特許第6705832号(P6705832)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705832
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】原子炉
(51)【国際特許分類】
   G21C 1/32 20060101AFI20200525BHJP
   G21C 1/02 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   G21C1/32
   G21C1/02 200
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-549286(P2017-549286)
(86)(22)【出願日】2016年3月17日
(65)【公表番号】特表2018-508788(P2018-508788A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】IB2016051503
(87)【国際公開番号】WO2016147139
(87)【国際公開日】20160922
【審査請求日】2019年2月15日
(31)【優先権主張番号】GE2015A000036
(32)【優先日】2015年3月19日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】516312660
【氏名又は名称】ハイドロミン ニュクレアル エネルジー ソシエテ ア レスポンサビリテ リミティー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】ルチャーノ チノッティ
【審査官】 小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0290579(US,A1)
【文献】 特開昭53−006797(JP,A)
【文献】 特開昭52−066188(JP,A)
【文献】 特表2009−509154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 1/00−1/32
15/00−15/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉心(4)の上に高温ヘッダー(6)と、該高温ヘッダー(6)を取り囲む低温ヘッダー(7)とを有し、分離構造(5)によって分離され、前記炉心を冷却するために一次流体(8)が内部を循環する、原子炉(1)あって、
前記原子炉は、二次流体を介して前記一次流体から熱を除去するように、少なくとも1つの熱交換器(11)備え、
前記分離構造(5)は、前記炉心(4)の周りに設置された下側部分(14)と、前記炉心(4)の上方に位置する上側部分(16)と、を備え、
前記上側部分(16)は、前記下側部分(14)に対して減少した半径方向の範囲を有し、接続部分(15)により前記下側部分(14)に結合されており、
前記接続部分(15)は、前記炉心(4)を出る高温一次流体を前記熱交換器に供給するために貫通部(28)を備え、前記分離構造(5)の前記上側部分(16)と前記原子炉の容器(2)との間に配置される1つ以上の熱交換器(11)に接続するように垂直ダクト(20)が該貫通部(28)から延びている、原子炉において、
前記分離構造(5)の前記接続部分(15)及び前記上側部分(16)は、前記炉心(4)の径方向の拘束を構成する、
ことを特徴とする原子炉。
【請求項2】
前記分離構造(5)の前記下側部分(14)と前記上側部分(16)との間の前記接続部分(15)は、板である、請求項1に記載の原子炉。
【請求項3】
前記熱交換器(11)に供給するための垂直ダクト(20)は、前記分離構造(5)の前記接続部分(15)及び前記下側部分(14)の局所的な半径方向の拡張部により形成されるローブ(22)において形成された貫通部(28)において係合する、請求項1に記載の原子炉。
【請求項4】
前記分離構造(5)の前記接続部分(15)及び前記下側部分(14)の前記ローブの突出形状部は、前記原子炉の補助構成部分(25)の設置のために、前記容器(2)に対して、前記下側部分(14)及び前記接続部分(15)の半径方向への拡張がより小さい部分(23)の間において、自由な容積(24)を残す、請求項3に記載の原子炉。
【請求項5】
前記分離構造(5)の前記上側部分(16)内に含まれる前記一次流体は、実質的に停滞している、請求項1に記載の原子炉。
【請求項6】
前記一次流体(8)は液体金属あり、前記二次流体は前記熱交換器(11)において水蒸気になる水であって、前記熱交換器(11)は蒸気発生器である、請求項1から5のいずれか1項に記載の原子炉。
【請求項7】
前記下側部分(14)は、前記炉心(4)の液圧的な封じ込めの構成部分として作用するとともに、半径方向に離間している、即ち、前記炉心(4)の活性部分から所定の半径方向距離に設置される、請求項1から6のいずれか1項に記載の原子炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉に関し、特に1つ以上の一次熱交換器を備える、小型の液体金属冷却原子炉(compact liquid-metal-cooled nuclear reactor)に関する。
