(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アミノ酸配列TCRASSFYPR(配列番号:189)を含むヒトMHCクラスIポリペプチド・リレイティッド・シークエンスA(MICA)のエピトープに結合する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の抗体または抗原結合断片。
【発明を実施するための形態】
【0047】
本開示は、ある疾病において重要な治療標的に対する抗体が、前記疾病に曝されたヒト対象から目的とする抗原の四量体形でB細胞を標識化することで得ることができるという観測結果に、部分的に、基づく。上のバックグラウンドのセクションで記載したように、以前の方法では、少なくともヒト対象にて適切なB細胞を特定する効率が悪い点で、および/または、捕捉したB細胞が誘導されて表現型変化を受け、それらの有用性を低下させるために制限される。対照に、特定の疾病関連の抗原に対する希少な記憶B細胞の捕捉を可能にする方法を本文中に記載する。下記するように、本方法は疾病関連の抗原の四量体化を必要とし、当該プロセスは、下記の実施例で実際に示されるように、適切な記憶B細胞の特定を向上させる。具体的には、本明細書中の方法は、対象の抗原への最初の曝露後の増加された期間、適切な記憶B細胞のより効率的な捕捉を可能にする。また、本明細書中の方法は、本明細書中で開示される方法を用いて捕捉した記憶B細胞から得られる遺伝物質を用いて創出された抗体(および、該抗体の配列から創出されたペプチド)を含む。
【0048】
MHCクラスIポリペプチド・リレイティッド・シークエンスA(MICA)に対するヒト抗体が、本明細書中で記載される。MICAに対するこれらのヒト抗体は、細胞ベースの癌ワクチン(GM−CSFを形質導入した自家腫瘍細胞)を受けた患者から、四量体抗原の使用を伴う方法によって特定された。
【0049】
いくつかの例において、本開示は、選抜したヒト対象から治療上の潜在力を有する抗体を特異的に取得または標的化する方法、およびその結果得られる治療用組成物を提供する。これらの方法は、ヒト対象における免疫細胞を取得または標的化すること(ここで、免疫細胞は限定するものではないが、例えばB細胞および/または記憶B細胞を含む)、取得または標的化した免疫細胞から遺伝物質(例えばDNAおよび/またはmRNA)を単離または精製すること、および単離または精製した遺伝物質を治療用組成物、例えば本明細書に開示する治療用組成物を製造するために使用することを含んでよい。前記方法のさらなる詳細は、以下に記載の表題“方法”の項で記載する。
【0050】
いくつかの例において、本開示は、健康状態または疾患を有した若しくは有し、前記健康状態または疾患に対して陽性の免疫応答を示した対象に存在する抗体に関連する治療用組成物(例えば、治療用ペプチドを含み、抗体、抗体断片、抗体誘導体、および/または抗体コンジュゲートを含む)を提供する。
【0051】
治療用組成物
いくつかの例において、本明細書中の治療用組成物は疾病または状態に関連した結合パートナー(例えば、免疫原、抗原および/またはエピトープ)と相互作用(例えば、結合、特異的に結合および/または免疫特異的に結合)することができ、ここで、治療用組成物と結合パートナーとの間の相互作用は、前記状態または疾病に対して前向きな免疫応答(例えば、対象における疾病またはその症状のレベルでの減少)という結果になる。
【0052】
いくつかの例において、治療用組成物は可変重鎖(V
H)の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5および/または6つ)の相補性決定領域(CDR)および/または表1に示す抗体ID1、6、7、8、911または12の可変軽鎖(V
L)を含む(例えば、含む、本質的に含む又はから成る)ペプチドを含んでもよい。
【0053】
いくつかの例において、治療用組成物は、表1に示される抗体ID1、6、7、8、9、11または12の可変重鎖(V
H)および/または可変軽鎖(V
L)の少なくとも1つ(例えば、1、2、3、4、5および/または6つ)の相補性決定領域(CDR)を含有し(例えば、含み、本質的に含み又はから成り)、かつ、MHCクラスIポリペプチド・リレイティッド・シークエンスA(MICA(例えば、UniGene Hs.130838))(例えば、可溶性のMICA(sMICA))、例えばそのエピトープと相互作用する(例えば、結合する、特異的に結合する、および/または免疫特異的に結合する)ペプチドを含んでもよい。
【0054】
いくつかの例において、治療用組成物は、表1に示される抗体ID1、6、7、8、9、11または12のV
Hおよび/またはV
Lの少なくとも1つのCDRを含むペプチドを含んでいてよく、ここで、前記ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性MICA(sMICA)))に結合する(例えば、特異的に結合するおよび/または免疫特異的に結合する)。いくつかの例において、ペプチドは、少なくとも2つのCDRを含んでいてよく、ここで、前記少なくとも2つのCDRは異なる抗体について表1で示されたCDRである。換言すれば、抗体ID1、6、7、8、9、11または12に関して表1で示されたCDR(および、FRおよび/またはAA配列)は相互に交換可能であり、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性のMICA(sMICA)))に結合する(例えば、特異的に結合するおよび/または免疫特異的に結合する)限り、それらを組み合わせてペプチドを創出してもよい。いくつかの例に、そのようなペプチドは、表1に示される抗体ID1、6、7、8、9、11または12のV
Hおよび/またはV
LのCDR3を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される抗体ID1、6、7、8、9および/または11のV
HおよびV
LのCDR3と、抗体ID1、6、7、8、9、11または12のV
Hおよび/またはV
LのCDR1および/またはCDR2とを含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、抗体ID1、6、7、8、9、11または12のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される、抗体ID1、6、7、8、9、11または12のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID1、6、7、8、9、11または12のV
Hおよび/またはV
LのFR1、FR2、FR3および/またはFR4の少なくとも1つとを含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、配列番号:2、77、96、113、131、150または168の1つ、および/または配列番号:11、79、98、115、133、152または170の1つを含む。各々の例に、ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性のMICA(sMICA)))と結合する(例えば、特異的に結合する、および/または免疫特異的に結合する)ことができる。いくつかの例において、ペプチドとMICAとの間の結合親和性は、約0.1nM〜1μMの間、例えば約10nMであってよい。
【0055】
いくつかの例において、治療用組成物は、表1に示される抗体ID1のV
Hおよび/またはV
Lの少なくとも1つのCDRを含むペプチドを含んでよく、ここで、前記ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性のMICA(sMICA)))と結合する(例えば、特異的に結合する、および/または免疫特異的に結合する)。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される抗体ID1のV
Hおよび/またはV
LのCDR3を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される抗体ID1のV
HおよびV
LのCDR3と、抗体ID1のV
Hおよび/またはV
LのCDR1および/またはCDR2とを含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、抗体ID1のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される、抗体ID1のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID1のV
Hおよび/またはV
LのFR1、FR2、FR3および/またはFR4の少なくとも1つとを含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、配列番号:2および/または配列番号:11を含む。各々の例において、前記ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性のMICA(sMICA)))と結合する(例えば、特異的に結合する、および/または免疫特異的に結合する)ことができる。いくつかの例において、ペプチドとMICAとの間の結合親和性は、0.1nM〜約1μMの間、例えば約10nMであってよい。
【0056】
いくつかの例において、治療用組成物は、表1に示される抗体ID6のV
Hおよび/またはV
Lの少なくとも1つのCDRを含むペプチドを含んでいてよく、ここで、前記ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性のMICA(sMICA)))と結合する(例えば、特異的に結合する、および/または免疫特異的に結合する)。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される抗体ID6のV
Hおよび/またはV
LのCDR3を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される、抗体ID6のV
HおよびV
LのCDR3と、抗体ID6のV
Hおよび/またはV
LのCDR1および/またはCDR2を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、抗体ID6のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される、抗体ID6のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID6のV
Hおよび/またはV
LのFR1、FR2、FR3および/またはFR4の少なくとも1つとを含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、配列番号:77および/または配列番号:79を含む。各例において、前記ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性のMICA(sMICA)))と結合する(例えば、特異的に結合する、および/または免疫特異的に結合する)ことができる。いくつかの例において、ペプチドとMICAと間の結合親和性は、約0.1nM〜1μMの間、約50nM〜200nMの間、または1nM〜20nMの間、例えば、500nMまたはそれ未満、400nMまたはそれ未満、300nMまたはそれ未満、200nMまたはそれ未満、100nMまたはそれ未満、50nMまたはそれ未満、10nMまたはそれ未満、5nMまたはそれ未満、1nM、0.5nMまたはそれ未満、0.4nMまたはそれ未満、0.3nMまたはそれ未満、0.2nMまたはそれ未満、または0.10nMまたはそれ未満であってよい。
【0057】
いくつかの例において、治療用組成物は、表1に示される抗体ID7のV
Hおよび/またはV
Lの少なくとも1つのCDRを含むペプチドを含んでよく、ここで、前記ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性のMICA(sMICA)))と結合する(例えば、特異的に結合する、および/または免疫特異的に結合する)。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される抗体ID7のV
Hおよび/またはV
LのCDR3を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される抗体ID7のV
HおよびV
LのCDR3と、抗体ID7のV
Hおよび/またはV
LのCDR1および/またはCDR2を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、抗体ID7のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される、抗体ID7のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID7のV
Hおよび/またはV
LのFR1、FR2、FR3および/またはFR4の少なくとも1つとを含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、配列番号:96および/または配列番号:98を含む。各例において、前記ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性のMICA(sMICA)))と結合する(例えば、特異的に結合する、および/または免疫特異的に結合する)ことができる。いくつかの例において、ペプチドとMICAと間の結合親和性は、約0.1nM〜1μMの間、約50nM〜200nMの間、または1nM〜20nMの間、例えば、500nMまたはそれ未満、400nMまたはそれ未満、300nMまたはそれ未満、200nMまたはそれ未満、100nMまたはそれ未満、50nMまたはそれ未満、10nMまたはそれ未満、5nMまたはそれ未満、1nM、0.5nMまたはそれ未満、0.4nMまたはそれ未満、0.3nMまたはそれ未満、0.2nMまたはそれ未満、または0.10nMまたはそれ未満であってよい。
【0058】
いくつかの例において、治療用組成物は、表1に示される抗体ID8のV
Hおよび/またはV
Lの少なくとも1つのCDRを含むペプチドを含んでよく、ここで、前記ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性のMICA(sMICA)))と結合する(例えば、特異的に結合する、および/または免疫特異的に結合する)。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される抗体ID8のV
Hおよび/またはV
LのCDR3を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される抗体ID8のV
HおよびV
LのCDR3と、抗体ID8のV
Hおよび/またはV
LのCDR1やCDR2を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、抗体ID8のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される、抗体ID8のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID8のV
Hおよび/またはV
LのFR1、FR2、FR3および/またはFR4の少なくとも1つとを含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、配列番号:113および/または配列番号:115を含む。各例において、前記ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性のMICA(sMICA)))と結合する(例えば、特異的に結合する、および/または免疫特異的に結合する)ことができる。いくつかの例において、ペプチドとMICAと間の結合親和性は、約0.1nM〜1μMの間、約50nM〜200nMの間、または1nM〜20nMの間、例えば、500nMまたはそれ未満、400nMまたはそれ未満、300nMまたはそれ未満、200nMまたはそれ未満、100nMまたはそれ未満、50nMまたはそれ未満、10nMまたはそれ未満、5nMまたはそれ未満、1nM、0.5nMまたはそれ未満、0.4nMまたはそれ未満、0.3nMまたはそれ未満、0.2nMまたはそれ未満、または0.10nMまたはそれ未満であってよい。
【0059】
いくつかの例において、治療用組成物は、表1に示される抗体ID9のV
Hおよび/またはV
Lの少なくとも1つのCDRを含むペプチドを含んでよく、ここで、前記ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性のMICA(sMICA)))と結合する(例えば、特異的に結合する、および/または免疫特異的に結合する)。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される抗体ID9のV
Hおよび/またはV
LのCDR3を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される、抗体ID9のV
HおよびV
LのCDR3と、抗体ID9のV
Hおよび/またはV
LのCDR1および/またはCDR2とを含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、抗体ID9のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される、抗体ID9のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID9のV
Hおよび/またはV
LのFR1、FR2、FR3および/またはFR4の少なくとも1つとを含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、配列番号:131および/または配列番号:133を含む。各例において、前記ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性のMICA(sMICA)))と結合する(例えば、特異的に結合する、および/または免疫特異的に結合する)ことができる。いくつかの例において、ペプチドとMICAと間の結合親和性は、約0.1nM〜1μMの間、約50nM〜200nMの間、または1nM〜20nMの間、例えば、500nMまたはそれ未満、400nMまたはそれ未満、300nMまたはそれ未満、200nMまたはそれ未満、100nMまたはそれ未満、50nMまたはそれ未満、10nMまたはそれ未満、5nMまたはそれ未満、1nM、0.5nMまたはそれ未満、0.4nMまたはそれ未満、0.3nMまたはそれ未満、0.2nMまたはそれ未満、または0.10nMまたはそれ未満であってよい。
【0060】
いくつかの例において、治療用組成物は、表1に示される抗体ID11のV
Hおよび/またはV
Lの少なくとも1つのCDRを含むペプチドを含んでよく、ここで、前記ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性のMICA(sMICA)))と結合する(例えば、特異的に結合する、および/または免疫特異的に結合する)。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される抗体ID11のV
Hおよび/またはV
LのCDR3を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される、抗体ID11のV
HおよびV
LのCDR3と、抗体ID11のV
Hおよび/またはV
LのCDR1および/またはCDR2とを含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、抗体ID11のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される、抗体ID11のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID11のV
Hおよび/またはV
LのFR1、FR2、FR3および/またはFR4の少なくとも1つとを含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、配列番号:150および/または配列番号:152を含む。各例において、前記ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性のMICA(sMICA)))と結合する(例えば、特異的に結合する、および/または免疫特異的に結合する)ことができる。いくつかの例において、ペプチドとMICAと間の結合親和性は、約0.1nM〜1μMの間、約50nM〜200nMの間、または1nM〜20nMの間、例えば、500nMまたはそれ未満、400nMまたはそれ未満、300nMまたはそれ未満、200nMまたはそれ未満、100nMまたはそれ未満、50nMまたはそれ未満、10nMまたはそれ未満、5nMまたはそれ未満、1nM、0.5nMまたはそれ未満、0.4nMまたはそれ未満、0.3nMまたはそれ未満、0.2nMまたはそれ未満、または0.10nMまたはそれ未満であってよい。
【0061】
いくつかの例において、治療用組成物は、表1に示される抗体ID12のV
Hおよび/またはV
Lの少なくとも1つのCDRを含むペプチドを含んでよく、ここで、前記ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性のMICA(sMICA)))と結合する(例えば、特異的に結合する、および/または免疫特異的に結合する)。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される抗体ID12のV
Hおよび/またはV
LのCDR3を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される、抗体ID12のV
HおよびV
LのCDR3と、抗体ID12のV
Hおよび/またはV
LのCDR1および/またはCDR2を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、抗体ID12のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、表1に示される、抗体ID12のV
Hおよび/またはV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID12のV
Hおよび/またはV
LのFR1、FR2、FR3および/またはFR4の少なくとも1つとを含む。いくつかの例において、そのようなペプチドは、配列番号:168および/または配列番号:170を含む。各例において、前記ペプチドは、MICA(例えば、ヒトMICA(例えば、可溶性のMICA(sMICA)))と結合する(例えば、特異的に結合する、および/または免疫特異的に結合する)ことができる。いくつかの例において、ペプチドとMICAと間の結合親和性は、約0.1nM〜1μMの間、約50nM〜200nMの間、または1nM〜20nMの間、例えば、500nMまたはそれ未満、400nMまたはそれ未満、300nMまたはそれ未満、200nMまたはそれ未満、100nMまたはそれ未満、50nMまたはそれ未満、10nMまたはそれ未満、5nMまたはそれ未満、1nM、0.5nMまたはそれ未満、0.4nMまたはそれ未満、0.3nMまたはそれ未満、0.2nMまたはそれ未満、または0.10nMまたはそれ未満であってよい。
【0062】
いくつかの例において、治療用組成物は、配列番号:2および/または配列番号:11;配列番号:77および/または配列番号:79;配列番号:96および/または配列番号:98;配列番号:113および/または配列番号:115;配列番号:131および/または配列番号:133;配列番号:150および/または配列番号:152、および配列番号:168および/または170含むペプチドを含んでよい。
【0067】
* 配列は、表示した配列、またはその配列と(例えば少なくとも)80%、85%、90%、95%、96%、97%、98、99%,および/または100%の配列同一性を有するバリアントを含む。
** 配列は、1個、2個、3個、4個、5個、5個未満または10個未満の保存的アミノ酸置換を含んでよい。
# 配列は、表示した配列、またはその配列と、例えばFR1、FR2、FR3および/またはFR4に対応する領域内に示される配列と(例えば少なくとも)80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%,および/または100%の配列同一性を有する、および/またはCDR1、2および/または3に対応する領域内に1個、2個、3個、4個、5個、5個未満または10個未満の保存的アミノ酸修飾を有するバリアントを含む。
## 配列は、表示した配列、またはその配列と(例えば少なくとも)80%、85%、90%、95%、96%、97%、98、99%,および/または100%の配列同一性を有するバリアントを含み、前記配列が対応するAAをコードする。
A.A.
#は、V
HまたはV
Lのアミノ酸配列を示す。
Nuc.Acid
##は、V
HまたはV
Lの核酸配列を示す。
CDRおよびFR領域を以上で示したが、そのような領域はKabat(Sequences of Proteins of Immunological Interest(National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1987および1991))に従って規定されてもよい。抗体または抗原結合断片のアミノ酸番号付けも、Kabatの番号付けに従う。
【0068】
「ペプチド」は、連続して連結された少なくとも2個のアミノ酸残基を含む鎖を示し、鎖長に上限はない。タンパク質中の1個以上のアミノ酸残基が、限定するものではないが、グリコシル化、リン酸化またはジスルフィド結合形成などの修飾を含んでもよい。用語「ペプチド」は、本明細書において「ポリペプチド」および「タンパク質」と交換可能に用いられる。
【0069】
いくつかの例において、治療用組成物は、ペプチド、例えば抗体(例えば、全長および/または完全な抗体)または抗体断片を含んでよい。「抗体」は、標的(例えば炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなど)に、その可変領域内に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して特異的に結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書で用いられるように、用語「抗体」は、完全なポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけでなく、いずれかの抗原結合断片(即ち「抗原結合部分」)またはその一本鎖、抗体を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子のいずれかの他の修飾構造物(modified configuration)を包含する。抗体は、いずれかのクラスの抗体、例えばIgG、IgAまたはIgM(もしくはそのサブクラス)、およびいずれかの特定のクラスである必要のない抗体を含む。その重鎖の定常領域の抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは別のクラスに割り当てられる。免疫グロブリンの5つの主要なクラス、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMがある。これらの幾つかは、さらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2にさらに分けることができる。重鎖の定常領域は免疫グロブリンの種々のクラスに対応し、該定常領域はアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューとそれぞれ呼ばれる。免疫グロブリンの種々のクラスのサブユニット構造および三次元配置は周知である。
【0070】
例示的な抗体および抗体断片は、限定するものではないが、モノクローナル抗体(例えば全長モノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの異なるエピトープ結合断片から形成される多重特異的抗体(multispecific antibody)(例えば、二重特異的抗体)、ラクダ化抗体(camelised antibodies)、キメラ抗体、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン抗体、Fab抗体、F(ab’)2断片、所望の生物活性を示す抗体断片(例えば抗原結合部分)、ジスルフィド連結されたFv(dsFv)、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体)、細胞内抗体、および上記のいずれかのエピトープ結合断片を含む。抗体または抗体断片は、ヒトまたはヒト化されていてよい。特定の実施形態において、抗体は非天然抗体、例えば天然の抗体に対して多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のアミノ酸の相違(例えば、置換、不可または欠失)を含む抗体である。1個以上のアミノ酸の相違が軽鎖および/または重鎖にあってよく、1つ以上のCDRにあってよく、フレームワーク領域、もしくは定常領域内、例えばCL、CH1、ヒンジ、CH2またはCH3にあってもよい。
【0071】
抗体は、典型的には、10
−5〜10
−11Mまたはそれ未満の解離定数(K
D)を反映した高親和性でもって同起源の抗原と特異的に結合する。約10
−4M超のいずれかのK
Dは、一般的には、非特異的結合を示すと考えられる。本明細書中で用いられるように、抗原に「特異的に結合する」抗体は、その抗原および実質的に同一の抗原と、高親和性(K
Dが10
−7M以下、好ましくは10
−8M以下、さらにより好ましくは5×10
−9M以下、および最も好ましくは10
−8M〜10
−10Mの間もしくはそれ未満)でもって結合するが、無関係の抗原とは高親和性でもって結合しない抗体を示す。所定の抗原と高い配列同一性を示す場合、例えば、所定の抗原と少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも97%、またはさらにより好ましくは少なくとも99%の配列同一性を示す場合、それは、所定の抗原と「実質的に同一な」抗原である。例示を目的として、ヒトMICAに特異的に結合する抗体は、特定の霊長類種由来のMICA抗原(例えば、カニクイザルMICA)とも交差反応するが、他の種由来のMICA抗原またはMICA以外の抗原とは交差反応し得ない。
【0072】
抗体断片は、それらがその抗原結合部分を含み、かつ全長の抗体が有する所望の親和性および特異性を維持する限り、提供する方法での使用に適している。用語、抗体の「抗原結合部分」(または、単純に「抗体部分」)は、本明細書中で用いられるように、抗原(例えば、ヒトMICA)に特異的に結合する能力を維持した抗体の1つまたは複数の断片を示す。そのような「断片」は、例えば、約8〜約1500アミノ酸長であり、好ましくは約8〜約745アミノ酸長、好ましくは約8〜約300、例えば約8〜約200アミノ酸、または約10〜約50もしくは100アミノ酸長である。かくして、抗MICA抗体の断片は、MICAに結合する能力をそのFv部分に、樹状細胞、マクロファージ、好中球、B細胞およびNK細胞上のFc受容体に結合する能力をそのFc部分に、それぞれ維持し得る。そのような断片は、対応する全長の抗MICA抗体に類似する特性により特徴づけられ、即ち、該断片は、ヒトの細胞表面で発現するヒトMICA抗原、または培地中に脱落した対応するsMICA抗原を、それぞれ結合し得る。
【0073】
抗体の抗原結合機能は、全長の抗体の断片により実行し得ることが示された。用語、抗体の「抗原結合部分」に包含される結合断片の例としては、(i)V
L、V
H、CLおよびCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域のジスルフィド結合により連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)
2断片;(iii)V
HおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iv)抗体の一方の腕のV
LおよびV
HからなるFv断片、(v)V
HドメインからなるdAb断片(Wardら、(1989)Nature 341:544−546);および(vi)単離された相補性決定領域(CDR)または(vii)二以上の単離されたCDRの組合せであって、場合により合成リンカーにより連結されていてよい組合せを含む。さらに、Fv断片の2つのドメインであるV
LおよびV
Hは別個の遺伝子にコードされているが、それらは組換え方法を用いて、V
LおよびV
H領域が一対となって一価の分子を形成して単一タンパク質の鎖となるように合成リンカーにより連結されてもよい(一本鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Birdら、(1988)Science242:423−426;およびHustonら、(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA85:5879−5883を参照のこと)。そのような一本鎖抗体もまた、用語、抗体の「抗原結合部分」に包含されることを意図する。これらの抗体断片は、当業者には既知の従来技術を用いて得られ、断片は完全な抗体と同じ方法で有用性に関してスクリーニングされる。抗原結合部分は、組換えDNA技術により産生され、または完全な免疫グロブリンの酵素もしくは化学分解により産生される。
【0074】
Fv断片は、完全な抗原認識および結合部位を含む抗体断片である。この領域は、例えばscFvにおける本質的に共有結合であり得る、強く会合した1つの重鎖および1つの軽鎖可変ドメインの2量体からなる。この構成において、各可変ドメインの3つのCDRは相互作用して、V
H−V
L二量体の表面上の抗原結合部位を規定する。6つのCDRまたはそのサブセットは、全体として、抗体の抗原特異性を与える。しかしながら、単一の可変ドメイン(即ち、Fvの半分であって、抗原に特異的な3つのCDRのみを含む)は、完全な結合部位よりも通常低い親和性であっても、抗原を認識して結合する能力を有し得る。
【0075】
一本鎖Fv、すなわち(scFv)抗体断片は、抗体のV
HおよびV
Lドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。一般的に、Fvポリペプチドは、V
HとV
Lドメインの間にポリペプチドリンカーをさらに含み、該リンカーは、scFvが抗原結合に望ましい構造を形成することを可能にする。
【0076】
Fab断片は、軽鎖の可変ドメインおよび定常ドメインと、重鎖の可変ドメインおよび第1の定常ドメイン(CH1)とを含む。F(ab’)2抗体断片は、Fab断片とFab断片との間のヒンジのシステインによりそれらのカルボキシル末端付近で一般的に共有結合している一対のFab断片を含む。抗体断片の他の化学的カップリングも当該分野で既知である。
【0077】
「二重特異性抗体」または「二機能性抗体」は、2つの異なる重鎖/軽鎖のペアおよび2つの異なる結合部位を有する人工のハイブリッド抗体である。二重特異的抗体は、様々な方法、例えばハイブリドーマ融合またはFab’断片の連結により創出することができる。例えば、Songsivilai&Lachmann,Clin.Exp.Immunol.79:315−321(1990);Kostelnyら、J.Immunol.148,1547−1553(1992)を参照のこと。
【0078】
二重特異性抗体は、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体断片であり、その断片は同一ポリペプチド鎖(V
HおよびV
L)内でV
Lに連結されたV
Hを含む。同一鎖上での2つのドメイン間で対となることを可能にするには短すぎるリンカーを用いることで、該ドメインは他の鎖の相補的ドメインと対を形成するようになり、それで2つの抗原結合部位が創出される。
【0079】
リニア抗体は一対のタンデムFdセグメント(V
H−CH1−V
H−CH1)を含み、相補的な軽鎖ポリペプチドと共に一対の抗原結合領域を形成する。リニア抗体は、二重特異的または単一特異的であってよい。
【0080】
本開示の抗体および抗体断片は、所望のエフェクター機能または血清半減期を与えるようにFc領域が改変されてもよい。いくつかの例において、Fc領域は血清半減期を増加させるPEGまたはアルブミンとコンジュゲートされていてよく、結果的に所望の効果が得られる他のコンジュゲートがなされてもよい。別には、エフェクター機能を消去または低減させ、それにより副作用または治療の複雑さを最小限にすることが望まれる場合、特定の他のFc領域を用いることができる。
【0081】
