(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
平均粒子径が100μm以下の水酸化カルシウム粉末を、筒状の回転炉の内周面で転動させつつ、520℃以上で焼成して酸化カルシウム粉末を生成し、焼成した前記酸化カルシウム粉末を粉砕及び/又は分級して、メジアン径(D50)を10μm以下に規定することを特徴とする酸化カルシウム粉末の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来、生石灰(酸化カルシウム)は、吸湿剤、脱水剤、塩基性炉材、セメント材料などに利用されている。特に、最近では、水や酸との高い反応性を利用して、有機ELディスプレイやセンサーなどの電子機器や真空断熱材における水分の吸着剤(すなわち、吸湿剤)や酸性ガスの吸着剤として利用することが検討されている。近年では、電子機器・断熱材の小型化や薄膜化に伴い、微粉化した吸着剤が求められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、BET比表面積が60m
2/g以上で、直径2〜100nmの範囲にある細孔の全細孔容積が0.35ml/g以上であって、粒子径が0.25mm以下の粒子を80質量%以上含有する酸化カルシウム粉末が開示されている。また、本文献には、水酸化カルシウム粉末を300Pa以下の圧力下、315〜500℃の温度にて焼成することにより、反応性の高い酸化カルシウム粉末を製造する方法も開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、温度23℃、相対湿度45%RHの調整された大気中に1時間静置したときの質量増加量が、1cm
3あたりに換算して0.15g以上である粒状生石灰が記載されている。また、本文献の粒状生石灰は、粒子径が0.075mm以上の粒子を50質量%以上含み、粒子径が1.0mm以上の粒子を10質量%以上含まないことも記載されている。さらに、本文献には、ゆるみ見掛けかさ密度が0.5〜1.0g/cm
3の範囲にあり、かつ比表面積が10m
2/g以上の粒状消石灰を、300Pa以下の圧力下、325〜500℃の温度にて1時間以上焼成する粒状生石灰の製造方法も記載されている。
【0005】
さらに、特許文献3には、非プロトン性極性溶媒層を有する酸化カルシウム粒子を主成分とし、疎水性かつ高い吸着速度を兼ね備えた水分吸着剤が記載されている。また、本文献に記載された水分吸着剤のBET比表面積は1〜100m
2/gが好ましいこと、平均粒子径は0.05〜10μmが好ましいことが記載されている。さらに、本文献には、酸化カルシウムを非プロトン性有機溶媒存在下で微粉化する水分吸着剤の製造方法も記載されている。
【0006】
特許文献1,2では、酸化カルシウム粉末の製造に真空焼成炉が必要であるため高コストになりがちであり、コスト面で改善の余地があった。また、特許文献1,2では、平均粒子径が比較的大きいため、粒子の微小化の点においてまだ改善の余地があった。また、これらの文献のように真空焼成で製造した酸化カルシウムは、結晶性が低いため塩基性が低く、水や酸性ガスとの化学反応性が低くなりがちである。特に、電子機器用や真空断熱材では低密度の水分や酸性ガスを吸着する必要があるため、化学反応性の寄与が大きく、単に比表面積を大きくしただけでは、吸着性能を最適化することが困難である。
【0007】
特許文献3の酸化カルシウムは、吸着性能にすぐれているが、粒子表面に被膜された非プロトン性有機溶媒が気化することにより、電子機器の性能や真空断熱材中の真空度に影響を与える可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.酸化カルシウム粉末の製造方法
本発明の酸化カルシウムの製造方法は、平均粒子径が10μm以下の水酸化カルシウム粉末(原料)を、筒状の回転炉の内周面で転動させつつ、520℃以上で焼成して酸化カルシウム粉末を生成する。
【0020】
(1)原料
