【実施例】
【0024】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下において、含有割合を表す「%」は特に断りのない限り「質量%」である。
【0025】
<測定方法>
[乳酸菌の生菌数]
発酵乳に含まれる乳酸菌の生菌数(以下、単に乳酸菌数ともいう。)の測定方法は、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(乳等省令と略されることもある。)の別表に規定されており、BCP(brom−cresol purple)を含んだ標準寒天培地(plate count agar)で通常の混釈培養を35〜37℃で72時間行い、黄変するコロニーを数えることによって測定される。乳酸菌数の単位のcfuは「colony forming unit」でありコロニー形成単位を意味する。
[メジアン径]
メジアン径の測定において、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置としては、堀場製作所製、LA−950V2(製品名)を用いた。
【0026】
<原料>
以下の原料を用いた。
脱脂粉乳:森永乳業社製、脂肪1.0%、タンパク質34.0%、無脂乳固形分95.2%。
バター:森永乳業社製、脂肪83.1%、タンパク質0.5%、無脂乳固形分1.4%。
砂糖:東洋製糖社製。
ゼラチン:新田ゼラチン社製。
乳酸菌スターター(1):発酵速度が比較的速い乳酸菌スターター、FD−DVS YF−3331(製品名)、クリスチャン・ハンセン社製。
乳酸菌スターター(2):発酵速度が比較的遅い乳酸菌スターター、FD−DVS ST−20X(製品名)、クリスチャン・ハンセン社製。
【0027】
[架橋型加工デンプン]
架橋型加工デンプン(1):ファリネックス VA70WM(製品名)、ワキシーコーン由来ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、松谷化学工業社製。
架橋型加工デンプン(2):REZISTA682(製品名)、ワキシーコーン由来ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、TATE&LYLE社製。
[比較のデンプン]
デンプン(3):マツノリンA−60M(製品名)、ワキシーコーン由来食品澱粉、松谷化学工業社製。
加工デンプン(4):スタビローズY(製品名)、ワキシーコーン由来酸化澱粉、松谷化学工業社製。
デンプン(5):MKK−100(製品名)、タピオカ由来食品澱粉、松谷化学工業社製。
加工デンプン(6):松谷ゆり(製品名)、タピオカ由来ヒドロキシプロピル化澱粉、松谷化学工業社製。
【0028】
[比較の酸乳安定剤]
LMペクチン:ローメトキシルペクチン、SM−MN−2779(製品名)、三栄源エフ・エフ・アイ社製。
大豆多糖類:SM−MN−3300(製品名)、三栄源エフ・エフ・アイ社製。
CMC−Na:カルボキシメチルセルロースナトリウム、セロゲンFZ(製品名)、第一工業製薬社製)。
カラギナン:カラギニンHi−pHive(製品名)、CPケルコ社製。
【0029】
<試験例1:風味の評価について>
本試験は、低酸味発酵乳として好ましい風味が得られるpH領域を調べる目的で行った。
[試料の調製]
以下の方法で、乳酸菌スターター(2)を用いてpHの値が異なる7種の発酵乳(サンプル1−1〜1−7)を製造した。
脱脂粉乳9.66kg、バター2.45kg、砂糖7kg、ゼラチン0.4kg、水80.484kgを混合し、75℃に加温して溶解した後、15MPaの圧力で均質化した。得られた溶液を90℃で10分間加熱殺菌し、43℃に冷却し、乳酸菌スターター(2)0.006kgを添加して調乳液(100kg)とした。調乳液の無脂乳固形分の含有量は9.2質量%である。
この調乳液を43℃で発酵させた後、攪拌してカードを破砕して発酵乳を得た。得られた発酵乳を10℃に冷却した後、100gずつ容積120mLの容器に充填し、密封して、加糖プレーンタイプの発酵乳を得、10℃に保存した。
