特許第6705880号(P6705880)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705880
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】異常検出装置及び異常検出方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20200525BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20200525BHJP
【FI】
   G05B23/02 302Z
   G05B23/02 T
   G01M99/00 Z
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-211970(P2018-211970)
(22)【出願日】2018年11月12日
(65)【公開番号】特開2020-79975(P2020-79975A)
(43)【公開日】2020年5月28日
【審査請求日】2019年5月24日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】野添 進
【審査官】 大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−331507(JP,A)
【文献】 特開平6−4789(JP,A)
【文献】 特開平6−137164(JP,A)
【文献】 特開2016−18526(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0282626(US,A1)
【文献】 特開2013−8092(JP,A)
【文献】 特開2006−39786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象機器の異常を検出する異常検出装置であって、
前記対象機器の駆動側軸受の駆動側軸受温度を取得する第1取得部と、
前記対象機器の反駆動側軸受の反駆動側軸受温度を取得する第2取得部と、
前記対象機器の正常時における前記駆動側軸受温度及び前記反駆動側軸受温度に基づく前記駆動側軸受温度及び前記反駆動側軸受温度の相関を記憶する相関記憶部と、
前記第1取得部により取得した前記駆動側軸受温度及び前記第2取得部により取得した前記反駆動側軸受温度に基づいて前記相関記憶部に記憶されている前記相関からの逸脱を検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記相関からの逸脱を前記対象機器の異常予兆として出力する出力部と、
を備えることを特徴とする異常検出装置。
【請求項2】
前記対象機器の正常時における2つ以上の前記駆動側軸受温度及び2つ以上の前記反駆動側軸受温度を取得する第3取得部と、
前記第3取得部により取得した2つ以上の前記駆動側軸受温度及び2つ以上の前記反駆動側軸受温度に基づいて前記相関を求める演算部と、を更に備え、
前記相関記憶部は、前記演算部により求めた前記相関を記憶することを特徴とする請求項1記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記駆動側軸受温度の単回帰分析による前記反駆動側軸受温度の反駆動側回帰値及び前記反駆動側軸受温度の単回帰分析による前記駆動側軸受温度の駆動側回帰値の少なくとも一方を求め、
前記相関記憶部は、前記演算部により求めた前記反駆動側回帰値及び前記駆動側回帰値の少なくとも一方を記憶し、
前記検出部は、前記相関記憶部に記憶されている前記反駆動側回帰値と前記第2取得部により取得した前記反駆動側軸受温度である反駆動側実測値との比較結果に基づく前記相関からの逸脱、及び前記相関記憶部に記憶されている前記駆動側回帰値と前記第1取得部により取得した前記駆動側軸受温度である駆動側実測値との比較結果に基づく前記相関からの逸脱の少なくとも一方を検出することを特徴とする請求項2記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記駆動側軸受の駆動側振動値を取得する第4取得部と、
前記反駆動側軸受の反駆動側振動値を取得する第5取得部と、を更に備え、
前記検出部は、前記相関からの逸脱を検出した際、前記第4取得部により取得した前記駆動側振動値及び前記第5取得部により取得した前記反駆動側振動値の少なくとも一方に基づいて、前記相関からの逸脱が異常予兆に相当するか否かを判断することを特徴とする請求項2または請求項3記載の異常検出装置。
【請求項5】
前記第4取得部により取得した前記駆動側振動値及び前記第5取得部により取得した前記反駆動側振動値が所定値以上下降した場合には前記対象機器が運転停止したと判断し、前記対象機器の運転停止中において所定値以上上昇した場合には前記対象機器が運転再開したと判断する判断部を更に備え、
前記演算部は、前記判断部において前記対象機器が運転停止したと判断されてから運転再開したと判断されるまでの間に取得した前記駆動側軸受温度及び前記反駆動側軸受温度を、正常時における前記駆動側軸受温度及び前記反駆動側軸受温度から除外することを特徴とする請求項4記載の異常検出装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記判断部において前記対象機器が運転再開したと判断されてから所定期間の間に取得した前記駆動側軸受温度及び前記反駆動側軸受温度を、正常時における前記駆動側軸受温度及び前記反駆動側軸受温度から除外することを特徴とする請求項5記載の異常検出装置。
【請求項7】
前記判断部は、前記第1取得部により取得した前記駆動側軸受温度及び前記第2取得部により取得した前記反駆動側軸受温度に基づいて、前記対象機器の運転停止及び運転再開の少なくとも一方を判断することを特徴とする請求項5または請求項6記載の異常検出装置。
【請求項8】
対象機器の異常を検出する異常検出装置により、前記対象機器の異常を検出する異常検出方法であって、
前記異常検出装置が前記対象機器の駆動側軸受の駆動側軸受温度を取得する第1取得工程と、
前記異常検出装置が前記対象機器の反駆動側軸受の反駆動側軸受温度を取得する第2取得工程と、
前記異常検出装置が前記第1取得工程において取得した前記駆動側軸受温度及び前記第2取得工程において取得した前記反駆動側軸受温度に基づいて、前記対象機器の正常時における前記駆動側軸受温度及び前記反駆動側軸受温度に基づく前記駆動側軸受温度及び前記反駆動側軸受温度の相関からの逸脱を検出する検出工程と、
