の第2の態様である原稿サイズ検出方法は、表面に原稿を載置する透明な原稿台と、前記原稿台の裏面側から表面側に光を照射する光源と、前記原稿台の表面側から裏面側に入射する光を検出するラインセンサとを備えた画像読取装置における原稿サイズ検出方法であって、前記ラインセンサによる検出を、前記光源をオフにした第1測定期間と、前記光源をオンにした第2測定期間と、前記光源をオフにした第3測定期間とで順次行ない、前記第2測定期間で得られた前記ラインセンサの主走査方向の輝度分布と、前記第1測定期間と前記第3測定期間とを合わせた期間で得られた最大輝度の前記主走査方向の分布との差分に基づいて、前記主走査方向の原稿サイズを検出することを特徴とする。
これにより、原稿サイズの検出時に外部光の強さが変化している場合であっても、原稿サイズの検出精度が悪化することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、原稿サイズの検出時に外部光の強さが変化している場合であっても、原稿サイズの検出精度が悪化することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る画像読取装置の主要な構成を示すブロック図である。
【
図2】表面側から見た原稿台を模式的に示す図である。
【
図3】本実施形態の画像読取装置における主走査方向の原稿サイズの取得手順について説明するフローチャートである。
【
図4】外部光の強度が変化した場合の測定を説明する図である。
【
図5】本実施形態の光源オンオフ差分輝度分布を説明する図である。
【
図7】本発明を適用した開閉差分法を説明する図である。
【
図8】原稿サイズ検出トリガを説明するフローチャートである。
【
図9】従来の外部光の影響をキャンセルする手法を説明する図である。
【
図10】原稿サイズの検出時に外部光の強度が変化した場合の影響を説明する図である。
【
図11】原稿サイズの検出精度に悪影響を与える外部光の強さの変化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る反射型フラットベッド方式の画像読取装置100の構成を示すブロック図である。本図に示すように、画像読取装置100は、原稿台110、原稿カバー111、キャリッジ120、駆動機構124、副走査方向サイズセンサ126、原稿カバー角度センサ128、制御部130、通信部141、記憶部142、操作受付部143を備えている。
【0017】
原稿台110は、表面に原稿を載置する透明なガラス板である。原稿カバー111は、原稿台110の表面を覆う開閉可能で光不透過の板状部材である。
【0018】
キャリッジ120は、原稿台110の裏面側から表面側に光を照射する光源121と、原稿台110の表面側から裏面側に入射する光を検出するラインセンサ122とを搭載している。検出はRGB信号別に行なうものとする。駆動機構124は、ステッピングモータ等によりキャリッジ120を副走査方向に移動させる。
【0019】
なお、光源121あるいはラインセンサ122をキャリッジ120に搭載せずに原稿台110裏面に固定し、ミラー等をキャリッジ120に搭載するようにしてもよい。
【0020】
副走査方向サイズセンサ126は、原稿台110裏面側に固定された複数個の反射センサ等により、副走査方向の原稿サイズを検出する。原稿カバー角度センサ128は、原稿カバー111の開き具合を検出する。本実施形態では、一例として、全開状態から全閉状態の間に2つの角度閾値を設け、大角度状態、中角度状態、小角度状態の3つの状態のいずれかを判定するものとする。
【0021】
制御部130は、演算処理装置、画像処理装置等から構成され、読取制御部131、画像処理部132、原稿サイズ検出部133を備えている。読取制御部131画像読取装置100における画像読取り処理の制御を行なう。画像処理部132は、ラインセンサ122が読み取った画像信号に基づいた画像処理を行なう。原稿サイズ検出部133は、原稿台110に載置された原稿のサイズを検出する。主走査方向の原稿サイズの検出処理については後に詳述する。
【0022】
通信部141は、印刷装置、PC等の外部装置と通信を行なう。記憶部142は、読み取った画像信号等を一時的に記憶する。操作受付部143は、スタートボタン、パネルスイッチ等を介してユーザからの指示を受け付ける。ユーザからの指示は、通信部141を介して外部装置から受け付けるようにしてもよい。
【0023】
