(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705719
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ワッシャ付ネジ
(51)【国際特許分類】
F16B 35/00 20060101AFI20200525BHJP
F16B 43/00 20060101ALI20200525BHJP
F16B 39/26 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
F16B35/00 U
F16B43/00 Z
F16B39/26 C
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-166247(P2016-166247)
(22)【出願日】2016年8月26日
(65)【公開番号】特開2018-31466(P2018-31466A)
(43)【公開日】2018年3月1日
【審査請求日】2018年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390038069
【氏名又は名称】株式会社青山製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥田 祐也
(72)【発明者】
【氏名】岩田 秀一
(72)【発明者】
【氏名】浅田 順
(72)【発明者】
【氏名】井上 慶太
(72)【発明者】
【氏名】太田 佳寛
(72)【発明者】
【氏名】藤原 武
(72)【発明者】
【氏名】井口 智史
【審査官】
杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05020951(US,A)
【文献】
特開2014−240675(JP,A)
【文献】
特開平02−283910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 35/00
F16B 39/26
F16B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネジ溝が形成されている軸部と頭部との間に円筒部が設けられているネジ本体と、
前記頭部に隣接するように前記円筒部に挿通されている平ワッシャと、
前記円筒部に挿通されており、前記平ワッシャの軸部側に位置するゴムワッシャと、
を備えており、
前記円筒部に、前記平ワッシャを係止する突起が設けられているとともに、前記ゴムワッシャが嵌合する溝が設けられている、ワッシャ付ネジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、平ワッシャとゴムワッシャが付いたネジを開示する。本明細書における「ネジ」には、頭部が多角形のボルトが含まれる。
【背景技術】
【0002】
回路基板を固定するのに、平ワッシャとゴムワッシャを伴うネジが用いられることがある(例えば、特許文献1)。平ワッシャは、ネジ本体の頭部に隣接するように軸部に挿通されており、さらにゴムワッシャが軸部に挿通されている。特許文献1のワッシャ付ネジは、ゴムワッシャの弾性力で回路基板を押さえ付ける。回路基板の熱変形も、ゴムワッシャの弾性力で吸収することができる。特許文献1のワッシャ付ネジは、ゴムワッシャの孔の内周面に、ネジ本体の軸部に接する突起が設けられており、平ワッシャとゴムワッシャが脱落し難くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−240675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軸部に対するゴムワッシャの摩擦力だけでは、平ワッシャとともにゴムワッシャが脱落するおそれがある。また、平ワッシャを軸部に通し、さらにゴムワッシャを軸部に通す工程を機械で行うことを想定した場合、ゴムワッシャを挿通する前に平ワッシャが脱落するおそれがある。平ワッシャが脱落し難い構造が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するワッシャ付ネジのネジ本体には、ネジ溝が形成されている軸部と頭部との間に円筒部が設けられている。平ワッシャは、頭部に隣接するように円筒部に挿通されている。ゴムワッシャは、円筒部に挿通されており、平ワッシャの軸部側に位置している。そして、平ワッシャを係止する突起が円筒部に設けられている。このワッシャ付ネジでは、円筒部に設けられた突起が平ワッシャの脱落を防止する。ゴムワッシャが無くとも平ワッシャは脱落し難い。また、ゴムワッシャを取り付けた際、ゴムワッシャと平ワッシャが脱落する可能性も、突起を備えない場合と比較して小さくなる。なお、突起を含む円筒部の直径は、平ワッシャの内径(平ワッシャの孔の直径)とほぼ同じかわずかに大きい。従って、平ワッシャは、押し込めば容易に突起を超えることができる。また、突起を含む円筒部の直径が平ワッシャの内径とほぼ同じであっても、平ワッシャがわずかでも傾いていれば、突起に引っ掛かり脱落しない。
