(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一方の端部に外部と連通する開口部を有する第1連通部を備え、他方の端部に外部と連通する開口部を有する第2連通部を備えた容器と、前記容器内において複数並列に配置され、前記第1連通部および前記第2連通部と接続されるフィルタと、前記フィルタを任意に切り替えて、前記第1連通部、前記フィルタおよび前記第2連通部を連通させる切替機構と、を有する細胞分離装置と、
培養液を収容する培養槽と、
前記細胞分離装置内に圧力を発生させる圧力発生装置と、
一方の開口端部が前記培養槽内に配置され、他方の開口端部が前記第1連通部と接続された第1の流路と、
一方の開口端部が前記第2連通部と接続され、他方の開口端部が前記圧力発生装置と接続された第2の流路と、を有し、
前記切替機構は、
複数ある前記フィルタが回転軸を中心とした同一円周上に並行に配置されており、
アクチュエータにより前記回転軸を中心に前記フィルタを回転させて、前記第1連通部および前記第2連通部が連通するフィルタを切り替える
ことを特徴とする培養装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照して、本発明に係る細胞分離装置および培養装置の一実施形態について詳細に説明する。
〔細胞分離装置〕
図1は、本実施形態に係る細胞分離装置1の構成を説明する概略側面図である。
図2は、本実施形態における第1連通部、フィルタおよび第2連通部の一構成例を示す一部切欠き図である。
図1に示すように、細胞分離装置1は、主に、容器2と、フィルタ3と、切替機構4と、を有する。
この細胞分離装置1は、ろ過分離法を適用した培養装置100(
図4参照)の一部を成し、培養液M中の培養細胞と溶液とを分離して、溶液のみを抜き出す役割を果たす。ここで、本明細書において、培養細胞とは、培養液Mで培養された細胞をいう。培養液Mとは、培養細胞を培養するための溶液をいう。培養液Mは、培養する細胞に応じて適宜調製したものや市販されているものを用いることができ、特定のものに限定されない。培養対象となる細胞としては、例えば、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、細菌、酵母、真菌や藻類などが挙げられるが、有用物質を生産することのできる細胞であればどのようなものでもよく、これらに限定されない。なお、有用物質としては、例えば、抗体や酵素などのタンパク質、低分子化合物や高分子化合物などの生理活性物質が挙げられるが、これらに限定
されるものではない。細胞分離装置1によって分離された溶液には、細胞を増殖させる栄養成分や、細胞が増殖する際に生成し、分泌されたアンモニアや乳酸などの老廃物が含まれている。以下、細胞分離装置1によって分離された溶液を「ろ過液」と呼称することがある。また、有用物質は、細胞内に分泌される場合もあるが、細胞外に分泌され、ろ過液Fに含まれている場合もある。本実施形態においては、有用物質が細胞外に分泌されてろ過液Fに含まれる場合について主に説明する。
【0014】
(容器)
容器2は、一方の端部5に外部と連通する開口部を有する第1連通部6を備え、他方の端部7に外部と連通する開口部を有する第2連通部8を備えている。つまり、
図1に示す例では、容器2は、第1連通部6と第2連通部8を1セット(一対)備えている。後記するように、第1連通部6には、第1の流路40が接続されて培養槽20(
図4参照)と連通し、第2連通部8は、第2の流路50が接続されて圧力発生装置30と連通する。なお、第1連通部6および第2連通部8は、前記した開口部を備えた所謂ホースニップルのような形状を有する管継手6aおよび管継手8aとすることができる(
図2参照)。すなわち、第1の流路40は、第1連通部6に差し込んで接続され、第2の流路50は、第2連通部8に差し込んで接続される。管継手6aおよび管継手8aは、第1の流路40や第2の流路50と接する面に、これらが脱落するのを防止する凹凸が設けられていてもよい。第1連通部6および第2連通部8の開口部の口径は、第1の流路40の内径や第2の流路50の内径と同程度とするのが好ましい。なお、第1の流路40、第2の流路50、培養槽20および圧力発生装置30については後記する。
【0015】
一方の端部5および他方の端部7はそれぞれ容器2の本体21に対して着脱可能な蓋部材であってもよい。ただし、容器2は、培養時に培養液Mへの雑菌などの混入を防止するため、第1連通部6および第2連通部8以外は容器2の内外が通じないようにする。容器2は、例えば、ステンレスやアルミニウムなどの金属製、ポリプロピレンやポリスチレンなどのプラスチック製、またはガラス製などとすることができる。容器2は、本体21が図示しない支持部材により、施設の壁部または支柱に固定されているのが好ましい。また、容器2の下部にはろ過液Fを容器2外に排出するための排出口9を有しているのが好ましい。排出口9は、容器2内にろ過液Fが残らないようにするため、容器2の底部、すなわち他方の端部7の直上に設けるのが好ましい。
【0016】
(フィルタおよび切替機構)
本実施形態におけるフィルタ3は、培養細胞は透過させずに培養液Mの溶液のみが透過可能な孔径を有する限外ろ過膜を用いた構造体である。従って、フィルタ3は、培養液Mの溶液のみを透過させ、培養液M中の培養細胞とろ過液Fとを分離することができる。
本実施形態において、フィルタ3は、容器2内において複数並列に配置されており、容器2の第1連通部6および第2連通部8と順繰りに接続されている。