ヒト抗体およびヒト化抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する(または、それらから得られたものと同じアミノ酸配列を有する)抗体を含む。ヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列にコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム変異導入または部位特異的変異導入により、あるいはインビボでの体細胞変異により導入された変異)を、例えば、CDRに、特にCDR3に含んでもよい。用語「組換えヒト抗体」は、本明細書中で用いられるように、組換え技術により調製、発現、創出または単離されるすべてのヒト抗体を含み、例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子に関するトランスジェニックまたはトランスクロモソーマル(transchromosomal)動物(例えばマウス)又はそれらから調製されたハイブリドーマから単離された抗体、(b)抗体を発現させるために形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマから単離された抗体、(c)コンビナトリアル・ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列を他のDNA配列にスプライシングすることを含む他のいずれかの方法により調製、発現、創出または単離された抗体を含む。そのような組換えヒト抗体は、特定のヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列を利用し、生殖細胞系列遺伝子にコードされる可変領域および定常領域を含み、後に生じる再構成および突然変異、例えば抗体成熟(antibody maturation)の間に生じる再構成および突然変異も含む。当該分野で既知なように(例えば、Lonberg(2005)Nature Biotech.23(9):1117−1125)、可変領域は抗原結合ドメインを含み、該ドメインは再構成して、外来抗原に特異的な抗体を形成する様々な遺伝子にコードされる。再構成に加えて、可変領域は、さらに、複数回の単一アミノ酸交換(体細胞変異または超変異とも称される)によりさらに改変され、当該外来抗原に対する抗体の親和性が向上し得る。定常領域が変化して、さらに抗原に応答するようになり得る(即ち、アイソタイプスイッチ)。従って、抗原に応答する軽鎖および重鎖免疫グロブリンポリペプチドをコードする再構成された及び体細胞変異した核酸分子は、元の核酸分子と配列同一性を有さないが、代わりに、実質的に同一または類似し得る(即ち、少なくとも80%の同一性を有する)。
【0082】
「ヒト」抗体(HuMAb)は、フレームワークとCDR領域の両方がヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体を示す。さらに、抗体が定常領域を含む場合、定常領域もヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体はヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列にコードされていないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的変異またはインビボでの体細胞変異により導入された突然変異)を含み得る。しかしながら、用語「ヒト抗体」は、本明細書中で用いられるように、他の哺乳動物種、例えばマウスの生殖細胞系列に由来するCDR配列をヒトフレームワーク配列にグラフトした抗体を含むことを意図していない。用語「ヒト」抗体および「完全なヒト」抗体は、同意義に用いられる。
【0083】
「ヒト化」抗体は、非ヒト抗体のCDRドメイン外のアミノ酸の幾つか、ほとんど又は全てをヒト免疫グロブリンに由来する対応するアミノ酸に置換した抗体を示す。ヒト化形態の抗体に関する1つの実施形態において、CDRドメイン外のアミノ酸の幾つか、ほとんど又は全てをヒト免疫グロブリンのアミノ酸と置換するが、1つまたは複数のCDR領域内の幾つか、ほとんど又は全てのアミノ酸は変更されていない。アミノ酸の少ない付加、欠失、挿入、置換または改変は、それらが特定の抗原に結合する抗体の能力を損なわない限り、許容される。「ヒト化」抗体は元の抗体の抗原特異性と同様の抗原特異性を保持する。
【0084】
「キメラ抗体」は、その可変領域がある種に由来し、且つその定常領域が他の種に由来する抗体、例えば、その可変領域がマウス抗体に由来し、且つその定常領域がヒト抗体に由来する抗体を示す。
【0085】
用語「エピトープ」は、本明細書で用いられるように、抗体に結合することができるタンパク質の決定因子を示す。エピトープは、通常、分子のうち化学的に活性な表面の基、例えばアミノ酸または糖側鎖から構成され、通常、特異的な三次元構造特性、並びに特異的な電荷特性を有する。エピトープは、タンパク質の三次フォールディングにより並置される不連続アミノ酸から形成されるもの(例えば、立体構造エピトープ)、または連続するアミノ酸から形成されるもの(例えば、非立体構造エピトープ)の双方いずれであってもよい。立体構造エピトープおよび非立体構造エピトープは、変性溶媒の存在下では前者に対する結合は消失するが後者に対する結合は消失しないという点において、区別される。エピトープは、典型的には、特有の空間配置において少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個のアミノ酸を含む。所定の抗体により結合されるエピトープがいずれであるかを決定する方法(例えばエピトープマッピング)は当該分野で周知であり、例えば、免疫ブロッティングおよび免疫沈降アッセイが挙げられ、重複または隣接ペプチド(例えば、MICA由来)を、所定の抗体(例えば、抗MICA抗体)との反応性について試験される。エピトープの空間配置を決定する方法としては、当該分野での技術および本明細書に記載の方法、例えば、x線結晶構造解析および2次元核磁気共鳴が挙げられる(例えばEpitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol.66,G.E.Morris,Ed.(1996)を参照のこと)。
【0086】
用語「エピトープマッピング」は、抗体−抗原認識に関する分子決定基を特定する工程を示す。
【0087】
抗体または抗体断片に関連する用語「エピトープに結合する」または「エピトープを認識する」は、抗原内のアミノ酸の連続セグメントまたは不連続セグメントを示す。当業者は、前記用語が抗体または抗体断片がエピトープ配列内のアミノ酸のそれぞれと直接接触することを必ずしも意味しないと理解する。
【0088】
2以上の抗体に関連する用語「同一のエピトープに結合する」は、該抗体がアミノ酸の連続もしくは不連続セグメントと同じ、重複する若しくは包含するセグメントに結合することを意味する。当業者は、成句「同一のエピトープに結合する」が、該抗体が同一のアミノ酸と正確に結合または接触することを必ずしも意味しないと理解する。抗体が接触する正確なアミノ酸は異なっていてもよい。例えば、第一の抗体は、第二の抗体が結合するアミノ酸セグメントを完全に包含するアミノ酸セグメントに結合してよい。他の例では、第一の抗体は、第二の抗体が結合する一以上のセグメントと顕著に重複する一以上のアミノ酸セグメントに結合する。本明細書の目的に関して、そのような抗体は、「同一のエピトープに結合する」とみなされる。
【0089】
従って、本発明は、本明細書に記載の特定の抗体が認識するエピトープの全部または一部(例えば、3、4、5、6、7、8、9または10個の、連続する又は不連続なアミノ酸)を含むMICA上のエピトープ(同一もしくは重複する領域または領域間もしくは領域を跨ぐ領域)に結合する抗体を包含する。
【0090】
本明細書に記載の抗体と「MICA上の同一のエピトープ」に結合する抗体を決定する技術には、例えばエピトープマッピング法、例えばエピトープの原子レベル分解能を与える抗原:抗体複合体のx線結晶構造解析が挙げられる。抗原断片または抗原の変異バリアントに対する抗体の結合をモニタする他の方法において、抗原配列内のアミノ酸残基の改変のために結合が消失する場合、それはエピトープ成分の指標であるとしばしば考えられる。これらの方法は、コンビナトリアル・ファージディスプレイ・ペプチドライブラリー由来の特異的な短いペプチドを親和力で単離する、興味対象の抗体の能力に依存する。該ペプチドを、次いで、ペプチドライブラリーをスクリーニングするのに用いた抗体に対応するエピトープを規定するためのリードとみなす。エピトープマッピングに関して、不連続立体構造エピトープをマッピングする計算アルゴリズムが示されている。
【0091】
また、本発明はまた、本明細書に記載の抗体とMICA結合に関して競合する抗体を包含する。同一のエピトープを認識する抗体または結合の際に競合する抗体は、従来技術を用いて特定することができる。そのような技術には、例えば、ある抗体が標的抗原に対する他の抗体の結合を阻止する能力を示す免疫アッセイ、即ち競合結合アッセイが挙げられる。競合結合は、免疫グロブリンが、試験下、参照抗体の共通する抗原、例えばMICAとの特異的な結合を阻止するアッセイで決定される。多くのタイプの競合結合アッセイが知られており、例えば、直接または間接固相ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相ダイレクト又はインダイレクト酵素免疫アッセイ(EIA)、サンドウィッチ競合アッセイ(Stahliら、Methods in Enzymology 9:242(1983)参照のこと);固相ダイレクトビオチン−アビジンEIA(Kirklandら、J.Immunol.137:3614(1986)参照のこと);固相ダイレクト標識化アッセイ、固相ダイレクト標識化サンドウィッチアッセイ(HarlowおよびLane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1988)参照のこと);I−125標識を用いる固相ダイレクト標識RIA(Morelら、Mol.Immunol.25(1):7(1988)参照のこと);固相ダイレクトビオチン−アビジンEIA(Cheungら、Virology 176:546(1990));およびダイレクト標識化RIA(Moldenhauerら、Scand.J.Immunol.32:77(1990))が挙げられる。典型的には、そのようなアッセイは、固体表面に結合した精製された抗原またはそれらのいずれかを保有する細胞、未標識試験免疫グロブリンおよび標識化参照免疫グロブリンの使用を含む。競合阻害は、試験免疫グロブリンの存在下、固相表面または細胞に結合した標識の量を決定することにより測定される。通常、試験免疫グロブリンは過剰量存在する。競合抗体が過剰量存在する場合、通常、参照抗体の共通する抗原に対する特異的な結合は、少なくとも50〜55%、55〜60%、60〜65%、65〜70%、70〜75%もしくはそれ以上に阻止される。
【0092】
本明細書中で用いられるように、用語「特異的結合」、「選択的結合」、「選択的に結合する」および「特異的に結合する」は、抗体が所定の抗原上のエピトープに結合することを示す。典型的には、抗体は、組換えMICAをアナライトとして用い、抗体をリガンドとして用いるBIACORE2000装置における表面プラズモン共鳴(SPR)技術により決定される場合、約10−7M未満、例えば約10−8M、10−9Mまたは10−10M未満もしくはそれ未満の平衡解離定数でもって結合し、所定の抗原または近縁の抗原以外の非特異的な抗原(例えば、BSA、カゼイン)との結合親和性よりも少なくとも2倍大きい親和性でもって結合する。したがって、「ヒトMICAに特異的に結合する」抗体は、10−7Mまたはそれ未満、例えば約10
−8M、10
−9Mまたは10
−10Mまたはそれ未満のK
DでもってヒトMICAと結合する抗体を示す。「カニクイザルMICAと交差反応する」抗体は、10
−7Mまたはそれ未満、例えば約10
−8M、10
−9Mまたは10
−10Mまたはそれ未満のK
DでもってカニクイザルMICAに結合する抗体を示す。特定の実施形態において、ヒト以外の種のMICAと交差反応しない抗体は、本質的に、標準的な結合アッセイでこれらのタンパク質に対する検出可能な結合は示さない。
【0093】
用語「k
assoc」または「k
a」は、本明細書中で用いられるように、特定の抗体−抗原相互作用の会合速度を示すことを意図し、一方、用語「k
dis」または「k
d」は、本明細書中で用いられるように、特定の抗体−抗原相互作用の解離速度を示すことを意図する。用語「K
D」は、本明細書中で用いられるように、解離定数を示すことを意図し、それはk
dのk
aに対する比(すなわち、k
d/k
a)により得られ、モル濃度(M)で表される。抗体のK
D値は、当該分野の慣用方法を用いて決定することができる。抗体のK
Dを決定する好ましい方法は、表面プラズモン共鳴を使用する方法、好ましくはBiacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用する方法である。
【0094】
本明細書中で用いられるように、IgG抗体に関する用語「高親和性」は、抗体が標的抗原に対して10
−8Mまたはそれ未満、より好ましくは10
−9Mまたはそれ未満、さらにより好ましくは10
−10またはそれ未満のK
Dを有する抗体を示す。しかしながら、「高親和性」の結合は、他の抗体アイソタイプに応じて変化し得る。例えば、IgMアイソタイプに関して「高親和性」は、10
−7Mまたはそれ未満、より好ましくは10
−8Mまたはそれ未満のK
Dを有する抗体を示す。
【0095】
用語「EC50」は、本明細書中で用いられるように、インビトロまたはインビボアッセイのいずれかにおいて、最大応答の50%の応答、即ち最大応答とベースラインとの間の中間の応答を誘発する抗体またはその抗原結合部分の濃度を示す。
【0096】
用語「固相化したMICAに対する結合」は、本発明の抗体が、例えば細胞表面に発現した又は固体支持体に付着されたMICAに結合する能力を示す。
【0097】
用語「交差反応」は、本明細書中で用いられるように、本発明の抗体が他の種のMICAに結合する能力を示す。例えば、ヒトMICAに結合する本発明の抗体は、他の種のMICA(例えば、カニクイザルMICA)に結合してもよい。本明細書中で用いられるように、交差反応は、結合アッセイ(例えば、SPR、ELISA)において精製した抗原との特異的な反応性、または細胞生理学的に発現するMICAとの結合、或いはその他の機能的相互作用を検出することにより測定される。交差反応を決定する方法には、本明細書に記載の標準的な結合アッセイ、例えば、Biacore(商標)2000 SPR装置(Biacore AB,ウプサラ、スウェーデン)を用いるBiacore(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)分析、フローサイトメトリー技術による方法が挙げられる。
【0098】
可変ドメインの「CDR」は、Kabatの定義、Chothiaの定義、Kabat定義とChothia定義との組合せ、AbM定義、コンタクト定義、および/またはコンフォメンショナル定義または当該分野で周知のCDR決定法のいずれかに従って定義される超可変領域内のアミノ酸残基である。抗体のCDRは、Kabatら(例えば、Kabatら、1992,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,NIH,Washington D.C.を参照のこと)により最初に定義された超可変領域と同一であってもよい。CDRの位置は、Chothiaなど(例えばChothiaら、1989,Nature 342:877−883を参照のこと)により最初に説明された立体的なループ構造と同一であってもよい。CDR特定に関する他のアプローチに、Kabat定義とChothia定義との折衷案であり、オックスフォード・モレキュラーAbM抗体モデリングソフトウェア(Oxford Molecular’s AbM antibody modeling software:現在はAccelrys(登録商標))を用いて導出される「AbM定義」、または観察した抗原の接触(コンタクト)に基づき、MacCallumら、1996,J.Mol.Biol.,262:732−745に記載のCDRの「コンタクト定義」が挙げられる。本明細書においてCDRの「コンフォメンショナル定義」と称する他のアプローチでは、CDRの配置は、エンタルピー上、抗原結合に寄与する残基として定義される(例えば、Makabeら、2008,Journal of Biological Chemistry,283:1156−1166を参照のこと)。さらなる他のCDR境界定義(boundary definition)は、上記アプローチのいずれかに厳格に従わないものであってよく、予測または特定の残基または残基群もしくは完全なCDRが抗原結合に有意に影響を及ぼさないとの試験的知見に鑑みて、それらは短くても又は長くてもよいが、それでも少なくともKabatのCDRの一部と重複するであろう。本明細書中で用いられるように、CDRは、当該分野で既知のアプローチ、それらの組合せを含むアプローチのいずれにより定義される。本明細書で使用される方法は、これらアプローチのいずれかによって定義されるCDRを利用してもよい。1つ以上のCDRを含有する所定の実施形態に関して、CDRはKabat定義、Chothia定義、拡張された定義、AbM定義、コンタクト定義および/またはコンフォメンショナル定義のいずれに従って定義されてよい。
【0099】
いくつかの例において、本明細書で開示されるペプチドのアミノ酸配列は、ペプチドバリアント(例えば、本明細書に開示されるペプチドに対して既定の配列相同性を有するペプチド)を創出するために、例えば、該ペプチドバリアントの抗原結合特性が未修飾ペプチドと比べて維持されている若しくは改善されている限り(いずれかの改変ペプチドの抗原結合特性は、本明細書に記載のインビトロおよび/またはインビボアッセイ、および/または当該分野で公知の技術を用いて評価することができる)、修飾および改変されてよい。
【0100】
ペプチドバリアントは、アミノ酸レベルで一般的に観察および議論されるが、実際の改変は、典型的には、核酸レベルで導入または実施される。例えば、表1に示すペプチドと80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%のアミノ酸配列同一性を有するバリアントは、当該分野で公知の技術(例えばクローニング技術)および/または本明細書に開示した技術を用いて、配列番号:1、10、76、78、95、97、112、114、130、132、149、151、167および/または169をコードする核酸、もしくはその一部/断片を改変することにより創出し得る。
【0101】
アミノ酸配列の改変は、典型的には、置換、挿入または欠失の改変の3つの種類の1つまたは複数に入る。挿入は、単独または複数のアミノ酸残基のアミノ末端融合および/または末端融合、ならびに内部配列への挿入を含む。挿入は、一般的に、例えば1〜4残基のオーダーでのアミノまたはカルボキシル末端融合よりも小規模の挿入であってよい。欠失は、タンパク質配列からの1つまたは複数のアミノ酸残基の除去により特徴づけられる。典型的には、タンパク質分子内のいずれかの部位で約2〜6残基を超えない残基が失われる。アミノ酸置換は、典型的には、単一の残基であるが、多くの異なる箇所で一時に生じてもよく、挿入は、通常、約1〜10アミノ酸残基のオーダーであり、欠失は、約1〜30残基の範囲であろう。欠失または挿入は、隣接する対で、即ち2残基の欠失または2残基の挿入が生じ得る。置換、欠失、挿入、またはそれらのいずれかの組合せが組み合せられ、最終の構築物が形成されてよい。突然変異は、リーディングフレーム外の配列では生じず、好ましくは、mRNAの二次構造を生成し得る相補領域を創出しない。置換改変は、少なくとも1つの残基が除去され、その箇所に異なる残基が挿入されることである。いくつかの例において、置換は、保存的アミノ酸置換であってよい。いくつかの例において、本明細書中のペプチドは、表1に示すペプチドに対して1つまた2以上の保存的アミノ酸置換を含んでよい。例えば、バリアントは、表1に示すペプチドに対して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、20〜30、30〜40、または40〜50の保存的アミノ酸置換を含んでよい。別には、バリアントは、表1に示すペプチドに対して50またはそれ未満、40またはそれ未満、30またはそれ未満、20またはそれ未満、10またはそれ未満、9またはそれ未満、8またはそれ未満、7またはそれ未満、6またはそれ未満、5またはそれ未満、4またはそれ未満、3またはそれ未満、2またはそれ未満の保存的アミノ酸置換を含んでよい。そのような置換は、一般に以下の表2に従って作製され、保存的置換と称される。タンパク質改変に対する耐性を予測する方法は当該分野において公知である(例えば、Guら、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,101(25):9205−9210(2004)を参照のこと)。
【0103】
いくつかの例において、置換は保存的ではない。例えば、表1に示すペプチドにおいてアミノ酸が、ペプチドのある程度の特性又は態様を変更し得るアミノ酸で置換されてもよい。いくつかの例において、非保存的アミノ酸置換が生じて、例えば、ペプチドの構造を変化させ得る、ペプチドの結合特性を変化させ得る(例えば、抗原に対するペプチドの結合親和性を増大もしくは減少させる、および/または抗原に対するペプチドの結合特異性を増大もしくは低下させる)。
【0104】
いくつかの例において、ペプチドおよび/またはペプチドバリアントは、表1で示されるペプチド断片であってよく、または含んでよい。そのような断片は、例えば、該断片が全長ペプチドの結合特性の少なくとも一部(例えば、全長ペプチドの結合特性の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、または100%)を少なくとも維持する限り、例えば、表1で示すCDR、FRおよび/またはAAよりも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、50〜100、101〜150個少ないアミノ酸を含んでよい。切断は、本明細書のペプチドのアミノ末端で、カルボキシ末端で、および/またはペプチド内で生じてもよい。
【0105】
いくつかの例において、ペプチドバリアントの相互作用面は、未修飾ペプチドに対して該ペプチドバリアントの結合特性を改変(例えば増大または減少)、保存または維持するために、未修飾ペプチドと同じ(例えば、実質的に同じ)であってよい。ペプチドの相互作用面を特定する方法は、当該分野において公知である(Gongら、BMC:Bioinformatics,6:1471−2105(2007);AndradeおよびWeiら、PureおよびAppl.Chem.,64(11):1777−1781(1992);Choiら、Proteins:Structure,Function、およびBioinformatics,77(1):14−25(2009);Parkら、BMC:およびBioinformatics,10:1471−2105(2009)。
【0106】
当業者は、2つのポリペプチド(例えば、未修飾ペプチドとペプチドバリアント)の同一性を決定する方法を容易に理解する。例えば、同一性は、もっとも高いレベルで同一となるように2つの配列を整列させた後に計算してよい。他の同一性の計算方法は、公表されたアルゴリズムにより実施することができる。比較のための最適な配列アライメントは、SmithおよびWaterman,Adv.Appl.Math,2:482(1981)のローカルアイデンティティー・アルゴリズム(local identity algorithm)により、NeedlemanおよびWunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)のアイデンティティーアライメント・アルゴリズム(identity alignment algorithm)により、PearsonおよびLipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似法のためのサーチにより、これらのアルゴリズムのコンピュータ実装(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,WI におけるGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTA)により、あるいは、検査により実施することができる。
【0107】
同種の同一性は、例えば、Zuker,Science 244:48−52(1989);Jaegerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:7706−10(1989);Jaegerら、Methods Enzymol.183:281−306(1989)(これらの文献は、少なくとも核酸アルゴリズムに関する内容に関して、引用により本明細書中に組み込まれる)に開示されるアルゴリズムにより、核酸について得ることができる。典型的には、該方法のいずれを用いてもよく、特定の例において、これら変法の結果、異なっていてもよいことは理解され、当業者であれば、これらの方法の少なくとも1つを用いて同一性が見いだされた場合、その配列は本明細書に記載の同一性を有すると言え、その配列は本明細書に開示されていると言える。
【0108】
2つの配列間の同一性パーセントは、2つの配列の最適なアライメントのために投入される必要があるギャップの数、および各ギャップの長さを考慮して、2つの配列により共有される同一部分の数の関数である(即ち、ホモロジー(%)=同一部位の数(#)/部位の総数(#)×100)。2つの配列間の配列比較および同一性パーセントの決定は、以下の比制限的な実施例に記載されるように、数学アルゴリズムを用いて実施することができる。
【0109】
2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、GCGソフトウェア・パッケージ(http://www.gcg.comにて入手可能)のGAPプログラムを用い、NWSgapdna.CMPマトリックスおよび40、50、60、70または80のギャップの重みづけ、および1、2、3、4、5または6の鎖長の重みづけを用いて決定することができる。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の同一性パーセントは、E.MeyersおよびW.Miller(CABIOS,4:11−17(1989))のアルゴリズムをALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込み、PAM120重みづけ残基テーブル、12のギャップ長ペナルティーおよび4のギャップペナルティーを用いる前記アルゴリズムを用いて決定することもできる。加えて、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、NeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.(48):444−453(1970))アルゴリズムを、GCGソフトウェアパッケージhttp://www.gcg.comにて入手可能)のGAPプログラムに組み込み、Blossum62マトリックスまたはPAM250マトリックス、および16、14、12、10、8、6、または4のギャップ重みづけおよび1、2、3、4、5または6の鎖長の重みづけを用いて決定することができる。
【0110】
本発明の核酸およびタンパク質配列は、さらに、公知のデータベースに対する検索を実施するための、例えば、関連する配列を特定するための「クエリー配列」として用いることができる。そのような検索は、Altschulら、(1990)J.Mol.Biol.215:403−10のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0)を用いて実施することができる。BLASTヌクレオチド検索は、NBLASTプログラム、スコア=100、ワードレングス(wordlength)=12を用いて実施し、本発明の核酸分子に対するヌクレオチド配列ホモロジーを得ることができる。BLASTプロテイン検索は、XBLASTプログラム、スコア=50、ワードレングス=3用いて、本発明のアミノ酸配列ホモロジーを得ることができる。比較のためのギャップアライメントを得るために、Altschulら、(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389−3402に記載されるように、Gapped BLASTを用いることができる。BLASTおよびGapped BLASTプログラムを用いる場合、各プログラム(例えば、XBLASTおよびNBLAST)に関するデフォルトのパラメーターを用いることができる。www.ncbi.nlm.nih.gov.を参照のこと。
【0111】
いくつかの例では、以下の方法の項目のもとでより詳細に記載されるように、本明細書に開示される治療用組成物は、本明細書に開示された方法を用いて得られた免疫細胞(例えば記憶B細胞を含むB細胞)から単離および/または精製された遺伝物質(例えば、DNAおよび/またはmRNA)を用いて製造することができる。そのような遺伝物質が得られると、本明細書中で開示される治療用組成物を製造するためにそれを使用するための方法は、当分野において公知であり、および/または以下で概説される。
【0112】
いくつかの例において、ペプチドは、検出可能な標識を含んでもよい。本明細書中で用いられるように、「標識」は、そこに導入された少なくとも1つのエレメント、同位元素、または官能基を有する構成部分であって、それが結合したペプチドの検出を可能にする構成部分を示す。標識は、直接(即ち、結合を介して)結合させてよく、または、リンカー(例えば、リンカーを構成し得る、環式もしくは非環式、分枝もしくは非分枝、飽和もしくは不飽和アルキレン;環式もしくは非環式、分枝もしくは非分枝、飽和もしくは不飽和アルケニレン;環式もしくは非環式、分枝もしくは非分枝、飽和もしくは不飽和アルキニレン;環式もしくは非環式、分枝もしくは非分枝、飽和もしくは不飽和ヘテロアルキレン;環式もしくは非環式、分枝もしくは非分枝、飽和もしくは不飽和ヘテロアルケニレン;環式もしくは非環式、分枝もしくは非分枝、飽和もしくは不飽和ヘテロアルキニレン;飽和もしくは不飽和アリレン(arylene);飽和もしくは不飽和ヘテロアリレン(heteroarylene);または飽和もしくは不飽和アシレン(acylene)、またはそれらの組合せ)により結合されてもよい。標識は、検出される本発明のペプチドの生物学的活性または特徴に干渉しない、いずれかの部位でペプチドに結合させることができる。
【0113】
標識としては、限定するものではないが、
2H、
3H、
13C、
14C、
15N、
31P、
32P、
35S、
67Ga、
99mTc(Tc−99m)、
111In、
123I、
125I、
169Yb、および
186Reを含む放射活性もしくは重同位元素であってよい同位元素構成部分を含む標識;免疫もしくは免疫活性な構成部分、例えば、酵素(例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ)が結合していてよい、抗体または抗原を含む標識;発色性、発光性、リン光性の標識、または蛍光分子(例えば、蛍光標識FITC)を含む標識;1つまたは複数の光親和性部分を有する標識;1つまたは複数の公知の結合パートナーとリガンド部分とを有する標識(例えば、ビオチン−ストレプトアビジン、FK506−FKBPなど)が挙げられ得る。
【0114】
いくつかの例において、標識は、生物系での分子間相互作用の直接的な解明のための1つまたは複数の光親和性部分を含んでもよい。公知の様々な発光器を用いることができ、そのほとんどがジアゾ化合物、アジドもしくはジアジリンのナイトレンまたはカルベンへの光変換(photoconversion)に拠っている(例えば、Bayley,H.,Photogenerated Reagents in BiochemistryおよびMolecular Biology(1983),Elsevier,Amsterdam、その全内容は引用により本明細書に組み込まれる。)。本発明の特定の実施形態において、用いられる光親和性標識は、1つまたは複数のハロゲン部分で置換されたo−、m−およびp−アジドベンゾイル、例えば、限定するものではないが、4−アジド−2,3,5,6−テトラフルオロ安息香酸である。
【0115】
標識は、イメージング試薬であってよく、またはイメージング試薬として提供され得る。例示的なイメージング試薬は、限定するものではないが、ポジトロン放出断層撮影(PET)、コンピュータ断層撮影(CAT)、単一光子放射型コンピュータ断層撮影、x線、蛍光顕微鏡および核磁気共鳴断層撮影(MRI);静吐薬;および造影剤を含む。例示的な診断薬は、限定するものではないが、蛍光部分、発光部分、磁気部分;ガドリニウムキレート剤(gadolinium chelate)(例えば、DTPA、DTPA−BMA、DOTAおよびHP−DO3Aを含むガドリニウムキレート剤)、鉄キレート剤、マグネシウムキレート剤、マンガンキレート剤、銅キレート剤、クロムキレート剤、CATおよびx線イメージングに有用なヨウ素ベースの物質、および放射性の核種を含む。適切な放射性の核種は、限定するものではないが、
123I、
125I、
130I、
131I、
133I、
135I、
47Sc、
72As、
72Se、
90Y、
88Y、
97Ru、
100Pd、
101mRh、
119Sb、
128Ba、
197Hg、
211At、
212Bi、
212Pb、
109Pd、
111In、
67Ga、
68Ga、
67Cu、
75Br、
77Br、
99mTc、
14C、
13N、
150、
32P、
33P、および
18Fを含む。
【0116】
蛍光性部分および発光性部分は、限定するものではないが、「色素」、「標識」または「指示薬」とも一般に称される多種多様な有機または無機小分子を含む。例としては、限定するものではないが、フルオロセイン、ローダミン、アクリジン色素、Alexa色素、シアニン色素などが挙げられる。蛍光性部分および発光性部分は、様々な天然のタンパク質およびその誘導体、例えば遺伝子工学によるバリアントを含み得る。例えば、蛍光性タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、改変されたGFP、赤色、青色、黄色、試案およびサファイヤ蛍光タンパク質、サンゴ由来の蛍光タンパク質などが挙げられる。蛍光性タンパク質としては、ルシフェラーゼ、エクオリンおよびその誘導体が挙げられる。多くの蛍光性および発光性色素およびタンパク質が、当該分野で公知である(例えば、米国特許出願公報2004/0067503;Valeur,B.,「Molecular Fluorescence:PrinciplesおよびApplications」 John WileyおよびSons,2002;およびHandbook of Fluorescent Probes and Research Products,Molecular Probes,9th edition,2002を参照のこと)。
【0117】
用語「精製した」または「単離した」は、本明細書中で用いられるように、その天然環境から成分を特定および分離および/または回収した他の分子、例えばポリペプチド、核酸分子を示す。このように、1つの実施形態において、本発明の抗体は、その天然環境の1つまたは複数の成分から分離されて、精製された抗体である。
【0118】
核酸組成物
いくつかの例において、本開示は、開示した(例えば、表1に開示した)ペプチドに対応する(コードする)核酸配列を提供する。これらの配列は、開示されたペプチドに関連したすべての縮重配列、即ち1つの特定のペプチド、及びそのバリアントおよび誘導体をコードする配列を有するすべての核酸を含む。かくして、それぞれの特定の核酸配列が本明細書中で書き出されている訳ではないが、各々すべての配列が、実際には、開示したポリペプチド配列を通じて、本明細書中に開示され、記載されていると理解される。
【0119】
いくつかの例において、開示するものの核酸は、発現ベクターを含み得る。適切なベクターの例は、限定するものではないが、プラスミド、人工染色体(例えばBAC、YACまたはPAC)およびウイルスベクターを含む。
【0120】
また、提供されるベクターは、例えば、複製オリジンおよび/またはマーカーを含んでもよい。マーカー遺伝子は、細胞に選択可能な表現型(例えば、抗生抵抗)を与え得る。マーカー産物は、ベクターが細胞に提供され、かつ提供されて発現されているかどうかを決定するために使用される。哺乳動物細胞のための選択可能なマーカーの例は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、チミジンキナーゼ、ネオマイシン、ネオマイシンアナログG418、ハイグロマイシン、ピューロマイシンおよびブラストサイジンである。そのような選択マーカーが哺乳動物宿主細胞にうまくトランスファーされると、選択圧下に置いた場合にトランスファーされた哺乳動物宿主細胞は生き残ることができる。他のマーカーの例としては、例えば大腸菌lacZ遺伝子、緑色蛍光タンパク質(GFP)およびルシフェラーゼが挙げられる。加えて、発現ベクターは、発現されたポリペプチドの操作または検出(例えば、精製または局在化)を促進するために設計されたタグ配列を含んでよい。タグ配列(例えばGFP、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c−myc、ヘマグルチニンまたはFLAG(商標)タグ(Kodak;New Haven、CT)配列は、典型的には、コードされたポリペプチドとの融合体として発現される。そのようなタグは、ポリペプチドの範囲内でいずれの個所(カルボキシル末端またはアミノ末端のいずれかに含む)に挿入することができる。