また、前記カードを破砕した後に冷却した発酵乳(10℃)の90gと、市販のチョコレートシロップ10g(森永製菓社製)との混合物100gを容積120mLの容器に充填し、密封して、デザートヨーグルトタイプの発酵乳を得、10℃に保存した。
発酵時間を変えて、7種の発酵乳(サンプル1−1〜1−7)を製造した。
【0030】
[風味の評価]
官能評価は、トレーニングされたパネル8名で試食して、下記の基準で5段階評価し、8名の平均値を評価結果とした。
(酸味・発酵臭)
7種の加糖プレーンタイプの発酵乳を製造後10℃で24時間保存したものについて、pHの測定を行うとともに、官能評価を行って酸味と発酵臭をそれぞれ評価した。結果を表1に示す。
(酸味)
5:酸味を感じない。
4:弱い酸味を感じる。
3:酸味を感じる。
2:やや強い酸味を感じる。
1:強い酸味を感じる。
(発酵臭)
5:発酵臭を感じない。
4:弱い発酵臭を感じる。
3:発酵臭を感じる。
2:やや強い発酵臭を感じる。
1:強い発酵臭を感じる。
【0031】
(デザートソースとの相性)
7種のデザートヨーグルトタイプの発酵乳を製造後10℃で24時間保存したものについて、官能評価を行い甘いデザートソースとの相性を評価した。結果を表1に示す。
5:酸味・発酵臭が適度に抑えられ、デザートソースとの相性が良い。チョコレート風味のプリンとは明かに差別化された風味(すっきり感)がある。
4:酸味・発酵臭が適度に抑えられ、デザートソースとの相性が良い。チョコレート風味のプリンとの差があまり感じられない。
3:デザートソースとの相性はどちらともいえない。
2:酸味・発酵臭を感じ、デザートソースとの相性が悪い。
1:酸味・発酵臭を強く感じ、デザートソースとの相性が非常に悪い。
【0032】
【表1】
【0033】
表1の結果に示されるように、pHが5.3以上であるサンプル1−1〜1−5は、酸味、発酵臭、およびデザートソースとの相性のいずれにおいても3.0より高い評価結果であり、低酸味発酵乳として好ましい風味が得られた。
これらのうちpHが6.15であるサンプル1−1は、酸味、発酵臭が感じられず、チョコレートシロップと混合するとチョコレートプリンのような風味となり、発酵乳としての特徴に欠けるものであった。
これらの結果より、pHが5.3〜6の領域で、低酸味発酵乳として好ましい風味が得られることが示された。
【0034】
<試験例2:食感の評価について>
本試験は、なめらかな食感とメジアン径との関係を調べる目的で行った。
市販のヨーグルト10品(10℃)をサンプル1〜10とし、メジアン径を測定するとともに、官能評価を行った。
[官能評価]
官能評価は、各サンプルをトレーニングされたパネル8名で試食し、下記の基準で5段階評価して8名の平均値を評価結果とした。結果を表2に示す。
5:ざらつきを感じない。
4:弱いざらつきを感じるが許容される。
3:ざらつきを感じる。
2:やや強いざらつきを感じる。
1:強いざらつきを感じる。
【0035】
【表2】
【0036】
表2の結果より、なめらかな食感とメジアン径(d50)の値との間には一定の相関が認められた。また、メジアン径が40μm以下の範囲で食感のなめらかさが3.0より高い評価結果が得られた。
【0037】
<試験例3:加熱殺菌の有無による風味評価>
本試験は、発酵後の加熱殺菌の有無による、保存中のpHの経時変化および風味の違いを調べるために行った。
使用する乳酸菌スターターとして、市販品の中で、発酵速度が速く、発酵後の冷蔵保存中における発酵の進行が比較的速いグループに属する乳酸菌スターター(1)と、発酵速度が遅く、発酵後の冷蔵保存中における発酵の進行が比較的遅いグループに属する乳酸菌スターター(2)を使用した。
サンプル2−1、2−2は比較例、サンプル2−3、2−4は実施例である。
【0038】
[試料の調製]
(サンプル2−1)
脱脂粉乳9.66kg、バター2.45kg、砂糖7kg、ゼラチン0.4kg、架橋型加工デンプン(1)2.2kg、水78.284kgを混合し、75℃に加温して溶解した後、15MPaの圧力で均質化した。得られた溶液を90℃で10分間加熱殺菌し、43℃に冷却し、乳酸菌スターター(2)0.006kgを添加して調乳液(100kg)とした。調乳液の無脂乳固形分の含有量は9.2質量%である。
