特許第6705840号(P6705840)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6705840ポリアミド−イミド前駆体、ポリアミド−イミドフィルム、およびこれを含む表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705840
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】ポリアミド−イミド前駆体、ポリアミド−イミドフィルム、およびこれを含む表示素子
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/14 20060101AFI20200525BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20200525BHJP
   G02F 1/1333 20060101ALI20200525BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   C08G73/14
   C08J5/18CFG
   G02F1/1333 505
   G02F1/1337 525
   G02F1/1333 500
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-567335(P2017-567335)
(86)(22)【出願日】2016年6月27日
(65)【公表番号】特表2018-522105(P2018-522105A)
(43)【公表日】2018年8月9日
(86)【国際出願番号】KR2016006858
(87)【国際公開番号】WO2016209060
(87)【国際公開日】20161229
【審査請求日】2017年12月26日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0091076
(32)【優先日】2015年6月26日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0079424
(32)【優先日】2016年6月24日
(33)【優先権主張国】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】チュ,チョル ハ
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ハク キ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒョ ジュン
【審査官】 工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−241196(JP,A)
【文献】 特開2008−074991(JP,A)
【文献】 特表2014−528490(JP,A)
【文献】 特開平09−225275(JP,A)
【文献】 特表2018−501377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子構造内に、
ジアンヒドリドとジアミンとの重合反応に由来するイミド結合を有する第1部位と;
ジアミンと芳香族ジカルボニル化合物との重合反応に由来するアミド結合を有する第2部位と;を有するポリアミド−イミド前駆体であって
前記ジアミンは、ジアミンの総モルに対して、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA)および9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン(F−FDA)のうちの少なくとも一つの成分を、3〜50mol%含み、
前記ジアンヒドリドは、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)とビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)とが4:6〜2:8のモル比で混合されたものであり、
前記ジアンヒドリドと前記芳香族ジカルボニル化合物とのモル比が30:70乃至45:55であることを特徴とするポリアミド−イミド前駆体。
【請求項2】
前記ジアミンは、ジアミンの総モルに対して、ビスアミノフェノキシベンゼン(133APB)、ビスアミノフェノキシベンゼン(134APB)、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(33−6F)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(44−6F)、ビスアミノフェニルスルホン(4DDS)、ビスアミノフェニルスルホン(3DDS)、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)、シクロヘキサンジアミン(13CHD)、シクロヘキサンジアミン(14CHD)、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(6HMDA)、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(DBOH)およびビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(DBSDA)よりなる群から選ばれた1種以上を50〜97mol%含むものであることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド−イミド前駆体。
【請求項3】
前記ジアミンは、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)であることを特徴とする、請求項に記載のポリアミド−イミド前駆体。
【請求項4】
前記芳香族ジカルボニル化合物は、テレフタロイルクロリド(TPC)、イソフタロイルクロリド(IPC)および4,4'-ビフェニルジカルボニルクロリド(BZC)よりなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のポリアミド−イミド前駆体。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のポリアミド−イミド前駆体がイミド化された共重合ポリアミド−イミド。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のポリアミド−イミド前駆体のイミド化反応を含む工程によって形成された共重合ポリアミド−イミドフィルム。
【請求項7】
前記ポリアミド−イミドフィルムは、50〜300℃での熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion、CTE)が30ppm/℃以下であることを特徴とする、請求項に記載の共重合ポリアミド−イミドフィルム。
【請求項8】
前記ポリアミド−イミドフィルムは、ガラス転移温度(Tg)が350乃至380℃であることを特徴とする、請求項に記載の共重合ポリアミド−イミドフィルム。
【請求項9】
前記ポリアミド−イミドフィルムは、フィルム厚さ10〜100μmを基準に、550nmで測定した透過度が87%以上であり、ASTM E313に準拠した黄色度が7以下であることを特徴とする、請求項に記載の共重合ポリアミド−イミドフィルム。
【請求項10】