【0121】
いくつかの例において、本開示は、本明細書中で開示される核酸(例えば、ベクター)および/またはペプチドを含む細胞を含む。細胞は、例えば、真核生物および/または原核細胞を含み得る。概して、本明細書中で用いられ得る細胞は商業的に入手可能であり、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)(P.O.Box 1549、Manassas、VA 20108)から入手可能である。また、F.Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、New York、NY,(1998)を参照のこと。本明細書中で開示された細胞の創出に有用な形質転換方法およびトランスフェクション方法は、例えば、F.Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、New York、NY,(1998)に記載されている。
【0122】
ベクター媒介型の遺伝子導入は、抗体の標的化された送達を生じさせることが示された(Balazsら、
Nature.2011 Nov 30;481(7379):81−4)。したがって、1つの態様において、本開示は、目的とするMICAに免疫特異的に結合するペプチドをコードするポリヌクレオチドを標的細胞にウイルスを用いて送達するための方法および組成物を提供する。遺伝子治療の関係で、MICAと免疫特異的に結合するペプチドをコードする核酸配列は、ベクター(例えば、限定するものではないが、アデノウイルス、ワクシニアウイルスまたはアデノ随伴ウィルスを含むウイルスベクター)を通じて、細胞に送達されてもよい。遺伝子治療の関係で、MICAと免疫特異的に結合するペプチドをコードする核酸配列は、ベクター(例えば、限定するものではないが、アデノウイルス、ワクシニアウイルスまたはアデノ随伴ウィルスを含むウイルスベクター)を通じて、細胞に送達されてもよい。さらに、ウイルスを改変して、前記ウイルスが特定の細胞(例えば癌細胞)のいで機能することを可能にする核酸配列(例えばプロモーター)を含めてもよい。
【0123】
いくつかの例において、開示された治療用組成物は、MICAと免疫特異的に結合するペプチドをコードする核酸を含むベクター(例えば、発現ベクター、ウイルスベクター、アデノ随伴ウィルス・ベクター)を含んでよい。1つの態様において、MICAと免疫特異的に結合するペプチドは、MICAと免疫特異的に結合する抗体または抗体断片である。本明細書中で開示されるように、抗体および抗体断片は、限定するものではないが、モノクローナル抗体(例えば全長モノクローナル抗体)、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの異なるエピトープ結合断片から形成される多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、ラクダ化抗体(camelised antibodies)、キメラ抗体、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン抗体、Fab抗体、F(ab’)2断片、所望の生物活性を示す抗体断片(例えば抗原結合部分)、ジスルフィド連結されたFv(dsFv)、および抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、本発明の抗体に対する抗Id抗体)、細胞内抗体、および上記のいずれかのエピトープ結合断片を含む。
【0124】
従って、1つの態様において、本開示は、配列番号:1、76、95、112、130、149または167と少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の配列同一性、もしくは完全な(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を含むベクターおよび細胞を提供する。いくつかの態様において、核酸配列は、配列番号:2、77、96、113、131、150または167と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。
【0125】
1つの態様において、ベクターは、配列番号:10、78、97、114、132、151または169と少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の配列同一性、もしくは完全な(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を含み得る。いくつかの態様において、核酸配列は、配列番号:11、79、98、115、133、152または169と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。
【0126】
いくつかの実施形態において、本開示は、MHCクラスI鎖関連タンパク質A(MICA)またはそのエピトープと免疫特異的に結合するペプチドをコードする核酸を含む組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物の核酸は、5個以下の保存的アミノ酸置換を有する表1に示される抗体ID1、6、7、8、9、11または12のV
Hをコードする。いくつかの態様において、組成物の核酸は、5個以下の保存的アミノ酸置換を有する表1に示される抗体ID1、6、7、8、9、11または12のV
Lをコードする。
【0127】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のペプチド、例えば抗体の重鎖または軽鎖をコードする核酸は、非天然の核酸である。非天然の核酸は、例えば、天然の核酸と比較して多くとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたは10のヌクレオチドとの差異(例えば、置換、付加または欠失)を含んでもよい。
【0128】
1つの態様において、本開示は、配列番号:1と少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の配列同一性、もしくは完全な(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離した核酸を提供する。いくつかの態様において、単離した核酸配列は、配列番号:2と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。他の態様において、本開示は、配列番号:10と少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の配列同一性、もしくは完全な(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離した核酸を提供する。いくつかの態様において、単離した核酸配列は、配列番号:11と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。
【0129】
1つの態様において、本開示は、配列番号:76と少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の配列同一性、もしくは完全な(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離した核酸を提供する。いくつかの態様において、単離した核酸配列は、配列番号:77と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。他の態様において、本開示は、配列番号:78と少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の配列同一性、もしくは完全な(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離した核酸を提供する。いくつかの態様において、単離した核酸配列は、配列番号:79と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。
【0130】
1つの態様において、本開示は、配列番号:95と少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の配列同一性、もしくは完全な(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離した核酸を提供する。いくつかの態様において、単離した核酸配列は、配列番号:96と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。他の態様において、本開示は、配列番号:97と少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の配列同一性、もしくは完全な(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離した核酸を提供する。いくつかの態様において、単離した核酸配列は、配列番号:98と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。
【0131】
1つの態様において、本開示は、配列番号:112と少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の配列同一性、もしくは完全な(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離した核酸を提供する。いくつかの態様において、単離した核酸配列は、配列番号:113と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。他の態様において、本開示は、配列番号:114と少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の配列同一性、もしくは完全な(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離した核酸を提供する。いくつかの態様において、単離した核酸配列は、配列番号:115と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。
【0132】
1つの態様において、本開示は、配列番号:130と少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の配列同一性、もしくは完全な(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離した核酸を提供する。いくつかの態様において、単離した核酸配列は、配列番号:131と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。他の態様において、本開示は、配列番号:132と少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の配列同一性、もしくは完全な(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離した核酸を提供する。いくつかの態様において、単離した核酸配列は、配列番号:133と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。
【0133】
1つの態様において、本開示は、配列番号:149と少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の配列同一性、もしくは完全な(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離した核酸を提供する。いくつかの態様において、単離した核酸配列は、配列番号:150と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。他の態様において、本開示は、配列番号:151と少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の配列同一性、もしくは完全な(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離した核酸を提供する。いくつかの態様において、単離した核酸配列は、配列番号:152と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。
【0134】
1つの態様において、本開示は、配列番号:167と少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の配列同一性、もしくは完全な(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離した核酸を提供する。いくつかの態様において、単離した核酸配列は、配列番号:168と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。他の態様において、本開示は、配列番号:169と少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれ以上の配列同一性、もしくは完全な(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む単離した核酸を提供する。いくつかの態様において、単離した核酸配列は、配列番号:170と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含むペプチドをコードする。
【0135】
用語「核酸」または「核酸分子」は、本明細書中で用いられるように、DNA分子およびRNA分子を含むことを意図する。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であってよいが、好ましくは二本鎖DNAである。
【0136】
単離された核酸は、例えば、DNA分子であってよく、但し、その核酸配列の1つは、通常、天然の染色体から取り出され又は欠失する際にそのDNA分子に隣接して見いだされるものであってよい。かくして、単離された核酸は、限定するものではなく、他の配列から独立した別個の分子(例えば、化学合成核酸、cDNA、PCRもしくは制限酵素処理により産生されたゲノムDNA断片)として、並びにベクター、自己複製プラスミド、ウイルス(例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルス、またはヘルペスウイル)または原核もしくは真核生物のゲノムDNAへ組み込まれたDNAとして存在するDNAを含む。加えて、単離された核酸は、人工的に生成した核酸、例えばハイブリッドもしくは融合核酸の一部である組換えDNA分子を含み得る。例えば、cDNAライブラリーまたはゲノムライブラリー、もしくはゲノムDNA制限酵素消化産物を含有するゲルスライス内の何百から何百万の他の核酸中に存在する核酸は、単離された核酸と考慮されない。
【0137】
配列同一性パーセントを計算するにあたって、2つの配列を整列させ、前記2つの配列間のヌクレオチドまたはアミノ酸残基の完全な一致の数を決定する。その完全な一致の数を、整列した領域の長さ(即ち、整列したヌクレオチドまたはアミノ酸残基の数)で除し、100を乗じることで、配列同一性パーセント値が得られる。整列した領域の長さは、一方または両方の配列の一部であってよく、最大その最短の配列の全長サイズであり得ることは認識される。単一の配列を2以上の他の配列に対して整列させ、整列した領域それぞれに対して個々の配列同一性パーセント値があり得ることも認識される。同一性パーセント値は通常最も近い整数に四捨五入されることに留意すべきである。例えば、78.1%、78.2%、78.3%および78.4%は切り捨てられて78%とされ、一方、78.5%、78.6%、78.7%、78.8%および78.9%は切り上げられ79%とされる。整列した領域の長さは常に整数であることにも留意すべきである。
【0138】
本明細書中で用いられるように、用語「配列同一性パーセント」は、所定のいずれかのクエリー配列と対象配列との間の同一性の程度を示す。いずれかのクエリー核酸配列またはアミノ酸配列に関する同一性パーセント、例えば、他の対象核酸配列またはアミノ酸配列に関連する転写因子は、以下のように決定することができる。
【0139】
核酸は、細胞全体に、細胞溶解物に、または部分的に精製された若しくは実質的に純粋な形態で存在してよい。核酸は、他の細胞性成分または他の夾雑物、例えば他の細胞性核酸もしくはタンパク質から、標準的な技術(例えばアルカリ/SDS処理、CsClバンド、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動および当該分野で周知の他の技術(Ausubelら(編)、Current Protocols in Molecular Biology、Greene Publishing and Wiley Interscience、New York(1987)を参照のこと)により分けて精製される場合、「単離された」または「実質的に純粋にされた」ものである。
【0140】
天然の配列(改変された制限酵素認識部位およびその他を除く)にしばしば存在するが、cDNA、染色体もしくはそれらの混合物由来の本発明の核酸組成物は、遺伝子配列を与える標準的な技術に従って、変異導入されていてもよい。コード配列に関して、これらの突然変異は、所望のアミノ酸配列に影響を及ぼし得る。特に、天然のV、D、J、定常、スイッチおよび本明細書中に記載の他のそのような配列と実質的に相同な又は誘導されたDNA配列が考えられる(「誘導された」は、ある配列が他の配列と同一または改変されていることを示す。)。
【0141】
核酸は、他の核酸配列と機能的に関連して配置された場合、作動可能に連結されている。例えば、プロモーターまたはエンハンサーがあるコード配列の転写に影響を及ぼす場合、そのプロモーターまたはエンハンサーはそのコード配列と作動可能に連結されている。転写調節配列に関して、作動可能に連結は、連結されているDNA配列が近接している、2つのタンパク質コード領域を連結する必要がある場合、近接し、リーディングフレーム内に存在する。スイッチ配列に関して、作動可能に連結されているは、配列がスイッチ組換えに影響を及ぼすことができることを示す。
【0142】
用語「ベクター」は、本明細書中で用いられるように、核酸配列を宿主細胞にトランスファーするのに用いられるいずれかの分子を示す。いくつかの態様において、発現ベクターが利用される。発現ベクターは、宿主細胞の形質転換に適した核酸分子であり、トランスファーされた核酸配列の発現を指示するおよび/または調節する核酸配列を含む。発現は、限定するものではないが、転写、翻訳、およびイントロンが存在する場合にはスプライシングなどの工程を含む。いくつかの態様において、ウイルスベクターが利用される(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウィルス(AAV)、ヘルペスウイルスまたはポックスウイルス、他のもの)。当該分野において、多くのそのようなウイルスベクターが利用可能であることは理解される。さらなる他の態様において、非ウイルスプラスミドベクターも本発明を実施するにあたって好ましい場合がある。本発明のベクターは、当業者には広く利用可能な標準的な組み換え技術を用いて構築することができる。そのような技術は、一般的な分子生物参考書、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(第2版)1989)において見出すことができる。
【0143】
用語「組換え宿主細胞」(または単純に「宿主細胞」)は、本明細書中で用いられるように、組換え発現ベクターが導入された細胞を示すことを意図する。そのような用語は、特定の対象細胞のみを指すのではなく、そのような細胞の娘細胞も指すことが意図されることは理解されるべきである。特定の改変が、突然変異または環境の影響により、世代継代において生じ得て、そのような娘細胞は、実際には、親細胞と同一ではないが、本明細書で用いられるように用語「宿主細胞」の範囲内に依然として含まれる。
【0144】
キメラ抗原受容体
いくつかの例において、本発明は、MICAおよび細胞内T細胞受容体シグナリングドメイン(Kalos Mら、Sci Transl Med.2011 Aug10;3(95))と免疫特異的に結合するペプチドを含むキメラ抗原受容体(CAR)を提供する。いくつかの態様において、CARは、MICA、細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメインおよび細胞内T細胞受容体シグナリングドメインと免疫特異的に結合するペプチドを含む。本発明のさらなる実施形態は、関連核酸、組換え発現ベクター、宿主細胞、細胞集団、抗体またはその抗原結合部分、および本発明のCARに関連する医薬組成物を提供する。
【0145】
キメラ抗原受容体(CAR)は、人工的に構築された、T細胞シグナリングドメインに連結された抗体の抗原結合ドメイン(scFv)を含むハイブリッドタンパク質またはポリペプチドである(Kalos Mら、Sci Transl Med.2011Aug10;3(95))。Kalosらは、CD19を標的とするCART細胞の作出を記載し、そのCAR改変T細胞が慢性リンパ性白血病患者に潜在的な抗腫瘍作用を媒介したことを実証している。人工的に作り出したCARに関するT細胞特徴は、MHC非制限的様式で選択した標的に対するT細胞特異性および反応性を向け直させる能力を含み、モノクローナル抗体の抗原結合特性を拡張するものである。CAR改変T細胞は、生体内で複製し、長期間残留する潜在力を有し、これは、持続した腫瘍制御、および抗体輸注を繰り返す必要性を取り除くことを可能にする(Kalos Mら、Sci Transl Med.2011Aug10;3(95))。MHC非制限的抗原認識は、CARを発現するT細胞に抗原処理から独立して抗原を認識する能力を与え、かくして、腫瘍エスケープの主たる機序を回避する。さらにCARをT細胞に発現させた場合、CARは、有利なことに、内因性のT細胞受容体(TCR)アルファ鎖およびベータ鎖と二量体を形成しない。CAR改変T細胞は、米国特許出願公開第2003/022450号および第2010/0261269号に、ならびにMiloneら、2009 Mol.Ther.17:1453に詳細に記載されている。
【0146】
医薬製剤
いくつかの例において、本明細書中で開示される治療用組成物は、癌の処置に使用される他の化合物、薬物および/または試薬を含んでよい。そのような化合物、薬物および/または試薬には、例えば、所定の癌に対する免疫応答を刺激する化学療法薬、小分子薬または抗体が含まれ得る。いくつかの例において、治療用組成物には、例えば、本明細書中で開示される1つまたは複数のペプチド、および1つまたは複数の抗CTLA−4抗体またはペプチド、抗PD−1抗体またはペプチド、抗PDL−1抗体またはペプチド、抗OX40(別名、CD134、TNFRSF4、ACT35および/またはTXGP1L)抗体またはペプチド、抗GITR(別名、TNFRSF18、AITRおよび/またはCD357)抗体またはペプチド、抗LAG−3抗体またはペプチド、および/または抗TIM−3抗体またはペプチドが含まれ得る。例えば、いくつかの例において、本明細書中で開示される治療用組成物は、1つまたは複数(例えば、1、2、3、4、5または10未満)化合物と組み合わせることができる。
【0147】
いくつかの例において、本明細書中で開示される治療用組成物は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(「HDAC」)阻害剤を含む他の化合物を含んでよい。HDAC阻害剤の例には、例えば、ヒドロキサム酸、Vorinostat(Zolinza);ヒドロキサミン酸サブエロイルアニリド(SAHA)(Merck)、トリコスタチンA(TSA)、LAQ824(Novartis)、パノビノスタット(LBH589)(Novartis)、ベリノスタット(PXD101)(CuraGen)、ITF2357イタルファルマコSpA(Cinisello)、環式テトラペプチド;デプシペプチド(ロミデプシン、FK228)(Gloucester Pharmaceuticals)、ベンズアミド;エンチノスタット(SNDX−275/MS−275)(Syndax Pharmaceuticals)、MGCD0103(Celgene)、短鎖脂肪酸、バルプロ酸 、フェニルブチレート、AN−9、ピバネックス(pivanex)(Titan Pharmaceutical)、CHR−3996(Chroma Therapeutics)およびCHR−2845(Chroma Therapeutics)が含まれる。
【0148】
いくつかの例において、本明細書中で開示される治療用組成物は、プロテアソーム阻害剤、例えばボルテゾミブ(Millennium Pharmaceuticals)、NPI−0052(Nereus Pharmaceuticals)、カルフィルゾミブ(PR−171)(Onyx Pharmaceuticals)、CEP18770及びMLN9708を含む他の化合物を含んでもよい。いくつかの例において、本明細書中で開示される治療用組成物はメルファラン(mephalan)などのアルキル化剤およびアドリアマイシン(ドキソルビシン)などのトポイソメラーゼ阻害剤を含んでよく、それらは、MICA発現を高め、抗MICAモノクローナル抗体の効能を高めることができたことが示された。
【0149】
いくつかの例において、治療用組成物は、例えば、本明細書中で開示される1つまたは複数のペプチド、および1つまたは複数の別の試薬(例えば化学療法、放射線療法、サイトカイン、ケモカインおよび他の生物学的シグナル伝達分子、腫瘍特異ワクチン、細胞癌ワクチン(例えば、GM−CSF形質導入癌細胞)、腫瘍特異モノクローナル抗体、自家および他家幹細胞レスキュー(例えば、移植片対腫瘍効果を増大させる)、他の治療抗体、分子標的療法、抗脈管形成療法、治療を意図した感染試薬(例えば細菌が局在する腫瘍)および遺伝子治療)を含み得る。
【0150】
いくつかの例において、治療用組成物は、本明細書中で記載されるように医薬上許容される担体と共に処方された、抗MICA抗体またはその抗原結合部分の1つまたはそれらの組合せ含んでよい。そのような組成物は、MICAに結合するペプチド、抗体、抗原結合性部分、免疫複合体または二重特異性分子の1つまたはそれら(例えば、異なる2つまたは3以上)の組合せを含んでもよい。
【0151】
例えば、医薬組成物は、標的抗原上の異なるエピトープに結合する、または相補性活性を有する抗体(または、免疫複合体または2重特異性)の組合せを含んでもよい。いくつかの例において、そのような組成物は、MICA*009配列(配列番号:185)内のアミノ酸229〜248を含む又は重複するエピトープと相互作用する1つまたは複数の抗体または抗体断片、MICA*009アミノ酸配列(配列番号:185)内のアミノ酸179〜188を含む又は重複するエピトープと相互作用する抗体または抗体断片、MICA*009アミノ酸配列(配列番号:185)内のアミノ酸119〜128を含む又は重複するエピトープと相互作用する抗体または抗体断片、および/またはMICA*009アミノ酸配列(配列番号:185)内のアミノ酸199〜208を含む又は重複するエピトープと相互作用する抗体または抗体断片を含んでもよい。
【0152】
いくつかの例において、治療用組成物は、MICAに結合し、CM33322mAb4のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3、および/またはCM33322mAb4のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3を含むペプチド、抗体または抗体断片と、抗体ID1、6、7、8、9または12のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3、および/または抗体ID1、6、7、8、9または12のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3を含む1つまたは複数のペプチド、抗体または抗原結合断片とを組み合せて、含んでもよい。いくつかの例において、治療用組成物は、MICAに結合し、CM33322mAb28のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/またはCM33322mAb28のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3を含むペプチド、抗体または抗体断片と、抗体ID1、6、7、8、9、11または12のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID1、6、7、8、9、11または12のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3を含む1つまたは複数のペプチド、抗体または抗原結合断片とを組み合せて、含んでもよい。
【0153】
いくつかの例において、本明細書中に開示される治療用組成物は、医薬組成物として又は医薬組成物に使用するために処方されてよい。そのような組成物は、任意の経路、例えば、食品医薬品局(FDA)に承認された経路のいずれかを通じて対象に投与するために処方または構成され得る。例示的な方法は、FDAのCDERデータ標準マニュアル、バージョン004(fda.give/cder/dsm/DRG/drg00301.htmで入手可能)に記載されている。
【0154】
単回投与形態を産生するための担体物質と組合せられ得る活性成分の量は、処置される対象および特定の投与形式に応じて異なり得る。単回投与形態を生産するための担体物質と組合せられ得る活性物質の量は、一般に、治療効果を奏する組成物のその量であろう。該して、100%に関しては、この量は、医薬上許容される担体と組み合せて、活性成分の約0.01%〜約99%、好ましくは約0.1%〜約70%、最も好ましくは活性成分の約1%〜約30%の範囲であろう。
【0155】
いくつかの例において、医薬組成物は、有効量の1つまたは複数のペプチドを含んでもよい。用語「有効量」および「処置に効果的」は、本明細書中で用いられるように、意図した効果または生理学的結果を生じさせる投与内容の範囲内で効果的な期間の間(急性または慢性投与および定期的または連続的投与を含む)、1つまたは複数のペプチド(例えば、MICAに結合する抗体または抗体断片)の量または濃度を意味する。
【0156】
いくつかの例において、医薬組成物は、1つまたは複数のペプチドおよびいずれか医薬上許容される担体、アジュバントおよび/またはビヒクルを含んでもよい。いくつかの例において、医薬は、さらに1つまたは複数の追加の治療薬を、疾患または疾患症状の調節を達成するのに効果的な量で含んでもよい。
【0157】
用語「医薬上許容される担体またはアジュバント」は、患者に、本発明のペプチドと共に投与することができ、その医薬活性を失わせず、組成物の治療量を送達するのに十分な投薬量を投与した場合に無毒である担体またはアジュバントを意味する。
【0158】
本発明の医薬組成物において使用されてもよい医薬上許容される担体、アジュバントおよびビヒクルは、限定するものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、自己乳化型(self-emulsifying)薬物送達システム(SEDDS)、例えばd−I−トコフェロールポリエチレングリコール1000、医薬投薬形態に使用される界面活性剤、例えばTweenまたは他の類似の重合性送達マトリックス、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースベースの物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂を含む。シクロデクストリン、例えばI−、J−およびK−シクロデクストリンも、本明細書中に記載される式の化合物の送達を高めるのに有利に使用することができる。
【0159】
本発明の医薬組成物は、いずれかの慣用の非中毒性医薬的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを含んでもよい。いくつかの場合において、配合物のpHは、処方された化合物またはその送達形態の安定性を高めるために、医薬上許容される酸、基剤またはバッファーで調整されてもよい。本明細書で用いられる用語「非経口」は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、腱滑液鞘内、胸骨内(intrasternal)、クモ膜下腔内、病巣内および頭蓋内注射または注入技術を含む
【0160】
医薬組成物は、吸入および/または鼻腔投与のための溶液または粉末の形態であってよい。そのような組成物は、当分野の公知の技術に従い、適切な分散剤または湿潤剤(例えばTween80)および懸濁剤を用いて処方され得る。無菌の注射可能調合物は、また、無毒な非経口的に許容される希釈剤または溶媒における無菌の注射可能な液剤または懸濁剤、例えば1,3−ブタンジオールにおける液剤であってよい。とりわけ使用可能な許容されるビヒクルおよび溶剤は、マンニトール、水、リンガー溶液および生理食塩液はある。加えて、無菌の固定油は、溶剤または懸濁媒(suspending medium)として慣用されている。この目的に関して、いずれの無菌性の固定油、例えば合成モノ−またはジグリセリドが用いられてもよい。それらが、特にそれらのポリオキシエチル化バージョンにおいて、天然の医薬的に許容される油、例えばオリーブ油またはヒマシ油であるため、脂肪酸、例えばオレイン酸およびそのグリセリド誘導体が注射可能な薬物調合物に有用である。これらの油溶剤または懸濁剤はまた、長鎖アルコール希釈剤または分散剤またはカルボキシメチルセルロース、もしくは医薬上許容される投薬形態の配合物に一般的に用いられる類似の分散助剤、例えばエマルジョンおよびまたは懸濁剤を含んでもよい。他の一般に用いられる界面活性剤、例えばTweenまたはSpansおよび/または医薬上許容される固体、液体、または他の投薬形態の製造に一般的に用いられる他の類似の乳化剤またはバイオアベイラビリティーエンハンサーも、配合物の目的に関して用いることができる。
【0161】
医薬組成物は、いずれかの経口摂取可能な投与形態で、限定するものではないが、例えばカプセル剤、錠剤、エマルジョンおよび水性懸濁剤、分散剤および液剤で経口投与することができる。経口摂取に使用する錠剤の場合、通常用いられる担体としては、ラクトースおよびトウモロコシデンプンが挙げられる。潤滑剤、例えばステアリン酸マグネシウムも典型的に添加される。カプセル形態の経口投与に関しては、有用な希釈剤として、ラクトースおよび乾燥トウモロコシデンプンが挙げられる。水性懸濁剤および/またはエマルジョンを経口投与する場合、活性成分は、油相中に乳化剤および/または懸濁剤と組み合せて懸濁または溶解され得る。必要に応じて、特定の甘味料および/または香味料および/または着色料が添加され得る。
【0162】
別には、又は加えて、医薬組成物は、点鼻エアロゾルまたは吸入により投与されてよい。そのような組成物は、医薬製剤の分野で周知の技術に従って調製され、また、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、バイオアベイラビリティを高めるための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または当分野で公知の他の可溶化剤または分散剤を用いて、塩水における液剤として調製され得る。
【0163】
いくつかの実施形態、本開示は、本明細書に、以下の方法にて、開示するいずれか1つまたは複数のペプチドまたは医薬組成物(以下、「X」という。)を使用する方法を提供する:
本明細書に開示される1つまたは複数の疾患または状態(例えば、癌(以下の例では「Y」という。)の処置において医薬として使用するための物質X。
Yの処置のための医薬の製造のための物質Xの使用;および
Yの処置に使用するための物質X。
【0164】
いくつかの例において、本明細書中に開示される治療用組成物は、米国にて販売するために、米国に輸入するために、および/または米国から輸出するために処方され得る。
【0165】
方法
