【実施例】
【0018】
本発明の実施例として以下の化学式19(P1ポリマー)、化学式20(P2ポリマー)、化学式21(P3ポリマー)を参照する。
(P1ポリマー)
【化19】
(P2ポリマー)
【化20】
(P3ポリマー)
【化21】
【0019】
P1ポリマー、P2ポリマー、及びP3ポリマーは未スルホン化カチオン伝導性ポリマーであり、式中、nは2以上の整数である。
本実施例においては、化学式22で表されるジフルオロモノマー
【化22】
と、化学式23、24、25で表される異なるジオールモノマー
【化23】
【化24】
【化25】
とが求核性重縮合反応を経た後に、P1ポリマー、P2ポリマー、及びP3ポリマーがそれぞれ獲得される。
【0020】
P2ポリマーを例とする以下の表1を参照する。P2ポリマーは分子量に基づいて高分子量ポリマーP2−H、中分子量ポリマーP2−M、及び低分子量ポリマーP2−Lに分けられる。以下の表1は、分子量がそれぞれ異なるP2ポリマーの量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分子量分散度(polymer dispersity index、PDI、Mw/Mn)を表示する。
【0021】
【表1】
【0022】
P1、P2、及びP3ポリマー(化学式19、20、21)がスルホン化された後に、以下の化学式26、27、28に示すSP1、SP2、及びSP3ポリマーがそれぞれ獲得される。
【0023】
(SP1ポリマー)
【化26】
(SP2ポリマー)
【化27】
(SP3ポリマー)
【化28】
【0024】
nは2以上の整数であり、Rは水素(H)またはスルホン酸基(−SO
3H)である。好ましくは、SP1、SP2、及びSP3ポリマー中の各重複する単位は2
から4つのスルホン酸基を有する。
【0025】
図1はSP2ポリマーを例とする。
ジフルオロモノマーa及びジオールモノマーbが求核性重縮合反応を経るとP2ポリマーが生成される。
P2ポリマーがジクロロメタン(dichloromethane)に溶解され、且つ窒素環境下でクロロスルホン酸(chlorosulfonic acid)が滴下されてスルホン化され、反応が完成した後に生成物が水中に入れられて、濾過されると共に中性になるように洗浄される。
最後に、生成物が真空乾燥されるとSP2ポリマーが獲得される。表2はSP1、SP2、及びSP3ポリマーの試験データを表示する。
【0026】
【表2】
【0027】
酸化安定性は、薄膜サンプルが80℃のフェントン試薬(Fenton' reagent, 2ppm FeSO
4 in 3% H
2O
2 solution)中に1時間浸され、処理前後のサンプルの重量の差異に基づいてサンプルの残余重量が計算される。
寸法安定性は、サンプル薄膜が80・Cの水中に24時間浸された後、処理前後の薄膜の寸法の差異(長さ、幅、及び厚さ)に基づいて計算された。
プロトン伝導性は、高温高湿度の環境(80℃、95%の相対湿度)で伝導性試験を行い、試験結果からは、SP1、SP2、及びSP3ポリマーが良好な酸化安定性、寸法安定性、及びプロトン伝導性を有することが分かった。
表3は分子量が異なるSP2−H、SP2−M、及びSP2−Lポリマーとデュポン社のナフィオンNafion 211(DuPont(登録商標)、Nafion(登録商標)、PFSA NR-211)との性質を比較した表である。
【0028】
【表3】
【0029】
熱分解温度(Td5%)はサンプルの重量が5%失われた際の温度である。SP2ポリマーのTd5%は252℃から266℃の間の範囲であり、良好な熱安定性を有する。
酸化安定性試験は、薄膜サンプルが80℃のフェントン試薬(Fenton' reagent, 2ppm FeSO
4 in 3% H
2O
2 solution)中に1時間浸され、処理前後のサンプルの重量の差異に基づいてサンプルの残余重量が計算される。SP2ポリマーは酸化処理を経た後にも90%以上の残余重量を保留しており、良好な酸化安定性を有する。
寸法安定性及び吸水率試験は、薄膜サンプルが80℃の水中に24時間浸され、浸漬前後の薄膜の長さ及び厚さの差異に基づいてその変化率が計算され、且つ浸漬前後の薄膜の重量の差異に基づいてその吸水率が計算される。SP2ポリマーの吸水率は84%から146%の間の範囲であり、Nafion(登録商標)より明らかに高いが、但し、寸法変化率は吸水率に連れて明確に高まることはなかった。よって、Nafion(登録商標) 211と比較すると、SP2ポリマーは高温の水中では膨潤現象が減少する。
イオン交換容量は、酸塩基滴定法による試験を行い、サンプルのスルホン化程度を判断させる。
プロトン伝導性はスルホン化程度の進行に連れて向上し、試験結果に基づくと、SP2ポリマーのイオン交換容量及びプロトン伝導性は共にNafion(登録商標) 211より高く、予期した通りの結果となる。
【0030】
上述の試験結果によると、本発明に係る前記カチオン伝導性ポリマーは良好な熱安定性、酸化安定性、寸法安定性、イオン交換容量、及びプロトン伝導性を有する。よって、塗布形成される薄膜をイオン交換膜として燃料電池システムに応用可能である。
【0031】
本発明に係る前記カチオン伝導性ポリマー構造のトリフルオロメチル基(CF
3)が芳香環を活性化させるため、トリフルオロメチル基を有する芳香環はスルホン化されずに疎水性末端となり、スルホン化される他の芳香環は親水性末端となり、構造の親疎水性末端により、前記カチオン伝導性ポリマーが好ましいミクロ相分離形態を形成する。
また、多重フェニル構造及びトリフルオロメチル基によりポリマーの溶解度が向上し、長鎖構造を有する高分子量ポリマーの形成に有利になり、前記カチオン伝導性ポリマーが高い分子鎖凝集により良好な物理的架橋結合を形成するため、塗布形成される薄膜が膨潤しにくくなり、且つ高い自由体積を有する。
よって、本発明に係る前記カチオン伝導性ポリマーは良好な機械的性質及び寸法安定性を有する。
【0032】
上述の実施形態は本発明の技術思想及び特徴を説明するためのものにすぎず、当該技術分野を熟知する者に本発明の内容を理解させると共にこれをもって実施させることを目的とし、本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。従って、本発明の精神を逸脱せずに行う各種の同様の効果をもつ改良又は変更は、請求項に含まれるものとする。