(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705690
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】錠装置が設けられるトイレブース用の折戸
(51)【国際特許分類】
E06B 3/48 20060101AFI20200525BHJP
E05C 21/00 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
E06B3/48
E05C21/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-87834(P2016-87834)
(22)【出願日】2016年4月26日
(65)【公開番号】特開2017-197929(P2017-197929A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】307038540
【氏名又は名称】三和シヤッター工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100206106
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】高島 健一
(72)【発明者】
【氏名】松原 可菜子
【審査官】
砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−60170(JP,A)
【文献】
実公昭56−4776(JP,Y2)
【文献】
特開平8−158672(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/12
E05B 1/00
E05C 21/00
E05D 15/26
E06B 3/48
E06B 3/68−3/88
E06B 3/92−3/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トイレブース用開口部の吊元側に室内側に向けて開放するよう揺動自在に取付けられる吊元側戸体と、該吊元側戸体の戸先側端部に吊元側端部が折畳み継手を介して揺動自在に取付けられ、上端部に設けたガイド体が開口部上枠に設けたガイドレールに案内されて移動することで、吊元側戸体と共に室内側にV字形に折畳まれる戸先側戸体とで構成されるトイレブース用の折戸において、戸先側戸体に、室内側から折戸の開閉操作をするための把手が設けられ、戸尻側戸体に、室内側から施錠、解錠操作をするための錠装置が設けられたものにするにあたり、把手は、折畳み継手に近接するよう偏倚した位置に、上下方向に長く、戸先側戸体の室内側面に対して室内側に突出する把持部を備え、錠装置は、折畳み継手に近接するよう偏倚した位置に、吊元側戸体の室内側面から室内側に突出する状態で施錠、解錠操作をするための摘みを備えたものであり、該錠装置の摘みは、把手把持部の上下長さの中間部位に位置し、把手把持部よりも室内側への突出量が少なく、かつ折畳み継手からは把手把持部よりも遠い位置に位置するようにして設けられていることを特徴とする錠装置が設けられるトイレブース用の折戸。
【請求項2】
吊元側戸体は、トイレブースを仕切る仕切りパネル体の先端に設けられた正面パネル体に対して開閉揺動自在に設けられるものであり、錠装置は、折戸が全開姿勢になったとき、吊元側の仕切りパネル体に対向していることを特徴とする請求項1記載の錠装置が設けられるトイレブース用の折戸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレブー
スの開口部(出入り口)に建て付けられる錠装置が設けられる
トイレブース用の折戸の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、トイレブー
スの仕切り部屋の開口部(出入り口)に折戸を設けることが試みられているが、このような折戸は、開口部に対して室内側に向けて開放するよう揺動自在に取付けられる吊元側戸体と、該吊元側戸体に対してヒンジユニット等の折畳み継手を介して揺動自在に取付けられ、上端部に設けたガイドローラ等のガイド体が開口部上枠に設けたガイドレールに案内されて移動することで吊元側戸体と共に室内側にV字形に折畳まれる戸先側戸体とを備えて構成されることになる。