特許第6705646号(P6705646)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6705646-チューインガムベース 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705646
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】チューインガムベース
(51)【国際特許分類】
   A23G 4/08 20060101AFI20200525BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   A23G4/08
   C08L9/06
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-241694(P2015-241694)
(22)【出願日】2015年12月11日
(65)【公開番号】特開2016-128564(P2016-128564A)
(43)【公開日】2016年7月14日
【審査請求日】2018年11月1日
(31)【優先権主張番号】14/567,127
(32)【優先日】2014年12月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】リーナ・ネバーニ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ダニエル・ザートマン
【審査官】 松本 淳
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−505281(JP,A)
【文献】 特表2008−515409(JP,A)
【文献】 特開2000−273245(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0303954(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G 1/00− 9/52
C08L 1/00−101/14
CAplus/FSTA/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
−20℃〜0℃の範囲のガラス転移温度Tgを有する溶液重合スチレン−ブタジエンゴムを含むことを特徴とするチューインガムベース。
【請求項2】
溶液重合スチレン−ブタジエンゴムが、25〜55重量パーセントの範囲の結合スチレン含量、及びスチレン及びブタジエン単位の全重量を基にして、25〜60重量パーセントの範囲のビニル含量を有することを特徴とする、請求項1に記載のチューインガムベース。
【請求項3】
溶液重合スチレン−ブタジエンゴムが、30〜40重量パーセントの範囲の結合スチレン含量、及びスチレン及びブタジエン単位の全重量を基にして、35〜45重量パーセントの範囲のビニル含量を有することを特徴とする、請求項1に記載のチューインガムベース。
【請求項4】
溶液重合スチレン−ブタジエンゴムが、ASTM D4440−08による測定で、30℃及び1%歪のときに100〜10rad/秒の周波数でG’とG”の高周波交差を示すことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のチューインガムベース。
【請求項5】
5〜95重量パーセントの溶液重合スチレン−ブタジエンゴム、1〜65重量パーセントの充填剤、〜45重量パーセントのエラストマー可塑剤、及びガムベース安定剤を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のチューインガムベース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶液重合スチレン−ブタジエンゴムを含むチューインガムベースに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、通常のチューインガム及びバブルガムは、一般的にガムベースとして二つ以上の天然又は合成エラストマーの一つ又は組合せを利用している。選択されるガムベースは、チューインガムにその咀嚼特性を提供する。チューインガムベースは、通常、糖類又は合成甘味料、香料、フレーバー、可塑剤、及び充填剤と混合された後、混練されて、スティック、シート、又はペレットに成形される。場合によっては、ガムに柔軟性を与えるために綿実油が添加されることもある。乳化法で製造されたスチレンブタジエンゴム(SBR)は、チューインガムのガムベースとして広く使用されている合成エラストマーである。しかしながら、そのようなSBRは、ソフトチューガムの製造には広く使用されていない。ソフトチューガムの製造には、ポリイソブチレンが、SBRよりはるかに高価であるにもかかわらず広く使用されている。