請求項の共重合ポリアミド−イミドフィルムを含む、映像表示素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド−イミド前駆体、これをイミド化したポリアミド−イミドフィルム、および前記ポリアミド−イミドフィルムを含む表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリイミド(PI)フィルムは、ポリイミド樹脂をフィルム化したものであり、ポリイミド樹脂とは、芳香族ジアンヒドリドと芳香族ジアミンまたは芳香族ジイソシアネートとを溶液重合してポリアミック酸誘導体を製造した後、高温で閉環脱水させてイミド化することにより製造される高耐熱樹脂をいう。このようなポリイミド樹脂は、不溶、不融の超高耐熱性樹脂であって、耐熱酸化性、耐熱特性、耐放射線性、低温特性、耐薬品性などに優れた特性を持っており、自動車材料、航空素材、宇宙船素材などの耐熱先端素材、および絶縁コーティング剤、絶縁膜、半導体、TFT−LCDの電極保護膜、フレキシブルプリント配線回路用基板、光通信用材料、太陽電池用保護膜などの電子材料といった広範囲な分野に用いられており、最近では、光ファイバーや液晶配向膜などの表示材料およびフィルム内に導電性充填剤を含有し或いは表面にコーティングして透明電極フィルムなどに用いられている。
【0003】
しかし、一般に、ポリイミド樹脂は、高い芳香族環密度により褐色および黄色に着色されており、可視光線領域における透過度が低く、黄色系の色を示すため、光透過率を低くし、大きな複屈折率を持たせるので、光学部材として使用するには困難な点があった。また、光学特性を改善する場合、黄色を示す既存のポリイミドフィルムに比べて低いTg(ガラス転移温度)を有するので、300℃以上の高温が必要とされる分野では使用することが困難な点がある。
【0004】
かかる欠点を解決するために、単量体および溶剤を高純度で精製して重合を行う方法が試みられたが、透過率の改善は大きくなく、熱安定性を与えるために剛直な構造を持つ単量体を使用する場合、透過率が著しく悪くなったり黄色度が増大したりする現象が起こった。
【0005】
ポリイミドに関連する従来技術として、米国特許第5053480号には、芳香族ジアンヒドリドの代わりに脂肪族環系ジアンヒドリド成分を使用する方法が開示されているが、この方法は、精製方法に比べては液状化またはフィルム化したときに透明度および色相の改善があったものの、透過度の改善に限界があって高い透過度は満足していないうえ、熱的および機械的特性の劣化をもたらす結果を示した。
【0006】
また、米国特許第4595548号、同第4603061号、同第4645824号、同第4895972号、同第5218083号、同第5093453号、同第5218077号、同第5367046号、同第5338826号、同第5986036号、同第6232428号、および韓国特許公開公報第2003−0009437号には、−O−、−SO−、CH−などの連結基、p位ではなくm位に連結された屈曲構造、または−CFなどの置換基を有する芳香族ジアンヒドリドと芳香族ジアミン単量体を用いて、熱的特性が大きく低下しない限度内で透過度および色の透明度を向上させた新規構造のポリイミドが開示されているが、機械的特性、耐熱性、複屈折の面でOLED、TFT−LCD、フレキシブルディスプレイなどの表示素子の素材として使用するには不十分な結果を示した。
【0007】
一方、最近、フレキシブルディスプレイの実現のために、ガラス基板の代替素材として様々なプラスチック素材が検討されている中で、ポリイミドフィルムの場合、曲面実現が可能であるうえ、薄く、軽く、簡単には壊れない物性を実現することができるので、多くの関心が集中している。ただし、ポリイミド素材をディスプレイ工程に適用するためには、何よりも工程時に耐えられる高い熱安定性および寸法安定性のための低熱膨張係数の確保が必要であり、これと同時に無色透明な特性を維持することが要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、無色透明でありながらも熱安定性および熱膨張係数が改善されたフィルムを形成するためのポリアミド−イミド前駆体を提供する。また、本発明は、前記ポリアミド−イミド前駆体をイミド化して製造したポリアミド−イミドフィルム、およびこれを含む映像表示素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明の好適な第1実施形態は、分子構造内に、ジアンヒドリドとジアミンとの重合反応に由来する第1重合体と;ジアミンと芳香族ジカルボニル化合物との重合反応に由来する第2重合体と;が共重合された構造を含み、前記ジアミンは、ジアミンの総モルに対して、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA)および9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン(F−FDA)のうちの少なくとも一つの成分を、3〜50mol%含むことを特徴とする、ポリアミド−イミド前駆体である。
【0010】
また、本発明の好適な第2実施形態は、前記第1実施形態のポリアミド−イミド前駆体がイミド化された共重合ポリアミド−イミドであり、第3実施形態は、前記第1実施形態のポリアミド−イミド前駆体のイミド化反応によって形成された共重合ポリアミド−イミドフィルムである。
【0011】
さらに、本発明の好適な第4実施形態は、前記第3実施形態のポリアミド−イミドフィルムを含む映像表示素子である。
【発明の効果】
【0012】
本発明のポリアミド−イミド前駆体は、イミド化する場合、無色透明でありながらも熱安定性および熱膨張係数特性に優れたポリアミド−イミドまたはポリアミド−イミドフィルムを製造することができる。
【0013】
特に、本発明のポリアミド−イミドフィルムは、光学特性および熱的特性のため半導体絶縁膜、TFT−LCD絶縁膜、パッシベーション膜、液晶配向膜、光通信用材料、太陽電池用保護膜、フレキシブルディスプレイ基板などの様々な分野に有用に使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、イミド構造のみからなる場合に不足することとなりうる機械的物性を、アミド結合構造を有する重合体を用いて確保することにより、最終的に、熱的安定性、機械的物性、光学特性をバランスよく改善させることができるポリアミド−イミド前駆体に関する。
【0015】
より具体的に、本発明は、分子構造内に、ジアンヒドリドとジアミンとの重合反応に由来する第1重合体と;ジアミンと芳香族ジカルボニル化合物との重合反応に由来する第2重合体とが、共重合された構造を含む、ポリアミド−イミド前駆体に関する。本発明において、前記ジアミンは、ジアミンの総モルに対して、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA)および9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン(F−FDA)のうちの少なくとも一つの成分を3〜50mol%で含むことを特徴とする。これにより、本発明のポリアミド−イミド前駆体は、イミド化されて、無色透明でありながらも、熱安定性および熱膨張係数特性に優れたポリアミド−イミドまたはポリアミド−イミドフィルムとして提供できる。
【0016】
