特許第6705685号(P6705685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6705685生体由来液処理フィルター及びフィルターデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705685
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】生体由来液処理フィルター及びフィルターデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/02 20060101AFI20200525BHJP
   A61K 35/14 20150101ALI20200525BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   A61M1/02 100
   A61K35/14 A
   A61M1/36 119
【請求項の数】11
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2016-70842(P2016-70842)
(22)【出願日】2016年3月31日
(65)【公開番号】特開2017-176616(P2017-176616A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年3月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】507365204
【氏名又は名称】旭化成メディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】井上 覚
(72)【発明者】
【氏名】宮本 大輔
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第03/047655(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/113620(WO,A1)
【文献】 特開2015−128620(JP,A)
【文献】 特開2000−226550(JP,A)
【文献】 特表2002−520463(JP,A)
【文献】 特表2014−533314(JP,A)
【文献】 特開2007−050013(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0217014(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00− 1/36
A61K 35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤血球及び血漿を含む生体由来液を処理するフィルターであって、担体と、該担体に担持されたポリマーとを有し、前記ポリマーが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、双性イオンを含む官能基と、塩基性含窒素官能基と、を有し、前記塩基性含窒素官能基が、−NH2,−NHR1又は−NR23(R1,R2,R3は炭素数1〜3のアルキル基)であ
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(l)と、前記塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位(m)と、前記双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位(n)と、のモル比が、前記ポリマーを構成するモノマー単位のモル比の全体を100として、
l+m+n=100,
0<l,m,n<100
の関係を満たす、
生体由来液処理フィルター。
【請求項2】
前記ポリマーが、前記担体1gあたり1.0mg以上32.5mg以下の量で担持されている、請求項1に記載の生体由来液処理フィルター。
【請求項3】
前記双性イオンを含む官能基が、カルボベタイン、スルホベタイン、及びホスホベタインからなる群より選ばれた少なくとも一種に由来する、請求項1又は2に記載の生体由来液処理フィルター。
【請求項4】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(l)と、前記塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位(m)と、前記双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位(n)と、のモル比が、l/m/n=40.0〜97.0/1.5〜32.5/1.5〜32.5である、請求項1〜3のいずれかに記載の生体由来液処理フィルター。
【請求項5】
前記ポリマーにおける前記塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位が、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートである、請求項1〜のいずれかに記載の生体由来液処理フィルター。
【請求項6】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートであり、前記N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートであり、前記双性イオンを有する官能基がメタクリル酸メチルベタインである、請求項に記載の生体由来液処理フィルター。
【請求項7】
前記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートであり、前記N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートであり、前記双性イオンを有する官能基がメタクリル酸メチルベタインである、請求項に記載の生体由来液処理フィルター。
【請求項8】
前記担体の材質が、ポリエチレンテレフタラート又はポリブチレンテレフタラートである、請求項1〜のいずれかに記載の生体由来液処理フィルター。
【請求項9】
前記担体が不織布である、請求項1〜のいずれかに記載の生体由来液処理フィルター。
