特許第6705867号(P6705867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705867
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/16 20060101AFI20200525BHJP
【FI】
   G01D5/16 E
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-129729(P2018-129729)
(22)【出願日】2018年7月9日
(65)【公開番号】特開2019-49528(P2019-49528A)
(43)【公開日】2019年3月28日
【審査請求日】2018年10月22日
(31)【優先権主張番号】17180732.4
(32)【優先日】2017年7月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ブルーダウ
【審査官】 菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2013/0027028(US,A1)
【文献】 特開2005−180941(JP,A)
【文献】 特表2013−515234(JP,A)
【文献】 特開2005−43070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12−5/252
G01B 7/00−7/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのセンサ素子(4)を用いて測定区間(3)に沿った発信磁石(2)の直線的な相対運動を非接触で磁気的に検出するためのセンサであって、前記センサ素子(4)の各々が前記発信磁石の磁場(5)の互いに垂直な2つの成分(6、7)を測定範囲全体にわたって検出し
1の成分(6)が軸方向成分(Bx)であり、
第2の成分(7)が半径方向成分(By)であり、
評価ユニット(9)が設けられ、
各センサ素子(4.1、4.2)が検出する軸方向成分(Bx)と各センサ素子(4.1、4.2)が検出する半径方向成分(By)が該評価ユニット(9)において数学的な関数によって評価可能であり、該数学的な関数はARCTAN(半径方向成分/軸方向成分)又はARCTAN(軸方向成分/半径方向成分)であり、
前記ARCTAN(半径方向成分/軸方向成分)又は前記ARCTAN(軸方向成分/半径方向成分)は、前記測定区間(3)に沿った前記発信磁石(2)の位置(13)に対して、単調変化をしない領域を有する特性である位置信号であるセンサにおいて、
前記評価ユニットが、前記測定区間(3)の少なくとも1つの領域(14)における各々の位置信号(10)を一定の補正値(21)で補正することで、前記測定区間(3)全体にわたって単調な値域(12)を有する位置信号(10)を生成するように構成されていること、及び
前記軸方向成分(Bx)の値(X)と前記半径方向成分(By)の値(Y)が、前記軸方向成分(Bx)と前記半径方向成分(By)とを互いに区別するためにそれぞれ異なる重み付け係数(G)で重み付けされ、該重み付け係数(G)が特に2の累乗に相当すること
を特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記センサ素子(4)がTMR技術に基づく角度センサであることを特徴とする請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記センサ素子(4)が、それぞれ少なくとも1つのアナログ出力(24)を備える集積部品であり、前記評価ユニット(9)が、統合されたアナログデジタル変換器を含むマイクロコントローラであり、これにより、前記軸方向成分及び前記半径方向成分に対応する値を有する前記アナログ出力(24)に現れる少なくとも1つのアナログ信号を前記評価ユニット(9)においてデジタル的に処理することが可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記評価ユニット(9)が、前記測定区間を少なくとも4つの領域(14)に分割するように構成され、該領域の境界(25)がそれぞれ、ARCTANの値域の不連続点、及び、位置信号(10)が最大の勾配を示す位置に少なくともあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のセンサ。
【請求項5】