前記異常検出装置が前記相関からの逸脱を前記対象機器の異常予兆として出力する出力工程と、
を含むことを特徴とする異常検出方法。
【請求項9】
前記対象機器の正常時における2つ以上の前記駆動側軸受温度及び2つ以上の前記反駆動側軸受温度を取得する第3取得工程と、
前記第3取得工程において取得した2つ以上の前記駆動側軸受温度及び2つ以上の前記反駆動側軸受温度に基づいて、前記相関を求める演算工程と、
前記演算工程において求めた前記相関を記憶する相関記憶工程と、
を更に含むことを特徴とする請求項8記載の異常検出方法。
【請求項10】
前記演算工程は、前記駆動側軸受温度の単回帰分析による前記反駆動側軸受温度の反駆動側回帰値及び前記反駆動側軸受温度の単回帰分析による前記駆動側軸受温度の駆動側回帰値の少なくとも一方を求め、
前記検出工程は、前記反駆動側回帰値と前記反駆動側軸受温度である反駆動側実測値との比較結果に基づく前記相関からの逸脱、及び前記駆動側回帰値と前記駆動側軸受温度である駆動側実測値との比較結果に基づく前記相関からの逸脱の少なくとも一方を検出することを特徴とする請求項9記載の異常検出方法。
【請求項11】
前記駆動側軸受の駆動側振動値を取得する第4取得工程と、
前記反駆動側軸受の反駆動側振動値を取得する第5取得工程と、を更に含み、
前記検出工程は、前記相関からの逸脱を検出した際、前記駆動側振動値及び前記反駆動側振動値の少なくとも一方に基づいて、前記相関からの逸脱が異常予兆に相当するか否かを判断することを特徴とする請求項9または請求項10記載の異常検出方法。
【請求項12】
前記駆動側振動値及び前記反駆動側振動値が所定値以上下降した場合には前記対象機器が運転停止したと判断し、前記対象機器の運転停止中において前記所定値以上上昇した場合には前記対象機器が運転再開したと判断する判断工程を更に含み、
前記演算工程は、前記判断工程において前記対象機器が運転停止したと判断されてから運転再開したと判断されるまでの間に取得した前記駆動側軸受温度及び前記反駆動側軸受温度を、正常時における前記駆動側軸受温度及び前記反駆動側軸受温度から除外することを特徴とする請求項11記載の異常検出方法。
【請求項13】
前記演算工程は、前記判断工程において前記対象機器が運転再開したと判断されてから所定期間の間に取得した前記駆動側軸受温度及び前記反駆動側軸受温度を、正常時における前記駆動側軸受温度及び前記反駆動側軸受温度から除外することを特徴とする請求項12記載の異常検出方法。
【請求項14】
前記判断工程は、前記駆動側軸受温度及び前記反駆動側軸受温度に基づいて、前記対象機器の運転停止及び運転再開の少なくとも一方を判断することを特徴とする請求項12または請求項13記載の異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベアリング等の対象機器の異常を検出する異常検出装置及び該異常検出装置を用いて対象機器の異常を検出する異常検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モーターやベアリング等の対象機器の状態を定期的に測定し、対象機器の異常現象を診断する方法が存在する(例えば特許文献1)。特許文献1記載の異常現象の原因診断方法においては、対象機器が回転機器である場合、対象機器の状態変数として振動等を定期的に測定し、この状態変数及び劣化状態を示す原因変数に基づいて対象機器の異常現象を診断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−159289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、遠隔地(工場等)にある膨大な数の対象機器の異常を検出するために、対象機器にそれぞれ加速度センサーを取り付け、すべての対象機器の加速度(振動値)を定期的に測定している。ここで、対象機器の異常を早期に発見するためには、加速度センサーのトレンドデータを常時監視し、振動値が徐々に増大する様子を捉えることが望ましいが、膨大な数の対象機器を管理する方法としては適切でない。したがって、膨大な数の対象機器を管理する方法として、予め閾値を設定し、閾値を超えた対象機器について作業員が点検する等の管理方法を採用している。
【0005】
しかしながら、振動値は、周囲温度・プロセス負荷の変化(例えば回転機器の回転数変更)等により大きく変動するため、閾値を厳しく設定すると誤報が増大する。一方、閾値を緩く設定すると、警報を受けた段階における対象機器の損傷度合は酷く、手遅れの場合が多い。即ち、多数の加速度センサーを用いて多数の対象機器を監視する際に、対象機器の異常を早期に検出することは困難であった。
【0006】
本発明の目的は、多数の対象機器を管理する場合であっても個々の対象機器の異常を早期に検出可能な異常検出装置及び異常検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の異常検出装置は、対象機器の異常を検出する異常検出装置であって、前記対象機器の駆動側温度を取得する第1取得部と、前記対象機器の反駆動側温度を取得する第2取得部と、前記対象機器の正常時における前記駆動側温度及び前記反駆動側温度に基づく前記駆動側温度及び前記反駆動側温度の相関を記憶する相関記憶部と、前記第1取得部により取得した前記駆動側温度及び前記第2取得部により取得した前記反駆動側温度に基づいて前記相関記憶部に記憶されている前記相関からの逸脱を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記相関からの逸脱を前記対象機器の異常または異常予兆として出力する出力部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の異常検出装置は、前記対象機器の正常時における2つ以上の前記駆動側温度及び2つ以上の前記反駆動側温度を取得する第3取得部と、前記第3取得部により取得した2つ以上の前記駆動側温度及び2つ以上の前記反駆動側温度に基づいて前記相関を求める演算部と、を更に備え、前記相関記憶部は、前記演算部により求めた前記相関を記憶することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の異常検出装置は、前記演算部が前記駆動側温度の単回帰分析による前記反駆動側温度の反駆動側回帰値及び前記反駆動側温度の単回帰分析による前記駆動側温度の駆動側回帰値の少なくとも一方を求め、前記相関記憶部は、前記演算部により求