特許第6705888号(P6705888)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705888
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】抗菌ドレッシング材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/00 20060101AFI20200525BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20200525BHJP
   A61L 15/16 20060101ALI20200525BHJP
   A61L 15/18 20060101ALI20200525BHJP
   A61L 15/20 20060101ALI20200525BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20200525BHJP
   A61L 15/26 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   A61F13/00 300
   A61F13/00 T
   A61L15/44 100
   A61L15/16 100
   A61L15/18 100
   A61L15/20 100
   A61L15/24 100
   A61L15/26 100
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-506903(P2018-506903)
(86)(22)【出願日】2016年3月25日
(65)【公表番号】特表2018-525102(P2018-525102A)
(43)【公表日】2018年9月6日
(86)【国際出願番号】KR2016003071
(87)【国際公開番号】WO2017026618
(87)【国際公開日】20170216
【審査請求日】2018年2月9日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0113661
(32)【優先日】2015年8月12日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517016163
【氏名又は名称】ジェネウェル シーオー.,エルティーディー.
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100163544
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 緑
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒュン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】パク,イル ギュ
(72)【発明者】
【氏名】イ,スン ムン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン ソ
【審査官】 西田 侑以
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第2002−0046619(KR,A)
【文献】 特開2008−149103(JP,A)
【文献】 特開2004−24724(JP,A)
【文献】 特開昭57−153644(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1199453(KR,B1)
【文献】 特開2007−144149(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00 − 13/02
A61L 15/00 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部感染因子予防層、バクテリア生長抑制層及び傷面感染因子除去層からなる抗菌ドレッシング材であって、
ここで前記抗菌ドレッシング材は、細胞膜速透過成分を含み、
前記バクテリア生長抑制層及び前記傷面感染因子除去層は、ポリウレタンプレポリマー40〜70重量%発泡剤15〜45重量%、架橋剤5〜35重量%、界面活性剤0.1〜2重量%及び補助剤0.5〜15重量%を含む混合発泡物を含み、
前記バクテリア生長抑制層は、100〜350μmの多孔径を有しており、
前記傷面感染因子除去層は、25〜75μmの多孔径を有しており、
前記バクテリア生長抑制層は、セルサイズ(cellsize)が、100〜350μmであり、
前記傷面感染因子除去層は、セルサイズ(cell size)が、100〜350μmであり、
前記細胞膜速透過成分は、バクテリア生長抑制層及び傷面感染因子除去層に含まれており、
前記外部感染因子予防層は、不織布、シリコン系フィルム、ポリオレフィン系フィルム及びポリウレタン系フィルムからなる群から選択されるいずれか1種以上であることを特徴とする抗菌ドレッシング材。
【請求項2】
前記細胞膜速透過成分は、ヨウ素化合物として、ヨウ素酸カリウム、二ヨウ素酸カリウム、ヨウ化メチル、ヨウ化水素酸、ヨウ化アセチル及びポビドンヨードからなる群から選択されるいずれか1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の抗菌ドレッシング材。
【請求項3】
STM E2149−10に基づいて測定した抗菌力が90%以上であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌ドレッシング材。
【請求項4】
記の数式1に基づいて測定した吸収力が1.0g/cm以上であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌ドレッシング材。
(数1)
吸収力(g/cm)=(W2−W1)g/初期試料の面積(cm
前記W1は、ドレッシング材を5cm×5cmの大きさで取って50℃の真空オーブンにおいて24時間かけて乾燥させた後の初期の重さであり、前記W2は、37℃の蒸留水に30分間含浸した後、ドレッシング材の表面の水気を拭き取った後の重さである。
【請求項5】
