(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.ポリオレフィン系樹脂組成物
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂と、抗生物活性化合物含有粒子と、反応性分散安定化剤とを含有する。以下、各成分について詳述する。
【0010】
2.ポリオレフィン系樹脂
ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンを含有するモノマー成分から生成される熱可塑性樹脂であって、例えば、オレフィン単独重合体、オレフィン共重合体、オレフィンとオレフィン以外の炭化水素系モノマーとの共重合体、オレフィンと非炭化水素系モノマーとの共重合体などが挙げられる。
【0011】
オレフィン単独重合体としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン(LDPE)などのポリエチレン(PE)、例えば、ポリプロピレン(PP)などが挙げられる。
【0012】
オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体などが挙げられる。
【0013】
オレフィンとオレフィン以外の炭化水素系モノマーとの共重合体としては、例えば、エチレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加体(SEBS、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体)、スチレン−イソプレン共重合体の水素添加体(SEPS、スチレン−エチレン−プロピレン共重合体)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)などが挙げられる。
【0014】
オレフィンと非炭化水素系モノマーとの共重合体としては、例えば、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体などのエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などのエチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体などのエチレン−塩素化モノマー共重合体などが挙げられる。
【0015】
ポリオレフィン系樹脂として、好ましくは、オレフィン単独重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、より好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレンが挙げられ、とりわけ好ましくは、高密度ポリエチレンが挙げられる。ポリエチレンおよびポリプロピレンは、例えば、高温高圧重合、例えば、チーグラー触媒、チーグラー・ナッタ触媒による配位重合、例えば、カミンスキー触媒などのメタロセン触媒による配位重合により製造されたものが挙げられる。
【0016】
JIS−K 7210に準拠して測定されるポリオレフィン系樹脂のメルトマスフローレイトは、例えば、0.04g/10min以上、好ましくは、0.10g/10min以上、また、例えば、1.00g/10min以下、好ましくは、0.20g/10min以下である。
【0017】
また、ポリオレフィン系樹脂は、市販品を用いることができ、具体的には、ハイゼックスシリーズ(プライムポリマー社製)などが用いられる。
【0018】
ポリオレフィン系樹脂の配合割合は、ポリオレフィン系樹脂組成物に対して、例えば、80質量%以上、好ましくは、90質量%以上であり、また、例えば、99.9質量%以下、好ましくは、99.0質量%以下である。
【0019】
3.抗生物活性化合物含有粒子
抗生物活性化合物含有粒子は、次に説明する反応性分散安定化剤がポリオレフィン系樹脂組成物に含有されない場合には、ポリオレフィン系樹脂に対して相分離し、抗生物活性化合物含有粒子とポリオレフィン系樹脂との界面における親和性が低いために、ポリオレフィン系樹脂組成物の耐衝撃性を低下させる性質を有する。
【0020】
抗生物活性化合物含有粒子は、第1官能基を含有する。
【0021】
3−1.第1官能基
第1官能基は、次に説明する活性水素基含有成分における活性水素基であり、または、ポリイソシアネート成分におけるイソシアネート基に由来する活性水素基である。具体的には、第1官能基としては、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基などが挙げられる。好ましくは、アミノ基が挙げられる。アミノ基は、活性水素基含有成分における活性水素基である場合には、活性水素基含有成分に含有されるアミノ基であり、また、ポリイソシアネート成分に含有されるイソシアネート基に由来する活性水素基である場合には、イソシアネート基が水と反応してカルバミン酸(−NH−COOH)を生じ、さらに、炭酸ガス(CO
2)が脱離されることにより、生成されるアミノ基である。
【0022】
3−2.抗生物活性化合物
また、抗生物活性化合物含有粒子は、抗生物活性化合物を含有する。抗生物活性化合物としては、例えば、重合性ビニルモノマーに対して実質的に不溶性、かつ、実質的に疎水性である第1の抗生物活性化合物が挙げられ、例えば、重合性ビニルモノマーに対して実質的に相溶性(溶解性または可溶性)、かつ、実質的に疎水性である第2の抗生物活性化合物が挙げられる。さらに、抗生物活性化合物として、例えば、カプサイシン類および/またはエキスなども挙げられる。
【0023】
第1の抗生物活性化合物は、殺虫、防虫、殺菌、抗菌、防腐、除草、防藻、防かび、誘因、忌避、殺鼠などの抗生物活性を有する、殺虫剤、防虫剤、殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、除草剤、防藻剤、防かび剤、誘引剤、忌避剤および殺鼠剤などから選択される。第1の抗生物活性化合物は、例えば、重合性ビニルモノマーに対する室温(20〜30℃、より具体的には、25℃)における溶解度が極めて小さく、具体的には、室温の溶解度が、例えば、0.1質量部/(使用する)重合性ビニルモノマー(混合物)100容量部(1g/L)以下、好ましくは、0.05質量部/(使用する)重合性ビニルモノマー(混合物)100容量部(0.5g/L)以下である。また、抗生物活性化合物は、実質的に疎水性であって、具体的には、例えば、水に対する室温(20〜30℃、より具体的には、25℃)における溶解度が極めて小さく、より具体的には、例えば、室温の溶解度が、1.5質量部/水100容量部(15g/L)以下、好ましくは、0.5質量部/水100容量部(5g/L)以下、さらに好ましくは、0.1質量部/水100容量部(1g/L)以下である。第1の抗生物活性化合物としては、例えば、クロチアニジン、イミダクロプリドなどのネオニコチノイド系殺虫剤、昆虫成長制御剤、殺ダニ剤などの殺虫剤などが挙げられる。
【0024】
第2の抗生物活性化合物としては、殺菌、抗菌、防腐、防藻、防かび、殺虫、誘因、忌避、殺鼠などの抗生物活性を有する、殺菌剤、抗菌剤、防腐剤、防藻剤、防かび剤、除草剤、殺虫剤、誘引剤、忌避剤および殺鼠剤などから選択される。第2の抗生物活性化合物としては、例えば、IPBCなどのヨウ素系化合物、例えば、フルシラゾールなどのトリアゾール系化合物、例えば、OIT、Cl−MIT、DCOITなどのイソチアゾリン系化合物などの殺菌防腐防藻防かび剤、例えば、シフルトリンなどのピレスロイド系化合物、例えば、アセタミプリドなどのネオニコチノイド系化合物などの防蟻剤(殺蟻剤)などが挙げられる。第2の抗生物活性化合物の水に対する溶解度は、第1の抗生物活性化合物のそれと同一範囲から選択される。
【0025】