めた前記反駆動側回帰値及び前記駆動側回帰値の少なくとも一方を記憶し、前記検出部は、前記相関記憶部に記憶されている前記反駆動側回帰値と前記第2取得部により取得した前記反駆動側温度である反駆動側実測値との比較結果に基づく前記相関からの逸脱、及び前記相関記憶部に記憶されている前記駆動側回帰値と前記第1取得部により取得した前記駆動側温度である駆動側実測値との比較結果に基づく前記相関からの逸脱の少なくとも一方を検出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の異常検出装置は、前記対象機器の駆動側振動値を取得する第4取得部と、前記対象機器の反駆動側振動値を取得する第5取得部と、を更に備え、前記検出部は、前記第4取得部により取得した前記駆動側振動値及び前記第5取得部により取得した前記反駆動側振動値の少なくとも一方に基づいて、前記相関からの逸脱を検出することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の異常検出装置は、前記第4取得部により取得した前記駆動側振動値及び前記第5取得部により取得した前記反駆動側振動値が所定値以上下降した場合には前記対象機器が運転停止したと判断し、前記対象機器の運転停止中において所定値以上上昇した場合には前記対象機器が運転再開したと判断する判断部を更に備え、前記演算部は、前記判断部において前記対象機器が運転停止したと判断されてから運転再開したと判断されるまでの間に取得した前記駆動側温度及び前記反駆動側温度を、正常時における前記駆動側温度及び前記反駆動側温度から除外することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の異常検出装置は、前記演算部が前記判断部において前記対象機器が運転再開したと判断されてから所定期間の間に取得した前記駆動側温度及び前記反駆動側温度を、正常時における前記駆動側温度及び前記反駆動側温度から除外することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の異常検出装置は、前記判断部が前記第1取得部により取得した前記駆動側温度及び前記第2取得部により取得した前記反駆動側温度に基づいて、前記対象機器の運転停止及び運転再開の少なくとも一方を判断することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の異常検出方法は、対象機器の異常を検出する異常検出装置により、前記対象機器の異常を検出する異常検出方法であって、前記異常検出装置が前記対象機器の駆動側温度を取得する第1取得工程と、前記異常検出装置が前記対象機器の反駆動側温度を取得する第2取得工程と、前記異常検出装置が前記第1取得工程において取得した前記駆動側温度及び前記第2取得工程において取得した前記反駆動側温度に基づいて、前記対象機器の正常時における前記駆動側温度及び前記反駆動側温度に基づく前記駆動側温度及び前記反駆動側温度の相関からの逸脱を検出する検出工程と、前記異常検出装置が前記相関からの逸脱を前記対象機器の異常または異常予兆として出力する出力工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の異常検出方法は、前記対象機器の正常時における2つ以上の前記駆動側温度及び2つ以上の前記反駆動側温度を取得する第3取得工程と、前記第3取得工程において取得した2つ以上の前記駆動側温度及び2つ以上の前記反駆動側温度に基づいて、前記相関を求める演算工程と、前記演算工程において求めた前記相関を記憶する相関記憶工程と、を更に含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の異常検出方法は、前記演算工程が前記駆動側温度の単回帰分析による前記反駆動側温度の反駆動側回帰値及び前記反駆動側温度の単回帰分析による前記駆動側温度の駆動側回帰値の少なくとも一方を求め、前記検出工程は、前記反駆動側回帰値と前記反駆動側温度である反駆動側実測値との比較結果に基づく前記相関からの逸脱、及び前記駆動側回帰値と前記駆動側温度である駆動側実測値との比較結果に基づく前記相関からの逸脱の少なくとも一方を検出することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の異常検出方法は、前記対象機器の駆動側振動値を取得する第4取得工程と、前記対象機器の反駆動側振動値を取得する第5取得工程と、を更に含み、前記検出工程は、前記駆動側振動値及び前記反駆動側振動値の少なくとも一方に基づいて、前記相関からの逸脱を検出することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の異常検出方法は、前記駆動側振動値及び前記反駆動側振動値が所定値以上下降した場合には前記対象機器が運転停止したと判断し、前記対象機器の運転停止中において前記所定値以上上昇した場合には前記対象機器が運転再開したと判断する判断工程を更に含み、前記演算工程は、前記判断工程において前記対象機器が運転停止したと判断されてから運転再開したと判断されるまでの間に取得した前記駆動側温度及び前記反駆動側温度を、正常時における前記駆動側温度及び前記反駆動側温度から除外することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の異常検出方法は、前記演算工程が前記判断工程において前記対象機器が運転再開したと判断されてから所定期間の間に取得した前記駆動側温度及び前記反駆動側温度を、正常時における前記駆動側温度及び前記反駆動側温度から除外することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の異常検出方法は、前記判断工程が前記駆動側温度及び前記反駆動側温度に基づいて、前記対象機器の運転停止及び運転再開の少なくとも一方を判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、多数の対象機器を管理する場合であっても個々の対象機器の異常を早期に検出可能な異常検出装置及び異常検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態に係る異常検出システムの構成を示すブロック図である。
図2】実施の形態に係る無線子機の取付位置の例を示す図である。
図3】実施の形態に係る無線子機の構成を示すブロック図である。
図4】実施の形態に係る無線親機の構成を示すブロック図である。