この調乳液を43℃でpH5.50まで発酵させた後、得られた発酵物を攪拌し、カードを破砕して発酵乳を得た。得られた発酵乳を10℃に冷却した後、100gを容積120mLの容器に充填し、密封して、サンプル2−1とし、10℃に保存した。
(サンプル2−2)
サンプル2−1との違いは、乳酸菌スターター(2)0.006kgに代えて乳酸菌スターター(1)を0.003kg用いた点と、水の添加量を78.287kgに変更した点である。それ以外はサンプル2−1と同様にしてサンプル2−2を調製した。調乳液の無脂乳固形分の含有量は9.2質量%である。
【0039】
(サンプル2−3)
サンプル2−3がサンプル2−1と異なる点は、発酵により得られた発酵物を撹拌してカードを破砕する際に、撹拌しながら92℃で20秒間加熱殺菌して45℃まで冷却した点である。こうして得られた発酵乳を容積120mLの容器に充填し、密封して、サンプル2−3とし、10℃に保存した。
(サンプル2−4)
サンプル2−4がサンプル2−2と異なる点は、発酵により得られた発酵物を撹拌してカードを破砕する際に、撹拌しながら92℃で20秒間加熱殺菌して45℃まで冷却した点である。こうして得られた発酵乳を容積120mLの容器に充填し、密封して、サンプル2−4とし、10℃に保存した。
【0040】
[評価方法]
各サンプルについて、製造後1、7、14、21日後に、それぞれpHの測定を行うとともに、試験例1と同様にして酸味と発酵臭を評価した。
また、各サンプルについて、製造後24時間における乳酸菌数を上述の方法で測定した。これらの結果を表3に示す。
【0041】
【表3】
【0042】
表3の結果に示されるように、発酵後に加熱殺菌したサンプル2−3および2−4は、10℃、24時間保存後の乳酸菌数が、0cfu/mL(乳酸菌の生菌を含まない)であり、製造後の21日間においてpH変動がほとんどなかった。また酸味・発酵臭の官能評価が、3.0より十分に高い値であり、低酸味発酵乳として好ましい風味が維持された。
これに対して、発酵後の加熱殺菌を行わなかったサンプル2−1および2−2は、10℃、24時間保存後の乳酸菌数が、1×10
7cfu/mLを超え、経時的にpHが低下し、酸味および発酵臭が増した。サンプル2−1は冷蔵保存中における発酵の進行が比較的遅い乳酸菌スターター(2)を用いた例であるが、製造後7日後の段階でpHが5.3より低くなり、酸味の官能評価が3.0以下となり酸味が強くなった。
【0043】
<試験例4:架橋型加工デンプンと酸乳安定剤による食感の違い>
本試験では、調乳液に架橋型加工デンプンを含有させた場合と、架橋型加工デンプンの代わりに公知の酸乳安定剤を添加した場合とで、発酵後に加熱殺菌して得られる発酵乳の食感(なめらかさ)の違いを調べた。
サンプル3−1は実施例、サンプル3−2〜3−6は比較例である。
【0044】
[試料の調製]
(サンプル3−1:架橋型加工デンプン(1)を添加)
表4に示す配合で脱脂粉乳、バター、砂糖、ゼラチン、架橋型加工デンプン(1)、水を混合し、75℃に加温して溶解した後、15MPaの圧力で均質化した。得られた溶液を90℃で10分間加熱殺菌し、43℃に冷却し、乳酸菌スターター(1)を添加して調乳液とした。
この調乳液を43℃で所定のpHまで発酵させた。発酵により得られた発酵物を撹拌してカードを破砕しながら92℃で20秒間加熱殺菌した後、45℃まで冷却して発酵乳を得た。得られた発酵乳の100gを容積120mLの容器に充填し、密封してサンプル3−1とし、10℃に保存した。発酵物のpHと発酵乳のpHは同じである。
発酵は、加熱殺菌される発酵物のpHが6.0、5.7、5.5、または5.3となるように行い、pHが異なる4通りの発酵乳を製造した。
【0045】
(サンプル3−2:架橋型加工デンプンの添加なし)
サンプル3−1の製造において、架橋型加工デンプン(1)を添加せず、調乳液の配合を表4に示す通りに変更したほかは、サンプル3−1と同様にして、4通りの発酵乳を製造した。
(サンプル3−3〜3−6:比較の酸乳安定剤を添加)
サンプル3−1の製造において、架橋型加工デンプン(1)の代わりに表4に示す酸乳安定剤を添加したほかはサンプル3−1と同様にして、サンプル3−3〜3−6(各4通り)を製造した。