【0003】
米国特許公開第2010/0303954号に、口腔温度で食塊を形成し、噛むことができる溶液重合スチレン−ブタジエンランダムコポリマーエラストマーを含有する水不溶性ガムベース部分と;水溶性バルク部分と;そして少なくとも一つのフレーバー成分とを有するチューインガムが開示されている。そこに開示されている溶液重合スチレン−ブタジエンエラストマーは、ガムベースに典型的に使用される乳化重合スチレン−ブタジエンエラストマーに類似したガラス転移温度を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開第2010/0303954号
【発明の概要】
【0005】
本発明は、−20℃〜0℃の範囲のガラス転移温度Tgを有する溶液重合スチレン−ブタジエンゴムを含むチューインガムベースに向けられる。
【0006】
本発明はさらに、溶液重合スチレン−ブタジエンゴムが、ASTM D4440−08による測定で、30℃及び1%歪のときに100〜10rad/秒の周波数でG’とG”の高周波交差を示す、溶液重合スチレン−ブタジエンゴムを含むチューインガムベースにも向けられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、30℃におけるポリイソブチレン及び高Tg SSBRのG’及びG”を周波数の関数としてプロットしたグラフを示す。
図2図2は、30℃におけるポリイソブチレン及び低Tg SSBRのG’及びG”を周波数の関数としてプロットしたグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
−20℃〜0℃の範囲のガラス転移温度Tgを有する溶液重合スチレン−ブタジエンゴムを含むチューインガムベースを開示する。
【0009】
さらに、溶液重合スチレン−ブタジエンゴムが、ASTM D4440−08による測定で、30℃及び1%歪のときに100〜10rad/秒の周波数でG’とG”の高周波交差を示す、溶液重合スチレン−ブタジエンゴムを含むチューインガムベースも開示する。
【0010】
本発明は、ガムベースの用途に使用するための高Tg(ガラス転移温度)溶液スチレンブタジエン(SSBR)ポリマーの合成に関する。SSBRは、ガムベース配合物中のポリイソブチレン(PIB)及びブチルポリマーの代わりに使用されることを目的として合成される。ブチル及びポリイソブチレンポリマーに類似した性能を達成するためには、これらのポリマーのいくつかの特異的な特徴が考慮される。ブチル及びポリイソブチレンは、それらのTgは低いが(およそ−63℃)、それらのレオロジー特性は他の低Tgポリマーとは異なるという点で、独特のポリマーである。低Tgポリマーであるにもかかわらず、ブチル及びPIBはいずれも、全周波数にわたって室温で比較的高いタンデルタ(弾性率G’に対する粘性係数G”の比率)と弾性プラトーにおいて低いモジュラスを有している。これらのレオロジー特性は、高Tg SBRにも共通する。
【0011】
他方、ブチルゴム又はPIBと類似のTgのSBRポリマーは、室温でPIB又はブチルゴムとは異なるレオロジー特性を有する。これは、ブチル型ゴムの独特な時間−温度応答の所以である。従って、ブチル及びポリイソブチレンのようなレオロジー特性を達成するするために、ブチル及びPIBに対応する同じ低範囲のTgのSBRゴムではなく、高Tg溶液スチレンブタジエンポリマーを使用する。
【0012】
従って、一態様において、溶液重合スチレンブタジエンゴムは、ASTM D4440−08による測定で、30℃及び1%歪のときに100〜10rad/秒の間でG’とG”の高周波クロスオーバーを示す(すなわちG’とG”の交差)。
【0013】