【請求項10】
血小板除去用である、請求項1〜9のいずれかに記載の生体由来液処理フィルター。
【請求項11】
赤血球及び血漿を含む生体由来液体を処理するフィルターデバイスであって、生体由来液体の入口及び出口を備えたハウジングと、前記ハウジング内に収容された請求項1〜10のいずれかに記載の生体由来液処理フィルターと、を具備するフィルターデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤血球及び血漿を含む生体由来液処理フィルター及びフィルターデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
輸血分野においては、血液製剤中に含まれる混入白血球を除去した後に輸血を行う白血球除去輸血が一般的になっている。これは輸血にともなう頭痛、吐気、悪寒等の副作用や、受血者により深刻な影響を及ぼすアロ抗原感作、輸血後移植片対宿主疾患(GVHD)、及びウイルス感染等の重篤な副作用が、主として輸血に用いられた血液製剤中に混入している白血球が原因となって引き起こされることが明らかになった為である。
【0003】
血小板についても、輸血を受けた者の体内で抗血小板抗体が生成されることが明らかになり、抗血小板抗体の生成を抑制するためにも、血小板が除去された血液製剤の需要が高まる一方である。
【0004】
血液浄化の分野においても、敗血症や全身性炎症反応症候群(SIRS)をはじめとする炎症状態の患者から白血球を体外循環フィルターデバイスで除去することにより、サイトカイン、及びアラーミンといった生理活性物質の産生を抑制する事で、炎症状態を治療する白血球除去療法が注目されている。
【0005】
これら血液や血液製剤といった赤血球を含む生体由来液を処理する為のフィルターには、目標とするものの除去能力と同時に、赤血球への溶血等の悪影響を与えないことが要求される。
【0006】
赤血球を含む生体由来液より、白血球や血小板を除去するフィルターに関して、特許文献1は、担体表面に4級アミンのアルキルスルホン酸を含んだポリマーをコーティングし、該表面をカチオン化及び親水化することにより、白血球及び血小板の双方との相互作用を上げて、双方を効率よく除去できるというフィルター及びフィルターデバイスを開示している。
【0007】
また、特許文献2は、メチル(メタ)アクリレート及びジメチルアミノエチルアクリレート等の塩基性モノマーと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のプロトン性中性親水性モノマーと、を含むポリマーを担体表面にコーティングすることで、白血球及び血小板を除去し、血液のプライミング性に優れるというフィルター及びフィルターデバイスを開示している。特許文献3は、塩基性官能基及び酸性官能基の両方を別々のモノマーにて導入した表面により、白血球除去性能を向上させるという技術を開示している。
【0008】
特許文献4は、ポリマーがカチオン性であることによる赤血球へのダメージを抑えるために、カチオン性モノマーの影響を緩和し、溶血を防ぐための非イオン性モノマーをポリマー組成として加えた3元系ポリマーで担体表面をコーティングすることにより、白血球除去性能、及び溶血防止性を両立させるという技術を開示している。
【0009】
特許文献5は、同様の考え方によって、酸性官能基を側鎖に有するモノマーをポリマー組成として加えた3元系ポリマーで担体表面をコーティングすることで、白血球除去能、及び溶血防止性を両立させるという技術を開示している。
【0010】
特許文献6は、血液と接触する物質表面において、双性イオンを有する官能基と、第四級アミンなどのカチオンを永続的に有する官能基と、を導入することで、血液中の血球や血漿タンパク質の表面付着を遅らせると共に、血中に凝固剤として含まれるヘパリンで表面をコートすることにより、材料の血液適合性を向上させる技術を開示している。
【0011】
非特許文献1は、親水性のポリヒドロキシエチルメタクリレート(PHEMA)の表面を血清でプレコートすると、白血球の粘着量の顕著な増大が認められたと報告している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−197814号公報
【特許文献2】特許4252449号公報
【特許文献3】特開平8−281100号公報
【特許文献4】国際公開第2006/016163号公報
【特許文献5】国際公開第2006/016166号公報
【特許文献6】特許第4295359号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】岡野光夫ら、「免疫工学用材料の開発 ポリマー表面上における抗体の吸着、配向の制御とその応用」、人工臓器10巻1号、1981年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、赤血球及び血漿を含む生体由来液を、赤血球へ悪影響を与えずに処理することのできる、生体由来液処理フィルター及びフィルターデバイスを提供する事を目的とする。
【0015】
特許文献1に開示された技術においては、4級アミンのアルキルスルホン酸塩を含むモノマー単位を含有するポリマーを、また特許文献2に開示された技術においては、塩基性含窒素官能基を含むモノマー単位とプロトン性中性親水基を含むモノマー単位とを含有するポリマーを、担体表面にコーティングすることにより、親水性を向上させてフィルターへの濡れ性改善を試み、白血球除去性能、及び血小板除去性能の向上を目指している。しかしながら、本発明者らが特許文献1及び2に記載のフィルターで血液を処理したところ、フィルターへの赤血球付着や赤血球の溶血の問題があった。
【0016】
特許文献3は、塩基性官能基及び酸性官能基の両方を別々のモノマーにて導入した表面により白血球除去性能を向上させる技術を開示しているが、赤血球の溶血性については言及がない。特許文献3においては、塩基性官能基及び酸性官能基を導入する方法として両性化学種であるモノマーを用いることが一手段として言及されているが、両性化学種を用いた場合に、塩基性官能基と酸性官能基を別々のモノマーによって導入した場合と同じく白血球除去性能を向上できるか否かは開示されていない。この点において、本発明者らが、塩基性官能基と酸性官能基の両方を有するメタクリル酸エチルベタインを導入した表面を評価したところ、白血球除去性能の向上は認められなかった。