原料である水酸化カルシウム粉末は、平均粒子径が100μm以下であり、好ましくは50μm以下、好適には10μm以下である。粒子径が大きければ、炉内への付着を低減できる。また粒子径が小さければ、焼成が早くなり、分級等を経ずとも、電子機器等に用いる小径の酸化カルシウム粉末を得ることができる。
【0021】
水酸化カルシウム粉末のBET比表面積は、特に制限はないが、通常は1〜100m
2/gの範囲内であり、好ましくは5〜70m
2/gの範囲内であり、より好ましくは10〜50m
2/gの範囲内である。水酸化カルシウム粉末のBET比表面積が1m
2/gのを下回ると、水分の吸着性に優れた酸化カルシウム粉末が得られにくく、100m
2/gを上回ると、取り扱いが困難になりやすい。
【0022】
水酸化カルシウム粉末の細孔容積は、特に制限はないが、通常は0.01〜1.00cm
3/gの範囲内であり、好ましくは0.03〜0.50cm
3/gの範囲内であり、より好ましくは0.05〜0.30cm
3/gの範囲内である。
【0023】
水酸化カルシウム粉末の種類や製造方法は、特に制限はなく、例えば酸化カルシウムに水を加えて水和したものなどを使用することができる。
【0024】
(2)回転炉
回転炉は、水酸化カルシウム粉末を内周面で転動させる筒状の炉芯管と、この炉芯管の外周面に配設され水酸化カルシウム粉末を加熱するヒーターと、を備えるものが好ましい。
【0025】
炉芯管は、両端が開口し一端から他端に向けて下方に傾いた内周面を有する円筒状の部材で構成され、内部に水酸化カルシウム粉末を収容可能となっている。水酸化カルシウム粉末は、炉芯管の開口した一端から炉芯管内部に導入され、炉芯管の回転によって内周面に沿って転動し、開口した他端から排出される。ヒーターは、炉芯管の外周面から水酸化カルシウム粉末を加熱する手段であり、水酸化カルシウム粉末は炉芯管内を転動しながら加熱される。
【0026】
また、回転炉は、炉芯管の内部に設けられ炉芯管の内周面に沿って転動して水酸化カルシウム粉末が内周面に付着することを防止する付着防止手段を備えることが好ましい。このような付着防止手段としては、炉芯管の回転軸に沿って炉芯管の内部に配設され、炉芯管の内周面に向けて突出したフィンを備える打撃子などを挙げることができる。
【0027】
さらに、回転炉は、炉内を換気する手段(換気手段)を有することが好適である。換気手段としては、回転炉内を吸排気するためのポンプや、回転炉内の気体を循環させるためのファン(扇風機)などを挙げることができる。
【0028】
(3)酸化カルシウム粉末の製造工程
酸化カルシウム粉末の製造工程は、回転炉内で水酸化カルシウムを加熱焼成することで酸化カルシウム粉末を製造する工程(焼成工程)と、必要に応じて酸化カルシウム粉末を粉砕する工程(粉砕工程)と分級する工程(分級工程)と、を備えている。
【0029】
(a)焼成工程
焼成工程では、回転炉の炉芯管内に水酸化カルシウム粉末を投入し、炉芯管を回転させながら水酸化カルシウム粉末を加熱して焼成することで酸化カルシウム粉末を製造する。原料の時間あたりの投入量は、特に制限はないが、例えば10kg/時間とすることができる。回転炉は最大で長さが10m、内径が50cm程度であり、下記の滞留時間(焼成時間)を確保できるものならば特に限定は無い。
投入される水酸化カルシウムは、平均粒子径が100μm以下であり、好ましくは50μ以下、好適には10μm以下である。粒子径が大きければ、炉内への付着を低減できる。また粒径が小さければ、焼成が早くなり、分級等を経ずとも、電子機器等に用いる小径の酸化カルシウム粉末を得ることができる。
【0030】
焼成工程における温度(焼成温度)は、520℃以上であり、好ましくは570℃以上であり、より好ましくは600℃以上である。焼成温度が520℃を下回ると、水酸化カルシウムの焼成が不十分となり、得られる酸化カルシウム粉末の結晶性が低くなり、水分や酸性ガスの吸着性が低くなりやすい。焼成温度の上限は、特に制限はないが、通常は1000℃以下であり、好ましくは800℃以下であり、より好ましくは700℃以下である。焼成温度が1000℃を上回ると、BET比表面積が小さくなり、水分や酸性ガスの吸着性が低くなりやすい。