溶液SBRの高Tgは、高スチレン及び/又は高ビニル含量を有するポリマーにおいて達成される。ポリマーのTgはポリマーのミクロ構造に影響されるが、レオロジー特性はポリマーのミクロ構造及びマクロ構造の両方に影響される。ポリマーのマクロ構造は、カップリング(カップリング剤の使用を通じて)及び枝分かれ(重合調節剤の使用を通じて)の量によって制御できる。
【0014】
SSBRは、一般構造式P−M(式中、Pはポリマー鎖を表し、MはI又はII族の金属を表す)を有する一官能性開始剤を利用して製造できる。
【0015】
SSBRの合成に用いられる重合を開始するために使用される開始剤は、典型的には、バリウム、リチウム、マグネシウム、ナトリウム、及びカリウムからなる群から選ばれる。リチウム及びマグネシウムは、そのような金属終端ポリマー(リビングポリマー)の合成に最も一般的に利用される金属である。通常、リチウム開始剤がより好適である。
【0016】
有機リチウム化合物はそのような重合に利用するための好適な開始剤である。開始剤として利用される有機リチウム化合物は、一般的に有機モノリチウム化合物である。開始剤として好適な有機リチウム化合物は、式:R−Li(式中、Rは1〜約20個の炭素原子を含有するヒドロカルビルラジカルを表す)によって表すことができる一官能性化合物である。一般的に、そのような一官能性有機リチウム化合物は、1〜約10個の炭素原子を含有する。好適ないくつかの代表例は、ブチルリチウム、secブチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、n−オクチルリチウム、tertオクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、1−ナフチルリチウム、4−ブチルフェニルリチウム、p−トリルリチウム、4−フェニルブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、4−ブチルシクロヘキシルリチウム、及び4−シクロヘキシルブチルリチウムである。sec−ブチルリチウムが非常に好適な有機リチウム開始剤である。
【0017】
利用される有機リチウム開始剤の量は、合成されるゴム状ポリマーに所望される分子量のほか、使用される正確な重合温度に応じて変動するであろう。所望分子量のポリマーを製造するのに必要とされる有機リチウム化合物の正確な量は、当業者であれば容易に確認できる。しかしながら、通例、0.01〜1phm(モノマー100重量部あたりの部)の有機リチウム開始剤が利用されることになろう。ほとんどの場合、0.01〜0.1phmの有機リチウム開始剤が利用されるが、0.025〜0.07phmの有機リチウム開始剤を利用するのが好適である。
【0018】
SSBRの合成に使用されるモノマーは1,3−ブタジエン及びスチレンを含む。一般的に、十分なスチレンを使用して、25〜55重量パーセントの範囲の結合スチレン含量を有するSSBRを製造する。一態様において、結合スチレン含量は30〜40重量パーセントの範囲である。
【0019】
SSBRは、一般的に、飽和脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、又はエーテルなどの不活性有機溶媒を利用する溶液重合によって製造される。そのような溶液重合に使用される溶媒は、通常、1分子あたり約4〜約10個の炭素原子を含有し、重合の条件下で液体である。適切な有機溶媒のいくつかの代表例は、ペンタン、イソオクタン、シクロヘキサン、ノルマル−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラヒドロフランなどで、これらを単独で又は混合して使用する。例えば、溶媒は異なるヘキサン異性体の混合物でもよい。そのような溶液重合は、ポリマーセメント(ポリマーの高粘度溶液)の形成をもたらす。
【0020】
合成SSBRは、バッチ式又は連続式アニオン重合法のいずれかを用いて製造できる。重合媒体は、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ナトリウムメントレート(SMT,sodium mentholate)、ジテトラヒドロフルフリルプロパン(DTP)、テトラヒドロフラン(THF)、ポリエーテル又はそれらの組合せなどの調節剤を含んでいてもよい。例えばジビニルベンゼン、四塩化ケイ素などの枝分れ剤も重合中に使用することができる。
