(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0003】
建築物の建築においては、内壁及び外壁ならびに天井面の形成用パネルとして、様々な種類の外装材が使用されている。典型的には外装材は、当技術分野で公知のバルーンフレーム構造などにおけるフレーム部材に張られたボード(パネルとも呼ばれる)の形態である。外装材の例としては、紙、繊維状マット(例えばガラス繊維)などで上張りされた石膏ボードが挙げられる。これらのボード及びその他の種類のボードは通常、適切な寸法に切断され、次にねじや釘などでフレーム部材に固定されて、複数のボードから形成した壁区画を形成する。
【0004】
同一平面に配置された並列する2枚のボードは、垂直な壁及び水平な天井においてボード間に目地継ぎ目を形成する。この継ぎ目を仕上げるため、目地補強テープをテープの下の1層の目地材と共に継ぎ目に埋め込み、テープを覆って目地材の被覆を複数塗布する。一部のボードは、例えば角を形成する場合などに、ある角度で合わさる。補強ビードを使用して角継ぎ目を隠すことができ、また角を保護することができる。補強ビードは、留め具を使用してボードに直接取り付けることができ、または1層の目地材をトリムの下に塗布して、補強ビードをボードに接着させる。次に、トリムを覆って塗布する複数層の目地材で、設置した補強材を隠す。ボードをフレーム部材に張るのに使用した留め具も、それらを覆って塗布する複数層の目地材で隠す必要がある。様々な目地材塗布物を乾燥した後、得られた壁面を研いて塗装を施し、所望の均一かつ美的に満足する外観を形成させることができる。
【0005】
上記の仕上げレベルは様々であってもよい。例えば石膏ウォールボードに対しては、当技術分野において6レベルの石膏ボード仕上げが理解されており、Gypsum Association document GA−214及び米国材料試験協会(「ASTM」)C840に明記されているように、レベル0(一切の処理なし)からレベル5(最上級の仕上げ)にわたる。仕上げのレベルは通常、継ぎ目、トリム及び留め具への目地材の塗布数に対応する。レベル3、4及び5は典型的に、建築物内の占有空間で使用される。単一家族の家屋では、レベル4が最も一般的に使用されるレベルである。レベル5はより低頻度で用いられ、通常、壁面全体にわたる目地材のスキム被覆塗布を必要とする。
【0006】
上記の壁組立体を仕上げる従来のアプローチは、完全に満足のいくものとなっていない。壁組立体の仕上げに従来用いられている材料では、そのプロセスで多大な非効率性が生じ、また効果的に用いるためには高度な技術が必要とされる。例えば既存の目地材は、留め具に3層の別個の被覆を塗布する必要があり、また同一平面上のボード間の平らな継ぎ目と角の継ぎ目とに複数の被覆を塗布する必要がある。各被覆は別々に乾燥する必要があり、これにより、特に壁の仕上げを行う間は建築物内で他の建設職人は作業することが概してできないため、建築プロセスにおいて多大な非稼働時間がもたらされる。目地材の各層は乾燥に約1日を必要とする可能性があり、居住空間2400平方フィート(約10000平方フィートのボードに相当)の家屋の典型的な新築では、石膏ボードを設置し、平らな継ぎ目、留め具、及び角のトリムの仕上げを行うには、典型的には約1週間かかる。
【0007】
米国特許出願公開第2014−0083038−A1号には、目地材と、目地材が1層のみで塗布され得る壁組立体と、が記載されている。この系では、目地材の被覆を複数塗布する必要性が排除されており、壁の設置に必要な時間が減少している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、目地仕上げプロセスにおいて、目地補強テープ、トリム及び/またはその他の種類の材料を付けて設置して、目地継ぎ目を隠すことに有用な接着剤組成物を含む。この接着剤は、米国特許出願公開第2014−0083038−A1号において提供されている目地材及び壁組立体を含めた、非常に様々な目地材及び壁設置手順と適合するものである。
【0020】
接着剤組成物は、せん断応力条件に応じて半固体及び液体両方の材料となる降伏応力流体としてレオロジー制御をもたらすよう設計した独特の物理特性と、設置プロセス中の独特な湿性粘着特性と、設置中、実質的に実行可能な範囲を実施するための長いオープンタイムと、を与えるよう配合するが、それにもかかわらずこの接着剤は設置後の速い乾燥特性を提供する。
【0021】
上記の接着剤は、ブラシ、ローラー、スプレー、または自動テーピング道具もしくは手動ホッパー装置(一般に「バンジョー」もしくはホッパー被覆装置と呼ばれる)などの職人が使用するその他の機械器具もしくは道具などの任意の様々な方法を用いて、意図される面へ与えられた際に、効率的かつ効果的な設置を可能にする。