【0002】
具体的には、本発明は、炉心内において生成された熱が一次流体(液体金属)から二次流体(水)に伝達される一次熱交換器が主反応炉容器内に設置される、原子炉に関するものである。主反応炉容器はまた、収容される原子炉の構成部分とともに「一次系」(primary system)と呼ばれるいわゆる容積(volume)において炉心を収容する。炉心を含む液圧分離構造は、高温ヘッダー(hot header,高温配管集合(管寄せ))と呼ばれる容積と、低温ヘッダー(cold header)と呼ばれる外部の容積とを内部的に区切る。
【背景技術】
【0003】
特許文献1及び特許文献2は、この型式の原子炉を示しており、実質的に円筒形の分離構造が、中央の高温ヘッダーと高温ヘッダーを取り囲む環状の低温ヘッダーとを区切っており、低温ヘッダーは、ポンプと1つ又は2つの熱交換器とをそれぞれ備える複数の一体型熱交換ユニットを収容しており、一体型ユニットはそれぞれ、一次流体用に特別に設けられたダクトを介して高温ヘッダーに接続する入口を有する。
【0004】
しかしながら、これらの解決手段は、異なる構成の熱交換器に一般的に類似する他のものと同様に、特に一次流体の導管系の複雑さ及び空間の不十分な利用のために、とりわけ寸法の点において欠点がないわけではない。ポンプ−交換器ユニットは、高温ヘッダーと低温ヘッダーとの間の分離構造の外側に収容される必要があるが、しかし該分離構造は、炉心と、通常は分離構造の中性子遮蔽構成部分とを含むので、比較的大きな直径を有する。従って、ポンプ−交換器ユニットは、原子炉の中心に対して周辺を取り巻く位置に設置されており、その結果として、一次系の全ての構成部分を含む原子炉容器の直径を増大させる。
【0005】
特許文献3、特許文献4及び特許文献5は、上部では、より小さな直径の分離構造を、下部では、より大きな直径の分離構造を有効に備えている。これらの解決手段において、炉心から出る冷媒流体は、分離構造の内部においてその上端部まで上昇しており、前記上端部において、その方向は、熱交換器ユニットに下向きに供給するように逆転する。同様に、これらの解決手段は、例えば、流体方向反転領域の構造的複雑さ、及び、冷媒流体が液体金属である場合に、炉心内において偶然の正の反応度投入(accidental positive reactivity insertions)を引き起こす可能性があるブランケットガス(blanket gas)を伴う危険性等、欠点がないわけではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】イタリア国特許出願公開第MI2005001752号公報
【特許文献2】イタリア国特許出願公開第MI2007001685号公報
【特許文献3】米国特許出願公開第2013/266111号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第308691号明細書
【特許文献5】特開平06−174871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、既知の解決手段に対して指摘された欠点を克服するとともに、構造上及び安全上の両方の利点を有する原子炉、特に液体金属冷却原子炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は従って、添付の請求項1において定義され、また本発明の補助的な特徴及びプラント構成に関して従属請求項において定義される原子炉、特に液体金属冷却原子炉に関する。
【0009】
本発明は、以下の非限定的な実施の形態の例において、添付図面における図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、複数のポンプ及び熱交換器を備えた本発明による原子炉の概略縦断面図である。
図2図2は、図1において、面II−IIにおける原子炉の概略部分断面図である。
図3図3は、図1の原子炉の部分平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1−2−3を参照すると、原子炉1は、屋根3で覆われた主反応炉容器2を備えており、主反応炉容器2は、炉心4と、実質的にアンフォラ(amphora,両取っ手付きのつぼ)様の形状を有し且つ高温ヘッダー6及び低温ヘッダー7を区切る、液圧分離構造5とを内部に収容しており、低温ヘッダー7内を炉心4の一次冷却流体8が循環する。低温ヘッダー7は、原子炉容器2と分離構造5との間に含まれる領域9により画定され、従って、高温ヘッダー6の周囲に配置される。
【0012】
原子炉容器2は、ポンプ10と熱交換器11とを収容し、該熱交換器11を通って一次流体8が流れるとともに、該熱交換器11は、炉心4において生成された出力を外部の二次回路(既知であり、図示せず)内において循環する二次流体に伝達する。好ましくは、一次流体8は液体金属であり、特に例えば、鉛又は鉛−ビスマス共晶合金等の重い液体金属である。一方、第2の流体は水(一次流体との熱交換の間において気化する)であるから、従って、熱交換器11は蒸気発生器である。ブランケットガスは、原子炉容器2内の一次流体8の上に存在する。
【0013】