【0021】
官能化反応の完了後、残存しているリビングポリジエン鎖があれば、それを“止める”のが通常望ましいであろう。これは、水、有機酸、又はメタノールもしくはエタノールなどのアルコールを官能化反応の完了後にポリマーセメントに添加し、何らかのリビングポリマーを除去することによって達成できる。SSBRは、その後、標準技術を利用して溶液から回収できる。ポリマーは、食品グレードの界面活性剤、例えばステアリン酸カルシウム、オレイン酸などを用いて仕上げることができる。
【0022】
SSBRポリマーの数平均分子量は、典型的には、約50,000〜約500,000の範囲内であろう。そのようなSSBRポリマーは、100,000〜250,000の範囲内の数平均分子量を有するのがより典型的である。
【0023】
SSBRは、25〜55重量パーセントの範囲の結合スチレン含量を有しうる。一態様において、SSBRは30〜40重量パーセントの範囲の結合スチレン含量を有しうる。結合スチレン含量とは、結合スチレンが重合工程中にモノマーとしてポリマーに組み込まれることを意味する。
【0024】
SSBRは、スチレン及びブタジエン単位の全重量を基にして、25〜60重量パーセントの範囲のビニル含量を有しうる。一態様において、ビニル含量は、スチレン及びブタジエン単位の全重量を基にして35〜45重量パーセントの範囲である。
【0025】
SSBRは、−20℃〜0℃の範囲のガラス転移温度Tgを有しうる。Tgは、例えばASTM D7426又はそれと等価の方法に従って、10℃/分の昇温速度で示差走査熱量計(DSC)によりピーク中点として適切に決定できる。
【0026】
回収及び乾燥された後、SSBRはチューインガムベースの製造に使用することができる。チューインガムには、SSBRと、任意に、チューインガムの弾性及び噛み応えの持続時間(longevity of the chew)に寄与する様々なその他の水不溶性エラストマー成分が配合される。このエラストマー成分は、一般的に、ガムベースの約5〜約95重量パーセント、さらに好ましくはガムベースの約10〜約70重量パーセント、最も好ましくはガムベースの約15〜約45重量パーセントを構成する。SSBR以外のエラストマーは、ポリイソブチレン、イソブチレン−イソプレンコポリマー、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル−ラウリン酸ビニルコポリマー、及びそれらの組合せなどの合成エラストマーなどでありうる。SSBR以外のエラストマーは、液体ラテックス、グアユール(guayule)、ジェルトン(jelutong)、レチ・カスピ(lechi caspi)、ペリロ(perillo)、マッサランドバ・バラタ(massaranduba balata)、マッサランドバ・チョコレート(massaranduba chocolate)、ニスペロ(nispero)、ロシンジンハ(rosindinha)、チクル(chicle)、グッタ・ハン・カン( gutta hang kang)及びそれらの組合せなどの天然エラストマーも含みうる。
【0027】
上記エラストマーのほか、ガムベースは、典型的には、エラストマー可塑剤、ワックス、軟化剤/乳化剤、充填剤/調質剤(テクスチュアライザー)、着色料、安定剤、及び増白剤を含む。エラストマー可塑剤は、ガムベースの約0〜約75重量パーセント、好ましくは5〜45重量パーセント、最も好ましくは10〜30重量パーセントを構成する。エラストマー可塑剤は、天然ロジンエステル、例えば、部分水素化ロジンのグリセロールエステル、重合ロジンのグリセロールエステル、部分二量体化ロジンのグリセロールエステル、ロジンのグリセロールエステル、部分水素化ロジンのペンタエリスリトールエステル、ロジンのメチル及び部分水素化メチルエステル、ロジンのペンタエリスリトールエステル、又はそれらの混合物などである。エラストマー可塑剤には、アルファ−ピネン、ベータ−ピネン及び/又はd−リモネンから誘導されたテルペン樹脂などの合成材料も含まれる。
【0028】