【0017】
切替機構4は、フィルタ3を任意に切り替えて、第1連通部6、フィルタ3および第2連通部8を連通させる役割を果たす。切替機構4は、第1連通部6と、フィルタ3と、第2連通部8とを接続させるため、第1連通部6とフィルタ3との接合部分、および第2連通部8とフィルタ3との接合部分にOリングなどのシール材11が設けられている。シール材11は、フィルタ3に設けてもよいし、第1連通部6や第2連通部8に設けてもよい。切替機構4は、シール材11が設けられているので、切替機構4によってフィルタ3を任意に切り替えた後、アクチュエータ(図示せず)で容器2の第1連通部6および第2連通部8をフィルタ3に押し付けることにより気密性が得られる。なお、このような、フィルタ3への第1連通部6および第2連通部8の押し付けや、フィルタ3の切替時に前記した押し付けを解除する場合に使用するアクチュエータとしては、例えば、電気モータや油圧ポンプ、エアシリンダなどが挙げられる。しかし、アクチュエータは、これらに限定さ
れるものではなく、第1連通部6および第2連通部8のそれぞれに接続できてこれらに押圧力を付与できるものであればどのようなものも用いることができる。
【0018】
(切替機構の一態様)
前記した切替機構4には幾つかの態様があり、それらについては後述するが、以下にその中の一態様について説明する。
切替機構4は、容器2内に複数並列に配置されたフィルタ3を任意に切り替えるため、フィルタ3は容易に切り替えることができるものであることが好ましい。このような観点から、フィルタ3は、例えば、
図2に示すような中空糸膜モジュール3aであるのが好ましい。
【0019】
図2に示すように、中空糸膜モジュール3aは、内部を培養液Mが通流する中空糸膜3bと、中空糸膜3bの開口部3c、3cを開口させたまま保持する中空糸開口端部3d、3dと、を有する。なお、中空糸開口端部3dは、中空糸膜3bを束状に集め、開口部3c近傍の周面に樹脂などを塗布し、接着させて固化させたものであってもよい。中空糸開口端部3d、3dの外端面にはそれぞれ有底円筒状のアウタ部材3h、3iが取り付けられており、中空糸開口端部3dとの間で所定のスペース3j、3kを確保できるようになっている。また、アウタ部材3hの底部の中央部分には、スペース3jと第1連通部6とを連通するための開口部3nが設けられている。アウタ部材3iの底部の中央部分にも同様に、スペース3kと第2連通部8とを連通するための開口部3pが設けられている。さらに、このアウタ部材3h、3iの外表面にはそれぞれ気密性を得るため、Oリングなどのシール材11が設けられている。また、中空糸膜モジュール3aはカバー3fを有している。カバー3fについては後記する。
【0020】
このような構成としているので、第1連通部6から導入された培養液Mがスペース3jに一旦導入されることにより、中空糸膜3bの各開口部3cに、均一に培養液Mを導入できる。そして、開口部3cから中空糸膜3b内に培養液Mが導入されると、培養細胞を中空糸膜3b外に透過させることなく、培養液Mの溶液のみを中空糸膜3b外に透過する。なお、この態様のようにフィルタ3として中空糸膜モジュール3aを用いる場合、
図1および
図2に示すように、中空糸膜3bの一部が容器2内の空間に露出しているものが好ましい。このようにすると、中空糸膜3bを透過したろ過液Fを容器2内に貯留することができる。なお、
図1および
図2では、アウタ部材3hとカバー3fの間やアウタ部材3hとアウタ部材3iにこれらを支える支持部材などを図示していないが、これらの部材の間にそのような支持部材を設けて支えてもよい。このようにすると、フィルタ3が高強度となるだけでなく、ハンドリング性が向上するので好ましい。ろ過されなかった培養細胞は、中空糸膜3b、スペース3k、第2の流路50および圧力発生装置30内に貯留され、後述するように、圧力発生装置30によって培養槽20に返送される。
【0021】
さらに、
図1に示すように、前記した複数のフィルタ3は、全て一つの容器2に収容されていることが好ましい。このようにすると、フィルタ3を切り替える際などに雑菌などが混入するのを防止できる。
また、フィルタ3で分離したろ過液Fは容器2内の下方に溜まる。従って、他のフィルタ3によって分離されたろ過液Fが未使用のフィルタ3e(
図1参照)に付着するのを防止するため、フィルタ3の下部はカバー3fで覆われていることが好ましい。このカバー3fは、例えば、合成樹脂や金属などで形成することができるが、廃棄を容易とするため、合成樹脂製とするのが好ましい。なお、フィルタ3の下部をカバー3fで覆った場合、ろ過液Fはカバー3f内を満たした後、カバー3fの上端を越えてから容器2に貯留されることになる。なお、カバー3f内の殆どの容積は中空糸膜モジュール3aで占められているため、カバー3f内に残存するろ過液Fの量は多くなく、これによる有用物質の減収量は特に問題となるものではない。
【0022】
ここで、
図3は、フィルタ3の配置位置を示す細胞分離装置1の平面図である。
図3に示すように、複数(
図3では5本)あるフィルタ3を容器2内において、回転軸12を中心とした同一円周上に、平行に配置している。なお、フィルタ3は、
図1および
図3に示す如く、培養液Mの導入方向が垂直となるように、すなわち、水平面に対して長手方向が鉛直となるように配置することができる。また、フィルタ3は、
図6および
図8に示すように、培養液Mの導入方向が水平となるように、すなわち、水平面に対して長手方向が平行となるように配置することができる。この態様については後述する。