[評価方法]
各サンプル(10℃)について、試験例2と同様にして、メジアン径を測定するとともに食感の官能評価を行った。結果を表4に示す。
なお、いずれのサンプルも、10℃、24時間保存後の乳酸菌数は、0cfu/mL(乳酸菌の生菌を含まない)であった。
【0046】
【表4】
【0047】
表4の結果に示されるように、調乳液に架橋型加工デンプン(1)を含有させたサンプル3−1では、加熱殺菌される発酵物のpHが5.3〜6.0のいずれにおいても、得られた発酵乳のメジアン径が40μm以下であり、食感の官能評価が3.0より高く、食感のなめらかさに優れていた。
また、サンプル3−1の製造においてpH5.4の発酵乳を製造したところ、メジアン径および食感の官能評価が、サンプル3−1のpH5.5の発酵乳とほぼ同程度に良好であった。
これに対して、調乳液に架橋型加工デンプンを含有させなかったサンプル3−2、架橋型加工デンプンの代わりに一般的な酸乳安定剤を含有させたサンプル3−3〜3−6では、いずれもメジアン径が大きく、ざらつきを感じる食感であった。
【0048】
<試験例5:デンプンの種類による食感の違い>
本試験では、デンプンの種類を変えて発酵乳の食感(なめらかさ)の違いを調べた。
サンプル4−1、4−2は実施例、サンプル4−3〜4−6は比較例である。
【0049】
[試料の調製]
(サンプル4−1)
サンプル3−1と同様にして発酵乳のサンプルを製造し、10℃に保存した。加熱殺菌直前の発酵物のpHは5.5とした。
(サンプル4−2〜4−6)
サンプル4−1の製造において、架橋型加工デンプン(1)2.2質量%の代わりに表5に示すデンプン2.2質量%を添加したほかはサンプル4−1と同様にして、サンプル4−2〜4−6)を製造した。
[評価方法]
各サンプル(10℃)について、試験例2と同様にして、メジアン径を測定するとともに食感の官能評価を行った。結果を表5に示す。
なお、いずれのサンプルも、10℃、24時間保存後の乳酸菌数は、0cfu/mL(乳酸菌の生菌を含まない)であった。
【0050】
【表5】
【0051】
表5の結果に示されるように、調乳液に架橋型加工デンプンを含有させたサンプル4−1、4−2は、メジアン径が充分に小さく、食感のなめらかさに優れる発酵乳であった。
これに対して、架橋型加工デンプンの代わりに、化学的処理がされていないデンプン(3)、(5)、または化学的処理がされた加工デンプンであるが非架橋型の加工デンプン(4)、(6)を用いたサンプル4−3〜4−6は、いずれもメジアン径が大きく、ざらつきを感じる食感の発酵乳であった。
【0052】
<製造例1〜9、比較例1>
架橋型加工デンプンの添加量を変えて発酵乳を製造した。
表6に示す配合で脱脂粉乳、バター、砂糖、ゼラチン、架橋型加工デンプン(1)、水を混合し、75℃に加温して溶解した後、15MPaの圧力で均質化した。得られた溶液を90℃で10分間加熱殺菌し、43℃に冷却し、乳酸菌スターター(1)を添加して調乳液とした。
この調乳液を43℃でpH5.5まで発酵させた。発酵により得られた発酵物を撹拌してカードを破砕しながら92℃で20秒間加熱殺菌した後、45℃まで冷却して発酵乳を得た。得られた発酵乳の100gを容積120mLの容器に充填し、密封して容器入り発酵乳とし、10℃に保存した。
上記の方法で、製造後24時間保存した発酵乳のpH、メジアン径を測定するとともに食感の官能評価を行った。結果を表6に示す。
なお、いずれのサンプルも、10℃、24時間保存後の乳酸菌数は、0cfu/mL(乳酸菌の生菌を含まない)であった。
【0053】
【表6】
【0054】
表6の結果に示されるように、調乳液に対して架橋型加工デンプンを1.1質量%以上含有させた製造例1〜9において、メジアン径が40μm以下で食感の官能評価が3.0より高い発酵乳が得られた。
また調乳液をpH5.5まで発酵させて加熱殺菌を行ったため、乳酸菌の増殖は停止(乳酸菌は失活)しており、表3のサンプル2−3、2−4と同様に、製造後のpH変動がほとんどなく、低酸味発酵乳として好ましい風味を有する。