【0017】
特許文献4に開示された技術においては、塩基性含窒素官能基のアニオン性を緩和する為にポリマーの第3の成分としてMMA(メチルメタクリレート)やDEGMEMA(ジエチレングリコールメトキシエチルメタクリレート)等の非イオン性モノマーを加えた3元系ポリマーで担体表面をコーティングすることで、白血球除去能と溶血防止性の両立を試みているが、溶血性の防止は不十分であった。
【0018】
また、特許文献5に開示された技術においても、特許文献4と同様の考え方により、カチオン性官能基を有するモノマーを第3成分として加えた3元系ポリマーで担体表面をコーティングする事で、白血球除去性能と溶血防止性の両立を試みているが、こちらも溶血性の防止は不十分であった。
【0019】
特許文献6には、双性イオン基と、カチオンを永続的に有する第四級アミンと、が同時に導入された生体適合ポリマーが開示されているが、当該ポリマーを導入した表面の白血球除去性能及び赤血球の溶血性についての言及はない。この点において、本発明者らが、双性イオンを含む官能基と第四級アミンとを有するメタクリル酸ジエチル塩化アンモニウムとを含むポリマーでコーティングした表面を評価したところ、溶血性の防止が不十分であった。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、双性イオンを含む官能基と、塩基性含窒素官能基と、を有するポリマーを担持する担体を有するフィルターを用いることで、赤血球へ悪影響を及ぼすことなく、赤血球及び血漿を含む生体由来液を処理できることを見出し、本発明を完成した。
【0021】
すなわち、本発明の態様は、赤血球及び血漿を含む生体由来液を処理するフィルターであって、担体と、該担体に担持されたポリマーとを有し、ポリマーが、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、双性イオンを含む官能基と、塩基性含窒素官能基と、を有し、塩基性含窒素官能基が、−NH2,−NHR1又は−NR23(R1,R2,R3は炭素数1〜3のアルキル基)である、生体由来液処理フィルターである。
【0022】
上記の生体由来液処理フィルターにおいて、ポリマーが、担体1gあたり1.0mg以上32.5mg以下の量で担持されていてもよい。上記の生体由来液処理フィルターにおいて、双性イオンを含む官能基が、カルボベタイン、スルホベタイン、及びホスホベタインからなる群より選ばれた少なくとも一種に由来してもよい。
【0023】
上記の生体由来液処理フィルターにおいて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(l)と、塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位(m)と、双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位(n)と、のモル比が、ポリマーを構成するモノマー単位のモル比の全体を100として、
l+m+n=100,
0<l,m,n<100
の関係を満たしてもよい。
【0024】
上記の生体由来液処理フィルターにおいて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(l)と、塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位(m)と、双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位(n)と、のモル比が、l/m/n=40.0〜97.0/1.5〜32.5/1.5〜32.5であってもよい。
【0025】
上記の生体由来液処理フィルターにおいて、ポリマーにおける塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位が、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートであってもよい。
【0026】
上記の生体由来液処理フィルターにおいて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートであり、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートであり、双性イオンを有する官能基が、メタクリル酸メチルベタインであってもよい。
【0027】
上記の生体由来液処理フィルターにおいて、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートであり、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートであり、双性イオンを有する官能基が、メタクリル酸メチルベタインであってもよい。
【0028】
上記の生体由来液処理フィルターにおいて、担体の材質が、ポリエチレンテレフタラート又はポリブチレンテレフタラートであってもよい。あるいは、担体が、不織布であってもよい。
【0029】
また、本発明の態様は、赤血球及び血漿を含む生体由来液体を処理するフィルターデバイスであって、生体由来液体の入口及び出口を備えたハウジングと、ハウジング内に収容された上記の生体由来液処理フィルターと、を具備するフィルターデバイスである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、赤血球へ悪影響を与えずに赤血球及び血漿を含む生体由来液を処理することのできる、生体由来液処理フィルター及びフィルターデバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】一実施形態に係る生体由来液処理フィルターデバイスを示す分解斜視図である。
図2】一実施形態に係る血液製剤濾過システムを示す模式図である。
図3】実施例におけるモノマー組成、コーティング量、担体材料、及び評価結果を示す表である。