図5】実施の形態に係るデータサーバーの構成を示すブロック図である。
図6】実施の形態に係る異常検出装置の構成を示すブロック図である。
図7】実施の形態に係る対象機器の振動値トレンドの例を示すグラフである。
図8】実施の形態に係る駆動側温度と反駆動側温度との相関の例を示すグラフである。
図9】実施の形態に係る駆動側温度と反駆動側温度との関係の例を示すグラフである。
図10】実施の形態に係る駆動側温度と反駆動側温度との関係の例を示すグラフである。
図11】実施の形態に係る監視端末の構成を示すブロック図である。
図12】実施の形態に係る異常検出装置が対象機器の異常を検出する処理について説明するためのフローチャートである。
図13】実施の形態に係る異常検出装置が対象機器の駆動側温度と反駆動側温度との相関を演算する処理について説明するためのフローチャートである。
図14】実施の形態に係る対象機器の回帰値と実測値との差分トレンドの例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る異常検出システムについて説明する。図1は、この実施の形態に係る異常検出システムの構成について説明するためのブロック図である。この実施の形態に係る異常検出システム2は、モーターやファン等の対象機器の異常を検出するためのシステムであって、図1に示すように、複数の無線子機4a〜4d、無線親機6、データサーバー7、異常検出装置10及び監視端末12を備えている。ここで、無線子機4a〜4dは、無線親機6が管轄する通信エリア内に配置される。また、無線親機6及びデータサーバー7は、ネットワーク78により互いに接続されている。
【0024】
なお、図1においては、説明の便宜上、4台の無線子機4a〜4dが無線親機6に無線により接続される場合を例として図示しているが、例えば数百台以上の多数の無線子機が無線親機6に無線により接続されている。また、図1においては、無線子機4a〜4dと無線親機6とを無線により直接接続する場合を例として図示しているが、無線子機4a〜4dと無線親機6とを中継機等を介して無線により接続してもよい。また、図1においては、1台の無線親機6が1台のデータサーバー7にネットワーク78により接続される場合を例として図示しているが、実際には2台以上の無線親機(管轄する通信エリアが異なる無線親機)6が1台のデータサーバー7にネットワーク78により接続されている。また、図1においては、1台の監視端末12を備えているが、2台以上の監視端末12を備える構成にしてもよい。
【0025】
無線子機4a〜4dは、対象機器の所定位置に取り付けられる。図2は、無線子機4a〜4dの取付位置の例を示す図である。図2に示すように、無線子機4aはモーター3の駆動側軸受に、無線子機4bはモーター3の反駆動側軸受に、無線子機4cはファン5のモーター側軸受に、無線子機4dはファン5のファン側軸受に取り付けられる。無線子機4aはモーター3の駆動側軸受の温度及び振動値を、無線子機4bはモーター3の反駆動側軸受の温度及び振動値を、無線子機4cはファン5のモーター側軸受の温度及び振動値を、無線子機4dはファン5のファン側軸受の温度及び振動値を測定する。対象機器は、例えば図2に示すようなモーター3やファン5であるが、温度センサーや加速度センサー等を用いて測定することにより動作状態を監視可能なその他の装置(例えばプラント等に設備される装置)であってもよい。
【0026】
図3は、無線子機4aの構成について説明するためのブロック図である。無線子機4aは、図3に示すように、センサー14、マイコン16、送受信部18及び電源制御部19を備えている。センサー14は、温度センサー20及び加速度センサー22を備えている。温度センサー20は対象機器(モーター3の駆動側軸受)の温度を測定し、加速度センサー22は対象機器(モーター3の駆動側軸受)の振動値を測定する。
【0027】
マイコン16は、無線子機4aの各部を統括的に制御し、図3に示すように、A/D変換部34、メモリ36、演算処理部38及びRTC部40を備えている。A/D変換部34は、温度センサー20及び加速度センサー22により測定された測定値をアナログ信号からデジタル信号に変換し、デジタル信号に変換された測定値をメモリ36に出力する。メモリ36には、演算処理部38により演算処理するための測定値及び演算処理部38において演算処理するための演算プログラム42が記憶されている。
【0028】
演算処理部38は、メモリ36に記憶される測定値及び演算プログラム42を読み込み、温度センサー20及び加速度センサー22からの測定値のサンプリング及び測定値に対しての演算処理を行う。演算処理部38は、演算処理として、例えば温度センサー20及び加速度センサー22からの測定値より平均値等の演算値を算出する。RTC部40は、時刻を計時するリアルタイムクロックである。送受信部18は、無線親機6から各種情報を受信し、演算処理部38により演算処理された演算値(温度及び振動値)を無線親機6に送信する。電源制御部19は、バッテリー(図示せず)を備え、無線子機4aへの電力供給を制御する。
【0029】
なお、無線子機4b〜4dの構成は、無線子機4aの構成と同一である。したがって、無線子機4b〜4dの構成であって無線子機4aの構成と同一の構成については、無線子機4aの説明で用いたのと同一の符号を用い、その説明を省略する。
【0030】
次に、無線親機6の構成について説明する。図4は、無線親機6の構成について説明するためのブロック図である。無線親機6は、所定の通信エリアを管轄し、図4に示すように、無線親機6の各部を統括的に制御する制御部44を備えている。制御部44には、管理部46、RF通信部48、通信部50及び時刻を計時する時計部52が接続されている。
【0031】
管理部46は、図4に示すように、無線子機管理テーブル54及びデータベース56を備え、これらを管理する。無線子機管理テーブル54には、無線子機4a〜4dそれぞれの識別番号等が記憶されている。データベース56には、RF通信部48を介して無線子機4a〜4cから取得した演算値(温度及び振動値)が一時的に記憶される。RF通信部48は、無線親機6と無線子機4a〜4dとの間の通信を制御する。
【0032】
RF通信部48は、管理部46により管理されている各種情報を無線子機4a〜4dに送信する。また、RF通信部48は、無線子機4a〜4dそれぞれから送信される演算値(温度及び振動値)を受信する。通信部50は、無線子機管理テーブル54に記憶されている各種情報をデータサーバー7に対して出力する。また、通信部50は、データベース56に記憶されている無線子機4a〜4dからの演算値(温度及び振動値)をデータサーバー7に出力する。
