特許第6705745号(P6705745)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6705745APEを含まない界面活性剤組成物及び織物用途におけるその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705745
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】APEを含まない界面活性剤組成物及び織物用途におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   C11D 1/83 20060101AFI20200525BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20200525BHJP
   C11D 1/722 20060101ALI20200525BHJP
   C11D 3/04 20060101ALI20200525BHJP
   C11D 3/395 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   C11D1/83
   C11D1/29
   C11D1/722
   C11D3/04
   C11D3/395
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-536187(P2016-536187)
(86)(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公表番号】特表2017-501257(P2017-501257A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】CN2013089063
(87)【国際公開番号】WO2015085509
(87)【国際公開日】20150618
【審査請求日】2016年11月28日
【審判番号】不服2018-16111(P2018-16111/J1)
【審判請求日】2018年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(72)【発明者】
【氏名】チェン・シェン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ジ
(72)【発明者】
【氏名】ジャンハイ・ムー
(72)【発明者】
【氏名】シァオホワ・ワン
【合議体】
【審判長】 蔵野 雅昭
【審判官】 木村 敏康
【審判官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−47655(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/83
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワックスまたは油を織物材料から除去する方法であって、
式Iのアルキルアルコキシレート硫酸塩と、
1O−(CH2CH(R2)−O)x−(CH2CH2O)y−SO3M (I)
式IIの非イオン性アルキルアルコキシレートと、
1O−(CH2CH(R2)−O)x−(CH2CH2O)y−H (II)
水と、を含む組成物を前記織物材料と接触させることを含み、
式中、R1、分8アルキルであり、
2が、CH3またはCH3CH2であり、
xが1〜11の実数であり、
yが1〜20の実数であり、
Mがアルカリ金属またはNH4であり、
式I及び式II中のR1、R2、x、及びyが同じであっても異なってもよく、前記組成物が水酸化ナトリウム及び過酸化水素を含む、前記方法。
【請求項2】
前記式Iの陰イオン性アルコキシレート、前記式IIの非イオン性アルキルアルコキシレート、前記水、前記水酸化ナトリウム、及び前記過酸化水素の総重量に基づいて、前記式Iのアルキルアルコキシレート硫酸塩の量が20〜70重量%であり、前記式IIの非イオン性アルキルアルコキシレートの量が0.1〜30重量%であり、水の量が25〜75重量%であり、前記水酸化ナトリウムの量が0重量%超〜5重量%であり、前記過酸化水素の量が0重量%超〜5重量%である、請求項に記載の前記方法。