ガムベースに含まれる安定剤は、BHT又はいずれかその他の慣用の安定剤でよい。それは、米国特許第4,489,099号に記載されているようなビタミンEとジラウリルチオジプロピオネートの組合せでもよい。安定剤は、米国特許第5,270,060号に記載されているようなトコフェロール混合物でもよい。これは、7〜20重量%のアルファトコフェロール、45〜75重量%のガンマトコフェロール及び18〜32重量%のデルタトコフェロールを含む。使用できる市販のトコフェロールブレンドは、オハイオ州シンシナティのHenkel Corporation社から入手できるCOVI−OX T−50である。COVI−OX T−50は、大豆油希釈剤中に、全トコフェロール重量を基にして約12.5%のアルファトコフェロール、約63.9%のガンマトコフェロール、及び約23.6%のデルタトコフェロールを含有する(30%大豆油中70%トコフェロール)。米国特許第4,489,099号及び米国特許第5,270,060号の教示は引用によってそれらの全文を本明細書に援用する。
【0029】
ワックスは、合成ワックス(例えばポリエチレン及びフィッシャー−トロプシュワックス)及び天然ワックス(カンデリラ・カルナウバ、蜜蝋、米ぬか又はそれらの混合物)及び石油ワックス(例えば微晶質ワックス及びパラフィン)を含む。ワックスは、使用される場合、一般的にガムベースの30重量パーセントまでを構成する。
【0030】
軟化剤/乳化剤は、獣脂、水素化獣脂、水素化及び部分水素化植物油、カカオ脂、グリセロールモノステアレート、グリセロールトリアセテート、レシチン、モノ−、ジグリセリド及びトリグリセリド、アセチル化グリセリド及び脂肪酸(例えばステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸及びリノレン酸)又はそれらの混合物などである。軟化剤/乳化剤は、一般的に、ガムベースの0.5〜40重量パーセントを構成する。
【0031】
充填剤/調質剤は、炭酸マグネシウム及び炭酸カルシウム、粉砕石灰石及びケイ酸マグネシウム及びケイ酸アルミニウムなどのケイ酸塩類、クレイ、アルミナ、タルク、ならびに酸化チタン、亜リン酸一カルシウム、亜リン酸二カルシウム及びリン酸三カルシウム、エチルセルロース、メチルセルロース及び木材セルロースなどのセルロースポリマー又はそれらの混合物などである。好ましくは、充填剤は、ガムベースの約1〜約65重量パーセントを構成する。
【0032】
着色料及び増白剤は、FD&Cタイプの色素及びレーキ、果実及び野菜抽出物、二酸化チタン又はそれらの混合物などである。
【0033】
ガムベースは、典型的には、一定量のエラストマー、エラストマー可塑剤及び充填剤を加熱されたシグマブレードミキサー(典型的にはフロント対リアブレードの速度比2:1)に添加することによって製造される。成分の初期量は、適切な稠度を達成するために、ミキシングケトルの作業能力によって決定される。初期成分が均一に一塊になったら、残りのエラストマー可塑剤、充填剤、軟化剤などを順に、完全に均一な溶融塊が達成されるまで添加する。これは、配合処方にもよるが、通常、約1〜約4時間で達成できる。最終塊の温度は60℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜120℃でありうる。完成した溶融塊はミキシングケトルから被覆又は内張パンに取り出し、任意の所望形状に押出又は注型し、放冷して固化させる。
【0034】
チューインガムの水溶性部分は、軟化剤、甘味料、フレーバー剤及びそれらの組合せを含みうる。軟化剤は、ガムの噛み心地及び口当たりを最適化するためにチューインガムに添加される。軟化剤は、当該技術分野では可塑剤又は可塑化剤としても知られているが、一般的に、チューインガムの約0.5〜約15.0重量パーセントを構成する。本発明で想定されている軟化剤は、グリセリン、レシチン、及びそれらの組合せなどである。さらに、ソルビトール、加水分解水添デンプン、コーンシロップ及びそれらの組合せを含有する溶液などの水性甘味料溶液は、ガムの軟化剤及び結合剤として使用することができる。
【0035】
バルク甘味料は、チューインガムの20〜80重量%を構成し、糖類及び無糖の甘味料及び成分の両方を含みうる。糖類甘味料は、サッカリド含有成分、例えば、特に制限されないが、スクロース、マルトース、デキストリン、乾燥転化糖、レブロース、ガラクトース、固形コーンシロップなどを単独で又は組み合わせて含みうる。糖類は、5又は6個の炭素原子の単糖類、例えば、アラビノース、キシロース、リボース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、デキストロース、又はソルボース、又は前記単糖類の二つ以上の混合物;二糖類、例えば、スクロース、例えば甘蔗糖又は甜菜糖、ラクトース、マルトース又はセロビオース;多糖類、例えば部分加水分解デンプン又はデキストリンでもよい。