カプサイシン類としては、カプサイシン(N−[(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)メチル]−8−メチル−6−ノネンアミド)、および、カプサイシン誘導体が挙げられる。カプサイシン誘導体としては、例えば、ノニリックアシドバニリルアミド、デシリックアシドバニリルアミド、ノルジヒドロカプサイシン、ジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシンなどが挙げられる。これらは、単独使用または併用することができる。カプサイシン類として、好ましくは、カプサイシン、ノニリックアシドバニリルアミドが挙げられる。また、カプサイシン類は、例えば、化学的な合成により得られ、また、例えば、カプサイシン類を含有するエキス(後述)の精製により得られる。そして、カプサイシン類を含有するエキスの精製により得られるカプサイシン類は、好ましくは、カプサイシンを主成分とし、カプサイシン誘導体を副成分として含有する混合物である。カプサイシン類の水に対する室温(25℃)における溶解度は、室温(25℃)における溶解度が、例えば、1.00g/水1L以下、好ましくは、0.50g/水1L以下である。
【0026】
エキスは、カプサイシン類を含有するエキスであって、例えば、トウガラシ属の果実から抽出されたエキス(トウガラシエキス)であり、具体的には、トウガラシ属の種皮および/または果皮から、溶剤により抽出し、その後、溶剤を留去することにより得られたエキス(トウガラシエキス)などが挙げられる。
【0027】
トウガラシ属としては、例えば、トウガラシ、ブート・ジョロキア、ハバネロなどが挙げられる。
【0028】
エキスは、例えば、カプサイシン類の他に、さらに、夾雑物を含有している。
【0029】
夾雑物としては、エキスに混入する不純物(カプサイシン類に同伴する不純物)であって、具体的には、水に不溶性または難溶性の物質が挙げられ、例えば、カロテンなどの色素、例えば、脂質などが挙げられる。
【0030】
エキスにおけるカプサイシン類の含有割合は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上であり、また、例えば、50質量%未満、さらには、40質量%以下である。エキスにおける夾雑物の含有割合は、例えば、50質量%超過、さらには、60質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0031】
3−3.抗生物活性化合物含有粒子の形態
抗生物活性化合物含有粒子としては、コア、および、コアを被覆するシェルを備えるコアシェル粒子が挙げられる。そのようなコアシェル粒子としては、例えば、国際公開第2015/030213号などに記載されるような、上記した第1の抗生物活性化合物および第1重合体を含有するコアと、第2重合体からなり、コアを被覆するシェルとを備える徐放性粒子(第1の粒子)、例えば、国際公開第2012/124599号などに記載されるような、上記した第2の抗生物活性化合物および第1重合体を含有するコアと、第2重合体からなり、コアを被覆するシェルとを備える徐放性粒子(第2の粒子)が挙げられる。さらに、抗生物活性化合物含有粒子としては、第1の重合体と、上記したカプサイシン類、および/または、カプサイシン類を含有し、トウガラシ属の果実から抽出された上記したエキスとを含有するコアと、第2重合体からなり、コアを被覆するシェルとを備える粒子(第3の粒子)が挙げられる。
【0032】
一方、本発明において、抗生物活性化合物含有粒子は、例えば、特開2001−247409号公報などに記載されるような、上記した第2の抗生物活性化合物および溶剤からなる芯物質と、それを内包する膜とを備えるマイクロカプセルを含まず、さらに、例えば、抗生物活性化合物を含有せず、重合体のみからなる抗生物活性化合物不含粒子も含まない。
【0033】
抗生物活性化合物含有粒子として、好ましくは、徐放性粒子、より好ましくは、国際公開第2015/030213号に記載される徐放性粒子、より具体的には、第1の粒子、、カプサイシン類を含有するコアと、第2重合体からなり、コアを被覆するシェルとを備える第3の粒子が挙げられる。
【0034】
3−4.第1の粒子
第1の粒子は、具体的には、
図1に示すように、球状粒子として形成されている。第1の粒子1は、コア4と、コア4を被覆するシェル5とを含む。
【0035】
コア4は、マトリクス2と、マトリクス2中に分散するドメイン3とを有する。マトリクス2は、重合性ビニルモノマーから生成される第1重合体からなる。ドメイン3は、抗生物活性化合物からなる。マトリクス2およびドメイン3は、互いに非相溶であって、互いに分離する相分離構造あるいは2相構造を形成する。
【0036】
シェル5は、コア4の表面、より具体的には、マトリクス2の表面に形成されている。シェル5は、後述する疎水性シェル形成成分および親水性シェル形成成分から生成される第2重合体からなる。シェル5は、コア4とともに、コアシェル構造を形成する。
【0037】
そして、このような第1の粒子1を製造する方法は、例えば、溶剤の不存在下において、疎水性、かつ、疎水性の重合性ビニルモノマーに対して実質的に不溶性の第1の抗生物活性化合物を、疎水性の重合性ビニルモノマー中に分散することにより、疎水性スラリーを含有する油相成分を調製する油相成分調製工程、油相成分を水分散して水分散液を調製する水分散工程、および、重合性ビニルモノマーを懸濁重合して、第1重合体を生成する重合工程を備える。また、この方法では、油相成分調製工程において、第1の抗生物活性化合物を重合性ビニルモノマー中に分散して疎水性スラリーを調製し、次いで、疎水性スラリーと疎水性シェル形成成分とを配合して、疎水性スラリーおよび疎水性シェル形成成分を含む油相成分を調製する。また、重合工程において、親水性シェル形成成分を配合して、疎水性シェル形成成分と親水性シェル形成成分とを界面重合させる。
【0038】
以下、第1の抗生物活性化合物、重合性ビニルモノマー、疎水性シェル形成成分および親水性シェル形成成分について順次説明する。
【0039】
(第1の抗生物活性化合物)
第1の抗生物活性化合物としては、国際公開第2015/030213号に記載される抗生物活性化合物が挙げられる。
【0040】
(重合性ビニルモノマー)
重合性ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、芳香族ビニルモノマー、ビニルエステル系モノマー、マレイン酸エステル系モノマー、ハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、窒素含有ビニルモノマー、架橋性モノマーなどが挙げられる。好ましくは、(メタ)アクリル酸イソブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、エチレングリコールジメタクリレートなどの架橋性モノマーが挙げられる。重合性ビニルモノマーは、単独使用または併用することができる。
【0041】
(疎水性シェル形成成分および親水性シェル形成成分)
疎水性シェル形成成分および親水性シェル形成成分は、シェルを生成するためのシェル形成成分であって、互いに異なる2つの反応成分である。疎水性シェル形成成分および親水性シェル形成成分は、重付加または重縮合(縮合重合)などにより界面重合(反応)して、第2重合体を生成する。
【0042】