【0022】
本発明の一部の好ましい実施形態によれば、目地補強テープ全体にわたって均等に分布させる接着剤を的確に分配するよう設計された、機械テーピング道具の器具を使用してもよい。壁に接着剤を与える他の方法及び道具も使用することができる。
【0023】
上記の接着剤は、目地継ぎ目を覆いながら、隣接している石膏パネルに目地補強テープを機械的に接着または結合させるよう作用して、物理的な分離に耐える。その接着剤は、目地補強テープが目地継ぎ目全体にわたってより効率的に応力を均等分配することによって耐亀裂性の目地系を幾分もたらすことを補助するよう、さらに作用する。塗布した湿性接着剤は、水の蒸発により固体膜へと変換する。
【0024】
実施形態としては、道具によって分配され得るいくつかの接着剤系配合物が挙げられる。本発明の好ましい実施形態においては、安定な低降伏応力流体がヒステリシス特性を与える。その接着剤は、急速な復元を有するせん断減粘性流体から半固体状態までのレオロジー挙動を与える、望ましい歪み掃引を示す。その接着剤の組成物は、低固体、高収縮の水系ラテックス分散体である。
【0025】
上記の接着剤は、その他の特定の物理特性を与え、また30分以上の有意に長いオープンタイム及び作業可能性をもたらして、典型的な建築現場条件下での実質的な設置を可能にしながらも、テーピング操作後にその接着剤が所定の位置で硬化する際には、設置後約10分以下で乾燥するか、または硬化する。素早い乾燥/硬化特性をもたらす利益により、目地仕上げ手順の完成がより速くなる。
【0026】
上記の接着剤は、水及び/または他の水系材料で再度湿らせた場合に、軟化または再乳化の抵抗性を有する。
【0027】
上記の接着剤配合物は接着剤または結合糊として作用し、この組成物は、より高い湿度に曝される場所での利用にも好適である。
【0028】
上記の接着剤はフレーム部材に塗布して、ボードを張るのに使用する留め具の数を最小限にすることができる。その接着剤を使用して、目地補強テープ及び補強トリムの付着を容易にすることもできる。一部の実施形態においては、その接着剤は目地補強テープの裏側に塗布し、その後その目地補強テープを、2枚の隣接ボードの目地継ぎ目を覆って配置し、その目地継ぎ目に接着させる。他の実施形態においては、その接着剤は補強トリムの裏側に塗布し、その後その補強トリムを、2枚の隣接ボードの目地継ぎ目を覆って配置し、接着剤でその目地継ぎ目に接着させる。
【0029】
上記の接着剤は、任意の目地補強テープまたは補強トリムと共に使用することができる。目地補強テープまたは補強トリムには、非膨張性の合成紙化粧材を含む紙面と、裏当てと、を含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になるものが含まれる。例えばその化粧材は、耐亀裂性及び欠けに対してASTM C1047−10a(Standard Specification for Accessories for Gypsum Wallboard and Gypsum Veneer Base)において設けられた最小性能要件を超える優れた長期のコーナー角の目地補強を与えるよう設計された、頑丈な防錆性材料に積層することができ、その結果として、コーナー頂点は、通常の建築での移動及び/または転置、ならびに日常の消耗において、まっすぐなままである。一部の実施形態においては、裏当ては、亜鉛めっき鋼などの金属、及び/または例えば複合積層構造体、層状紙、熱可塑性物質、熱硬化性物質、炭素繊維、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン紡糸、天然または合成繊維、織物材料などを含めた、上述の望ましい特性を有するその他の裏当て材料を含む。
【0030】
別の態様においては、本発明は、継ぎ目によって接合した2枚の隣接ボードの壁組立体を加工する方法を提供する。この方法は、上記の接着剤を用いて目地テープをウォールボードに結合させること、及びその目地テープを覆って、1層以上の目地材組成物の被覆を塗布することを含むか、それらからなるか、またはそれらから本質的になる。
【0031】
上記の接着剤は、ポリマー結合剤、充てん剤及び増粘剤を含む。好適な結合剤は、アクリル酸ポリマー、アクリル酸コポリマー、アルキド、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ、及びそれらの組合せから選択される。
【0032】