【請求項3】
式I及び式II中のR12−エチルヘキシルである、請求項1または2に記載の前記方法。
【請求項4】
式I及び式II中のyが、独立して、1〜11である、請求項1〜のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項5】
式I及び式II中のxが、独立して、4〜6である、請求項1〜のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項6】
式I中のxが5である、請求項1〜のいずれか1項に記載の前記方法。
【請求項7】
式I中のyが3である、請求項1〜のいずれか1項に記載の前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルフェノールエトキシレート(APE)を含まない界面活性剤組成物を使用する、織物材料の精練方法に関する。本界面活性剤組成物は、下に記載される化学構造のアルキルアルコキシレート硫酸塩を含む。
【背景技術】
【0002】
環境影響に対する意識の高まりと共に、環境配慮型の界面活性剤または界面活性剤組成物が、異なる用途、例えば精練用途において広く使用されるようになっている。精練は、ペクチン、鉱物油、動物油、及び植物油等のワックス及び油を、天然または人工繊維の網目を含む生地、織り糸、または任意の他の織物材料等の織物材料から除去するために使用される。精練は、通常、羊の羊毛または製造工場からの人工繊維等の原材料に対して行われる。例えば、綿布等のある特定の織物材料は、完全に洗浄した後でなければそれらを染色することはできない。C12アルコールエトキシサルフェート及び第二級アルカンスルホネート等の他の市販の界面活性剤組成物が、織物材料を精練するために使用され得る。しかしながら、C12アルコールエトキシサルフェートは、貧弱な湿潤及び高発泡を提示し、第二級アルカンスルホネートのある特定の水溶液は、高いpHにおいて濁り、低い溶解性を示す。したがって、アルカリ性水溶液中でより良好な発泡及び湿潤特性を提示し(精練は通常アルカリ性条件下で行われる)、したがって現行の組成物よりも良好な精練性能を提示する、環境に優しい界面活性剤組成物に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0003】
一態様において、ワックスまたは油を織物材料から除去する方法が提供される。本方法は、
式Iのアルキルアルコキシレート硫酸塩と、
O−(CHCH(R)−O)−(CHCHO)−SOM (I)
式IIの非イオン性アルキルアルコキシレートと、
O−(CHCH(R)−O)−(CHCHO)−H (II)
水と、を含む組成物を織物材料と接触させることを含み、
式中、Rが、直鎖状または分岐C−C10アルキルであり、
が、CHまたはCHCHであり、
xが1〜11の実数であり、
yが1〜20の実数であり、
Mがアルカリ金属またはNHであり、
式I及び式II中のR、R、x、及びyが同じであっても異なってもよい。
【0004】
本組成物はまた、水酸化ナトリウム及び/または過酸化水素を含んでもよい。式Iの陰イオン性アルキルアルコキシレート硫酸塩、式IIの非イオン性アルキルアルコキシレート、水、水酸化ナトリウム、及び過酸化水素の総重量に基づいて、式Iのアルキルアルコキシレート硫酸塩の量は20〜70重量%であり得、式IIの非イオン性アルキルアルコキシレートの量は0.1〜30重量%であり得、水の量は25〜75重量%であり得、水酸化ナトリウムの量は0〜5重量%であり得、過酸化水素の量は0〜5重量%であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0005】
上述されるように、精練は、ペクチン、鉱物油、動物油、及び植物油等のワックス及び油を、天然または人工繊維の網目を含む生地、織り糸、または任意の他の織物材料等の織物材料から除去するために使用される。精練は、織物処理において、生地の前処理に使用される。界面活性剤は、ワックス及び油を織物材料から除去するために、精練剤として使用される。良好な精練性能(すなわち、ワックス及び油の効果的な除去)を得るために、界面活性剤組成物は、第二級アルカンスルホネート等の市販の界面活性剤に匹敵する、またはそれよりも良好な湿潤/乳化/分散性能、表面張力、発泡特性(泡高及び気泡の破裂)、ならびにアルカリ性溶液中における安定性を有さねばならない。これらの特性が、界面活性剤の織物材料への浸透、ワックスまたは油の包囲、及びそれらの除去を可能にする。
