【実施例】
【0012】
図1は、本発明のクランクハンドルが使用される弁開閉装置の全体図を示す。弁開閉装置30は、原子炉建屋内に設置されている弁本体(例えば仕切り弁)1を開閉するアクチュエータ2、フレキシブルシャフト4、アクチュエータ2にトルクを入力するモーター20、原子炉建屋壁14を貫通する貫通シャフト12、弁本体を手動で開閉するためのクランクハンドル40を備えている。
【0013】
アクチュエータ2は、弁開閉機構の一部を構成し、通常は交流電源により駆動されるモーター20からトルクを入力される。トルクはドライブスリーブ21を介して弁本体1に伝達され弁の開閉を行う。また、アクチュエータ2のもう一つの入力端にはカップリング3、減速機5、サポート8により固定されたフレキシブルシャフト4、貫通シャフト12を介してクランクハンドル40からの回転トルクが伝達可能になっている。アクチュエータ2は、上記の二つのトルク入力手段、つまりモーター20からのトルクとクランクハンドル40からの回転トルクを自動的に切り替えるオートデクラッチ機構を備えている。
【0014】
原子炉建屋壁14には貫通孔16が形成され、この貫通孔16を貫通して貫通シャフト12が配置される。貫通シャフト12の両端は、それぞれ内側軸受部9と外側軸受部10より軸受け支持されている。フレキシブルシャフト4の一端はジョイント7を介して減速機5と接続され、他端はジョイント11を介して貫通シャフト12と接続されている。また、貫通シャフト12の他端は、後述するように、クランクハンドル40と結合される。
【0015】
なお、弁本体1が化学プラント、電源施設、資源施設、水処理施設などに設置される大型弁である場合には、クランクハンドル40はフレキシブルシャフト4の他端と接続され、原子炉建屋壁14内で弁本体1を駆動する場合には、クランクハンドル40は、同様にフレキシブルシャフト4の他端に接続される。また、フレキシブルシャフト4の回転に基づいて弁本体1の開度を示す開度計を設ける場合には、開度計はクランクハンドル40と貫通シャフト12あるいはフレキシブルシャフト4間に接続される。
【0016】
フレキシブルシャフト4は、中心の芯材のまわりに細径のピアノ線を複数層に互いに反対方向に螺旋状に巻き付けたインナーシャフトと、ねじられようとしながら回転するインナーシャフトを外部から支えるアウターチューブからなる公知のもので、高効率で回転トルクを弁開閉機構に伝達することができる。
【0017】
オートデクラッチ機構は、交流電源が機能し、モーター20が作動している場合には、その回転がウォーム22に伝達され、それと噛み合うウォームホイール(不図示)が回転して弁棒(不図示)並びに弁体23が上下動する。一方交流電源が失われた場合には、クランクハンドル40が貫通シャフト12あるいはフレキシブルシャフト4に接続され、クランクハンドル40の回転が減速機5を介してウォーム22に伝達され、弁棒並びに弁体23が上下動される。
【0018】
クランクハンドル40は、
図2〜
図4に示すように、フレキシブルシャフト4を回転させる回転シャフト41と、回転シャフト41を回転自在に支持する支持板42と、支持板42に対して回動可能なアーム43と、アーム43の他端に固定されたグリップ44を備えている。
【0019】
回転シャフト41は、
図5に示したように、複数の径の異なる部分からなる円柱状のシャフトで、一方端部の小径円柱部41aが、支持板42に取り付けられたボールベアリング45により軸受けされ、他端の円柱部41bが、ベアリング受金具47に取り付けられた2連のボールベアリング46、46’により軸受けされる(
図3)。これにより、回転シャフト41は、その両端部が支持板42とベアリング受金具47で回転自在に軸受け支持される。なお、ボールベアリング45はベアリング押さえ49により、またボールベアリング46、46’はベアリング受金具47により軸方向移動がそれぞれ規制され、回転シャフト41の先端にはナット50がねじ込まれているので、回転シャフト41の軸方向移動はこれらの部材により規制される。
【0020】
また、回転シャフト41は、小径円柱部41aに隣接する部分が断面矩形で矩形部41cを構成している。回転シャフト41の矩形部41cはアーム43に形成された嵌合穴43aに嵌合し、グリップ44を握ってアーム43を回転すると、回転シャフト41はアーム43の回転に連動して回転する。この回転シャフト41の回転トルクは、ベアリング受金具47に固定された差込継手48がフレキシブルシャフト4の他端に差し込まれ、回転シャフト41の端部41dがフレキシブルシャフト4の対応する部分に結合されると、フレキシブルシャフト4に伝達され、フレキシブルシャフト4が回転する。
【0021】
また、回転シャフト41の中央部41eには、ナット51が取り付けられ、ナット51と矩形部41c間には、スプリング52が巻装される。スプリング52はアーム43を支持板42の方向に付勢し、
図2、
図3に示したように、アーム43を支持板42に押し付け、両部材42、43がほぼ平行になる状態に維持する。
【0022】
スプリング52は、上部に切り欠き部53aが形成されたスプリングカバー53により覆われ、スプリングカバー53は、その両側部がボルト54、54’によりアーム43に取り付けられる(