【0023】
切替機構4は前記したように、図示しないアクチュエータでフィルタ3の押し付けを解除する。そして、
図1に示すように、電気モータなどのアクチュエータ13により回転軸12を中心に一方の端部5および他方の端部7をA方向に回転させ、第1連通部6および第2連通部8に連通するフィルタ3を切り替える。回転方向は図中A方向とは逆の方向でもよい。なお、前記した一方の端部5とは、
図1および
図2中、上側に配置される蓋部材であり、他方の端部7とは
図1および
図2中、下側に配置される蓋部材である。つまり、この態様では、上下の蓋部材をアクチュエータ13により一体に回転させる。
【0024】
アクチュエータ13は、一方の端部5および他方の端部7にそれぞれ設けることもできるが、
図1に示すように、一方の端部5および他方の端部7を回転軸12で連結して固定する態様とすることができる。このようにすると、一つのアクチュエータ13で一方の端部5および他方の端部7を同時に回転させることができるので、省エネルギー化および制御の簡素化の観点で好ましい。
【0025】
また、この態様においては、
図1および
図2に示すように、フィルタ3の位置決めを行う位置決め部材14、15が、容器2内の一方の端部5および他方の端部7にそれぞれ近接させて設けられている。位置決め部材14、15は、容器2内の所定の位置にフィルタ3を配置(嵌合)するための複数の取り付け穴部14a、15aを有している。取り付け穴部14a、15aはそれぞれ、アウタ部材3h、3iの形状、外径に則した形状、開口径を有している。フィルタ3は、アウタ部材3h、3iを取り付け穴部14a、15aに嵌め込むことにより固定されている。取り付け穴部14aへのアウタ部材3hの嵌め込みや、取り付け穴部15aへのアウタ部材3iの嵌め込みに替えて、それぞれを螺着や融着、接着などしてもよい。この場合、これらの部材の固定がより確実に行われるので、ろ過中にフィルタ3が取り付け穴部14a、15aから外れるおそれもないので好ましい。
【0026】
本体21と位置決め部材14、15とは螺着などの任意の固定手段により、着脱自在に、かつ気密性をもって固定されている。位置決め部材14と一方の端部5は、Oリングなどのシール材11を介して気密性を保ちつつ摺動可能に取り付けられており、位置決め部材15と他方の端部7も、Oリングなどのシール材11を介して気密性を保ちつつ摺動可能に取り付けられている(
図1参照)。
【0027】
前記したように、一方の端部5および他方の端部7は、図示しないアクチュエータにより互いが近接する方向に圧力が付与されるようになっている。よって、ろ過時には、一方の端部5および他方の端部7を近接させ、一方の端部5と位置決め部材14の間でシール材11を押し潰すと共に、他方の端部7と位置決め部材15との間でシール材11を押し潰し、気密性を高めつつこれらを固定する。
【0028】
フィルタ3の切り替え時には、当該アクチュエータによる圧力の付与を解除し、一方の端部5および他方の端部7が、それぞれ位置決め部材14と位置決め部材15に設けられているシール材11と離れない程度に少しだけ離間する方向に動かす。そして、アクチュエータ13を駆動させ、回転軸12に固定されている一方の端部5および他方の端部7を
、回転軸12を中心に所定角度だけ回転させる。このようにすると、ろ過時および切り替え時にも気密性が確保されるので、雑菌の混入を防止できる。なお、フィルタ3の切り替え時に、フィルタ3内に残った培養細胞がろ過液に混入しないようにするため、後記するように、圧力発生装置30(
図4参照)を駆動させてフィルタ3内の圧力を高め、フィルタ3内に残存する培養液Mを培養槽20に戻してから、フィルタ3の切り替えを行う。
【0029】
フィルタ3と位置決め部材14、15との間にもそれぞれOリングなどのシール材11が設けられているのが好ましい。このようにすると、一方の端部5および他方の端部7を回転させた場合であっても培養液Mやろ過液Fが容器2外に漏洩するのを防ぐことができ、また、容器2外から雑菌が混入するのを防ぐことができる。
【0030】
〔培養装置〕
次に、本実施形態に係る培養装置について説明する。
図4は、本実施形態に係る培養装置の構成を説明する概略構成図である。
図4に示すように、本実施形態に係る培養装置100は、前記した本実施形態に係る細胞分離装置1に加えて、培養槽20と、圧力発生装置30と、第1の流路40と、第2の流路50とを有する。
なお、以下の説明では、細胞分離装置1と培養装置100との間で同様の構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0031】
(培養槽)
培養槽20は、培養液Mを収容する容器である。培養槽20は、ガラス製、金属製、プラスチック製などから選択される任意の材料を用いて、任意の容量で形成されたものを用いることができる。培養槽20は、空気、酸素、窒素や炭酸ガスなどのガス供給設備、温水冷水供給設備、蒸気供給設備および給排水設備を具備している(いずれも図示せず)。培養槽20内に張り込まれた培養液Mは、駆動用モータ21により駆動される攪拌機22で攪拌され、均一に混合される。培養に必要な酸素は、常法により酸素含有ガスを槽底部に配置されたスパージャなどの散気手段(図示せず)から液中に供給する液中通気法および槽上部の気相部に通気する上面通気法の二つの方法により供給される。
【0032】