【0031】
焼成工程における焼成時間(回転炉内での原料の滞留時間にほぼ等しい)は、特に制限はないが、通常は10分以内であり、好ましくは8分以内であり、より好ましくは6分以内である。焼成時間が10分を超えると、焼成時間が長くなりすぎて製造コストが高くなりやすい。焼成時間の下限は、特に制限はないが、通常は1分以上であり、好ましくは2分以上であり、より好ましくは3分以上である。焼成時間が1分を下回ると、焼成が不十分となり、得られる酸化カルシウム粉末の結晶性が低くなり、水分や酸性ガスの吸着性が低くなりやすい。
【0032】
焼成工程は、大気中、すなわち、空気中かつ大気圧(約0.1MPa)で焼成を行うことが好ましく、乾燥空気中で焼成を行うことが更に好ましい。このように、焼成工程を大気中で行うことにより、生成する酸化カルシウムの結晶性が高く、その結果、塩基度が高くて酸性ガスの吸着性が優れたものとなる。また、大気中で焼成工程を行うことで、真空焼成を行う場合と比較して、低コストで焼成を行うこともできる。
【0033】
あるいは、焼成工程は、不活性ガス中で行ってもよい。このように不活性ガス中で焼成を行うことで、塩基度が高くて酸性ガスの吸着性に優れた酸化カルシウム粉末を得ることができる。不活性ガスの種類としては窒素が例示でき、また流量は、例えば0.1m
3/時間以上とすることができる。
【0034】
焼成工程において、得られる酸化カルシウム粉末のBET比表面積は、原料の水酸化カルシウム粉末のBET比表面積の2倍以上となることが好ましい。BET比表面積の増加率が2倍以上となることで、水分の吸着性能が高い酸化カルシウム粉末とすることができる。
【0035】
(b)粉砕工程
粉砕工程は、焼成工程で得られた酸化カルシウムを粉末状に粉砕する工程である。焼成後に粉砕を行うことにより、粒子径が小さく、かつBET比表面積が高い酸化カルシウム粉末を製造することができる。
【0036】
粉砕の方法は、特に限定されないが、メディアミル、回転ボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、ロッキングミル、ペイントシェーカー、気流式粉砕機などの粉砕装置を使用することができる。粉砕装置の中で好ましいものは、気流式粉砕機であり、特に、微細かつシャープな粒度分布の粉体が得られることから、ジェットミルが好ましい。酸化カルシウム粉末の粒度分布がシャープであると、酸化カルシウム粉末の吸湿速度が安定化するため好ましい。なお、ジェットミルでの粉砕条件としては、例えば窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で、原料供給速度5kg/hにおいては、粉砕圧力を、0.1〜1.5MPa、より好ましくは0.3〜1.0MPaにすることが好ましい。
【0037】
(c)分級工程
粉砕工程後の酸化カルシウムは、必要に応じて分級することが好ましい。分級工程は、適度な目開きの篩などを用いて行うことができる。分級工程では、酸化カルシウムの平均粒子径が10μm以下となるように行い、さらに、メジアン径(D50)が1〜10μmの範囲内となるように粒度分布を調整することが好ましい。
【0038】
2.酸化カルシウム粉末
本発明の酸化カルシウム粉末は、メジアン径(D50)が10μm以下であり、BET比表面積が13〜60m
2/gの範囲内であり、900℃での強熱減量が15質量%以下である。本発明の酸化カルシウム粉末は、上述した「1.酸化カルシウムの製造方法」に記載された方法で製造することができる。以下、本発明の酸化カルシウム粉末について詳細に説明する。
【0039】
(1)メジアン径(D50)