記の数式2に基づいて測定した担持力が0.2g/cm以上であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌ドレッシング材。
(数2)
担持力(g/cm)=(W3−W1)g/初期試料の面積(cm
前記W1は、ドレッシング材を5cm×5cmの大きさで取って50℃の真空オーブンにおいて24時間かけて乾燥させた後の初期の重さであり、前記W3は、37℃の蒸留水に30分間含浸した後、ドレッシング材の表面の水気を拭き取った後、サンプルの上に5kgの重さの錘で20秒間押下した後の重さである。
【請求項6】
記の数式4に基づいて測定した再上皮化率が15%以上であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌ドレッシング材。
(数4)
再上皮化率(%)=再上皮化された長さ/初期創傷の長さ×100
前記再上皮化された長さ及び初期創傷の長さは、SD(スプラーグドーリー)ラットの背の全体を広く除毛し、直径が背部位の中央に2.5cmの筋膜層まで除去された創傷を誘導した後、創の収縮を防ぐためにシリコンリングを用いて創面に沿って縫合糸で縫合した後、ドレッシング材を適用した後、自着性包帯で1周巻き付け、絆創膏で固定して3日おきに包帯を取り替えた後、14日目に動物を犠牲にした後、再生組織を採取して組織染色を行って測定する。
【請求項7】
生血管の数が60個/2.5cm以上であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌ドレッシング材。
前記新生血管の数は、SD(スプラーグドーリー)ラットの背の全体を広く除毛し、直径が背部位の中央に2.5cmの筋膜層まで除去された創傷を誘導した後、創の収縮を防ぐためにシリコンリングを用いて創面に沿って縫合糸で縫合した後、ドレッシング材を適用した後、自着性包帯で1周巻き付け、絆創膏で固定して3日おきに包帯を取り替えた後、14日目に動物を犠牲にした後、再生組織を採取して組織染色を行って創傷の面積2.5cm内に再上皮化された組織の血管の数を自ら集計して測定する。
【請求項8】
記の数式5に基づいて測定したコラーゲン沈積率が45%以上であることを特徴とする請求項1に記載の抗菌ドレッシング材。
(数5)
コラーゲン沈積率(%)=真皮層のコラーゲン面積/真皮層の総面積×100
前記コラーゲン沈積率は、SD(スプラーグドーリー)ラットの背の全体を広く除毛し、直径が背部位の中央に2.5cmの筋膜層まで除去された創傷を誘導した後、創の収縮を防ぐためにシリコンリングを用いて創面に沿って縫合糸で縫合した後、ドレッシング材を適用した後、自着性包帯で1周巻き付け、絆創膏で固定して3日おきに包帯を取り替えた後、14日目に動物を犠牲にした後、再生組織を採取してマッソントリクローム染色を用いて真皮層の結合組織であるコラーゲンに対して特殊染色を行い、真皮層の各3ヶ所の総面積に対するコラーゲンの面積をImageJプログラムで測定する。
【請求項9】
前記細胞膜速透過成分は、下記の一般式1
【化1】
(式中、nは、1〜100の整数であり、mは、1〜2000の整数であり、n:mは、1:10〜1:28である)で表わされる物質であることを特徴とする請求項2に記載の抗菌ドレッシング材。
【請求項10】
記外部感染因子予防層が10〜500μmの厚さに、前記バクテリア生長抑制層が0.1〜20mmの厚さに、且つ、前記傷面感染因子除去層が0.01〜100μmの厚さにこの順に形成されたことを特徴とする請求項1に記載の抗菌ドレッシング材。
【請求項11】
前記バクテリア生長抑制層及び前記傷面感染因子除去層は、バクテリア生長抑制層及び傷面感染因子除去層100重量%に対して細胞膜速透過成分を0.01〜10重量%で含むことを特徴とする請求項1に記載の抗菌ドレッシング材。
【請求項12】
請求項1に記載の抗菌ドレッシング材の連続製造に用いる装置であって、
左右移動式の発泡手段、冷却手段、圧着ローラー及び乾燥手段がこの順に形成されたことを特徴とする抗菌ドレッシング材の連続製造装置。
【請求項13】
請求項1に記載の抗菌ドレッシング材の製造方法であって、
前記バクテリア生長抑制層及び前記傷面感染因子除去層は、
(i)ポリオール及びジオールを投入して攪拌した後、イソシアネートを投入して窒素雰囲気下でNCOの含量(モル%)が理論値1〜20に達するまで反応させてポリウレタンプレポリマーを製造するステップと、
(ii)細胞膜透過成分、架橋剤、発泡剤、界面活性剤及び補助剤を投入して均一に混合して発泡混合液を製造するステップと、
(iii)前記製造したポリウレタンプレポリマー及び前記製造した発泡混合液を混合して発泡させるとともに、1〜20℃の空気を噴射して硬化を遅らせ、ポリウレタン発泡フォームの粘性を保つステップと、
(iv)前記粘性が保たれたポリウレタン発泡フォームの上部に第2の離型紙を貼着した後に硬化させるステップと、
を含む方法で製造することを特徴とする抗菌ドレッシング材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌ドレッシング材及びその製造方法に係り、更に詳しくは、細胞膜速透過成分を含めてタンパク質及び核酸の構造及び合成力を阻害することにより、殺菌力及び抗菌力などに優れた抗菌ドレッシング材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚に傷が付くと、多量の滲出液が発生する炎症期を経て肉芽の形成が本格的に行われる増殖期、及び新生皮膚を強固にする成熟期を経て傷が治癒される。傷の治癒過程において最も重要なのは、滲出液を速やかに吸収して炎症期を最小化させ、適切な湿潤環境を保って各種の細胞成長因子(PDGF、TGF−β、EGF、FGF、VEGF、IGFなど)やサイトカイン(IL−1、IL−6、IL−8、TNFなど)を提供して細胞の移動及び増殖を円滑にして傷の治癒を促し、取替えに際しては傷面にくっつかない非付着特性を有するドレッシング材が最も好ましい。
【0003】
現在、主として用いられている閉鎖性ドレッシング材の種類としては、フィルム型、ハイドロコロイド型、ハイドロゲル型、ポリウレタンフォーム型などが挙げられる。特に、治療効果の高いドレッシング材としては、ハイドロコロイド型、ハイドロゲル型、ポリウレタンフォーム型などが挙げられる。