【0033】
次に、データサーバー7の構成について説明する。図5は、データサーバー7の構成を示すブロック図である。データサーバー7は、図5に示すように、データサーバー7の各部を統括的に制御するサーバー制御部57を備えている。サーバー制御部57には、無線親機管理テーブル59、無線子機管理テーブル61、温度・振動値記憶部81、通信部65及びデータ通信部66が接続されている。無線親機管理テーブル59は、無線親機6の識別番号、IPアドレス、名称、設置場所、通信グループID、無線通信チャネル等を記憶する。無線子機管理テーブル61は、無線子機4a〜4dそれぞれの識別番号等を記憶する。
【0034】
温度・振動値記憶部81は、無線親機6から過去に取得したモーター3の駆動側軸受温度(以下、駆動側温度という。)及び反駆動側軸受温度(以下、反駆動側温度という。)並びにファン5のモーター側軸受温度(以下、モーター側温度という。)及びファン側軸受温度(以下、ファン側温度という。)を時系列に記憶する。また、温度・振動値記憶部81は、無線親機6から過去に取得したモーター3の駆動側軸受振動値(以下、駆動側振動値という。)及び反駆動側軸受振動値(以下、反駆動側振動値という。)並びにファン5のモーター側軸受振動値(以下、モーター側振動値という。)及びファン側軸受振動値(以下、ファン側振動値という。)を時系列に記憶する。
【0035】
通信部65は、ネットワーク78に接続されており、ネットワーク78を介して無線親機6と通信する。通信部65は、例えば予め設定した周期毎に測定データ送信要求を無線親機6に送信し、無線親機6から無線子機4a〜4dの演算値(温度及び振動値)を受信する。データ通信部66は、異常検出装置10のデータ通信部68に接続されており、異常検出装置10と通信する。データ通信部66は、無線親機6から取得した無線子機4a〜4dの演算値(温度及び振動値)を異常検出装置10に送信する。
【0036】
次に、異常検出装置10の構成について説明する。異常検出装置10は、図1に示すように、データサーバー7及び監視端末12に無線または有線により接続されている。図6は、異常検出装置10の構成を示すブロック図である。異常検出装置10は、対象機器の異常を検出するための装置であって、図6に示すように、異常検出装置10の各部を統括的に制御する制御部58を備えている。制御部58には、相関記憶部80、警報データベース62及びデータ通信部68が接続されている。
【0037】
相関記憶部80は、対象機器の正常時におけるモーター3の駆動側温度及び反駆動側温度に基づくモーター3の駆動側温度及び反駆動側温度の相関(以下、モーター3の相関という。)、並びにファン5のモーター側温度及びファン側温度に基づくファン5のモーター側温度及びファン側温度の相関(以下、ファン5の相関という。)を記憶する。即ち、相関記憶部80は、演算部84により求めたモーター3の相関、並びにファン5の相関を記憶する。相関については後述する。
【0038】
警報データベース62は、検出部85により検出されたモーター3の相関からの逸脱をモーター3の異常または異常予兆に関する情報として、検出部85により検出されたファン5の相関からの逸脱をファン5の異常または異常予兆に関する情報として記憶する。
【0039】
データ通信部68は、データサーバー7のデータ通信部66及び監視端末12のデータ通信部72に接続されており、データサーバー7及び監視端末12と通信する。データ通信部68は、データサーバー7よりモーター3の温度及び振動値、並びにファン5の温度及び振動値に関する情報を受信する。また、データ通信部68は、監視端末12から無線子機管理テーブル61に関する情報及び対象機器の異常または異常予兆に関する情報取得要求を受信し、対象機器の異常または異常予兆に関する情報を監視端末12に送信する。
【0040】
制御部58は、温度取得部82、振動値取得部83、演算部84、検出部85、判断部86、及び出力部87を備えている。温度取得部82は、無線親機6の通信部50から出力されるモーター3の駆動側温度及び反駆動側温度並びにファン5のモーター側温度及びファン側温度(無線子機4a〜4dにより測定された温度)をデータ通信部68を介して取得する。振動値取得部83は、無線親機6の通信部50から出力されるモーター3の駆動側振動値及び反駆動側振動値並びにファン5のモーター側振動値及びファン側振動値(無線子機4a〜4dにより測定された振動値)をデータ通信部68を介して取得する。
【0041】
演算部84は、データサーバー7より取得した対象機器の正常時におけるモーター3の駆動側温度及び反駆動側温度に基づいて、モーター3の相関を求める。また、演算部84は、データサーバー7より取得した対象機器の正常時におけるファン5のモーター側温度及びファン側温度に基づいて、ファン5の相関を求める。
【0042】
以下、制御部58(温度取得部82、演算部84及び検出部85)の具体的な処理について、モーター3及びファン5が図7に示すような振動値トレンドを示した場合を例に挙げて説明する。図7に示す振動値トレンドでは、Aの時期において振動値が安定しており(モーター3は正常に稼動)、Bの時期開始から振動値が徐々に増え始め、Cの時期においても振動値が徐々に増え続け、Dの時点において振動値がモーター3の異常を示す閾値を超えたと判定され、Eの時点において振動値が最高値を示している(モーター3は故障)。
【0043】
温度取得部82は、データサーバー7の温度・振動値記憶部81に記憶されている対象機器の正常時(図7に示すAの時期)におけるモーター3の駆動側温度及び反駆動側温度、即ち図7に示すAの期間中に測定された2つ以上の駆動側温度及び反駆動側温度のデータを取得する。同様に、温度取得部82は、データサーバー7の温度・振動値記憶部81に記憶されている対象機器の正常時(図7に示すAの時期)におけるファン5のモーター側温度及びファン側温度、即ち図7に示すAの期間中に測定された2つ以上のモーター側温度及びファン側温度のデータを取得する。
【0044】
演算部84は、温度取得部82により取得した対象機器の正常時(図7に示すAの時期)におけるモーター3の駆動側温度及び反駆動側温度、即ち図7に示すAの期間中に測定された2つ以上の駆動側温度及び反駆動側温度のデータに基づいて、図8に示すような横軸をモーター3の反駆動側温度、縦軸をモーター3の駆動側温度とするグラフを作成することにより、モーター3の正常時において反駆動側温度と駆動側温度との間に単回帰の相関(図8に示す点線)があることを求める。演算部84により求めたモーター3の相関は、相関記憶部80に記憶される。