特に好ましい結合剤としては、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVOH)、及びポリ酢酸ビニルとポリビニルアルコールの組合せが挙げられる。
【0033】
一部の実施形態においては、上記の結合剤は概して、固体膜を形成することと、目地材組成物を塗布する面に固体材料を結合することと、が可能な任意の好適な膜形成樹脂(またはそれらの組合せ)とすることができる。例えばその結合剤は、一部の実施形態においては、アクリル酸ポリマー及び/またはアクリル酸コポリマーとすることができる。その結合剤は、一部の実施形態においては、好適なラテックスエマルション媒体を含む水性エマルションの形態である。好適なラテックスエマルション媒体としては、例えばビニルアクリル樹脂及びスチレン化アクリル樹脂などのアクリル樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態においては、好適な結合剤材料としては、アクリルラテックス、ビニルアクリル樹脂、酢酸ビニル、ポリウレタン、及び/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0034】
上記の結合剤は、上記の接着剤組成物中に任意の好適な量で含ませることができる。例えばその結合剤は、湿性組成物の(固体に基づく)重量の約5重量%〜約100重量%、例えば約10重量%〜約50重量%、約10重量%〜約40重量%、約20重量%〜約50重量%、約20重量%〜約80重量%、約30重量%〜約70重量%、約40重量%〜約60重量%などの量で含ませることができる。
【0035】
好適な結合剤としては、Celanese, Inc.から入手可能な以下の結合剤のうちの1種以上、またはそのような結合剤のうちの2種以上の組合せが挙げられる:RESYN 107(ポリ酢酸ビニル/デキストリン)、DUR−O−SET E−130(ポリ酢酸ビニル/ポリビニルアルコール)、RESYN SB−321(ポリ酢酸ビニル/HEC)、TurCOR 3025(ポリ酢酸ビニル/ポリビニルアルコール)。他の好適な結合剤としては、Sekisui, Inc.から入手可能なSELVOL 09−325(ポリビニルアルコール)及びSELVOL 21−205(ポリビニルアルコール)が挙げられる。
【0036】
上記の接着剤は、1種以上の充てん剤を含む。好適な充てん剤としては粘土充てん剤が挙げられる。好適な粘土充てん剤としては、ゲル化粘土、剥離粘土、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。好適なゲル化粘土としてはアタパルジャイト粘土が挙げられる。好適な剥離粘土としてはカオリン粘土が挙げられる。一部の実施形態においては、ゲル化粘土のみを使用する。他の実施形態においては、剥離粘土のみを使用する。さらなる実施形態においては、1種以上のゲル化粘土と1種以上のアタパルジャイト粘土の組合せを使用する。
【0037】
上記の接着剤配合物中の粘土の合計量は様々である。一部の実施形態においては、約40重量%以下の粘土を含ませることができる。一部の実施形態においては、粘土は、例えば湿性組成物の重量に基づいて添加される約35重量%以下、約30重量%以下、約25重量%以下、約20重量%以下、約15重量%以下、約10重量%以下、約5重量%以下、または約1重量%以下の量で存在することができる。上記の端点の各々は、数値的に適切である場合、例えば1重量%、5重量%、10重量%、15重量%、20重量%、25重量%、30重量%、または35重量%からの範囲などの、下限を有することができる。
【0038】
一部の実施形態においては、上記の粘土はカオリン粘土である。他の実施形態においては、粘土はアタパルジャイト粘土である。さらなる実施形態においては、粘土はカオリン粘土とアタパルジャイト粘土の組合せである。粘土の合計量は、1〜40重量%、1〜30重量%、または1〜20重量%の範囲としてもよい。カオリン粘土の合計量は、5〜30重量%、5〜20重量%、または5〜15重量%の範囲としてもよい。アタパルジャイト粘土の合計量は、1〜10重量%、1〜5重量%、1〜2.5重量%、または0.5〜1.5重量%の範囲としてもよい。
【0039】