前記評価ユニット(9)が、前記補正値(21)を求めるために、前記軸方向成分(Bx)の値(X)と前記半径方向成分(By)の値(Y)の重み付け係数(G)を前記領域(14)毎に加算することで重み付け係数和(GS)を算出するように構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセンサ。
【請求項6】
前記評価ユニット(9)が、前記補正値(21)を求めるために、|Bxn−Bxn-1|+|Byn−Byn-1|という式により、つまり各磁場成分の2つの相前後する値の絶対差の和により、磁場勾配の比を算出するように構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のセンサ。
【請求項7】
前記評価ユニット(9)が、前記補正値(21)を求めるために、第1のセンサの第1の磁場勾配と第2のセンサの第2の磁場勾配の商を算出するように構成され、該商が勾配の等級を作るために等級分け可能であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のセンサ。
【請求項8】
前記評価ユニット(9)が、前記補正値(21)を求めるために、少なくとも請求項5に記載の重み付け係数和と請求項7に記載の勾配の等級から極性を特定するように構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のセンサ。
【請求項9】
前記評価ユニット(9)が、前記特定された極性、ARCTAN、及び前記半径方向成分(BY)の符号に基づいて、前記測定区間(3)の少なくとも1つの領域(14)において前記位置信号(10)を一定の補正値(21)で補正することで、前記測定区間(3)全体にわたって単調な値域(12)を有する単調な位置信号(10)を生成するように構成されていることを特徴とする請求項に記載のセンサ。
【請求項10】
前記評価ユニット(9)が、補正された位置信号を3次の多項式で近似するように構成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルに記載の、発信磁石の直線的な相対運動を非接触で磁気的に検出するためのセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
空気圧シリンダにおけるピストンの位置は、殆どの場合、該ピストンに固定された発信磁石を通じて特定される。その場合、磁石の向き、磁化、残留磁気又は幾何形状といった特性は様々に変わり得る。
【0003】
磁石の位置の特定は、殆どの場合、測定範囲とほぼ一致した長さを持つ位置センサで行われる。
【0004】
この測定方法では、測定範囲に沿って一定の間隔で配置された多数のホール素子を利用する。各ホール素子は磁場の半径方向成分を該素子の中心点の左右の狭い範囲内で測定できる。ホール素子の数を増やせば測定範囲が広がる。公知の製品としては、例えば出願人の製品群「MPS」や「MPA」がある。
【0005】
この測定方法には、センサの長さと到達可能な測定範囲とが必ず一致していなければならないという主な欠点がある。その上、個々の素子を比較的複雑な制御で選択しなければならず、且つ、軸方向に磁化された磁石を持つシリンダ上でしか駆動することしかできない。また、多数の部品が必要であるから、全体としてかなりコストの高い解決策である。
【0006】
これまで知られている3次元ホール素子の大部分はデジタルインターフェイスを備えており、これを通じて、求められた個々の磁場成分の測定値が伝送される。後段のマイクロコントローラへのこの測定値の伝送は非常に低速である。その上、3次元ホール素子は信号ノイズがかなり大きいため、磁石の位置を高速で且つ正確に測定することは不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、空気圧シリンダの発信磁石の位置に対応する単調な出力信号を生成するセンサであって、到達可能な測定範囲よりもはるかに長さが短いセンサを提供することにある。
【0008】
更に該センサは、位置分解能が高く、測定速度が高く、ノイズ低減性が高く、特性曲線ができるだけ直線的で、しかもできるだけ大きな測定範囲を有するべきである。
【0009】
また、測定範囲よりもはるかに長さが短いセンサ構造を可能にするような測定方法を開発すべきである。
【0010】