疎水性シェル形成成分は、例えば、実質的に疎水性であって、具体的には、水に対する室温における溶解度が極めて小さく、より具体的には、例えば、室温の溶解度が、1質量部/水100容量部(10g/L)以下、好ましくは、0.5質量部/水100容量部(5g/L)以下、より好ましくは、0.1質量部/水100容量部(1g/L)以下である。疎水性シェル形成成分は、親水性シェル形成成分と重付加または重縮合することによりシェルを形成する油溶性化合物であって、例えば、ポリイソシアネート、例えば、テレフタル酸ジクロライドなどのポリカルボン酸クロライド、例えば、ベンゼンスルホニルジクロライドなどのポリスルホン酸クロライドなどが挙げられる。好ましくは、ポリイソシアネート(ポリイソシアネート成分)が挙げられる。
【0043】
ポリイソシアネートとしては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ポリメリックMDIなどの芳香族ポリイソシアネート(芳香族ジイソシアネート)、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)などの脂肪族ポリイソシアネート(脂肪族ジイソシアネート)、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート(脂環族ジイソシアネート)、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ポリイソシアネート(芳香脂肪族ジイソシアネート)などが挙げられる。上記したポリイソシアネートの多量体も挙げられ、具体的には、二量体、三量体(イソシアヌレート基含有ポリイソシアネート、環状トリマー)、五量体、七量体などが挙げられる。さらに、上記したポリイソシアネートの変性体(多量体を除く)も挙げられ、例えば、トリメチロールプロパンのIPDIアダクトなどのポリオール変性ポリイソシアネート、ポリイソシアネート同士のビュレット反応付加体、アロファネート反応付加体などが挙げられる。好ましくは、ポリイソシアネート三量体、具体的には、IPDIの三量体が挙げられる。
【0044】
親水性シェル形成成分は、界面重合の前には、水相に存在する水溶性化合物であって、活性水素基含有成分である。活性水素基含有成分は、例えば、アミノ基、ヒドロキシル基などの活性水素基を有する成分(化合物)であり、具体的には、例えば、ポリアミン、ポリオール、水などが挙げられる。好ましくは、ポリアミン、ポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリアミンが挙げられる。
【0045】
ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジアミノトルエン、フェニレンジアミン、ピペラジンなどのジアミン、例えば、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン、テトラエチレン、ペンタミンペンタエチレンヘキサミンなどの、3価以上のポリアミンなどが挙げられる。好ましくは、3価以上のポリアミン、より好ましくは、ジエチレントリアミンが挙げられる。
【0046】
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパンなどのトリオール、例えば、ペンタエリスリトールなどのテトラオールなどが挙げられる。
【0047】
親水性シェル形成成分は、単独使用または併用することができる。
【0048】
そして、上記した油相成分調製工程、水分散工程および重合工程を順次実施して、徐放性粒子を製造する。
【0049】
とりわけ、油相成分調製工程では、好ましくは、疎水性シェル形成成分を、例えば、油溶性有機過酸化物、油溶性アゾ化合物などの重合開始剤とともに、疎水性スラリーに配合する。これによって、重合開始剤、疎水性シェル形成成分および疎水性スラリーを含有する油相成分を調製する。
【0050】
また、重合工程では、重合性ビニルモノマーを懸濁重合するとともに、親水性シェル形成成分を配合して、疎水性シェル形成成分および親水性シェル形成成分を界面重合して、第1重合体を被覆し、第2重合体からなるシェルを形成する。
【0051】
親水性シェル形成成分(活性水素基含有成分)の配合割合は、親水性シェル形成成分の活性水素基(具体的には、親水性シェル形成成分がポリアミンである場合には、アミノ基)の、疎水性シェル形成成分(ポリイソシアネート成分)のイソシアネート基に対する当量比(活性水素基/イソシアネート基、より具体的には、アミノ基/イソシアネート基)が、特に限定されず、例えば、1.00を超過し、または、1.00未満となる割合である。
【0052】
上記した当量比が1.00を超過すれば、親水性シェル形成成分(活性水素基含有成分)と疎水性シェル形成成分(ポリイソシアネート成分)とが界面重合すると、活性水素基が余るため、それが抗生物活性化合物含有粒子において第1官能基として存在でき、反応性分散安定化剤の第2官能基と反応することができ、その結果、ポリオレフィン系樹脂組成物の耐衝撃性を向上させることができる。
【0053】
他方、上記した当量比が1.00未満であれば、親水性シェル形成成分(活性水素基含有成分)と疎水性シェル形成成分(ポリイソシアネート成分)とが界面重合すると、イソシアネート基が余るため、続いて、かかるイソシアネート基が水と反応してカルバミン酸(−NH−COOH)を生じ、さらに、炭酸ガス(CO
2)が脱離されて、アミノ基(−NH
2)を生成し、それが抗生物活性化合物含有粒子において第1官能基として存在できる。そして、かかる第1官能基が第2官能基と反応することができ、その結果、ポリオレフィン系樹脂組成物の耐衝撃性を向上させることができる。
【0054】
また、活性水素基のイソシアネート基に対する当量比(活性水素基/イソシアネート基)は、イソシアネート基が加水分解して、第2重合体の質量収量が減少することを避ける観点から、1.00を超過することが好ましい。活性水素基のイソシアネート基に対する当量比(活性水素基/イソシアネート基)は、例えば、1.20以上、好ましくは、1.25以上、好ましくは、1.50以上、より好ましくは、1.75以上である。当量比が上記した下限以上であれば、十分な量の第1官能基を抗生物活性化合物含有粒子に存在(含有)させることができ、ポリオレフィン系樹脂組成物から成形される成形体の耐衝撃性をより一層向上させることができる。
【0055】
また、活性水素基のイソシアネート基に対する当量比(活性水素基/イソシアネート基)は、例えば、5.0以下、好ましくは、4.0以下、より好ましくは、3.0以下である。当量比が上記上限以下であれば、親水性シェル形成成分(活性水素基含有成分)の第1官能基が第2重合体の形成に消費され、遊離の活性水素基含有成分の残存を抑制することができる。とりわけ、活性水素基含有成分がポリアミンである場合には、まず、ポリアミン分子の少なくとも片末端にある1級アミノ基が、イソシアネート基と反応して、第2重合体の一部となるため、安全性に問題のある遊離のポリアミンの残存を抑制することができる。
【0056】
他方、活性水素基のイソシアネート基に対する当量比(活性水素基/イソシアネート基)が1.00未満である場合には、例えば、0.90以下、0.75以下、また、例えば、0.50以上である。当量比が上記上限以下であれば、十分な量の第1官能基を粒子に存在させることができ、成形体の耐衝撃性をより一層向上させることができる。当量比が上記した下限以上であれば、イソシアネート基の加水分解量が少なく、十分なシェル厚みを確保することができる。
【0057】
抗生物活性化合物含有粒子の表面における第1官能基(具体的には、アミノ基)量は、イソシアネートと水との副反応を無視し、未反応で残るイソシアネート基量を考慮しなければ、次の式で与えられる。
【0058】
アミノ基量(モル)=|仕込みイソシアネート量(モル)−仕込みアミノ基(モル)|