培養槽20は、培養液Mの性状を計測する計測手段23を具備しており、溶存酸素濃度、溶存炭酸ガス濃度、pH、温度、アンモニア濃度、乳酸濃度およびグルタミン濃度の計測値を得る。なお、計測手段23については、実装置では検出項目毎または制御項目毎に1つの検出手段を用いるが、
図4では簡略化のため1つのみ示した。また、培養槽20は、液面計24を具備しており、培養液Mの液面高さを測定することで、培養槽20内の培養液Mの液量を管理している。
【0033】
また、培養槽20は、液中および上面への通気系統はそれぞれの供給ガスを制御する個別操作手段(図示せず)を具備している。この個別操作手段は、液中および上面に供給する空気、酸素、炭酸ガスの各ガスについての流量制御機能と供給量計測機能を具備している。また、この個別操作手段により供給ガスの組成および通気量を制御する。
供給ガスの組成および通気量の制御の一例として、本実施形態では、空気を一定量で通気し、培養液MのpHに対応して炭酸ガスを混合することが挙げられる。炭酸ガス濃度の制御はpHを制御量とし、炭酸ガス流量を操作因子とする通常の比例制御で実施することができる。
【0034】
散気手段による培養液M中への通気は、供給ガスを制御する個別操作手段によりその組成および通気量を制御することができる。散気手段による培養液M中への通気の一例として、本実施形態では、培養液Mの溶存酸素濃度を制御量とし、酸素通気量を操作因子とすることが挙げられる。
【0035】
また、培養槽20は、圧力計P2の計測結果をもとに、圧力調整弁(図示せず)およびポンプ(図示せず)によって一定の圧力に保持されている。通常は外部からの雑菌などの侵入を防ぐため、圧力調整弁およびポンプによって培養槽20内はゲージ圧で0.01〜0.05MPaに加圧されている。
【0036】
また、培養槽20は、培養槽20外からの雑菌の混入を防ぐ構成とする。例えば、培養槽本体25と培養槽蓋材26とをOリングなどのシール材(図示せず)を介して接合させることが挙げられる。また、培養槽20において前記した計測手段23や散気手段(図示せず)を貫通させた箇所は、シーリング剤などで隙間を塞ぐことが挙げられる。
【0037】
(圧力発生装置)
圧力発生装置30は、細胞分離装置1内を陽圧にしたり、陰圧にしたりするための圧力を発生させる装置である。なお、圧力発生装置30は、細胞分離装置1と圧力発生装置30の間に配設される第2の流路50内にも同様に圧力を発生させ、細胞分離装置1と培養槽20の間に配設される第1の流路40内にも同様に圧力を発生させる。圧力発生装置30としては、例えば、ダイアフラムポンプを用いるのが好ましいが、圧力を発生させることができればこれに限定されることなくどのようなものも用いることができる。なお、ダイアフラムポンプは、容積移送式ポンプの一種であり、ゴム、熱可塑性樹脂またはフッ素樹脂製ダイアフラムの往復運動と任意の逆止弁とを組み合わせて流体を移送する。ダイアフラムポンプは、ピストンではなく、ダイアフラム(隔膜)を上下させるので、異物などが混入せず、クリーンな動作が可能である。
【0038】
(第1の流路および第2の流路)
第1の流路40は、一方の開口端部41が培養槽20内に配置され、他方の開口端部42が第1連通部6(
図2参照)と接続される。なお、
図4において、第1の流路40は、第1連通部6と接続された流路部材40aと、培養槽20に設けられた流路部材40bと、をコネクタ40cで接続した様子を示している。そして、流路部材40aには弁V1が設けられており、流路部材40bには弁V2が設けられている。このようにすると、例えば、流路部材40aが劣化等した場合に、当該流路部材40aをコネクタ40cから取り外して、新しい流路部材40aに交換することができる。
【0039】
第1の流路40には、ろ過時に培養液Mに対して圧力を印加する圧力ポンプ10が設けられていてもよい。例えば、
図4に示すように、流路部材40bに圧力ポンプ10が設けられていてもよい。圧力ポンプ10としては、例えば、シリンジポンプ、ペリスタポンプ、エアポンプ、圧力ボンベなどを用いることができるが、これらに限定されるものではない。第1の流路40は1本の流路材で構成することができる。その場合、弁の数は1つでよい。
【0040】
また、第2の流路50は、一方の開口端部51が第2連通部8と接続され、他方の開口端部52が圧力発生装置30と接続される。第2の流路50には弁(図示せず)を設けてもよいし、設けなくてもよい。
前記した弁V1、V2は、細胞培養に用いられている一般的なものを用いることができ、これらを適宜開閉することで溶液の移送を行うことができる。これらの弁V1、V2の開閉動作および溶液の移送については後述する。
【0041】
第1の流路40および第2の流路50は、ケイ素樹脂やフッ素樹脂のようなフレキシブルな材料を用いて形成されたものであるのが好ましいが、前記した各要素を接続することができればどのような材料で形成したものも用いることができる。なお、第1の流路40および第2の流路50をフレキシブルな材料で形成すると、例えば、前記した切替機構4
のように、一方の端部5および他方の端部7を回転させる場合であっても、柔軟性を有しているので容易にこれらの回転に追従することができる。また、この場合、順繰りに全てのフィルタ3を使用したら、使用した全てのフィルタ3を新しいものに交換するので、一方の端部5および他方の端部7の回転角度は1回転未満となる。一方の端部5および他方の端部7の回転角度が1回転未満であれば、フレキシブルな材料で形成した第1の流路40および第2の流路50が捻じれて流路内が閉塞されることもない。なお、流路部材40bは金属製や硬質な樹脂製などのフレキシブルではない材料で作製したものであってもよい。
