特許第6705904号(P6705904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6705904抗体−リファマイシン複合体の製造プロセス
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  • 特許6705904-抗体−リファマイシン複合体の製造プロセス 図000041
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705904
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】抗体−リファマイシン複合体の製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07D 498/18 20060101AFI20200525BHJP
   C07K 16/12 20060101ALI20200525BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20200525BHJP
   A61K 31/5386 20060101ALN20200525BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20200525BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20200525BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20200525BHJP
   A61K 47/68 20170101ALN20200525BHJP
【FI】
   C07D498/18 301
   C07K16/12
   B01J31/02 102Z
   !A61K31/5386
   !A61K39/395 Y
   !A61P35/00
   !C07B61/00 300
   !A61K47/68
【請求項の数】20
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2018-540460(P2018-540460)
(86)(22)【出願日】2017年3月3日
(65)【公表番号】特表2019-510740(P2019-510740A)
(43)【公表日】2019年4月18日
(86)【国際出願番号】US2017020711
(87)【国際公開番号】WO2017152083
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2018年8月2日
(31)【優先権主張番号】62/303,556
(32)【優先日】2016年3月4日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】バックマン, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ファンタジア, セレナ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン, ミハエル
(72)【発明者】
【氏名】ケーニッヒ, ステファン
(72)【発明者】
【氏名】リンフ, シン
(72)【発明者】
【氏名】リート, ゼバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】セグレーブス, ナサニエル エル.
(72)【発明者】
【氏名】ツォク, アンドレアス
【審査官】 三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/194247(WO,A1)
【文献】 KAIZER, J. ET AL,TEMPO-initiated oxidation of 2-aminophenol to 2-aminophenoxazin-3-one,Journal of Molecular Catalysis A: Chemical,2002年,180(1-2),91-96
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D201/00−521/00
B01J 21/00− 38/74
C07B 61/00
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00− 47/69
A61K 39/395
C07K 16/12
A61K 31/33− 33/44
A61P 1/00− 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
F−ベンゾキサジノリファマイシンIの製造プロセスであって、
【化17】
前記製造プロセスは、リファマイシンS II、2−アミノ−5−フルオロベンゼン−1,3−ジオールIII、と、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO、酸素ガス、およびベンゾキノンから選択される1つ以上の酸化剤とを反応させて、Iを形成することを含み、ここで、前記酸素ガスは、前記反応ガス相の約5%〜約100%を構成し、
【化18】
ここで、前記酸化剤が、2−アミノ−5−フルオロベンゼン−1,3−ジオールIIIから分離されて保持される、前記製造プロセス。
【請求項2】
