【実施例】
【0075】
以下、本発明の一実施例について、
図5〜
図7に基づいて説明すれば以下のとおりである。本実施例では、本発明に係るレッグウェアによる滑り止め効果について検証した。
【0076】
図5の(a)〜
図5の(f)は、本実施例で試験した各滑り止め部の形状を示す背面図である。
図5の(a)および
図5の(b)に示すように、本実施例では、本発明の滑り止め部として、足底部21側に開口した略コの字型の形状である滑り止め部3a、および滑り止め部3bを準備した。滑り止め部3aと滑り止め部3bとの違いは、滑り止め部3aの2つの縦型帯状部32a・32bの幅に比べて、滑り止め部3bの2つの縦型帯状部32a’・32b’の幅を狭くした点である。
【0077】
また、
図5の(c)〜
図5の(f)に示すように、比較対象として、滑り止め部3aから横型帯状部31を取り除き、縦型帯状部32a・32bで構成した滑り止め部103a、略縦方向へ延伸する縦型帯状部32cで構成した滑り止め部103b、略横方向へ延伸する横型帯状部31cで構成した滑り止め部103c、横型帯状部31cよりも幅が広い横型帯状部31dで構成した滑り止め部103dをそれぞれ準備した、
〔試験方法〕
図6は、本実施例の試験方法を説明するための模式図である。
(1)婦人標準足型マネキンに各滑り止め部を設けたフットカバーを履かせた場合、婦人標準足型マネキンにパンストを装着した上に各滑り止め部を設けたフットカバーを履かせた場合、生足に各滑り止め部を設けたフットカバーを履かせた場合のそれぞれについて、
図6に示すように、フットカバーを踵から爪先に向けて引張した時の引張力(応力)を、引張試験機(デジタルフォースゲージZP50N)41を用いて計測した。
(2)各サンプルについて5回計測を行い、フットカバーが脱げたときの引張力の平均値を算出した。
【0078】
〔試験結果〕
【0079】
【表1】
【0080】
表1は、本実施例の試験結果を示す表である。また、
図7は、本実施例の試験結果を示すグラフであり、
図7の(a)は、婦人標準足型マネキンに各滑り止め部を設けたフットカバーを履かせた場合の試験結果であり、
図7の(b)は、婦人標準足型マネキンにパンストを装着した上に各滑り止め部を設けたフットカバーを履かせた場合の試験結果であり、
図7の(c)は、生足に各滑り止め部を設けたフットカバーを履かせた場合の試験結果である。
【0081】
なお、表1および
図7の(a)〜
図7の(c)では、滑り止め部3aを設けたフットカバーを実施例1、滑り止め部3bを設けたフットカバーを実施例2、滑り止め部103aを設けたフットカバーを比較例1、滑り止め部103bを設けたフットカバーを比較例2、滑り止め部103cを設けたフットカバーを比較例3、滑り止め部103dを設けたフットカバーを比較例4として示している。また、表1における括弧内の数値は、引張力(N/mm
2)を滑り止め部の面積(mm
2)で割った値であり、各滑り止め部の単位面積当たりの滑り止め力を示す指数である。
【0082】
表1および
図7の(a)に示すように、婦人標準足型マネキンに各滑り止め部を設けたフットカバーを履かせた場合、実施例1のフットカバーおよび実施例2のフットカバーは、フットカバーの生地が耐え得る限界値で引張してもフットカバーは一度も脱げなかった。
【0083】
これに対して、比較例1のフットカバーが脱げたときの引張力の平均値は0.51±0.03、比較例2のフットカバーが脱げたときの引張力の平均値は0.46±0.03、比較例3のフットカバーが脱げたときの引張力の平均値は0.57±0.02、比較例4のフットカバーが脱げたときの引張力の平均値は1.51±0.02であった。
【0084】
また、表1および
図7の(b)に示すように、婦人標準足型マネキンにパンストを装着した上に各滑り止め部を設けたフットカバーを履かせた場合、実施例1のフットカバーが脱げたときの引張力の平均値は2.59±0.22、実施例2のフットカバーが脱げたときの引張力の平均値は2.53±0.03であった。
【0085】
これに対して、比較例1のフットカバーが脱げたときの引張力の平均値は0.56±0.02、比較例2のフットカバーが脱げたときの引張力の平均値は0.60±0.01、比較例3のフットカバーが脱げたときの引張力の平均値は0.64±0.03、比較例4のフットカバーが脱げたときの引張力の平均値は1.08±0.03であった。