【0006】
本発明の界面活性剤組成物はそのような特性を有し、これにより本組成物を良好な湿潤/乳化剤とし、したがって良好な精練剤とする。湿潤/乳化による精練中、ワックスまたは油は水中に懸濁され得、それの除去を可能にする。本発明の界面活性剤組成物はまた、環境に優しい。
【0007】
本開示は、そのような織物材料を、その材料と界面活性剤組成物とを接触させることにより精練するための方法を提供する。本組成物は、アルキルアルコキシレート硫酸塩、非イオン性アルキルアルコキシレート、及び水を含み得る。本組成物は更に、水酸化ナトリウム及び/または過酸化水素を含んでもよい。過酸化水素は、更なる白化のために使用され得る。
【0008】
別途指示の無い限り、数値範囲、例えば「2〜10」は、その範囲を画定する数値(例えば、2及び10)に対して包括的である。
【0009】
別途指示の無い限り、比、百分率、部等は重量による。
【0010】
上述されるように、本発明は、式Iのアルキルアルコキシレート硫酸塩を含む界面活性剤組成物を使用する、織物材料を精練するための方法を提供する。本界面活性剤組成物は、良好な表面張力の低減、低い泡高及び迅速な気泡の破裂、急速な湿潤、ならびにカルシウムイオン安定性のうちの1つ以上を含む、いくつかの有用な特性を提示する。これらの有利な特性は、本界面活性剤組成物を、織物材料のための精練剤として好適にする。
【0011】
本発明者らは、アルキルアルコキシレート硫酸塩界面活性剤が、非イオン性アルキルアルコキシレート界面活性剤と組み合わされたとき、精練中に相乗効果を提示することを発見した。したがって、非イオン性アルキルアルコキシレート界面活性剤と組み合わされたアルキルアルコキシレート硫酸塩界面活性剤は、アルキルアルコキシレート硫酸塩界面活性剤単独よりも良好な精練性能を提示する。
【0012】
本アルキルアルコキシレート硫酸塩は、以下の式Iのものであり、
O−(CHCH(R)−O)−(CHCHO)−SOM (I)
式中、Rが、直鎖状または分岐C−C10アルキルであり、Rが、CHまたはCHCHであり、xが1〜11の実数であり、yが1〜20の実数であり、Mがアルカリ金属またはNHである。
【0013】
式IのRは、直鎖状または分岐C−C10アルキルであるか、あるいは直鎖状または分岐C−C10アルキルであり、好ましくは直鎖状または分岐Cアルキルであり得る。Rは、2−エチルヘキシル(CHCHCHCHCH(CHCH)CH−)である。Rは、2−プロピルヘプチル(CHCHCHCHCHCH(CHCHCH)CH−)であり得る。
【0014】
式IのRは、望ましくは、CH及びCHCHから選択される。
式Iのxは4〜6であり、好ましくは5である。
式Iのyは1〜11であるか、あるいは3〜11であり、好ましくは3である。
式IのMはナトリウム、カリウム、またはアンモニウムである。Mは、好ましくは、ナトリウムまたはアンモニウムである。
【0015】
式Iのアルキルアルコキシレート硫酸塩に加えて、本界面活性剤組成物はまた、式IIの非イオン性アルキルアルコキシレートを含むことが好ましい。
O−(CHCH(R)−O)−(CHCHO)−H (II)
式中、Rが、直鎖状または分岐C−C10アルキルであり、Rが、CHまたはCHCHであり、xが1〜11の実数であり、yが1〜20の実数である。
【0016】
式IIのRは、直鎖状または分岐C−C10アルキルであるか、あるいは直鎖状または分岐C−C10アルキルである。Rは、望ましくは、2−エチルヘキシル(CHCHCHCHCH(CHCH)CH−)または2−プロピルヘプチル(CHCHCHCHCHCH(CHCHCH)CH−)から選択される。
【0017】
式IIのRは、望ましくは、CH及びCHCHから選択される。
式IIのxは4〜6である。
式IIのyは1〜11であるか、あるいは3〜11である。
【0018】