いくつかの例において、方法は、状態または疾患を有する又は有したヒト対象および状態または疾患に対して陽性の免疫応答を示す又は示したヒト対象を選抜することを含んでよい。いくつかの例において、適切な対象は、例えば、状態もしくは疾患を有する対象、または該状態もしくは疾患を有したが前記疾患もしくはその態様が解消した対象(例えば、同じ状態もしくは疾患を有する他の対象(例えば、大部分の対象)と比較して)、および/または前記状態または疾患を有しつつも延長された期間、例えば無症状の状態で(前記状態もしくは疾患を有する他の対象(例えば、大部分の対象)と比較して)生存する対象(例えば、同じ状態もしくは疾患を有する他の対象(例えば、大部分の対象)と比較して)を含む。いくつかの例において、対象は、状態または疾患に対するワクチン接種を受けた(例えば、以前にワクチン接種されたおよび/またはワクチン接種され、再ワクチン接種された(例えば、追加ワクチン接種を受けた)場合に選抜され得る。
【0166】
用語「対象」は、本明細書中で用いられるように、いずれかの動物を示す。いくつかの例において、対象は哺乳動物である。いくつかの例において、用語「対象」は、本明細書中で用いられるように、ヒト(例えば、男性、女性または子供)を示す。本方法に使用するための試料としては、血清試料、例えば、選抜された対象から採取されたものが挙げられる。
【0167】
いくつかの例において、対象の選抜は、対象(例えば、候補対象)から試料を採取すること、およびその対象が選抜に適することの指標に関して、該試料を試験することを含み得る。いくつかの例において、対象は、例えば、ヘルスケアの専門家により、状態または疾患を有していた又は有すると確認または特定され得る。いくつかの例において、状態または疾患に対して陽性の免疫応答の表示は、患者の記録、家族の病歴および/または陽性免疫応答の兆候の検出から行うことができる。いくつかの例において、複数の団体を対象選抜に含めてもよい。例えば、第一の団体は候補対象から試料を入手し、第二の団体はその試料を試験してよい。いくつかの例において、対象は選抜され、および/または医師(例えば、一般開業医)による照会が行われてよい。いくつかの例において、対象選抜は、選抜された対象から試料を採取すること、および該試料を保存すること、および/または本明細書に開示される方法に該試料を使用することを含み得る。試料は、例えば、細胞または細胞集団を含み得る。
【0168】
いくつかの例において、免疫細胞を採取または標的とすることは、例えば、標的とする免疫細胞に結合(例えば、特異的に結合)し得る四量体免疫原を得ること又は提供すること;前記四量体免疫原を試料と接触させること;前記四量体免疫原を検出すること;前記四量体免疫原が標的免疫細胞に結合したか否かを決定すること;および前記四量体免疫原が標的免疫細胞に結合している場合、その標的免疫細胞を得ること、の1つまたは複数および/またはそれらの組合せを含んでよい。
【0169】
四量体免疫原は、状態または疾患に関係し、および/または標的免疫細胞に結合(例えば、特異的に結合)する免疫原を含んでよく、前記標的免疫細胞は、選択された状態または疾患に関係する。状態または疾患に関連する免疫原および標的免疫細胞としては、例えば、前記状態または疾患を有する対象に存在するが特定の状態または疾患を有さない対象には存在しない免疫原または免疫細胞;および/または特定の状態または疾患を有さない対象に比べて、前記状態または疾患を有する対象において異なるレベル(例えば増大したレベル)で存在する免疫原または免疫細胞が挙げられる。いくつかの例において、免疫原または免疫細胞は、癌特異的であってよい。免疫原は可溶性であってよい。四量体免疫原は、四量体(例えば、四量体化された単量体、二量体および/または三量体抗原免疫原(例えば抗原および/またはエピトープ)を含む)を含んでよい。いくつかの例において、四量体免疫原は、四量体形態ではない形態の免疫原と細胞との間の結合性と比べて、同様の条件下で、その細胞に対して増大した結合性を有する。いくつかの例において、四量体抗原は、検出可能な部分、例えばストレプトアビジン部分を含む。四量体化の方法は、当分野で公知であり、本明細書において開示される。
【0170】
四量体免疫原を検出すること、および/または四量体免疫原が標的細胞に結合したか否かを決定することは、当分野で公知の方法および/または本明細書で開示される方法を用いて実施することができる。例えば、該方法は、フローサイトメトリーを含み得る。フローメトリーの最適な方法、例えばソーティング方法およびゲーティング方法は、当分野で公知であり、および/または本明細書に開示される。いくつかの例において、該方法は、四量体免疫原の標的免疫細胞に対する結合レベル、結合親和性および/または結合特異性の分析を含み得る。例えば、標的免疫細胞は、四量体免疫原と標的免疫細胞との間で所定のレベルの結合が測定された場合(例えば、その場合のみ)、標的免疫細胞を得ることができる。所定レベルの結合は、特異的なレベルであってよく、および/または相対的なレベルであってよい。標的免疫細胞を得ることは、標的免疫細胞を採取、提供、同定、選択、精製および/または単離することを含み得る。そのような方法は、例えば、細胞ソーティング方法、細胞富化、および/またはバックグラウンド低減を含み得る。
【0171】
いくつかの例において、自己抗原に対する免疫細胞を得ることは、自己抗原に対して陽性の免疫応答を示す対象を特定すること;多量体形態の前記自己抗原を得ること又は提供すること;前記多量体形態の自己抗原を、前記自己抗原に対して陽性の免疫応答を示す対象由来の試料と接触させること;前記多量体形態の自己抗原に結合した免疫細胞を得ること、の1つまたは複数、および/またはその組み合わせを含んでよい。
【0172】
いくつかの例において、該方法は、自己抗原に対する免疫細胞を癌患者から得ることを含んでよく、例えば、前記自己抗原に対する陽性の免疫応答を示す対象を特定すること;多量体形態の前記自己抗原を提供すること;前記多量体形態の自己抗原を、前記自己抗原に対して陽性の免疫応答を示す対象由来の試料と接触させること;および、前記多量体形態の自己抗原に結合した免疫細胞を得ること、の1つまたは複数、および/またはその組み合わせを含んでよい。
【0173】
多量体形態の自己抗原は、状態または疾患に関連し、および/または標的免疫細胞に結合(例えば、特異的に結合)する自己抗原を含んでよく、例えば、前記標的免疫細胞は、選択した状態または疾患に関連する。状態または疾患に関連した自己抗原および標的免疫細胞は、例えば、特定の状態または疾患を有する対象に存在するが、前記状態または疾患を有さない対象には存在しない抗原または免疫細胞;および/または特定の状態または疾患を有さない対象に比べて前記状態または疾患を有する対象において改変されたレベル(即ち、増大したレベル)で存在する免疫原または免疫細胞を含む。いくつかの例において、状態または疾患は癌であってよい。いくつかの実施形態において、癌は、メラノーマ、肺癌、乳癌、腎臓癌、卵巣癌、前立腺癌、すい臓癌、胃癌、グリア芽腫、肝臓癌、および結腸癌、リンパ腫もしくは白血病である。いくつかの例において、自己抗原または免疫細胞は、癌特異的であってよい。自己抗原は可溶性であってよい。多量体形態の自己抗原は、四量体形態(例えば、四量体化された単量体、二量体および/または三量体抗原を含む)の自己抗原(例えば抗原および/またはエピトープ)を含んでよい。いくつかの例において、多重形態の自己抗原は、検出可能な部分(例えば、ストレプトアビジン部分)を含む。多量体化の方法は、当分野で公知であり、本明細書において開示される。
【0174】
遺伝物質(例えば、DNAおよび/またはmRNA)を得られた標的免疫細胞から単離または精製する方法は、当分野で公知であり、本明細書中で例示される。そのような遺伝物質が取得された場合に、本明細書中に開示される治療用組成物を製造するために前記遺伝物質を使用する方法は、当分野で公知であり、および/または以下に概略される。上記したように、遺伝物質は、当分野で公知の技術を用いて改変し、本明細書で開示されるペプチドバリアントを作り出すことができる。
【0175】
標的細胞内に含まれる又は標的細胞から得られる核酸(例えばcDNA)からペプチドを生成することは、例えば、分析、例えば標的免疫細胞(例えば、単一または単離し特定された標的免疫細胞)由来の重鎖および軽鎖可変ドメインを配列決定することを含み得る。いくつかの例において、該方法は、完全なヒト抗体、またはその断片(例えば、上記開示のもの)を生成すること、および非ヒト抗体のヒト化を含む。DNAは、得られた免疫細胞から、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合できるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に単離および/または配列決定することができる。
【0176】
DNAは単離されると、発現ベクターに配することができ、次いで、それを宿主細胞(例えば、これをしなければ抗体タンパク質を産生しない大腸菌、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはミエローマ細胞)にトランスフェクトし、前記組換え宿主細胞中でモノクローナル抗体の合成物を得ることができる。抗体をコードするDNAの細菌内での組換え発現に関するレビュー文献として、Skerraら、Curr.Opinion in Immunol.,5:256−262(1993)およびPluckthun,Immunol.Revs.,130:151−188(1992)が挙げられる。
【0177】
抗体またはそのバリアントの組換え発現は、一般に、前記抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターの構築を必要とする。本発明は、かくして、抗体分子、抗体の重鎖もしくは軽鎖、抗体またはその一部の重鎖もしくは軽鎖可変部分、または重鎖もしくは軽鎖CDRをコードし、プロモーターに作動可能に連結されているヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターを提供する。そのようなベクターは抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列(米国特許第5,981,216号;第5,591,639号;第5,658,759号および第5,122,464号)を含んでもよく、および抗体の可変部分ドメインは、完全な重鎖、完全な軽鎖、または完全な重鎖と軽鎖の両方を発現するためのベクターにクローニングされてよい。発現ベクターが従来技術により宿主細胞へトランスファーされたら、次に、トランスフェクトしたその細胞を従来技術により培養し、抗体を産生させる。かくして、本発明は、本発明に係る抗体またはその断片、またはその重鎖もしくは軽鎖、あるいはその部分、または本発明の一本鎖抗体をコードし、異種起源のプロモーターに作動可能に連結されたポリヌクレオチドを含む宿主細胞を含む。二本鎖抗体の発現に関する特定の実施形態において、重鎖と軽鎖の両方をコードするベクターを、完全な免疫グロブリン分子の発現のために、下記するように宿主細胞に共発現させてよい。
【0178】
組換え抗体発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞系は当分野で周知であり、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞系を含み、例えば、限定するものではないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビー・ハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝癌細胞(例えば、HepG2)、ヒト上皮腎臓293細胞および他の細胞系が挙げられる。異なる宿主細胞はタンパク質および遺伝子産物の翻訳後プロセッシングおよび修飾に関して特徴的かつ特異的なメカニズムを有する。適切な細胞系または宿主系が、その発現される抗体またはタンパク質の正しい修飾およびプロセッシングを確保するために選ぶことができる。この目的のために、遺伝子産物の一次転写産物、グリコシル化およびリン酸化の適当なプロセッシングのための細胞機構を備えている真核生物宿主細胞が用いられ得る。そのような哺乳動物宿主細胞は、限定するものではないが、CHO、VERY、BHK、Hela、COS、MDCK、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2OおよびT47D、NS0(いずれの機能的免疫グロブリン鎖も内因的に産生しないネズミ骨髄腫細胞株)、SP20、CRL7O3OおよびHsS78Bst細胞を含む。1つの実施形態において、ヒトリンパ球を不死化することによって開発されたヒト細胞系が、モノクローナル抗体を組み換え技術により産生するのに用いることができる。1つの実施形態において、ヒト細胞系PER.C6.(Crucell、Netherlands)を、モノクローナル抗体を組み換え技術により産生するのに用いることができる。
【0179】
いくつかの例において、本明細書中で開示されるペプチドは、合成して生成することができる。本明細書中に記載されるペプチドを合成するのに有用な合成化学形質転換および保護基の方法論(保護および脱保護)は、当分野において既知であり、例えば、R.Larock,Comprehensive Organic Transformations,VCH Publishers(1989);T.W.GreeneおよbP.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,3d.Ed.,John WileyおよびSons(1999);L.FieserおよびM.Fieser,FieserおよびFieser’s Reagents for Organic Synthesis,John WileおよびSons(1994);およびL.Paquette,ed.,Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis,John WileyおよびSons(1995)、およびその続編に記載のものを含む。
【0180】
ペプチドも、化学合成方法によって作り出すことができ、その方法は当業者には周知である(例えば、Fieldsら、Chapter 3 in Synthetic Peptides:A User’s Guide,ed.Grant,W.H.Freeman & Co.,New York,N.Y.,1992,p.77を参照のこと)。かくして、ペプチドは、例えばApplied Biosystems Peptide Synthesizer Model 430Aまたは431における側鎖保護されたアミノ酸を用いるt−BocまたはFmoc化学のいずれかによりα−NH
2保護する、固相合成のオートメーション化メリーフィールド(Merrifield)技術を用いて合成することができる。
【0181】
本明細書中に記載されるペプチドを製造する1つの様式は、固相ペプチド合成(SPPS)を用いる。C末端アミノ酸が、リンカー分子を用いた酸変性容易な接合材を介して架橋ポリスチレン樹脂に繋がれる。この樹脂は合成に用いられる溶剤に不溶性であり、過剰量の試薬および副産物を洗浄することを比較的単純化し、迅速化する。N末端を、酸に安定であるが塩基により除去可能なFmoc基で保護する。いずれかの側鎖の官能基は塩基に安定で、酸に不安定な基で保護される。
【0182】
より長いペプチドは、天然の化学ライゲーションを用いて個々の合成ペプチドを連結することによって製造し得る。別には、より長い合成ペプチドを周知の組換えDNA技術によって合成できる。そのような技術は、詳細なプロトコルを含み、周知の標準的なマニュアルにて提供される。本発明のペプチドをコードする遺伝子を構築するために、アミノ酸配列を逆転写して、好ましくは該遺伝子が発現される生物に適したコドンの、該アミノ酸配列をコードする核酸配列を得る。次に、合成遺伝子を、典型的に前記ペプチド、および必要に応じて任意の調節エレメントをコードするオリゴヌクレオチドを合成することによって作製する。その合成遺伝子を適切なクローニングベクターに挿入し、宿主細胞にトランスフェクトする。次いで、該ペプチドを、選択した発現系と宿主に適した適切な条件下発現させる。該ペプチドを標準的な方法により精製し、特徴を調べる。
【0183】
ペプチドはハイスループット、コンビナトリアル様式で製造してよく、例えば、Advanced Chemtechから入手可能なハイスループット・多チャンネル・コンビナトリアル合成装置を用いて製造してよい。ペプチド結合は、例えば、ペプチドの生理学的安定性を高めるために、以下のものにより置き換えてもよい:レトロ・インベルソ結合(C(O)−NH);還元アミド結合(reduced amide bond)(NH−CH
2);チオメチレン(thiomethylene)結合(S−CH
2またはCH
2−S);オキソメチレン(oxomethylene)(O−CH
2またはCH
2−O);エチレン結合(CH
2−CH
2);チオアミド結合(C(S)−NH);トランス・オレフィン結合(CH=CH);フルオロ置換トランスオレフィン(CF=CH);ケトメチレン結合(C(O)−CHR)またはHR−C(O)(式中、RがHまたはCH
3である);およびフルオロ・ケトメチレン結合(C(O)−CFRまたはCFR−C(O)(式中、Rは、HまたはFまたはCH
3である)。ペプチドは、以下によってさらに改変されてよい:アセチル化、アミド化、ビオチン化、シンナモイル化(cinnamoylation)、ファルネシル化、フルオレセイン化(fluoresceination)、ホルミル化、ミリストイル化、パルミトイル化、リン酸化(セリン、チロシンまたはスレオニン)、ステアロイル化(stearoylation)、サクシニル化およびスルフリル化(sulfurylation)。上記されるように、ペプチドは、例えば、ポリエチレングリコール(PEG);アルキル基(例えば、C1−C20直鎖または分枝鎖アルキル基);脂肪酸基;およびそれらの組合せにコンジュゲートされてよい。
【0184】
いくつかの例において、ペプチドは、免疫グロブリン分子の精製について当分野で既知のいずれかの方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特に特異的な抗原であるプロテインAまたはプロテインGに関する親和性、およびサイズカラムクロマトグラフィーによって)、遠心分離、示差可溶性(differential solubility)、またはタンパク質精製に関する他の標準的な技術のいずれかによって精製されてよい。さらに、本発明の抗体またはその断片は、上記した或いは精製を促進するのに当分野で公知の異種起源のポリペプチド配列(本明細書中、「タグ」という)と融合されてよい。
【0185】
例示的、非限定的方法の概要を
図5A〜5Fに示す。順序を示すものではない。
【0186】
いくつかの例において、本開示はまた、本明細書中に記載の抗体のアミノ酸配列に相同性があるアミノ酸配列を有し、所望の機能的MICA結合特性を維持する、重鎖可変領域および/または軽鎖可変領域を有する抗体または抗体断片を提供する。例えば、いくつかの実施形態において、抗体または抗体断片は、上記配列と85%、90%、95%、96%、97%、98%でまたは99%同一なV
Hおよび/またはV
Lを含み得る。配列番号:2、77、96、113、131、150または168および11、79、98、115、133、152または170のV
HおよびV
L領域と高い(すなわち、80%またはそれを超える)ホモロジーを有するV
HおよびV
L領域を有する抗体または抗体断片は、それぞれ、配列番号:77、96、113、131、150または168や79、98、115、133、152または170をコードする核酸分子の突然変異生成(例えば、部位特異的またはPCRによる突然変異生成)によって得ることができ、続いて、コードされる改変抗体を維持された機能(即ち、1つまたは複数の機能、例えば、MICAのアルファ3ドメインに結合すること;MICAの脱落を阻止すること;MICAに結合するNGKDの結合を阻止しない;NGKDダウンレギュレーションを誘導する可溶性MICAを阻止する、およびNK細胞媒介性細胞障害性を減少させる)を、本明細書に記載される機能アッセイを用いて試験する。
【0187】
MICAに対する結合と競争する(例えば、クロス競争(cross−compete)する)抗体および抗体断片、本明細書中に記載の特定の抗MICA抗体(例えば、抗体ID1、6、7、8、9、11および12)も提供される。そのような競争性の抗体は、標準的なMICAにおいてMICAの抗体への結合を競争的に阻止する能力に基づいて特定することができる。例えば、組換えヒトMICAタンパク質をプレート上に固定し、一方の抗体を蛍光標識し、前記標識抗体が結合することから競争する非標識抗体の能力を評価する標準的なELISAアッセイを、用いることができる。加えて又は別に、BIAcore分析を用いて、クロス競争する抗体の能力を評価することができる。MICAに対する抗MICA抗体の結合を阻止する被験抗体の能力は、被験抗体がMICAに結合する抗体と競合し得ることを実際に示す。
【0188】
したがって、1つの実施形態において、本開示は、本明細書中で記載される抗MICA抗の活性化T細胞上のMICAに対する結合を、FACSで測定した場合に、少なくとも50%、例えば、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%阻害する抗MICA抗体を提供する。例えば、候補競合性抗MICA抗体による抗MICA抗体の結合の阻害は、実施例に記載の条件下で評価することができる。
【0189】
いくつかの例において、本開示は、本明細書中に記載の抗MICA抗体(例えば、抗体ID8、9、11および12)と同じエピトープに結合する抗MICA抗体を提供する。実施例14においてさらに述べるように、抗体ID8(CM33322mAb11)はMICA*009アミノ酸配列(配列番号:185)内の残基119〜128を含むエピトープと結合する;抗体ID9(CM33322mAb29)はMICA*009アミノ酸配列(配列番号:185)内の残基229〜248を含むエピトープと結合する;抗体ID11(CM33322mAb4)はMICA*009アミノ酸配列(配列番号:185)内の残基179〜188を含むエピトープと結合する;および抗体ID12(CM33322mAb28)はMICA*009アミノ酸配列(配列番号:185)内の残基199〜208を含むエピトープと結合する。したがって、いくつかの実施形態において、本開示は、MICA*009のアミノ酸181〜274に対応するα3領域内のアミノ酸残基に結合する抗MICA抗体または抗体断片を提供する。
【0190】
本明細書に記載の抗体と「MICA上の同一のエピトープ」に結合する抗体を決定する技術には、例えばエピトープマッピング法、例えばエピトープの原子レベル分解能を与える抗原:抗体複合体のx線結晶構造解析が挙げられる。抗原断片または抗原の変異バリアントに対する抗体の結合をモニタする他の方法において、抗原配列内のアミノ酸残基の改変のために結合が消失する場合、それはエピトープ成分の指標であるとしばしば考えられる。加えて、エピトープマッピングのための計算コンビナトリアル手法も用いることができる。これらの方法は、組合せのファージディスプレイ・ペプチドライブラリー由来の特異的な短いペプチドを親和性で単離する、興味対象の抗体の能力に依存する。該ペプチドを、次いで、ペプチドライブラリーをスクリーニングするのに用いた抗体に対応するエピトープを規定するためのリードとみなす。エピトープマッピングに関して、不連続立体構造エピトープをマッピングする計算アルゴリズムが示されている。
【0191】
例えば、マウスを、本明細書中に記載のヒトMICAを用いて免疫し、ハイブリドーマを産生し、結果的に得られるモノクローナル抗体を、MICAに結合するmAb4またはmAb28と競争するその能力についてスクリーニングする。また、マウスを、mAb4モノクローナル抗体が結合するエピトープを含むMICAの小断片を用いて免疫してもよい。同一のエピトープを有し、それ故に元のモノクローナル抗体と類似する特徴を有するモノクローナル抗体の選抜を誘導するために、例えばJespersら、12:899 Biotechnology、1994の方法を用いることができる。ファージディスプレイを用いて、まず、元の抗体の重鎖を(好ましくはヒトの)軽鎖レパートリーと対を形成させて、MICA−結合モノクローナル抗体を選択し、次いで、その新たな軽鎖を(好ましくはヒトの)重鎖レパートリーと対を形成させて、元のモノクローナル抗体と同じエピトープを有するMICA−結合モノクローナル抗体を選択する。別には、元のモノクローナル抗体(例えば、mAb4、ID11またはmAb28、ID12)のバリアントは、該抗体の重鎖および軽鎖をコードするcDNAに関する突然変異生成によって得ることができる。
【0192】
例えばChampeら、(1995)J.Biol.Chem.270:1388−1394に記載されるエピトープマッピングを実施して、抗体が興味対象のエピトープに結合するか否かを決定することができる。また、CunninghamおよびWells(1989)Science 244:1081−1085に記載される「アラニンスキャニング突然変異生成」またはMICAもしくはMICBにおけるアミノ酸残基の点突然変異生成に関するいくつかの他の形態を用いて、本発明の抗MICAまたはMICB抗体の機能的エピトープを決定することができる。しかしながら、突然変異生成の研究は、MICAまたはMICBの全体的な3次元構造に重要なアミノ酸残基を明らかにするが、それらは、抗体−抗原接触に直接関与せず、かくして、この方法を用いて決定された機能的エピトープを確認するために、他の方法が必要とされ得る。
【0193】
抗体競合アッセイは、本明細書中に記載されるように、ある抗体が、他の抗体と「同じエピトープに結合する」か否かを決定するために用いることができる。典型的に、第2の抗体が過剰量で存在し、第1の抗体がすべての部位を飽和させる状況下、その第2の抗体によって、エピトープと相互作用することが知られている抗体が50%またはそれを超えて、60%またはそれを超えて、70%またはそれを超えて、例えば70%、71%、72%、73%、74%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれを超えて競合されることが、該抗体が「同一のエピトープに結合する」ことの指標である。2つの抗体間での競合レベルを評価するために、例えば、抗体のための他の標識を用いる標識免疫検定法またはアッセイを用いてもよい。例えば、MICAまたはMICB抗原を、標識化合物(例えば、
3H、
125I、ビオチンまたはルビジウム)とコンジュゲートした飽和量の第一の抗MICA抗体またはその抗原結合断片と共に、同一量の第2の未標識抗MICA抗体の存在下、インキュベートさせてよい。次いで、未標識の遮断抗体の存在下、抗原と結合する標識化抗体の量を評価し、未標識遮断抗体の非存在下での結合と比較する。競合は、未標識遮断抗体の存在下での結合シグナルを前記遮断抗体非存在下と比べた変化%により決定される。かくして、標識化抗体の結合が、前記遮断抗体の非存在下での結合と比較して、遮断抗体の存在下で50%阻害される場合、それで、該2つの抗体50%間で競合がある。かくして、第一の抗体と第二の抗体との間の、50%またはそれを超える、60%またはそれを超える、70%またはそれを超える、例えば70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれを超える競合に関する言及は、第一の抗体が、第二の抗体のその抗原に対する結合を(前記第二の抗体の前記第一の抗体の非存在下での抗原への結合と比較して)50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれを超えて阻害することを意味する。かくして、第二の抗体による、第一の抗体のその抗原に対する結合の50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれを超える阻害は、該2つの抗体が同じエピトープに結合することを示す。
【0194】
天然の抗体と比較して、多くとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のアミノ酸の相違(例えば、置換、付加または欠失)を含む、遺伝子工学による組換え抗体も提供される。1個または複数のアミノ酸の相違が軽鎖および/または重鎖にあってよく、1個または複数のCDRにあってもよく、フレームワーク領域、もしくは定常領域内、例えばCL、CH1、ヒンジ、CH2またはCH3にあってもよい。例えば、(1)本明細書中に記載の1つまたは複数のV
HCDR領域を含むV
H配列と、本明細書中に記載の1つまたは複数のV
LCDR領域を含むV
L配列と、および(2)異種起源のフレームワーク領域を含む遺伝子工学による組換え抗体が提供される。異種起源のフレームワーク領域は、そのCDR領域の本来の供給源ではない抗体、細胞またはヒトに由来してもよい。例えば、いくつかの実施形態において、抗体は、表1に示される抗体ID1、6、7、8、9、11または12のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID1、6、7、8、9、11または12のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、同一のCDRを含む抗体ID1、6、7、8、9、11または12由来ではないフレームワーク領域とを含んでよい。いくつかの実施形態において、抗体は、表1に示される抗体ID1のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID1のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID1由来ではないフレームワーク領域とを含んでよい。いくつかの実施形態において、抗体は、表1に示される抗体ID6のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID6のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID6由来ではないフレームワーク領域とを含んでよい。いくつかの実施形態において、抗体は、表1に示される抗体ID7のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID7のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID7由来ではないフレームワーク領域とを含んでよい。いくつかの実施形態において、抗体は、表1に示される抗体ID8のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID8のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID8由来ではないフレームワーク領域とを含んでよい。いくつかの実施形態において、抗体は、表1に示される抗体ID9のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID9のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID9由来ではないフレームワーク領域とを含んでよい。いくつかの実施形態において、抗体は、表1に示される抗体ID11のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID11のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID11由来ではないフレームワーク領域とを含んでよい。いくつかの実施形態において、抗体は、表1に示される抗体ID12のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID12のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID12由来ではないフレームワーク領域とを含んでよい。
【0195】
また、(1)本明細書中に記載の1つまたは複数のV
HCDR領域を含むV
H配列と、本明細書中に記載の1つまたは複数のV
LCDR領域を含むV
L配列と、および(2)異種起源の定常領域を含む遺伝子工学による組換え抗体が提供される。異種起源の定常領域は、そのCDR領域の本来の供給源ではない抗体、細胞またはヒトに由来してもよい。例えば、いくつかの実施形態において、抗体は、表1に示される抗体ID1、6、7、8、9、11または12のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID1、6、7、8、9、11または12のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、そのCDRを得たヒト以外のヒト由来の定常領域を含んでよい。いくつかの実施形態に、抗体は、表1に示される抗体ID1のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID1のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID1由来ではない定常領域とを含んでよい。いくつかの実施形態に、抗体は、表1に示される抗体ID6のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID6のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID6由来ではない定常領域とを含んでよい。いくつかの実施形態に、抗体は、表1に示される抗体ID7のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID7のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID7由来ではない定常領域とを含んでよい。いくつかの実施形態に、抗体は、表1に示される抗体ID8のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID8のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID8由来ではない定常領域とを含んでよい。いくつかの実施形態に、抗体は、表1に示される抗体ID9のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID9のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID9由来ではない定常領域とを含んでよい。いくつかの実施形態に、抗体は、表1に示される抗体ID11のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID11のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID11由来ではない定常領域とを含んでよい。いくつかの実施形態に、抗体は、表1に示される抗体ID12のV
HのCDR1、CDR2およびCDR3および/または抗体ID12のV
LのCDR1、CDR2およびCDR3と、抗体ID12由来ではない定常領域とを含んでよい。また、(1)本明細書中に記載の1つまたは複数のV
HCDR領域を含むV
H配列と、本明細書中に記載の1つまたは複数のV
LCDR領域を含むV
L配列と、および(2)異種起源のFc領域を含む遺伝子工学による組換え抗体が提供される。異種起源のFc領域は、そのCDR領域の本来の供給源ではない抗体、細胞またはヒトに由来してもよい。
【0196】
また、本明細書に記載の1つまたは複数のV
Hおよび/またはV
L配列を有する抗体を、改変抗体を作り出すための出発物質として用いて調製でき、その出発抗体から改変された特性を有し得る遺伝子工学による改変抗体も提供される。抗体は、1つまたは複数の可変領域(即ち、V
Hおよび/またはV
L)内、例えば、1つまたは複数CDR領域内および/または1つまたは複数のフレームワーク領域内の1つまたは複数の残基を修飾することによって作り出すことができる。加えて又は別に、抗体は、定常領域(複数の領域)内の残基を、例えば、抗体のエフェクター機能(複数の機能)を改変するために、修飾することによって作り出すことができる。
【0197】
実施し得る可変領域の遺伝子工学による作製の1つの形態はCDR移植(グラフティング)である。抗体は、主として、6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)に位置するアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。この理由のため、CDR内のアミノ酸配列は、個々の抗体間で、CDR外の配列よりも多様である。CDR配列が抗体−抗原相互作用の大部分を担うため、異なる特性を有する異なる抗体由来のフレームワーク配列に移植された特定の天然の抗体からCDR配列を含む発現ベクターを構築することによって、その特定の天然の抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることは可能画である(例えば、Riechmann,Lら、(1998)Nature
332:323−327;Jones,Pら、(1986)Nature
321:522−525;Queen,Cら、(1989)Proc.Natl.Acad.See.U.S.A.