上記の接着剤配合物は、レオロジー改質剤をさらに含む。好適なレオロジー改質剤としては、疎水変性エトキシ化ウレタン(HEUR)、疎水変性アルカリ膨潤性エマルション(HASE)、及びスチレン−無水マレイン酸ターポリマー(SMAT)、ならびに/またはそれらの組合せを、それらに限定せずに含めた、セルロース系増粘剤及び会合性増粘剤が挙げられるが、これらに限定されない。セルロース系レオロジー改質剤の例としては、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、及び/もしくは、アルキルヒドロキシプロピルセルロースエーテル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの約1000から500,000ダルトンまでの間の分子量を有するその他のセルロースエーテルなどのセルロースエーテル、ならびにキサンタンガム、アルギン酸ナトリウム及び他のアルギン酸塩、カラギナン、アラビアガム(アラビン酸の混合塩)、カラヤガム(アセチル化多糖類)、トラガカントガム(酸性多糖類の複合混合物)、ガティガム(複合多糖のカルシウム及びマグネシウム塩)、グアーガム(直鎖ガラクトマンナン)及びその誘導体、ローカストビーンガム(分岐鎖ガラクトマンナン)、タマリンドガム、サイリウムシードガム、クインスシードガム、ラーチガム、ペクチン及びその誘導体、デキストラン、ならびにヒドロキシプロピルセルロース、またはそれらの任意の組合せが挙げられるがこれらに限定されない。
【0040】
上記のレオロジー改質剤は任意の好適な量で含ませて、例えば所望の粘度を得ることができる。一部の実施形態においては、上記のレオロジー改質剤は、湿性組成物の重量の約0.01%〜約15%、例えば約0.01%〜約10%、約0.01%〜約5%、約0.1%〜約5%、約0.1%〜約3%、約0.1%〜約2%、または約0.1%〜約1%の量で含ませる。上記の目地材は典型的に、約0.01重量%〜約10重量%、約0.1重量%〜約5.0重量%、及び/または約0.10重量%〜約3.0重量%のセルロース系増粘剤を含む。ヒドロキシエチルセルロースレオロジー改質剤の例としては、NATROSOL(登録商標)(Ashland, Inc.)が挙げられる。
【0041】
上記の接着剤組成物は、会合性増粘剤をさらに含んでもよい。好適なそのような会合性増粘剤としては、アクリル酸エチルとメタクリル酸の酸性アクリレートコポリマー(架橋)、ならびにアクリル酸エチル、メタクリル酸及び非イオン性ウレタン界面活性剤モノマーのアクリルターポリマー(架橋)が挙げられる。上記の接着剤組成物は、約0.01重量%〜約10重量%、約0.01重量%〜約5重量%、約0.1重量%〜約5.0重量%、及び/または約0.1重量%〜約3重量%の会合性増粘剤を含むことができる。有用な会合性増粘剤としては、商品名CARBOPOL(登録商標)(Lubrizol, Inc.)で販売されている疎水変性架橋ポリアクリレート粉末が挙げられる。
【0042】
一部の実施形態においては、上記の接着剤組成物は、1種以上のヒドロキシエチルセルロース系レオロジー改質剤と、1種以上のポリアクリレート系会合性増粘剤と、を含む。一部の実施形態においては、その接着剤組成物は、0.01〜20重量%の量の1種以上のヒドロキシエチルセルロース系レオロジー改質剤と、0.01〜20重量%の量の1種以上のポリアクリレート系会合性増粘剤と、を含む。
【0043】
上記の接着剤組成物は、1種以上の界面活性剤も含む。例えばいくつかの実施形態においては、その界面活性剤は、約3〜約20、例えば約4〜約15、または約5〜約10の親水性−親油性バランス(HLB)を有する界面活性剤とすることができる。その界面活性剤は、例えば湿性組成物の約0.001重量%〜約15重量%、例えば約0.001重量%〜約10重量%、約0.001重量%〜約5重量%、または約0.01重量%〜約0.5重量%などの、任意の好適な量で存在することができる。
【0044】
上記の接着剤組成物は、1種以上の分散剤をさらに含んでもよい。好適な分散剤としては、商品名AMP(登録商標)(Angus, Inc.)で販売されている多機能アミンなどのアミン系分散剤が挙げられる。
【0045】
上記の接着剤組成物は、1種以上の湿潤剤をさらに含んでもよい。任意の好適な湿潤剤を含ませることができ、例えばソルビトール誘導体、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、及び/もしくはトリプロピレングリコールなどのグリコール類、グリセロール、またはそれらの任意の組合せなどをそれらに限定せずに含めた多価アルコールなどを含ませることができる。含ませる場合、湿潤剤は、湿性組成物の約0.001重量%〜約15重量%、例えば約0.001重量%〜約10重量%、約0.01重量%〜約5重量%、または約0.001重量%〜約3重量%の量で含ませることができる。
【0046】
上記の接着剤組成物は、約7.0〜約12の範囲のpHを有する。一部の実施形態においては、その接着剤組成物は、約8.0〜約12の範囲のpHを有する。一部の実施形態においては、その接着剤組成物は、約9.0〜約12の範囲のpHを有する。
【0047】