【0045】
なお、演算部84は、判断部86においてモーター3が運転停止したと判断されてから運転再開したと判断されるまでの間、及び判断部86においてモーター3が運転再開したと判断されてから所定期間の間に取得した駆動側温度及び反駆動側温度を、正常時における駆動側温度及び反駆動側温度から除外する。即ち、演算部84は、モーター3が運転停止してから運転再開後所定期間経過する前の間に測定されたすべての駆動側温度及び反駆動側温度のデータをモーター3の相関を求めるためのデータから除外する。
【0046】
同様に、演算部84は、横軸をファン5のファン側温度、縦軸をファン5のモーター側温度とするグラフを作成することにより、ファン5の正常時においてファン側温度とモーター側温度との間に単回帰の相関があることを求める。演算部84により求めたファン5の相関は、相関記憶部80に記憶される。また、演算部84は、判断部86においてファン5が運転停止したと判断されてから運転再開したと判断されるまでの間、及び判断部86においてファン5が運転再開したと判断されてから所定期間の間に取得したモーター側温度及びファン側温度を、正常時におけるモーター側温度及びファン側温度から除外する。即ち、演算部84は、ファン5が運転停止してから運転再開後所定期間経過する前の間に測定されたすべてのモーター側温度及びファン側温度のデータをファン5の相関を求めるためのデータから除外する。なお、判断部86による対象機器の運転停止及び運転再開の判断については後述する。
【0047】
検出部85は、温度取得部82により取得したモーター3の駆動側温度及び反駆動側温度に基づいて、演算部84により演算され相関記憶部80に記憶されているモーター3の相関からの逸脱を検出する。例えば、検出部85は、図7に示すBの時期におけるモーター3の駆動側温度及び反駆動側温度に基づいて、図9に示すような横軸をモーター3の反駆動側温度、縦軸をモーター3の駆動側温度とするグラフを作成し、相関記憶部80に記憶されているモーター3の相関(図9に示す点線)と比較する。図9に示すように、グラフは点線から大きく外れているため、検出部85は、図7に示すBの時期においてモーター3の相関から逸脱していると判断する。
【0048】
また例えば、検出部85は、図7に示すCの時期におけるモーター3の駆動側温度及び反駆動側温度に基づいて、図10に示すような横軸をモーター3の反駆動側温度、縦軸をモーター3の駆動側温度とするグラフを作成し、相関記憶部80に記憶されているモーター3の相関(図10に示す点線)と比較する。図10に示すように、グラフの一部は点線から大きく外れているため、検出部85は、図7に示すCの時期において、モーター3の相関から逸脱していると判断する。
【0049】
同様に、検出部85は、温度取得部82により取得したファン5のモーター側温度及びファン側温度に基づいて、演算部84により演算され相関記憶部80に記憶されているファン5の相関からの逸脱を検出する。
【0050】
また、検出部85は、モーター3の駆動側温度及び反駆動側温度に加えて、モーター3の駆動側振動値及び反駆動側振動値の少なくとも一方に基づいて、モーター3の相関からの逸脱を検出してもよい。例えば、検出部85は、モーター3の駆動側温度及び反駆動側温度に基づいてモーター3の相関から逸脱していると判断した際、モーター3の駆動側振動値及び反駆動側振動値を更に参照し、モーター3の駆動側振動値及び反駆動側振動値の少なくとも一方の増減に基づいて、モーター3の相関からの逸脱が異常または異常予兆に相当するか否かを判断する。
【0051】
同様に、検出部85は、振動値取得部83により取得したファン5のモーター側振動値及びファン側振動値の少なくとも一方に基づいて、ファン5の相関からの逸脱を検出する。即ち、検出部85は、ファン5のモーター側温度及びファン側温度、並びにファン5のモーター側振動値及びファン側振動値に基づいて、ファン5の相関からの逸脱を検出する。
【0052】
判断部86は、振動値取得部83により取得したモーター3の駆動側振動値及び反駆動側振動値が所定値以上下降した場合、モーター3が運転停止したと判断し、モーター3の運転停止中において振動値取得部83により取得したモーター3の駆動側振動値及び反駆動側振動値が所定値以上上昇した場合、モーター3が運転再開したと判断する。即ち、判断部86は、モーター3の駆動側振動値及び反駆動側振動値が略同時(同タイミング)に極度に下降した場合(振動値が略0となった場合)、これをモーター3の運転停止によるものであると判断する。また、判断部86は、モーター3が運転停止している間に、モーター3の駆動側振動値及び反駆動側振動値が略同時(同タイミング)に極度に上昇した場合(振動し始めた場合)、これをモーター3の運転再開によるものであると判断する。
【0053】
同様に、判断部86は、振動値取得部83により取得したファン5のモーター側振動値及びファン側振動値が所定値以上下降した場合、ファン5が運転停止したと判断し、運転停止後、振動値取得部83により取得したファン5のモーター側振動値及びファン側振動値が所定値以上上昇した場合、ファン5が運転再開したと判断する。なお上述したように、演算部84は、判断部86による判断結果を取得し、モーター3またはファン5が運転停止してから運転再開後所定期間経過するまでの間に取得した駆動側温度またはモーター側温度及び反駆動側温度またはファン側温度を、正常時における駆動側温度またはモーター側温度及び反駆動側温度またはファン側温度から除外する。
【0054】
出力部87は、データ通信部68を介して監視端末12から対象機器の異常または異常予兆に関する情報取得要求を受けた場合には、検出部85により検出され警報データベース62に記憶されている相関からの逸脱を対象機器の異常または異常予兆に関する情報としてデータ通信部68に出力する。
【0055】
次に、監視端末12の構成について説明する。監視端末12は、図1に示すように、異常検出装置10に無線または有線により接続されている。図11は、監視端末12の構成を示すブロック図である。監視端末12は、図11に示すように、監視端末12の各部を統括的に制御する監視端末制御部70を備えている。監視端末制御部70には、データ通信部72、入力部74及び表示部76が接続されている。
【0056】