そしてこのような折戸に、室内側から解錠、施錠操作ができる錠装置を設けることがあるが、このような錠装置を、把手と共に戸先側戸体の室内側面に設けたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3834790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこのように錠装置を把手が設けられる戸先側戸体に設けた場合、折戸を開放して室内に入った者が折戸を閉じようとしたときに、把手がある戸面と同じ面に錠装置が並ぶ状態であるため、把手でなく錠装置に手を触れた状態で折戸を閉じることがあり、このとき錠装置を、誤って摘みを施錠位置に操作してラッチが突出した状態で折戸を閉鎖してしまうことがある。このようになると、誤操作によって突出したラッチがラッチ受けが設けられる上枠に室内側から当接することになって折戸が閉まらないだけでなく、ラッチや戸枠が変形したり破損したりする惧れがあるという問題があり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、
トイレブース用開口部の吊元側に室内側に向けて開放するよう揺動自在に取付けられる吊元側戸体と、該吊元側戸体の戸先側端部に吊元側端部が折畳み継手を介して揺動自在に取付けられ、上端部に設けたガイド体が開口部上枠に設けたガイドレールに案内されて移動することで、吊元側戸体と共に室内側にV字形に折畳まれる戸先側戸体とで構成される
トイレブース用の折戸において、
戸先側戸体に、室内側から折戸の開閉操作をするための把手が設けられ、戸尻側戸体に、室内側から施錠、解錠操作をするための錠装置が設けられたものにするにあたり、把手は、折畳み継手に近接するよう偏倚した位置に、上下方向に長く、戸先側戸体の室内側面に対して室内側に突出する把持部を備え、錠装置は、折畳み継手に近接するよう偏倚した位置に、吊元側戸体の室内側面から室内側に突出する状態で施錠、解錠操作をするための摘みを備えたものであり、該錠装置の摘みは、把手把持部の上下長さの中間部位に位置し、把手把持部よりも室内側への突出量が少なく、かつ折畳み継手からは把手把持部よりも遠い位置に位置するようにして設けられていることを特徴とする錠装置が設けられる
トイレブース用の折戸である。
請求項2の発明は、吊元側戸体は、トイレブースを仕切る仕切りパネル体の先端に設けられた正面パネル体に対して開閉揺動自在に設けられるものであり、錠装置は、折戸が全開姿勢になったとき、吊元側の仕切りパネル体に対向していることを特徴とする請求項1記載の錠装置が設けられる
トイレブース用の折戸である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、錠装置は、折戸を全開姿勢にした場合に、室内側に折畳まれて把手がある戸先側戸体とは反対側に位置する状態になるため、折戸を閉めようとしたときに誤って錠装置に手をやって閉鎖操作することが回避され、この結果、折戸が全閉姿勢になる前に誤操作により錠装置が施錠状態になって折戸が閉まらなくなるような不具合発生を防止することができる。
しかも、全開姿勢の折戸を閉鎖しようとするときに、室内に入った人が視認しやすい戸先側戸体の室内側面に把手が位置することになるため、閉鎖操作時、錠装置を誤って操作することが一段と回避されることになる。
そのうえ、各戸体に別々取付けられる把手と錠装置とが折畳み継手を挟んで近接する側に位置することになるから、把手を把持して閉鎖操作した後に錠装置の施錠操作することが容易になる。
請求項
2の発明とすることにより、トイレブースにおいて、折戸が全開姿勢になった場合に、錠装置は、吊元側戸体とトイレブースを仕切る仕切りパネル体とのあいだの狭いスペースに配された状態となるため、誤って錠装置に手を触れた状態で閉鎖操作することの防止がより確実になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】蓋体を外した状態のトイレブースの要部拡大水平断面図である。
【
図6】(A)(B)はガイドローラの転動状態を示す縦断面図、戸当りがガイドレールに当接した状態を示す縦断面図である。
【
図9】(A)(B)は錠本体の正面図、本体受けの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1はトイレブースであって、該トイレブース1は、各トイレ室Tを仕切る仕切りパネル体2および該仕切りパネル体2の先端に設けられる正面パネル体3、隣接する正面パネル体3間に形成される出入り口Aの開閉をする折戸4を用いて戸体Dが構成されている。そして折戸4は、本実施の形態では、ブース室外から出入り口Aを見た場合に、右側が吊元側戸体5、左側が戸先側戸体6となっている(この逆の配置としても勿論よい。)が、吊元側戸体5の右端部(吊元側端部)の上縁部は、後述する上枠(笠木レール)7に設けた上側ヒンジ金具8から突出するヒンジピン8aによって、下縁部は正面パネル体3の左右方向さ縁部に取付けた下側ヒンジ金具9のヒンジピン9aによって室内方向に向けて開放するよう揺動自在に軸支されている。尚、ヒンジピン8a、9aは、自動開放、自動閉鎖の何れか一方の機能を有したものを選択できるが、このような自動開閉の機能のないものであっても勿論よい。因みに本実施の形態では、自動開放するものを採用している。