必要に応じ、上記の接着剤組成物中で様々な塩基性材料を使用して、pHを調整してもよい。そのような塩基性化合物としては、アンモニア、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)、トリエチルアミン(TEA)、及び2‐アミノ‐2‐メチル‐1プロパノール(AMP)が挙げられるが、これらに限定されない。様々な実施形態においては、上記の接着剤組成物は、約0.001重量%〜約10重量%、約0.01重量%〜約0.5重量%、及び/または約0.01重量%〜約0.50重量%のアルカリ性/塩基性材料を含む。
【0048】
一部の実施形態においては、上記の接着剤組成物は、任意の好適な量の、例えば湿性組成物の約0重量%〜約5重量%、例えば約0.05重量%〜約2重量%、約0.1重量%〜約1.5重量%、約0.1重量%〜約1重量%、または約0.1重量%〜約4重量%などの量の殺生物剤をさらに含む。もし含む場合は、接着剤組成物の一部の実施形態においては、殺生物剤は殺細菌剤及び/または殺真菌剤を含む。有用な殺細菌剤の実例は、MERGAL 174(登録商標)(TROY Chemical Corporation)の商品名で販売されているものである。有用な防カビ剤の実例は、FUNGITROL(登録商標)(International Specialty Products, New Jersey)の商品名で販売されているもの、またはその任意の組合せである。
【0049】
上記の接着剤組成物は、以下のもの:着色剤、起泡剤、消泡剤、緩衝材、沈降防止剤、湿潤剤、可塑剤及び分散剤、のうちの1つ以上をさらに含んでもよい。
【0050】
上記の接着剤組成物は、湿性時に約100ブラベンダーユニット(BU)〜約700BU、例えば約100BU〜約600BU、約100BU〜約500BU、約100BU〜約400BU、約100BU〜約300BU、約100BU〜約200BU、約130BU〜約700BU、約130BU〜約600BU、約130BU〜約500BU、約130BU〜約400BU、約130BU〜約300BU、約130BU〜約200BU、約150BU〜約700BU、約150BU〜約600BU、約150BU〜約500BU、約150BU〜約400BU、約150BU〜約300BU、または約150BU〜約200BUの粘度を有するよう配合する。粘度は、ASTM C474−05のセクション5に準拠し、タイプAピン、サイズ1/2パイントの試料カップ、250cm−gmカートリッジブラベンダートルクヘッドを備えるCW Brabender粘度計を使用して、RPM75で測定する。
【0051】
上記の接着剤組成物は、湿性時に約2ポンド/ガロン〜約20ポンド/ガロン、例えば約2ポンド/ガロン〜約17ポンド/ガロン、約2ポンド/ガロン〜約15ポンド/ガロン、約2ポンド/ガロン〜約10ポンド/ガロン、約2ポンド/ガロン〜約7.5ポンド/ガロン、約5ポンド/ガロン〜約20ポンド/ガロン、約5ポンド/ガロン〜約15ポンド/ガロン、約5ポンド/ガロン〜約10ポンド/ガロン、または約7.5ポンド/ガロン〜約10ポンド/ガロンの密度を有するよう配合する。
【0052】
上記の接着剤組成物は、自動テーピング道具中を流動することができること、及び乾燥膜厚への寄与が最小限のみであることなど、多くの利点を提供する。再度湿らせた場合、または周期的に湿潤条件へ曝した際の膨潤または持ち上がりはない。再配置用の充分なオープンタイムがある。この接着剤組成物は道具で乾燥せず、水で洗浄しやすい。この接着剤組成物は目地材と適合性であり、通常の下塗り被覆/仕上げ被覆の乾燥時間及び艶/光沢に悪影響を及ぼさない。
【0053】
一部の実施形態においては、上記の接着剤組成物は、少なくとも、以下に与える以下の成分を用いて配合する。
【0055】
表1の接着剤組成物は、約7.5ポンド/ガロン〜約10ポンド/ガロンの範囲の密度と、100〜200ブラベンダーユニットの範囲の粘度と、を得るよう、水と共に配合する。
【0056】
さらなる成分を添加する。さらなる成分としては、着色剤、分散剤、湿潤剤及び殺生物剤が挙げられるが、これらに限定されない。上記の接着剤組成物のpHは7〜10の範囲となるよう調節する。
【0057】
以下の7種の接着剤配合物を、以下の表2に記載のように調製した。
【0059】
7種の配合物(C1〜C7)の各々を、紙の接着試験で比較した。この試験では、各接着剤試料を1枚のウォールボードに塗布し、それを覆って目地紙テープを貼り、その後、そのテープを覆って目地材を塗布した。試料を放置して一晩乾燥させた。接着剤配合物の各々の接着強度は、接着させた目地紙テープをウォールボードから引きはがすことによって評価した。
【0060】