本発明において、前記ジアミンに含まれた、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA)および/または9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン(F−FDA)成分の含有量は、ポリアミド−イミド前駆体がイミド化されたポリアミド−イミドまたはポリアミド−イミドフィルムの熱安定性および熱膨張係数などの特性に影響を及ぼすことができる。ジアミンに含まれた、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA)および/または9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン(F−FDA)成分の含有量が増加するほど、相対的に短い分子鎖が形成されることにより、高分子鎖の鎖の運動が制限を受けてガラス転移温度が上昇し、結果的に熱安定性が向上しうるのであるが、含有量が低くなるほど、分子鎖が相対的に長く形成され、分子量が増加するのに伴い、光学透過度や黄変度などの光学的性質が向上するとともに低い熱膨張係数を得ることができる。
【0017】
これにより、前記9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA)および/または9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン(F−FDA)成分の含有量は、3乃至50mol%以内で適切に制御することが好ましい。ただし、含有量が、ジアミンの総モルに対して50mol%を超える場合、熱膨張係数があまりにも増加して、ディスプレイ製造工程の際に、ねじれ現象などの、寸法安定性の面での問題点が発生し、分子量が低く、重合安定性を確保することが難しいため、フィルム製造の際に、フィルムの柔軟性に劣るか壊れやすいという問題点が発生するおそれがある。また、含有量が3mol%未満である場合、高い熱安定性を期待することができない。
【0018】
一方、本発明において、前記ジアンヒドリドは、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸無水物(TDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン二無水物(SiDA)、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド二無水物(BDSDA)、スルホニルジフタル酸二無水物(SO2DPA)およびイソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸無水物(6HBDA)よりなる群から選ばれた1種以上であり得る。
【0019】
ここで、前記ジアンヒドリドは、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)およびビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)の少なくとも1種を含むことがより好ましく、これらの2種の成分を4:6〜2:8のモル比(6FDA:BPDA)で混合して使用することが、光学的特性、熱膨張係数(CTE)および耐熱特性を同時に向上させることができる観点からさらに好ましい。上記の範囲から外れて6FDAの含有量が増加すると、光学的特性は増加することができるものの、熱膨張係数(CTE)および耐熱特性が低下するおそれがあり、BPDAの含有量が増加すると、重合安定性が低下し、光学的特性が減少するおそれがある。
【0020】
また、本発明において、前記ジアミンは、ジアミンの総モルに対して、ビスアミノフェノキシベンゼン(133APB)、ビスアミノフェノキシベンゼン(134APB)、ビスアミノフェノキシフェニルヘキサフルオロプロパン(4BDAF)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(33−6F)、ビスアミノフェニルヘキサフルオロプロパン(44−6F)、ビスアミノフェニルスルホン(4DDS)、ビスアミノフェニルスルホン(3DDS)、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)、シクロヘキサンジアミン(13CHD)、シクロヘキサンジアミン(14CHD)、ビスアミノフェノキシフェニルプロパン(6HMDA)、ビスアミノヒドロキシフェニルヘキサフルオロプロパン(DBOH)およびビスアミノフェノキシジフェニルスルホン(DBSDA)よりなる群から選ばれた1種以上を50〜97mol%含むものであり得る。
【0021】
必ずしもこれに限定されるものではないが、本発明は、前記ジアミンのうち、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)を(9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA)および/または9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン(F−FDA)と一緒に使用することが好ましい。ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)は、構造的に−CF置換基を有しており、電子移動を制限すると同時に、芳香族から構成されているので、他のジアミンと比較するときに、高い光学的特性を実現することができるだけでなく、優れた耐熱性を発現することができる。そのため、(9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン(FDA)および/または9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン(F−FDA)と一緒に使用されて相乗効果を示すことができる。
【0022】
本発明において、前記芳香族ジカルボニル化合物は、テレフタロイルクロリド(TPC)、イソフタロイルジクロリド(IPC)および4,4'-ビフェニルジカルボニルクロリド(BZC)よりなる群から選ばれた1種以上であり、その中でも、構造的に剛直な構造を持つ、芳香族を有するテレフタロイルクロリド(TPC)を選択することが、高い機械的物性だけでなく、CTEおよび光学特性の向上の観点から、より好ましい。
【0023】
本発明において、前記第1重合体と第2重合体とのモル比は、30:70乃至45:55、より好ましくは35:65乃至40:60である。本発明において、前記第1重合体は、イミド化が可能な結合構造を持つ重合体であり、第2重合体は、アミド結合構造を持つ重合体であり、上記の比率から外れて第1重合体の比率が高すぎると、熱安定性の向上の幅は微々たるものでありつつ、光学的特性は大幅に減少し、CTEが増加し、機械的物性が低下するという問題点が発生するおそれがある。一方、第2重合体の比率が高すぎると、重合安定性に劣ることからフィルムが脆くなり(Brittle)、熱的特性が低くなるという問題点が発生するおそれがあり、特に、剛直な構造の増加により大きな複屈折率を示すこととなり、光学部材に使用するには困難な点が発生するおそれがある。
【0024】
本発明のポリアミド−イミド前駆体は、約10〜20重量%の固形分濃度範囲にて、GPC(Gel Permeation Chromatography)で測定した重量平均分子量が、200,000乃至300,000であり、より詳しくは230,000乃至280,000である。ここで、粘度の範囲は230乃至270poiseであることが好ましい。
【0025】