前記酸化剤が、酸素ガスを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記酸化剤が、触媒量のTEMPOを含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記酸化剤が、半連続プロセスによりIIIから分離され、IIがループプロセスにより改質されリサイクルされる、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
II及びIIIの反応を、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、トルエン、メタノール、及びテトラヒドロフランから選択される溶媒中で行う、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
F−リファIと、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、1−メチルピペラジン、N1−イソブチルピペラジン、及びN,N−ジメチルピペリジン−4−アミンから選択される第二級アミンRNHとを反応させ、IVを形成することをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【化19】
【請求項7】
前記第二級アミンがN,N−ジメチルピペリジン−4−アミンであり、IVが構造IVa
【化20】
を有する、請求項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第二級アミンがN1−イソブチルピペラジンであり、IVが構造IVb
【化21】
を有する、請求項に記載のプロセス。
【請求項9】
IVa及びVを反応させてリンカー−抗生物質VIを形成することをさらに含む、請求項に記載のプロセス
【化22】
【請求項10】
VIと抗体とを水性混合物中で反応させて抗体−リファマイシン複合体を形成することをさらに含む、請求項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記水性混合物が、プロピレングリコール、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)から選択される溶媒を含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記抗体が抗タイコ酸抗体である、請求項10に記載のプロセス。
【請求項13】
VII及び塩化チオニルを反応させてVを形成することをさらに含む、請求項に記載のプロセス。
【化23】
【請求項14】
Vを水から単離する、請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
F−ベンゾキサジノリファマイシンIの製造のための半連続ループプロセスであって、
【化1】

(i)リファマイシンS IIおよび2−アミノ−5−フルオロベンゼン−1,3−ジオールIIIをバッチ反応容器中で反応させて、Iを形成することであって、ここで、RIFA SVが副生成物として形成され、そしてフローリアクターに送達されること;
【化2】

(ii)1つ以上の酸化剤が前記RIFA SVを前記フローリアクター中で酸化させて、IIを形成し、ここで、前記1つ以上の酸化剤が、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)、反応ガス相の約5%〜約100%を構成する酸素ガス、およびベンゾキノンから選択される;ならびに
(iii)前記フローリアクター中で形成された前記IIが、前記バッチ反応容器に送達され、ここで、前記1つ以上の酸化剤および2−アミノ−5−フルオロベンゼン−1,3−ジオールIIIが分離されて保持される
を含む、前記半連続ループプロセス。
【請求項16】
前記1つ以上の酸化剤が、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)および酸素ガスから選択される、請求項15に記載の半連続ループプロセス。
【請求項17】
前記1つ以上の酸化剤が、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPO)である、請求項15に記載の半連続ループプロセス。
【請求項18】
前記1つ以上の酸化剤が、ベンゾキノンである、請求項15に記載の半連続ループプロセス。
【請求項19】
リファマイシンS IIおよび2−アミノ−5−フルオロベンゼン−1,3−ジオールIIIが、前記バッチ反応容器中で酢酸イソプロピル(iPrOAc)に溶解される、請求項15に記載の半連続ループプロセス。
【請求項20】
前記1つ以上の酸化剤が、前記フローリアクター中で酢酸イソプロピル(iPrOAc)に溶解される、請求項15に記載の半連続ループプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
37CFR§1.53(b)項に基づいて提出する本通常出願は、2016年3月4日に出願された米国仮出願第62/303,556号の35USC§119(e)項の利益を主張し、その全体を参照として本明細書に援用する。