様々な補助装置は、計装及び制御棒のための支持構造を含めて、分離構造5の内部に収容されるが、これらの補助装置は既知であり且つ本発明に関係しないので、簡略化のため説明しない。
【0014】
分離構造5は、既知の設計であって且つ燃料構成部分13を支持するグリッド(grid,格子)12と、適切な形状とされ且つ炉心4の液圧的な封じ込めのための下側部分14であって、且つ該分離構造の中性子損傷を許容可能な限界まで低減するように炉心の活性部分から所定の半径方向距離において始まる下側部分14と、下側部分14と上側部分16との間において、例えば円錐形又は板状等の別の可能な形状を有する、接続部分15とを備える。
【0015】
この解決手段において、中性子遮蔽機能は、部分14と燃料構成部分13の外側リングとの間に介在する液体金属により達成される。一方、既知の解決手段において、炉心と分離構造との間において通常配置される遮蔽構成部分のリングは、数が削減されるか又は完全に除去される。
【0016】
部分16は、外側において実質的に円筒形であり、可変の厚さを有している。該部分16は、(数が削減された)残りの遮蔽構成部分を、又は(遮蔽構成部分が完全に除去される場合には)不活性な上部17内の燃料構成部分の外側リングを、収容し且つ半径方向に拘束(radially constrain)するように形成された内部輪郭(internal profile)を有する。これにより、部分16は、部分14に対して、より小さい半径方向の拡張部を有することになる。
【0017】
熱交換器11は、低温ヘッダー7内に完全に配置されており、分離構造5の円筒状の上側部分16の周りで円周方向に離間する。各ポンプ−交換器ユニット21は、接続部分15に係合しており、適切な封止装置(sealing devices)18(既知であり、簡略化のために図示せず)は、接続部分15と熱交換器11に一体の円筒状部分19との間に設けられており、更に封止装置18は、ポンプ−交換器ユニット21に、炉心から出た高温の一次流体8を供給するダクト20の範囲を定める。結果として、部分16の内部の容積は実質的に停滞(substantially stagnant)しており、内部に収容される炉心計装制御システムに対して流体が引き起す振動の危険性はない。
【0018】
円筒状部分19の係合のために穿孔された部分を除いて、部分14及び部分15は、軸対称であり得るか、又は図1ないし2に示すように、ダクト20の近くで半径方向への拡張がより大きい部分22と、半径方向への拡張がより小さい部分23とを有することが有利である。本発明の一部を形成しない既知の解決手段であるため図示しないが、残留出力排出システムの熱交換器および液体金属のための浄化および予熱装置(purging and pre-heating systems)の構成部分などの、一般的には25a、25bおよび25cとして示される他の構成部分の設置のために、該部分23は、該部分23と原子炉容器2との間の低温ヘッダー7に対して、より広い容積24を残すことができる。接続部分15において、該半径方向への拡張がより大きい部分22は、互いに所定の距離で円周方向に離間するローブ(lobe,丸い突起部)として平面図(図2)に示される。
【0019】
分離構造5は、既知の解決手段によって、原子炉容器の下部又は原子炉の屋根の上部において適切に支持することができる。
【0020】
解決手段は図1及び図3に示されており、分離構造5は原子炉の屋根3からカバー26により支持される。ポンプ−交換器ユニットもまた、カバー26に戴置される。別のカバー27は高温ヘッダー6を覆っており、燃料交換作業を実施するために取り外し可能である。
【0021】
本発明の利点は、前述の説明から明らかとなる。
原子炉の一次回路は、小型のシステムである。
分離構造5の遮蔽構成部分のリングは、数が減少するか又は完全に除去されるので、炉心の半径方向の拘束に関して経済性及び機械的強度の点において利点が存在する。
遮蔽構成部分のリングの除去は、交換するべき構成部分の数を減少させ、実施されるべき保守作業を簡単にし、原子炉の停止時間を短縮する。
熱交換器の半径方向の位置決めは、分離構造5の最大寸法により制限されるのではなく、より小さい直径を有する、分離構造5の部分16によってのみ制限される。
熱交換器への供給は、分離構造から半径方向に離れるダクトを必要とせず、既知の解決手段において考えられているように、部分16の上方から行われるのではなく、ポンプ−交換器ユニット21に供給するダクト20の円筒状部分19と接続部分15との間において封止装置18を介して垂直方向において行なわれる。
分離構造5の下側部分14及び接続部分15のローブ形状(lobed shape,丸い突出形状)は、より多くの補助構成部分25が原子炉に設置できるように、原子炉容器2に対して、半径方向への拡張がより小さい下側部分14の部分23と接続部分15との間の幅広い自由な容積24を残す。
分離構造5の下側部分14及び接続部分15のローブ形状と、カバー26の対応するローブ形状とは、原子炉の補助構成部分25を除去することなく、分離構造5を交換することを可能にする。
【0022】
最後に、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、多数の改変及び変形が、本明細書に記載され及び図示された原子炉に関して実施され得ることが理解される。
図1
図2
図3