【0086】
また、表1および
図7の(c)に示すように、生足に各滑り止め部を設けたフットカバーを履かせた場合、実施例1のフットカバーが脱げたときの引張力の平均値は2.94±0.09、実施例2のフットカバーが脱げたときの引張力の平均値は2.60±0.09であった。
【0087】
これに対して、比較例1のフットカバーが脱げたときの引張力の平均値は0.38±0.01、比較例2のフットカバーが脱げたときの引張力の平均値は0.37±0.03、比較例3のフットカバーが脱げたときの引張力の平均値は0.42±0.01、比較例4のフットカバーが脱げたときの引張力の平均値は0.74±0.02であった。
【0088】
このように、婦人標準足型マネキンに各滑り止め部を設けたフットカバーを履かせた場合、婦人標準足型マネキンにパンストを装着した上に、各滑り止め部を設けたフットカバーを履かせた場合、生足に各滑り止め部を設けたフットカバーを履かせた場合のいずれの場合であっても、実施例1および実施例2のフットカバーは、比較例1〜4のフットカバーに比べて脱げにくく、高い滑り止め効果が得られた。
【0089】
これは、実施例1および実施例2のフットカバーでは、横型帯状部31および縦型帯状部32a・32b、または、横型帯状部31および縦型帯状部32a’・32b’によって、踵部24の生地の縦方向および横方向への伸縮が抑制された結果、踵部24の生地の伸縮に伴う滑り止め部の位置ずれが抑制され、滑り止め部による十分な滑り止め効果が得られたためである。
【0090】
一方、比較例1〜4のフットカバーでは、踵部24の生地の縦方向または横方向への伸縮が生じる。例えば、比較例1のフットカバーでは、滑り止め部103aの2つの縦型帯状部32a・32bが繋がっていないため、踵部24の生地の横方向への伸縮が生じる。そのため、比較例1〜4のフットカバーでは、踵部24の生地の伸縮に伴う滑り止め部の位置ずれが生じ、滑り止め部による十分な滑り止め効果が得られなかった。
【0091】
このように、本実施例において、本発明に係るレッグウェアによって高い滑り止め効果が得られることが確認された。
【0092】
〔補足〕
なお、本発明は以下のように表現することも可能である。
図8の(a)〜
図8の(c)は、本発明に係るレッグウェアが備える滑り止め部3の構成を説明するための模式図である。具体的には、
図8の(a)は、球体(踵)Sにおける仮想球面三角Tを示す概念図であり、
図8の(b)は、滑り止め部3を示す背面図であり、
図8の(c)は、他の滑り止め部3を示す背面図である。
【0093】
図8の(a)および
図8の(b)に示すように、本発明に係るレッグウェアは、伸縮性生地からなるレッグウェアであって、伸縮性生地と比較して伸縮性が低く、かつ摩擦性が高い滑り止め部3を有し、滑り止め部3は、着用した際に踵における仮想球面三角Tの頂点P1・P2・P3を通る(または、頂点P1・P2・P3に端を発する)細幅帯状部の組み合わせであってもよい。
【0094】
また、本発明に係るレッグウェアは、仮想球面三角Tの頂点の一つ(
図8の(b)中の頂点P1)が、踵骨に対応する位置に設けられていてもよい。
【0095】
また、本発明に係るレッグウェアは、細幅帯状部の一部がアキレス腱に沿って配置されるように、仮想球面三角Tの頂点(
図8の(b)の頂点P1)が設けられていてもよい。
【0096】
また、
図8の(c)に示すように、本発明に係るレッグウェアは、細幅帯状部が仮想球面三角Tの外側に位置する地点P4を通っていてもよい。
【0097】
このように、発明に係るレッグウェアが備える滑り止め部3は、仮想球面三角Tの頂点P1〜P3を通る(または、頂点P1・P2・P3に端を発する)ように設けられた細幅帯状部の組み合わせで構成されていてもよい。このような滑り止め部3によって踵を立体的に包み込むことにより、歩行などの動作による踵部24の生地の伸縮に伴う滑り止め部3の位置ずれを好機に抑制することができる。
【0098】
したがって、上記の構成によれば、履き心地を損なうことなく、ずれや脱げを好適に抑制可能なレッグウェアを実現することができる。
【0099】
〔補足2〕