酸化カルシウム粉末の平均粒子径は、メジアン径(D50)が10μm以下であり、好ましくは7μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。なお、メジアン径(D50)は、粒度の小さいものから累積50%における粒径を意味する。酸化カルシウム粉末のメジアン径(D50)が10μmを上回ると、粒径が大きくなりすぎるため、小型の電子機器や断熱材等には不向きとなりやすいほか、塗布や充填物として使用した際に外観が悪くなりやすい。酸化カルシウム粉末のメジアン径(D50)の下限は、特に制限はないが、通常は10nm以上である。平均粒子径が10nmを下回る酸化カルシウム粉末は製造が困難であるほか、粒径が小さすぎて取り扱いが困難となりやすい。
【0040】
(2)BET比表面積
酸化カルシウム粉末のBET比表面積は、13〜60m
2/gの範囲内であり、好ましくは15〜50m
2/gの範囲内であり、より好ましくは30〜40m
2/gの範囲内である。酸化カルシウム粉末のBET比表面積が13m
2/gを下回ると、水分や酸性ガスの吸着速度が遅くなる傾向がある。一方、酸化カルシウム粉末のBET比表面積が60m
2/gを上回ると、水分や酸性ガスの吸着速度が速すぎて取り扱いが困難になりやすい。したがって、酸化カルシウム粉末のBET比表面積が13〜60m
2/gの範囲内であると、水分や酸性ガスの吸着速度が適切であり、かつ取り扱い性が良好となる。
【0041】
(3)強熱減量
酸化カルシウム粉末の強熱減量は、15質量%(wt%)以下であり、好ましくは0〜10質量%の範囲内であり、より好ましくは0〜6質量%の範囲内である。酸化カルシウム粉末の強熱減量が15質量%を上回ると、酸化カルシウム粉末中に含まれる水分量が多いため、水分の吸着性に劣るものとなりやすい。なお、ここでいう強熱減量とは、例えば酸化カルシウム粉末を25℃から900℃まで昇温したときの示差熱分析において下記式で算出される値であり、後述する実施例に記載された方法あるいはこれに準じた方法で測定した値を意味する。
質量変化率(TG)=(25℃における酸化カルシウム粉末の質量−900℃における酸化カルシウム粉末の質量)/25℃における酸化カルシウム粉末の質量×100(%) ・・式
【0042】
(4)塩基度
酸化カルシウム粉末の塩基度は、特に制限はないが、通常は25〜100μmol/m
2の範囲内であり、好ましくは30〜60μmol/m
2の範囲内であり、より好ましくは40〜50μmol/m
2の範囲内である。酸化カルシウム粉末の塩基度が25μmol/m
2を下回ると、酸性ガスの吸着速度が遅くなる傾向がある。一方、酸化カルシウム粉末の塩基度が100μmol/m
2を上回ると、酸性ガスの吸着速度が速すぎて取り扱いが困難になりやすい。したがって、酸化カルシウム粉末の塩基度が25〜100μmol/m
2の範囲内であると、酸性ガスの吸着速度が適切であり、かつ取り扱い性が良好となる。ここで言う塩基度は、酸化カルシウムの比表面積1m
2/gあたりの二酸化炭素吸着量で定義され、後述する実施例に記載された方法あるいはこれに準じた方法で測定した値を意味する。
【0043】
(5)水蒸気吸着量
酸化カルシウム粉末の水蒸気圧500Paの条件下における水蒸気吸着量は、特に制限はないが、通常は200ml/g以上であり、好ましくは250ml/g以上であり、より好ましくは300ml/g以上である。上記の水蒸気吸着量が200ml/gを下回ると、吸水量が小さくて吸湿性能が低くなる傾向がある。上記の水蒸気吸着量の上限は、特に制限はないが、通常は5000ml/g以下であり、好ましくは1000ml/g以下であり、更に好ましくは500ml/g以下である。
【0044】
(6)用途
本発明の酸化カルシウム粉末は、表面が被覆されることなく酸化カルシウムが直接外気と接し、高いBET比表面積と塩基度を併せ持っているため、特に低圧の水分や酸性ガスを効果的に吸収することができる。また、本発明の酸化カルシウム粉末は、平均粒子径が小さく微粉化されているため、電子機器や断熱材の小型化・薄膜化に対応できる。
【0045】