【0009】
10は吊元側戸体5と戸先側戸体6とを開閉揺動自在に蝶着するヒンジユニット(本発明の「折畳み継手」に相当する。)であって、該ヒンジユニット10は、一対の円筒状体の周面部を突き合わせ開口した状態で形成される上下方向に長いパイプ体11と、該パイプ体11の上下両端面を塞ぐ上下の蓋体12と、吊元側、戸先側の両戸体5、6の互いに対向する戸先側、戸尻側エッジ材5a、6aの上下端縁部にそれぞれ固定される上下の取付け金具13と、該取付け金具13の蓋体12と対向する部位13aにおけるパイプ体11の円筒中心位置から該蓋体12を貫通してパイプ体11内に至る支軸14と、パイプ体11内において互いに噛合する状態で各支軸14に設けられるギア体15とを備えて構成されている。
【0010】
さらに戸先側戸体6の戸先側上端縁にはガイドローラ16、17が上下に設けられるが、上側のガイドローラ16は左右一対設けられたものであって前後方向を向く支持軸16aを軸心として回転し、下側のガイドローラ17は上下方向を向く支持軸17aを軸心として回転するように設定されているが、これらガイドローラ16、17は、さらに上下方向を向く取付け軸18を軸心として左右方向に首振り揺動自在に構成されている。
一方、前記上枠7は、下側が開口し、下半部7aが幅狭で上半部7bが幅広な蟻溝形状になっているが、下半部7aには、上側ガイドローラ16が転動するガイドレール7cと、下側ガイドローラ17が転動するガイドレール7dとが形成されている。
尚、本実施の形態においては、ガイドローラ16、17が本発明の「ガイド体」に相当しているがこれに限定されるものではなく、ガイド体としてはピン状のものをガイドレールに案内させて移動させるようにしても実施することができる。
【0011】
そして吊元側戸体5と戸先側戸体6とは、両戸体5、6が全閉となった面一状態のときには、ガイドローラ16、17は上枠7に対して最も戸先側に位置した状態になっている。この状態から折戸4を室外側より例えばパイプ体11部位に手を当てて室内側に押すと、両戸体5、6は、ギア体15の噛合位置がずれることになって両戸体5、6はパイプ体11部位で室内側に折畳まれると同時に、ガイドローラ16、17が、折畳まれていく戸先側戸体6に対して上下方向の取付け軸18を軸心として向きを変えながらガイドレール7c、7dを左右方向に移動案内される状態で吊元側に移動することになり、これにより戸体Dである折戸4は、折れ曲がり角度が全閉の180度の状態から次第に小さくなって室内側に向けてV字状に折畳まれて全開姿勢になる。この全開姿勢になると、上側ヒンジ金具8に設けたストッパ8bに、上側ガイドローラ16の支持軸16aを支持する支持金具16bの吊元側端が当接することになって、これ以上の折畳み移動が規制される。
【0012】
一方、全開姿勢になった折戸4を全閉姿勢にするには、パイプ体11を室外側に押してもよいが、戸先側戸体6の室内側面6bに、ヒンジユニット10に近接するよう偏倚した状態で設けた上下方向に長い棒状の
把手部19aを備えた把手(ドアハンドル)19を把持して戸先側若しくは室外側に押しやることで折戸4は閉鎖姿勢に向けて移動する。そして折戸4が全閉姿勢になると、戸先側戸体6の上端部に設けた戸当たり20が上枠下半部7aに室内側から当接することになって逆側(室外側)への折畳まりが規制されるようになっている。このように把手19を戸先側戸体6の室内側面においてヒンジユニット10に近接する位置に設けることにより、室内に入った人が容易に視認できかつ把持しやすいところに位置することになって把手19による閉鎖操作がしやすいものになる。
【0013】
また21は錠装置であって、該錠装置21は、吊元側戸体5に設けられたものであり、特に本実施の形態ではヒンジユニット10に近接する側でかつ把手19の上下方向中央位置に対応する位置に設けられているが、錠装置21を構成する錠本体21aを、吊元側戸体5に設けた貫通孔5b周囲の室内側面5cに当てがう一方、本体受け21bを室外側面5dに当てがった状態で、錠本体21a側から図示しないビスを錠受け体21b側に螺入することで組込まれることになる。尚、本体受け21bは、吊元側戸体5の室外側面5dと略面一状になるよう設けられている。