さらに、本発明は、前記ポリアミド−イミド前駆体を、脱水閉環、すなわちイミド化させた構造を持つポリアミド−イミド、または、イミド化して製造されたポリアミド−イミドフィルムを提供することができる。本発明において、前記ポリアミド−イミド前駆体を用いてポリアミド−イミドまたはポリアミド−イミドフィルムを製造するためには、次のようなイミド化段階を経ることができる。
【0026】
まず、上述した本発明の条件を満足する、ジアンヒドリドおよび芳香族ジカルボニル化合物と、ジアミンとを1:1の当量比で共重合させて、ポリアミド−イミド前駆体溶液を製造する。この際、重合反応条件は特に限定されないが、好ましくは、−10〜80℃で2〜48時間、窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気中で行うことができる。
【0027】
この際、本発明では、それぞれの単量体の溶液重合反応のために、溶媒を使用することができ、前記溶媒としては、公知の反応溶媒であれば、これに特に限定されないが、好ましくは、m−クレゾール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、エチルアセテート、ジエチルホルムアミド(DEF)、ジエチルアセトアミド(DEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME;Propylene glycol monomethyl ether)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGMEA;Propylene glycol monomethyl ether Acetate)などから選ばれた一つ以上の極性溶媒を使用することができる。この他にも、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルムなどの低沸点溶液またはγ−ブチロラクトンなどの低吸収性溶媒を使用することができる。これらの溶媒は、目的に応じて、単独、あるいは2種以上、使用することができる。
【0028】
また、前記溶媒の含有量については特に限定されないが、適切なポリアミド−イミド前駆体溶液の分子量と粘度を得るために、溶媒の含有量は、全体ポリアミド−イミド前駆体溶液の50〜95重量%、好ましくは70〜90重量%である。
【0029】
本発明において、特に限定する事項に含まれるものではないが、前記ポリアミド−イミド前駆体溶液を用いてフィルムを製造する場合、フィルムの摺動性、熱伝導性、導電性、耐コロナ性などのさまざまな特性を改善させる目的で、ポリアミド−イミド前駆体溶液に充填剤を添加することができる。充電剤は、特に限定されないが、好ましい具体例としては、シリカ、酸化チタン、層状シリカ、カーボンナノチューブ、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、リン酸水素カルシウム、リン酸カルシウム、雲母などを挙げることができる。
【0030】
前記充填剤の粒径は、改質すべきフィルムの特性と添加する充填剤の種類に応じて変動しうるもので、特に限定されないが、一般的には、平均粒径が0.001〜50μmであることが好ましく、0.005〜25μmであることがより好ましく、0.01〜10μmであることがさらに好ましい。この場合、ポリイミドフィルムの改質効果が現れやすく、ポリイミドフィルムにおける良好な表面性、導電性および機械的特性を得ることができる。
【0031】
また、前記充填剤の添加量についても、改質すべきフィルム特性や充填剤の粒径などに応じて変動しうるのであり、特に限定されるものではない。一般的に、充填剤の添加量は、ポリアミック酸溶液100重量部に対して0.001〜20重量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.01〜10重量部である。
【0032】
充填剤の添加方法は、特に限定されるものではないが、例えば、重合前または重合後にポリアミック酸溶液に添加する方法、ポリアミド酸重合の完了の後に、3本ロールなどを用いて充填剤を混練する方法、充填剤を含む分散液を準備し、これをポリアミック酸溶液に混合する方法などを挙げることができる。
【0033】
次いで、得られたポリアミド−イミド前駆体溶液は、公知のイミド化法でもって、適切に選択してイミド化することができる。その一例としては、ポリアミド−イミド前駆体溶液を40〜500℃の温度範囲で徐々に昇温させ、1〜8時間加熱する熱イミド化法、ポリアミド−イミド前駆体溶液に、無水酢酸などの酸無水物に代表される脱水剤と、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジンなどの3級アミン類などに代表されるイミド化触媒とを投入する化学イミド化法、およびこれらの組み合わせを適用することができる。
【0034】
ただし、熱イミド化法の場合は、単独のみでは、高いイミド化温度によりフィルムの黄色度が増大して、無色透明である特性の発現が困難になることがある。このため、本発明では、ポリアミド酸のイミド化触媒を投入して約60〜70%のイミド化を行った後、熱イミド化によってポリイミドを生成することができるように、化学イミド化と熱イミド化とを組み合わせて使用することが好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0035】
これをより具体的に説明すると、ポリアミド−イミド前駆体溶液に脱水剤およびイミド化触媒を投入してガラス板、アルミニウム箔、循環ステンレスベルト、ステンレスドラムなどの支持体上にキャスティングした後、100〜250℃で加熱して脱水剤およびイミド化触媒を活性化し、部分的に硬化および乾燥させた後、100〜500℃で1〜30分間加熱することにより、ポリアミド−イミドフィルムを得ることができる。
【0036】
また、本発明では、次のようにポリアミド−イミドフィルムを製造することもできる。すなわち、得られたポリアミド−イミド前駆体溶液をイミド化させた後、イミド化した溶液を第2溶媒に投入し、沈殿、濾過および乾燥を行ってポリアミド−イミド樹脂の固形分を得てから、得られたポリアミド−イミド樹脂固形分を、第1溶媒に溶解させたポリアミド−イミド溶液を用いて、製膜工程によって得ることもできる。このような製造方法の場合、沈殿、濾過および乾燥の工程を段階的に経るので、相対的に未反応のモノマーを除去するか、或いは低分子量で重合されることを防止することができるため、フィルムの黄色度が改善されるという効果を得ることができる。
【0037】
前記第1溶媒には、ポリアミック酸溶液の重合時に使用した溶媒と同じ溶媒を使用することができる。前記第2溶媒には、ポリアミド−イミド樹脂の固形分を得るために、第1溶媒よりも極性が低いものを使用するのであり、具体的には水、アルコール類、エーテル類およびケトン類の中から選択された1種以上が挙げられる。ここで、前記第2溶媒の含有量は、特に限定されるものではないが、ポリアミック酸溶液の重量に対して5〜20重量倍であることが好ましい。
【0038】
こうして得られたポリアミド−イミド樹脂固形分を濾過した後、乾燥させる条件は、第2溶媒の沸点を考慮して、温度は50〜120℃、時間は3〜24時間であることが好ましい。その後、製膜工程にて、ポリアミド−イミド樹脂固形分が溶けているポリアミド−イミド溶液を支持体上にキャスティングし、40〜400℃の温度範囲で徐々に昇温させながら1分〜8時間加熱して、ポリアミド−イミドフィルムを得る。
【0039】