【0042】
(制御装置)
細胞分離装置1および培養装置100は、有線または無線で制御装置Cと接続されている。制御装置Cは、切替機構4によるフィルタ3の切り替えや、計測手段23で計測した培養液Mの性状に基づく溶存酸素量などの各種成分の調整、培地槽20から培養液Mへの液体培地の添加、圧力発生装置30の制御などを行う。制御装置Cは、これらの制御および動作を行うのに必要なプログラムが格納されたハードディスクドライブなどの記憶手段を有するコンピュータにより具現できる。
【0043】
(培地槽)
培養装置100は、細胞培養に必要な液体培地が収容された培地槽60を有している。培地槽60は、第3の流路61およびこの第3の流路61上に設けられた弁V3を介して培養槽20と接続されている。本実施形態においては、細胞分離装置1によって培養液Mからろ過液Fとして取り除かれた液量と同量の液体培地を当該培地槽60から培養槽20内に供給する。培地槽60は、例えば、ステンレスやアルミニウムなどの金属製、ポリプロピレンやポリスチレンなどのプラスチック製の他に、ガラス製などとすることができる。
【0044】
また、培地槽60は、圧力計P3の計測結果をもとに、圧力調整弁(図示せず)およびポンプ(図示せず)によって一定の圧力に保持されている。通常は外部からの雑菌などの侵入を防ぐため、圧力調整弁およびポンプによって培地槽60内はゲージ圧で0.01〜0.05MPaに加圧され、陽圧となっている。
【0045】
(ろ過貯槽)
本実施形態に係る培養装置100は、ろ過貯槽70を有しているのが好ましい。ろ過貯槽70は、第4の流路71およびこの第4の流路71上に設けられた弁V4を介して細胞分離装置1の容器2の下部にある排出口9と接続されている。ろ過貯槽70は、細胞分離装置1によって分離されたろ過液Fを一時的に収容する。ろ過貯槽70は、例えば、ステンレスやアルミニウムなどの金属製、ポリプロピレンやポリスチレンなどのプラスチック製の他に、ガラス製などとすることができる。
【0046】
また、ろ過貯槽70は、圧力計P4の計測結果をもとに、圧力調整弁(図示せず)およびポンプ(図示せず)によって一定の圧力に保持されている。通常は外部からの雑菌などの侵入を防ぐため、圧力調整弁およびポンプによってろ過貯槽70内はゲージ圧で0.01〜0.05MPaに加圧されている。
【0047】
(精製装置)
本実施形態に係る培養装置100は、精製装置80を有しているのが好ましい。精製装置80は、第5の流路81およびこの第5の流路81上に設けられた弁V5を介してろ過貯槽70と接続されている。精製装置80は、ろ過貯槽70から移送されてきたろ過液Fに含まれている、培養細胞によって産生された有用物質を精製する。
【0048】
精製装置80としては、例えば、アフィニティークロマトグラフ、高速液体クロマトグラフ、イオン交換クロマトグラフ、ゲルろ過クロマトグラフなどを用いることができる。なお、精製装置80はこれらの中から選択されたいずれか1種のみを使用することができるが、必要に応じて2種以上を併用することもできる。
【0049】
精製装置80で精製された有用物質は、任意の溶出液で溶出され、図示しない回収容器に回収される。また、精製装置80に用いた洗浄バッファーや平衡化バッファーは、図示しない廃棄容器に貯留され、所定の廃棄処理を行った後に廃棄される。なお、精製装置80は、内部の圧力を検出する圧力計P5を備えていてもよい。
【0050】
なお、前記した第3〜5の流路61、71、81および弁V3〜V5はいずれも細胞培養に一般的に用いられるものを使用することができる。例えば、前記したいずれの弁も開閉弁、ボール弁、クランプ弁、電磁弁、電動弁などとすることができる。また、第3〜5の流路上には、圧力の変動を和らげる緩衝槽(図示せず)を設けることもできる。
【0051】
〔細胞分離装置および培養装置の動作の一例〕
前記した本実施形態に係る細胞分離装置1およびこれを有する培養装置100の動作の一例について説明する。
これらの装置の動作の一例として、具体的には、(1)培養工程および培養液移送工程、(2)ろ過工程および培養液返送工程、(3)ろ過液移送工程およびフィルタ切替工程、(4)精製工程、(5)培地移送工程が挙げられる。なお、本実施形態に係る培養装置100は、前記(1)〜(5)の全ての工程を行い、細胞分離装置1は、前記(2)および(3)の工程を行う。
【0052】
(1)培養工程および培養液移送工程
はじめに、弁V1〜V5を閉状態としたまま、培養槽20で細胞を培養する(培養工程)。
培養開始から所定の日数が経過したら、または、培養液M中の培養細胞の濃度が所定値以上になったら、弁V3を閉状態とし、弁V2および弁V1を開状態とする。前記したように、培養槽20内は陽圧となっているので、その圧力により培養液Mが第1の流路40を介して細胞分離装置1に移送される(培養液移送工程)。このとき、必要に応じて培養槽20に設けられたポンプおよび圧力調整弁を駆動させて培養槽20内をさらに陽圧としたり、細胞分離装置1に設けられたダイアフラムポンプなどの圧力発生装置30を駆動させて細胞分離装置1内を陰圧にしたりすると、細胞分離装置1への培養液Mの移送を迅速に行うことができる。
【0053】
(2)ろ過工程および培養液返送工程