【0004】
米国特許第5,503,847号公報及び第5,830,932号公報に開示されているハイドロコロイド型は、粘着組成物層と、外界からの衝撃を緩和させ、滲出液を吸収するハイドロコロイド層及び細菌及び異物の浸透を防ぐフィルム層により構成されている。
このようなハイドロコロイド型ドレッシング材は、少量の傷分泌物を吸収することによりゲルを形成し、湿潤環境を提供し、且つ、pHを長期間に亘って弱酸性に保って組織の障害を予防し、細胞の成長を促す環境を提供する。しかしながら、透湿度及び滲出液の吸収能に劣っており、取替えや除去に際して傷面にゲルが付着して残留物として残ってしまうため2次的な除去操作が必要であるという欠点があり、しかも、多量の傷分泌物を伴う傷への適用に向いていないという欠点がある。
【0005】
また、米国特許第5,445,604号公報及び第5,065,752号公報に開示されている親水性ポリウレタンフォームドレッシング材は、その構造がポリウレタンフォームの両面にフィルムを貼着(ラミネート)した3層構造となっており、傷面接触層の巨大なポアが傷面に固着されることを防止するための傷面接触層フィルムには機械的な穴を開けて滲出液が傷面接触層に吸収されるようにしているとはいえ、滲出液及び血液などが完璧に除去されず、その結果、傷面に血餠が生成されて、治療に際して異物として働いて傷の治癒を遅らせたり、除去に際して血液の凝固により傷面に癒着されたりし、機械的に開けた巨大なポアによりドレッシングの交換に際して新生組織の付着が生じたり、傷付き部位がドット(Dot)状を呈して滑らかではないという問題がある。多量の滲出液が発生する傷に適用する場合、単位面積当たりの滲出液の吸収力が十分ではないため、頻繁な交換が必要であり、且つ、担持力が足りず、その結果、外力により滲出物が漏れ易いため患者の衣服やシート類などを汚したり、傷面の周縁を乾燥させたりし、滲出物の発生が少ない傷においては傷面を乾燥させてしまうという問題などがある(J Koeran Soc. Plast. Reconstr. Sur., Vol.29, No.4, 297−301, 2002 ; J Koeran Burn Soc., Vol.6, No.1, 45−51, 2003)。
【0006】
この理由から、フォームドレッシング材の形態として、多量の滲出物が吸収可能な吸収力と、吸収後にドレッシング材における漏出現象、乾燥現象及び汚染現象がなく、創傷部位から新生組織の損傷なしに除去し易く、毒性がない他、外部の感染から創傷を保護することのできるドレッシング材の開発が依然として切望されているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,503,847号公報
【特許文献2】米国特許第5,830,932号公報
【特許文献3】米国特許第5,445,604号公報
【特許文献4】米国特許第5,065,752号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J Koeran Soc. Plast. Reconstr. Sur., Vol.29, No.4, 297−301, 2002 ; J Koeran Burn Soc., Vol.6, No.1, 45−51, 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したような従来の技術の問題を解消するために、本発明は、細胞膜速透過成分を含めてタンパク質及び核酸の構造及び合成力を阻害することにより、殺菌力及び抗菌力などに優れており、しかも、細胞に対する毒性がない抗菌ドレッシング材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、外部感染因子予防層、バクテリア生長抑制層及び傷面感染因子除去層を有するドレッシング材であって、細胞膜速透過成分を含む抗菌ドレッシング材を提供する。
また、本発明は、上述した抗菌ドレッシング材を製造するが、連続製造装置を用いて連続して製造することを特徴とする抗菌ドレッシング材の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、細胞膜速透過成分を含めてタンパク質及び核酸の構造及び合成力を阻害することにより、殺菌力及び抗菌力などに優れた抗菌ドレッシング材及びその製造方法を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1及び比較例1〜4における傷面感染因子除去層及びバクテリア生長抑制層の表面を電子走査顕微鏡で観察したものである。
図2】実施例1及び比較例1〜4のドレッシング材の吸収力を測定したグラフである。
図3】実施例1及び比較例1〜4のドレッシング材の担持力を測定したグラフである。
図4】実施例1及び比較例1〜3の細胞毒性の実験結果を示す顕微鏡写真である。
図5】実施例1及び比較例1〜3の細胞生存率を測定したグラフである。
図6】実施例1及び比較例1〜4の抗菌力の実験結果を示す写真である。
図7】実施例1及び比較例1〜4の抗菌力を測定したグラフである。
図8】実施例1及び比較例1〜3の黄色葡萄状球菌に対し、時間経過に伴う抗菌力の実験結果を示す写真である。
図9】実施例1及び比較例1〜3の緑膿菌に対し、時間経過に伴う抗菌力の実験結果を示す写真である。
図10】実施例1及び比較例1〜3の動物皮膚の再生有効性の測定項目のうち再上皮化率を測定したグラフである。
図11】実施例1及び比較例1〜3の動物皮膚の再生有効性の測定項目のうち新生血管の数を測定したグラフである。
図12】実施例1及び比較例1〜3の動物皮膚の再生有効性の測定項目のうちコラーゲン沈積率を測定したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳述する。
本発明の抗菌ドレッシング材は、外部感染因子予防層と、バクテリア生長抑制層及び傷面感染因子除去層を有するドレッシング材であって、細胞膜速透過成分を含むことを特徴とする。
【0014】
前記ターミノロジー「外部感染因子予防層」とは、特に断りのない限り、ドレッシング材を構成する最上位層であって、外部からの異物の侵入による感染を予防し、適切な透湿度で吸収滲出液を外部に放出可能な層のことをいう。
【0015】