86:10029−10033;Winterに対する米国特許第5,225,539号、及びQueenらに対する米国特許第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号および第6,180,370号を参照のこと)。
【0198】
したがって、本発明の他の実施形態は、配列番号:4、81、100、117、135、154および172、配列番号:84、102、119、137、156および174および配列番号:8、86、103、121、139、158および176からなる群から選択されるアミノ酸配列をそれぞれ含むCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域と、配列番号:13、88、106、124、142、161および179、配列番号:90、108、126、144、163および181、および配列番号:17、92、110、128、146、165および183からなる群から選択されるアミノ酸配列をそれぞれ含むCDR1、CDR2およびCDR3配列とを含む単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部位に関する。かくして、そのような抗体は、表1に示されるモノクローナル抗体ID1、6、7、8、9、11または12のV
HおよびV
LのCDR配列を含むが、これらの抗体とは異なるフレームワーク配列を含んでもよい。
【0199】
そのようなフレームワーク配列は、生殖細胞系の抗体遺伝子配列を含む公共DNAデータベースまたは公開された参考文献から入手できる。例えば、ヒト重鎖及び軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系のDNA配列は、“VBase”ヒト生殖細胞系配列データベース インターネットwww.mrc−cpe.cam.ac.uk/vbaseにて利用可能である)、並びに、Kabat,E.Aら、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,第5版,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91−3242;Tomlinson,I.Mら、(1992)「The Repertoire of Human Germline V
HSequences Reveals about Fifty Groups of V
HSegments with Different Hypervariable Loops」 J.Mol.Biol.
227:776−798;およびCox,J.P.Lら、(1994)「A Directory of Human Germ−line V
HSegments Reveals a Strong Bias in their Usage」Eur.J.Immunol.
24:827−836において見出すことができる(これらの刊行物の各々の内容は引用により本明細書に明示的に組み込まれる)。
【0200】
本発明の抗体に使用する例示したフレームワーク配列は、本明細書中に記載の抗体に使用されるフレームワーク配列に構造的に類似しているものを含む。V
HCDR1、2および3配列およびV
LCDR1、2および3配列を、フレームワーク配列を誘導する生殖細胞系の免疫グロブリン遺伝子に見られる配列と同じ配列を有するフレームワーク領域に移植してもよく、あるいは、該CDR配列を生殖細胞系の配列と比較して1つまたは複数の変異を含むフレームワーク領域に移植してもよい。例えば、特定の例において、抗体の抗原結合能を維持する又は高めるように、フレームワーク領域内の残基を変異させる利益が見出された(例えば、Queenらに対する米国特許第5,530,101号;第5,585,089号;第5,693,762号および第6,180,370号)。
【0201】
他のタイプの可変領域改変では、V
Hおよび/またはV
LCDR1,CDR2および/またはCDR3内のアミノ酸残基を変異させ、それによって、興味対象の抗体の1つまたは複数の結合特性(例えば、親和性)を改善させる。それによって、利益の抗体の特性(例えば、親和性)を結合している1つまたは複数を改善するためにV
HやV
LCDR1、CDR2やCDR3領域の中でアミノ酸残基を変異させることである。部位特異的突然変異またはPCRにより媒介される突然変異生成を行って変異(複数の変異)を導入し、抗体結合性または興味ある他の機能的特徴に対する作用を、本明細書に記載の、および実施例で提供するインビトロまたはインビボアッセイにて評価することができる。好ましくは、保存的改変(上記した)が導入される。突然変異は、アミノ酸置換、付加または欠失であってよいが、好ましくは置換である。さらに、典型的には、CDR領域内の1個、2個、3個、4個または5個以下の残基が改変される。
【0202】
したがって、他の実施形態において、本発明は、以下の重鎖可変領域を含む単離された抗MICAモノクローナル抗体またはその抗原結合部分を提供する:(a)配列番号:4、81、100、117、135、154および172からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号:4、81、100、117、135、154および172と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
HCDR1領域;(b)配列番号:6、84、102、119、137、156および174からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号:6、84、102、119、137,156および174と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは、5つのアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
HCDR2領域;(c)配列番号:8、86、103、121、139、158および176からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号:8、86、103、121、139、158および176と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは、5つのアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
HCDR3領域;(d)配列番号:13、88、106、124、142、161および179からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号:13、88、106、124、142、161および179と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは5つのアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
LCDR1領域;(e)配列番号:15、90、108、126、144、163および181からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号:15、90、108、126、144,163および181と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは、5つのアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
LCDR2領域;および(f)配列番号:17、92、110、128、146、165および183からなる群から選択されるアミノ酸配列または配列番号:17、92、110、128、146、165および183と比較して1つ、2つ、3つ、4つまたは、5つのアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むV
LCDR3領域。
【0203】
抗体のCDR中のメチオニン残基を酸化し、結果的に抗体の潜在力において潜在的な化学分解およびそれに伴う低下をもたらす。したがって、本発明は、また、重鎖および/または軽鎖CDRにおいて1つまたは複数のメチオニン残基を、酸化的分解を受けないアミノ酸残基で置換した抗MICA抗体を提供する。1つの実施形態において、表1に示す抗体ID1、6、7、8、9、11または12のCDRにおけるメチオニン残基は、酸化的分解を受けないアミノ酸残基で置換されている。
【0204】
本発明の作り出された抗体は、例えば抗体の特性を改善するために、V
Hおよび/またはV
L内でフレームワーク残基に修飾が施された抗体を含む。典型的には、そのようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を低下させるために行われる。例えば、1つのアプローチは、対応する生殖細胞系の配列に対して1つまたは複数のフレームワーク残基を「戻し突然変異(backmutate)」させることである。より詳しくは、体細胞突然変異を受けた抗体は、抗体を得た生殖細胞系の配列と異なるフレームワーク残基を含んでもよい。そのような残基は、抗体フレームワーク配列と、抗体を得た生殖細胞系の配列と比較することによって特定され得る。フレームワーク領域配列をそれらの生殖細胞系の配置に戻すために、該体細胞突然変異を、たとえば、部位特異的突然変異またはPCRによる突然変異生成によって、生殖細胞系の配列に「戻し突然変異(backmutate)」させてもよい。そのように「戻し突然変異(backmutate)」させた抗体も本発明に包含されることを意図する。
【0205】
他のタイプのフレームワーク修飾は、フレームワーク領域内の、または1つまたは複数のCDR領域内でも、1つまたは複数の残基を変異させ、それによって、T細胞エピトープを取り除き、抗体の潜在的な免疫原性を低下させることを含む。このアプローチは「脱免疫(deimmunization)」とも称され、Carrら、に対する米国特許出願公報第20030153043号にさらに詳述されている。
【0206】
フレームワークまたはCDR領域内で施される修飾に加えて又はとは別に、本発明の抗体は、典型的に抗体の1つまたは複数の機能的特性、例えば血清半減期、補体結合、Fc受容体結合および/または抗原依存的細胞障害活性を改変するために、Fc領域内に修飾を含むように作ることができる。さらに、本発明の抗体を化学的に修飾するか(例えば、1つまたは複数の化学的構成部分を抗体に結合させてよい)、またはその糖付加を改変するために修飾して、抗体の1つまたは複数の機能的特性をさらに改変させてもよい。機能的特性を改変するために、化学的にモディファイされてもよくて(例えば、1つまたは複数の化学部分は、抗体に添付されることができる)、または、そのグリコシル化を改変するためにモディファイされてもよい。これらの実施形態の各々を以下にさらに詳述する。Fc領域における残基の番号付けは、KabatのEUインデックスの番号付けである。
【0207】
Fcは、免疫グロブリン、好ましくはヒト免疫グロブリン、例えば断片、アナログ、バリアント、変異体または定常領域の誘導体の定常領域から誘導されるドメインを包含する。適切な免疫グロブリンは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4および他のクラス(例えばIgA、IgD、IgEおよびIgM)を含む。免疫グロブリンの定常領域は、天然の又は合成されたポリペプチドであってもよく、CH1ドメイン、ヒンジ、CH2ドメイン、CH3ドメインまたはCH4ドメインを、別個に又は組み合わせて含んでもよい。
【0208】
免疫グロブリンの定常領域は、Fc受容体(FcR)結合および補体結合を含む重要な抗体機能の多くを担っている。重鎖定常領域には、IgA、IgG、IgD、IgE、IgMと分類される5つの主要なクラスがあり、その各々は、アイソタイプによって示される特徴的エフェクター機能を有する。例えば、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4として知られる4つのサブクラスに分けられる。本明細書中で参照されるFcは、いずれのクラスもしくはサブクラスの重鎖定常領域を含んでもよい。
【0209】
Ig分子は、細胞受容体の複数の種類と相互作用する。例えば、IgG分子は、IgGクラスの抗体、即ちFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIに特異的なFcγ受容体(FcγR)の3つのクラスと相互作用する。IgGがFcγR受容体に結合するのに重要な配列が、CH2およびCH3ドメインに配されていることが報告された。抗体の血清半減期は、Fc受容体(FcR)に結合する抗体の能力に影響される。同様に、IgFcの血清半減期は、また、そのような受容体に結合するその能力に影響される(Gillies S Dら、(1999)Cancer Res.59:2159−66)。本明細書中で言及するFcは、これらの受容体の1つまたは複数と結合し得る。
【0210】
本明細書中で開示される抗体は、免疫グロブリン重鎖のカルボキシ末端の少なくとも一部を含むFcを含み得る。例えば、Fcは以下を含む:CH2ドメイン、CH3ドメイン、CH4ドメイン、CH2−CH3ドメイン、CH2−CH4ドメイン、CH2−CH3−CH4ドメイン、ヒンジ−CH2ドメイン、ヒンジ−CH2−CH3ドメイン、ヒング−CH2−CH4ドメインまたはヒンジ−CH2−CH3−CH4ドメイン。Fcドメインは、いずれかの免疫グロブリンクラス、すなわちIgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMまたはIgG抗体サブクラス(すなわち、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)のいずれかに属する抗体から得ることができる。Fcドメインは、天然のFc配列、例えば、天然の対立遺伝子またはスプライスバリアントであってもよい。Fcドメインは、2つまたはそれを超える異なるIgアイソタイプ由来のFcドメインの一部を含むハイブリッドドメイン、例えばIgG2/IgG4ハイブリッドFcドメインであってもよい。例示的な実施形態において、Fcドメインは、ヒト免疫グロブリン分子由来である。Fcドメインは、非ヒト動物、例えば、限定するものではないが、マウス、ラット、ウサギ、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダおよびサル由来のFcドメインのヒト化または脱免疫化(deimmunized)された形態であってもよい。
【0211】
特定の実施形態において、Fcドメインは、バリアントFc配列、例えば、望ましい構造上の特徴および/または生物活性を与えるために親のFc配列(例えば、バリアントを作り出すために後に修飾される未修飾Fcポリペプチド)に比べて改変されたFc配列(例えば、例えば、アミノ酸置換、欠失や挿入によって)である。
【0212】
例えば、1つには、(a)抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を高め又は減じたFcバリアント、(b)補体媒介性細胞障害(CDC)を高め又は減じたFcバリアント、(c)C1qに対する親和性を高め又は減じたFcバリアント、および/または(d)親Fcと比べてFc受容体に対する親和性を高め又は減じたFcバリアント、を作り出すためにFc領域にて修飾を施すことができる。そのようなFc領域バリアントは、一般に、Fc領域に少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。アミノ酸修飾を組み合わせることが、特に望ましいと考えられる。例えば、バリアントFc領域は、例えば本明細書中で特定された特定のFc領域部分のうち、2個、3個、4個、5個等の置換を含んでもよい。
【0213】
バリアントFcドメインは、ジスルフィド結合形成に関与する部位が取り除かれた配列改変を含んでもよい。そのような除去により、本発明の分子を産生するために使用される宿主細胞に存在する他のシステイン含有タンパク質との反応を避けることができる。この目的のための、N末端基のシステイン含有セグメントを切断してもよく、または、システイン残基を欠失させ、または他のアミノ酸(例えば、アラニル、セリル)で置換してもよい。システイン残基を除去した場合であっても、一本鎖Fcドメインは依然として、共に非共有結合にて二量体Fcドメインを形成し得る。他の実施形態において、天然のFcドメインは、選択した宿主細胞とより適合させるために修飾されてもよい。例えば、1つには、プロリンイミノペプチダーゼなどの大腸菌中の消化酵素によって認識される、典型的な天然のFcのN末端基近くのPA配列を除去してもよい。他の実施形態において、Fcドメイン内の1つまたは複数のグリコシル化部位を除去してもよい。典型的にグリコシル化される残基(例えば、アスパラギン)は細胞溶解応答を与え得る。そのような残基は、除去してもよく、またはグリコシル化されない残基(例えばアラニン)で置換してもよい。他の実施形態において、補体との相互作用に関与する部位、例えばC1q結合部位をFcドメインから除去してもよい。例えば、1つには、ヒトIgG1のEKK配列を欠失または置換してもよい。特定の実施形態において、Fc受容体に結合に影響を及ぼす部位、好ましくはサルベージ受容体結合部位以外の部位を除去してもよい。他の実施形態において、Fcドメインを修飾してADCC部位を除去してもよい。ADCC部位は当分野において既知である:例えば、IgG1におけるADCC部位に関してはMolec.Immunol.29(5):633−9(1992)を参照のこと。バリアントFcドメインの具体的な例は、例えば、WO97/34631およびWO96/32478において開示されている。
【0214】
1つの実施形態において、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域中のシステイン残基の数を変更、例えば増加または減少させるように改変される。このアプローチは、Bodmer等による米国特許第5,677,425号にさらに記述されている。CH1のヒンジ領域中のシステイン残基の数を改変し、例えば、軽鎖および重鎖のアセンブリを容易にする、または、抗体の安定性を増大もしくは減少させる。
【0215】
他の実施形態において、抗体のFcヒンジ領域は、抗体の生物学的半減期を減少させるために変異される。より具体的には、抗体が天然のFcヒンジドメイン・ブドウ球菌タンパク質A(Staphylococcyl protein A:SpA)結合性と比較して、損なわれたSpAを有するように、1つまたは複数のアミノ酸変異がCH2−CH3ドメイン・インターフェース領域に導入される。このアプローチは、Ward等による米国特許第6,165,745号においてさらに詳述される。
【0216】
他の実施形態において、抗体は、その生物学的半減期を増加させるために改変される。様々なアプローチが可能である。例えば、Wardに対する米国特許第6,277,375号に記載されるように、以下の突然変異の1つまたは複数を導入してもよい:T252L、T254S、T256F。別には、生物学的半減期を増大させるために、抗体を、Presta等による米国特許第5,869,046号および第6,121,022号に記載されるように、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから得られるサルベージ受容体結合エピトープを含むように、CH1またはCL領域内で改変することができる。
【0217】
特定の実施形態において、Fcは、以下に示すヒトIgG1のCH2およびCH3領域を含む:VFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号:171)。その両端のグリシンおよびリジンは随意であることは理解されるべきである。特定の実施形態において、Fcは、少なくとも50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性(配列番号:171)があるアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、Fcは、(配列番号:171)の少なくとも50、100または150の連続したアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、Fcは、(配列番号:171)の50〜100、50〜150または100〜150の連続したアミノ酸を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、Fcは、1−5、1−10、1−15、1−20または1−25の置換または保存的置換を有する(配列番号:171)を含むアミノ酸配列を含む。ヒト野生型1定常領域配列は、Leroy HoodグループのEllisonら、Nucl.Acids Res.10:4071(1982)にて初めて記載された。EUインデックス位置356、358および431はG1m γ1ハロタイプを定義する。
【0218】
追加のFcバリアントを下記する。本開示のFc領域は、Kabatら(1991,NIH Publication 91−3242,National Technical Information Service,Springfield,Va.)におけるようにEUインデックス従って、番号付けスキームを含むものと理解される。
【0219】
本開示は、抗体のエフェクター機能(複数の機能)を改変するために、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置換することによって改変されるFc領域を有するペプチドを包含する。例えば、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320および322から選択される1つまたは複数のアミノ酸が、抗体がエフェクターリガンドに関する改変された親和性を有するが親抗体の抗原結合性能力を維持するよう、異なるアミノ酸残基で置換されてもよい。親和性が改変されるエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1構成部分であってよい。このアプローチは、両方ともWinter等による米国特許第5,624,821号および第5,648,260号にてさらに詳細に記載されている。
【0220】
他の例において、アミノ酸残基329、331および322から選択される1つまたは複数アミノ酸は、抗体が改変されたC1q結合性および/または低下もしくは損なわれた補体依存性細胞障害性(CDC)を有するように、異なるアミノ酸残基で置換されてもよい。このアプローチは、Idusogie等による米国特許第6,194,551号にてさらに詳細に記載されている。
【0221】
他の例において、アミノ酸部位231および239内の1つまたは複数アミノ酸残基を改変し、それによって、補体を固定する抗体の能力を改変する。このアプローチは、Bodmer等によるPCT国際公報WO94/29351にてさらに記載されている。
【0222】
さらなる他の例において、抗体依存的細胞障害活性(ADCC)を媒介する抗体の能力を増大させるために、および/またはFcγレセプターに関する抗体の親和性を増大させるために、Fc領域を、以下の部位で1つまたは複数のアミノ酸を改変することによって改変する:238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438または439。このアプローチは、PrestaによるPCT国際公報WO00/42072においてさらに記載される。さらに、FcγR1、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに関するヒトIgG1上の結合部位をマッピングし、改善された結合性を有するバリアントが記載されている(Shields、R.Lら、(2001)J.Biol.Chem.276:6591−6604を参照のこと)。部位256、290、298、333、334および339での特定の突然変異がFcγRIIIに結合を改善することが示された。加えて、以下の組合せ変異体がFcγRIII結合を改善することが示された:T256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224AおよびS298A/E333A/K334A。例示的な置換は、236A、239D、239E、268D、267E、268E、268F、324T、332Dおよび332Eを含む。例示的なバリアントは、239D/332E、236A/332E、236A/239D/332E、268F/324T、267E/268F、267E/324Tおよび267E/268F/324Tを含む。FcyRと補体相互作用を高める他の修飾は、限定するものではないが、置換298A、333A、334A、326A、2471、339D、339Q、280H、290S、298D、298V、243L、292P、300L、396L、3051および396Lを含む。これらおよび他の改変は、Strohl,2009,Current Opinion in Biotechnology 20:685−691にて概説される。
【0223】
Fcガンマ受容体に対する結合を増大させるFc修飾は、Fc領域のアミノ酸部位238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、279、280、283、285、298、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、312、315、324、327、329、330、335、337、3338、340、360、373、376、379、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438または439のいずれか1つまたは複数の部位でのアミノ酸修飾を含み、ここで、該Fc領域における残基の番号付けはKabat(WO00/42072)のようにEUインデックスの番号付けである。
【0224】
Fcを作製できる他のFc修飾は、FcyRsおよび/または補体タンパク質への結合を低下または除去する修飾であり、これによって、Fc媒介性のエフェクター機能、例えばADCC、ADCPおよびCDCを低下または除去し得る。例示的な修飾は、限定するものではないが、部位234、235、236、237、267、269、325および328(番号付けはEUインデックスに従う)での置換、挿入および欠失を含む。例示的な置換は、限定するものではないが、234G、235G、236R、237K、267R、269R、325Lおよび328R(番号付けはEUインデックスに従う)を含む。Fcバリアントは、236R/328Rを含んでもよい。FcyRおよび補体相互作用を低下させる他の修飾は、置換297A、234A、235A、237A、318A、228P、236E、268Q、309L、330S、331S、220S、226S、229S、238S、233Pおよび234V、ならびに変異導入もしくは酵素的手段による部位297のグリコシル化の除去、またはタンパク質をグリコシル化しない細菌などの生物内での生産を含む。これらおよび他の改変は、Strohl,2009,Current Opinion in Biotechnology 20:685−691にて概説される。
【0225】
場合により、Fc領域は、当業者には既知の付加的および/または代替部位で、非天然のアミノ酸残基を含めてもよい(例えば、米国特許第5,624,821号;第6,277,375号;第6,737,056号;第6,194,551号;第7,317,091号;第8,101,720号;PCT国際公開WO00/42072;WO01/58957;WO02/06919;WO04/016750;WO04/029207;WO04/035752;WO04/074455;WO04/099249;WO04/063351;WO05/070963;WO05/040217、WO05/092925およびWO06/020114を参照のこと)。
【0226】
また、抑制受容体FcyRllbに対する親和性を高めるFcバリアントを使用してもよい。当該バリアントは、FcにFcyRl lb
+細胞、例えばB細胞および単球に関連した免疫調節性活性を与え得る。1つの実施形態において、該Fcバリアントは、1つまたは複数の活性化受容体と比較して、FcyRl lbに対する増強された親和性を選択的に与える。FcyRl lbへの結合を改変する修飾は、EUインデックスに従って、234、235、236、237、239、266、267、268、325、326、327、328および332からなる群から選択される部位に1つまたは複数の修飾を含む。FcyRl 1b親和性を高める例示的な置換は、限定するものではないが、234D、234E、234W、235D、235F、235R、235Y、236D、236N、237D、237N、239D、239E、266M、267D、267E、268D、268E、327D、327E、328F、328W、328Yおよび332Eを含む。例示的な置換は、235Y、236D、239D、266M、267E、268D、268E、328F、328Wおよび328Yを含む。FcyRl lbに対する結合を高める他のFcバリアントは、235Y/267E、236D/267E、239D/268D、239D/267E、267E/268D、267E/268Eおよび267E/328Fを含む。
【0227】
Fc領域のそのリガンドに関する親和性および結合特性は、当分野で公知の様々なインビトロ方法(生化学、または、免疫学的ベースのアッセイ)によって、例えば、限定するものではないが、平衡法(例えば、酵素結合免疫測定法(ELISA)または放射性免疫測定法(RIA))または、キネティックス(例えば、BIACORE分析)、および他の方法(例えば間接的な結合アッセイ、競争阻害アッセイ、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、ゲル電気泳動およびクロマトグラフィー(例えば、ゲルろ過))によって決定され得る。これらおよび他の方法は、1つまたは複数の調べられる構成部分に対する標識を利用してもよく、および/または限定するものではないが、発色性、蛍光性、発光性またはアイソトープ標識を含む様々な検出方法を実施してもよい。結合親和性およびキネティックスの詳細は、抗体−免疫原相互作用に重点を置いたPaul,W.E(編)Fundamental Immunology,第4版,Lippincott−Raven,Philadelphia(1999)にて見出すことができる。
【0228】
Fcはまた、抗体の血清半減期を延ばし得る。例えば、これは、FcRnに対するFc領域の結合親和性を高めることによって実施し得る。例えば、米国特許第6,277,375号に記載されているように、1つまたは複数の以下の残基に変異導入することができる:252、254、256、433、435、436。
【0229】
FcRnに対する結合を増大させる、および/または薬物動態特性を改善する他の例示的なFcバリアントは、部位259、308、428および434での置換を含み、例えば、259I、308F、428L、428M、434S、434H、434F、434Yおよび434Mが挙げられる。FcRnに対するFc結合を高める他のバリアントは、以下を含む:250E、250Q、428L、428F、250Q/428L(Hintonら、2004,J.Biol.Chem.279(8):6213−6216,Hintonら、2006 Journal of Immunology 176:346−356),256A、272A、286A、305A、307A、307Q、31 1A、312A、376A、378Q、380A、382A、434A(Shieldsら、Journal of Biological Chemistry,2001,276(9):6591−6604),252F、252T、252Y、252W、254T、256S、256R、256Q、256E、256D、256T、309P、31 1 S、433R、433S、433I、433P、433Q、434H、434F、434Y、252Y/254T/256E、433K/434F/436H、308T/309P/311S(Dall Acquaら、Journal of Immunology,2002,169:5171−5180,Dall’Acquaら、2006,Journal of Biological Chemistry 281:23514−23524)。FcRn結合を改変する他の修飾は、Yeungら、2010,J Immunol,182:7663−7671に記載されている。
【0230】
特定の実施形態において、特定の生物学的特徴を有するハイブリッドIgGアイソタイプを用いてもよい。例えば、lgG1/lgG3ハイブリッドバリアントは、CH2および/またはCH3領域内のIgG1部位を、2つのアイソタイプが異なる部位でlgG3由来のアミノ酸と置換することにより構築することができる。かくして、1つまたは複数の置換、例えば、274Q、276K、300F、339T、356E、358M、384S、392N、397M、422I、435R、および436Fを含むハイブリッドバリアントIgG抗体が構築されてもよい。本発明の他の実施形態において、lgG1/lgG2ハイブリッドバリアントは、CH2および/またはCH3領域内のIgG2部位を、2つのアイソタイプが異なる部位でlgG1由来のアミノ酸と置換することにより構築することができる。かくして、1つまたは複数の置換、例えば、1つまたは複数の以下のアミノ酸置換233E、234L、235L、−236G(部位236でのグリシン挿入を示す)および327Aを含むハイブリッドバリアントIgG抗体が構築されてもよい。
【0231】
さらに別の実施形態において、抗体のグリコシル化が改変される。例えば、脱グリコシル化(aglycoslated)抗体を作製することができる(即ち、抗体はグリコシル化を欠く)。グリコシル化を改変して、例えば、抗体の抗原に対する親和性を高めることができる。そのような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内の1つまたは複数のグリコシル化部位を変更することによって行い得る。例えば、1つまたは複数のアミノ酸置換を行って、1つまたは複数の可変領域フレームワークのグリコシル化部位を失わせ、それにより、該部位でのグリコシル化を失わせることができる。そのような脱グリコシル化(aglycosylation)は、抗体の抗原に関する親和性を高め得る。そのようなアプローチは、Co等による米国特許第5,714,350号および第6,350,861号に詳述されている。別には、Fcに共有結合しているオリゴ糖を、例えば遺伝子工学的に作出された又はその他の様々な生物または細胞株(たとえばLec−13CHO細胞またはラットハイブリドーマYB2/0細胞)でIgGを発現させることによって、グリコシル化経路に関与する酵素(例えばFUT8[a1,6−フコシルトランスフェラーゼ]および/またはβ1−4−N−アセチルグルコサミントランスフェラーゼIII[GnTIII])を調節することによって、IgG発現後に炭水化物(複数の炭水化物)を改変することによって、或いは、酵素阻害剤としてのフコースアナログの存在下でFc融合タンパク質を発現することによって、変更させてもよい。Fcの糖型を改変する他の方法は、糖鎖工学により作出された株の酵母(Liら、2006、Nature Biotechnology 24(2):210−215)、コケ(Nechanskyら、2007、Mol Immunjol 44(7):1826−8)および植物(Coxら、2006、Nat Biotechnol 24(12):1591−7)用いることを含む。
【0232】
1つの実施態様において、Fc融合体はシアリル化レベルを改変するために、糖鎖工学により作り出される。Fc分子におけるシアル酸付加Fcグリカンのより高い濃度は、機能に負の影響を及ぼし(Scallonら、2007、Mol Immunol.44(7):1524−34)、Fcシアリル化レベルの相違は結果的に改変された抗炎症性活性をもたらし得る(Kanekoら、2006、Science313:670−673)。
【0233】
また、Fc分子のグリコシル化レベルは、特定の突然変異によって改変し得る。例えば、アミノ酸部位297または299の突然変異により、部位297での糖鎖付加が除去され得る。使用し得る他のFc修飾は、WO88/07054、WO88/07089、米国特許第6,277,375号、WO99/051642、WO01/058957、WO2003/074679、WO2004/029207、米国特許第7,317,091号およびWO2004/099249に記載のものを含む。
【0234】
加えて又は別に、グリコシル化の形態を改変させた抗体、例えばフコシル残基の量を減らした低フコシル化(hypofucosylated)抗体または分岐したGlcNac構造を増やした抗体を調製してもよい。そのような改変グリコシル化パターンにより、抗体のADCC能力が増強されることが実証された。そのような炭水化物修飾は、例えば、改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞で該抗体を発現させることによって、実施することができる。改変されたグリコシル化機構を有する細胞は当分野で記載されており、本発明の組換え抗体を発現させ、それによって改変されたグリコシル化を有する抗体を産生するための宿主細胞として用いることができる。例えば、Hanai等による欧州特許第1,176,195号は、その細胞系で発現される抗体が低フコシル化を示すようにフコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子を機能的に破壊した細胞系を記載する。PrestaによるPCT国際公開WO03/035835は、Asn(297)関連炭水化物にフコースを結合させる能力が減じ、また、その宿主細胞で発現された抗体の低フコシル化の結果となるバリアントCHO細胞系のLec13細胞を記載する(Shields,R.Lら、(2002)J.Biol.Chem.