データ通信部72は、異常検出装置10のデータ通信部68と通信する。データ通信部72は、無線子機管理テーブル61に関する情報、対象機器の温度及び振動値、並びに異常または異常予兆に関する情報取得要求を異常検出装置10に送信し、対象機器の温度及び振動値並びに異常または異常予兆に関する情報等を異常検出装置10から受信する。
【0057】
入力部74は例えばキーボードやマウス等の入力装置であり、表示部76は液晶パネル等の表示装置である。液晶パネルがタッチパネルにより構成される場合には、入力装置及び表示装置が一体に形成される。入力部74は、監視端末12のユーザーにより入力された入力結果を監視端末制御部70に対して出力する。
【0058】
表示部76は、データサーバー7の無線親機管理テーブル59に格納されている無線親機6の情報、データサーバー7の無線子機管理テーブル61に格納されている無線子機4a〜4dの情報、異常検出装置10の相関記憶部80に記憶されている相関に関する情報、データサーバー7の温度・振動値記憶部81に記憶されている温度・振動値に関する情報及び異常検出装置10の警報データベース62に格納されている異常または異常予兆に関する情報の表示を行う。具体的には、表示部76は、相関に基づくグラフ(例えば図8図10に示すグラフ)や表、温度・振動値に基づくグラフ(例えば図7に示すグラフ)や表及び異常または異常予兆に関する情報に基づく警報メッセージ等の表示を行う。
【0059】
次に、図面を参照して、この実施の形態に係る異常検出装置10により、対象機器の異常または異常予兆を検出するための異常検出方法について説明する。図12は、異常検出装置10の制御部58が対象機器(モーター3)の異常予兆を検出するために実行する処理について説明するためのフローチャートである。
【0060】
制御部58は、モーター3の駆動側温度及び反駆動側温度を取得する。具体的には、制御部58の温度取得部82は、無線子機4aの温度センサー20により計測され無線親機6を介して送信されたモーター3の駆動側温度を、データサーバー7よりデータ通信部68を介して取得する(ステップS1)。同様に、温度取得部82は、無線子機4bの温度センサー20により計測され無線親機6を介して送信されたモーター3の反駆動側温度を、データサーバー7よりデータ通信部68を介して取得する(ステップS2)。
【0061】
次に、制御部58は、ステップS1において取得した駆動側温度及びステップS2において取得した反駆動側温度に基づいて、モーター3の正常時における駆動側温度及び反駆動側温度に基づく駆動側温度及び反駆動側温度の相関からの逸脱を検出する。具体的には、制御部58の検出部85は、相関記憶部80の記憶されているモーター3の相関、例えば図8の点線で示す相関を読み込み(ステップS3)、例えば温度取得部82が図7に示すBの時期に駆動側温度及び反駆動側温度を取得した場合、図9に示すグラフを作成し、モーター3の相関と比較することによりモーター3の相関からの逸脱を検出する。
【0062】
検出部85によりモーター3の相関からの逸脱が検出されない場合には(ステップS4:No)、制御部58は、ステップS1の処理に戻り、ステップS1からの処理を繰り返す。検出部85によりモーター3の相関からの逸脱が検出された場合には(ステップS4:Yes)、制御部58は、検出部85による検出結果をモーター3の異常予兆に関する情報として警報データベース62に記憶させ(ステップS5)、ステップS1〜S5の処理を繰り返す。
【0063】
なお、データ通信部68を介して監視端末12から対象機器の異常または異常予兆に関する情報取得要求を受けた際には、制御部58の出力部87は、検出部85により検出され警報データベース62に記憶されている相関からの逸脱をモーター3の異常予兆に関する情報としてデータ通信部68に出力する。
【0064】
また、上述の実施の形態においては、駆動側温度及び反駆動側温度のみに基づいて、モーター3の異常を予測しているが、駆動側温度及び反駆動側温度に加えて駆動側振動値及び反駆動側振動値の少なくとも一方に基づいて、モーター3の異常を予測してもよい。また、上述の実施の形態においては、モーター3の異常予兆を検出する場合を例に挙げて説明したが、ファン5の異常予兆を検出する場合においても同様の処理を行う。
【0065】
次に、図面を参照して、この実施の形態に係る異常検出装置10により、対象機器の相関を求めるための相関演算方法について説明する。図13は、異常検出装置10の制御部58が対象機器(モーター3)の相関を求めるために実行する処理について説明するためのフローチャートである。
【0066】
制御部58は、データサーバー7の温度・振動値記憶部81に記憶されている過去に取得した駆動側温度及び過去に取得した反駆動側温度に基づいて、モーター3の相関を求める。具体的には、制御部58の温度取得部82は、データサーバー7の温度・振動値記憶部81に記憶されている過去に取得した駆動側温度及び過去に取得した反駆動側温度から、正常時(例えば図7に示すAの時期)に測定された2つ以上の駆動側温度及び反駆動側温度を取得する(ステップS11)。そして、演算部84は、ステップS11において取得した駆動側温度及び反駆動側温度の中に、判断部86においてモーター3が運転停止したと判断されてから運転再開したと判断されるまでの間、及び判断部86においてモーター3が運転再開したと判断されてから所定期間の間に測定された駆動側温度及び反駆動側温度が含まれているか否かを判別する。
【0067】
なお、制御部58は、振動値取得部83において駆動側振動値及び反駆動側振動値を取得した際、判断部86において駆動側振動値及び反駆動側振動値が所定値以上下降した場合にはモーター3が運転停止したと判断し、モーター3の運転停止中に駆動側振動値及び反駆動側振動値が所定値以上上昇した場合にはモーター3が運転再開したと判断し、例えばモーター3の運転停止期間を相関記憶部80等に予め記憶させる。
【0068】
演算部84は、相関記憶部80等に記憶されているモーター3の運転停止期間を読み込み、ステップS11において取得した駆動側温度及び反駆動側温度の中に、モーター3の運転停止期間及び運転停止期間経過後所定期間の間に測定された駆動側温度及び反駆動側温度が含まれていない場合には、除外期間がないと判別し(ステップS12:No)、ステップS14の処理に進む。一方、演算部84は、ステップS11において取得した駆動側温度及び反駆動側温度の中に、モーター3の運転停止期間及び運転停止期間経過後所定期間の間に測定された駆動側温度及び反駆動側温度が含まれている場合には、除外期間が有ると判別し(ステップS12:Yes)、除外期間中に測定された駆動側温度及び反駆動側温度を、正常時における駆動側温度及び反駆動側温度から除外する(ステップS13)。即ち、演算部84は、モーター3が運転停止してから運転再開後所定期間経過する前の間に測定されたすべての駆動側温度及び反駆動側温度のデータをモーター3の相関を求めるためのデータから除外する。