前記ターミノロジー「バクテリア生長抑制層」とは、特に断りのない限り、抗菌性(antibacterial)の薬剤を担持し、制御された放出特性で徐々に放出し、水分環境下でバクテリアの成長を抑制し、滲出物の吸収能及び担持能を兼ね備えた層のことをいう。
【0016】
前記ターミノロジー「傷面感染因子除去層」とは、特に断りのない限り、コロニー(colony)の生成を防いで感染要因である微生物を除去し、抗菌効果及び遮断(バリア)機能を行い、傷面非付着特性を有する層のことをいう。
【0017】
前記ターミノロジー「細胞膜速透過成分」とは、特に断りのない限り、細胞膜を高速で透過することができてタンパク質及び核酸の構造及び合成力が阻害可能な成分のことをいう。
【0018】
本発明の抗菌ドレッシング材は、ASTM E2149−10に基づいて測定した抗菌力が99%以上である。
また、本発明の抗菌ドレッシング材は、ISO 10993−5、12に基づいて測定した細胞毒性検査において、細胞生存率が80%以上、85%以上又は90%以上である。
更に、本発明の抗菌ドレッシング材は、吸収力が1.0g/cm以上である。
(数1)
吸収力(g/cm)=(W2−W1)g/初期試料の面積(cm
【0019】
前記W1は、ドレッシング材を5cm×5cmの大きさで取って50℃の真空オーブンにおいて24時間かけて乾燥させた後の初期の重さであり、前記W2は、37℃の蒸留水に30分間含浸した後、ドレッシング材の表面の水気を拭き取った後の重さである。
【0020】
また、本発明の抗菌ドレッシング材は、下記の数式2に基づいて測定した担持力が0.2g/cm以上である。
(数2)
担持力(g/cm)=(W3−W1)g/初期試料の面積(cm
【0021】
前記W1は、ドレッシング材を5cm×5cmの大きさで取って50℃の真空オーブンにおいて24時間かけて乾燥させた後の初期の重さであり、前記W3は、37℃の蒸留水に30分間含浸した後、ドレッシング材の表面の水気を拭き取った後、サンプルの上に5kgの重さの錘で20秒間押下した後の重さである。
【0022】
また、本発明の抗菌ドレッシング材は、例えば、下記の数式4に基づいて測定した再上皮化率が15%以上、20〜100%、20〜80%、又は20〜50%であってもよく、この範囲内において皮膚の再生効果に優れている。
(数4)
再上皮化率(%)=再上皮化された長さ/初期創傷の長さ×100
【0023】
前記再上皮化された長さ及び初期創傷の長さは、SD(スプラーグドーリーラット)ラットの背の全体を広く除毛し、直径が背部位の中央に2.5cmの筋膜層まで除去された創傷を誘導した後、創の収縮を防ぐためにシリコンリングを用いて創面に沿って縫合糸で縫合した後、ドレッシング材を適用した後、自着性包帯で1周巻き付け、絆創膏で固定して3日おきに包帯を取り替えた後、14日目に動物を犠牲にした後、再生組織を採取して組織染色を行って測定する。
【0024】
また、本発明の抗菌ドレッシング材は、例えば、新生血管の数が60個/2.5cm以上、65〜90個/2.5cm、又は65〜80個/2.5cmであってもよく、この範囲内において皮膚の再生効果に優れている。
【0025】
前記新生血管の数は、SD(スプラーグドーリーラット)ラットの背の全体を広く除毛し、直径が背部位の中央に2.5cmの筋膜層まで除去された創傷を誘導した後、創の収縮を防ぐためにシリコンリングを用いて創面に沿って縫合糸で縫合した後、ドレッシング材を適用した後、自着性包帯で1周巻き付け、絆創膏で固定して3日おきに包帯を取り替えた後、14日目に動物を犠牲にした後、再生組織を採取して組織染色を行って創傷の面積2.5cm内に再上皮化された組織の血管の数を自ら集計して測定する。
【0026】
更に、本発明の抗菌ドレッシング材は、例えば、下記の数式5に基づいて測定したコラーゲン沈積率が45%以上、50〜75%、又は55〜70%であってもよく、この範囲内において皮膚の再生効果に優れている。
(数5)
コラーゲン沈積率(%)=真皮層のコラーゲン面積/真皮層の総面積×100
【0027】
前記コラーゲン沈積率は、SD(スプラーグドーリーラット)ラットの背の全体を広く除毛し、直径が背部位の中央に2.5cmの筋膜層まで除去された創傷を誘導した後、創の収縮を防ぐためにシリコンリングを用いて創面に沿って縫合糸で縫合した後、ドレッシング材を適用した後、自着性包帯で1周巻き付け、絆創膏で固定して3日おきに包帯を取り替えた後、14日目に動物を犠牲にした後、再生組織を採取してマッソントリクローム染色を用いて真皮層の結合組織であるコラーゲンに対して特殊染色を行い、真皮層の各3ヶ所の総面積に対するコラーゲンの面積をImageJプログラムで測定する。
【0028】
前記細胞膜速透過成分は、例えば、ヨウ素化合物であってもよく、他の例によれば、ヨウ素酸カリウム、二ヨウ素酸カリウム、ヨウ化メチル、ヨウ化水素酸、ヨウ化アセチル及びポビドンヨードよりなる群から選ばれたいずれか1種以上である。
前記細胞膜速透過成分は、更に他の例によれば、下記の一般式1
【化1】
(式中、nは、1〜100の整数であり、mは、1〜2000の整数であり、n:mは、1:10〜1:25である)で表わされる物質であってもよい。
前記nは、例えば、1〜100の整数であり、或いは、10〜80の整数であってもよい。
前記mは、例えば、1〜2000の整数であり、或いは、1〜1440の整数であってもよい。
前記n:mは、例えば、1:10〜1:25であり、好ましくは、1:15〜1:20であってもよい。
【0029】
前記バクテリア生長抑制層及び傷面感染因子除去層は、例えば、細胞膜速透過成分を含んでいてもよい。前記細胞膜速透過成分は、前記バクテリア生長抑制層及び傷面感染因子除去層に均一に分散された形態で存在する。
【0030】
前記バクテリア生長抑制層及び傷面感染因子除去層は、例えば、細胞膜速透過成分がバクテリア生長抑制層及び傷面感染因子除去層100重量%に対して0.01〜10重量%、或いは、0.1〜7重量%で含まれてもよく、この範囲内において殺菌力及び抗菌力に優れているという効果がある。
【0031】
前記バクテリア生長抑制層は、例えば、500μm以下、0.01〜400μm、又は70〜400μmの多孔(pore)径を有するものであってもよく、この範囲内において担持力の増加効果がある。
【0032】