277:26733−26740も参照のこと)。Umana等によるPCT国際公開WO99/54342は、その作り出された細胞系で発現される抗体が増大した分岐したGlcNac構造を示し、その結果、該抗体の増大したADCC活性をもたらすように、糖タンパク質改変グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、ベータ(1,4)−N−アセチルグルコサミントランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように作り出した細胞系を記載する(Umanaら(1999)Nat.Biotech.
17:176−180も参照のこと)。
【0235】
さらに、特定のFcバリアントは、γ1ヒンジ領域を含むが、クローニングを容易にするためにBg1II制限酵素認識配列を含めるためにArg218がそのヒンジ領域に導入され、対合しないスルフヒドリル基が潜在的に存在することによる悪影響を防ぐためにSerをCys残基に換えて含む。Fc4のCH2領域はγ1CH2に基づき、Fcγ受容体I(FcγRI)結合を低下させる3つのアミノ酸置換を含む。それらは、EUインデックス部位234、235および237における置換である。これらの置換はGreg WinterグループのDuncanら、Nature332:563(1988))にて記載され、FcRIに対する結合を低下させることがその論文にて示された。加えて、補体の固定を低下させるために、補体C1q結合部位に2つのアミノ酸置換が導入された。これらは、EUインデックス部位330および331での置換である。補体C1q結合(または、補体固定または活性化の欠如)における部位330および331の、重要性または関連は、Sherie MorrisonグルプープのTaoら、J.Exp.Med.178:661(1993)、ならびにCanfieldおよびMorrison,J.Exp.Med.173:1483(1991)に記載されている。Fc4バリアントにおけるCH3領域は、野生型γ1Fcと同じのままである。
【0236】
Fc5は、ヒンジ領域のArg218置換をその野生型のLys218残基に戻したFc4バリアントである。また、Fc5は、Fc4と同じくCys220へのセリン置換および野生型γ1Fcと同一のCH2領域との同じCH2置換を含む。Fc6バリアントは、Fc5と同じヒンジ領域置換を含み、Fc4と同じCH2置換を含む。Fc6 CH3領域はカルボキシ末端のリジン残基を含まない。この特定のLys残基は、割り当てられたEUインデックスを有さない。このリジンは、成熟免疫グロブリンから様々な程度で取り除かれ、したがって、循環抗体では大部分で見出されない。組換えFcでのこの残基の欠如は、より均一な産物をもたらし得る。Fc7バリアントは、ヒンジ領域において野生型γ1Fcと同一である。そのCH2領域はγ1CH2に基づくが、脱グリコシルFcを産生するために、残基Asn−297のN結合型の炭水化物結合部位がGlnに変更されている(例えば、TaoおよびMorrison(1989)J.Immunol.143:2595−2601を参照のこと)。CH3領域は、野生型γ1Fcと同一である。Fc8バリアントはFc4と同一のヒンジ領域を有し、CH2領域とCH3領域の両方とも対応する野生型γ1Fc領域と同一である。Fc9バリアントは、軽鎖に対するジスルフィド結合に関与するCys残基のちょうどカルボキシ末端のAsp残基から始まる短縮型のγ1ヒンジを含む。残りのヒンジ配列は、野生型γ1のヒンジと同一である。CH2領域配列とCH3領域配列の両方とも、野生型γ1Fcの対応する領域と同一である。Fc10バリアントは、Fc5と同じヒンジ領域置換を含む。CH2領域配列とCH3領域配列の両方とも、野生型γ1Fcの対応する領域と同一である。Fc11バリアントは、Fc5と同じヒンジ領域置換を含む。そのCH2ドメインはγ1CH2に基づくが、Fcγ受容体結合を低下させるための置換(EUインデックス部位234、235および237での置換)を含む。Fc11は、C1q結合および補体固定に関して野生型である。Fc11のCH3ドメインは、野生型γ1CH3と同一である。Fc12バリアントは、Cys220Ser、Cys226SerおよびCys229Ser置換を有するγ1ヒンジを含み、Fc5と同じCH2ドメインを有し、そして野生型γ1CH3ドメインを有する。Fc13バリアントは、Cys220Ser、Cys226SerおよびCys229Ser置換を有するγ1のヒンジを含み、Fc5と同じCH2ドメインを有し、そしてTyr407Gly置換を有する野生型γ1CH3を有する。Fc14バリアントは、Cys220Ser、Cys226Ser、およびCys229Ser置換を有するγ1ヒンジを含み、野生型γ1CH2を有し、そして、Tyr407Gly置換を有する野生型γ1CH3を有する。Fc15バリアントは、IgG4「Fab交換」を低くするためのSer228Pro置換を有するγ4ヒンジを含み、そして野生型γ4CH2およびCH3ドメインを有する。Fc16バリアントは、Cys220Ser置換を含むγ1ヒンジを含み、γ1CH2と同じCH2ドメインを有し、そして野生型γ4CH3と同じCH3ドメインを有する。Fc17バリアントはCys220Ser置換を有するγ1ヒンジを含み、Phe243Ala置換を有するγ1CH2ドメインを有し、そして野生型γ1CH3と同じCH3ドメインを有する。Fc18バリアントは、Cys220Ser置換を有するγ1ヒンジを含み、野生型γ1CH2と同じγ1CH2ドメインを有し、そしてHis435Ala置換を有するγ1CH3を含む。Fc19バリアントは、脱グリコシル化Fcを産生するために残基Asn−297のN結合型の炭水化物結合部位がGlnに置き換えられており、野生型γ1CH3と同じCH3ドメインを有することを除いて、Fc5と同じヒンジを含み、Fc5と同じCH2ドメインを有する。Fc21バリアントはCys220Ser、Cys226SerおよびCys229Ser置換を有するγ1ヒンジを含み、Fc5と同じCH2ドメインを有し、そしてPhe405AlaおよびTyr407Gly置換を有するγ1CH3を有する。Fc22バリアントはCys220Ser、Cys226SerおよびCys229Ser置換を有するγ1ヒンジを含み、Fc1と同じCH2ドメインを有し、そしてPhe405AlaおよびTyr407Gly置換を有するγ1CH3を有する。Fc23バリアントはCys220Ser置換を有するγ1ヒンジを含み、Leu234Ala、Leu235Glu、Pro331Ser置換を有するγ1CH2ドメインを有し、そして野生型γ1Fcと同じCH3ドメインを有する
【0237】
本発明により考えられる本明細書中の抗体の他の修飾は、ペグ化である。抗体をペグ化することで、例えば、その抗体の生物学的(例えば、血清)半減期を増やすことができる。抗体をペグ化するために、その抗体またはその断片は、典型的には、1つまたは複数PEG基が該抗体または抗体断片に結合する条件下で、ポリエチレングリコール(PEG)、例えばPEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体と反応させる。好ましくは、ペグ化は、反応性PEG分子(または、類似の反応性水溶性ポリマー)とのアシル化反応またはアルキル化反応を通して行われる。本明細書中で用いられる用語「ポリエチレングリコール」は、他のタンパク質、例えばモノ(C1−C10)アルコキシ−またはアリールオキシ−ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコールマレイミドを誘導体化するために用いられたいずれのPEG形態も包含することを意図する。特定の実施形態において、ペグ化する抗体は脱グリコシル化された抗体である。タンパク質をペグ化する方法は当分野にて既知であり、本発明の抗体に適用し得る。例えば、Nishimura等によるEP 0 154 316およびIshikawa等によるEP 0 401 384を参照のこと。
【0238】
使用方法
いくつかの例において、本開示は、本明細書中に開示される組成物を対象に投与することを含む処置方法を提供する。対象における癌または癌の症状を処置および/または予防する方法であって、前記対象にMHCクラスIポリペプチド・リレイティッド・シークエンスA(MICA)に免疫特異的に結合するペプチドを含む治療上有効な量の組成物を投与することを含み、前記ペプチドは、5個またはそれ未満の保存的アミノ酸置換を有する表1に示される抗体ID1、6、7、8、9、11または12のV
Hの相補性決定領域(CDR)3と、5個またはそれ未満の保存的アミノ酸置換を有する表1に示される抗体ID1、6、7、8、9、11または12のV
LのCDR3とを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態において、癌はMICAの過剰発現と関連する癌である。いくつかの実施形態に、癌は、メラノーマ、肺癌、腎臓癌、卵巣癌、前立腺癌、すい臓癌、胃癌、結腸癌、リンパ腫または白血病である。いくつかの実施形態において、癌はメラノーマである。いくつかの実施形態に、癌は形質細胞悪性腫瘍であり、例えば多発性骨髄腫(MM)またはプラズマ細胞の前悪性の状態である。いくつかの実施形態において、対象は、癌を有していると、又は癌体質であると診断されている。
【0239】
いくつかの例において、本開示は、対象における癌または癌の症状を処置および/または予防する方法であって、前記対象にMHCクラスIポリペプチド・リレイティッド・シークエンスA(MICA)に特異的に結合する単離された抗体を含む治療上有効な量の組成物を投与することを含み、前記抗体は、配列番号:2、77、96、113、131、150または168の重鎖可変領域(V
H)配列に示されるVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3を含むV
H領域と、配列番号:11、79、98、113、133、152または170の軽鎖可変領域(V
L)配列に示されるVH CDR1、VH CDR2およびVH CDR3とを含む、方法を提供する。
【0240】
癌の症状は、当業者に周知であり、限定するものではないが、異常なほくろ形質、ほくろの外見(非対称、境界、色および/または直径を含む)における変化、新たに色素沈着した皮膚領域、異常なほくろ、爪下の黒い領域、乳房のしこり、乳首変化、乳房嚢胞、乳房痛、死、重量損失、衰弱、過労、食事困難、食欲の喪失、慢性咳、悪化する息切れ、喀血、血尿、血便、悪心、嘔吐、肝転移、肺転移、骨転移、腹部膨満、腫脹、腹膜腔中の体液、膣出血、便秘、腹部膨満、結腸のパーフォレーション、急性腹膜炎(感染症、発熱、疼痛)、疼痛、吐血、多量の発汗、発熱、高血圧症、貧血、下痢、黄疸、めまい、悪寒、筋痙攣、結腸癌転移、肺転移、膀胱癌転移、肝転移、骨転移、腎転移および膵転移、嚥下障害およびその他の類似症状を含む。
【0241】
本明細書中に開示される方法は、広域にわたる種、例えば、ヒト、ヒト以外の霊長類(例えばサル)、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、シカ、エルク、ヤギ、イヌ、ネコ、イタチ、ウサギ、テンジクネズミ、ハムスター、ラットおよびマウスに適用できる。
【0242】
用語「処置する」または「処置すること」は、本明細書中で用いられるように、対象が苦しむ疾患または状態の少なくとも1つの症状または生物学的兆候の発症、進行または再発を、部分的または完全に緩和、阻害、改善および/または緩和することを示す。いくつかの例において、処置は、対象が苦しむ疾患または状態の継続的な不存在の結果をもたらし得る。
【0243】
用語「有効量」または「有効な投薬量」は、所望の作用を達成または少なくとも部分的に達成すのに十分な量と定義される。用語「治療上有効量」は、すでに疾患を患っている患者において、その疾患または合併症を治癒または少なくとも部分的に抑えるのに十分な量と定義される。この使用に有効な量は、処置される障害の重症度および患者自身の免疫系の一般的な状態に依存し得る。
【0244】
薬物または治療剤、例えば本発明のFc融合タンパク質の「治療上有効量」または「治療上有効な投薬量」は、単独または他の治療上薬と組合せて用いた場合に、疾患症状の重症度の低下、疾患症状がない期間の頻度および長さの増加、または疾患苦悩による減損または不能の予防によって明示される疾患の退行を促進する前記薬物のいずれかの量である。薬物の治療上の有効量または投薬量は「予防上の有効量」または「予防的に有効な投薬量」を含み、それは、単独または他の治療上薬と組合せて疾患を発症する又は疾患の再発で苦しむリスクのある対象に投与した場合に、前記疾患の発症または再発を阻止する前記薬物のいずれかの量である。疾患の退行を助成し、または、疾患の発症または再発を阻止する治療薬の能力は、当業者には既知の様々な方法を用いて、例えば、臨床試験中のヒト対象において、ヒトでの効能を予測する動物モデル系において、または、インビトロにて該薬物の活性を評価することによって評価することができる。
【0245】
例として、抗癌剤は対象において癌退行を助成する。好ましい実施形態において、治療上有効な量の薬物は、癌を排除する程度まで癌退行を助成する。「癌退行を促進する」は、その薬物の有効量を単独または抗悪性腫瘍薬と組合せて投与することが、結果的に、腫瘍増殖またはサイズの低下、腫瘍の壊死、少なくとも1つの疾患症状の重症度において低下、疾患症状のない期間の頻度および長さの増加、疾患苦悩による減損または不能の予防、そうでない場合には患者の疾患症状の改善となることを意味する。加えて、処置に関する用語「有効」および「効果的」は、薬理学的効果および生理的安全の両方を含む。薬理学的効果は、患者において癌の退行を助成する薬物の能力を示す。生理的安全は、薬物投与の結果としての毒性レベルまたは細胞、器官および/または生物レベルでの不都合な生理的作用(副作用)を示す。
【0246】
腫瘍処置に関する例として、薬物の治療上の有効量または投薬量は、未処置の対象と比べて、少なくとも20%、より好ましくは少なくとも約40%、さらにより好ましくは少なくとも約60%およびさらにより好ましくは少なくとも約80%まで、細胞増殖または腫瘍増殖を好ましくは阻害する。最も好ましい実施形態において、薬物の治療上の有効量または投薬量は、細胞増殖または腫瘍増殖を完全に阻害、すなわち好ましくは細胞増殖または腫瘍増殖を100%阻害する。腫瘍増殖を妨げる化合物の能力は、下記アッセイを用いて評価することができる。別には、組成物のこの特性は、細胞増殖を阻害する化合物の能力を調べることによって評価でき、そのような阻害は当業者には既知のアッセイによってインビトロにて測定できるような。本発明の他の好ましい実施形態において、腫瘍退行は、少なくとも約20日、好ましくは少なくとも40日、またはさらにより好ましくは少なくとも60日の期間、観察され、続き得る。
【0247】
一般に、本方法は、状態または疾患のリスクがある、または罹患している対象を選抜することを含む。いくつかの例において、対象の状態または疾患は、本明細書中に開示される医薬組成物で処置され得る。例えば、いくつかの例において、本方法は、癌を有する対象を選択することを含み、例えば、前記対象の癌がMICAおよび/またはアンジオポイエチン−2の一方または両方を標的化することにより処置し得る。
【0248】
いくつかの例において、処置方法は、対象が苦しむ疾患または状態の予防または処置の必要に応じて単回投与、複数回投与および反復投与を含んでよい。いくつかの例において、処置方法は、処置前、処置中および/または処置後の対象における疾患レベルを評価することを含んでよい。いくつかの例において、処置は、対象で疾患レベルの低減が検出されるまで続行してよい。用語は「投与する」、「投与すること」または「投与」は、本明細書中で使用されるように、形態に関わらず本発明のペプチドを、移植し、吸収させ、摂取させ、注射し、または吸入させることを示す。いくつかの例において、本明細書中に開示される1つまたは複数のペプチドは、対象に局所(例えば、経鼻)および/または経口投与してよい。例えば、本明細書の方法は、所望のまたは所定の作用を達成するのに有効な量の化合物または化合物組成物の投与を含む。いずれかの特定の患者用の具体的な投薬量および処置レジメンは、様々な要因、例えば、用いられる具体的な化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与期間、排出率、薬物組合せ、疾患の重症度および過程、状態または症状、疾患に対する患者の感情、状態または症状、および主治医の判断に依存し得る。
【0249】
例えば、投薬レジメンは、最適な所望の応答(例えば、治療反応)を与えるために調整される。単回ボーラス投与してもよく、複数回に分けた服用量を時間をかけて投与してもよく、或いは、投薬量を治療状況の緊急性で示されるのに比例して服用量を増減させてよい。投与の容易さ及び投薬の均質性のため、投薬単位形の非経口組成物を処方することは特に有利である。本明細書で用いる「投薬単位形(dosage unit form)」は処置される対象の一体型剤形(unitary dosage)に適した物理的に分離した単位を示し、各単位は、必要な医薬担体と関連して、所望の治療効果を奏するように計算した所定量の活性化合物を含む。本発明の投薬単位形の詳細は、(a)活性化合物および達成されるべき特定の治療効果に関する特有の特徴、および(b)個人の過敏症に関する処置用の当該活性化合物を合成する分野に内在する制限により指示され、また、それらに直接依存する。
【0250】
抗MICA抗体または抗体断片の投与に関して、投薬量は、宿主の体重1kgあたり約0.0001〜100mg、より一般的には0.01〜5mgの範囲にある。例えば、投薬量は体重1kgあたり0.3mg、1mg、3mg、5mgまたは10mgであってよく、または体重1kgあたり1〜10mgの範囲であってよい。例示的な処置レジメンは、1週間に1回、2週毎に1回、3週毎に1回、4週毎に1回、1ヵ月に1回、3ヵ月毎に1回または3〜6ヵ月毎に1回を必要とする。本発明の抗MICA抗体の好ましい投薬レジメンは、体重1kgあたり1mgまたは3mgを静脈内投与にて、以下の投薬スケジュールのいずれかを用いて与えることを含む:(i)4週毎に6回の投薬、次いで3カ月毎;(ii)3週毎;(iii)3mg/体重kgを1回、続いて3週毎に3mg/体重kg。
【0251】
いくつかの方法において、異なる結合特異性を有する2つまたはそれを超えるモノクローナル抗体は同時に投与され、この場合、投与される各抗体の投薬量は指示された範囲内にある。抗体は、通常、複数機会に投与される。単回投薬の間隔は、例えば、毎週、毎月、3ヵ月毎または毎年であってよい。間隔は、患者における標的抗原に対する抗体の血中レベルを測定することにより指示されて、変則的であってもよい。いくつかの方法において、投薬量は、約1〜1000μg/mlの血漿抗体濃度、いくつかの方法において、約25〜300μg/mlに調整される。
【0252】
別には、医薬組成物は、より頻度の少ない投与が要求される場合、徐放配合物として投与されてよい。投薬量および頻度は、患者における抗体の半減期に依存して変化する。一般に、ヒト抗体は最も長い半減期を示し、ヒト化抗体、キメラ抗体およびヒト以外の抗体が続く。投与の投薬量および頻度は、処置が予防目的であるか又は治療目的であるかに依存して異なり得る。予防適用では、比較的低い投薬量を長期間かけて比較的低頻度で投与される。患者の幾らかは、残りの人生の間処置を受けることを継続する。治療適用では、疾患の進行が低下もしくは停止するまで、好ましくは患者が疾患症状の部分的もしくは完全な改善を示すまで、時として、比較的高い投薬量が比較的短い間隔で要求される。その後、該患者は予防レジメンが投与されてもよい。
【0253】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、投与の特定の患者、組成物および投与形態に関して、前記患者に対して毒性を示さず、所望の治療反応を達成するのに効果的な活性成分の量を得るために可変し得る。選択された投薬レベルは、様々な薬物動態学的要因、例えば用いられる本発明の特定の組成物、またはそのエステル、塩もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、用いられる特定の化合物の排出率、処置期間、用いられる特定の組成物と組合される他の薬物、化合物および/または物質、年齢、性別、重量、状態、一般的な健康状態、および処置される患者の以前の医療歴、および医薬分野で公知の類似の要因に依存し得る。
【0254】
投与後に、対象を評価し、それらの疾患レベルを検出、評価または決定してもよい。いくつかの例において、処置は、対象の疾患レベルに変化(例えば、低下)が検出されるまで、継続することができる。
【0255】
患者の状態の改善(例えば、対象の疾患レベルに変化(例えば、低下))した際、必要に応じて、この発明の化合物、組成物または組合せに関する維持量を投与してもよい。その後、投与の投薬量または頻度は、もしくはその両方は、症状に応じて、改善された状態が維持されるレベルまで、低減されてもよい。しかしながら、患者は、いずれかの疾患症状の再発に関して長期の断続的処置を必要とし得る。
【0256】
いくつかの例において、本開示は、ヒト対象から、免疫細胞、例えばB細胞および/または記憶B細胞を検出する方法を提供する。該方法を用いて、例えば、免疫細胞、例えばB細胞および/または記憶B細胞のレベルをヒト対象においてモニタすることができる。例示的な事象としては、限定するものではないが、疾患、感染の検出;本明細書に開示される治療用組成物の糖よ、治療薬または治療レジメンの投与、ワクチン投与、免疫応答の誘導が挙げられる。そのような方法は、臨床上および/または研究用に用いることができる。
【0257】
(実施例)
本発明は、以下の実施例においてさらに詳述されるが、実施例は特許請求の範囲に記載の発明の範囲を限定するものではない。
【0258】
本明細書において、限られた量の末梢血から所定の抗原特異性を有する稀な記憶B細胞を感度よく、特異的に且つ信頼性をもって検出することを可能にする方法を記載する。本方法は、抗原が除去された後、数か月から数年、記憶B細胞の可視化および単離を可能にした。
【0259】
本明細書に記載の方法の原理の検証は、Franzら、(Blood,118(2):348−357(2011))(この引例は引用により完全に本明細書中に組み込まれる)で詳細に報告されたように、破傷風毒素Cフラグメント(TTCF)の四量体を用いて行われた。
【0260】
モデル抗原としてTTCF(即ち、52kDaのTTCFの無毒なC末端)を選択した。これは、大部分の個体が破傷風トキソイドによるワクチン接種を受けており、ワクチンにより持続性のIgG抗体力価が誘導されているためである(Amannaら、N.Engl.J.Med.,357:1903−1915,2007)。したがって、TTCFの使用により大規模な対象が提供され、本明細書に開示する方法が検証され得た。しかしながら、当業者は通常の能力を用い、本方法がいずれの疾患関連抗原を含めて適用できると認識し得る。以下の実施例で実証されるように、そのような適用は、癌関連抗原であるMICAおよびアンジオポイエチン−2に対する抗体の獲得を通じて示されている。
【0261】
実施例1:抗原発現および四量体形成
以下にさらに詳細に記載するように、TTCFを大腸菌に発現させ、BirA酵素による部位特異的モノビオチン化のために、BirA部位をN末端に付加した。タンパク質とビオチン化部位との間に、フレキシブルリンカーを配し、抗体結合の立体障害を抑制する。TTCFを、アニオン交換クロマトグラフィーにより精製し、BirAによりビオチン化し、遊離ビオチンとBirAとをゲルろ過クロマトグラフィーにより分離した。TTCF四量体は、蛍光標識化ストレプトアビジンとビオチン化したTTCF抗原とをモル比1:4でインキュベートすることで調製した。次いで、これらの四量体を、破傷風トキソイド特異記憶B細胞の同定のために、mAbパネルと共に用いた。
【0262】
TTCFを、pET−15b(Novagen)にクローニングした。タンパク質の発現を、28℃で4時間、1mMのイソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG)を用いてBL21(DE3)大腸菌にて誘導した。細胞を洗浄し、溶菌して得られた上清を回収した。TTCFをHISセレクト・アフィニティーカラム(Sigma)を用いて精製した。Hisタグをタンパク質分解により除去した。マウスCD80の膜近傍のドメイン(membrane proximal domain)を同様の方法を用いて産生した。タンパク質をモノビオチン化した。特定の試験のために、Alexa488染色分子(Molecular probes)をビオチン化TTCFまたはCD80の一級アミンに連結した。
【0263】
抗原の四量体は、ビオチン化抗原を特級グレード(premium grade)のPE標識化ストレプトアビジン(Molecular Probes)と共に4:1のモル比で少なくとも20分間氷上でインキュベートすることで調製した。使用前に、四量体調製物を遠心分離して凝集塊を除去した。いくつかの試験において、四量体は、Alexa−fluor−488標識化抗原および非蛍光ストレプトアビジンと共に4:1の比で形成させた。
【0264】
実施例2:同定方法
Franzら、Blood,118(2):348−357(2011)に記載されたように方法を実施した。細胞を、BD FACS AriaIIセルソーターにて選別した。細胞は単細胞選別された。サンプルを、まず、排除マーカー(exclusion marker)パネル(CD3、CD14、CD16、7AAD)が陰性のCD19
+細胞に関してゲーティングし、次いで、高レベルのCD27および中レベルのCD19発現により同定された形質芽球に関してゲーティングし、最後に、四量体
+CD19
+細胞に関してゲーティングした。
【0265】
記憶B細胞の頻度が低いために、可能な限り慎重にバックグラウンドを低下させる必要があった。B細胞を、まず、前記四量体に対して特異的に結合できない大部分の細胞を除去するためのネガティブ選択(CD2、CD3、CD14、CD16、CD56およびグリコホリンAに対する抗体のカクテル)により富化した。富化した細胞を均等に分け、TTCFまたは対照の四量体で染色し、次いで、クラススイッチした記憶B細胞を特異的に選択するためにCD19、CD27およびIgMで標識化した。ゲーティングストラテジーは、CD19発現、排除マーカーパネル(CD3、CD14、CD16、7AAD)による標識の欠如、記憶マーカーCD27の発現、およびクラススイッチングの証拠としてのIgM発現の欠如を考慮した。四量体染色は、目的の抗原特異性を有する記憶B細胞の可視化のために、CD27染色に対してプロットした。四量体陽性B細胞を、3μlのmRNA抽出緩衝液を含有するPCRストリップに直接選別した。
【0266】
選別の間、チューブを冷却したままで維持し、選別した細胞を凍結し、−30℃で保存した。CD19+CD27+IgM−B細胞を陽性対照として用いた。
【0267】
既報のネストPCRプロトコルを用いて、重鎖および軽鎖可変セグメントを増幅した(Wangら、J.Immunol.Methods.,244:217−225,2000)。混入を最小限にするのに適した条件下で、mRNA増幅を行った。
TAATACGACTCACTATAGGTTCGGGGAAGTAGTCCTTGACCAGG(配列番号:19);