図2は、表面側から見た原稿台110を模式的に示す図である。裏面側には、光源121、ラインセンサ122を搭載したキャリッジ120が配置されている。キャリッジ120が伸びる方向が主走査方向であり、キャリッジ120の移動方向が副走査方向となる。原稿台110の裏面側には、2つの副走査方向サイズセンサ126a、126bも配置されている。
【0024】
本実施形態では、原稿台110の一隅が原点として定められる。原稿は、原稿サイズ種に対応した図中の矩形状の点線が示すように、原点に角が突き当てられて載置される。主走査方向の原点側がリア側となり、反対側がフロント側となる。原稿カバー111の開閉軸は、リア側に副走査方向に沿って配置されている。
【0025】
原稿サイズ検出部133は、主走査方向の原稿サイズをラインセンサ122が読み取った画像信号に基づいて取得し、副走査方向の原稿サイズを副走査方向サイズセンサ126で取得する。そして、両取得結果に基づいて原稿台110に載置された原稿サイズを判定する。以下では、主走査方向の原稿サイズの取得に着目して説明する。
【0026】
図3は、本実施形態の画像読取装置100における主走査方向の原稿サイズの取得手順について説明するフローチャートである。本処理は、原稿サイズ検出部133の制御により行なわれる。
【0027】
本実施形態では、光源オンオフ差分法を基本に主走査方向の原稿サイズを取得する。このため、原稿カバー111が開いている状態で原稿サイズ取得処理を行なう。
【0028】
原稿サイズ検出のトリガが発生すると、光源オフによる読取りを行なう(S101)。この読取り期間を第1測定期間と称する。第1測定期間では、所定のサンプリング間隔で複数回読取りを行なう。なお、原稿サイズ検出のトリガについては後述する。
【0029】
読取りは、主走査方向についての所定単位毎にRGB値を取得する。所定単位は、画素、所定長等とすることができる。ノイズの影響を除去するために、移動平均を算出して取得値としてもよい。
【0030】
そして、主走査方向についての所定単位毎に、第1測定期間中のRGBそれぞれの最大値による輝度を算出して保存する(S102)。ここで、輝度値は、RGB値の加重平均により求めることができ、例えば、3×R値+6×G値+1×B値とすることができる。この結果、第1測定期間における主走査方向の最大輝度分布が得られることになる。なお、サンプリング毎に輝度を算出し、第1測定期間中の輝度の最大値を求めてもよい。
【0031】
次に、光源121をオンにし(S103)、光源オンによる読取りを行なう(S104)。この読取り期間を第2測定期間と称する。第2測定期間でも主走査方向についての所定単位毎に輝度分布を取得するが、第2測定期間中の最大値である必要はない。最小値、平均値等でもよく、第2測定期間中に1回のサンプリングであってもよい。この輝度分布を光源オン時輝度分布と称する。
【0032】
次に、光源121をオフにし(S105)、光源オフによる読取りを行なう(S106)。この読取り期間を第3測定期間と称する。第3測定期間では、第1測定期間と同様に所定のサンプリング間隔で複数回読取りを行ない、第3測定期間の最大輝度を算出して保存する(S107)。
【0033】
そして、第1測定期間の最大輝度分布と第3測定期間の最大輝度分布とから、光源121をオフにした両測定期間中の最大輝度分布を作成する(S108)。すなわち、主走査方向についての所定単位毎に、第1測定期間の最大輝度値と第3測定期間の最大輝度値とを比較し、大きい方の値を抽出すればよい。この最大輝度分布を光源オフ時輝度分布と称する。
【0034】
光源オン時輝度分布と光源オフ時輝度分布とが得られると、光源オンオフ差分法に従って、光源オン時輝度分布と光源オフ時輝度分布との差分を算出し(S109)、得られた主走査方向の輝度分布(「光源オンオフ差分輝度分布」と称する)に基づいて原稿サイズを判定する(S110)。
【0035】
このように、本実施形態では、光源121をオフにした第1測定期間と、光源121をオンにした第2測定期間と、光源121をオフにした第3測定期間とを順次行なうようにしている。すなわち、光源オンの測定の前後に光源オフの測定を行なっている。そして、第1測定期間と第3測定期間とを合わせた期間の最大輝度に基づいて光源オフ時輝度分布を作成する。
【0036】
このため、
図4(a)に示すような原稿サイズの検出時に外部光が強くなる変化をしている場合であっても、
図4(b)に示すような原稿サイズの検出時に外部光が弱くなる変化をしている場合であっても、外部光が強いときの輝度値で光源オフ時輝度分布を作成することができる。なお、各測定期間の長さは任意に定めることができ、短時間に設定することで高速処理が可能となる。
【0037】
本実施形態の画像読取装置100では、