本発明では、前述のように得られたポリアミド−イミドフィルムに対して、張力の下で熱処理工程をもう一度行うことにより、フィルムにおける、フィルム内に残っている熱履歴および残留応力を解消することができ、これにより、熱膨張係数の履歴現象を減少させ、フィルムの安定的な熱的特性を得ることができる。最後の熱処理を施さない場合、フィルム内における収縮しようとする残留応力が熱膨張を減少させ、熱膨張係数の値が既存のフィルムからずれること、すなわち非常に減少することがある。この際、追加の熱処理工程の温度は300〜500℃が好ましく、熱処理時間は1分〜3時間が好ましく、熱処理を済ませたフィルムの残留揮発分は、5%以下であり、好ましくは3%以下である。
【0040】
前述したように得られたポリアミド−イミドフィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、5〜250μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜100μmである。
【0041】
本発明に係る前記ポリアミド−イミドフィルムは、50〜300℃での熱膨張係数(Coefficient of Thermal Expansion、CTE)が30ppm/℃以下であり、ガラス転移温度(Tg)が350乃至380℃であり得る。このように優れた熱的安定性および低い熱膨張係数により、本発明のポリアミド−イミドフィルムは、ディスプレイ製造の際に過酷な工程温度または急激な温度変化にも容易に曲がったり歪んだりしないので、優れた収率を示すことができる。
【0042】
また、本発明の前記ポリアミド−イミドフィルムは、フィルム厚さ10〜100μmを基準に、550nmで測定した透過度が87%以上であり、ASTM E313に準拠した黄色度が7以下であって、優れた光学特性も示すことができる。
【0043】
これにより、本発明のポリアミド−イミドフィルムは、既存のポリイミドフィルムが持つ黄色により使用が制限されていた、保護膜、またはTFT−LCDなどでの拡散板、および、コーティング膜などの映像表示素子に、例えば,TFT−LCDでの層間膜(インターレイヤ;Interlayer)、ゲート絶縁膜(Gate Insulator)および液晶配向膜など、透明性が要求される分野に容易に適用でき、既存のディスプレイにおけるガラスを代替するフレキシブルディスプレイ基板(Flexible Display substrate)およびハードコーティング(Hard Coating)フィルムとしても活用できる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
【0045】
実施例1
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)762gを満たした後、反応器の温度を25℃に合わせてから、TFDB55.91g(0.175mol)およびFDA1.88g(0.005mol)を溶解し、この溶液を25℃に維持した。ここに、BPDA14.30g(0.049mol)と6FDA9.60g(0.022mol)を投入した後、一定時間の間撹拌して溶解および反応させた。その後、溶液の温度を15℃に維持した後、TPC22.29g(0.109mol)を添加し、25℃で12時間反応することにより、固形分濃度12重量%および粘度250ポアズ(poise)のポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。ここで、粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)粘度計(RVDV−II+P)を用い、25℃で6番または7番のスピンドルを用いて50rpmで2回測定し、その平均値を求めた値である。
【0046】
前記ポリアミド−イミド前駆体溶液にピリジン17.09g、無水酢酸21.86gを投入して30分間攪拌した後、再び80℃で1時間撹拌して常温に冷まし、これをメタノール20Lに沈殿させてから、沈殿した固形分を濾過して粉砕し、この後、100℃で真空にて6時間乾燥させて93.5gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。次いで、前記90gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを725gのN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶かして11wt%の溶液を得、こうして得られた溶液をステンレス板に塗布した後、キャスティングして150℃の熱風で1時間、200℃で1時間、300℃で30分、熱風によって乾燥させ、しかる後に、徐々に冷却して板から分離することにより、80μm(Anritsu Electronic Micrometer、偏差:±0.5%以下)のポリアミド−イミドフィルムを得た。その後、最終の熱処理工程として再び300℃で10分間熱処理した。
【0047】
実施例2
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)768gを満たした後、反応器の温度を25℃に合わせてから、TFDB46.11g(0.144mol)およびFDA12.54g(0.036mol)を溶解し、この溶液を25℃に維持した。ここに、BPDA14.30g(0.049mol)と6FDA9.60g(0.022mol)を投入した後、一定時間の間撹拌して溶解および反応させた。その後、溶液の温度を15℃に維持した後、TPC22.29g(0.109mol)を添加し、25℃で12時間反応することにより、固形分濃度12重量%および粘度248ポアズ(poise)のポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。
【0048】
前記ポリアミド−イミド前駆体溶液にピリジン17.09g、無水酢酸21.86gを投入して30分間攪拌した後、再び80℃で1時間撹拌して常温に冷まし、これをメタノール20Lに沈殿させてから、沈殿した固形分を濾過して粉砕し、この後、100℃で真空にて6時間乾燥させて94.3gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。しかる後に、実施例1と同様の方法で78μmのポリアミド−イミドフィルムを製造した。
【0049】
実施例3
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)780gを満たした後、反応器の温度を25℃に合わせてから、TFDB28.82g(0.09mol)およびFDA31.36g(0.09mol)を溶解し、この溶液を25℃に維持した。ここに、BPDA14.30g(0.049mol)および6FDA9.60g(0.022mol)を投入した後、一定時間の間撹拌して溶解および反応させた。その後、溶液の温度を15℃に維持した後、TPC22.29g(0.109mol)を添加し、25℃で12時間反応することにより、固形分濃度12重量%および粘度240poiseのポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。
【0050】
前記ポリアミド−イミド前駆体溶液にピリジン17.09g、無水酢酸21.86gを投入して30分間攪拌した後、再び80℃で1時間撹拌して常温に冷まし、これをメタノール20Lに沈殿させてから、沈殿した固形分を濾過して粉砕し、しかる後に、100℃で真空にて6時間乾燥させて95.7gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。その後、実施例1と同様の方法で77μmのポリアミド−イミドフィルムを製造した。