図2(b))。後述するように、アーム43が支持板42に対して回動したときには、スプリングカバー53は、アーム43に押されて軸方向に移動する。
【0023】
支持板42の下方には、アーム43と接触して回転するローラー55、55’が取り付けられ、グリップ44を手で握りグリップ44を手前に引くと、ローラー55、55’がアーム43に回転接触し、アーム43は、
図4に示したように、支持板42に対して回動し傾斜する。アーム43が支持板42に対して回動しない、
図2、
図3に図示した位置(第1の位置)では、アーム43と支持板42は平行になっており、回転シャフト41の矩形部41cがアーム43の嵌合穴43aと嵌合するので、アーム43は回転シャフト41と結合されて、アーム43を回転すると、回転シャフト41はそれに連動して回転する。
【0024】
一方、
図4に示したように、アーム43をスプリング52の付勢力に抗して支持板42に対して回動させ、アーム43が支持板42に対して傾斜する位置(第2の位置)に移動すると、回転シャフト41の矩形部41cはアーム43の嵌合穴43aに嵌合しなくなり、アーム43と回転シャフト41の結合が外れて、回転シャフト41は自在回転する。支持板42には長穴42aが形成され、この長穴42aに、アーム43に固定されたボルト56を挿通することにより、アーム43の回動ないし傾斜を制限することができる。
【0025】
アーム43の嵌合穴43aは、
図6、
図7に示すように、アーム43の支持板42に対する傾斜度に応じて、スプリング52側面の上辺43b並びに下辺43cはそれと反対側面に向かって下方に傾斜し、該反対側面で上辺43b’並びに下辺43c’となっている。アーム43が第1の位置にある場合には、上辺43b’が矩形部41cの右端に接触し、下辺43cが矩形部41cの左端に接触する。このように、嵌合穴43aを上辺と下辺が軸方向に傾斜した矩形穴にすることにより、回転シャフト41の矩形部41cがアーム43の嵌合穴43aに円滑に嵌合し、また嵌合しなくなるようにすることができる。
【0026】
また、支持板42の上部にはボルト57が取り付けられ、アーム43が第1の位置にあるときは、その先端がアーム43の穴43dに嵌合してアーム43と支持板42間にガタが発生しないようになっている。なお、
図6に示した他のねじ穴43e、43e’、43fは、それぞれボルト54、54’、56のねじ穴であり、ねじ穴43gはグリップ44を取り付けるためのねじ穴である。
【0027】
次に、このように構成されたクランクハンドルを用いて弁を開閉する動作を説明する。
【0028】
交流電源が機能し、モーター20が作動している場合には、その回転トルクにより、弁本体1の開閉が行われる。一方交流電源が失われた場合には、クランクハンドル40を用いて弁本体1が開閉される。クランクハンドル40は、上述したように、フレキシブルシャフト4の他端と直接、あるいは開度計を介して接続され、あるいは原子炉の弁本体1を建屋外で遠隔操作する場合は、貫通シャフト12を介してフレキシブルシャフト4と接続される。
【0029】
通常、クランクハンドル40のアーム43は、その嵌合穴43aに回転シャフト41の矩形部41cが嵌合してアーム43と回転シャフト41が結合される第1の位置にあるので、アーム43を回転させると、その回転トルクはフレキシブルシャフト4に伝達され、フレキシブルシャフト4が回転して、弁本体1が開閉する。
【0030】
一方、弁本体1の開閉が終了した場合、あるいは弁の開閉途中でアーム43の回転操作を中断した場合、操作者はグリップ44から手を離す。しかし、フレキシブルシャフト4は、インナーシャフトがねじられようとしながら回転しているので、ねじれによる逆回転トルクによりアーム43が高速に逆回転し、操作者が危険にさらされる。
【0031】
そこで、操作者は、
図3に示した状態で、スプリング52の付勢力に抗してグリップ44を手前に引くと、アーム43は、ローラー55、55’に接触しながら、
図4に示すように、支持板42に対して回動して傾斜し第2の位置に移動する。この第2の位置では、回転シャフト41の矩形部41cはアーム43の嵌合穴43aに嵌合しなくなり、アーム43と回転シャフト41の結合が外れて、回転シャフト41は自在回転し、逆回転トルクが解消する。これにより、長いアーム43が逆回転して操作者に危害が生じるのを防止でき、安全に弁本体の開閉を行うことができる。
【0032】
なお、
図7に詳細に示すように、アーム43の嵌合穴43aは、スプリング52側面の上辺43b並びに下辺43cがそれと反対側面に向かって下方に傾斜し、上辺43b’並びに下辺43c’となっている。しかし、アーム43の嵌合穴が、回転シャフト41の矩形部41cと緊密に嵌合する、
図7で仮想線で示したような矩形穴43a’である場合には、嵌合が外れる時、あるいは嵌合するとき、矩形穴43a’が回転シャフト41の他の部分に当たって円滑な嵌合ができなくなる。しかし、本実施例では、嵌合穴43aを上辺と下辺が軸方向に傾斜した矩形穴にすることにより、回転シャフト41の矩形部41cとアーム43の嵌合穴43aの嵌合、あるいは脱嵌合を円滑に行うことができる。