次いで、培養槽20上部の気相部に通気する前記したガス供給設備を駆動し、弁V1を開状態とし、細胞分離装置1に移送された培養液Mに対して圧力を印加して、第1の流路40内およびフィルタ3内の圧力を細胞分離装置1内の圧力より高い状態とする。このようにすると、培養液Mの溶液のみがフィルタ3を透過してろ過液Fとなり、培養細胞はフィルタ3を透過できずにフィルタ3内の培養液M中に残存することになる(ろ過工程)。なお、培養槽20上部の気相部に通気するガス供給設備を駆動する代わりに、圧力ポンプ10を用いてもよい。
このようにして所定の液量または所定の時間、培養液Mからろ過液Fと培養細胞とを分離した後、弁V3および弁V4を閉状態とし、弁V1および弁V2を開状態とする。そして、圧力発生装置30を駆動させてフィルタ3内の圧力を高め、フィルタ3内に残存する培養液Mを培養槽20に戻す(培養液返送工程)。なお、フィルタ3内に残存する培養液Mは、ろ過前と比較して、培養細胞の濃度が高くなっている。これを必要回数繰り返すことにより、培養槽20内の培養細胞を高濃度にすることができる。
【0054】
(3)ろ過液移送工程およびフィルタ切替工程
細胞分離装置1によってろ過されたろ過液Fは、細胞分離装置1内に一時的に貯留される。このろ過液Fには、培養細胞が産生した有用物質および培養細胞が生成した老廃物などが含まれている。
細胞分離装置1内に貯留されたろ過液Fが所定量になったら、弁V1および弁V2を閉状態とし、弁V4を開状態とする。そして、圧力発生装置30により細胞分離装置1内を陽圧としたり、ろ過貯槽70に設けたポンプおよび圧力調整弁を駆動させてろ過貯槽70内を陰圧としたりして、細胞分離装置1内のろ過液Fをろ過貯槽70内に移送する(ろ過液移送工程)。
【0055】
ここで、細胞分離装置1で培養細胞とろ過液Fとの分離を行っていると、フィルタ3が目詰まりし、ろ過をスムーズに行うことができなくなる。これは、例えば、細胞分離装置1に設けた圧力計P1で圧力変動をモニタリングすることによって把握できる。細胞分離装置1内の圧力が所定の値に達したら、切替機構4を作動させ、使用していない新しいフィルタ3に切り替える(フィルタ切替工程)。
図1および
図4に示す例では、切替機構4は、電気モータなどのアクチュエータ13により回転軸12を中心に一方の端部5および他方の端部7を軸まわりに回転させてフィルタ3を切り替える。
なお、新しいフィルタ3への切り替えは、所定の期間を経過したときに行うこととしてもよい。また、圧力計P1で圧力変動をモニタリングしてフィルタ3を切り替える態様と、所定の期間を経過した後にフィルタ3を切り替える態様とを併用することもできる。
【0056】
(4)精製工程
ろ過液Fをろ過貯槽70内に移送して所定量となったら、弁V4を閉状態とし、弁V5を開状態とする。そして、ろ過貯槽70に設けたポンプおよび圧力調整弁を駆動させてろ過貯槽70内を陽圧としたり、精製装置80に設けたポンプおよび圧力調整弁を駆動させて精製装置80内を陽圧としたりする。また、これと共に、目的とする有用物質を溶出することのできる溶出液を精製装置80内に通流させる。このようにすることによって、ろ過液Fに含まれている有用物質を精製する(精製工程)。
有用物質の精製が終了したら、精製装置80内を洗浄する洗浄バッファーや精製装置80を平衡化する平衡化バッファーを精製装置80内に通流させ、次回の精製工程に備える。
【0057】
(5)培地移送工程
また、このようにして細胞分離装置1により培養液Mからろ過液Fとして溶液が取り除かれると、培養槽20内の培養液Mの液面高さが低下する。そのため、本実施形態においては、前記した液面計24によってこれを検出すると、制御装置Cは、図示しないアクチュエータにより弁V3を開状態とし、弁V2を閉状態とする。そして、培地槽60に設けたポンプおよび圧力調整弁を駆動させて培地槽60内を陽圧とすると共に、培養槽20に設けた圧力調整弁を駆動させて、培地槽60から培養槽20に液体培地を移送する(培地移送工程)。
そして、液面計24によって、培養槽20内の培養液Mの液面が所定の高さになったことが検出されたら、制御装置Cは、図示しないアクチュエータにより弁V3を閉状態とする。また、これと共に、培地槽60に設けたポンプを停止して、培地槽60から培養槽20への液体培地の供給を停止する。
次いで、再び前記(1)に戻って同様の操作を繰り返す。
【0058】
これを複数回行った後、培養液M中の老廃物の濃度が高くなるなどして細胞培養を行うことができなくなったり、培養細胞の増殖率が低下したり、有用物質の産生効率が低下したりしたら、細胞培養を中止し、培養液Mを全てろ過して有用物質を精製する。
そして、常法により各槽、流路、弁などを洗浄または交換し、次回の細胞培養に備える
。
【0059】
このように、本実施形態に係る細胞分離装置1および培養装置100を用いて、前記した一連の操作を繰り返し行うと、フィルタ3が目詰まりする前に新しいフィルタ3に切り替えるので、培養液M中の培養細胞の濃度を高めつつ、ろ過液Fに含まれている有用物質を継続的かつ長期的に精製することができる。つまり、本実施形態に係る細胞分離装置1および培養装置100は、培養液M中の培養細胞と溶液とを分離する分離操作を長期間実施することができる。
【0060】
なお、有用物質によっては、細胞外に分泌されずに細胞内に分泌(内包)されるものがある。そのような場合は、本実施形態に係る細胞分離装置1および培養装置100を用いて培養細胞を高密度に含む培養液Mを得た後、遠心分離機(図示せず)などを用いて培養細胞を濃縮し、任意の手法により細胞膜などを破壊して有用物質を抽出すればよい。この場合であっても、本実施形態に係る細胞分離装置1および培養装置100は、培養細胞を培養する際に、培養液M中の培養細胞と溶液とを分離する分離操作を長期間実施することができる。