配合物C1、C4及びC7が最良の性能であり、配合物3は試験に不合格であったことを意外にも発見した。
【0061】
接着剤組成物のレオロジー特性評価は、例えばせん断速度勾配、せん断速度ジャンプ、歪み掃引及び周波数掃引などの様々な試験を行うことによって得ることができる。これらの試験を行って、本発明の目地仕上げ接着剤組成物のレオロジー特性を評価した。
【0062】
図2〜6から理解することができるように、表1に従って配合した本発明の接着剤組成物(
図2〜6においてICと示している)は、せん断速度の急激な変化に対して比較的速い反応時間を有し、それと同時に、高い貯蔵弾性率と低い損失弾性率の独特の組合せを有する。
【0063】
図2に示すように、せん断速度の勾配を制御した試験では、接着剤組成物ICは、比較目的で試験に用いた他の2種の高粘性接着剤よりもずっと急速に完全な粘度を復元することが示されている。
【0064】
図3Aに示すように、歪み掃引試験では、接着剤組成物ICが高い貯蔵弾性率と低い損失弾性率の両方の組合せを有することが示されている。
【0065】
図3B〜3Eに示すように、周波数掃引試験では、接着剤組成物ICが、高い弾性の流体と非常に低い弾性の流体の間の貯蔵弾性率を有し、低粘度グループの比較用組成物と同様の損失弾性率を与えることが示されている。
【実施例】
【0066】
実施例1 接着剤組成物のレオロジー特性評価
接着剤材料のレオロジー特性評価は、40mmの平滑なペルチェプレートと1mmの間隙とを有する平行プレート配置を用いて、TA InstrumentsのG2 Aresレオメーターにて行った。様々な試験を使用して材料を特性評価した。すなわち、せん断速度勾配試験、せん断速度ジャンプ試験、歪み掃引試験、及び周波数掃引試験を使用した。
【0067】
せん断速度勾配試験では、約0.2 1/sから約400 1/sへ勾配させ、次に約400 1/sから約0.2 1/sへ勾配させた。各勾配の時間は120秒であった。
【0068】
せん断速度ジャンプ試験では、一定のせん断速度100 1/sで60秒間保持し、次に0.1 1/sにジャンプさせて60秒間保持した。
【0069】
歪み掃引では、角速度1 1/sにて約450秒の時間にわたって歪みを0.5%から1000%に変化させた。
【0070】
周波数掃引では、歪み1%にて約500秒の時間にわたって周波数を0.1 1/sから600 1/sに変化させた。
【0071】
せん断速度勾配では、材料で作用するせん断速度、
【0072】
【数1】
【0073】
を数桁の大きさにわたって変化させる。せん断速度を変化させながら、得られるせん断応力σを測定する。本事例においては、材料は非ニュートン性であり、べき法則モデル、
【0074】
【数2】
【0075】
を用いて当てはめる。式中、Kは粘稠性指数であり、nは挙動指数である。これは、ニュートン粘度を
【0076】
【数3】
【0077】
と規定すると、ニュートン性モデル、
【0078】
【数4】
【0079】
と類似である。
【0080】
粘稠性指数は、粘稠性という語の典型的な用法で考えられ得るものであり、すなわち材料は、高い粘稠性(大きなK値)または低い粘稠性(小さなK値)を有することができる。挙動指数は、流体がどの程度せん断減粘性であるか、またはせん断増粘性であるかの尺度を与える。挙動指数が1未満であるならば流体はせん断減粘性であり、1よりも大きいならばせん断増粘性である。指数が1からさらに離れると、挙動の種類はより一般的となる。指数が1ならば、材料はニュートン性と見なされる。対数グラフで粘度に対してせん断速度をプロットすると、粘稠性指数は曲線の高さであり、挙動指数は曲線の傾きである。
【0081】
ある程度の構造を有することが知られる流体は多くの場合、せん断速度ジャンプ試験に付される。せん断速度ジャンプ試験は、せん断速度を比較的大きな量で変化させ、流体の反応に注目することによって行う。せん断速度勾配及びせん断速度ジャンプは、勾配ではせん断速度が徐々に変化するのに対し、ジャンプではせん断速度が数桁の大きさで瞬時に変化するという点で異なる。この試験は、任意のヒステリシスまたはチキソトロピー挙動を特定するのに有用である。ヒステリシスは、目下の粘度測定が流体のせん断速度履歴によって影響される場合に生じる。チキソトロピーは、一定のせん断速度にて粘度が時間変化する場合に生じる。
【0082】
粘弾性流体に関し、マックスウェルモデルでは、