しかし、実際には、活性水素基のイソシアネート基に対する当量比(活性水素基/イソシアネート基)が1.00であってもよい。その場合であって、疎水性シェル形成成分および親水性シェル形成成分がそれぞれポリイソシアネートおよびポリアミンである場合に、最終的に残存するアミノ基(第1の粒子1とポリオレフィン系樹脂との界面における残存アミノ基)の理論量は、0となる。しかし、親水性シェル形成成分(ポリアミン)を配合して、疎水性シェル形成成分(ポリイソシアネート)および親水性シェル形成成分(ポリアミン)の界面重合が開始される前に、第1重合体の内部および/または表面に存在する疎水性シェル形成成分(ポリイソシアネート)の一部は、油相中の微量の水により、加水分解して、アミノ基を生成する。そのため、親水性シェル形成成分(ポリアミン)を配合して、疎水性シェル形成成分(ポリイソシアネート)および親水性シェル形成成分(ポリアミン)が界面重合した後も、粒子1は、余剰のアミノ基(第1官能基)を有することとなる。すなわち、第1の粒子1とポリオレフィン系樹脂との界面における残存アミノ基量は、実際には、0ではなく、0を超過する値(正数)を有する。
【0059】
3−5.第2の粒子
国際公開第2012/124599号などに記載される徐放性粒子(第2の粒子)は、
図2に示すように、第2の抗生物活性化合物および第1重合体からなる均一相を有するコア4と、コア4を被覆し、第2重合体からなるシェル5とを備える。また、この徐放性粒子の製造(具体的には、界面重合)において、親水性シェル形成成分の活性水素基の、疎水性シェル形成成分(ポリイソシアネート成分)のイソシアネート基に対する当量比(活性水素基/イソシアネート基)は、上記した範囲と同一である。
【0060】
3−6.第3の粒子
第3の粒子は、カプサイシン類、および/または、カプサイシン類を含有するエキスを、溶剤の不存在下、疎水性の重合性ビニルモノマーで溶解するとともに疎水性シェル形成成分を配合することにより、疎水性溶液を調製し、次いで、その疎水性溶液を水分散させて水分散液を調製し、次いで、重合性ビニルモノマーを、油溶性重合開始剤の存在下、ラジカル重合して、第1重合体からなるコアを生成するとともに、親水性シェル形成成分を配合して、疎水性シェル形成成分および親水性シェル形成成分を界面重合させて、コアを被覆する第2重合体からなるシェルを形成することにより得られる。
【0061】
上記重合性ビニルモノマー、疎水性シェル形成成分、親水性シェル形成成分、油溶性重合開始剤、その他重合時に使用される添加剤は、例えば、国際公開第2012/124599号に記載されているものが挙げられる。第3の粒子は、
図3に示すように、重合終了後のコア4において、カプサイシン類が、第1重合体のマトリクス2中に、ミクロドメイン3を形成する相分離構造をとっている。そのため、相分離構造を有する第3の粒子のコア4は、抗生物活性化合物が第1重合体と相溶する均一相を有する、第2の粒子のコア4と区別される。
【0062】
3−7. 抗生物活性化合物含有粒子の物性・配合割合等
抗生物活性化合物含有粒子の平均粒子径は、特に限定されず、例えば、0.5μm以上、好ましくは、1μm以上、より好ましくは、2μm以上であり、また、例えば、20mm以下、好ましくは、10mm以下、より好ましくは、5mm以下である。なお、平均粒子径は、メジアン径として算出される。
【0063】
なお、抗生物活性化合物含有粒子は、懸濁液を乾燥させて、粉剤として製剤化される。
【0064】
抗生物活性化合物含有粒子の配合割合は、ポリオレフィン系樹脂組成物に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上であり、また、例えば、20.0質量%以下、好ましくは、10.0質量%以下である。また、抗生物活性化合物含有粒子の配合割合は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.2質量部以上であり、また、例えば、20.0質量部以下、好ましくは、10.0質量部以下である。
【0065】
抗生物活性化合物含有粒子の配合割合が上記した下限以上であれば、抗生物活性化合物含有粒子の機能(具体的には、抗生物活性など)を十分にポリオレフィン系樹脂組成物に付与することができる。抗生物活性化合物含有粒子の配合割合が上記した上限以下であれば、ポリオレフィン系樹脂組成物の耐衝撃性の過度の低下を抑制することができる。
【0066】
4.反応性分散安定化剤
反応性分散安定化剤は、ポリオレフィン系樹脂と抗生物活性化合物含有粒子との界面に非局在化(分散)して、その界面の自由エネルギーを低下させ、ポリオレフィン系樹脂と抗生物活性化合物含有粒子との相分離構造を安定化する添加剤(あるいは改質剤)である。また、反応性分散安定化剤は、両親媒性の化学構造を有する。具体的には、反応性分散安定化剤は、ポリオレフィン系樹脂に対して親和するポリマー部分と、抗生物活性化合物含有粒子に対して反応する反応性部分とを有する。
【0067】
反応性分散安定化剤は、第2官能基(反応性部分)を含有するポリマーからなる。
【0068】
第2官能基は、例えば、酸無水物基(酸無水環)、エポキシ基(エポキシ環)、カルボキシル基、カルボキシレート基、水酸基、アミノ基、二重結合、三重結合などの反応性基が挙げられる。好ましくは、酸無水物基、エポキシ基、カルボキシル基、カルボキシレート基が挙げられ、より好ましくは、酸無水物基、エポキシ基が挙げられる。
【0069】
ポリマーは、重合性の炭化水素系モノマーを含有するモノマー成分から生成される。炭化水素系モノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテンなどのオレフィン、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニルモノマー、例えば、ブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエンなどの共役ジエンなどが挙げられる。また、モノマー成分は、例えば、酸無水物基を含有する酸無水物基含有モノマー、エポキシ基を含有するエポキシ基含有モノマー、カルボキシル基を含有するカルボキシル基含有モノマー、カルボキシレート基を含有するカルボキシレート基含有モノマーなどの、第2官能基含有ビニルモノマーを含む。さらに、モノマー成分は、例えば、メタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、酢酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー、(メタ)アクリロニトリルなどの窒素含有ビニルモノマー、塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニルモノマーなどを含有することもできる。
【0070】
ポリマーは、例えば、共重合体であって、具体的には、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体、およびこれらが複合された共重合体などである。グラフト共重合体は、モノマー1分子以上がポリマー主鎖の側鎖として化学結合しているものを示し、主鎖ポリマー−g−側鎖モノマーまたは側鎖オリゴマーまたは側鎖ポリマーで表すが、側鎖の分子量を規定するものではない。
【0071】
反応性分散安定化剤としては、とくに限定されず、例えば、酸無水物基含有ポリマー、エポキシ基含有ポリマー、カルボキシル基含有ポリマー、カルボキシレート基含有ポリマーなどが挙げられる。また、反応性分散安定化剤としては、例えば、酸価を有するポリオレフィン、例えば、第2官能基がグラフトされたアクリル系グラフトポリマーなども挙げられる。
【0072】