TAATACGACTCACTATAGGGATAGAAGTTATTCAGCAGGCACAC(配列番号:20);
TAATACGACTCACTATAGGCGTCAGGCTCAGRTAGCTGCTGGCCGC(配列番号:21)。
【0268】
Franzら、Blood,118(2):348−357(2011)に記載されたように、ネステッドRT−PCRを実施した。
【0269】
混入を監視し、且つ混入を防ぐために、陰性対照を含めた。TTCF四量体で標識化された総数35の単細胞から32の重鎖セグメントおよび30の軽鎖セグメントが増幅され、ゲル精製されたPCR産物由来の直接的な配列は、全体的なPCR効率89%に相当した。配列分析は、TTCF四量体
+細胞が1つの特定の遺伝子セグメント優位性ではなく、様々な種類のV
HD−J
H遺伝子セグメントを採用していたことを明らかにした。観察された配列は、それらのクローンが体細胞超変異により多様化した細胞群を代表することを支持した。
【0270】
抗体産生および精製は、重鎖および軽鎖可変ドメインDNAを、ウシ・プロラクチン・シグナルペプチド配列および全長のIgG1重鎖もしくはカッパ軽鎖定常ドメインを含有するpcDNA3.3発現ベクターに個別にクローニングすることを含んだ。抗体は、100mlのスピナーフラスコ(sinner flask)において8mM Glutamax(Gibco)が補充されたCHO−S培地(Invitrogen)中、37℃、8%CO
2にて発現させた。トランスフェクションの1日前に、細胞を6×10
5細胞/mlに分けた。トランスフェクションの1日前に、細胞を調整し、6×10
5細胞/mlに分けることが必要であった。25μgの重鎖および軽鎖プラスミドDNAを、MAXトランスフェクション試薬(Invitrogen)を用いて同時トランスフェクトし、トランスフェクトした細胞を6〜8日間培養した。プロテインGセファロース・ビーズを用いてタンパク質を得て、抗体を100mM グリシン(pH2.5)を用いて溶出し、Spin−X遠心管を用いてビーズから分離した。精製した抗体は、MicroBioスピンカラム(BioRad)を用いてリン酸緩衝整理食塩水(PBS)に緩衝液交換した。タンパク質濃度を吸光度280nmにて評価した。
【0271】
飽和結合アッセイのために、非ビオチン化MonoQ精製したTTCFをユーロピウムで標識化し、遊離形態のユーロピウムを除去した。96ウェル平底プレートの1ウェルあたり100mM NaHCO
3緩衝液(pH9.6)中の抗体20ngで一晩被覆した。ブロッキングは、ウシ血清アルブミン(BSA)およびウシ・ガンマグロブリンを補充したアッセイ緩衝液を用いて実施した。TTCF−ユーロピウムをアッセイ緩衝液中に希釈し(100nM〜4pM)、1ウェルあたり200μlをトリプリケートで加えた。プレートを2時間37℃でインキュベートし、200μlの洗浄緩衝液(50mM Tris pH8、150mM NaCl、20μM EDTA、0.05%Tween)で3回洗浄した。100μlのエンハンス溶液(enhancement solution)を各ウェルに加えて、蛍光数をVictor
3プレートリーダー(615nm)にて測定した。
【0272】
重鎖および軽鎖可変ドメイン配列を、IMGT/V−QuestおよびJIONSOLVERソフトウェアを用いて分析した。フローサイトメトリーデータはFlowJo分析ソフトウェアを用いて評価した。統計分析は、GraphPad Prism5ソフトウェアを用い、対応のないt検定にて行った。抗体のK
D値を決定するために、飽和結合データを、GraphPad Prism5ソフトウェアを用い、非線形回帰分析にてフィッティングした。
【0273】
実施例3:多重化は記憶B細胞の同定を向上させた
四量体と単量体TTCFを比較した。TTCFをAlexa−488で蛍光標識し、次いで、それを単量体の形態で用いる又は未標識ストレプトアビジン(上述)を用いて四量体に変えた。富化されたB細胞を、次いで、同じ濃度の四量体または単量体TTCF−Alexa−488と共にインキュベートした。対照タンパク質(CD80膜近傍ドメイン)を同じ方法で標識化し、四量体としても用いた。
【0274】
図6Aおよび6Bで示すように、TTCFはいくつかの記憶B細胞を標識化したが、四量体でもって同定された頻度は、3名のドナー由来の細胞を用いて、実質的に幅があった(1.6〜7.3倍)。3名のドナーのうち1名で、TTCF特異記憶B細胞が四量体により検出できたが、単量体では検出できなかった。
【0275】
これらの結果は、抗原の四量体は、記憶B細胞が末梢血中で非常に稀であっても、それらのBCRの抗原特異性に基づいて、該記憶B細胞の感度の良い検出を可能にすることを実証する。クラススイッチしたTTCFに特異的な記憶B細胞は、適切な四量体TTDF抗原により明るく標識化される一方で、対照の四量体で標識化するバックグラウンドは常に低かった。
【0276】
実施例4:方法/抗体の検証
完全にヒト抗体を、オーバーラップPCRを介してIgG重鎖およびカッパ鎖の定常領域を単離した可変セグメントに連結することにより、創出した。抗体を、6〜8日間、CHO−S細胞を用いて、一過性に無血清哺乳動物発現系にて発現させた。抗体はプロテインGおよびゲルろ過クロマトグラフィーを用いて精製した。
【0277】
図7A〜7Bで示されるように、TTCF特異的な形質芽球から単離した抗体はTTCF抗原に対して高い結合親和性、K
D 2.2nM(TTCF Ab1)および323pM(TTCF Ab2)(
図7B)を示した。記憶B細胞から単離した抗体も、高い結合親和性を示し、他の抗体(TTCF Ab3、4および5)に関して、K
D 382pM、228pMおよび1.4nMを示した(
図7B)。
【0278】
これらのデータは、本明細書に開示した方法の特異性を支持する。さらに、本明細書中の方法の特異性は、3名の異なるドナー由来の5つの抗TTCF抗体の構築物がすべて高親和性でもってTTCFに結合したことにより実証される。
【0279】
本明細書中のデータは、また、宿主からの抗原除去後の長きにわたって、抗原の四量体が記憶B細胞の感度の良い検出を可能にすることを実証する。
【0280】
実施例5:抗MICA抗体を得る
MICAに免疫特異的に結合する抗体を、本明細書の方法を用いて開発した。
簡潔には、MICA抗原(UniGene Hs.130838)を、該抗原のモノビオチン化を可能にするC末端BirAタグ(GLNDIFEAQKIEWHE(配列番号:148))を付して発現させた。抗原を、R−フィコエリトリン(PE)で標識化したストレプトアビジン(SA)をモル比4(MICA):1(SA)で用いて四量体化した。末梢血単核球を、GM−CSF発現ベクター(GVAX)を用いて形質導入された自己腫瘍細胞によりワクチン接種された進行期のメラノーマ患者から得て(PNAS 103:9190,2006)、続いて、抗CTLA−4モノクローナル抗体イピリムマブ(ipilimumab)(YERVOY(商標)(Bristol Myers Squibから入手可能))を用いて処理した。末梢血単核球を迅速に融解し、洗浄して、2%ウシ胎児血清が補充されたリン酸緩衝生理食塩水(pH7.2)中で5×10
6に再懸濁し、約0.1μg/mlの四量体を用いて30分間氷上で染色した。抗体を加えて、クラススイッチした記憶B細胞(CD19
+、CD27
+、およびIgM
−)を同定した。T細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージおよび死細胞を標識する排除抗体パネルを含めて、バックグラウンドの四量体染色(CD3、CD14、CD16、7−AAD)を低減させた。MICA四量体に結合した単一種のB細胞を8チューブのPCRストリップにてBD FACS AriaIIを用いて選別した。B細胞受容体(BCR)mRNAを、Epicentre Biotechnologies(カタログ番号:MBCL90310)の商用キットを下記する遺伝子特異プライマーと用いて増幅した。
【0281】
mRNA増幅
IgG−T7:AATACGACTCACTATAGGTTCGGGGAAGTAGTCCTTGACCAGG
(配列番号:22)
Kappa−T7:TAATACGACTCACTATAGGGATAGAAGTTATTCAGCAGGCACAC
(配列番号:23)
Lambda−T7:TAATACGACTCACTATAGGCGTCAGGCTCAGRTAGCTGCTGGCCGC
(配列番号:24)
【0282】
PCR−1
VHL−1:TCACCATGGACTG(C/G)ACCTGGA(配列番号:25)
VHL−2:CCATGGACACACTTTG(C/T)TCCAC(配列番号:26)
VHL−3:TCACCATGGAGTTTGGGCTGAGC(配列番号:27)
VHL−4:AGAACATGAAACA(C/T)CTGTGGTTCTT(配列番号:28)
VHL−5:ATGGGGTCAACCGCCATCCT(配列番号:29)
VHL−6:ACAATGTCTGTCTCCTTCCTCAT(配列番号:30)
VkL−1:GCTCAGCTCCTGGGGCTCCTG(配列番号:31)
VkL−2:CTGGGGCTGCTAATGCTCTGG(配列番号:32)
VkL−3:TTCCTCCTGCTACTCTGGCTC(配列番号:33)
VkL−4:CAGACCCAGGTCTTCATTTCT(配列番号:34)
VlL−1:CCTCTCCTCCTCACCCTCCT(配列番号:35)
VlL−2:CTCCTCACTCAGGGCACA(配列番号:36)
VlL−3:ATGGCCTGGA(T/C)C(C/G)CTCTCC(配列番号:37)
CgII:GCCAGGGGGAAGAC(C/G)GATG(配列番号:38)
CkII:TTTCAACTGCTCATCAGATGGCGG(配列番号:39)
ClII:AGCTCCTCAGAGGAGGG(C/T)GG(配列番号:40)
【0283】
PCR−2
VH−1:CAGGT(G/C)CAGCTGGT(G/A)CAGTC(配列番号:41)
VH−2:CAG(A/G)TCACCTTGAAGGAGTC(配列番号:42)
VH−3:(G/C)AGGTGCAGCTGGTGGAGTC(配列番号:43)
VH−4:CAGGTGCAGCTGCAGGAGTC(配列番号:44)
VH−5:GA(G/A)GTGCAGCTGGTGCAGTC(配列番号:45)
VH−6:CAGGTACAGCTGCAGCAGTC(配列番号:46)
Vk−1:CG(A/C)CATCC(A/G)G(A/T)TGACCCAGT(配列番号:47)
Vk−2:CGAT(A/G)TTGTGATGAC(C/T)CAG(配列番号:48)
Vk−3:CGAAAT(T/A)GTG(T/A)TGAC(G/A)CAGTCT(配列番号:49)
Vk−4:CGACATCGTGATGACCCAGT(配列番号:50)
Vl−1:CCAGTCTGTGCTGACTCAGC(配列番号:51)
Vl−2:CCAGTCTGCCCTGACTCAGC(配列番号:52)
Vl−3:CTCCTATGAGCTGAC(T/A)CAGC(配列番号:53)
CgIII:GAC(C/G)GATGGGCCCTTGGTGGA(配列番号:53)
CkIII:AAGATGAAGACAGATGGTGC(配列番号:55)
ClIII:GGGAACAGAGTGACCG(配列番号:56)
【0284】
PCR−1およびPCR−2に用いたプライマーおよびPCRサイクルの条件は、WangおよびStollarら、(journal of immunological methods,2000)に基づいた。
上記プライマーセットに十分ではないが潜在的にカバーされる重鎖可変領域配列をカバーする別の重鎖可変領域フォワードプライマーセットを開発した。以下の代替プライマーを作り出した。
【0285】
PCR−1
VHL1−58:TCACTATGGACTGGATTTGGA(配列番号:57)
VHL2−5:CCATGGACA(C/T)ACTTTG(C/T)TCCAC(配列番号:58)
VHL3−7:GTAGGAGACATGCAAATAGGGCC(配列番号:59)
VHL3−11:AACAAAGCTATGACATATAGATC(配列番号:60)
VHL3−13.1:ATGGAGTTGGGGCTGAGCTGGGTT(配列番号:61)
VHL3−13.2:AGTTGTTAAATGTTTATCGCAGA(配列番号:62)
VHL3−23:AGGTAATTCATGGAGAAATAGAA(配列番号:63)
VHL4−39:AGAACATGAAGCA(C/T)CTGTGGTTCTT(配列番号:64)
VHL4−61:ATGGACTGGACCTGGAGCATC(配列番号:65)
VHL−9:CCTCTGCTGATGAAAACCAGCCC(配列番号:66)
【0286】
PCR−2
VH1−3/18:CAGGT(C/T)CAGCT(T/G)GTGCAGTC(配列番号:67)
VH1−45/58:CA(A/G)ATGCAGCTGGTGCAGTC(配列番号:68)
VH2−5:CAG(A/G)TCACCTTGA(A/G)GGAGTCTGGT(配列番号:69)
VH3−9/23/43:GA(A/G)GTGCAGCTG(T/G)TGGAGTC(配列番号:70)
VH3−16:GAGGTACAACTGGTGGAGTC(配列番号:71)
VH3−47:GAGGATCAGCTGGTGGAGTC(配列番号:72)
V4−34:CAGGTGCAGCTACAGCAGTG(配列番号:72)
V4−30−2/39:CAGCTGCAGCTGCAGGAGTC(配列番号:74)
VH7−4−1:CAGGTGCAGCTGGTGCAATC(配列番号:75)
【0287】
簡潔には、mRNA増幅を介して創出された2μlのcDNAを、以下のサイクル条件にて、第1ラウンドのPCRの鋳型として使用した:3サイクルのプレ増幅(94℃/45秒、45℃/45秒、72℃/105秒);30サイクルの増幅(94℃/45秒、50℃/45秒、72℃/105秒);10分、72℃の最後の伸長。
【0288】
第1ラウンドのPCR産物3μlを、ネステッドPCRの第2ラウンドの鋳型として用いた。同一のサイクル条件を、そのPCRの第1ラウンドに用いたが、プレ増幅の3サイクルは省略した。両方のPCR工程は、クローン化されたPfuポリメラーゼAD(Agilent Technologies)を用いて実施した。PCR産物を1%アガロースゲルにて分離し、300〜400ヌクレオチド・サイズの産物をズィモクリーン(Zymoclean)DNAゲル・リカバリーキット(Zymo Research)を用いて単離した。配列決定は、第2ラウンドのネステッドPCRに用いたフォワードおよびリバースプライマーを用いて実施した。2ステップ・ネステッドPCRは、重鎖および軽鎖(上記参照)のBCR可変部分ドメインを増幅する。末梢血単核球は、GM−CSF発現ベクター(GVAX)(PNAS103:9190,2006)を用いて形質導入された自己腫瘍細胞によりワクチン接種された進行期のメラノーマ患者から得た。抗体は、一過性のCHO−S発現システムにて全長IgG1抗体として発現された。
【0289】
MICAに結合する抗MICA抗体の確認は、2つの独立したビーズ・ベースのアッセイを用いて実施した。第一のアッセイは、様々なMICA対立遺伝子(One Lambda、カタログ番号LSMICA001)に対して反応性の抗MICA抗体の検出のために設計された市販の溶液ベースのビーズアッセイキットを用いた。様々な濃度のMICA抗体をビーズと共にインキュベートし、次いで洗浄し、そして、フィコエリトリンとコンジュゲートした抗ヒトIgG抗体と共にインキュベートした。第2の洗浄工程後に、ビーズをLuminex機にて分析した。陰性対照は、フィコエリトリンとコンジュゲートした抗ヒトIgG抗体のみ(抗MICA抗体は用いない)と共にビーズをインキュベーションすることから成った。陽性対照は、フィコエリトリンに直接コンジュゲートされた市販の抗MICA/MICBモノクローナル抗体(クローン6D4)(BioLegendカタログ#320906)と共にビーズをインキュベーションすることから成った。第2のアッセイは、ストレプトアビジンとコンジュゲートしたポリスチレンビーズを用いて内部的に開発した。ビーズをモノビオチン化したMICAタンパク質で被覆して、様々な濃度の、フィコエリトリンに直接コンジュゲートした抗MICA抗体、抗TTCF抗体(アイソタイプ陰性対照)またはBioLegend抗MICA/MICB抗体(陽性対照)と共にインキュベートした。抗MICA抗体または抗TTCF抗体と共にインキュベートしたビーズを洗浄し、次いで、Alexa488とコンジュゲートした抗ヒトIgG抗体と共にインキュベートした。ビーズに対するバックグラウンド結合を決定するために、比較用のMICAタンパク質で被覆していないストレプトアビジンコンジュゲートビーズを用いて、同一のインキュベーションを実施した。ビーズを、FACS Caliberフローサイトメーターにて抗体に対する結合に関して分析した。
図8および
図9A−9Oで示されるように、抗MICA抗体(MICA−Ab12およびMICA−Ab20)はMICAと高い親和性でもって結合する。MICA−Ab20は、表1に記載の抗MICA抗体ID−1に対応する。
【0290】
実施例6:抗MICA抗体
臨床上関連した生物学的特徴を有する追加の抗MICA抗体を、本明細書に記載の方法を用いて開発した。共通の対立遺伝子に反応性のMICA特異的抗体を、細胞性癌ワクチン(GM−CSF形質導入癌細胞、GVAXと称する)およびT細胞イピリムマブ(YERVOY(商標)(Bristol Myers Squibから入手可能))上の阻害性CTLA−4受容体を遮断する抗体を受けた患者において同定した。次いで、MICA四量体を用いて、最も高い血清MICA反応性を示した患者の末梢血単核球からB細胞を単離した。実施例5に概括したように、重鎖および軽鎖配列を、これらのB細胞から単細胞PCRにより決定した。この努力は、北アメリカ人集団に共通する対立遺伝子を認識する抗体の同定をもたらした。
【0291】
CM24002Ab2(表1に記載の抗MICA抗体ID−6)は、GVAX+イピリムマブ併用療法に有意な臨床反応を実際に示し、且つその血漿がMICAと強く反応した急性骨髄性白血病(AML)患者から単離した抗体である。CM24002Ab2の軽鎖(
図12および13)および重鎖(
図10および11)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列が、CDR1、CDR2およびCDR3に下線を付して示される。強い結合性を有する追加の抗体が、同一の患者から得られ、CM24002Ab4(表1に記載の抗MICA抗体ID−7)とした。CM24002Ab4の軽鎖(
図16および17)および重鎖(
図15および14)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列が、CDR1、CDR2およびCDR3に下線を付して示される。
【0292】
CM33322Ab11(表1に記載の抗MICA抗体ID−8)、CM33322Ab4(表1に記載の抗MICA抗体ID−11)およびCM33322Ab28(表1に記載の抗MICA抗体ID−12)は、GVAX+イピリムマブ併用療法に対して長期間の応答者である転移性黒色腫患者から単離した抗体である。CM33322Ab11の軽鎖(
図20および21)および重鎖(
図18および19)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列が、CDR1、CDR2およびCDR3に下線を付して示される。CM33322Ab29の軽鎖(
図24および25)および重鎖(
図22および23)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列が、CDR1、CDR2およびCDR3に下線を付して示される。CM33322Ab4軽鎖(
図37および38)および重鎖(
図35および36)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列が、CDR1、CDR2およびCDR3に下線を付して示される。CM33322Ab28の軽鎖(
図52および53)および重鎖(
図50および51)のヌクレオチドおよびアミノ酸配列が、CDR1、CDR2およびCDR3に下線を付して示される。この患者の長期間に亘る臨床反応のために、これらの抗体は特に興味深い。
【0293】
興味対象の抗体の最初の同定、クローニング、発現の後、種々のMICA対立遺伝子に関するこれらの抗体の特異性を、サイトメトリック・ビーズアッセイ(cytometric bead assay)を用いて決定した。簡潔には、単一のBirAビオチン化部位を有する、可溶性の組換えMICA対立遺伝子002、008、009およびMICBを発現させ、精製し、ストレプトアビジンビーズにて捕捉した。示した抗MICA抗体を、次いで、組換えMICAで被覆したビーズと共に種々の濃度で1時間インキュベートし、次いで、洗浄し、FITC標識化抗ヒトIgG二次抗体と共にインキュベートした。第2の洗浄工程に続いて、ビーズに結合したFITC蛍光の定量を、フローサイトメトリーにより行った。MICA対立遺伝子002、008、009ならびに関連するMICBタンパク質を、北アメリカ人集団におけるそれらの有病率に基づいて選択した(
図26A−G)。重要なことに、CM24002Ab2およびCM33322Ab29は、すべてのMICA対立遺伝子およびMICBに強く結合した。他の2つの抗体は、対立遺伝子のサブセットに結合した:CM24002Ab4はMICA*009およびMICBに強く結合し、およびCM33322Ab11はMICA*002、MICA*008およびMICBに強く結合した(
図26A−G)。特異性は、同一の技術を用いて創出した陰性対照ヒト抗体(破傷風トキソイドC末端断片、TTCFに特異的)の使用、およびMICAに対する陽性対照抗体(BioLegend製の、MICAに対する商用のネズミ抗体)の使用により裏付けられた。これらの試験は、CM24002Ab2およびCM33322Ab29を臨床応用に潜在力を有する候補物質と特定した。
【0294】
CM33322Ab28の結合性を、3つの共通する対立遺伝子(MICA*002、MICA*008、MICA*009)によりコードされた組換えMICAに対して、2点の抗体濃度(500ng/mlおよび1μg/ml)にてELISA(HRP読出し)により試験した。結果は、CM33322Ab28は3つの対立遺伝子の全てに結合することを実証し、これは、この抗体もまた臨床応用の候補物質であることを示す。
【0295】
実施例7:抗MICA抗体の自己腫瘍細胞に対する結合
単離した抗MICA抗体CM24002Ab2の自己腫瘍細胞に結合する能力を、フローサイトメトリーにより試験した(
図27)。骨髄を患者CM24002から採取し、CM24002Ab2による腫瘍細胞に対する結合性を試験した。腫瘍細胞を、次いで、前記骨髄試料からCD33+ CD34+細胞として同定した。その腫瘍細胞を、次いで、抗MICA抗体CM24002Ab2、陽性対照の商用MICA抗体(BioLegend)または陰性対照の抗体(TTCF特異的)の10μg/mlを用いて染色した。
図27で示されるように、CM24002Ab2は、これらの細胞に強く結合した。CM24002Ab2は、非腫瘍細胞(CD16+およびCD3+細胞)に対する結合は示さず、CD14+細胞に対してはバックグラウンドの結合性を示すのみで、これは抗腫瘍特異性を実証するものである(データは示さず)。
【0296】
実施例8:NK細胞上のNKG2D受容体の抗MICA抗体阻害
単離した抗MICA抗体CM24002Ab2がその同起源受容体NKG2Dを可溶性MICA媒介性ダウンレギュレートする能力を試験した。患者CM24002由来の血清を1:10希釈で用いて、ヒトNK細胞と共に48時間インキュベートした。CM24002Ab2(濃度10μg/ml)、陽性対照の商用MICA抗体(BioLegend)または陰性対照抗体(TTCF特異的)をこれらの培養物へ添加した。NKG2D発現は、フローサイトメトリーにより48時間の時点で評価した(
図28)。患者CM24002由来の血清は、NKG2D発現を強くダウンレグレートした(かくして、この受容体を機能しなくする)。CM24002Ab2およびこの陽性対照MICA抗体は、NK細胞によるNKG2Dの表面発現を部分的に回復させた。特異性を実証するために、我々は、細胞を患者の血清に代えて2ng/mlの組換えMICAと共にインキュベートすることにより、上記試験を繰り返した(
図29)。CM24002Ab2は、MICA媒介性NKG2D発現のダウンレギュレーションを完全に抑制した一方で、陰性対照の抗体(TTCFに特異的)は効果を示さなかった(
図29)。これらのデータは、ヒトMICA抗体がヒトNK細胞上の重要なNKG2D受容体の阻害を抑制し得ることを実証する。
【0297】
単離した抗MICA抗体がNKG2Dの可溶性MICA媒介性ダウンレギュレーションを抑制する能力をさらに試験するために、上記試験を、複数の血清試料および追加の単離した抗MICA抗体を用いて繰り返した。
図29に示すように、進行性のメラノーマ患者由来の20の血清試料のうち15の試料が、有意なレベルの脱落したMICAを含んだ。PBMCを、対照の血清または可溶性MICA単独を含有するもしくは表示した抗体100μg/mlの存在下でMICAを含有する選択したメラノーマ患者試料と共に48時間インキュベートした。48時間の時点で、NK細胞(CD3−、CD8−、CD56+)上のNKG2D発現を、フローサイトメトリーにより決定した(
図40;データはNKG2D陽性のNK細胞に関する%として表す)。これらのデータは、ヒトMICA抗体が、血清試料中でNKG2Dのダウンレギュレーションを阻止し、試験した血清試料のすべてでNKG2D媒介性細胞障害を回復したこと、およびヒトNK細胞上の重要なNKG2D受容体の阻害を抑制できることをさらに実証する。
【0298】
単離した抗MICA抗体がNKG2Dの可溶性MICA媒介性ダウンレギュレーションを抑制する能力をさらに試験するために、上記試験を、追加の単離した抗MICA抗体(例えば、CM24002Ab2、CM33322Ab4、CM33322Ab11またはCM33322Ab28)を用いて繰り返した。48時間後に、細胞を洗浄し、NKG2D表面発現をフローサイトメトリーにより評価した。
図59で示されるように、いくつかの抗MICAは、rMICA誘導性のNKG2Dダウンレギュレーションを阻止する。
【0299】
単離した抗MICA抗体がNKG2Dのメラノーマ血清誘導型ダウンレギュレーションを抑制する能力を試験するために、上記試験を、複数の血清使用および追加の単離した抗MICA抗体を用いて繰り返した。全PBMCを、対照血清またはメラノーマ血清単独もしくは表示した抗体を含むメラノーマ血清と共に48時間インキュベートした。48時間後に、細胞を洗浄し、NKG2D表面発現をフローサイトメトリーにより評価した。
図57で示されるように、いくつかの抗MICA抗体は、メラノーマ血清誘導型NKG2Dのダウンレギュレーションを阻止する。
【0300】
実施例9:抗MICA抗体の細胞性細胞障害