加えて該センサでは、高解像度の場合でも、スイッチング周波数が高く、ノイズ低減性が高く、特性曲線における線形誤差ができるだけ小さくなるようにすべきである。その上、該センサの出力特性曲線が測定範囲全体において厳密に単調であるべきである。更に該センサは、軸方向に磁化された磁石を持つシリンダと同様に、直径方向に磁化された磁石を持つシリンダに対しても使用可能であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は、請求項1に記載の、少なくとも2つのセンサ素子を用いて測定区間に沿った発信磁石の直線的な相対運動を非接触で磁気的に検出するためのセンサにより解決される。該センサでは、前記センサ素子の各々が前記発信磁石の磁場の互いに垂直な2つの成分を検出し、該センサ素子及びセンサは前記測定区間よりも短く、第1の成分が軸方向成分であり、第2の成分が半径方向成分であり、評価ユニットが設けられ、各センサ素子の軸方向成分と各センサ素子の半径方向成分が前記評価ユニットにおいて数学的な関数によって評価可能であり、該数学的な関数は(半径方向成分/軸方向成分)の逆正接又は(軸方向成分/半径方向成分)の逆正接であり、これにより、前記測定区間に沿った前記発信磁石の位置毎に或る値域の1つの値を持つ、部分毎に単調な位置信号がそれぞれ生成され、前記評価ユニットは、前記測定区間の少なくとも1つの領域における各々の位置信号を一定の補正値で補正することで、前記測定区間全体にわたって単調な値域を有する、各時点で単調な位置信号を生成するように構成されている。
【0012】
本発明では、2つの磁場方向が位置特定用の2つのセンサ素子の各々を用いて評価される。各センサ素子は、チップ面内における2つの互いに垂直な磁場成分を測定することができる。その際、2つの成分つまり磁場成分の商の逆正接を求めることで位置を計算する。
【0013】
各センサ素子は発信磁石の磁場の互いに垂直な2つの成分を検出する。これらの成分はシリンダの全長乃至は測定範囲全体にわたって検出される。従って、センサ素子及びセンサは測定区間よりも短くてもよい。
【0014】
軸方向成分と半径方向成分は測定区間に沿って2つの異なる信号推移を示す。それらを組み合わせることで発信磁石の正確な位置に関する一義的な情報が得られる。
【0015】
評価ユニットは軸方向成分と半径方向成分を数学的な関数によって評価するようになっている。その数学的な関数は商(半径方向成分/軸方向成分)のARCTAN又は商(軸方向成分/半径方向成分)のARCTANである。
【0016】
これにより、まず、測定区間に沿った発信磁石の位置毎に或る値域の1つの値を持つ、部分毎に単調な位置信号が生成される。ただし、ピストン行程が十分に大きい場合、つまり測定範囲が十分に大きい場合、その信号にはなお不連続点がある。逆正接の計算結果におけるこの不連続性は値域がπ/2から−π/2までに限定されていることから生じる。
【0017】
逆正接のこの限定を避けるため、測定区間の少なくとも1つの領域における計算結果つまり位置信号を一定の補正値で補正することで、測定区間全体にわたって単調な値域を有する単調な位置信号を生成する。
【0018】
本発明では、発信磁石が例えば軸方向又は直径方向のいずれに磁化されていてもよい。
【0019】
本発明に係るセンサは従来技術に比べてはるかに低コストである。
【0020】
磁場パラメータを決定するための更に別の基準として2つの磁場センサの磁場変化率の比が用いられる。そのためには磁石が動く必要がある。出力信号の線形性を更に改善するため、磁場の湾曲の測定法についても説明する。
【0021】
様々なシリンダ又は磁石構成に測定範囲を適応させるため、センサ素子の間隔を変えてもよい。
【0022】
本発明の発展形態では、センサ素子がTMR技術に基づく角度センサである。
【0023】
トンネル磁気抵抗(tunnel magnetoresistance、TMR)又はTMR効果は、磁気トンネル接合(magnetic tunnel junction、MTJ)において生じる磁気抵抗効果である。これは、薄い絶縁体で分離された2層の強磁性体から成る部品に関係している。絶縁層が十分に薄い(典型的には数ナノメートル)場合、電子が2つの強磁性体の間を通り抜けることができる。角度センサの場合、半径方向及び軸方向の磁場成分を測定するために、2つの部品を互いに垂直に配置する。
【0024】
TMR角度センサは信号ノイズが非常に少ない。またTMR角度センサは磁場が非常に弱くても十分な信号を生成する。従って、とりわけ外縁領域において非常に高い解像度が得られる。TMR角度センサは特に磁場強度が低い場合に非常に感度が良く、これもまた解像度にとって有利に作用する。TMR技術に基づく角度センサはブリッジ抵抗が極めて大きいため、電流消費がマイクロアンペア領域にあるというだけでも有利である。