【0051】
実施例4
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)764gを満たした後、反応器の温度を25℃に合わせてから、TFDB55.91g(0.175mol)、およびF−FDA2.08g(0.005mol)を溶解し、この溶液を25℃に維持した。ここに、BPDA14.30g(0.049mol)と6FDA9.60g(0.022mol)を投入した後、一定時間の間撹拌して溶解および反応させた。その後、溶液の温度を15℃に維持した後、TPC22.29g(0.109mol)を添加し、25℃で12時間反応することにより、固形分濃度12重量%および粘度242ポアズ(poise)のポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。
【0052】
前記ポリアミド−イミド前駆体溶液にピリジン17.09g、無水酢酸21.86gを投入して30分間攪拌した後、再び80℃で1時間撹拌して常温に冷まし、これをメタノール20Lに沈殿させてから、沈殿した固形分を濾過して粉砕し、この後、100℃で真空にて6時間乾燥させて93.7gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。その後、実施例1と同様の方法で81μmのポリアミド−イミドフィルムを製造した。
【0053】
実施例5
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)778gを満たした後、反応器の温度を25℃に合わせてから、TFDB46.11g(0.144mol)およびF−FDA13.84g(0.036mol)を溶解し、この溶液を25℃に維持した。ここに、BPDA14.30g(0.049mol)および6FDA9.60g(0.022mol)を投入した後、一定時間の間撹拌して溶解および反応させた。その後、溶液の温度を15℃に維持した後、TPC22.29g(0.109mol)を添加し、25℃で12時間反応することにより、固形分濃度12重量%および粘度252ポアズ(poise)のポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。
【0054】
前記ポリアミド−イミド前駆体溶液にピリジン17.09g、無水酢酸21.86gを投入して30分間攪拌した後、再び80℃で1時間撹拌して常温に冷まし、これをメタノール20Lに沈殿させてから、沈殿した固形分を濾過して粉砕しこの後、100℃で真空にて6時間乾燥させて94.5gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。その後、実施例1と同様の方法で80μmのポリアミド−イミドフィルムを製造した。
【0055】
実施例6
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)803gを満たした後、反応器の温度を25℃に合わせ、TFDB28.82g(0.09mol)およびF−FDA34.60g(0.09mol)を溶解してこの溶液を25℃に維持した。ここにBPDA14.30g(0.049mol)と6FDA9.60g(0.022mol)を投入した後、一定時間の間撹拌して溶解および反応させた。その後、溶液の温度を15℃に維持した後、TPC22.29g(0.109mol)を添加し、25℃で12時間反応することにより、固形分濃度12重量%および粘度が238ポアズ(poise)のポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。
【0056】
前記ポリアミド−イミド前駆体溶液にピリジン17.09g、無水酢酸21.86gを投入して30分間攪拌した後、再び80℃で1時間撹拌して常温に冷まし、これをメタノール20Lに沈殿させてから、沈殿した固形分を濾過して粉砕し、この後、100℃で真空にて6時間乾燥させて96.6gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。しかる後に、実施例1と同様の方法で78μmのポリアミド−イミドフィルムを製造した。
【0057】
実施例7
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)792gを満たし後、反応器の温度を25℃に合わせてから、TFDB28.82g(0.09mol)、FDA15.68g(0.045mol)、およびF−FDA17.30g(0.045mol)を溶解し、この溶液を25℃に維持した。ここに、BPDA14.30g(0.049mol)と6FDA9.60g(0.022mol)を投入した後、一定時間の間撹拌して溶解および反応させた。その後、溶液の温度を15℃に維持した後、TPC22.29g(0.109mol)を添加し、25℃で12時間反応することにより、固形分濃度12重量%および粘度238ポアズ(poise)のポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。
【0058】
前記ポリアミド−イミド前駆体溶液にピリジン17.09g、無水酢酸21.86gを投入して30分間攪拌した後、再び80℃で1時間撹拌して常温に冷まし、これをメタノール20Lに沈殿させてから、沈殿した固形分を濾過して粉砕し、この後、100℃で真空にて6時間乾燥させて94.8gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。その後、実施例1と同様の方法で78μmのポリアミド−イミドフィルムを製造した。
【0059】
実施例8
TPC22.29g(0.109mol)の代わりにIPC(TCI社製)22.29g(0.109mol)を添加した以外は、実施例2と同様の方法を適用して、固形分濃度12重量%および粘度242ポアズ(poise)のポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。これを実施例2と同様の方法でイミド化反応させて94.2gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。その後、79μmのポリアミド−イミドフィルムを製造した。
【0060】
実施例9
BPDA、6FDAおよびTPCの含有量をそれぞれ16.42g(0.056mol)、11.20g(0.025mol)および20.10g(0.099mol)を添加した以外は、実施例2と同様の方法を適用して、固形分濃度12重量%および粘度240ポアズ(poise)のポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。これを実施例2と同様の方法でイミド化反応させて98.3gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。その後、77μmのポリアミド−イミドフィルムを製造した。
【0061】
実施例10
BPDA、6FDAおよびTPCの含有量をそれぞれ13.24g(0.045mol)、7.80g(0.018mol)および23.75g(0.117mol)添加した以外は、実施例2と同様の方法を適用して、固形分濃度12重量%および粘度245ポアズ(poise)のポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。これを実施例2と同様の方法でイミド化反応させて95.4gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。その後、78μmのポリアミド−イミドフィルムを製造した。