【0006】
ゴムワッシャを取り付けたときの平ワッシャとゴムワッシャの脱落防止をより確実にするために、ネジ本体の円筒部に、ゴムワッシャが嵌合する溝が設けられてい
る。本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】ネジ中心線に沿ってカットしたワッシャ付ネジの断面図である。
【
図3】
図1の符号IIIが示す円内の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して実施例のワッシャ付ネジ2を説明する。
図1に、ネジ中心線CLに沿ってカットしたワッシャ付ネジ2の断面図を示す。
図2に、ワッシャ付ネジ2の分解断面図を示す。
図3は、
図1において符号IIIが示す円内の拡大図である。なお、
図3では、ゴムワッシャ30は図示を省略した。
【0009】
ワッシャ付ネジ2は、ネジ本体10と、平ワッシャ20と、ゴムワッシャ30を備えている。ネジ本体10は、頭部12と、円筒部14と、ネジ溝が形成されている軸部15で構成されている。
【0010】
円筒部14は、頭部12と軸部15の間に設けられている。円筒部14の直径は、フランジ13の直径よりも小さく、しかし、軸部15の直径よりも大きい。この円筒部14に、平ワッシャ20とゴムワッシャ30が挿通される。平ワッシャ20が頭部側に位置し、ゴムワッシャ30が軸部側に位置する。
【0011】
ネジ本体10の頭部12には、ドライバが嵌合する溝16と、フランジ13が設けられている。フランジ13は、平ワッシャ20が頭部側へ抜けないようにするために設けられている。また、フランジ13の軸部側のフランジ面は、ネジ本体10の座面に相当する。このフランジ面(座面)は、ワッシャ付ネジ2を締め付けたとき、平ワッシャ20を通じて加わるゴムワッシャ30の頭部側の反力を受ける。広いフランジ面でゴムワッシャ30の反力を受けることで、平ワッシャ20の変形が抑えられる。
【0012】
図3によく示されているように、円筒部14には、突起17と、溝18が設けられている。突起17を含む円筒部14の直径D2は、平ワッシャ20の内径D1(平ワッシャ20の孔の直径)とほぼ同じか、内径D1よりもわずかに大きい(本実施例では、突起17を含む円筒部14の直径D2は、平ワッシャ20の内径D1よりもわずかに大きい)。それゆえ、軸部側から頭部12の側へ平ワッシャ20を強く押し込むと、平ワッシャ20は容易に突起17を超えて突起17とフランジ13の間に位置する。ただし、一旦、突起17とフランジ13の間に嵌った平ワッシャ20は、重力の作用程度では突起17を超えて軸部側に移動することはない。即ち、重力の作用程度では、平ワッシャ20はネジ本体10から脱落しない。円筒部14の直径D2が平ワッシャ20の内径D1とほぼ同じ場合であっても、平ワッシャ20がわずかでも傾いていれば、平ワッシャ20は突起17に引っ掛かり、脱落しない。突起17は、平ワッシャ20を円筒部14に係止する役割を担う。突起17により、平ワッシャ20は容易にはネジ本体10から脱落しない。なお、突起17は、円筒部14の外周を一巡している。
【0013】
円筒部14には、その周を一巡する溝18が設けられている。溝18にゴムワッシャ30の内側のリブ30aが嵌合する。ゴムワッシャ30が円筒部14の溝18に嵌合することで、ゴムワッシャ30もネジ本体10から脱落し難くなっている。
【0014】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。ネジ本体10の円筒部14に設けられている突起17は、円筒部14を一巡している。突起17は、円筒部14を一巡する突条でなく、周方向の長さが短く、円筒部14の周方向に一列に複数個が設けられたものであってもよい。
【0015】
平ワッシャ20は、例えば鉄など、強度の高い金属で作られていることが好ましいが、樹脂や炭素繊維で作られたものであってもよい。
【0016】
実施例のワッシャ付ネジ2は、回路基板を固定するのに適している。ゴムワッシャ30が、その弾性力で回路基板を押さえ付けるので、回路基板を傷付けることなく、しっかりと回路基板を固定することができる。ただし、本明細書が開示するワッシャ付ネジは、回路基板を固定するものに限られない。
【0017】
また、実施例のワッシャ付ネジ2は、頭部にドライバ嵌合用の溝16を備えているタイプのネジである。本明細書における「ネジ」には、頭部が多角形のボルトを含む。即ち、本明細書が開示する技術は、ボルトに適用することも好適である。
【0018】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0019】
2:ワッシャ付ネジ
10:ネジ本体
12:頭部
13:フランジ
14:円筒部
15:軸部
16:溝
17:突起
18:溝
20:平ワッシャ
30:ゴムワッシャ
30a:リブ