【0025】
加えて、この角度センサの信号の振れ幅は磁場強度に依存していない。従って、3次元ホールセンサに比べて磁場成分の総量が利用されないこともあり得る。
【0026】
TMR角度センサは測定された磁場成分をアナログ電圧として出力するため、該電圧をマイクロコントローラ内の単純なアナログデジタル変換器(ADC)で検出することができる。これは3次元ホール素子の場合のようなデジタルインターフェイスを通じた測定値の読み取りよりもはるかに高速である。このような速度上の利点からセンサの性能にとって重要な2つの利点が得られる。まず、より多くの値で平均値を計算できるため、ノイズ耐性が高まる。同時に、それでもなおスイッチング周波数を高めることができる。なぜなら、アナログ電圧を読み出す際の速度上の利点が非常に大きいからである。
【0027】
本発明の発展形態では、前記センサ素子が、それぞれ少なくとも1つのアナログ出力を備える集積部品であり、前記評価ユニットが、統合されたアナログデジタル変換器を含むマイクロコントローラであり、これにより、軸方向成分及び半径方向成分に対応する値を有する前記アナログ出力に現れる少なくとも1つのアナログ信号を前記評価ユニットにおいてデジタル的に処理することが可能である。
【0028】
これにより、軸方向成分及び半径方向成分に対応する値の非常に高速な信号処理が保証される。この速度上の利点から、センサの性能にとって重要な別の2つの利点が得られる。例えば、より多くの値で平均値を計算できるため、ノイズ耐性が高まる。同時に、それでもなおスイッチング周波数を高めることができる。なぜなら、アナログ信号乃至アナログ電圧を読み出す際の速度上の利点が非常に大きいからである。
【0029】
本発明の発展形態では、前記評価ユニットが、前記測定区間を少なくとも4つの領域に分割するように構成され、該領域の境界がそれぞれ、ARCTANの値域の不連続点、及び、位置信号が最大の勾配を示す位置に少なくともある。
【0030】
特に好ましくは、前記評価ユニットが前記測定区間を6つの領域に分割するように構成され、該領域の2つの追加された境界が、ARCTANの値域の不連続点と前記位置信号が最大の勾配を示す位置との間に設けられる。
【0031】
また特に好ましくは、7つの領域が形成され、その7番目の領域が、中央において、両方のセンサ素子のARCTAN関数の値域の中央の不連続点が並んでいる位置に形成されている。
【0032】
領域を形成することで、位置信号を個々の領域においてそれぞれ個別に分析し、位置信号の領域をそれぞれ個別に補正することができる。補正係数は例えば−π、+π及び/又はゼロである。
【0033】
本発明の発展形態では、軸方向成分の値と半径方向成分の値がそれぞれ異なる重み付け係数で重み付けされ、該重み付け係数が特に2の累乗に相当する。
【0034】
これにより磁場成分がより良好に区別され、より良好に認識される。
【0035】
本発明の発展形態では、前記評価ユニットが、前記軸方向成分の値と前記半径方向成分の値の重み付け係数を領域毎に加算することで重み付け係数和を算出するように構成されている。
【0036】
重み付け係数和を算出することで、殆どの場合、磁化方向と極性の割り当てをより良好に行うことが可能となる。ただし、その割り当てはまだいかなる場合でも一義的であるわけではない。
【0037】
好ましい実施形態では、前記評価ユニットが、|Bxn−Bxn-1|+|Byn−Byn-1|という式により、つまり各磁場成分の2つの相前後する値の絶対差の和により、磁場勾配の比を算出するように構成されている。
【0038】
磁場勾配の比を算出することで、磁化方向と極性の割り当てがいかなる場合でも一義的になる。
【0039】
好ましくは、前記評価ユニットが、第1のセンサの第1の磁場勾配と第2のセンサの第2の磁場勾配の商を算出するように構成され、該商が勾配の等級を作るために等級分け可能である。
【0040】
この磁場勾配の特定は、立体的な割り当てがないため、磁石の移動速度と磁場の向きに依存する。これら2つの影響因子を除去するため、第1のセンサ素子及び第2のセンサ素子の両方の勾配値の比を算出する。その際、大きい方の値が分子として、小さい方の値が分母として常に用いられる。従って商は最小値として1をとることができる。ただし、その商は、2つの勾配値の少なくとも一方がノイズの上限よりはるかに高い所定の最小値を超えている場合にのみ算出される。この商は更に分類され、解釈される。
【0041】