前記「バクテリア生長抑制層内の多孔径が500μm以下である」とは、前記バクテリア生長抑制層内の80%以上、90%以上又はすべての多孔の径が500μm以下であることをいう。
【0033】
また、バクテリア生長抑制層は、セルサイズ(cellsize)が、例えば、30〜500μm、70〜400μm、又は100〜350μmであってもよく、この範囲内において滲出物の担持力が高いので湿潤環境を保つ上で効果がある。
【0034】
前記傷面感染因子除去層は、例えば、300μm以下、0.01〜200μm又は10〜100μmの多孔(pore)径を有するものであってもよく、この範囲内において新生組織の浸透を防ぐ効果がある。
【0035】
前記「傷面感染因子除去層内の多孔径が300μm以下である」とは、前記傷面感染因子除去層内の80%以上、90%以上又はすべての多孔の径が300μm以下であることをいう。
【0036】
また、傷面感染因子除去層は、セルサイズ(cell size)が、例えば、50〜400μm、70〜400μm、又は100〜350μmであってもよく、この範囲内において新生組織の浸透を防ぐ効果がある。
【0037】
前記多孔径及びセルサイズは、白金コーティングの施された試片を走査電子顕微鏡で7ポイントを選定して最長距離の直径を測定した平均値である。
【0038】
前記バクテリア生長抑制層及び傷面感染因子除去層は、ポリウレタンプレポリマー40〜70重量%、発泡剤15〜45重量%、架橋剤5〜35重量%、界面活性剤0.1〜2重量%及び補助剤(アジュバント)0.5〜15重量%である混合発泡物を含んでいてもよい。
【0039】
ここで、前記ポリウレタンプレポリマーは、イソシアネート1〜4モルに対してポリエーテルポリオール類が0.15〜2モルの割合で合成されたことが好ましい。
前記イソシアネートとしては、例えば、イソフォロンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートの異性質体、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リシンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエーテル)−フマレート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、1,3−キシレンジイソシアネートなどよりなる群から選ばれたいずれか1種以上を使用することができ、好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートの異性質体、p−フェニレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート及びヘキサメチレンジイソシアネートよりなる群から選ばれたいずれか1種以上を使用する。
【0040】
前記ポリエーテルポリオール類は、例えば、分子内に3つ以上の水酸基を有し、重量平均分子量が3,000〜6,000g/molであり、エチレンオキシドのモル比含量が50〜80%であるエチレンオキシド/プロピレンオキシドランダム共重合体と、分子内に2つ以上の水酸基を有し、重量平均分子量が1,000〜4,000g/molであるポリプロピレングリコールとを30:70の重量比で混合して使用することができ、好ましくは、分子内に3つの水酸基を有し、重量平均分子量が3,000〜6,000g/molであり、エチレンオキシドのモル比含量が50〜80%であるエチレンオキシド/プロピレンオキシドランダム共重合体を単独で使用することが好ましい。しかしながら、物性の調節のために、上述しなかった他のイソシアネート化合物及びポリオール類を混合して使用してもよい。
【0041】
前記発泡剤としては、例えば、クロロフルオロカーボン(CFC−141b)、メチレンクロリド(Methylenecholride)及び蒸留水などを使用することができ、好ましくは、蒸留水を使用する。
【0042】
前記架橋剤としては、例えば、分子内に2つ以上の水酸基を有する1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、プロピレングリコール、エチレングリコール、重量平均分子量が200〜2,000g/molであるポリエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール(pentaerythritol)、ソルボース(sorbose)、ソルビトール(sorbitiol)などを単独で又は混合して使用することができ、好ましくは、グリセロール、ソルビトール及び重量平均分子量が200〜2,000g/molであるポリエチレングリコール、トリメチロールプロパンよりなる群から選ばれたいずれか1種以上を使用する。
【0043】
前記界面活性剤としては、例えば、エチレンオキシドプロピレンオキシドブロック共重合体であるドイツのBASF社製のL−62、L−64、P−84、P−85、P−105、F−68、F−87、F−88、F−108、F−127又はこれらの混合物、及びシリコン系界面活性であるOsi社製のL−508、L−5305、L−5302、L−3150などから選ばれたいずれか1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0044】
前記補助剤(アジュバント)は、例えば、保湿剤、傷治癒促進剤、顔料及び細胞成長因子よりなる群から選ばれたいずれか1種以上であってもよい。
【0045】
前記保湿剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリサッカライド、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、グアガム、アルギン酸ナトリウム、キチン、キトサン、ゼラチン、スターチ、ヒアルロン酸、ケラタン、コラーゲン、デルマタン硫酸、ペクチン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ローカストビーンガム、ハイドロキシエチルセルロース、人参粉末又は抽出物、ビタミン(A、B複合体、C、D、E、F、K、U、L、P)、キサンタンガム、パルプ及びカラヤガムよりなる群から選ばれたいずれか1種以上が使用される。