式IIの非イオン性アルキルアルコキシレートが本界面活性剤組成物中に存在するとき、式I及び式II中の基R、R、x、及びyが同じであっても異なってもよい。式I及び式II中の基R、R、x、及びyは同じであり得る。
【0019】
本発明の界面活性剤組成物は、式Iのアルキルアルコキシレート硫酸塩及び式IIの非イオン性アルキルアルコキシレートを含み得、式Iのアルキルアルコキシレート硫酸塩の、式IIの非イオン性アルキルアルコキシレートに対する重量比は、99:1〜10:90、95:5〜50:50、または90:10〜70:30である。
【0020】
本発明の界面活性剤組成物は更に、水を含んでもよい。
【0021】
本発明の界面活性剤組成物は、式Iのアルキルアルコキシレート硫酸塩、式IIの非イオン性アルキルアルコキシレート、及び水を含み得る。式Iのアルキルアルコキシレート硫酸塩、式IIの非イオン性アルキルアルコキシレート、及び水の総重量に基づいて、式Iのアルキルアルコキシレート硫酸塩の量は20〜70重量%、好ましくは30〜60重量%であり得、式IIのアルコキシレートの量は0.1〜30重量%、好ましくは0.1〜10重量%であり得、水の量は25〜75重量%、好ましくは40〜70重量%であり得る。
【0022】
本発明の界面活性剤組成物は、他の界面活性剤/乳化剤等の追加的な添加剤を含んでもよい。本発明の界面活性剤組成物は更に、式III:RO−(AO)−H(III)の非イオン性界面活性剤を含んでもよく、Rは直鎖状または分岐C−C24アルキルであり、各出現においてAOはエチレンオキシ、プロピレンオキシ、ブチレンオキシ、またはそれらのランダムもしくはブロック混合物であり、zは1〜50である。好ましくは、本界面活性剤組成物は、陽イオン性界面活性剤を含まない。
【0023】
本発明の界面活性剤組成物は、市販の界面活性剤と類似するかあるいはそれよりも良好な、良好な表面張力の低減、低い泡高及び迅速な気泡の破裂、ならびに急速な湿潤等の特性を提示し、また本界面活性剤組成物は、良好なCa2+安定性を含む、配合安定性特性を提供する。Ca2+安定性は、硬水中に存在する二価電解質の許容量として理解され得る。
【0024】
上述される式IIの非イオン性アルキルアルコキシレートは、商業的販売業者から購入してもよく、またはそれらは、文献技術を使用して当業者によって調製されてもよい(例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開番号第2011/0098492号を参照されたい)。典型的な手順においては、好適なアルコールまたは脂肪酸を、アルキレンオキシド化合物でアルコキシル化する。アルコキシル化処理は、例えば、酸性触媒またはアルカリ触媒の存在下で、または金属シアン化物触媒を使用することで実行され得る。アルカリ触媒としては、例えば、NaOH、KOH、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、及びカリウムエトキシドを含む、ナトリウムまたはカリウムの、水酸化物またはアルコラートが挙げられ得る。塩基触媒は通常、出発材料に基づいて、0.05重量パーセント〜約5重量パーセント、好ましくは約0.1重量パーセント〜約1重量パーセントの濃度で使用される。
【0025】
アルキレンオキシドの添加は、例えば、オートクレーブ内で、約10psig(6.9×10パスカル)〜約200psig(1.4×10パスカル)、好ましくは約60psig(4.1×10パスカル)〜約100psig(6.9×10パスカル)の圧力下で実行され得る。アルコキシル化の温度は、約30℃〜約200℃、好ましくは約100℃〜約160℃の範囲であり得る。酸化物供給の完了後、生成物は、典型的には残留酸化物が最終生成物に対して約10未満の百万分率(ppm)になるまで反応させられる。反応器を約20℃〜130℃の範囲の適切な温度まで冷却した後、残留触媒は、中和されないままで残されてもよく、あるいは酢酸、プロピオン酸、またはクエン酸等の有機酸で中和されてもよい。あるいは、生成物は、リン酸または二酸化炭素等の無機酸で中和されてもよい。残留触媒はまた、珪藻土等のイオン交換または吸着媒体を使用して除去してもよい。
【0026】