本発明の発展形態では、前記評価ユニットが、少なくとも前記重み付け係数和と前記勾配の等級から極性を特定するように構成されている。
【0042】
これは2つのケースに分けられる。第1のケースでは磁化が軸方向に向いているものと仮定される。シリンダの90%超で軸方向に磁化された磁石が使用されているため、単純化した場合には磁化が軸方向であると仮定することができる。この場合、磁石の極性は、静止状態であっても、領域1、3、4、5及び7における重みの和から直接特定することができる。領域2及び6における極性を特定するには更に勾配の等級も考慮する必要がある。つまり、磁石が動く必要がある。
【0043】
磁化が既知であると仮定しない場合、磁石が動けば、領域2、4及び6における磁石の構成を特定することができる。
【0044】
本発明の発展形態では、前記評価ユニットが、特定された極性、ARCTAN、及び半径方向成分の符号に基づいて、前記測定区間の少なくとも1つの領域において前記位置信号を一定の補正値で補正することで、前記測定区間全体にわたって単調な値域を有する単調な位置信号を生成するように構成されている。補正係数は例えば−π、+π及び/又はゼロである。
【0045】
好ましい実施形態では、前記評価ユニットが、補正された位置信号を3次の多項式で近似するように構成されている。
【0046】
直径方向に磁化された磁石の場合は、各々の評価の前に予め軸方向成分と半径方向成分を入れ替えなければならない。ただし、得られる出力信号はより良好に線形化することができる。その出力曲線は3次の多項式フィッティングにより良好に近似できる。その係数は曲線の湾曲を表す。係数は以下のように決められる。まず、第1のセンサ素子1に対して3つの重要な点が定められる。
【0047】
基準係数点は2つのセンサ素子が逆符号で同じ大きさの結果を出力しているときの到達点である。制御点は一方のセンサ素子がゼロ交差の状態にあるときの到達点である。
【0048】
そして、線形性の最適化のために、例えば曲線ができるだけ良好に近似されるような3次の補整多項式の係数a及びbを求める。
【0049】
以下、本発明について、更なる利点及び特徴をも考慮しつつ、模範的な実施形態に基づき、添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
図1】本発明に係るセンサ。
図2】2つのセンサ素子の各々の2つの磁場成分の各々の特性曲線を示す図。
図3】重み付け係数を示す表。
図4】重み付け係数和を示す表。
図5】重み付け係数和を示す表。
図6】重み付け係数和を示す表。
図7】重み付け係数和を示す表。
図8】算出された商を評価するための表。
図9】磁極性を求めるための表。
図10】極性を特定するための表。
図11】位置信号を補正するための表。
図12】2つのセンサ素子の各々の個別位置信号。
図13】生成された単調な位置信号。
【発明を実施するための形態】
【0051】
以下の各図では同一の部分に同一の符号が付されている。
【0052】
図1に本発明に係るセンサを示す。このセンサ1は、少なくとも2つのセンサ素子4.1及び4.2を用いて測定区間3に沿った発信磁石2の直線的な相対運動を非接触で磁気的に検出するためのセンサである。各センサ素子4は発信磁石の磁場5の互いに垂直な2つの成分6、7を検出する。各センサ素子4及びセンサ1は測定区間3よりも短い。第1の成分6は軸方向成分Bxであり、第2の成分7は半径方向成分Byである。評価ユニット9が設けられ、各センサ素子4.1、4.2の軸方向成分Bxと各センサ素子4.1、4.2の半径方向成分Byが評価ユニット9において数学的な関数によって評価可能である。該数学的な関数はARCTAN(半径方向成分/軸方向成分)又はARCTAN(軸方向成分/半径方向成分)であり、これにより、測定区間3に沿った発信磁石2の位置13毎に或る値域の1つの値を持つ、部分毎に単調な位置信号がそれぞれ生成される。また評価ユニット9は、測定区間3の少なくとも1つの領域における各々の位置信号を一定の補正値で補正することで、測定区間3全体にわたって単調な値域を有する、各時点で単調な位置信号を生成するように構成されている。
【0053】
各センサ素子4は発信磁石2の磁場5の互いに垂直な2つの成分を検出する。これらの成分はシリンダ28の全長乃至は測定区間3全体にわたって検出される。従って、センサ素子4及びセンサ1は測定区間よりも短くてもよい。また、センサ1を測定区間3に沿った任意の箇所に配置することができる。
【0054】