本発明は、抗体−リファマイシン複合体化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫複合体としても知られる抗体−薬物複合体(ADC)は、強力な細胞傷害性薬物を抗原発現腫瘍細胞に標的化することによって、抗体及び細胞傷害性薬物の両方の理想的な特性を組み合わせる標的化学療法分子であり(Teicher,B.A.(2009)Curr.Cancer Drug Targets 9:982−1004)、有効性を最大化し、非標的毒性を最小化することによって治療指数を向上させる(Carter,P.J. and Senter P.D.(2008)The Cancer Jour.14(3):154−169;Chari,R.V.(2008)Acc.Chem.Res.41:98−107。ADCは、リンカーユニットを介して細胞傷害性薬物部分に共有結合させた標的化抗体を含む。複合体化していない薬物の全身投与が、正常細胞及び排除しようとする腫瘍細胞に対して許容不能なレベルの毒性をもたらし得る場合に、免疫複合体は、薬物部分を腫瘍へ標的化送達し、腫瘍内に細胞内蓄積させることが可能である(Polakis P.(2005)Curr.Opin.Pharmacol.5:382−387)。
がん治療におけるADCのコンセプトは、抗菌療法へ拡張されており、その場合には、薬物部分が抗生物質となり、抗体−抗生物質複合体(AAC)を生じる。抗WTAモノクローナル抗体を、1つ以上のリファマイシン型抗生物質部分(Lehar,S.et al(2015)“Novel antibody−antibiotic conjugate eliminates intracellular S.aureus”Nature 527(7578)323−328;Staben,L.R.,et al(2016)“Targeted drug delivery through the traceless release of tertiary and heteroaryl amines from antibody−drug conjugates”Nature Chemistry 8(12):1112−1119;Zhou,C.,et al(2016)“Pharmacokinetics and pharmacodynamics of DSTA4637A:A novel THIOMAB(商標) antibody antibiotic conjugate against Staphylococcus aureus in mice”MABS 8(8):1612−1619;WO2014/194247)及び他の抗生物質(WO2014/193722)への共有結合リンカーによる結合によって複合体化した。マウスにおけるS.aureusの細胞内リザーバが、バンコマイシンの存在下でさえ感染を確立できる細菌の病原性サブセットを有することが示された。抗WTAリファマイシン複合体は、細胞内のS.aureusを効果的に死滅させる新規治療薬である。の抗体−抗生物質複合体(AAC)は、有効性の高い抗生物質に複合体化したS.aureus標的化抗体からなり、ファゴリソソームのタンパク質分解環境中に放出された後にのみ活性化される。菌血症の治療に対して、この抗体−抗生物質複合体はバンコマイシンより優れており、細胞内S.aureusが侵襲性感染症の重要な構成要素を代表するという直接的な証拠を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/194247号
【特許文献2】国際公開第2014/193722号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Teicher,B.A.(2009)Curr.Cancer Drug Targets 9:982−1004
【非特許文献2】Carter,P.J. and Senter P.D.(2008)The Cancer Jour.14(3):154−169
【非特許文献3】Chari,R.V.(2008)Acc.Chem.Res.41:98−107
【非特許文献4】Lehar,S.et al(2015)“Novel antibody−antibiotic conjugate eliminates intracellular S.aureus”Nature 527(7578)323−328
【非特許文献5】Staben,L.R.,et al(2016)“Targeted drug delivery through the traceless release of tertiary and heteroaryl amines from antibody−drug conjugates”Nature Chemistry 8(12):1112−1119
【非特許文献6】Zhou,C.,et al(2016)“Pharmacokinetics and pharmacodynamics of DSTA4637A:A novel THIOMAB(商標) antibody antibiotic conjugate against Staphylococcus aureus in mice”MABS 8(8):1612−1619
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、抗体−リファマイシン複合体化合物の製造方法に関する:
【化1】
【0006】
本発明の一態様は、リファマイシンS IIと、2−アミノ−5−フルオロベンゼン−1,3−ジオールIIIと、TEMPO、ベンゾキノン、及び銅塩から選択される酸化剤とを反応させて、Iを形成することを含む、F−ベンゾキサジノリファマイシンIの製造プロセスである。
【化2】
【化3】
【0007】
本発明の別の態様は:
(a)1,3,5−トリフルオロ−2−ニトロベンゼンVIII及びベンジルアルコールと、リチウムビス(トリメチルシリルアミド)、リチウムジイソプロピルアミド、及びアルコキシド試薬から選択される塩基性試薬とを反応させて、(((5−フルオロ−2−ニトロ−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(メチレン))ジベンゼンIXを形成し、