【0069】
演算部84は、ステップS11において取得した駆動側温度及び反駆動側温度に基づいて、モーター3の相関を求める(ステップS14)。即ち、演算部84は、モーター3の正常時(図7に示すAの時期)に測定された2つ以上のデータ(但し、除外期間中に測定されたデータを除く)に基づいて、図8に示すような横軸をモーター3の反駆動側温度、縦軸をモーター3の駆動側温度とするグラフを作成することにより、モーター3の正常時において反駆動側温度と駆動側温度との間に単回帰の相関(図8の点線で示す)があることを求める。
【0070】
制御部58は、ステップS14において演算部84において求めたモーター3の相関を相関記憶部80に記憶させる(ステップS15)。なお、上述の実施の形態においては、モーター3の相関を求める場合を例に挙げて説明したが、ファン5の相関を求める場合においても同様の処理を行う。
【0071】
この実施の形態に係る異常検出装置及び異常検出方法によれば、対象機器の駆動側温度及び反駆動側温度の相関からの逸脱を検出することにより、対象機器の異常または異常予兆を早期に発見することができる。従来では振動値が閾値を超えたことを告げる警報を受けてから作業員が対象機器を点検していたが(図7に示すDの時点)、警報発令時が対象機器故障時(図7に示すEの時点)の30〜40時間前であり、警報発令時において例えば回転機など既に軸受の損傷が酷く、給脂などによる延命措置は効果がうすく、手遅れのケースが多かった。しかしながら、この実施の形態に係る異常検出装置においては、対象機器の駆動側温度及び反駆動側温度の相関からの逸脱を検出するため、図7に示すDの時点より前のBまたはCの時期に対象機器の異常、例えば軸受の損傷、グリス切れ、グリスの固着、錆の発生等を検出することができる。また、遠隔地等に設置される多数の対象機器を管理する場合においても、対象機器の駆動側温度及び反駆動側温度の相関からの逸脱を検出することで対象機器の異常を早期に発見することができるため、個々の対象機器のトレンドデータを常時監視する必要がない。
【0072】
また、この実施の形態に係る異常検出装置及び異常検出方法によれば、対象機器の駆動側振動値及び反駆動側振動値の変動から対象機器の運転停止時及び運転再開時を判断することができる。したがって、対象機器の運転停止時及び運転再開時を管理する装置やシステムを別途設ける必要がなく、対象機器の運転停止時及び運転再開時を把握することができる。また、対象機器の運転停止によって、グリスの固着、劣化した軸受への水浸入による錆の発生等、対象機器の状態が急変するケースがあるが、対象機器の運転停止時から運転再開後所定期間経過後までの間に測定された駆動側温度及び反駆動側温度のデータを相関を求めるためのデータから除外するため、これら状態の急変の影響を受けることなく、対象機器の相関を求めることができる。
【0073】
なお、上述の実施の形態においては、演算部84が対象機器の相関を求め、検出部85が温度取得部82より取得した駆動側温度及び反駆動側温度に基づいて該相関からの逸脱を検出しているが、演算部84が駆動側温度の単回帰分析による反駆動側温度の回帰値(以下、反駆動側回帰値という。)を求め、検出部85が反駆動側回帰値と温度取得部82より取得した反駆動側温度である反駆動側実測値との比較結果に基づいて、対象機器の相関からの逸脱を検出するようにしてもよい。また、演算部84が反駆動側温度の単回帰分析による駆動側温度の回帰値(以下、駆動側回帰値という。)を求め、検出部85が駆動側回帰値と温度取得部82より取得した駆動側温度である駆動側実測値との比較結果に基づいて、対象機器の相関からの逸脱を検出するようにしてもよい。
【0074】
具体的には、演算部84は、対象機器の正常時(図7に示すAの時期)におけるモーター3の駆動側温度及び反駆動側温度に基づいて、反駆動側回帰値及び駆動側回帰値の少なくとも一方を求める。演算部84により求めた反駆動側回帰値及び駆動側回帰値は、相関記憶部80に記憶される。検出部85は、温度取得部82より取得した反駆動側温度(反駆動側実測値)と、演算部84により演算され相関記憶部80に記憶されている反駆動側回帰値との差分を求める。
【0075】
以下、モーター3が図14に示すような回帰値と実測値との差分トレンドを示した場合を例に挙げて説明する。なお、図14に示すグラフの横軸の時間は、図7に示すグラフの横軸の時間に対応している。図14に示すグラフからも明らかであるが、図14に示すGの時期において回帰値と実測値との差分の乱れがあり、図14に示すGの時期は、図7に示すB及びCの時期、即ちモーター3の駆動側振動値が徐々に増大している時期に相当する。検出部85は、図14に示すように、回帰値と実測値との差分が大きく乱れているため、図14に示すGの時期においてモーター3の異常発生の可能性が高いと判断する。
【0076】
また、上述の実施の形態においては、判断部86が対象機器の振動値のみの変動に基づいて対象機器の運転停止及び運転再開を判断しているが、対象機器の振動値に加えて対象機器の温度変化に基づいて対象機器の運転停止及び運転再開を判断するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0077】
2…異常検出システム、3…モーター、4a〜4d…無線子機、5…ファン、6…無線親機、7…データサーバー、10…異常検出装置、12…監視端末、14…センサー、16…マイコン、18…送受信部、19…電源制御部、20…温度センサー、22…加速度センサー、34…A/D変換部、36…メモリ、38…演算処理部、40…RTC部、42…演算プログラム、44…制御部、46…管理部、48…RF通信部、50…通信部、52…時計部、54…無線子機管理テーブル、56…データベース、57…サーバー制御部、58…制御部、59…無線親機管理テーブル、61…無線子機管理テーブル、62…警報データベース、65…通信部、66…データ通信部、68…データ通信部、70…監視端末制御部、72…データ通信部、74…入力部、76…表示部、78…ネットワーク、80…相関記憶部、81…温度・振動値記憶部、82…温度取得部、83…振動値取得部、84…演算部、85…検出部、86…判断部、87…出力部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14