【0046】
前記傷治癒促進剤としては、例えば、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリサッカライド、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ペクチン、グアガム、アルギン酸ナトリウム、キチン、キトサン、ゼラチン、スターチ、ヒアルロン酸、ケラタン、コラーゲン、デルマタン硫酸、ペクチン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ローカストビーンガム、ハイドロキシエチルセルロース、人参粉末又は抽出物、ビタミン(A、B複合体、C、D、E、F、K、U、L、P)、キサンタンガム、パルプ及びカラヤガムよりなる群から選ばれたいずれか1種以上が使用される(前記保湿剤と同じものではない)。
【0047】
前記細胞成長因子としては、例えば、血小板由来成長因子(PDGF)、形質転換成長因子(TGF−β)、表皮細胞由来成長因子(EGF)、繊維芽細胞由来成長因子(FGF)、血管細胞成長因子(VEGF)などを単独で又は混合して使用することができる。
前記外部感染因子予防層は、例えば、不織布、シリコン系フィルム、ポリオレフィン系フィルム及びポリウレタン系フィルムのうちから1種以上を選択することができる。
【0048】
例えば、前記外部感染因子予防層として不織布を選択することができる。前記不織布は、好ましくは、ガーゼドレッシング材であってもよい。
他の例によれば、前記外部感染因子予防層としてポリウレタン系フィルムを選択することができる。前記ポリウレタンフォームは、好ましくは、フォームドレッシング材であってもよい。
【0049】
前記ドレッシング材は、例えば、上から外部感染因子予防層、バクテリア生長抑制層及び傷面感染因子除去層の順に形成されてもよい。
前記ドレッシング材は、具体的に、外部感染因子予防層が10〜500μmの厚さに、バクテリア生長抑制層が0.1〜20mmの厚さに、且つ、傷面感染因子除去層が0.01〜100μmの層厚さに形成されたものであってもよい。
前記ドレッシング材は、他の例によれば、外部感染因子予防層が10〜400μmの層厚さに、バクテリア生長抑制層が0.1〜15mmの厚さに、且つ、傷面感染因子除去層が0.1〜40μmの厚さにこの順に形成されたものであってもよい。
【0050】
本発明のドレッシング材は、例えば、密度が0.05g/cm以上、或いは、0.1〜0.5g/cmの範囲内であってもよく、この範囲内において人体の屈曲面においても密着力に優れているという効果がある。
本発明のドレッシング材は、特定の例として、極性基を含有する炭化水素系重合体を使用することができるが、この場合、炭化水素からなる鎖により外部感染因子予防層と傷面感染因子除去層との間、或いは、外部感染因子予防層と、バクテリア生長抑制層及び傷面感染因子除去層間のなじみ性が大幅に向上し、その結果、製造される成形フォームに安定的な構造を形成する。
【0051】
前記極性基を含有する炭化水素系重合体は、例えば、エポキシ変性ポリスチレン共重合体、エチレン−無水エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アルキルアクリレート−アクリル酸共重合体、無水マレイン酸変性高密度ポリエチレン、無水マレイン酸変性線形低密度ポリエチレン、エチレン−アルキルメタクリレート−メタクリル酸共重合体、エチレン−ブチルアクリレート共重合体、エチレン−ビニルアセテート共重合体及び無水マレイン酸変性エチレン−ビニルアセテート共重合体よりなる群から選ばれたいずれか1種以上であってもよく、この範囲内において相溶性及び遮断性に優れているという効果がある。
【0052】
前記エポキシ変性ポリスチレン共重合体は、例えば、スチレン70〜99重量%及びエポキシ化合物1〜30重量%からなる主鎖100重量部と、アクリル系単量体1〜80重量部と、からなる枝を有するものであってもよい。
【0053】
前記無水マレイン酸変性高密度ポリエチレン、無水マレイン酸変性線形低密度ポリエチレン及び無水マレイン酸変性エチレン−ビニルアセテート共重合体は、それぞれ主鎖100重量部に対して無水マレイン酸0.1〜10重量部からなる枝を有するものであってもよいが、この範囲内において相溶性、作用し易さ及び商品性に優れているという効果がある。
【0054】
前記極性基を有する炭化水素系重合体は、例えば、本発明の各層を構成する成分100重量%のうち0.1〜10重量%、或いは、1〜5重量%の範囲内で投入されてもよく、この範囲内において外部感染因子予防層と傷面感染因子除去層との間、或いは、外部感染因子予防層と、バクテリア生長抑制層及び傷面感染因子除去層間のなじみ性が大幅に向上して、その結果、製造される成形品に安定的な構造を形成するという効果がある。
本発明によれば、上述した抗菌ドレッシング材の製造装置において、左右移動式の発泡手段、冷却手段、圧着ローラー及び乾燥手段がこの順に形成された連続製造装置を用いて連続して製造することを特徴としてもよい。
【0055】
前記連続製造方法に使用する装置であって、前記連続製造装置は、例えば、コンベヤーの上部に搬送される第1の離型紙のコーティング保護フィルムの上にポリウレタンプレポリマー発泡混合液を適用するための左右移動式の発泡手段、前記ポリウレタンプレポリマー発泡混合液の硬化を遅らせるための冷却手段、前記冷却手段を経て搬送されるポリウレタンフォームにシリコンがコーティングされた第2の離型紙を貼着するための圧着ローラー、及び乾燥手段がこの順に形成されたものであってもよい。
【0056】
前記冷却手段は、例えば、空気調和設備のうちから選択することができ、また、前記左右移動式の発泡手段の上部にはポリウレタンプレポリマー供給手段及び発泡添加剤供給手段が配備され、ガイド手段により左右移動式の発泡手段に供給され、前記左右移動式の発泡手段の末端にはエア噴射ノズルが配備されたものであってもよい。
【0057】
前記コンベヤーは、下部フレームの水平軸を基準として0°の角度を保ちながら配備され、第2の離型紙を供給するようにコンベヤーに分枝されたロール部材は、前記下部フレームの水平軸を基準として15〜20°の角度で傾いた状態で配備されたものであってもよい。
【0058】