酸無水物基含有ポリマーとしては、例えば、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(PP−g−MAH)、無水マレイン酸グラフトポリエチレン(PE−g−MAH)、無水マレイン酸グラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA−g−MAH)、無水マレイン酸グラフトエチレン−アクリル酸エステル共重合体(E・Ac−g−MAH)、無水マレイン酸グラフトエチレン−プロピレンゴム(EPR−g−MAH)、無水マレイン酸グラフトエチレン−プロピレン−ジエンゴム、(EPDM−g−MAH)などの無水マレイン酸グラフトポリオレフィン系ポリマー、例えば、無水マレイン酸グラフトポリスチレン(PS−g−MAH)、無水マレイン酸グラフトスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS−g−MAH)、無水マレイン酸グラフトスチレン−エチレン−ブテン共重合体(SEBS−g−MAH)などの無水マレイン酸グラフトポリスチレン系ポリマー、例えば、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸−無水マレイン酸共重合体、アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体、α―オレフィン−無水マレイン酸共重合体、無水マレイン酸末端ポリプロピレンなどの、炭化水素モノマーを含むモノマーと無水マレイン酸との共重合体、例えば、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体へのスチレン−アクリロニトリルグラフト共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体へのスチレン−メチルメタクリレートグラフト共重合体などの、炭化水素モノマーを含むモノマーと無水マレイン酸の共重合体へのスチレン系ポリマーグラフト共重合体などが挙げられる。
【0073】
エポキシ基含有ポリマーとしては、例えば、グリシジルメタクリレートグラフトポリスチレン(PS−g−GMA)、グリシジルメタクリレートグラフトスチレン−メチルメタクリレート共重合体(MS−g−GMA)、グリシジルメタクリレートグラフトスチレン−アクリロニトリル共重合体(AS−g−GMA)などのエポキシ基含有ビニルモノマーグラフトスチレン系ポリマー、例えば、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート−アクリル酸エチル共重合体などの、炭化水素系モノマーを含むモノマーとエポキシ基含有ビニルモノマーとの共重合体、例えば、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体へのポリスチレングラフト共重合体(E・GMA−g−PS)、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体へのスチレン−メチルメタクリレートグラフト共重合体(E・GMA−g−MS)、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体へのスチレン−アクリロニトリルグラフト共重合体(E・GMA−g−AS)などの、炭化水素モノマーを含むモノマーとエポキシ基含有ビニルモノマーとの共重合体へのスチレン系ポリマーグラフト共重合体、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体への(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーグラフト共重合体(E・GMA−g−Ac)などが挙げられる。
【0074】
カルボキシル基含有ポリマーとしては、例えば、アクリル酸グラフトポリプロピレン(PP−g−AA)、アクリル酸グラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA−g−AA)などのカルボキシル基含有ビニルモノマーグラフトポリオレフィン系ポリマー、例えば、エチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体などのビニルモノマー−カルボキシル基含有ビニルモノマー共重合体などが挙げられる。
【0075】
カルボキシレート基含有ポリマーとしては、例えば、エチレン−メタクリル酸塩共重合体(アイオノマー)などのカルボキシレート基含有ビニルモノマー共重合体などが挙げられる。
【0076】
これらの反応性分散安定化剤は、例えば、ポリオレフィン系ポリマー、有機過酸化物および第2官能基含有ビニルモノマーを、溶融混練し、第2官能基含有ビニルモノマーをポリオレフィンにグラフトさせることで製造することができる。また、これらの反応性分散安定化剤は、例えば、オレフィンを、第2官能基含有ビニルモノマーと、高温高圧での熱重合、チーグラー触媒、あるいはメタロセン触媒を用いる配位重合により、共重合させることにより、製造することができる。
【0077】
反応性分散安定化剤は、市販品を用いることができる。例えば、酸無水物基含有ポリマーを例示すると、無水マレイン酸グラフトポリプロピレン(PP−g−MAH)として、デュポン社製フサボンド5000シリーズ、東洋紡社製トヨタックシリーズ、化薬アクゾ社製カヤブリッドリーズ、アディバント社製ポリボンド3000シリーズなどが挙げられ、無水マレイン酸グラフトポリエチレン(PE−g−MAH)として、デュポン社製フサボンド2200シリーズなどが挙げられ、無水マレイン酸グラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA−g−MAH)として、デュポン社製フサボンド3000シリーズ、3800シリーズなどが挙げられ、無水マレイン酸グラフトエチレン−アクリル酸エステル共重合体(EAc−g−MAH)として、デュポン社製フサボンド5000シリーズなどが挙げられ、無水マレイン酸グラフトエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM−g−MAH)として、アディバント社製ローヤルタフ400シリーズなどが挙げられ、エチレン−無水マレイン酸共重合体として、デュポン社製フサボンドM603などが挙げられ、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体として、アルケマ社製ロタダーMAHシリーズ、ボンダインシリーズ、日本ポリエチレン社製レクスパールETなどが挙げられ、α―オレフィン−無水マレイン酸共重合体として、三菱化学社製ダイヤカルナなどが挙げられ、無水マレイン酸末端ポリプロピレンとして、三洋化成工業社製のユーメックスシリーズなどが挙げられ、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体へのスチレン−アクリロニトリルグラフト共重合体として、日油社製モディパーA8400などが挙げられる。
【0078】
また、エポキシ基含有ポリマーの市販品を例示すると、具体的には、例えば、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体として、アルケマ社ロタダーAX8840、住友化学社製ボンドファースト2C、E、CG5001などが挙げられ、エチレン−グリシジルメタクリレート−酢酸ビニル共重合体として、住友化学社製ボンドファースト2B、7Bなどが挙げられ、エチレン−グリシジルメタクリレート−アクリル酸メチル共重合体として、アルケマ社ロタダーAX8900、住友化学社製ボンドファースト7L、7Mなどが挙げられ、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体へのポリスチレングラフト共重合体(E・GMA−g−PS)として、日油社製モディパーA4100が挙げられ、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体への(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーグラフト共重合体(E・GMA−g−Ac)として、日油社製モディパーA4300(メタクリル酸メチル−アクリル酸ブチル共重合体)などが挙げられ、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体へのスチレン−アクリロニトリルグラフト共重合体(E・GMA−g−AS)として、日油社製モディパーA4400などが挙げられる。