図4】比較例及び参考例におけるモノマー組成、コーティング量、担体材料、及び評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の好適な実施の形態(以下において、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお以下の示す本実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部材の組み合わせ等を下記のものに特定するものではない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において種々の変更を加えることができる。
【0033】
本実施形態に係る赤血球及び血漿を含む生体由来液を処理するフィルターは、担体と、担体に担持されたポリマーと、を備え、ポリマーが、非イオン性基を有するモノマー単位であるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、双性イオンを含む官能基と、塩基性含窒素官能基と、を有する。さらに、塩基性含窒素官能基は、−NH2,−NHR1又は−NR23(R1,R2,R3は炭素数1〜3のアルキル基)である。
【0034】
赤血球及び血漿を含む生体由来液とは、生体に由来する液体であって赤血球が分散されたもののうち血漿を含有するものを全て包含し、具体的には血液や、血液から調製された血液製剤が含まれる。ポリマーは、例えば担体にコーティングされることによって担持される。以下、担体に担持されたポリマーを、「コーティングポリマー」ともいう。ただし、担体にポリマーを担持させる方法は、これに限定されない。
【0035】
(コーティングポリマー)
本実施形態に係るフィルターに含まれるポリマーは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、双性イオンを含む官能基と、−NH2,−NHR1又は−NR23(R1,R2,R3は炭素数1〜3のアルキル基)である塩基性含窒素官能基と、を含有する。
【0036】
ポリマーは、少なくとも、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、双性イオンを含む官能基を有するモノマーと、塩基性含窒素官能基を有するモノマーと、の共重合体である。共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0037】
双性イオンを含む官能基としては、下記一般式(1),(2),(3)で表される官能基が挙げられる。
【化1】
【0038】
一般式(1)は、カルボベタインを示す。一般式(1)中、R1は炭素数1以上のアルキル基である。
【化2】
【0039】
一般式(2)は、スルホベタインを示す。一般式(2)中、R2は炭素数1以上のアルキル基である。
【化3】
【0040】
一般式(3)は、ホスホベタインを示す。一般式(3)中、R3は炭素数1以上のアルキル基である。
【0041】
一般式(1),(2),(3)で表される双性イオンを含む官能基のうち、経済性の面から好ましいのは、下記一般式(4)で表されるメタクリル酸メチルベタインに由来する官能基である。
【化4】
【0042】
塩基性含窒素官能基は、ブレンステッド・ローリーの酸塩基の定義より水素イオンを受容する能力を有する窒素原子を含む官能基として定義されることができる。すなわち、水素イオンを受容するための非共有電子対を有する−NH2,−NHR1,−NR23(R1,R2,R3は炭素数1〜3のアルキル基)で表されるアミノ基である。
【0043】
一般に白血球等の生体の細胞は負の電荷を有する為、フィルターにおける上記の塩基性含窒素官能基の非共有電子対が水素イオンを受容した後にカチオン性を有することで、白血球と相互作用し、結果としてフィルターが白血球を除去できると考えられる。しかしながら、第四級アミンの様に溶液のpH等の環境に依らずカチオンを示す官能基が存在すると、カチオン性が強くなりすぎ、赤血球を溶血させてしまう可能性が高まる。そのためカチオン性を付与する官能基として、−NH2,−NHR1,−NR23で表される塩基性含窒素官能基が用いられる。
【0044】
塩基性含窒素官能基を有する化合物の典型的な例としてはN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、中でも入手の容易性や経済性を勘案するとN,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0045】
以下の理論に拘束されるものではないが、同じ側鎖内に正荷電と負荷電が存在する双性イオンを含む官能基によって正荷電と負荷電を担体に導入することにより、特定の荷電がフィルター表面に局在することがないため、赤血球同志の相互作用を緩和することができ、溶血性を低減できているものと考えられる。また双性イオンを含む官能基と塩基性含窒素官能基とを含むポリマー構成単位とすることにより、塩基性含窒素官能基で導入される正電荷により白血球除去性能の向上を図りつつ、組み合わされた双性イオンを含む官能基によって赤血球同志の相互作用を緩和し溶血防止性能も発揮することができているものと考えられる。さらに、ポリマーがヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを含有することにより、白血球除去性能が向上するものと考えられる。
【0046】
より高い溶血防止性を発揮させる観点で、双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位の割合はコーティングポリマーが有するモノマー単位全体に対してモル比で1.5%以上が好ましい。全モノマー単位に対する双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位の割合は、ポリマーを可溶な溶媒に抽出し、核磁気共鳴(NMR)測定、アミノ基量測定、を組み合わせて算出することができる。
【0047】