図1に示すようにばねとダッシュポットを直列で用いて粘弾性流体を説明する。粘弾性流体は、貯蔵弾性率G’と表される応力に対して弾性反応を有し、損失弾性率G”と表される応力に対して粘性応答を有する。ばねとダッシュポットのモデルを用いると、ばねの強さまたは流体の粘度は、応力がかけられた際に系がどのように反応するかを決定することができる。例えばバネが弱く流体の粘度が高いならば、力がかけられた際にばねは容易に伸び、支配的な抵抗力は、高粘性流体中を動くダッシュポットから生じる。一方、流体が低粘度を有し、ばねが非常に頑強であるならば、力がかけられた際に支配的な抵抗力はばねから生じる。貯蔵弾性率及び損失弾性率、または弾性成分及び粘性成分は、振動レオメトリーを用いて測定する。
【0083】
歪み掃引では、軸の角速度を一定に保ちながら、流体での歪みの量を数桁の大きさにわたって変化させる。マックスウェルモデルを用いると、歪み掃引は、異なる長さで、しかし一定の速度でばねを振動させることに類似である。振動歪み掃引を行う目的は、線形粘弾性(LVE)領域を特定することである。この領域内では、弾性成分及び粘性成分は印加応力に反応する。特定の歪みに達したら、貯蔵弾性率、または弾性成分の大きさが減少し始める。再度上記の例に関連して、線形粘弾性領域外の歪みの量は、ばねを完全に伸ばし、その結果、もはやどんな弾性反応もないことと同様である。
【0084】
周波数掃引では、歪み量を一定に保ちながら、流体での角速度量、またはせん断速度量を変化させる。適切な歪み量は、線形粘弾性領域に対応する。周波数掃引から得ることができる情報にはいくつかあるが、本実施では、貯蔵弾性率及び損失弾性率の大きさのみに焦点を当てる。
【0085】
レオロジー比較試験は、表1に従って配合した本発明の接着剤組成物(IC)にて、CF1(酢酸ビニルホモポリマーエマルション)、CF2(ポリ酢酸ビニル接着剤)、CF3(あらかじめ混合したポリ酢酸ビニルと粘土の接着剤)、CF4(ラテックス種目地材)及びCF5(ポリウレタン接着剤)などの他のいくつかの接着剤及び糊と比較して行った。
【0086】
接着剤は、上記のせん断速度勾配試験、せん断速度ジャンプ試験、歪み掃引試験及び周波数掃引試験で分析して比較した。
【0087】
図2では、せん断速度勾配(左)及びせん断速度ジャンプ(右)中に測定した、ICと比較したCF1〜CF5の粘度値を報告している。
【0088】
図3Aでは、歪み掃引試験中に得られた貯蔵弾性率及び損失弾性率に関するデータを報告している。
図3B〜3Eでは、周波数掃引試験中に得られた貯蔵弾性率及び損失弾性率に関するデータを報告している。
【0089】
次に、CF1〜CF5と比較したICのレオロジー特性を計算した。第1の勾配にべき法則式をフィッティングすることによって挙動指数及び粘稠性指数を見積もった。ヒステリシス面積は、下り勾配と上り勾配の間の面積を取ることによって計算した。その他の全ての値は、
図3A〜3Eのグラフから近似した。これらの特性を以下の表3にて報告する。
【0090】
【表3】
【0091】
せん断速度100 1/sから0.1 1/sへの急激なジャンプに対するICの反応もCF1〜CF5と比較して検討した。このデータを
図4において報告しており、
図4では、0.1−1/sの範囲での粘度のみを示している。
【0092】
図5では、線形粘弾性領域に対応する歪み掃引試験中に収集した貯蔵弾性率及び損失弾性率の値を報告しており(表1)、
図6では、周波数掃引試験中に収集した10Hzでの貯蔵弾性率及び損失弾性率の値を報告している(表1)。
【0093】
せん断速度勾配試験では、ICは、CF4及びCF5に匹敵するせん断減粘性挙動を有することが示されており、これは、3種全てが大きなせん断減粘性挙動を有し、また100のオーダーの粘稠性指数を有するからである。
【0094】
しかしながらせん断速度ジャンプ試験では、せん断速度の急激な変化の15秒以内で不変の粘度を維持していることにより、ICと、CF4及びCH5との差が明らかとなっている。
図4では、CF4及びVF5が両方とも、せん断での急速な変化に対する反応を示しているが、その後60秒間以上の粘度の連続的な増加も有する。これは、ICが他の2種の高粘性接着剤よりもずっと急速に完全な粘度を復元していることを意味している。
【0095】
歪み掃引試験では、弾性(貯蔵弾性率)及び粘性散逸(損失弾性率)によって応力が解放されるのに応じて材料を特性評価する。CF1、CF2及びCF3(第1のグループ)は全て、CF4及びCF5(第2のグループ)と比較して、貯蔵弾性率及び損失弾性率の両方で低い値を有する。
【0096】
しかしながら、ICは第2のグループと同様の高い貯蔵弾性率を有するが、第1のグループの同様の低い損失弾性率を有する。
【0097】
この高い貯蔵弾性率と低い損失弾性率の組合せにより、IC配合物は、試験した他の接着剤と比較して独特かつ異なるものとなる。
【0098】