本発明の酸化カルシウム粉末は、特に真空断熱材の吸湿剤、酸性ガスの吸着剤としての用途に特に適している。真空断熱材とは、袋状に加工したラミネートフィルム内に芯材を収納したのちにラミネートフィルム内を減圧して密封した断熱材である。ラミネートフィルム内に空気や水分が侵入すると断熱性が低下するが、本発明の酸化カルシウム粉末をラミネートフィルム内に配合することで、空気や水分の侵入を防止しつつ酸化カルシウム粉末に起因するガスの発生が無いため、断熱性を高い状態で維持することができる。
【0046】
特に、本発明の酸化カルシウム粉末は、有機EL等の電子機器の吸湿剤、酸性ガスの吸着剤に適している。例えば、本発明の酸化カルシウム粉末は、合成樹脂に分散させて、シート状、ペレット状、板状、フィルム状に成形して利用することができる。これらの成形物は、有機ELディスプレイなどの電子機器用の乾燥剤として有利に使用することができる。合成樹脂には、ポリオレフィン樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及びフッ素樹脂を用いることができる。また、本発明の酸化カルシウム粉末は、通常の吸湿剤に用いられている透湿性の袋や容器に収容して使用することもできる。このようにすることで、樹脂中を透過するわずかな水分や酸性ガスを酸化カルシウム粉末で効果的に吸着できる。なお、酸化カルシウム粉末は、単独で使用してもよいし、他の吸湿性材料(例えば、シリカゲル、ゼオライトやモレキュラーシーブ)と併用してもよい。
【0047】
本発明の酸化カルシウムは、粉末状のまま用いてもよく、あるいは任意の形状に成形して使用してもよい。また、本発明の酸化カルシウムを適当な溶媒や高分子材料に充填した塗料、高分子材料に充填したテープやフィルムなどとして使用することができる。このため、有機EL、液晶等の水分を忌避する電子デバイス用乾燥剤、冷蔵庫・二重ガラスなどの断熱層用乾燥剤、バリアフィルムの水分吸着層、密閉容器のパッキン用(化学品、医薬品、食品の劣化防止)、真空配管の内面塗布用、Oリング用(高真空維持)などにも好適に使用することができる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、これらは本発明の目的を限定するものではなく、また、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0049】
[外熱式回転炉]
内径200mm、全長4000mm、出力30kwの外熱式キルンを用いた。
【0050】
[BET比表面積の測定方法]
BET比表面積の測定は、Monosorb(Quantachrome Instruments製)を用いてBET一点法により測定した。
【0051】
[塩基度の測定方法]
二酸化炭素の吸着量は昇温式脱離吸着過程測定(CO
2−TPD)法を測定して1gあたりの二酸化炭素吸着量を算出し、下記の式により、塩基度を換算した。二酸化炭素の昇温式脱離吸着過程測定(CO
2−TPD)は、BELCAT−B(日本ベル株式会社製)を用いて測定した。
塩基度(μmol/m
2)= 1gあたりの二酸化炭素吸着量(μmol/g)/比表面積(m
2/g) ・・・式
【0052】
[水蒸気吸着量の測定方法]
水蒸気吸着量は、高精度全自動ガス吸着装置 BELSORP18(日本ベル株式会社製)を用いて水蒸気吸着等温線を測定し、水蒸気圧500Paでの酸化カルシウム1gあたりの水分吸着量(ml/g)を測定した。水分吸着量は、標準状態(0℃、1気圧)における気体の体積に換算した値である。
【0053】
[平均粒子径及び粒度分布の測定方法]
試料の分散溶媒としてエタノールを使用し、超音波ホモジナイザー(MODEL US−150T、(株)日本精機製作所製)で3分間分散処理を行った。分散させた試料をレーザー回析法粒度分布分析装置(MICROTRAC HRA9320−X100、日機装(株)製)を用いて粒度分布を測定しD10、D50、D90をそれぞれ求めた。
【0054】
1.実験例1
[実施例1]
平均粒子径6.1μm、BET比表面積12.0m
2/gの水酸化カルシウム微粉末(CH−2N 宇部マテリアルズ株式会社製)を外熱式回転炉で550℃、滞留時間4分、回転数25rpmで焼成し、酸化カルシウム粉末を得た。得られた酸化カルシウム粉末のBET比表面積は38.2m