【化4】
;ならびに
(b)IXを水素ガス及び不均一系金属触媒と反応させてIIIを形成することを含む、
2−アミノ−5−フルオロベンゼン−1,3−ジオールIIIの製造プロセスである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】フローリアクター及びバッチ反応器を用いた半連続ループプロセスによって、2−アミノ−5−フルオロベンゼン−1,3−ジオールIIIによってリファマイシンS IIを酸化的環化し、F−ベンゾキサジノリファマイシンIを得るための一般的なプロセス(スキーム1)の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
定義
用語「キラル」とは、鏡像パートナーに対して重ね合わせ不可能な性質を有する分子を指し、用語「アキラル」とは、それらの鏡像パートナーに重ね合わせ可能な分子を指す。
【0010】
用語「立体異性体」とは、同一の化学構造を有するが、空間中の原子または基の配置に関して異なる化合物を指す。
【0011】
「ジアステレオマー」とは、2つ以上のキラリティー中心を有し、その分子が互いに鏡像ではない立体異性体を指す。ジアステレオマーは、異なる物理的性質、例えば、融点、沸点、スペクトル特性、及び反応性を有する。ジアステレオマーの混合物は、電気泳動及びクロマトグラフィーなどの高分解能分析手順の下で分離し得る。
【0012】
「エナンチオマー」とは、互いに重ね合わせ不可能な鏡像である化合物の2つの立体異性体を指す。
【0013】
本明細書中で使用する立体化学的な定義及び慣習は、一般的にS.P.Parker,Ed.,McGraw−Hill Dictionary of Chemical Terms(1984)McGraw−Hill Book Company,New York;及びEliel,E.and Wilen,S.,“Stereochemistry of Organic Compounds”,John Wiley&Sons,Inc.,New York,1994に従う。本発明の化合物は、不斉またはキラル中心(立体中心)を含む場合があり、したがって、異なる立体異性型において存在する。ジアステレオマー、エナンチオマー及びアトロプ異性体、ならびにラセミ混合物などのそれらの混合物を含むがこれらに限定されない本発明の化合物のすべての立体異性型が本発明の一部を形成することが意図される。多くの有機化合物は、光学活性形態で存在し、すなわち、それらは、平面偏光のを回転させる能力を有する。光学活性化合物を記載する際に、接頭辞D及びL、またはR及びSは、そのキラル中心(複数可)についての分子の絶対配置を示すために使用する。接頭辞d及びlまたは(+)及び(−)は、化合物による平面偏光の回転の符号を示すために使用し、(−)または1は、化合物が左旋性であることを意味する。接頭辞が(+)またはdの化合物は右旋性である。所与の化学構造に関して、これらの立体異性体は、それらが互いに鏡像であることを除いて同一である。特定の立体異性体はエナンチオマーとも呼ばれる場合があり、そのような異性体の混合物は、多くの場合、エナンチオマー混合物と呼ばれる。エナンチオマーの50:50混合物は、ラセミ混合物またはラセミと呼ばれ、化学反応またはプロセスにおいて立体選択または立体特異性がない場合に生じ得る。用語「ラセミ混合物」及び「ラセミ体」とは、光学活性のない2つのエナンチオマー種の等モル混合物を指す。
【0014】
用語「互変異性体」または「互変異性型」とは、低いエネルギー障壁を介して相互変換可能な、エネルギーの異なる構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピー互変異性体としても知られる)は、ケト−エノール異性化及びイミン−エナミン異性化などのプロトンの移動を介した相互変換を含む。原子価互変異性体には、いくつかの結合電子の再編成による相互変換が含まれる。
【0015】
本明細書中で使用する語句「薬学的に許容可能な塩」とは、本発明の化合物の薬学的に許容可能な有機塩または無機塩を指す。例示的な塩として、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、「メシル酸塩」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、及びパモ酸塩(すなわち、1,1′−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩))が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容可能な塩は、酢酸イオン、コハク酸イオンまたは他の対イオンなどの別の分子を含んでもよい。対イオンは、親化合物の電荷を安定化させる任意の有機または無機部分であってもよい。さらに、薬学的に許容可能な塩は、その構造中に1個よりも多い荷電原子を有していてもよい。複数の荷電原子が薬学的に許容可能な塩の一部である例では、複数の対イオンを有することができる。したがって、薬学的に許容可能な塩は、1つ以上の荷電原子及び/または1つ以上の対イオンを有することができる。
【0016】
本発明の化合物が塩基である場合、所望の薬学的に許容可能な塩は、当該技術分野で利用可能な任意の適切な方法、例えば、遊離塩基を無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、リン酸など、または有機酸、例えば酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、グルクロン酸もしくはガラクツロン酸などのピラノシジル酸、クエン酸もしくは酒石酸などのαヒドロキシ酸、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸などのアミノ酸、安息香酸もしくは桂皮酸などの芳香族酸、p−トルエンスルホン酸もしくはエタンスルホン酸などのスルホン酸などで処理することによって調製し得る。