周波数掃引試験では、ICが、高い弾性の流体と非常に低い弾性の流体の間の貯蔵弾性率を有するが、低粘度グループと同様の損失弾性率を有することが示されている。
【0099】
これは、ICがせん断速度での急激な変化に対して比較的速い反応時間を有し、それと同時に、高い貯蔵弾性率と低い損失弾性率の独特の組合せを有するという結論を支持している。
[付記]
[付記1]
ポリマー結合剤、充てん剤及びレオロジー改質剤を含む接着剤組成物であって、前記レオロジー改質剤が、湿性の前記組成物の重量の約0.01%〜約15%の量であり;
前記結合剤が、アクリル酸ポリマー、アクリル酸コポリマー、アルキド、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ、及びそれらの組合せから選択され、前記結合剤の量は、前記湿性の組成物の固体に基づく重量の10%〜40%であり;
前記充てん剤は、ゲル化粘土、剥離粘土、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択され、前記充てん剤の量は1重量%〜40重量%であり;ならびに
前記組成物の粘度は、100〜200ブラベンダーユニットの範囲であり、密度は約7.5ポンド/ガロン〜約10ポンド/ガロンの範囲である、接着剤組成物。
[付記2]
前記結合剤が、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVOH)、及びポリ酢酸ビニルとポリビニルアルコールの組合せからなる群より選択される、付記1記載の接着剤組成物。
[付記3]
前記充てん剤が、カオリン粘土、アタパルジャイト粘土、及びそれらの任意の組合せからなる群より選択される、付記1記載の接着剤組成物。
[付記4]
前記充てん剤が、5重量%〜15重量%の量のカオリン粘土と、0.5重量%〜1.5重量%の量のアタパルジャイト粘土の組合せである、付記1記載の接着剤組成物。
[付記5]
前記レオロジー改質剤が、疎水変性エトキシ化ウレタン(HEUR)、疎水変性アルカリ膨潤性エマルション(HASE)、スチレン−無水マレイン酸ターポリマー(SMAT)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、エチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC)、メチルヒドロキシエチルセルロース(MHEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、アルキルヒドロキシプロピルセルロースエーテル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、キサンタンガム、アルギン酸塩、カラギナン、アラビアガム、カラヤガム、トラガカントガム、ガティガム、グアーガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム、サイリウムシードガム、クインスシードガム、ラーチガム、ペクチン及びその誘導体、デキストラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ならびにそれらの任意の組合せからなる群より選択される、付記1記載の接着剤組成物。
[付記6]
前記組成物が、1種以上のヒドロキシエチルセルロース系レオロジー改質剤と、1種以上のポリアクリレート系会合性増粘剤と、を含む、付記1記載の接着剤組成物。
[付記7]
前記組成物が、約3〜約20の親水性−親油性バランス(HLB)を有する1種以上の界面活性剤をさらに含む、付記1記載の接着剤組成物。
[付記8]
前記組成物のpHが7.0〜12.0の範囲になるよう調整されている、付記1記載の接着剤組成物。
[付記9]
前記結合剤が、10重量%〜40重量%の量のポリ酢酸ビニル/ポリビニルアルコールの組合せであり、前記充てん剤が、0.5重量%〜1.5重量%の量のアタパルジャイト粘土と5重量%〜15重量%の量のカオリン粘土の組合せであり、前記レオロジー改質剤が0.01重量%〜5重量%の量であり、前記組成物が、0.01重量%〜5重量%の量のポリアクリレート系会合性増粘剤と、0.01%〜1%の量の界面活性剤と、0.01%〜1%の量の消泡剤と、をさらに含む、付記1記載の接着剤組成物。
[付記10]
1つ以上のフレーム部材を設置すること;
2枚の石膏ボードが1つ以上の側面で隣接し、隣接する前記2枚の石膏ボード間で目地継ぎ目が作成されるようにして、前記2枚の石膏ボードを張ること;
前記目地継ぎ目を、付記1記載の接着剤組成物で被覆すること;及び
目地補強テープ及び補強トリムのうちの1つ以上を、前記接着剤で被覆した前記目地継ぎ目を覆って付着させること、
を含む壁を組み立てる方法。