【0061】
次に、
図5から
図9を参照して、本実施形態に係る細胞分離装置および培養装置の切替機構の他の態様について説明する。ここで、
図5から
図9は、本実施形態に係る細胞分離装置および培養装置の切替機構の他の態様を説明する概略構成図である。
なお、前記した切替機構の一態様と、以下に説明する切替機構の他の態様とにおいて同じ構成要素については同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0062】
(切替機構の他の態様)
細胞分離装置1および培養装置100の切替機構4の他の態様として次のものが挙げられる。
例えば、
図5および
図3に示すように、切替機構4Aは、容器2内において、複数あるフィルタ3を、回転軸12を中心とした同一円周上に平行に配置する。
具体的には、容器2内において、一方の端部5および他方の端部7のそれぞれに近接させて円盤状の位置決め部材14、15が設けられている。これらの位置決め部材14、15の一方の面にはフィルタ3を位置決めして固定する取り付け穴部14a、15aが複数設けられている。また、取り付け穴部14a、15aは、回転軸12を中心とした同一円周上に設けられている。そして、取り付け穴部14a、15aは、これらが設けられている面を相対させ、且つ相対する取り付け穴部14a、15aの位置を合致させて、回転中心に配置される回転軸12に固定されている。
【0063】
なお、この態様の場合、一方の端部5および他方の端部7は、螺着などの任意の固定手段により、本体21との間で気密性をもって固定されている。また、位置決め部材14、15は、本体21の内壁との間で、軸まわりに回転が許容される程度の若干の隙間をもって設置されている。そして、本体21が図示しない支持部材により、施設の壁部または支柱に固定されている。さらに、回転軸12は、これを回転させるアクチュエータ13と接続されている。フィルタ3は、相対する位置決め部材14、15の取り付け穴部14a、15aに嵌め込まれて固定されている。
【0064】
このような構成としているので、切替機構4Aは、アクチュエータ13を駆動させて回転軸12と共に容器2内の位置決め部材14、15を回転させると、これに固定されているフィルタ3も回転軸12を中心とした同一円周上をB方向に回転することになる。
つまり、このような態様とすることにより、切替機構4Aは、回転軸12を中心にフィルタ3を回転させて、第1連通部6および第2連通部8に連通するフィルタ3を切り替えることができる。
【0065】
また、この態様のさらなる変形例として、切替機構4Bは、例えば、
図6に示すように、相対する回転板を水平面に対して垂直に設置することもできる。この場合、位置決め部材14、15が固定される回転軸12は水平面に対して並行に設置される(便宜上、この態様を「横向き」ということもある。)。フィルタ3として中空糸膜モジュール3aを用いた場合、位置決め部材14、15に固定された中空糸膜モジュール3aは、培養液Mの流路が水平面に対して並行となる。
【0066】
この変形例では、容器2の上方に切替機構4Bを横向きに設けているので、切替機構4Bは、回転軸12を中心に位置決め部材14、15を回転させると、これに固定されているフィルタ3も回転軸12を中心とした同一円周上をD方向に回転することになる。
つまり、このような態様とすることにより、切替機構4Bは、回転軸12を中心にフィルタ3を回転させて、第1連通部6および第2連通部8に連通するフィルタ3を切り替えることができる。
【0067】
なお、この変形例においては、好ましくは、回転するフィルタ3が最も低くなる位置で一方の端部5に第1連通部6を設けると共に、他方の端部7に第2連通部8を設ける。そして、この位置で第1連通部6、フィルタ3および第2連通部8を連通させてろ過を行うと、フィルタ3でろ過されたろ過液Fを新しいフィルタ3e(
図6において図示せず)に接触させることなく容器2の下方に流下させることができる。従って、この態様の場合、カバー3fを設けることを要しない。
【0068】
この変形例における容器2は任意の形状とすることができる。例えば、一方の端部5が配置される一方の面27の形状、および他方の端部7の配置される他方の面28の形状を共に、卵形、長円形、楕円形などのオーバル形状とすることが挙げられる。また、この場合において、一方の面27の面積を小さくし、他方の面28の面積を大きくしてもよい。そして、これらを周壁29で密閉すると、
図6に示すように、容器2は、一方の面27から他方の面28に向かうにつれて容器2の底部が低くなる。従って、容器2の底部が最も低くなる他方の面28の近傍に排出口9を設けると、ろ過液Fを細胞分離装置1外に排出し易くなるので好ましい。
【0069】
(切替機構の他の態様)
細胞分離装置1および培養装置100の切替機構4の他の態様として次のものが挙げられる。
例えば、
図7に示すように、切替機構4Cは、容器2内において、複数あるフィルタ3を一直線上に並行に配置する。
具体的には、容器2内において、一方の端部5および他方の端部6のそれぞれに近接させて矩形状の固定板14c、15cが設けられている。固定板14c、15cは、前記した位置決め部材14、15と同様、一方の面にフィルタ3を位置決めして固定する取り付け穴部14a、15aが複数設けられている。そして、固定板14c、15cは、相対する取り付け穴部14a、15aの位置を合致させて固定部材16、16で固定されている。このようにすると、切替機構4Cの強度が向上するので好ましい。なお、固定部材16、16による位置決め部材14、15の固定は、この態様に限らず他の態様でも行うことができる。