図5に示すように、光源オンオフ差分輝度分布に外部光成分が原稿の反射光成分と同じ正方向に大きく現われることを防ぐことができる。このため、原稿サイズの検出時に外部光の強さが変化している場合であっても、原稿サイズの検出精度が悪化することを防ぐことができる。これに伴い、原稿判定の閾値を小さくすることができるため、グレー等の濃色系の原稿のサイズ検出の精度低下も防ぐことができる。
【0038】
ところで、原稿サイズ検出の手法として、上述の光源オンオフ差分法の他に、開閉差分法という手法も知られている。開閉差分法は、光源オンの状態で原稿カバー111の開時と閉時とで得られる輝度分布の差分に基づいて主走査方向の原稿サイズを検出する手法である。開閉差分法は、反射光が弱い濃色原稿の原稿サイズ検出精度が高いという特徴を有している。
【0039】
原稿カバー111の閉時の輝度分布は、例えば、
図6(a)に示すような形状となる。ここでは、原稿が濃色であり、原稿カバー111による反射光より弱い輝度であるとする。
【0040】
原稿カバー111の開時の輝度分布は、例えば、
図6(b)に示すような形状となる。ここでは、原稿台110に外部光が入射しているものとする。
【0041】
そして、カバー閉時の輝度分布からカバー開時の輝度分布を差し引くことで、
図6(c)の輝度分布が得られる。この輝度分布を開閉差分輝度分布と称する。開閉差分輝度分布では、原稿部分が小さな輝度となるため、原稿判定の閾値よりも小さな輝度の領域に原稿が存在している判定することができる。
【0042】
開閉差分法においても、外部光が入射している場合には、カバー開時の輝度分布に影響を与えるため、原稿サイズの検出精度が悪化するおそれがある。そこで、開閉差分法のカバー開時の測定において、本実施形態の手法で取得した光源オンオフ差分輝度分布を用いることで、外部光の影響を精度よくキャンセルすることができる。
【0043】
この場合、例えば、
図7(a)に示すように、カバー開時の輝度分布として、光源オフの第1測定期間、光源オンの第2測定期間、光源オフの第3測定期間で得られる光源オンオフ差分輝度分布を用いる。これにより、外部光成分が正方向に強く表われることを防ぐことができる。
【0044】
そして、
図7(b)に示すようにカバー閉時の輝度分布を取得して、カバー閉時輝度分布とカバー開時輝度分布との差分を算出することで、
図7(c)に示すように、外部光成分と原稿領域とを明確に区別することができるようになる。
【0045】
次に、本実施形態における原稿サイズ検出のトリガ例について
図8のフローチャートを参照して説明する。一般に、原稿台110への原稿載置は、原稿カバー111の全開状態で行なうため、本フローチャートは、原稿カバー角度センサ128の検出結果が大角度状態で開始する。
【0046】
大角度状態で原稿読取りのスタートボタンが押下された場合には(S201:Yes)、即座に原稿サイズを検出する必要があるため、光源オンオフ差分法による原稿サイズ検出を実行する(S202)。光源オンオフ差分法による原稿サイズ検出では、上述の光源オフの第1測定期間、光源オンの第2測定期間、光源オフの第3測定期間で得られる光源オンオフ差分輝度分布を用いるものとする。
【0047】
また、原稿カバー111が中角度まで閉じられたことを検出した場合も(S203:Yes)、光源オンオフ差分法による原稿サイズ検出を実行する(S204)。この場合も、光源オフの第1測定期間、光源オンの第2測定期間、光源オフの第3測定期間で得られる光源オンオフ差分輝度分布を用いるものとする。これにより、原稿カバー111が完全に閉じられる前にスタートボタンが押下された場合であっても、原稿サイズは検出済であるため、即座に原稿読取り処理を開始することができる。
【0048】
中角度よりもさらに原稿カバー111が閉じられて小角度状態に移行した場合(S205:Yes)は、開閉差分法による原稿サイズ検出を実行する(S206)。この際に、光源オンで原稿カバー111閉時の輝度分布を取得するとともに、処理(S204)で取得した光源オンオフ差分輝度分布を用いて、開閉差分法による原稿サイズ検出を行なうものとする。そして、開閉差分法によって得られた原稿サイズを検出結果として採用する。
【符号の説明】
【0049】
100…画像読取装置、110…原稿台、111…原稿カバー、120…キャリッジ、121…光源、122…ラインセンサ、124…駆動機構、126…副走査方向サイズセンサ、128…原稿カバー角度センサ、130…制御部、131…読取制御部、132…画像処理部、133…原稿サイズ検出部、141…通信部、142…記憶部、143…操作受付部