【0079】
さらに、カルボキシル基含有ポリマーの市販品を例示すると、具体的には、例えば、アクリル酸グラフトポリプロピレン(PP−g−AA)として、アディバント社製ポリボンド1000シリーズなどが挙げられ、アクリル酸グラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA−g−AA)として、デュポン社製フサボンド3100シリーズなどが挙げられ、エチレン−メタクリル酸共重合体として、デュポン社製ニュークレルシリーズなどが挙げられる。
【0080】
また、カルボキシレート基含有ポリマーの市販品を例示すると、エチレン−メタクリル酸塩共重合体として、デュポン社製サーリンシリーズ、三井デュポンポリケミカル社製ハイミランシリーズなどが挙げられる。
【0081】
また、酸価を有するポリエチレンとして、ハネウェル社製オプティパック100シリーズ、300シリーズなどが挙げられ、さらに、第2官能基がグラフトされたアクリル系グラフトポリマーとして、東亜合成社製レゼダが挙げられ、また、ポリオレフィンに、第2官能基を導入した反応性分散安定化剤として、三菱化学社製モディック、三井化学社製アドマーなどが挙げられる。
【0082】
反応性分散安定化剤の配合割合は、ポリオレフィン系樹脂組成物に対して、例えば、0.10質量%以上、好ましくは、0.20質量%以上であり、また、例えば、10質量%以下、好ましくは、5.0質量%以下である。また、反応性分散安定化剤の配合割合は、抗生物活性化合物含有粒子100質量部に対して、例えば、5.0質量部以上、好ましくは、10質量部以上であり、また、例えば、250質量部以下、好ましくは、100質量部以下である。さらに、また、反応性分散安定化剤の配合割合は、ポリオレフィン系樹脂100質量部に対して、例えば、0.10質量部以上、好ましくは、0.50質量部以上であり、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5.0質量部以下である。
【0083】
反応性分散安定化剤の配合割合が上記した下限以上であれば、ポリオレフィン系樹脂組成物の耐衝撃性を十分に向上させることができる。反応性分散安定化剤の配合割合が上記した上限以下であれば、配合割合に応じた耐衝撃性の向上効果を得て、コスト増大を抑制することができる。
【0084】
反応性分散安定化剤の配合割合は、反応性分散安定化剤における第2官能基の、抗生物活性化合物含有粒子における第1官能基の当量比(第2官能基/第1官能基)が、例えば、0.1以上、好ましくは、0.5以上、また、例えば、10以下、好ましくは、5以下、となるように、調整される。
【0085】
なお、ポリオレフィン系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記したポリオレフィン系樹脂、抗生物活性化合物含有粒子および反応性分散安定化剤以外に、着色剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、滑材、目やに防止剤、耐衝撃性改良剤、充填材などの添加剤(反応性分散安定化剤を除く添加剤)を適宜で含有することができる。
【0086】
5.ポリオレフィン系樹脂組成物の調製および成形体の成形
そして、このポリオレフィン系樹脂組成物を得るには、まず、ポリオレフィン系樹脂、抗生物活性化合物含有粒子および反応性分散安定化剤(さらに、必要により配合される添加剤)を配合して、それらを溶融混練して、混練物を調製する。
【0087】
混練物を調製するには、例えば、具体的には、単軸押出機、二軸押出機、加熱ニーダー、バンバリーミキサー、加熱ロールなどが用いられ、好ましくは、二軸押出機が用いられる。混練物は、成形体を成形するための成形材料であって、具体的には、一旦、冷却してペレット状成形材料として調製する。一方、混練物を、固体の成形材料として取り出さず、そのまま連続して溶融状態のまま(溶融混練物)後述の成形に供することもできる。
【0088】
その後、ペレット、あるいは、溶融混練物から成形体に成形する。
【0089】
成形方法としては、例えば、射出成形、押出成形、インフレーション成形、引抜成形、圧縮成形などが採用される。
【0090】
これによって、ポリオレフィン系樹脂組成物から成形された成形体が得られる。
【0091】
このような成形体は、各種用途に用いられ、例えば、建材、例えば、電線ケーブル材、および、その電線ケーブルの被覆材、例えば、電線ケーブルの埋設管、ガスなどの導管、および、その埋設管や導管の被覆材、例えば、衣類、蚊帳などの繊維製品として使用される。
【0092】
6.効果
そして、上記したポリオレフィン系樹脂組成物では、反応性分散安定化剤は、重合性の炭化水素系モノマーを含有するモノマー成分のポリマーであるので、ポリオレフィン系樹脂との親和性を向上させることができるとともに、第2官能基が第1官能基と反応することができる。そのため、ポリオレフィン系樹脂と抗生物活性化合物含有粒子との界面の自由エネルギーを低下させることができる。
【0093】
その結果、ポリオレフィン系樹脂組成物から成形された成形体は、耐衝撃性に優れる。
【0094】
さらに、抗生物活性化合物含有粒子は、コアと、コアを被覆するシェルとを含有し、シェルは、活性水素基含有成分と、ポリイソシアネート成分との界面重合により形成され、第1官能基は、活性水素基含有成分における活性水素基またはポリイソシアネートにおけるイソシアネート基に由来しており、界面重合において、活性水素基のイソシアネート基に対する当量比が、1.00を超過すれば、過剰の活性水素基が、第1官能基として抗生物活性化合物含有粒子のシェルに存在する。または、界面重合において、活性水素基のイソシアネート基に対する当量比が、1.00未満であれば、過剰のイソシアネート基が、水と反応してカルバミン酸となり、炭酸ガスが脱離して、アミノ基を生成し、かかるアミノ基が、第1官能基として抗生物活性化合物含有粒子のシェルに存在する。そうすると、溶融混練時に、第1官能基が第2官能基と確実に反応することができる。そのため、抗生物活性化合物含有粒子と反応性分散安定化剤との親和性を向上させることができる。
【0095】
さらに、上記した当量比が、1.20以上であれば、十分な量の第1官能基(アミノ基)を抗生物活性化合物含有粒子に存在(含有)させることができ、ポリオレフィン系樹脂組成物から成形される成形体の耐衝撃性をより一層向上させることができる。
【0096】
また、ポリオレフィン系樹脂組成物から成形された成形体は、広い温度範囲における耐衝撃性に優れ、例えば、低温(具体的には、−30〜0℃)および常温(具体的には、20〜25℃)における衝撃性に優れる。
【0097】
そして、上記した成形体は、耐衝撃性が必要とされる用途、好ましくは、広い温度範囲にわたって耐衝撃性が必要とされる用途、具体的には、寒冷地における電線ケーブルの埋設管、ガスの導管などに好適に用いられる。
【実施例】
【0098】
以下に、調製例、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何らそれらに限定されない。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。また、以下の記載において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。