また、本発明は以下のように表現することが可能である。
【0100】
本発明に係るレッグウェアは、少なくとも、足裏を覆う足底部、および踵を覆う踵部を含む、伸縮性を有する本体部と、前記踵部の内側に設けられ、該踵部の生地よりも伸縮性が低い滑り止め部とを備え、前記足底部に対して垂直な方向を縦方向、前記足底部の幅方向を横方向と定義した場合、前記滑り止め部は、前記踵部の生地の前記縦方向および前記横方向への伸縮を抑制する帯状部を含むことを特徴としている。
【0101】
上述のとおり、歩行の際、足首の縦方向への屈折動作により踵部の生地が縦方向へ引張され、本体部のずれや脱げが生じる。また、歩行のメカニズムには、足首の縦方向への屈折動作のみではなく、横方向(外反方向または内反方向)への動作もあるため、踵部の生地は横方向へも引張されることによって、本体部のずれや脱げが生じ得る。
【0102】
そこで、上記の構成では、滑り止め部は、踵部の生地の縦方向および横方向への伸縮を抑制する帯状部を含み、この帯状部によって、踵部の生地の縦方向および横方向への伸縮を抑制しつつ、本体部の滑りを防止している。
【0103】
例えば、2以上の異なる方向へ延伸するように帯状部を設けることにより、帯状部が配置された縦方向および横方向の範囲にわたって、踵部の生地の縦方向および横方向への伸縮が抑制される。そのため、歩行などの動作による踵部の生地の伸縮に伴う滑り止め部の位置ずれを抑制することができる。
【0104】
また、上記の構成では、滑り止め部は帯状部から構成されているため、滑り止め部が踵にフィットしやすく十分な滑り止め効果を得ることができると共に、汗などで肌がかぶれにくくすることができる。
【0105】
したがって、上記の構成によれば、履き心地を損なうことなく、ずれや脱げを好適に抑制可能なレッグウェアを実現することができる。
【0106】
また、本発明に係るレッグウェアでは、前記帯状部は、略横方向へ延伸する第1帯状部と、略縦方向へ延伸する第2帯状部とを含んでいてもよい。
【0107】
上記の構成では、第1帯状部によって、足首の横方向(外反方向または内反方向)の動作による踵部の生地の横方向への伸縮を抑制することができる。また、第2帯状部によって、足首の縦方向への屈折動作による踵部の生地の縦方向への伸縮を抑制することができる。
【0108】
したがって、上記の構成によれば、滑り止め部によって、踵部の生地の縦方向および横方向への伸縮を抑制することができる。
【0109】
なお、本明細書において、「略横方向に延伸する」とは、横方向に延伸すること、および実質的に横方向に延伸することを意味し、したがって、第1帯状部は、横方向に対して多少の角度差を有する方向へ延伸するものであってもよい。同様に、「略縦方向に延伸する」とは、縦方向に延伸すること、および実質的に縦方向に延伸することを意味し、したがって、第2帯状部は、縦方向に対して多少の角度差を有する方向へ延伸するものであってもよい。
【0110】
また、本発明に係るレッグウェアでは、前記帯状部は、2つの前記第2帯状部を含み、2つの前記第2帯状部は、踵骨を挟むように設けられていてもよい。
【0111】
上記の構成では、踵骨を挟むように2つの第2帯状部を設けることによって、踵部において特に生地が動きやすい部分(踵骨背面の中心部分)の縦方向への伸縮を好適に抑制することができる。
【0112】
したがって、上記の構成によれば、踵部の生地の縦方向への伸縮を効果的に抑制することができる。
【0113】
また、本発明に係るレッグウェアでは、前記第1帯状部は、アキレス腱を横断するように設けられており、2つの前記第2帯状部は、前記第1帯状部の両端部から前記足底部側へ延伸していてもよい。
【0114】
上記の構成では、踵部において特に生地が動きやすい部分(踵骨背面の中心部分)の上方に第1帯状部、左右両側に第2帯状部が設けられているため、上記部分における縦方向および横方向への伸縮を好適に抑制することができる。
【0115】
したがって、上記の構成によれば、踵部の生地の縦方向および横方向への伸縮を効果的に抑制することができる。
【0116】
また、本発明に係るレッグウェアでは、前記帯状部は、略縦方向および略横方向とは異なる方向へ延伸する複数の第3帯状部を含み、複数の前記第3帯状部は、互いに交わっていてもよい。