軸方向成分Bxと半径方向成分Byは測定区間3に沿って2つの異なる信号推移を示す。それらを組み合わせることで発信磁石2の正確な位置13に関する一義的な情報が得られる。
【0055】
図1に示したセンサ素子4はTMR技術に基づく角度センサであるが、これは任意である。
【0056】
図1を見ると、各センサ素子4はそれぞれ少なくとも1つのアナログ出力24を備える集積部品であり、評価ユニット9は、統合されたアナログデジタル変換器を含むマイクロコントローラであり、これにより、軸方向成分及び半径方向成分に対応する値を有するアナログ出力24に現れる少なくとも1つのアナログ信号を評価ユニット9においてデジタル的に処理することが可能である。
【0057】
図2は2つのセンサ素子の各々の2つの磁場成分の各々の特性曲線を示している。
【0058】
図2を見ると、評価ユニット9は測定区間を少なくとも4つの領域Cに分割するように構成され、該領域Cの境界がそれぞれ、ARCTANの値域の不連続点、及び、逆正接関数が最大の勾配を示す位置にある。これらの領域は符号C乃至はC1〜C7で示されており、7つの領域Cが描かれている。
【0059】
図2では、軸方向に磁化された正極性の磁石の2つのセンサ素子それぞれの2つの磁場成分の特性曲線が描かれており、軸方向成分がメインローブを有している。磁石が180度回転された場合、つまり負極性を示す場合は、x軸上で軸方向成分Bxが、またy軸上で半径方向成分Byが鏡像反転される。ARCTAN(By/Bx)の曲線は極性に依存しない。直径方向に磁化された磁石の場合、磁場成分Bx及びByが入れ替わるが、その他の点では曲線の推移は同じである。
【0060】
図3は重み付け係数Gの表を示している。図3を見ると、各センサ素子の軸方向成分Bxの値Xと半径方向成分Byの値Yがそれぞれ異なる重み付け係数Gで重み付けされており、特に、重み付け係数Gが2の累乗に相当している。
【0061】
磁化方向及び極性という磁場パラメータを検出するため、最初の手順として、図示した重み付け係数2、2、2、2を用いて重み付け係数和を各時点で算出する。
【0062】
図4〜7はそれぞれ重み付け係数和GSを示す表である。
【0063】
図4は軸方向に磁化された正極性の磁石の場合の表を示している。
【0064】
図5は軸方向に磁化された負極性の磁石の場合の表を示している。
【0065】
図6は直径方向に磁化された正極性の磁石の場合の表を示している。
【0066】
図7は直径方向に磁化された負極性の磁石の場合の表を示している。
【0067】
図4〜7のように、評価ユニット9は、軸方向成分Bxの値Xの重み付け係数Gと半径方向成分Byの値Yの重み付け係数とを領域C毎に加算することで重み付け係数和GSを算出するように構成されている。
【0068】
4つの可能な磁場構成に対し、7つの領域C1〜C7において、図のように重み付け和GSが得られる。
【0069】
重み付け係数和を通じて一義的な割り当てができるようにするため、更に別の基準として両方の磁気センサの磁場勾配が評価される。
【0070】
図8は算出された商Qを評価するための表を示している。
【0071】
評価ユニット9は、|Bxn−Bxn-1|+|Byn−Byn-1|という式により、つまり各磁場成分の2つの相前後する値の絶対差の和により、磁場勾配の比を算出するように構成されている。
【0072】
センサの磁場勾配は、|Bxn−Bxn-1|+|Byn−Byn-1|という式、つまり各磁場成分の2つの相前後する値の絶対差の和に相当する。この磁場勾配の特定は、立体的な割り当てがないため、磁石の移動速度と磁場の向きに依存する。これら2つの影響因子を除去するため、センサ素子1及びセンサ素子2の両方の勾配値の比を算出する。その際、大きい方の値が分子として、小さい方の値が分母として常に用いられる。従って商Qは最小値として1をとることができる。ただし、その商Qは、2つの勾配値の少なくとも一方がノイズの上限よりはるかに高い所定の最小値を超えている場合にのみ算出される。この商Qは更に分類され、解釈される。
【0073】
図9は極性乃至は磁極性Pを求めるための表を示している。
【0074】
評価ユニット9は、第1のセンサの第1の磁場勾配と第2のセンサの第2の磁場勾配の商Qを算出するように構成され、商Qは勾配の等級を作るために等級分け可能である。
【0075】
これは2つのケースに分けられる。
【0076】