【0036】
無糖甘味料は、甘味特性を有するが、一般的に知られている糖類を除いた成分などである。無糖甘味料は、特に制限されないが、糖アルコール、例えばソルビトール、マンニトール、キシリトール、加水分解水添デンプン、マルチトールなどを単独で又は組み合わせて含む。使用できる人工甘味料のいくつかの追加例は、ナトリウム、カルシウム又はアンモニウムサッカリン塩、遊離サッカリン、及びジヒドロカルコン、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸アンモニウム塩、L−アスパルチル−L−フェニルアラニンメチルエステル(アスパルテーム)、3,4−ジヒドロ−6−メチル−1,2,3−オキサチアジン−4−オン−2,2−ジオキシドのナトリウム又はカリウム塩(アセスルファムカリウム(Ace-sulfame-K))、ならびにステビア(Stevia rebaudiana)(ステビオシド)、リカルデラ・デュルシフィナ(Richardella dulcifica)(ミラクルベリー)、ディアスコレオフィルム・クミンシー(Diascoreophyllum cumminsii)(セレンディピティベリー)、シクラミン酸塩など、又は上記のいずれか二つ以上の混合物などである。
【0037】
高甘味度甘味料を含めることもできる。そのような高甘味度甘味料は、特に制限されないが、スクラロース、アスパルテーム、アセスルファムの塩、アリテーム、サッカリン及びその塩、シクラミン酸及びその塩、ジヒドロカルコン、ソーマチン、モネリンなどを単独で又は組み合わせて含みうる。
【0038】
糖類及び/又は無糖甘味料の組合せもチューインガムに使用できる。甘味料は、チューインガム中で全体的に又は部分的に水溶性増量剤(bulking agent)として機能することもできる。さらに、軟化剤も、水性の糖又はアルジトール溶液を用いる場合、追加の甘味を提供することができる。
【0039】
単数又は複数種類のフレーバー剤も、チューインガム中にガムの約0.1〜約10.0パーセント、好ましくは約0.5〜約5.0重量パーセントの範囲内の量で存在しうる。フレーバー剤は、精油、天然又は合成フレーバー又はそれらの混合物、例えば、特に制限されないが、植物及び果実から誘導された油、例えば、柑橘油、果実精(フルーツエッセンス)、ペパーミント油、スペアミント油、その他のミント油、丁子油、ウィンターグリーン油、アニスなどを含みうる。人工のフレーバー剤及び成分も想定している。当業者であれば、天然及び人工フレーバー剤は様々な許容可能な方式で組み合わせられることは認識しているであろう。着色料、乳化剤、及び薬剤などの任意の成分もチューインガムに加えることができる。
【0040】
一般に、チューインガムは、様々なチューインガム成分を当分野で公知の市販ミキサーに順次添加することによって製造される。成分が完全に混合されたら、ガム塊をミキサーから取り出し、ロール機にかけてシートにし、スティックに切断する、塊状に押し出す、又は注型してペレットにすることなどにより所望の形態に成形する。
【0041】
一般的に、成分はまずガムベースを軟化し(例えば熱を用いて)、それをランニングミキサーに加えることにより混合される。ガムベースはミキサー自体の中で軟化されてもよい。着色料又は乳化剤もこの時点で添加できる。グリセリンなどの軟化剤も、シロップ及び増量剤の一部と共にこの時点で添加できる。次いで増量剤の更なる部分をミキサーに添加できる。フレーバー剤は典型的には増量剤の最終部分と共に添加される。
【0042】
全混合手順は典型的には5〜15分を要するが、それより長い混合時間が必要なこともある。当業者であれば、上記手順の変形、又は異なる手順に従ってもよいことは分かるであろう。
【0043】
本発明を以下の実施例によって例示するが、それらは単に例示を目的としたものであって、本発明の範囲又は実施の様式を制限するものと見なされてはならない。別途記載のない限り、部及びパーセンテージは重量による。
【実施例】
【0044】
実施例1.