【0099】
1. 成分および装置の詳細
各調製例、各実施例および各比較例で用いた各成分および各装置を以下に記載する。
・クロチアニジン:抗生物活性化合物(ネオニコチノイド系殺虫剤)、分子量250、融点177℃、水への溶解度:0.33g/L、住友化学社製
・VNA:ノニリックアシッドバニリルアミド(N−バニリルノナンアミド)、分子量293、融点54℃、水への溶解度:ほとんど溶解しない、東京化成工業社製
・EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート、架橋性モノマー、商品名「ライトエステルEG」、水に不溶、共栄社化学社製
・i−BMA:メタクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、水への溶解度:0.6g/L、日本触媒社製
・MMA:メタクリル酸メチル、商品名「ライトエステルM」、水への溶解度16g/L(25℃)、共栄社化学社製
・DISPERBYK−164:商品名、顔料分散用官能基変性共重合体(3級アミン含有ポリエステル変性ポリウレタン系重合体、分子量10000〜50000)の酢酸ブチル溶液、固形分濃度60%、ビッグケミー社製
T−1890:商品名「VESTANAT T 1890/100」、イソホロンジイソシアネートの環状トリマー体(IPDIトリマー)、ポリイソシアネート成分(イソシアネート濃度17.3%)、水への溶解度:0.02g/L、エボニック・インダストリーズ社製
・パーロイルL:商品名、ジラウロイルパーオキシド、油溶性重合開始剤、日油社製
・DETA:ジエチレントリアミン、分子量103、活性水素基含有成分、和光一級試薬、和光純薬工業社製
・プロノン208:商品名、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ノニオン系界面活性剤、日油社製
・PVA−217:商品名「クラレポバール217」、部分鹸化ポリビニルアルコール、分散剤、クラレ社製
・デモールNL:商品名、β−ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物ナトリウム塩の41%水溶液、花王社製
・ハイゼックス6300M:高密度ポリエチレン、メルトマスフローレイト:0.11g/10min、プライムポリマー社製
・ロタダーAX8840:反応性分散安定化剤、エチレン−グリシジルメタクリレート共重合体(グリシジルメタクリレート含量:8質量%)、アルケマ社製
・二軸押出機:KZW15−30MG、テクノベル社製
・射出成形機:NEX110、日精樹脂工業社製
・アイゾット衝撃試験機:上島製作所社製
【0100】
2. 抗生物活性化合物含有粒子の調製
調製例1
(油相成分調製工程)
EGDMA 90gと、i−BMA 90gと、DISPERBYK−164 20gと、クロチアニジン100gとを、ガラス瓶中に投入し、さらにジルコニアビーズ(径1.0mm)をガラス瓶の1/3容量投入し、ペイントコンディショナー(ペイントシェーカー、商品名「THECLASSIC型式1400」、RedDevil社製)で2時間湿式粉砕して、クロチアニジン33.3%含有スラリー(疎水性スラリー、以下、クロチアニジンスラリーという。)を得た。クロチアニジンスラリーおけるクロチアニジンの平均粒子径は、濃厚系粒径アナライザーFPAR−1000(大塚電子社製)で測定した結果、1.38μmであった。
【0101】
200mLのビーカー(1)に、クロチアニジンスラリー 50g、i−BMA 17.5g、EGDMA 17.5g、T−1890 15g、および、パーロイルL 0.5gを仕込み、室温で攪拌することにより、i−BMA、EGDMA、T−1890およびパーロイルLをクロチアニジンスラリーに溶解させた。これによって、i−BMA、EGDMA、T−1890、パーロイルLおよびクロチアニジンスラリーを含有する油相成分を調製した。
【0102】
(水分散工程)
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水245.36g、PVA−217の10%水溶液40g、プロノン208の1%水溶液1gおよびデモールNL 0.24gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0103】
次いで、500mLのビーカー(2)に、油相成分を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数4000rpmで6分間攪拌することにより、油相成分を水溶液に分散させて、懸濁液(水分散液)を調製した。
【0104】
その後、懸濁液(水分散液)を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌した。
【0105】
(界面重合を含む重合工程)
次いで、室温の懸濁液にDETAの10質量%水溶液12.9gを添加して、界面重合を開始させた。その後、懸濁液の温度を70℃に昇温して、懸濁重合を開始させた。懸濁重合は、70℃で30分、その後、80℃で5時間行った。
【0106】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、クロチアニジンがマトリクス中に分散され、マトリクスがポリウレアに被覆される徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0107】
懸濁液における徐放性粒子のメジアン径を、レーザー回析散乱式粒子径分布測定装置LA−920(堀場製作所社製)により測定した。その結果を表1に記載する。
【0108】
その後、懸濁液を遠心脱水後、40℃で24時間乾燥し、80メッシュの篩で篩過を実施し、徐放性粒子の乾燥粉(粉剤)を得た。
【0109】
調製例2〜6
DETAの水溶液の濃度および配合量を表1の記載に従って変更した以外は、調製例1と同様に処理して、ポリウレアに被覆され、クロチアニジンを含有する徐放性粒子の懸濁液を得た。メジアン径の測定結果を表1に記載する。
【0110】
その後、懸濁液を遠心脱水後、40℃で24時間乾燥し、80メッシュの篩で篩過を実施し、徐放性粒子の乾燥粉(粉剤)を得た。
【0111】
調製例7
(油相成分調製工程)
200mLのビーカーに、VNA17.0g、MMA64.6g、EGDMA3.4g、T−1890 15.0gおよびパーロイルL0.5gを仕込み、室温で撹拌することにより、均一な疎水性溶液を調製した。
【0112】
(水分散工程)
別途、500mLのビーカーに、イオン交換水、PVA−217の10%水溶液40.0g、プロノン208の1%水溶液1.0gおよびデモールNL0.24gを仕込み、室温で撹拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0113】
次いで、疎水性水溶液を加え、500mLビーカーの水溶液に、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数2000rpmで5分間撹拌することにより、疎水性水溶液を水溶液中に分散させて、水分散液を調製した。
【0114】
その後、水分散液を、撹拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mLの4頚コルベンに移し、窒素気流下、撹拌した。
【0115】
(界面重合を含む重合工程)
次いで、懸濁液の温度を70℃に昇温して、懸濁重合を開始させた。70℃で3時間反応させた後、DETAの20質量%水溶液15.9gを添加して、界面重合を開始させた。その後、70℃で2時間反応を行った。
【0116】