白血球除去及び/又は血小板除去用途のフィルターの場合、コーティングポリマーは、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位と、側鎖に双性イオン含む官能基を有するモノマー単位と、からなり、これら以外のモノマー単位は含まないことが好ましい。換言すれば、コーティングポリマーを構成するモノマー単位のモル比の全体を100として、コーティングポリマーに含まれるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(l)と、塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位(m)と、側鎖に双性イオン含む官能基を有するモノマー単位(n)と、のモル比が、l+m+n=100,0<l,m,n<100であるのが好ましい。モル比が上記範囲内にあることにより、溶血等の赤血球のダメージを抑えつつ、優れた白血球除去性能及び血小板除去性能を実現できる。双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位のモル比が32.5%を上回り、塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位のモル比が1.5%を下回ると、赤血球の溶血には問題はないものの、白血球除去性能及び血小板除去性能が低下する傾向にある。溶血防止効果を確保しつつ、白血球除去及び/又は血小板除去の効果をより一層発揮するという観点から、コーティングポリマーに含まれるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位と、双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位と、のモル比は、例えば40.0〜97.0/1.5〜32.5/1.5〜32.5であり、好ましくは40.0〜95.0/2.5〜30.0/2.5〜30.0であり、より好ましくは50.0〜95.0/2.5〜30.0/2.5〜30.0であり、さらに好ましくは60.0〜95.0/2.5〜30.0/2.5〜30.0である。
【0048】
コーティングポリマーに含まれるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、塩基性含窒素官能基を有するモノマー単位と、双性イオンを含む官能基を有するモノマー単位と、のモル比の測定及び算出手順を、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートと、メタクリル酸メチルベタインと、を例に説明する。まず、コーティングポリマーをジメチルスルホキシド等の適切な溶媒へ溶解後、プロトン核磁気共鳴(1H−NMR)測定を行う。得られた1H−NMRから、すべてのモノマー単位に含まれるHに帰属するピーク(0.3−1.3ppmのピークと1.3−2.2ppmのピーク)からモノマー単位の全体量を求める。次に、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートに含まれるHに帰属されるピーク(2.6ppm)と、双性イオンを側鎖に有するモノマー単位に含まれるHに帰属するピーク(3.7ppm)から、各々の量を求める。さらに、モノマー単位の全体量から、先に求めた2つのモノマー単位の量を差し引いた残りを、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの量として、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、N,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートと、メタクリル酸メチルベタインとの存在比を算出する。
【0049】
(ポリマーの原料)
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0050】
上述の式(1)〜(3)で表される双性イオンを含む官能基を有するポリマーを合成するためには、下記一般式(5),(6),(7)で表される化合物を原料としてポリマーを合成するのが好ましい。
【化5】
【0051】
一般式(5)中、R5,R6は、H又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R4,R7は、CH2−CH2、CH2−CHRa、CHRa−CH2、CHRa−CHRb、CHRa−CRbc、CRab−CHRc、CRaRb−CRcd、及び(CH2g(g=2〜6の整数)のいずれかであり、Ra,Rb,Rc,Rdは、炭素数1〜3のアルキル基である。
【化6】
【0052】
一般式(6)中、R9,R11は、H又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R8,R10は、CH2−CH2、CH2−CHRa、CHRa−CH2、CHRa−CHRb、CHRa−CRbc、CRab−CHRc、CRab−CRcd、及び(CH2g(g=2〜6の整数)のいずれかであり、Ra,Rb,Rc,Rdは炭素数1〜3のアルキル基である。
【化7】
【0053】
一般式(7)中、R14,R15,R16は、H又は炭素数1〜3のアルキル基であり、R12,R13は、CH2−CH2、CH2−CHRa、CHRa−CH2、CHRa−CHRb、CHRa−CRbc、CRab−CHRc、CRab−CRcd、及び(CH2g(g=2〜6の整数を表す)のいずれかであり、Ra,Rb,Rc,Rdは、炭素数1〜3のアルキル基である。
【0054】
塩基性含窒素官能基をポリマーに導入するためのモノマーとしては、例えば、下記一般式(8)で表される化合物が挙げられる。
【化8】
【0055】
一般式(9)中、R19,R21,R22は、H、又は炭素数1〜3のアルキル基、フェニル基、及びこれらの誘導体のいずれかであり、R20は、CH2−CH2、CH2−CHRa、CHRa−CH2、CHRa−CHRb、CHRa−CRbc、CRab−CHRc、CRab−CRcd、及び(CH2e(e=2〜6の整数を表す)のいずれかであり、Ra,Rb,Rc,Rdは、炭素数1〜3のアルキル基である。
【0056】
一般式(9)で表されるモノマーの典型例としてはN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられ、中でも入手の容易性や経済性を勘案するとN,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0057】
(担体)