【0062】
実施例11
BPDA、6FDAおよびTPCの含有量をそれぞれ11.12g(0.038mol)、7.20g(0.016mol)および25.58g(0.126mol)を添加した以外は、実施例2と同様の方法を適用して、固形分濃度12重量%および粘度247ポアズ(poise)のポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。これを実施例2と同様の方法でイミド化反応させて93.7gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。その後、78μmのポリアミド−イミドフィルムを製造した。
【0063】
実施例12
TFDB46.11g(0.144mol)の代わりに3DDS(TCI)35.76g(0.144mol)を添加した以外は、実施例2と同様の方法を適用して、固形分濃度12重量%および粘度235ポアズ(poise)のポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。これを実施例2と同様の方法でイミド化反応させて83.7gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。その後、78μmのポリアミド−イミドフィルムを製造した。
【0064】
実施例13
TFDB46.11g(0.144mol)の代わりに3DDS(TCI)35.76g(0.144mol)を添加した以外は、実施例5と同様の方法を適用して、固形分濃度12重量%および粘度242ポアズ(poise)のポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。これを実施例5と同様の方法でイミド化反応させて87.8gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。その後、79μmのポリアミド−イミドフィルムを製造した。
【0065】
実施例14
BPDAを添加する代わりに、6FDAのみ31.19g(0.070mol)を添加した以外は、実施例2と同様の方法を適用して、固形分濃度12重量%および粘度248ポアズ(poise)のポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。これを実施例2と同様の方法でイミド化反応させて99.3gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。その後、78μmのポリアミド−イミドフィルムを製造した。
【0066】
比較例1
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)761gを満たした後、反応器の温度を25℃に合わせてから、TFDB57.64g(0.18mol)を溶解し、この溶液を25℃に維持した。ここにBPDA14.30g(0.049mol)および6FDA9.60g(0.022mol)を投入した後、一定時間の間撹拌して溶解および反応させた。その後、溶液の温度を15℃に維持した後、TPC22.29g(0.109mol)を添加し、25℃で12時間反応することにより、固形分濃度12重量%および粘度252ポアズ(poise)のポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。
【0067】
前記ポリアミド−イミド前駆体溶液にピリジン17.09g、無水酢酸21.86gを投入して30分間攪拌した後、再び80℃で1時間撹拌して常温に冷まし、これをメタノール20Lに沈殿させてから、沈殿した固形分を濾過して粉砕し、この後、100℃で真空にて6時間乾燥させて92.1gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。その後、実施例1と同様の方法で80μmのポリアミド−イミドフィルムを製造した。
【0068】
比較例2
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)758gを満たした後、反応器の温度を25℃に合わせてから、TFDB54.06g(0.178mol)およびFDA0.63g(0.002mol)を溶解し、この溶液を25℃に維持した。ここに、BPDA14.30g(0.049mol)および6FDA9.60g(0.022mol)を投入した後、一定時間の間撹拌して溶解および反応させた。その後、溶液の温度を15℃に維持した後、TPC22.29g(0.109mol)を添加し、25℃で12時間反応することにより、固形分濃度12重量%および粘度248ポアズ(poise)のポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。
【0069】
前記ポリアミド−イミド前駆体溶液にピリジン17.09g、無水酢酸21.86gを投入して30分間攪拌した後、再び80℃で1時間撹拌して常温に冷まし、これをメタノール20Lに沈殿させてから、沈殿した固形分を濾過して粉砕し、この後、100℃で真空にて6時間乾燥させて92.7gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。その後、実施例1と同様の方法で80μmのポリアミド−イミドフィルムを製造した。
【0070】
比較例3
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)759gを満たした後、反応器の温度を25℃に合わせてから、TFDB54.06g(0.178mol)およびF−FDA0.69g(0.002mol)を溶解し、この溶液を25℃に維持した。ここに、BPDA14.30g(0.049mol)と6FDA9.60g(0.022mol)を投入した後、一定時間の間撹拌して溶解および反応させた。その後、溶液の温度を15℃に維持した後、TPC22.29g(0.109mol)を添加し、25℃で12時間反応することにより、固形分濃度12重量%および粘度253ポアズ(poiseiのポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。
【0071】
前記ポリアミド−イミド前駆体溶液にピリジン17.09gおよび無水酢酸21.86gを投入して30分間攪拌した後、再び80℃で1時間撹拌して常温に冷まし、これをメタノール20Lに沈殿させてから、沈殿した固形分を濾過して粉砕し、この後、100℃で真空にて6時間乾燥させて93.2gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。その後、実施例1と同様の方法で78μmのポリアミド−イミドフィルムを製造した。
【0072】
比較例4
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)782gを満たした後、反応器の温度を25℃に合わせてから、TFDB25.94g(0.081mol)およびFDA34.50g(0.099mol)を溶解し、この溶液を25℃に維持した。ここに、BPDA14.30g(0.049mol)および6FDA9.60g(0.022mol)を投入した後、一定時間の間撹拌して溶解および反応させた。その後、溶液の温度を15℃に維持した後、TPC22.29g(0.109mol)を添加し、25℃で12時間反応することにより、固形分濃度12重量%および粘度248ポアズ(poise)のポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。