式Iのアルキルアルコキシレート硫酸塩は、式IIの非イオン性アルキルアルコキシレートの硫酸化で調製してもよい。例えば、三酸化硫黄を介するChemithon(登録商標)硫酸化処理は、当業者に周知の硫黄化処理である。典型的には、予熱した非イオン性アルキルアルコキシレート(40℃)を空気で希釈した三酸化硫黄と連続薄膜反応器内でまず接触させ、迅速かつ発熱性の反応を結果として生じる。粗硫酸エステル酸を、約55℃で収集し得る。硫酸エステル酸を硫酸塩へと転換するためのNaOHまたはNHOHによる迅速な中和は、暗色形成を回避するため、及び不純物の形成を低減するために有利である。SOの非イオン性アルキルアルコキシレートに対するモル比の正確な制御が、高品質のアルキルアルコキシレート硫酸塩を生成するために好ましい。
【実施例】
【0027】
本実施例において使用される材料は以下を含む。
「アルキルアルコキシレート硫酸塩」は、2−エチルヘキシル−O−(CHCH(CH)−O)5.5−(CHCHO)−SONaを意味する。
【0028】
「非イオン性アルキルアルコキシレート」は、2−エチルヘキシル−O−(CHCH(CH)−O)5.5−(CHCHO)−Hを意味する。
【0029】
1.界面活性剤特性の比較
本発明において使用される組成物の精練性能を評価するために、市販される界面活性剤、C12アルコールエトキシサルフェート及びC10−14第二級アルカンスルホネートで比較研究を実行する。
【0030】
【表1】
【0031】
表1に示されるように、アルキルアルコキシレート硫酸塩は、C12アルコールエトキシサルフェート及びC10−14第二級アルカンスルホネートよりも良好な界面活性剤特性を有する。例えば、それは、C12アルコールエトキシサルフェートよりも低い表面張力、及びC10−14第二級アルカンスルホネートよりも良好なCa2+に対する抵抗性を有する。加えて、その溶液は、C10−14第二級アルカンスルホネートよりも高いアルカリ濃度において透明なままである(すなわち、可溶性である)。アルキルアルコキシレート硫酸塩はまた、比較界面活性剤が気泡破裂特性をほぼ有さないのに対し、低い発泡及び迅速な破裂という気泡特性も有する。
【0032】
2.アルカリ溶液の湿潤性能の評価
アルキルアルコキシレート硫酸塩、C12アルコールエトキシサルフェート、C10−14第二級アルカンスルホネート(全て、非イオン性アルキルアルコキシレートとブレンドされる)の湿潤性能の比較評価を、アルカリ性水溶液においてドレーブス湿潤試験に従って実行する。
【0033】
アルカリ溶液におけるドレーブス湿潤試験
1.1リットルのNaOH水溶液を、2重量%、5重量%、及び8重量%の濃度で調製し、次いで、界面活性剤を活性含量の0.1重量%でNaOH水溶液に添加する。
2.均一な円形の大きさ(直径25mm)をもつ市販のカンバス(織物材料)を、界面活性剤水溶液中に置く。
3.湿潤時間及び浸透時間を記録する。
【0034】
試験を12回繰り返し(最長及び最短データを削除するため)、平均湿潤時間を計算する。湿潤性能の比較結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
表2に示されるように、NaOHの濃度が8重量%まで増加するとき、10%の非イオン性アルキルアルコキシレートとブレンドされる場合、アルキルアルコキシレート硫酸塩は、C10−14第二級アルカンスルホネートと類似する湿潤性能を示す。
【0037】
3.精練性能の評価
表3の配合物の精練性能を評価する。
【0038】
精練試験方法
1.精練における配合物:H、NaOH、界面活性剤。
2.精練条件:98〜100℃で40分間。
3.精練後の水でのすすぎ(90℃/60℃/40℃/室温)。
4.乾燥:120℃で2分間、その後は設定器による。
5.布についての白色度試験が、精練前及び精練後に必要とされる。
6.布:編地。
7.布サイズ:長さ(20〜30cm)、幅(〜5cm)。
【0039】
毛細管効果測定
洗浄した布を20〜30cmの範囲の長さ及び幅約5cmの3つの小片の大きさにし、この布片を、脱イオン水に約1cmの深さで浸して吊るす。5分後、湿潤高さを記録する。精練配合物(グラム単位)を表3に示し、精練結果を表4に示す。
【0040】
【表3】
【0041】