前記乾燥手段は、幅が0.1〜1.1mであり、密度が0.1〜0.5g/cmの範囲内であるドレッシング材を巻き取るための手段が更に配備されたものであってもよい。
本発明のバクテリア生長抑制層及び傷面感染因子除去層の製造方法は、(i)ポリオール及びジオールを投入して攪拌した後、イソシアネートを投入して窒素雰囲気下でNCOの含量(モル%)が理論値1〜20に達するまで反応させてポリウレタンプレポリマーを製造するステップと、(ii)細胞膜透過成分、架橋剤、発泡剤、界面活性剤及び補助剤(アジュバント)を投入して均一に混合して発泡混合液を製造するステップと、(iii)前記製造したポリウレタンプレポリマー及び前記発泡混合液を混合して発泡させるとともに、1〜20℃の空気を噴射して硬化を遅らせ、ポリウレタン発泡フォームの粘性を保つステップと、(iv)前記粘性が保たれたポリウレタン発泡フォームの上部に第2の離型紙を貼着した後に硬化させるステップと、を含む。
【0059】
このようにして製造されたドレッシング材は、第1の離型紙と接する面には厚さが0.1〜20mmであり、多孔径が500μm以下である微細気孔が形成され、上側には厚さが0.01〜100μmであり、多孔径が300μm以下である微細気孔が形成されて、バクテリア生長抑制層及び傷面感染因子除去層の2層構造を有する。
【0060】
以下、本発明の理解への一助となるために好適な実施例を提示するが、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲及び技術思想の範囲内において様々な変更及び修正を行うことができるということは当業者にとって自明であり、このような変形及び修正が添付の特許請求の範囲に属するということは言うまでもない。
【0061】
[実施例]
下記の実施例及び比較例において、下記の材料を用いて実験を行った。
【0062】
合成例1(ポリウレタンプレポリマー)
イソシアネート末端基を有するポリウレタンプレポリマーは、攪拌器付き3Lの丸底フラスコを用いて354gのジフェニルメタンジイソシアネート及び314gのイソフォロンジイソシアネートを投入し、80℃に昇温させた後、2以上の水酸基を有するエチレンオキシド/プロピレンオキシドランダム共重合体を少量ずつ添加しながら理論NCOモル%が3.3に達するまで反応させて製造した。反応の途中に試料を採取してNCOモル%を測定し、NCOモル%は、n−ブチルアミン標準溶液を用いて滴定法により測定した。
【0063】
合成例2(発泡混合液)
前記合成例1において製造したポリウレタンプレポリマーと反応させて発泡液を製造するために、発泡剤として蒸留水48.38重量%、架橋剤としてグリセリン38.4重量%、細胞膜速透過成分としてポビドンヨード10重量%、添加剤としてF−87(BASF社製)2.8重量%、補助剤としてL−640.4重量%、水溶性顔料0.02重量%を添加して均質に混合した。
【0064】
外部感染因子予防層
外部感染因子予防層として、ポリウレタン樹脂100重量部にメチルエチルケトン70重量部、ジメチルホルムアミド25重量部及び顔料5重量部を添加して攪拌した後、気泡を除去し、シリコンがコーティングされた離型紙に塗布した後に乾燥させて予め無孔型の外部感染因子予防層を用意した。
【0065】
実施例1
末端にスプレイノズルを備えた発泡機内において合成例1及び合成例2を重量比2:1で混合した。前記発泡機内において2,500rpmにて5秒間攪拌した後、発泡混合液をコンベヤーの上部において1分当たりに5mの速度で動く外部感染因子予防層がコーティングされた離型紙の上に発泡させるとともに、20℃の空気を噴射して硬化を遅らせ、ポリウレタン発泡フォームの粘性を保つようにした。
次いで、前記ポリウレタン発泡フォームの上部にシリコンがコーティングされた第2の離型紙を供給するようにコンベヤーに分枝されたロール部材が前記下部フレームの水平軸を基準として15〜20°の角度で傾いた状態で回転しながらシリコンがコーティングされた第2の離型紙と貼着するようにチャンバーを通過させた後、30℃の乾燥部において1分間硬化させてシート状のロール状に巻かれた厚さ5mmのバクテリア生長抑制層及び傷面感染因子除去層付きドレッシング材を得た。
前記ドレッシング材は、外部感染因子予防層が25μmの厚さに形成され、細胞膜速透過成分入り傷面感染因子除去層が25μmの層厚さに形成され、同様に細胞膜速透過成分入りバクテリア生長抑制層が5mmの厚さに形成された。
【0066】
比較例1
スミス・アンド・ネフュー社製のAllevyn Agフォームドレッシング材
【0067】
比較例2
メンリッケヘルスケア社製のMepilex Agフォームドレッシング材
【0068】
比較例3
スミス・アンド・ネフュー社製のActicoatドレッシング材
【0069】
比較例4
コンバテック社製のAquacel Agドレッシング材
【0070】
前記実施例1及び比較例1〜4において得られたポリウレタンフォームドレッシング材に対して下記の物性を測定した。
【0071】
モルフォロジーの測定
実施例1及び比較例1〜4のドレッシング材の傷面感染因子除去層及びバクテリア生長抑制層の表面分析を電子走査顕微鏡(株式会社島津製作所製、SUPERSCANSS−550)を用いて測定した。
【0072】
実施例1及び比較例1〜4の傷面感染因子除去層に白金イオンコーティングを施した後、電子走査顕微鏡(株式会社島津製作所製、SUPERSCANSS−550)で表面を観察して図1に示し、多孔径を表1に示した。
【0073】
実施例1及び比較例1〜4のバクテリア生長抑制層に白金イオンコーティングを施した後、電子走査顕微鏡(株式会社島津製作所製、SUPERSCANSS−550)で表面を観察して図1に示し、多孔径を表2に示した。
【0074】
図1に示すように、本発明による実施例1は、傷面感染因子除去層に新生組織が浸透し難い多孔径を有しており、バクテリア生長抑制層の多孔径もまた小さいので滲出物の担持力が高いことから、湿潤環境の維持能に優れていた。これに対し、比較例1及び2は、多孔径が大きいため新生組織が浸透し易く、その結果、創傷に付着する虞があるという欠点があり、比較例3及び4は、繊維状に形成されて適切な担持率を有し難い構造であった。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】
吸収力及び担持力の測定