担体の材質は、赤血球を含む生体由来液を処理するフィルターとして使用されるものであれば特に制限されるものではないが、熱可塑性ポリマーであることが好ましい。担体の材質が熱可塑性ポリマーであると、溶融させて紡糸を行うことが可能であるため、例えば、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法又は抄造法等により、不織布、紙、織布又はメッシュの形態にすることができる。このような形態の自由度の観点から、担体の材質は、ポリエチレンテレフタラート又はポリブチレンテレフタラートであることがより好ましい。
【0058】
担体の形態としては、例えば、不織布、紙、織布、メッシュ、粒子、及び中空糸が挙げられ、中でも不織布が好ましい。なお、不織布とは、編織に依らず繊維又は糸の集合体が、化学的、熱的又は機械的に結合された布状のものをいう。
【0059】
担体が、不織布又は織布の場合、その平均繊維直径は0.3μm〜10.0μmとすることができ、0.3μm〜3.0μmであることが好ましく、0.5μm〜1.8μmであること更に好ましい。平均繊維直径が0.3μm以上である場合、血液をろ過する際の圧力損失が適度である。また、10.0μm以下である場合、白血球除去性能及び血小板除去性能がより顕著に発揮される傾向にあるので、これらの用途に好適である。
【0060】
ここで平均繊維直径とは、フィルターを構成する不織布又は織布から一部をサンプリングし、電子顕微鏡で観察した写真により測定した平均直径である。
【0061】
(フィルター)
フィルターにおいて、コーティングポリマーは、担体に担持されており、その担持量(「コーティング量」ともいう。)は、担体1gあたり1.0mg以上32.5mg以下、好ましくは2.0mg以上32.0mg以下、より好ましくは2.5mg以上31.5mg以下である。コーティング量が担体1gあたり1.0mg以上であると、フィルターの赤血球を含む生体由来液への濡れ性が高く、フィルターの流れ性が良いため、フィルターの一部が使われないエアーブロックを起し難い。また、ポリマーの赤血球を含む生体由来液への溶出及び溶血を防止する観点で、コーティング量は担体1gあたり32.5mg以下が好ましい。ここで、担持とは、コーティングポリマーが、例えば、化学的、物理的又は電気的に担体と結合又は吸着していることを意味する。
【0062】
コーティング量は、以下の手順により算出される。コーティングポリマーを担持させる前の担体を60℃に設定した乾燥機中で1時間乾燥させた後、デシケーター内に1時間以上放置した後に重量(Ag)を測定する。コーティングポリマーを担持させた担体(フィルター)を同様に60℃の乾燥機中で1時間乾燥させた後、デシケーター内に1時間以上放置した後に重量(Bg)を測定する。コーティング量は以下の算出式により算出される。
コーティング量(mg/g担体)=(B−A)×1000/A
【0063】
本実施形態に係るフィルターは、赤血球を含む生体由来液を、赤血球へ悪影響を与えずに処理することができるため、赤血球を含む血液製剤用の白血球及び/又は血小板除去フィルターデバイス用のフィルターや、患者血液から活性化した白血球を除去する為の体外循環治療フィルターデバイス用フィルターとして好適に用いられる。赤血球を含む血液製剤としては、例えば、全血製剤、及び赤血球製剤が挙げられる。上記効果を鑑みれば、赤血球を含む血液製剤は、輸血用製剤であることが好ましい。
【0064】
体外循環治療用フィルターデバイスの治療対象疾患としては、敗血症、全身炎症性症候群(SIRS)、リウマチ、及び潰瘍性大腸炎等、白血球による過剰な生理活性物質の放出が原因の一つである疾患であれば適用可能である。
【0065】
本発明の一実施形態において、赤血球を含む血液製剤用白血球及び血小板除去フィルター及びフィルターデバイスが提供される。
【0066】
(フィルターの製造方法)
フィルターは、上述した担体に、上述したコーティングポリマーを担持させることにより得ることができる。担持方法、具体的にはコーティング方法は、特に限定はされないが、例えば、塗布法、スプレー法、ディップ法を用いることができる。
【0067】
ディップ法は、アルコール、クロロホルム、アセトン、テトラヒドロフラン、又はジメチルホルムアミド等の適当な有機溶媒に上述したコーティングポリマーを溶解したコーティング液中に、担体を浸漬させた後、余分な溶液を取り除き、ついで風乾等の適切な手段により乾燥させることにより実施できる。乾燥方法としては、乾燥気体中での風乾する方法、減圧雰囲気中で常温又は加熱しながら乾燥を行う方法などがある。
【0068】
塗布法及びスプレー法は、上記コーティング液を担体に塗布又はスプレーした後、上述のように乾燥させることにより実施できる。
【0069】
(生体由来液処理フィルターデバイス)
図1は、一実施形態に係る生体由来液処理フィルターデバイスを示す分解斜視図である。図1に示す生体由来液処理フィルターデバイス100は、赤血球を含む血液製剤の入口1を有する樹脂製治具10と、血液製剤の出口2を有する樹脂製治具11とを備え、樹脂製治具10及び樹脂製治具11で形成されたハウジング内に本実施形態に係るフィルター20を9枚重ねたフィルターユニット21を含んでなる。フィルターユニット21におけるフィルター20の枚数は、特に制限はなく、適宜設定してよい。また、樹脂製治具10及び樹脂製治具11は、融着、接着剤による接着等により、結合していてもよい。
【0070】
図2は、一実施形態に係る生体由来液処理システムを示す模式図である。図2に示す生体由来液処理システム200は、処理前生体由来液210を収容したシリンジポンプ110と、生体由来液処理フィルターデバイス100と、処理後生体由来液220を収容する容器130とを備える。シリンジポンプ110と生体由来液処理フィルターデバイス100は、チューブ140により連結されている。また、生体由来液処理フィルターデバイス100と容器130は、チューブ150により連結されている。
【0071】