【0073】
前記ポリアミド−イミド前駆体溶液にピリジン17.09gおよび無水酢酸21.86gを投入して30分間攪拌した後、再び80℃で1時間撹拌して常温に冷まし、これをメタノール20Lに沈殿させてから、沈殿した固形分を濾過して粉砕した後、100℃で真空にて6時間乾燥させて94.5gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。その後、実施例1と同様の方法で80μmのポリアミド−イミドフィルムを製造した。
【0074】
比較例5
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)808gを満たした後、反応器の温度を25℃に合わせてから、TFDB25.94g(0.081mol)およびF−FDA38.06g(0.099mol)を溶解し、この溶液を25℃に維持した。ここに、BPDA14.30g(0.049mol)および6FDA9.60g(0.022mol)を投入した後、一定時間の間撹拌して溶解および反応させた。その後、溶液の温度を15℃に維持した後、TPC22.29g(0.109mol)を添加し、25℃で12時間反応することにより、固形分濃度12重量%および粘度253ポアズ(poise)のポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。
【0075】
前記ポリアミド−イミド前駆体溶液にピリジン17.09gおよび無水酢酸21.86gを投入して30分間攪拌した後、再び80℃で1時間撹拌して常温に冷まし、これをメタノール20Lに沈殿させてから、沈殿した固形分を濾過して粉砕した後、100℃で真空にて6時間乾燥させて97.6gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。しかる後に、実施例1と同様の方法で78μmのポリアミド−イミドフィルムを製造した。
【0076】
比較例6
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)798gを満たした後、反応器の温度を25℃に合わせ、FDA62.72g(0.18mol)を溶解してこの溶液を25℃に維持した。ここに、BPDA14.30g(0.049mol)および6FDA9.60g(0.022mol)を投入した後、一定時間の間撹拌して溶解および反応させた。その後、溶液の温度を15℃に維持した後、TPC22.29g(0.109mol)を添加し、25℃で12時間反応することにより、固形分濃度12重量%および粘度209ポアズ(poise)のポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。
【0077】
前記ポリアミド−イミド前駆体溶液にピリジン17.09gおよび無水酢酸21.86gを投入して30分間攪拌した後、再び80℃で1時間撹拌して常温に冷まし、これをメタノール20Lに沈殿させてから、沈殿した固形分を濾過して粉砕し、この後、100℃で真空にて6時間乾燥させて92.0gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。しかる後に、実施例1と同様の方法でポリアミド−イミドフィルムを製造しようとしたが、低い重合安定性と分子量のために、乾燥の際にフィルムが壊れやすくてフィルムが形成されなかった。
【0078】
比較例7
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器および冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素を通過させながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)846gを満たした後、反応器の温度を25℃に合わせてから、F−FDA69.20g(0.18mol)を溶解してこの溶液を25℃に維持した。ここにBPDA14.30g(0.049mol)および6FDA9.60g(0.022mol)を投入した後、一定時間の間撹拌して溶解および反応させた。その後、溶液の温度を15℃に維持した後、TPC22.29g(0.109mol)を添加し、25℃で12時間反応することにより、固形分濃度12重量%および粘度198ポアズ(poise)のポリアミド−イミド前駆体溶液を得た。
【0079】
前記ポリアミド−イミド前駆体溶液にピリジン17.09gおよび無水酢酸21.86gを投入して30分間攪拌した後、再び80℃で1時間撹拌して常温に冷やし、これをメタノール20Lに沈殿させてから、沈殿した固形分を濾過して粉砕し、この後、100℃で真空にて6時間乾燥させて93.8gの固形分粉末の共重合ポリアミド−イミドを得た。その後、実施例1と同様の方法でポリアミド−イミドフィルムを製造しようとしたが、やはり、低い重合安定性と分子量のために、乾燥の際にフィルムが壊れやすくてフィルムが形成されなかった。
【0080】
<測定例>
上記の実施例および比較例で製造されたポリアミド−イミドフィルムの物性を次の方法で評価し、その結果を下記表1に示した。
【0081】
(1)透過度の測定:UV分光計(コニカミノルタ製、CM−3700d)を用いて550nmで透過度を3回測定し、その平均値を表1に記載した。
【0082】
(2)黄色度(Y.I.)の測定:UV分光計(コニカミノルタ製、CM−3700d)を用いてASTM E313に準拠して黄色度を測定した。
【0083】
(3)ガラス転移温度(Tg)の測定:DMA(動的粘弾性測定装置;TA instrument Inc. DMA Q800)を用いて、常温〜400℃で、分あたり5℃昇温してTanδの頂点をTgとした。
【0084】
(4)熱膨張係数(CTE)の測定:TMA(熱機械分析装置;TA Instrument社製、Q400)を用いてTMA−Methodに基づいて2回にわたって50〜300℃での熱膨張係数を測定した。このとき、試験片の大きさは4mm×24mm、荷重は0.02N、昇温速度は10℃/minとした。製膜の後、熱処理によって、フィルム内に残留応力が残っている可能性があるため、最初の作動(Run)で残留応力を完全に除去した後、2番目の値を実測定値として提示した。
【0085】
【表1】
【0086】
前記表1の実施例1乃至3または実施例4乃至6に示すように、ジアミン成分中のFDAまたはF−FDAの含有量が増加するほど、光学特性はやや低下し、熱膨張係数は増加したのであるが、相対的に短い分子鎖が形成されることにより、高分子鎖の鎖の運動が制限を受け、結果的に、ガラス転移温度が上昇して熱安定性が向上することが分かった。また、FDAまたはF−FDAの含有量が低くなるほど、熱安定性はやや低下したが、分子鎖が相対的に長く形成され、分子量が増加するにつれて、光学透過度や黄変度などの光学的性質は向上し、熱膨張係数も低くなることが分かった。
【0087】
ところが、比較例1のようにFDAまたはF−FDAが全く添加されないか或いは含有量があまりにも低いため、ジアミンの総モルに対して3モル%にも及ばない場合、高い熱安定性を期待することができなかった。これに対し、比較例4および5のように含有量が高くなる場合には、光学的性質および熱膨張係数が低下し、比較例6および7のようにジアミンとしてFDAまたはF−FDAのみを使用する場合には、むしろ重合安定性に劣るものとなってフィルム形成が難しいことが分かった。