【0117】
上記の構成では、滑り止め部は略縦方向および略横方向とは異なる方向へ延伸する複数の第3帯状部を含み、これらの第3帯状部が交わるように設けられている。このような構成であっても、複数の第3帯状部が配置された縦方向および横方向の範囲にわたって、踵部の生地の縦方向および横方向への伸縮を抑制することができる。
【0118】
したがって、上記の構成によれば、略縦方向および略横方向とは異なる方向へ延伸する第3帯状部を組み合わせて、踵部の生地の縦方向および横方向への伸縮を抑制可能な滑り止め部を実現することができる。
【0119】
また、本発明に係るレッグウェアでは、前記帯状部は、曲線状に延伸する第4帯状部を含んでいてもよい。
【0120】
上記の構成によれば、延伸方向が連続して変化する曲線状の第4帯状部によって、踵部の生地の縦方向および横方向への伸縮を抑制することができる。
【0121】
例えば、踵部において特に生地が動きやすい部分(踵骨背面の中心部分)を囲むよう第4帯状部を設けることによって、踵部の生地の縦方向および横方向への伸縮を効果的に抑制することができる。
【0122】
また、本発明に係るレッグウェアでは、前記帯状部は、一連に形成されていてもよい。
【0123】
上記の構成によれば、帯状部が一連に形成されることにより、帯状部の部分的な位置ずれが生じにくくなるため、踵部の生地の縦方向および横方向への伸縮をさらに効果的に抑制することができる。
【0124】
また、本発明に係るレッグウェアでは、前記滑り止め部は、前記本体部の生地よりも摩擦係数が高い樹脂が基材に塗布されて、シート状に形成されたものであってもよい。
【0125】
上記の構成では、本体部の生地よりも摩擦係数が高い樹脂を、基材全体に容易、かつ均一に塗布することができる。
【0126】
上記の構成によれば、踵部の生地の縦方向および横方向への伸縮をさらに効果的に抑制することができる。また、樹脂が基材に塗布されたシート状の滑り止め部を踵部の内側に設けることによって、効果的にレッグウェアのずれや脱げを抑制することができる。
【0127】
〔補足3〕
また、本発明は、以下のように表現することが可能である。
【0128】
本発明に係るレッグウェアは、少なくとも、足裏を覆う足底部、および踵を覆う踵部を含む、伸縮性を有する本体部と、前記踵部の内側に設けられ、該踵部の生地よりも伸縮性が低い滑り止め部とを備え、前記足底部に対して垂直な方向を縦方向、前記足底部の幅方向を横方向と定義した場合、前記滑り止め部は、前記踵部の生地の前記縦方向および前記横方向への伸縮を抑制する帯状部を含み、前記帯状部は、2以上の異なる方向へ延伸するように一連に形成され、踵骨の踵骨隆起よりも上方で横断しており、前記帯状部の下端部は、前記踵骨隆起の高さ以下に位置することを特徴としている。
【0129】
また、本発明に係るレッグウェアでは、前記帯状部は、略横方向へ延伸する第1帯状部と、略縦方向へ延伸する第2帯状部とを含んでいてもよい。
【0130】
また、本発明に係るレッグウェアでは、前記帯状部は、2つの前記第2帯状部を含み、2つの前記第2帯状部は、前記踵骨を挟むように設けられていてもよい。
【0131】
また、本発明に係るレッグウェアでは、前記第1帯状部は、アキレス腱を横断するように設けられており、2つの前記第2帯状部は、前記第1帯状部の両端部から前記足底部側へ延伸していてもよい。
【0132】
また、本発明に係るレッグウェアでは、前記帯状部は、略縦方向および略横方向とは異なる方向へ延伸する複数の第3帯状部を含み、複数の前記第3帯状部は、互いに交わっていてもよい。
【0133】
また、本発明に係るレッグウェアでは、前記帯状部は、曲線状に延伸する第4帯状部を含んでいてもよい。
【0134】
また、本発明に係るレッグウェアでは、2つの前記第2帯状部は、前記第1帯状部の両端部から前記足底部側へ延伸していてもよい。
【0135】
また、本発明に係るレッグウェアでは、前記帯状部は、略横方向へ延伸する第1帯状部と、略縦方向および略横方向とは異なる方向へ延伸する第3帯状部とを含んでいてもよい。
【0136】
また、本発明に係るレッグウェアでは、前記滑り止め部は、前記本体部の生地よりも摩擦係数が高い樹脂が基材に塗布されて、シート状に形成されたものであってもよい。