一方、調乳液に対する架橋型加工デンプンの添加量が1質量%である比較例1で得られた発酵乳は、メジアン径が40μmを超え、食感の官能評価が3.0より低かった。
【0055】
<製造例11〜17>
無脂乳固形分の含有量を変えて発酵乳を製造した。
表7に示す配合で、製造例1と同様の手順で容器入り発酵乳を製造し、10℃に保存した。
上記の方法で、製造後24時間保存した発酵乳のpH、メジアン径を測定するとともに食感の官能評価を行った。結果を表7に示す。
なお、いずれのサンプルも、10℃、24時間保存後の乳酸菌数は、0cfu/mL(乳酸菌の生菌を含まない)であった。
【0056】
【表7】
【0057】
表7の結果に示されるように、調乳液に対して無脂乳固形分を3〜12質量%の範囲で含有させた製造例11〜17において、メジアン径が40μm以下で食感の官能評価が3.0より高い発酵乳が得られた。
また調乳液をpH5.5まで発酵させて加熱殺菌を行ったため、乳酸菌の増殖は停止(乳酸菌は失活)しており、表3のサンプル2−3、2−4と同様に、製造後のpH変動がほとんどなく、低酸味発酵乳として好ましい風味を有する。
【0058】
<実施例1:加糖プレーンタイプの発酵乳製品の製造>
脱脂粉乳9.66kg、バター2.45kg、砂糖7kg、寒天(伊那食品工業社製)0.35kg、架橋型加工デンプン(2)2kg、及び水78.537kgを混合後、75℃に加温して溶解し、15MPaの圧力で均質化した。得られた溶液を142℃で2秒間加熱殺菌し、43℃に冷却し、乳酸菌スターター(1)0.003kgを添加して調乳液(100kg)とした。調乳液の無脂乳固形分の含有量は9.2質量%である。
この調乳液を43℃でpH5.3まで発酵させた。発酵により得られた発酵物を撹拌してカードを破砕しながら92℃で20秒間加熱殺菌し、45℃まで冷却した。こうして得られた発酵乳を容積120mLの紙製容器(シンギ社製、口径71mm、高さ56mm)に100g充填し、アルミ剥製蓋材で密封した後、10℃に冷却して、加糖プレーンタイプの発酵乳製品を得た。
得られた発酵乳は、一般的な発酵乳と比較して、酸味と発酵臭が格段におだやかで、まろやかな乳味を有する点で明確に差別化された発酵乳であり、且つなめらかな組織を有していた。
【0059】
<実施例2:デザートヨーグルトタイプの発酵乳製品の製造>
本例では、デザートソースとして、チョコレートシロップ(森永製菓社製)、抹茶ソース(森永乳業社製)、キャラメルソース(森永乳業社製)、黒ゴマソース(森永乳業社製)、およびマロンソース(正栄食品工業社製)の5種をそれぞれ用いて、5種の発酵乳製品を製造した。
脱脂粉乳9.66kg、バター2.45kg、砂糖7kg、寒天(伊那食品工業社製)0.1kg、ゼラチン0.3kg、架橋型加工デンプン(1)2.2kg、及び水78.284kgを混合後、75℃に加温して溶解し、15MPaの圧力で均質化した。得られた溶液を90℃で10分間加熱殺菌し、43℃に冷却し、乳酸菌スターター(2)0.006kgを添加して調乳液(100kg)とした。調乳液の無脂乳固形分の含有量は9.2質量%である。
この調乳液を43℃でpH5.5まで発酵させた。発酵により得られた発酵物を撹拌してカードを破砕しながら92℃で20秒間加熱殺菌し、45℃まで冷却した。
【0060】
こうして得られた発酵乳90gに対して、5種のデザートソース10gをそれぞれ混合して5種のデザートヨーグルト100gを調製し、それぞれ容積120mLの紙製容器(シンギ社製、口径71mm、高さ56mm)に充填し、アルミ剥製蓋材で密封した後、10℃に冷却し、デザートヨーグルトタイプの発酵乳製品を得た。
得られた発酵乳は、一般的な発酵乳と比較して、酸味と発酵臭が格段におだやかで、各種デザートソースとの相性も良く、良好な風味を有していた。
市販のチョコレートプリン、抹茶プリン、キャラメルプリン、黒ゴマプリン、またはマロンプリンとそれぞれ比較しても、本例の発酵乳製品は、発酵乳由来のほのかな酸味と発酵臭がアクセントとなり、後切れよくすっきりとした風味を有し、各種プリンとも風味的に差別化された嗜好性の高い新規な発酵乳であった。物性に関しても、なめらか且つ適度なボディ感を有しており、嗜好性の高いデザートヨーグルトに相応しいものであった。