【0070】
固定板14c、15cは、これを移動させる移動手段(図示せず)と接続されている。移動手段としては、例えば、電動モータに接続されたラック・アンド・ピニオン構造やエアシリンダを挙げることができる。従って、移動手段を駆動させて固定板14c、15cを一直線上に移動させると、これに固定されているフィルタ3も一直線上に移動することになる。
つまり、このような態様とすることにより、切替機構4Cは、移動手段により一直線上に並行に配置されたフィルタ3を一直線上にE方向に移動させて、第1連通部6および第2連通部8に連通するフィルタ3を切り替えることができる。
【0071】
また、この態様のさらなる変形例として、切替機構4Dは、例えば、
図8に示すように、相対する固定板14D、15Dを水平面に対して垂直に設置することもできる。フィルタ3として中空糸膜モジュール3aを用いた場合、固定板14D、15Dに固定された中空糸膜モジュール3aは、培養液M(
図8において図示せず)の流路が水平面に対して平行となる。すなわち、切替機構4Dが横向きとなる。
つまり、このような態様とすることにより、切替機構4Dは、移動手段により一直線上に並行に配置されたフィルタ3を一直線上にG方向に移動させて、第1連通部6および第2連通部8に連通するフィルタ3を切り替えることができる。
この態様においては、前記したように、複数あるフィルタ3を一直線上に並行に配置しているので、第1連通部6、フィルタ3および第2連通部8を連通させてろ過を行うと、フィルタ3でろ過されたろ過液Fを新しいフィルタ3e(
図8において図示せず)に接触させることなく容器2の下方に流下させることができる。従って、この態様の場合もカバー3fを設けることを要しない。また、固定板14Dと固定板15Dを図示しない固定部材で連結して固定してもよい。このようにすると、切替機構4Dの強度が向上するので好ましい。
【0072】
この変形例における容器2は任意の形状とすることができる。例えば、
図8に示すように、一方の端部5が配置される一方の面27の形状、および他方の端部7の配置される他方の面28の形状を共に六角形とすることが挙げられる。前記したように、例えば、一方の面27の面積を小さくし、他方の面28の面積を大きくしてもよい。そして、これらを周壁29で密閉すると、
図8に示すように、容器2は、一方の面27から他方の面28に向かうにつれて容器2の底部29aが低くなる。従って、容器2の底部29aが最も低くなる他方の面28の近傍に排出口9を設けると、ろ過液Fを細胞分離装置1外に排出し易くなるので好ましい。
【0073】
(切替機構の他の態様)
細胞分離装置1および培養装置100の切替機構の他の態様として次のものが挙げられる。
例えば、
図9に示すように、切替機構4Eは、容器2内に複数のフィルタ3と、これと同数の第1連通部6および第2連通部8と、を有している。そして、容器2内のフィルタ3の全てが一組の第1連通部6および第2連通部8と接続されている。
さらに、第1の切替弁4E1が、第1連通部6と接続された第1の流路40、または第1連通部6に設けられている。また、第2の切替弁4E2が、第2連通部8と接続された第2の流路50、または第2連通部8に設けられている。なお、
図9においては、第1の切替弁4E1は第1の流路40に設けられており、第2の切替弁4E2は第2の流路50に設けられている様子を示している。前記したように、第1の切替弁4E1は第1連通部6に設けられていてもよいし、第2の切替弁4E2は第2連通部8に設けられていてもよい(いずれも図示せず)。
【0074】
第1の切替弁4E1および第2の切替弁4E2は、これらを動作させる電気モータやエアポンプなどのアクチュエータ(図示せず)と接続されている。そして、アクチュエータを駆動させてフィルタ3ごとに一組の第1の切替弁4E1および第2の切替弁4E2を同期的に作動させ、第1連通部6および第2連通部8に連通するフィルタ3を切り替える。
つまり、ろ過を行うフィルタ3のみ第1の切替弁4E1および第2の切替弁4E2を同期的に作動させて開状態とし、ろ過を行っていないフィルタ3は第1の切替弁4E1および第2の切替弁4E2を同期的に作動させて閉状態とする。このようにすることで、ろ過を行っているフィルタ3のみ第1の切替弁4E1および第2の切替弁4E2と連通し、培養液Mのろ過を行うことができる。なお、ろ過を行っていないフィルタ3とは、新しいフ
ィルタ3e、およびろ過に使用され、切替機構4Eによって切り替えられたフィルタ3(使用済みのフィルタ3)をいう。
【0075】
そして、ろ過を行っているフィルタ3が目詰まりし、培養液Mのろ過が困難になったら、ろ過が困難になったフィルタ3と接続されている第1の切替弁4E1および第2の切替弁4E2を同期的に作動させて閉状態とし、新しいフィルタ3eの第1の切替弁4E1および第2の切替弁4E2を同期的に作動させて開状態とする。このようにすると、新しいフィルタ3eと第1の切替弁4E1および第2の切替弁4E2とが連通し、当該新しいフィルタ3eで培養液Mのろ過を行うことができる。
【0076】
以上、本発明に係る細胞分離装置および培養装置について実施形態により詳細に説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、それぞれの実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。