吸収度を測定するために、実施例1及び比較例1〜4のドレッシング材を5cm×5cmの大きさで取って50℃の真空オーブンにおいて24時間かけて乾燥させた後に初期の重さ(W1)を測定し、37℃の蒸留水に30分間含浸した後、ドレッシング材の表面の水気を拭き取った後に重さ(W2)を測定し、下記の数式1を用いて吸収力を計算して図2に示した。
(数1)
吸収力(g/cm)=(W2−W1)g/初期試料の面積(cm
担持力は、前記吸収力を測定したサンプルの上に5kgの重さの睡で20秒間押下した後の重さ(W3)を測定し、下記の数式2を用いて担持力を計算し、これを図3に示した。
(数2)
担持力(g/cm)=(W3−W1)g/初期試料の面積(cm
実施例1は、比較例1〜4に比べて滲出物を吸収する吸収力に優れているので、高速な創傷の治癒を誘導するという効果があり、且つ、担持力に優れているので、マセレーション(maceration)を防ぐという効果がある。
【0078】
細胞毒性の測定
ISO 10993−5、12に基づいてMEM培養液により単層培養された細胞をトリプシン処理して細胞の濃度が1mL当たりに10個になるように調節し、96ウェルに100μLずつ注入した。前記トリプシンの除去された細胞を24時間かけて培養(37、5% CO)して単層培養が行われたウェルを選択し、それぞれを実施例1、比較例1〜3と表記した後に培地を除去した。
次いで、実施例1、比較例1〜3及び対照群の抽出液を選択されたウェルに100μLずつ投与し、5% CO培養装置を用いて37℃において24時間かけて培養した。培養後に、顕微鏡像で(×40倍)細胞の溶解又は形状を観察して図4に示し、MTT分析方法により細胞生存率を測定して図5に示した。
図5において、陰性対照群は、細胞毒性がない状態での細胞の増殖を示すものであり、陽性対照群は、細胞毒性がある状態を示すものであり、実施例1は、陰性対照群と略同様に細胞の増殖が行われたが、比較例1〜3は、陽性対照群と略同じ状態であって、細胞毒性があることが分かる。
実施例1は、比較例1〜3に比べて、細胞毒性実験による細胞生存率がはるかに高くなったことを確認することができた。
【0079】
抗菌力の測定
ASTM E2149−10に基づいて実施例1及び比較例1〜4の(1) 試料を1.0±0.1gで用意した後、各試料別に無菌250mlの振とうフラスコを用意して細菌接種物の実行希釈液50±0.5mlを各フラスコに追加した。各フラスコ中に実施例1及び比較例1〜4の試料をそれぞれ配置した後、各フラスコを振とう機(wrist−actionshaker)の上に載せ、60±5分間最大の速度で振とうし且つ希釈して平板培地に分注し、24時間かけて35±2℃のインキュベーターにおいて培養した後、顕微鏡で培養ペトリ皿内の集落数を確認した。顕微鏡写真は図6に示し、下記の数式3により計算した抗菌力は図7に示した。
(数3)
抗菌力(%)=(B−A)/B×100
A:試料及び細菌希釈液の接触時間後の細菌数
B:試料を処理しなかった対照群の細菌数
図6の顕微鏡写真において、実施例1及び比較例1〜4は、黄色葡萄状球菌及び緑膿菌 が見受けられなかった。
また、図7において、実施例1及び比較例1〜4の抗菌力が99%以上であった。
したがって、実施例1は、比較例1〜4に比べて、抗菌力に優れていながらも、細胞に対する毒性がないことを確認した。
【0080】
時間経過に伴う抗菌力の測定
ASTM E2149−10に基づいて実施例1及び比較例1〜3の(1) 試料を1.0±0.1gで用意した後、各試料別に無菌250mlの振とうフラスコを用意して細菌接種物の実行希釈液50±0.5mlを各フラスコに追加した。各フラスコ中に実施例1及び比較例1〜3の試料をそれぞれ配置した後、各フラスコを振とう機(wrist−actionshaker)の上に載せ、60±5分間最大の速度で振とうし、振とう機において細菌接種物の実行希釈液との接触が行われた試料を接触時間(1分、5分、10分、20分、30分、60分)に従いサンプリングした。全てのサンプルは直ちに連続的に希釈して平板培地に分注し、24時間かけて35±2℃のインキュベーターにおいて培養した後、顕微鏡で培養ペトリ皿内の集落数を確認した。顕微鏡写真は、黄色葡萄状球菌に対しては図8に示し、緑膿菌に対しては図9に示した。
図8及び図9の顕微鏡写真において、実施例1及び比較例3は、接触時間1分以内において黄色葡萄状球菌及び緑膿菌が見受けられなかった。これに対し、比較例1は30分以上から、比較例2は60分以上から菌が見受けられなかった。
したがって、実施例1は、比較例1及び2に比べて短い時間から抗菌力が発現されることを確認した。
【0081】
動物皮膚の再生有効性の測定
SD(スプラーグドーリーラット)ラットの背の全体を広く除毛し、直径が背部位の中央に2.5cmの筋膜層まで除去された創傷を誘導した。創の収縮を防ぐためにシリコンリングを用いて創面に沿って縫合糸で縫合した後、対照群(ガーゼ)、実施例1及び比較例1〜3を適用した後、自着性包帯で1周巻き付け、絆創膏で固定し、3日おきに対照群、実施例1及び比較例1〜3並びに自着性包帯を取り替えた。各群当たりに14日目に動物を犠牲にした後、再生組織を採取して組織染色を行い、再上皮化率は図10に示し、新生血管の数は図11に示し、コラーゲン沈積率は図12に示した。
前記再上皮化率は、下記の数式4により計算した。
(数4)
再上皮化率(%)=再上皮化された長さ/初期創傷の長さ×100
前記新生血管の数は、創傷の面積2.5cm内に再上皮化された組織の血管の数を自ら集計して測定した。
前記コラーゲン沈積率は、マッソントリクローム染色を用いて真皮層の結合組織であるコラーゲンに対して特殊染色を行い、真皮層の各3ヶ所の総面積に対するコラーゲンの面積をImageJプログラムでコラーゲン沈積率を下記の数式5により算出して測定した。
(数5)
コラーゲン沈積率(%)=真皮層のコラーゲン面積/真皮層の総面積×100
図10において、再上皮化率は、実施例1が対照群及び比較例1〜3に比べて最も高かった。図11及び図12において、実施例1が対照群及び比較例1〜3に比べて新生血管が最も多く生成され、コラーゲン沈積率に優れていることを確認することができた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12