ケース1では磁化が軸方向に向いているものと仮定される。シリンダの90%超で軸方向に磁化された磁石が使用されているため、単純化した場合には磁化が軸方向であると仮定することができる。この場合、磁石の極性Pは、静止状態であっても、図2の領域C1、C3、C4、C5及びC7における重み付け和GSから直接特定することができる。図2の領域C2及びC6における極性Pを特定するには更に勾配の等級SKも考慮する必要がある。つまり、磁石が動く必要がある。
【0077】
図10は極性Pを特定するための表を示している。
【0078】
評価ユニット9は、図9及び図10に示したように、少なくとも重み付け係数和GSと勾配の等級SKから極性Pを特定するように構成されている。
【0079】
磁化Mが既知であると仮定しない場合、磁石が動けば、図2の領域C2、C4及びC6における磁石の構成を特定することができる。
【0080】
図11は位置信号を補正するための表を示している。ここでは補正値は0、−π及び/又は+πである。
【0081】
評価ユニット9は、特定された極性P、ARCTANの計算結果、及び半径方向成分BYの符号に基づいて、測定区間3の少なくとも1つの領域Cにおいて図12の位置信号を一定の補正値21で補正することで、測定区間3全体にわたって単調な値域を有する単調な位置信号を生成するように構成されている。
【0082】
磁化方向と磁極性が分かれば、どのセンサ素子についても以下のようにARCTAN(By/Bx)の結果を補正することができる。
【0083】
図12は2つのセンサ素子の各々の個別位置信号を示している。
【0084】
評価ユニット9は、補正された位置信号を3次の多項式で近似するように構成されている。
【0085】
直径方向に磁化された磁石の場合は、各々の評価の前に予めBxとByを入れ替えなければならない。
【0086】
もっとも、得られる出力信号はまださほど良好に線形化されてはいない。その出力曲線は3次の多項式フィッティングにより良好に近似できる。その係数は曲線の湾曲を表す。係数は以下のように求められる。
【0087】
図12に示したように、まずセンサ素子1に対して3つの重要な点を定める。
制御点1(KP1):x値=pitch
制御点2(KP2):x値=0
基準係数点(NF):x値=pitch/2
ここで、「pitch」という値はセンサ素子4.1及び4.2の中心点の間隔に等しい。
【0088】
基準係数点NFは2つのセンサ素子4.1及び4.2が逆符号で同じ大きさの結果を出力しているときの到達点である。制御点は一方のセンサ素子がゼロ交差の状態にあるときの到達点である。
【0089】
線形性を最適化するために、曲線ができるだけ良好に近似されるような3次の補整多項式の係数a及びbを求める。そのために、まず基準係数点NFの値で制御点KPを割る。この正規化された制御点nKPを式ax+bxのx値として代入する。
nKP=KP/NF
【0090】
そして、a及びbの値掃引を行う。このとき、a+b=1という条件が常に満たされていなければならない。
Y=a/64*nKP+b/64*nKP; a=1〜63、b=63〜1
【0091】
この値掃引の結果にpitch/2を乗じた後、pitchから減算する。
Delta=|pitch−Y*pitch/2|
【0092】
この絶対差が最小となるような係数ペア(a,b)が多項式フィッティングのための最適な係数ペアである。
【0093】
このフィッティングは制御点の正規化とa+b=1という条件付けを通じて機能する。こうして、曲線ができる限り制御点KPも基準係数点NFも通ることが確実になる。
【0094】
図13は2つのセンサ素子の個別位置信号と補正された位置信号10をそれぞれ示している。評価ユニットにより、位置信号10が測定区間3の少なくとも1つの領域において一定の補正値で補正された結果、測定区間3全体にわたって単調な値域を有する単調な位置信号10が生成されている。
【符号の説明】
【0095】
1…センサ
2…発信磁石
3…測定区間
4、4.1、4.2…センサ素子
5…磁場
6…第1の成分
Bx、Bx1、Bx2…軸方向成分
7…第2の成分
By、By1、By2…半径方向成分
9…評価ユニット
10…位置信号
13…位置
C、C1、C2、C3、C4、C5、C6…領域
21…一定の補正値
24…アナログ出力
26…真理表
28…シリンダ
29…不連続点
X、X1、X2…軸方向成分の値
Y、Y1、Y2…半径方向成分の値
G…重み付け係数
GS…重み付け係数和
MS…磁場勾配
SK…勾配の等級
P…極性
K…補正値
Q…商
M…磁化
KP…制御点
KP1…制御点1
KP2…制御点2
NF…基準係数点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13