反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、VNAがマトリクス中に分散され、マトリクスがポリウレアに被覆される徐放性粒子の懸濁液(懸濁剤)を得た。
【0117】
懸濁液における徐放性粒子のメジアン径を、レーザー回析散乱式粒子径分布測定装置LA−920(堀場製作所社製)により測定した。その結果を表1に記載する。
【0118】
その後、懸濁液を遠心脱水後、40℃で24時間乾燥し、80メッシュの篩で篩過を実施し、徐放性粒子の乾燥粉(粉剤)を得た。
【0119】
比較調製例1
200mLのビーカー(1)に、調製例1で調製したクロチアニジンスラリー 50gに、i−BMA 5.0g、EGDMA 45.0g、および、パーロイルL 0.5gを仕込み、室温で攪拌することにより、i−BMA、EGDMA、およびパーロイルLをクロチアニジンスラリーに溶解させた。これによって、i−BMA、EGDMA、パーロイルLおよびクロチアニジンスラリーを含有する油相成分を調製した。
【0120】
別途、500mLのビーカー(2)に、イオン交換水258.26g、PVA−217の10%水溶液40gおよびプロノン208の1%水溶液1gを仕込み、室温で攪拌することにより、均一な水溶液を得た。
【0121】
次いで、500mLのビーカー(2)に、油相成分を加え、T.K.ホモミクサーMARK2.5型(プライミクス社製)により回転数5000rpmで5分間攪拌することにより、油相成分を分散させて、懸濁液(水分散液)を調製した。
【0122】
その後、懸濁液(水分散液)を、攪拌器、還流冷却器、温度計および窒素導入管を装備した500mL4頚コルベンに移し、窒素気流下、攪拌しながら昇温して、懸濁重合を実施した。
【0123】
懸濁重合は、55℃到達時点を重合開始とし、その後、70±1℃で昇温時間を含めて5時間、80±1℃で2時間、連続して実施した。
【0124】
その後、反応後の懸濁液を30℃以下に冷却することにより、クロチアニジンを含有する徐放性粒子の懸濁液を得た。メジアン径の測定結果を表1に記載する。
【0125】
その後、懸濁液を遠心脱水後、40℃で24時間乾燥し、80メッシュの篩で篩過を実施し、徐放性粒子の乾燥粉を得た。
【0126】
実施例1
ハイゼックス6300M 98.00質量部、調製例1の第1の粒子1.30質量部、および、ロタダーAX8840 0.70質量部を混合して、均質なドライブレンド品を調製した。続いて、このドライブレンド品をスクリューフィーダーにより、二軸押出機KZW15−30Mに供給して、溶融混練(溶融ブレンド)し、次いで、冷却水槽およびペレタイザーを通して、ペレットを得た。なお、二軸押出機のシリンダーおよびダイスの設定温度200℃、スクリュー回転数470rpmであった。
【0127】
実施例2〜7および比較例1〜8
表2に示した処方に変更した以外は、実施例1と同様の条件で処理して、ペレットをそれぞれ得た。
【0128】
(耐衝撃試験)
(アイゾット衝撃強度の測定)
各実施例および各比較例のペレットを、射出成形機を用いて、ノッチ付アイゾット衝撃試験片を成形した。なお、射出成形時のシリンダおよびダイスの設定温度200℃、金型設定温度30℃とした。また、ノッチ付アイゾット衝撃試験片は、JIS K7110に準拠した試験片であって、具体的には、長さ100mm、幅10mm、厚み4mm、ノッチ残部幅8mmである。
【0129】
続いて、各ノッチ付アイゾット衝撃試験片を、アイゾット衝撃試験機を用い、JIS K7110に準拠して、20℃および−25℃で、アイゾット衝撃強度を測定した。その結果を表2に示す。
【0130】
考察
上記した耐衝撃試験の結果から以下の点が分かる。
【0131】
1)ポリエチレン、アミノ基を含有する抗生物活性化合物含有粒子、および、反応性分散安定化剤を含有する実施例1〜6のそれぞれのアイゾット衝撃強度は、ポリエチレン、アミノ基を含有しない抗生物活性化合物含有粒子(比較調製例1)、および、反応性安定化剤を含有する比較例5のアイゾット衝撃強度に比べて、高い。(第1官能基の効果)
2)実施例1と比較例1とを比較すると、ポリオレフィン系樹脂および徐放性粒子に、反応性分散安定化剤が配合(添加)されたことにより、20℃のアイゾット衝撃強度が大幅に向上する。このことは、実施例2と比較例2との比較、実施例5と比較例3との比較、実施例6と比較例4との比較、および、実施例7と比較例8との比較においても、同様である(反応性分散安定化剤の効果)。
【0132】
3)徐放性粒子の表面におけるアミノ基量が0を超過する実施例1、2、4〜6は、アミノ基量が0である実施例3に比べて、20℃のアイゾット衝撃強度、および、−25℃のアイゾット衝撃強度が、いずれも高い(第1官能基の効果)。
【0133】
4)つまり、
図4から分かるように、抗生物活性化合物含有粒子の製造時の界面重合における調製におけるアミノ基のイソシアネート基に対する当量比(アミノ基/イソシアネート基)が、1.00を超過する実施例4〜6、および、1.00未満である実施例1および2は、当量比(アミノ基/イソシアネート基)が、1.00である実施例3に比べて、20℃のアイゾット衝撃強度、および、−25℃のアイゾット衝撃強度が、いずれも高い(第1官能基の量の効果)。
【0134】
5)また、
図4の実施例1、2、4〜6から分かるように、当量比が1から離れるほど、20℃のアイゾット衝撃強度、および、−25℃のアイゾット衝撃強度が、いずれも高い(第1官能基の量の効果)。
【0135】
6)具体的には、当量比(アミノ基/イソシアネート基)が1.00を超過する実施例4〜6のうち、実施例4から実施例6に進むほど、すなわち、当量比が1から離れるほど、つまり、当量比(アミノ基/イソシアネート基)から1を差し引いた値の絶対値(|(当量比)−1|)が大きくなるほど、20℃のアイゾット衝撃強度、および、−25℃のアイゾット衝撃強度が、いずれも高い。
【0136】
また、当量比(アミノ基/イソシアネート基)が1.00未満である実施例1および2のうち、実施例2より実施例1の方が、当量比が1より小さく、つまり、当量比(アミノ基/イソシアネート基)から1を差し引いた値の絶対値(|(当量比)−1|)(表1における「界面における残存アミノ基量」と同義)が大きく、20℃のアイゾット衝撃強度、および、−25℃のアイゾット衝撃強度が、いずれも高い(第1官能基の量の効果)。
【0137】
7)当量比(アミノ基/イソシアネート基)が1.00を超過する実施例4および5と、当量比(アミノ基/イソシアネート基)が1.00未満である実施例1および2との、20℃および−25℃のアイゾット衝撃強度を比較する。そうすると、同じ値の|(当量比)−1|の場合には(つまり、同じ値の|(当量比)−1|を推量する場合には)、当量比(アミノ基/イソシアネート基)が1.00を超過する場合の方(実施例4および5に近似する例)が、当量比(アミノ基/イソシアネート基)が1.00未満である場合(実施例1および2に近似する例)に比べて、20℃および−25℃のアイゾット衝撃強度が高い傾向となる(アミノ基/イソシアネート基>1の優位)。
【0138】
8)ポリエチレン、および、アミノ基を含有しない抗生物活性化合物含有粒子(比較調製例1)を含有する比較例6のアイゾット衝撃強度は、ポリエチレンのみからなる比較例7のアイゾット衝撃強度に比べて、低い(抗生物活性化合物含有粒子の耐衝撃性低下効果)。
【0139】
9)ポリエチレン、アミノ基を含有しない抗生物活性化合物含有粒子(比較調製例1)、および、反応性分散安定化剤を含有する比較例5は、反応性分散安定化剤のエポキシ基が抗生物活性化合物含有粒子の表面と反応しないので、そのアイゾット衝撃強度は、ポリエチレン、および、アミノ基を含有しない抗生物活性化合物含有粒子(比較調製例1)を含有する比較例6のアイゾット衝撃強度と同等である(第1官能基の効果のコントロール)。
【0140】
【表1】
【0141】
【表2】