【表4】
【0042】
【表5】
【0043】
表4に示されるように、アルキルアルコキシレート硫酸塩の白色度は、非イオン性アルキルアルコキシレートの存在下で向上する。2つの比較界面活性剤の白色度値は、非イオン性アルキルアルコキシレートの添加後も同一のままである。
【0044】
表5に示される毛細管効果については、アルキルアルコキシレート硫酸塩及びC12アルコールエトキシサルフェートの両方が、10〜20重量%の非イオン性アルキルアルコキシレートの添加後に、毛細管効果性能において改善を示す。非イオン性アルキルアルコキシレートの存在下において、C10−14第二級アルカンスルホネートの毛細管効果の増加は存在しない。したがって、アルキルアルコキシレート硫酸塩の湿潤性能は、非イオン性アルキルアルコキシレートの存在下、及びアルカリ濃度(NaOH)の増加に伴って向上する。
【0045】
精練性能評価においては、非イオン性アルキルアルコキシレートとのブレンドは、アルキルアルコキシレート硫酸塩が、白色度の向上において、C10−14第二級アルカンスルホネートと類似の性能、及びC12アルコールエトキシサルフェートよりも良好な性能を達成するのに役立ち、その一方で、非イオン性アルキルアルコキシレートがC10−14第二級アルカンスルホネートに添加されるとき、相乗効果は何ら観察されない。
【0046】
上の本発明の記載は、本開示の趣旨及び範囲内で修正することができる。本出願はしたがって、本明細書に開示される一般原則を用いる、本発明の任意の変形、使用、または適合を網羅することが意図される。更に、本出願は、本発明が関する技術分野における既知のまたは慣例的な実践の内に入り、かつ以下の特許請求の範囲の制限内に包含されるもの等の、本開示からの発展を網羅することが意図される。加えて、全ての範囲の変数は、物理的に可能である場合、全ての範囲の任意の他の変数と組み合わせることが可能であると予期される。
本開示は以下の態様も包含する。
[1] ワックスまたは油を織物材料から除去する方法であって、
式Iのアルキルアルコキシレート硫酸塩と、
O−(CHCH(R)−O)−(CHCHO)−SOM (I)
式IIの非イオン性アルキルアルコキシレートと、
O−(CHCH(R)−O)−(CHCHO)−H (II)
水と、を含む組成物を前記織物材料と接触させることを含み、
式中、Rが、直鎖状または分岐C〜C10アルキルであり、
が、CHまたはCHCHであり、
xが1〜11の実数であり、
yが1〜20の実数であり、
Mがアルカリ金属またはNHであり、
式I及び式II中のR、R、x、及びyが同じであっても異なってもよい、前記方法。
[2] 前記組成物が、水酸化ナトリウムを更に含む、上記態様1に記載の前記方法。
[3] 前記組成物が、過酸化水素を更に含む、上記態様1または上記態様2に記載の前記方法。
[4] 前記式Iの陰イオン性アルコキシレート、前記式IIの非イオン性アルキルアルコキシレート、前記水、前記水酸化ナトリウム、及び前記過酸化水素の総重量に基づいて、前記式Iのアルキルアルコキシレート硫酸塩の量が20〜70重量%であり、前記式IIの非イオン性アルキルアルコキシレートの量が0.1〜30重量%であり、水の量が25〜75重量%であり、前記水酸化ナトリウムの量が0〜5重量%であり、前記過酸化水素の量が0〜5重量%である、上記態様1〜3のいずれか1項に記載の前記方法。
[5] 式I及び式II中のRが、独立して、直鎖状または分岐C〜C10アルキルである、上記態様1〜4のいずれか1項に記載の前記方法。
[6] 式I中のRが、直鎖状または分岐Cアルキルである、上記態様1〜5のいずれか1項に記載の前記方法。
[7] 式I及び式II中のRが、独立して、2−エチルヘキシルまたは2−プロピルヘプチルである、上記態様1〜4のいずれか1項に記載の前記方法。
[8] 式I及び式II中のyが、独立して、1〜11である、上記態様1〜7のいずれか1項に記載の前記方法。
[9] 式I及び式II中のxが、独立して、4〜6である、上記態様1〜8のいずれか1項に記載の前記方法。
[10] 式I中のxが5である、上記態様1〜9のいずれか1項に記載の前記方法。
[11] 式I中のyが3である、上記態様1〜10のいずれか1項に記載の前記方法。