そして錠本体21aに設けた摘み21dは、錠本体21aと本体受け21bに設けた非常解錠体21eとのあいだに介装した錠軸21fと共に一体回動するようになっているが、錠軸21fには、吊元側戸体5の上端部に至るよう設けたロッド21gの下端部が連結された回転体21hが一体回動するように設けられ、ロッド21gの上端部には、吊元側戸体5の上框5eに設けた支持部材5fに上下移動自在に支持されたラッチ21iが設けられている。そして摘み21dが解錠位置に位置するときには、
図7に示すようにラッチ21iは解錠位置に位置していて、上枠7の下側ガイドローラ用のガイドレール7dとは干渉しないようになっているが、摘み21dを施錠位置に操作すると、
図8に示すようにラッチ21iが上動することになってガイドレール7dに没入して施錠状態となるように構成されている。
尚、錠装置21の本体受け21bに設けられる非常解錠体21eには、コインを挿入して回すための溝21jが形成されており、トイレ室T内に人が閉じ込められたような非常時に、該溝21jにコインを差込んで回すことで、ラッチ21iが施錠位置から解錠位置に移動することになり、閉じ込められた人の脱出ができるようになっている。
しかもこのものにおいて、図1から明らかなように、錠装置21の摘み21dは、前述したように上下方向に長い把持部19aの上下長さの中間部位に位置すると共に、さらに図4から明らかなように、該把持部19aよりも室内側への突出量が少ないものとなっており、そのうえ図5から明らかなように、折畳み継手10からは把持部19aよりも遠い位置に位置するようにして設けられている。
【0014】
叙述の如く構成された本実施の形態において、トイレブース1の出入り口Aに折戸4からなる戸体Dが設けられるが、該折戸4は、吊元側が正面パネル体3に対して室内側に向けて開放するよう揺動自在に取付けられる吊元側戸体5と、該吊元側戸体5の戸先側端部に吊元側端部がヒンジユニット10を介して揺動自在に取付けられ、上端部に設けた上下のガイドローラ16、17が上枠7に設けた上下のガイドレール7c、7dに案内されて左右方向に移動することで、吊元側戸体5と共に室内側にV字形に折畳まれる戸先側戸体6とで構成される折戸であり、この折戸に、室内側から施錠、解錠操作ができる摘み21dが設けられた錠装置21を設けるにあたり、該錠装置21は、戸先側戸体6ではなく吊元側戸体5に設けられている。この結果、折戸4を全開姿勢にして室内に入った人が折戸4を閉めようとしたときに、錠装置21は折畳まれた戸体Dに隠れた裏側に位置する状態になっているため、錠装置21を把持しての折戸4の閉操作がなされることが防止されることになって、誤操作により折戸4が全閉する前に突出したラッチ21iが上枠7に当接して全閉できなくなるような不具合を回避できることになる。
【0015】
しかもこのものでは、戸先側戸体6の室内側面6aに把手19が設けられているため、該把手19は、室内に入った人が視認しやすい出入り口Aの開口した側に設けられており、この結果、室内に入った人は、この把手19を積極的に把持して閉操作することになって錠装置21を持って閉操作することが一段と防止される。
【0016】
そのうえこの錠装置21と把手19は、各対応する戸体5、6のヒンジユニット10に近接する側にそれぞれ偏倚した位置に設けられている結果、把手19を把持して閉操作した手を錠装置21i移動させて施錠操作することが手早くできることになって操作性が向上する。
【0017】
この場合に、戸体Dである折戸4が全開姿勢になったとき、吊元側戸体5に設けられる錠装置21は、吊元側の仕切りパネル体2に近接対向していることになって、吊元側戸体5と仕切りパネル体2とのあいだの狭いスペースに配されたものになり、この結果、折戸4を閉鎖しようとする人が、わざわざこの狭いスペースに手を入れて錠装置21を把持して折戸4の閉操作をするような意識を持たせることが回避され、錠装置21を把持することがない正常な折戸4の閉操作が行われることになる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、トイレブース等の仕切り部屋の出入り口に建て付けられる錠装置付きの折戸の分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 トイレブース
2 仕切りパネル体
3 正面パネル体
4 折戸
5 吊元側戸体
5c 室内側面
5d 室外側面
6 戸先側戸体
6b 室内側面
7 上枠
7c、7d ガイドレール
10 ヒンジユニット
16、17 ガイドローラ
19 把手
21 錠装置
A 出入り口
D 戸体