シリンジポンプ110からチューブ140を介して移送された処理前生体由来液210は、生体由来液処理フィルターデバイス100で処理され、白血球及び血小板が除去される。生体由来液処理フィルターデバイス100で処理前生体由来液210が濾過される際の圧力は、圧力計120で計測される。生体由来液処理フィルターデバイス100は、上述した本実施形態に係るフィルターを含んでいるため、処理後生体由来液220は赤血球の溶血等が生じていない。処理後生体由来液220は容器130に収容される。例えば生体由来液が血液製剤であれば、輸血用血液製剤として使用される。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
【0073】
[実施例1]
(コーティングポリマーの合成及びモル比測定)
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(HEMA)と、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート(DEAEMA)と、メタクリル酸メチルベタイン(CMB)と、の共重合体を通常の溶液重合によって合成した。重合条件は、各モノマー濃度が1モル/Lのエタノール溶液に、開始剤としてアゾイソブチロニトリル(AIBN)0.0025モル/L存在下、60℃で8時間重合反応を行った。得られたポリマー重合液を水中に滴下し、析出したポリマーを回収した。回収したポリマーは粉砕した後、減圧条件下で24時間乾燥してコーティングポリマーを得た。
【0074】
コーティングポリマー中のヒドロキシエチル(メタ)アクリレートモノマーと、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートモノマーと、メタクリル酸メチルベタインと、のモル比は、得られたコーティングポリマーをジメチルスルホキシドへ溶解した後、1H−NMR測定を行うことにより算出した結果、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートと、メタクリル酸メチルベタインと、のモル比は、70.0/10.0/20.0であった。
【0075】
(コーティング液の調製)
上記コーティングポリマーを90W/W%のエチルアルコールへ添加した後、12時間撹拌し、コーティングポリマー濃度が0.56重量%のコーティング液を調整した。
【0076】
(コーティング方法)
平均繊維直径1.2μmのポリエチレンテレフタラート(PET)繊維よりなる不織布(40g/m2目付、旭化成せんい社製「マイクロウェッブ」)を210mm×150mmの大きさに切り出し、上記コーティング液を入れた金属製バットへ20秒間浸漬させた。余剰コーティング液を落とした後、室温にて風乾させた。
【0077】
(コーティング量の測定)
上記コーティングの際に、210mm×150mmに切り出した不織布を60℃設定の熱風乾燥機で1時間乾燥の後に測定した不織布重量(Ag)と、上記方法によりコーティングを行った不織布を同様に60℃設定の熱風乾燥機で1時間以上乾燥の後に測定したコーティング後不織布重量(Bg)を用いて、下記算出式よりコーティング量を求めた。
コーティング量=(重量B−重量A)×1000/重量A
その結果、担体1gあたりのコーティング量は20.0mgであった。
【0078】
(白血球除去性能、血小板除去性能及び溶血試験方法)
上記コーティング後不織布を20φmmの打ち抜き刃で打ち抜き、9枚重ねて図1に示すような血液製剤の入口1と出口2を備えた樹脂製治具10及び11に挟んで除去フィルターデバイスを作製した。この除去フィルターデバイスについて、図2に示すような濾過システムを用いて血液評価試験(白血球除去性能、血小板除去性能及び溶血試験)を実施した。血液評価試験に用いた血液製剤は、CPD添加保存ヒト全血である。ドナーより採血し、室温にて24時間保存後の血液を用いた。試験の際の血液製剤の流量は40mL/時に設定した。
【0079】
(白血球除去性能)
以下の計算式に従い、白血球除去性能を算出した結果、白血球除去性能は4.7であった。
白血球除去能=−log[(濾過後血液製剤中の白血球濃度)/(濾過前血液製剤中の白血球濃度)]
【0080】
なお、濾過前後の血液製剤中の白血球濃度の測定は、ベクトンデッキンソン社(BD社)製白血球数測定用キット「LeucoCOUNT」及びBD社製フローサイトメーター FACS CantoIIを使用して行った。
【0081】
(血小板除去性能)
以下の計算式に従い、血小板除去性能を算出した結果、血小板除去性能は99%であった。
血小板除去性能(%)=[(濾過前血液製剤中の血小板濃度−濾過後血液製剤中の血小板濃度)/濾過前血液製剤中の血小板濃度]×100
【0082】
なお、濾過前後の血液製剤中の血小板濃度は、多項目自動血球計数装置(日本Sysmex社製 K−4500)を用いて測定した。
【0083】
(溶血試験方法)
濾過前後の血液製剤を3000回転/分(1700×g)15分間遠心分離した後、白い紙等を背景にして、上清部分の着色を濾過前後で観察比較し、以下の基準で評価した。その結果、(−)溶血無であった。
(i)濾過前の血液製剤の上清と比べて濾過後の血液製剤の上清の赤色が明らかに濃いものを(+)溶血あり
(ii)濾過前の血液製剤の上清と比べて濾過後の血液製剤の上清に赤色着色が見られるものを(±)溶血あり
(iii)濾過前の血液製剤の上清と比べて濾過後の血液製剤の上清に赤色着色を認められないものを(−)溶血無
【0084】
[実施例2]
コーティングポリマーのコーティング量が担体1gあたり2.5mgであること以外は実施例1と同様であるフィルターを使用した。実施例1と同様の方法で白血球除去性能、血小板除去性能、及び溶血評価を実施した結果、それぞれ、4.6、99%、及び(−)溶血無であった。
【0085】
[実施例3]
コーティングポリマーのコーティング量が担体1gあたり30.0mgであること以外は、実施例1と同様であるフィルターを使用した。実施例1と同様の方法で白血球除去性能、血小板除去性能及び溶血評価を実施した結果、それぞれ、4.6、99%、及び(−)溶血無であった。
【0086】
[実施例4]
コーティングポリマーの組成がHEMA/DEAEMA/CMB=95.0/2.5/2.5(モル比)であること、及びコーティングポリマーのコーティング量が担体1gあたり1.0mgであること以外は、実施例1と同様であるフィルターを使用した。実施例1と同様の方法で白血球除去性能、血小板除去性能及び溶血評価を実施した結果、それぞれ、4.6、99%、及び(−)溶血無であった。
【0087】
[実施例5]