2/gであり、塩基度は45μmol/m
2であった。水蒸気吸着量は、水蒸気圧500Paで326ml/gであった。その結果を表1に示す。
【0055】
[比較例1]
水酸化カルシウム粉末(CH−2N 宇部マテリアルズ株式会社製)を真空焼成炉に入れ、真空ポンプを用いて炉内圧力を60Paとした後、500℃で4時間焼成して酸化カルシウム粉末を得た。得られた酸化カルシウム粉末のBET比表面積は62.4m
2/gであり、塩基度は25μmol/m
2であった。水蒸気吸着量は、水蒸気圧500Paで278ml/gであった。その結果を表1に示す。
【0056】
[比較例2]
吸湿剤として市販されている粒状生石灰(ライスガード 宇部マテリアルズ株式会社製)を評価した。BET比表面積は1.5m
2/gであり、塩基度は102μmol/m
2であった。水蒸気吸着量は、500Paで0.7ml/gであった。その結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
以上の結果から、実施例1の酸化カルシウム粉末は、塩基度が25〜100μmol/m
2の範囲内であることから、酸性ガスの吸着性にも優れることがわかった。一方、比較例1のように真空焼成したものは、実施例1と比べて、BET比表面積が大きいが、500Paにおける水蒸気吸着量と塩基度において劣ることがわかった。また、比較例2の市販の乾燥剤は、実施例1と比べてBET比表面積と水蒸気吸着量の値が小さいため、水分の吸着性に劣ることがわかった。
【0059】
2.実験例2
[水酸化カルシウム粉末(原料)]
原料である水酸化カルシウム粉末は以下のものを使用した。
・CH−2N:宇部マテリアルズ株式会社製 CH−2N(最大粒径52.33μm、平均粒径4.8μm、BET比表面積12m
2/g、細孔容積0.077cm
3/g)
【0060】
[強熱減量:示差熱分析による質量変化率(TG)]
質量変化率(TG)は、示差熱分析装置(ブルカー・エイエックスエス製TG−DTA2000S)を使用し、空気(グレード2)100mL/分流通下、昇温速度10℃/分、目標温度1000℃の条件で行った。
【0061】
[XRDによる構成成分の同定]
酸化カルシウム粉末の同定は、X線回折装置(ブルカー・エイエックスエス製NEW D8 ADVANCE)を使用し、θ―2θスキャンにより、X線源:CuKα(Niフィルター使用)、管電圧:40kV、管電流:40mA、検出器:1次元半導体高速検出器 LynxEye、発散スリット:0.30度、ステップサイズ:0.015度、計数時間:0.20秒/ステップの条件で、2θ:10°〜65°の範囲で行った。
【0062】
[実施例11〜18比較例11〜14]
上記の水酸化カルシウム粉末(CH−2N)を使用し、外熱式回転炉(回転数25rpm)を用いて表2に記載の条件で焼成した。得られた酸化カルシウム粉末について、粒度分布(D10、D50、D90)、BET比表面積、質量変化率(TG)、XRDによる結晶性の評価を行った。その結果を表3に示す。
【0063】
また、熱処理前の水酸化カルシウム粉末の粒度分布(D10、D50、D90)に対する熱処理後に得られた酸化カルシウム粉末の粒度分布の増加率を算出した。BET比表面積の増加率も同様に算出した。その結果を表4に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
【表3】
【0066】
以上の結果から、実施例11〜20の焼成条件では、得られる酸化カルシウム粉末は、BET比表面積が13m
2/g以上と表面積が大きく、かつTGが15wt%以下と含水量が少ないことがわかった。このため、酸化カルシウム粉末は、水分の吸着性に優れることがわかった。
【0067】
【表4】
【0068】
以上の結果から、実施例11〜18の焼成条件において、特に焼成前の水酸化カルシウムのBET比表面積が低いもの(15m
2/g以下)では、得られる酸化カルシウム粉末は、BET比表面積が2倍(200%)近くかそれ以上に増加していることがわかった。