CM24002Ab2が細胞媒介性細胞障害を可能にするかどうかを決定するために、ヒトNK細胞(エフェクター細胞)を48時間、CM24002Ab2、陰性対照の抗体(TTCF特異的)または陽性対照(BioLegend)(すべて10μg/ml)の存在下、組換えMICA(2ng/ml)と共にインキュベートした。48時間後に、細胞を洗浄し、K562腫瘍細胞と20:1、10:1および5:1のエフェクター:標的の比で4時間インキュベートした。NK細胞による標的細胞の特異的な溶解を、K562腫瘍細胞からのサイトゾルタンパク質(LDH)の放出により決定した。MICA抗体が存在しない場合、NK細胞によるK562腫瘍細胞の殺傷はなかった。しかしながら、CM24002Ab2は、陽性対照のマウスMICA抗体よりも、すべてのエフェクター:対照の比で、K562腫瘍細胞のNK細胞媒介性の溶解を大幅に増強した(
図30)。K562腫瘍細胞の殺傷が本当にNKG2D経路により(Fc受容体よりも)媒介されることがさらに実証された。上記試験を、さらに2つの実験群(NKG2D用の遮断抗体およびヒトFcブロック用の遮断抗体)を用いて繰り返した。加えて、CM33322Ab29も試験した。データは、CM24002Ab2およびCM33322Ab29の添加が、NK細胞媒介性細胞障害を増強したことを示す。NKG2D遮断抗体を添加した場合、K562細胞の殺傷は生じなかったが、一方で、Fc遮断試薬はほとんど効果がなかった(
図31)。これらのデータは、CM24002Ab2およびCM33322Ab29が、NKG2D経路の抗腫瘍機能を回復することを示す。
【0301】
追加の単離した抗MICAが細胞媒介性細胞障害を可能にするか否かを決定するために、全PBMCを、CM24002Ab2、CM33322Ab4、CM33322Ab11、CM33322Ab28、陰性対照抗体(TTCF特異的)または陽性対照抗体(BioLegend)の存在下、組換えMICA(rMICA)と共に48時間インキュベートした。48時間後に、細胞を洗浄し、
51Cr標識化K562標的細胞と共に20:1、10:1および5:1のエフェクター:標的の比率で4時間インキュベートした。特異的な溶解を、4時間後に
51Crの放出により評価した。
図58で実証されるように、NK細胞の殺傷活性は、組換えsMICAの存在下、抗MICA抗体により増強される。単離した抗MICA抗体が細胞媒介性細胞障害を可能にするか否かをさらに確認するために、ヒトNK細胞(エフェクター細胞)をメラノーマ患者血清と共に48時間インキュベートした。PBMCを、対照血清または可溶性MICA単独を含有するメラノーマ患者試料もしくは表示した抗体100μg/mlの存在下で可溶性MICAを含有するメラノーマ患者試料とともに48時間インキュベートした(陰性アイソタイプ対照抗体(TTCF特異的)または陽性対照抗体(BioLegend))。48時間の時点で、細胞を洗浄し、20:1のエフェクター対標的の比率で
51Cr標識化K562標的細胞と共にインキュベートした。特異的な溶解を、4時間後にシンチレーション計数により評価した(
図41〜43および62)。これらのデータは、CM24002Ab2、CM33322Ab29、CM33322Ab4およびCM33322Ab28が、NKG2D経路の抗腫瘍機能を回復するさらに示す。
【0302】
全PBMCを、対照血清またはメラノーマ血清単独もしくはCM24002Ab2、CM33322Ab4、CM33322Ab11およびCM33322Ab28の存在下のメラノーマ血清と共に48時間インキュベートした(
図56)。48時間後に、細胞を洗浄し、
51Cr標識化K562腫瘍細胞と共に表示のエフェクターの標的に対する比率でインキュベートした。特異的な溶解を、4時間後に
51Crの放出により評価した。
図56で実証されるように、NK細胞殺傷活性は、メラノーマ血清の存在下、抗MICA抗体により増強される。
【0303】
さらなる実施例において、CM24002Ab2およびCM33322Ab28は、K562腫瘍細胞のNK細胞媒介性溶解を大幅に増強し、且つすべてのエフェクター:標的の比率で陽性対照のマウスMICA抗体よりもより効果的であった(
図54)。
【0304】
さらなる実験において、CM24002Ab2、CM33322Ab28およびCM33322Ab29は、sMICA
+患者の血清を用いた48時間のインキュベーションの間に、NK細胞およびCD8T細胞におけるNKG2D受容体のダウンレギュレーションを抑制した(
図62A〜B)。これらのMICA抗体はまた、sMICAによるCD8 T細胞の細胞障害の阻止を抑制することを示した(NY−ESOに特異的なクローン、
51Cr標識化Mel375細胞、20:1 E:T比率)(
図62C)。
【0305】
実施例10:アルファ3MICAドメインに対する抗MICA抗体の結合性
NKG2D受容体は、MICAのトップのアルファ1およびアルファ2ドメインに結合するため、同一部位に結合する抗体はNKG2D受容体と競合することができ、それによって、NK細胞による腫瘍細胞の殺傷を阻止できる。NKG2D受容体の結合を阻止できないために、アルファ3ドメインに結合する抗体が特に興味深い。同時に、そのような抗体は、腫瘍細胞表面からのMICAのタンパク質分解的切断に干渉し得る。MICAα3ドメインに対する抗MICA抗体の能力は、記述のサイトメトリック・ビーズアッセイを用いて評価した。ビオチン化組換えタンパク質を、ストレプトアビジンビーズ上に捕捉した。ビーズを、次いで、10μg/mlの抗体CM24002Ab2、CM24002Ab4、CM33322Ab11、CM33322Ab29、陰性対照抗体(TTCF特異的)または陽性対照抗体(BioLegend)と共にインキュベートし、続いて、FITC標識化抗ヒトIgG二次抗体と共にインキュベートし、フローサイトメトリーによりビーズに結合したFITC蛍光の定量を行った(
図32)。
図32に示されるように、CM33322Ab29は、MICAアルファ3ドメインに結合し、それ故に、治療応用に非常に興味深い。
【0306】
他の試験において、CM24002Ab2、CM24002Ab4、CM33322Ab11、CM33322Ab29およびCM33322Ab28は、ELISAにより測定されたように、組換えMICAα3ドメインに結合した(
図63a)。CM24002Ab2、CM33322Ab29およびCM33322Ab28は、48時間のインキュベーションの間に、RPMI−8226細胞上のMICA表面レベルを増大させたことをさらに示す。
【0307】
実施例11:抗MICA抗体の腫瘍細胞に対する結合性
広範囲の癌を標的とし、CM24002Ab2およびCM33322Ab29を用いてそれらの潜在的能力を評価した。多発性骨髄腫(RPMI8226およびXg−1)、卵巣癌(OVCAR3)、急性骨髄性白血病(U937)、メラノーマ(K028)、肺癌(1792および827)、および乳癌(MCF7)細胞を、CM24002Ab2およびCM33322Ab29による標識化に関して試験した。腫瘍細胞を、1%BSAが補充されたPBS中に1×10
6細胞/mlの濃度で再懸濁し、CM24002Ab2およびCM33322Ab29、並びに陽性対照および陰性対照(それぞれマウスMICA抗体およびTTCF特異抗体)(直接コンジュゲートした)濃度10μg/mlを、4℃で1時間用いて染色した(
図33)。CM24002Ab2およびCM33322Ab29は両方とも試験した腫瘍細胞タイプのそれぞれに結合し、試験した細胞株の大部分で商用の陽性対照よりもより強く標識化する。Mel526、K029、RPMI−8226およびMCF−7腫瘍細胞系に対して試験した場合、CM3332Ab28はまた、腫瘍細胞上でMICAを検出する能力を実証した。
【0308】
実施例12:抗MICA抗体のMICA対立遺伝子特異性
CM33322Ab29の対立遺伝子特異性を、商業的に利用可能なLuminexアッセイを用いて評価した。商用の試験キットは、Luminexビーズに直接コンジュゲートされた組換えMICA対立遺伝子(MICA*001、*002、*007、*012、*017、*018、*027、*004、*009、および*015)を含み、その各々は単一試料中で結合を評価することを可能にする固有の蛍光特性を有する。表示したMICA対立遺伝子で被覆したLuminexビーズを、CM33322Ab29、BioLegend陽性対照および陰性対照(TTCF)と共に、10μg/mlにて1時間インキュベートし、続いて、PEコンジュゲートされた抗ヒトIgG二次抗体と共にインキュベートした。表示した抗体との60分間のインキュベーションに続き、抗ヒトPEコンジュ―ゲート二次抗体とのインキュベーション後に、蛍光を、Luminex200機器を用いて測定した(
図34)。CM33322Ab29は、商用のアッセイに存在する対立遺伝子の全てに結合することができ、これは、MICAの遺伝子型に関係なく患者に使用できることを示唆する。
【0309】
これらのデータは、CM24002Ab2およびCM33322Ab29の高い生物活性および腫瘍細胞に関するNK細胞媒介性溶解を回復させるそれらの能力を実証する。これらのデータは、免疫療法に応答した癌患者が、NK細胞の抗腫瘍活性を回復するMICA抗体を産生したことを実証する。併せれば、これらの結果は、癌患者において、免疫抑制に打ち勝ち、腫瘍の崩壊を促進する抗MICA抗体の治療上の潜在力を強調する。
【0310】
実施例13:インビトロおよびインビボでの抗MICA抗体の生物活性
腫瘍成長に対する抗MICA抗体の直接的な影響を試験するために、インビトロおよびインビボでの抗MICA抗体の生物活性を、ネズミB16を用いて評価した。この試験のために、B16ネズミメラノーマ細胞を形質導入し、ヒトMICAを発現させた。フローサイトメトリーを用いて、細胞B16表面のMICA発現を検出した(
図44)。
【0311】
図45は、B16−MICA腫瘍が、脾臓NK細胞および腫瘍−浸潤性NK細胞上のNKG2D発現をダウンレギュレートすることを実証する一連のグラフである。非腫瘍マウスの脾臓または腫瘍を有する動物の脾臓および腫瘍から単離したNK細胞(CD3−、CD8−、CD335+)におけるNKG2D発現はフローサイトメトリーにより測定した。
【0312】
図46は、抗MICA抗体処置がB16−MICA腫瘍を有するマウスにおける血清MICAレベルを低下させることを示す。B16−MICA腫瘍を有するB6マウスを、1週間に3回、投薬あたり100μgまたは200μgのCM33322Ab29を尾静脈注射した。最初の処置後1週間目に、採血し、血清MICAをELISAにより測定した。
図47は、抗MICA抗体の投与がサンドウィッチELISAによるMICA検出と干渉しないことを示す。組換えMICAを100倍超の抗体と共に回転させながら18時間インキュベートした。MICA濃度はサンドウィッチELISAにより測定した。
【0313】
腫瘍成長に対する抗MICA抗体の影響を直接試験するために、抗MICA抗体CM33322Ab29をB16−MICA腫瘍保有マウスに投与した。腫瘍が直径5mmに達したら開始する投薬あたり200μgのマウスIgG2a/κアイソタイプ対照または抗MICA抗体CM33322Ab29を静脈注射にて用いて、マウスを処置した。1週間あたり3回投薬し、腫瘍容積を毎日記録した。
図48に示されるように、B16−MICA腫瘍保有マウスでの抗MICA抗体CM33322AB29処置は、腫瘍成長を停止させるこれらのデータは、インビトロおよびインビボ両方での、メラノーマ細胞の成長阻止を示し、そして、抗MICA抗体処置が、宿主の抗腫瘍応答および腫瘍細胞の直接的な殺傷の結果として、潜在力を有する治療上の戦略であり得ることを示す。
【0314】
実施例14:抗MICA抗体は、腫瘍細胞からのMICA脱落を低下させる
腫瘍細胞からのMICAの脱落を低減するCM24002Ab2およびCM33322Ab29の潜在力を試験した。RPMI−8226細胞を、10μg/mlのアイソタイプ対照抗体(TTCF−S1C1)、CM33322Ab29、またはCM24002Ab2の存在下で培養した。48時間後に、細胞を洗浄し、MICA表面の発現をフローサイトメトリーにより測定した。
図49で実証されるように、CM24002Ab2およびCM33322Ab29は、MICA脱落RPMI−8226細胞を低減させた。
【0315】
さらなる実施例において、腫瘍細胞からのMICAの脱落を低減するCM24002Ab2、CM33322Ab4、CM33322Ab11およびCM33322Ab28の潜在力を試験した。RPMI−8226細胞を、アイソタイプ対照抗体(TTCF−S1C1)およびCM24002Ab2、CM33322Ab4、CM33322Ab11またはCM33322Ab28の存在下で培養した。48時間後に、細胞を洗浄し、MICA表面の発現をフローサイトメトリーにより測定した。
図55で実証されるように、CM24002Ab2、CM33322Ab4、CM33322Ab11およびCM33322Ab28は、MICA脱落RPMI−8226細胞を低減させた。
【0316】
さらなる実施例において、CM24002Ab2、CM33322Ab28およびCM33322Ab29は、腫瘍細胞上清中にsMICAが存在する状況下、ELISAにより測定されたように、48時間のインキュベーションの間に、A375によるMICAの脱落を阻止した(
図63a)。
【0317】
実施例15:ヒト抗MICA抗体の治療活性
ヒトU937腫瘍細胞を移植されたSCIDマウスをCM24002Ab2、CM33322Ab28およびCM33322Ab29(1週あたり3×100μgAb)を用いて処置した。処置の1週間後に、3種類の抗体のすべてが、ELISAにより測定されたように腫瘍ホモジネートにおけるsMICAを有意に低減させ(腫瘍容積に対して規格化した)、及び、フローサイトメーターにより測定されたように腫瘍ホモジネートにおける腫瘍細胞表面上でのMICA発現を増加させた(
図64a〜b)。
【0318】
処置マウスにおけるNK細胞機能もまた評価した。CM24002Ab2、CM33322Ab28またはCM33322Ab29による処置は、腫瘍−浸潤性のCD45
+ NK1.1
+ NK細胞によるNKG2DおよびNKp46の表面レベルを増加させ、腫瘍におけるNK細胞の蓄積を誘導した(1×10
5 CD45
+細胞に対して規格化した)。処置は、腫瘍浸潤性のCD45
+ NK1.1
+ NK細胞によるIFNγおよびパーフォリン発現も増大させた。加えて、3つのヒトMICA抗体のすべてが、脾細胞による
51Cr標識化YAC−1細胞のエクスビボ殺傷を増強した(
図65a〜f)。
【0319】
実施例16:抗MICA抗体のエピトープマッピング
CM33322mAb29、CM33322 11、CM33322mAb4およびCM33322mAb28のエピトープ配列を決定するための試験を行った。簡潔には、MICA*009細胞外ドメインの全長に及ぶ一連の重複ペプチドを含むペプチドアレイにより、エピトープマッピングを行った。前記アレイにおける各ペプチドは、MICA*009参照配列(配列番号:185)由来の20アミノ酸直鎖配列長であり、各々の次の配列は前の配列と10アミノ酸重複している(20aaペプチドは10aaのオフセットを有する)。これらのペプチドを、フレキシブルリンカーを使用してスライドガラスに結合させた。抗体を前記スライドと共にインキュベートし、ペプチド断片に結合した抗体をCy5コンジュゲート抗ヒトIgG抗体で検出した。アレイスポットに対する結合は、GenePixマイクロアレイ・スキャナーにより評価した。結果は、抗体CM33322mAb29、CM33322 11、CM33322mAb4およびCM33322mAb28が、ヒトMICAまたはMICBのアルファ3領域に結合することを示す。
【0320】
結果は、3つの抗体すべてがヒトMICAαF3領域内の、明らかに異なる連続するアミノ酸配列を含む、エピトープと相互作用することを示す。CM33322mAb29、CM33322 11、CM33322mAb4およびCM33322mAb28の、MICA*009内のエピトープのアミノ酸配列を
図60A〜60Dに示す。CM33322mAb29、CM33322mAb4およびCM33322mAb28のエピトープの、MICAの三次元構造内の配置も
図61に示す。
【0321】
結果は、抗体CM33322mAb29により認識されるエピトープは、連続アミノ酸配列GDVLPDGNGTYQTWVATRIC(配列番号:186)を含むことを示し(
図60A)、その配列はヒトMICAのアミノ酸残基229〜248(配列番号:185)に対応する。抗体CM33322mAb11により認識されるエピトープは、連続するアミノ酸配列:NVETEEWTP(配列番号:187)を含み(
図60B)、その配列はヒトMICAのアミノ酸残基119〜128(配列番号:185)に対応する。抗体CM33322mAb4により認識されるエピトープは、連続するアミノ酸残基:TVPPMVNVTR(配列番号:188)を含み(
図60C)、その配列はヒトMICAのアミノ酸残基179〜188(配列番号:185)に対応する。抗体CM33322mAb28により認識されるエピトープは、連続するアミノ酸配列TCRASSFYPR(配列番号:189)を含み、その配列はヒトMICAのアミノ酸残基199〜208(配列番号:185)に対応する。
【0322】
実施形態
1.MHCクラスIポリペプチド・リレイティッド・シークエンスA(MICA)と免疫特異的に結合するペプチドを含む組成物であって、前記ペプチドが配列番号:176に示されるアミノ酸配列を含むV
H相補性決定領域(CDR)3もしくは5個以下の保存的アミノ酸置換を有するそのバリアント、および配列番号:183に示されるアミノ酸配列を含むV
LCDR3もしくは5個以下の保存的アミノ酸置換を有するそのバリアントを含む、組成物。
【0323】
2.前記ペプチドが配列番号:176に示されるアミノ酸配列を含むV
H相補性決定領域(CDR)3、および配列番号:183に示されるアミノ酸配列を含むV
LCDR3を含む、実施形態1の組成物。
【0324】
3.前記ペプチドが配列番号:174に示されるアミノ酸配列を含むV
HCDR2もしくは5個以下の保存的アミノ酸置換を有するそのバリアント、または配列番号:181に示されるアミノ酸配列を含むV
LCDR2もしくは5個以下の保存的アミノ酸置換を有するそのバリアント、もしくはその両方を含む、実施形態1または2の組成物。
【0325】
4.前記ペプチドが配列番号:174に示されるアミノ酸配列を含むV
H相補性決定領域CDR2、または配列番号:181に示されるアミノ酸配列を含むV
LCDR2、もしくはその両方を含む、実施形態3の組成物。
【0326】
5.前記ペプチドが配列番号:172に示されるアミノ酸配列を含むV
HCDR1もしくは5個以下の保存的アミノ酸置換を有するそのバリアント、または配列番号:179に示されるアミノ酸配列を含むV
LCDR1もしくは5個以下の保存的アミノ酸置換を有するそのバリアント、もしくはその両方を含む、実施形態1〜4のいずれかの組成物。
【0327】
6.前記ペプチドが配列番号:172に示されるアミノ酸配列を含むV
H相補性決定領域CDR1、または配列番号:179に示されるアミノ酸配列を含むV
LCDR1、もしくはその両方を含む、実施形態5の組成物。
【0328】
7.MHCクラスIポリペプチド・リレイティッド・シークエンスA(MICA)と免疫特異的に結合するペプチドを含むキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)であって、前記ペプチドが配列番号:176に示されるアミノ酸配列を含むV
H相補性決定領域(CDR)3もしくは5個以下の保存的アミノ酸置換を有するそのバリアント、および配列番号:183に示されるアミノ酸配列を含むV
LCDR3もしくは5個以下の保存的アミノ酸置換を有するそのバリアントを含む、キメラ抗原受容体。
【0329】
8.前記ペプチドが配列番号:176に示されるアミノ酸配列を含むV
H相補性決定領域(CDR)3、および配列番号:183に示されるアミノ酸配列を含むV
LCDR3を含む、実施形態7のキメラ抗原受容体(CAR)。
【0330】
9.前記ペプチドが配列番号:174に示されるアミノ酸配列を含むV
HCDR2もしくは5個以下の保存的アミノ酸置換を有するそのバリアント、または配列番号:181に示されるアミノ酸配列を含むV
LCDR2もしくは5個以下の保存的アミノ酸置換を有するそのバリアント、もしくはその両方を含む、実施形態7または8のキメラ抗原受容体(CAR)。
【0331】
10.前記ペプチドが配列番号:174に示されるアミノ酸配列を含むV
H相補性決定領域CDR2、または配列番号:181に示されるアミノ酸配列を含むV
LCDR2、もしくはその両方を含む、実施形態9のキメラ抗原受容体(CAR)。
【0332】
11.前記ペプチドが配列番号:172に示されるアミノ酸配列を含むV
HCDR1もしくは5個以下の保存的アミノ酸置換を有するそのバリアント、または配列番号:179に示されるアミノ酸配列を含むV
LCDR1もしくは5個以下の保存的アミノ酸置換を有するそのバリアント、もしくはその両方を含む、実施形態8〜10のいずれかのキメラ抗原受容体(CAR)。
【0333】
12.前記ペプチドが配列番号:172に示されるアミノ酸配列を含むV
H相補性決定領域CDR1、または配列番号:179に示されるアミノ酸配列を含むV
LCDR1、もしくはその両方を含む、実施形態11のキメラ抗原受容体(CAR)。
【0334】
13.前記ペプチドが、配列番号:168に示されるアミノ酸配列を含むV
H鎖、またはそのCDR1、CDR2およびCDR3領域内に5個以下の保存的アミノ酸置換を有し、かつ配列番号:168のFR1、FR2、FR3、FR4領域と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む対応するFR1、FR2、FR3、FR4領域を含むそのバリアント;および配列番号:170に示されるアミノ酸配列を含むV
L鎖、またはそのCDR1、CDR2およびCDR3領域内に5個以下の保存的アミノ酸置換を有し、かつ配列番号:170のFR1、FR2、FR3、FR4領域と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む対応するFR1、FR2、FR3、FR4を含むそのバリアント、を含む抗体または抗体断片である、実施形態7〜12のいずれかのキメラ抗原受容体(CAR)。
【0335】
14.前記ペプチドが、配列番号:168を含むV
H鎖および配列番号:170を含むV
L鎖を含む抗体または抗体断片である、実施形態13のキメラ抗原受容体(CAR)。
【0336】
15.細胞外ヒンジドメイン、T細胞受容体膜貫通ドメイン、および細胞内T細胞受容体シグナリングドメインをさらに含む、実施形態7〜14のいずれかのキメラ抗原受容体(CAR)。
【0337】
16.前記ペプチドがCD137(4−IBB)シグナリングドメインおよびCD3−ζ鎖を含む、実施形態7〜15のいずれかのキメラ抗原受容体(CAR)。
【0338】
17.実施形態7〜16のいずれかのキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸分子。
【0339】
18.実施形態18の核酸分子を保有するヒトT細胞。
【0340】
19.対象における癌を処置する方法であって、実施形態18を前記対象のT細胞に投与することを含み、前記T細胞が前記キメラ抗原受容体(CAR)を発現するように改変された自己T細胞である、方法。
【0341】
20.MHCクラスIポリペプチド・リレイティッド・シークエンスA(MICA)に免疫特異的に結合するペプチドまたはそのエピトープをコードする核酸を含む組成物であって、前記核酸が配列番号:167と少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれを超える配列同一性、もしくは完全な(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する、組成物。
【0342】
21.MHCクラスIポリペプチド・リレイティッド・シークエンスA(MICA)に免疫特異的に結合するペプチドまたはそのエピトープをコードする核酸を含む組成物であって、前記核酸が配列番号:169と少なくとも約75%、80%、90%、95%、99%またはそれを超える配列同一性、もしくは完全な(100%)配列同一性を有するヌクレオチド配列を有する、組成物。
【0343】
22.配列番号:176に示されるアミノ酸配列を含むV
H相補性決定領域(CDR)3もしくは5個以下の保存的アミノ酸置換を有するそのバリアント、および配列番号:183に示されるアミノ酸配列を含むV
LCDR3もしくは5個以下の保存的アミノ酸置換を有するそのバリアントを含むペプチドをコードするベクター。
【0344】
23.前記ペプチドが、配列番号:176に示されるアミノ酸配列を含むV
H相補性決定領域(CDR)3、および配列番号:183に示されるアミノ酸配列を含むV
LCDR3を含む、実施形態22のベクター。
【0345】
24.前記ペプチドが、配列番号:174に示されるアミノ酸配列を含むV
H相補性決定領域(CDR)2もしくは5個以下の保存的アミノ酸置換を有するそのバリアント、または配列番号:181に示されるアミノ酸配列を含むV
LCDR2もしくは5個以下の保存的アミノ酸置換を有するそのバリアントを含む、実施形態22または23のベクター。
【0346】
25.前記ペプチドが、配列番号:174に示されるアミノ酸配列を含むV
H相補性決定領域CDR2、または配列番号:181に示されるアミノ酸配列を含むV
LCDR2、もしくはその両方を含む、実施形態24のベクター。
【0347】
26.前記ペプチドが、配列番号:172に示されるアミノ酸配列を含むV
HCDR1もしくは5個以下の保存的アミノ酸置換を有するそのバリアント、または配列番号:179に示されるアミノ酸配列を含むV
LCDR1もしくは5個以下の保存的アミノ酸置換を有するそのバリアント、もしくはその両方を含む、実施形態22〜25のいずれかのベクター。
【0348】
27.前記ペプチドが、配列番号:172に示されるアミノ酸配列を含むV
H相補性決定領域CDR1、または配列番号:179に示されるアミノ酸配列を含むV
LCDR1、もしくはその両方を含む、実施形態26のベクター。
【0349】
28.前記ペプチドが配列番号:168に示されるアミノ酸配列を含むV
H鎖、またはそのCDR1、CDR2およびCDR3領域内に5個以下の保存的アミノ酸置換を有し、かつ配列番号:168のFR1、FR2、FR3、FR4領域と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む対応するFR1、FR2、FR3、FR4領域を含むそのバリアント;および配列番号:170に示されるアミノ酸配列を含むV
L鎖、またはそのCDR1、CDR2およびCDR3領域内に5個以下の保存的アミノ酸置換を有し、かつ配列番号:170のFR1、FR2、FR3、FR4領域と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む対応するFR1、FR2、FR3、FR4を含むそのバリアント、を含む抗体または抗体断片である、実施形態22〜27のいずれかのベクター。
【0350】
29.前記ペプチドが、配列番号:168を含むV
H鎖および配列番号:170を含むV
L鎖を含む抗体または抗体断片である、実施形態28のベクター。
【0351】
他の実施形態
本発明は、その詳細な説明と組合せて記載されるが、前述の記載内容は例示を目的とするものであり、添付する特許請求の範囲により規定される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。他の態様、利点および改変は、以下の請求項の範囲内にある。