コーティングポリマーの組成がHEMA/DEAEMA/CMB=67.5/30.0/2.5(モル比)であること、及びコーティングポリマーのコーティング量が担体1gあたり30.0mgであること以外は、実施例1と同様であるフィルターを使用した。実施例1と同様の方法で白血球除去性能、血小板除去性能及び溶血評価を実施した結果、それぞれ、4.7、99%、及び(−)溶血無であった。
【0088】
[実施例6]
コーティングポリマーの組成がHEMA/DEAEMA/CMB=67.5/2.5/30.0(モル比)であること、及びコーティングポリマーのコーティング量が担体1gあたり1.0mgであること以外は、実施例1と同様であるフィルターを使用した。実施例1と同様の方法で白血球除去性能、血小板除去性能及び溶血評価を実施した結果、それぞれ、4.5、99%、及び(−)溶血無であった。
【0089】
[実施例7]
コーティングポリマーの組成がヒドロキシプロピルメタクリル酸(HPMA)/DEAEMA/CMB=67.5/30.0/2.5(モル比)であること、及びコーティングポリマーのコーティング量が担体1gあたり30.0mgであること以外は、実施例1と同様であるフィルターを使用した。実施例1と同様の方法で白血球除去性能、血小板除去性能及び溶血評価を実施した結果、それぞれ、4.7、99%、及び(−)溶血無であった。
【0090】
[実施例8]
コーティングポリマーの組成がHPMA/DEAEMA/CMB=95.0/2.5/2.5(モル比)であること、及びコーティングポリマーのコーティング量が担体1gあたり1.0mgであること以外は、実施例1と同様であるフィルターを使用した。実施例1と同様の方法で白血球除去性能、血小板除去性能及び溶血評価を実施した結果、それぞれ、4.5、99%、及び(−)溶血無であった。
【0091】
[実施例9]
用いた不織布の材料がポリブチレンテレフタラート(PBT)である事以外は、実施例1と同様であるフィルターを使用した。実施例1と同様の方法で白血球除去性能、血小板除去性能及び溶血評価を実施した結果、それぞれ4.7、99%及び(−)溶血無であった。
【0092】
[比較例1]
コーティングポリマーの組成がHEMA/DEAEMA=70.0/30.0(モル比)であること、及びコーティングポリマーのコーティング量が担体1gあたり5.0mgであること以外は、実施例1と同様であるフィルターを使用した。実施例1と同様の方法で白血球除去性能、血小板除去性能及び溶血評価を実施した結果、それぞれ、4.0、99%、及び(+)溶血ありであった。
【0093】
[比較例2]
コーティングポリマーの組成が、HEMA/CMB=85.0/15.0(モル比)であること以外は、実施例1と同様であるフィルターを使用した。実施例1と同様の方法で白血球除去性能、血小板除去性能及び溶血評価を実施した結果、それぞれ、2.8、60%、及び(−)溶血無であった。
【0094】
[比較例3]
コーティングポリマーの組成がHEMA/DEAEMA/CMB=30.0/35.0/35.0(モル比)であること以外は、実施例1と同様であるフィルターを使用した。実施例1と同様の方法で白血球除去性能、血小板除去性能及び溶血評価を実施した結果、それぞれ、3.8、99%、及び(±)溶血ありであった。
【0095】
[比較例4]
コーティングポリマーのコーティング量が担体1gあたり35.0mgであること以外は、実施例1と同様であるフィルターを使用した。実施例1と同様の方法で白血球除去性能、血小板除去性能及び溶血評価を実施した結果、それぞれ、4.7、99%、及び(+)溶血ありであった。
【0096】
[比較例5]
コーティングポリマーの組成が2−メトキシエチル(メタ)アクリレート(MEMA)/DEAEMA/CMB=70.0/10.0/20.0(モル比)であること以外は、実施例1と同様であるフィルターを使用した。実施例1と同様の方法で白血球除去性能、血小板除去性能及び溶血評価を実施した結果、それぞれ、4.4、99%、及び(−)溶血無であった。
【0097】
[比較例6]
コーティングポリマーの組成がHEMA/DEAEMA/AH(アクリル酸;カチオン性モノマー)=60.0/30.0/10.0(モル比)であること、及びコーティングポリマーのコーティング量が担体1gあたり20.0mgであること以外は、実施例1と同様であるフィルターを使用した。実施例1と同様の方法で白血球除去性能、血小板除去性能及び溶血評価を実施した結果、それぞれ、3.7、90%、及び(+)溶血ありであった。
【0098】
[比較例7]
コーティングポリマーの組成がHEMA/DEAEMA/DEGMEMA(ジエチレングリコールメトキシエチルメタクリル酸;非イオン性モノマー)=60.0/30.0/10.0(モル比)であること以外は、実施例1と同様であるフィルターを使用した。実施例1と同様の方法で白血球除去性能、血小板除去性能及び溶血評価を実施した結果、それぞれ、3.7、99%、及び(+)溶血ありであった。
【0099】
[参考例1]
現行、白血球除去フィルターデバイス(旭化成メディカル社製 Sepacel)よりフィルターを取り出し、実施例1と同様の方法で白血球除去性能、血小板除去性能及び溶血評価を実施した結果、それぞれ、3.0、95%、及び(−)溶血無であった。
【0100】
実施例、比較例及び参考例におけるモノマー組成、コーティング量、担体材料、及び評価結果を図4及び図5に併せて示す。
【0101】
コーティングポリマー中のモノマー成分として、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと、塩基性含窒素官能基を有するモノマーと、側鎖に双性イオンを含む官能基を有するモノマーと、を含み、その組成比を制御することにより赤血球及び血漿を含む生体由来液を、赤血球へ悪影響を与える事無く処理きた。また、白血球及び血小板の除去用途のフィルターの場合、高効率で白血球及び血小板を除去できた。
【符号の説明】
【0102】
1…入口、2…出口、10,11…樹脂製治具、20…フィルター、21…フィルターユニット、100…生体由来液処理フィルターデバイス、110…シリンジポンプ、130…容器、140,150…チューブ,200…生体由来液処理システム、210…処理前生体由来液、220…処理後生体由来液。
図1
図2
図3
図4