スチレンとブタジエンの共重合
重合は10ガロン入り反応器中で65℃で実施された。スチレンとブタジエンのヘキサン中モノマープレミックスを反応器に入れ、次いで調節剤(SMT及びTMEDA)及び開始剤(n−ブチルリチウム)を加えた。変換率が98%を超えたら、水を用いて重合を停止した。ポリマーの仕上げは食品グレード(Kosher)のステアリン酸カルシウムを用いてスチームストリッピングにより実施した。
【0045】
得られたポリマーを様々な技術を用いて特徴付けした(結果を表1に示す)。例えば、分子量の決定にはSEC、Tgの決定にはDSC、シス、トランス、スチレン及びビニル含量の決定にはIR、及びムーニー粘度(ML 1+4、100℃)などの技術である。粘弾性G’及びG”は、ASTM D4440−08に従って決定した。
【0046】
【表1】
【0047】
図1に、30℃における50ムーニーPIB(1:G’、2:G”)と表1のSSBR(3:G’、4:G”)のG’及びG”を周波数の関数としてプロットしたグラフを示す。プロットは、PIBとSSBRが互いの近くで高周波交差を有し、ゴム状プラトーでほぼ同じモジュラスを有していることを示している。
【0048】
図2に、30℃における50ムーニーPIBと低Tg(−70℃)SSBR(5:G’、6:G”)のG’及びG”を周波数の関数としてプロットしたグラフを示す。表1のSSBRと比較した場合、G’に大きな差があること、試験した周波数で高周波交差がないことに注意する。
【0049】
ポリイソブチレンと比較して表1のSSBRの類似の粘弾性は、低Tg SSBRに優る利益を実証している。
【0050】
主題発明を説明する目的で、一定の代表的態様及び詳細を示してきたが、主題発明の範囲から逸脱することなくその中で様々な変更及び修正をなし得ることは当業者には明白であろう。
[発明の態様]
[1] −20℃〜0℃の範囲のガラス転移温度Tgを有する溶液重合スチレン−ブタジエンゴムを含むチューインガムベース。
[2] 溶液重合スチレン−ブタジエンゴムが25〜55重量パーセントの範囲の結合スチレン含量を有する、1に記載のチューインガムベース。
[3] 溶液重合スチレン−ブタジエンゴムが30〜40重量パーセントの範囲の結合スチレン含量を有する、1に記載のチューインガムベース。
[4] 溶液重合スチレン−ブタジエンゴムが、スチレン及びブタジエン単位の全重量を基にして、25〜60重量パーセントの範囲のビニル含量を有する、1に記載のチューインガムベース。
[5] 溶液重合スチレン−ブタジエンゴムが、スチレン及びブタジエン単位の全重量を基にして、35〜45重量パーセントの範囲のビニル含量を有する、1に記載のチューインガムベース。
[6] 溶液重合スチレン−ブタジエンゴムが、ASTM D4440−08による測定で、30℃及び1%歪のときに100〜10rad/秒の周波数でG’とG”の高周波交差を示す、1に記載のチューインガムベース。
[7] ガムベースが、5〜95重量パーセントの溶液重合スチレン−ブタジエンゴム、1〜65重量パーセントの充填剤、5〜45重量パーセントのエラストマー可塑剤、及びガムベース安定剤を含む、1に記載のチューインガムベース。
[8] 溶液重合スチレン−ブタジエンゴムを含むチューインガムベースであって、溶液重合スチレン−ブタジエンゴムが、ASTM D4440−08による測定で、30℃及び1%歪のときに100〜10rad/秒の周波数でG’とG”の高周波交差を示すチューインガムベース。
[9] 溶液重合スチレン−ブタジエンゴムが25〜55重量パーセントの範囲の結合スチレン含量を有する、8に記載のチューインガムベース。
[10] 溶液重合スチレン−ブタジエンゴムが30〜40重量パーセントの範囲の結合スチレン含量を有する、8に記載のチューインガムベース。
[11] 溶液重合スチレン−ブタジエンゴムが、スチレン及びブタジエン単位の全重量を基にして、25〜60重量パーセントの範囲のビニル含量を有する、8に記載のチューインガムベース。
[12] 溶液重合スチレン−ブタジエンゴムが、スチレン及びブタジエン単位の全重量を基にして、35〜45重量パーセントの範囲のビニル含量を有する、8に記載のチューインガムベース。
[13] 溶液重合スチレン−ブタジエンゴムが、ASTM D4440−08による測定で、30℃及び1%歪のときに100〜10rad/秒の周波数でG’とG”の高周波交差を示す、8に記載のチューインガムベース。
[14] ガムベースが、5〜95重量パーセントの溶液重合スチレン−ブタジエンゴム、1〜65重量パーセントの充填剤、5〜45重量パーセントのエラストマー可塑剤、及びガムベース安定剤を含む、8に記載のチューインガムベース。
図1
図2