【0017】
本発明の化合物が酸である場合、所望の薬学的に許容可能な塩は、任意の適切な方法、例えば遊離酸を無機または有機塩基、例えばアミン(第一級、第二級もしくは第三級)、アルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物などで処理することによって調製してもよい。適切な塩の実例として、グリシン及びアルギニンなどのアミノ酸由来の有機塩、アンモニア、第一級、第二級及び第三級アミン、ならびにピペリジン、モルホリン及びピペラジンなどの環状アミン、ならびにナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム及びリチウムから誘導される無機塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
「溶媒和物」とは、1つ以上の溶媒分子と本発明の化合物との会合体または複合体を指す。溶媒和物を形成する溶媒の例として、水、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸及びエタノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。用語「水和物」とは、溶媒分子が水である錯体を指す。
【0019】
本明細書中で使用する語句「薬学的に許容可能な塩」とは、本発明の化合物の薬学的に許容可能な有機塩または無機塩を指す。例示的な塩として、硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物塩、臭化物塩、ヨウ化物塩、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩「メシル酸塩」、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、及びパモ酸塩(すなわち、1,1′−メチレン−ビス−(2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸塩))が挙げられるが、これらに限定されない。薬学的に許容可能な塩は、酢酸イオン、コハク酸イオンまたは他の対イオンなどの別の分子を含んでもよい。対イオンは、親化合物の電荷を安定化させる任意の有機または無機部分であってもよい。さらに、薬学的に許容可能な塩は、その構造中に1個よりも多い荷電原子を有していてもよい。複数の荷電原子が薬学的に許容可能な塩の一部である例では、複数の対イオンを有することができる。したがって、薬学的に許容可能な塩は、1つ以上の荷電原子及び/または1つ以上の対イオンを有することができる。
【0020】
抗体−リファマイシン複合体の調製
本発明は:
【化5】
として示される抗体−リファマイシン複合体化合物の合成のためのプロセス、方法、試薬、及び中間体を含み、
式中、Abは抗WTA(タイコ酸)抗体であり、pは1〜約4の整数である(Lehar,S.et al(2015)“Novel antibody−antibiotic conjugate eliminates intracellular S.aureus”527(7578)323−328;WO2014/194247;WO 2014/193722、前記文献の各々の内容は参照として本明細書に援用する)。抗体は、生理学的に切断されるジペプチド(バリン−シトルリン)及びp−アミノベンジルスペーサーを含むリンカーを介してリファマイシン抗生物質部分に共有結合している(Carl,P.L.et al(1981)J.Med.Chem.24(5):479−480;Dubowchik,G.M.et al(1998)Chem.Lett.8:3341−3346;Dubowchik,G.M.et al(2002)Bioconjugate Chem.13:855−869)。リファマイシン部分の第三級アミン末端は、抗体−リファマイシン複合体化合物中に第四級アンモニウム塩を形成し、切断された場合に活性抗生物質を遊離させる。第四級アンモニウム基はまた、切断を調節し、溶解性を最適化し、複合体化合物の凝集を最小限にすることにも役立ち得る。
【0021】
グラム陽性細菌の厚いペプチドグリカン層は、タイコ酸(WTA)と呼ばれる病原体特異的ポリアニオン性グリコポリマーに結合している。具体的には、S.aureusは、それぞれTarMまたはTarSグリコシルトランスフェラーゼによって媒介されるα(アルファ)−またはβ(ベータ)−O−結合N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)糖修飾のいずれかによってさらに修飾されたホスホリビトール反復単位からなるWTAを産生する(Winstel,V.,et al(2014)Int J Med Microbiol 304,215−221)。タイコ酸(TA)は、SAを含むグラム陽性細菌の細胞壁内に見出される細菌性多糖類である。タイコ酸(WTA)は、細胞壁のペプチドグリカン(PDG)層に共有結合したものであり;一方、リポタイコ酸(LTA)は細胞質膜の脂質に共有結合したものである(Xia et al.(2010)Intl.J.Med.Microbiol.300:148−54)。これらのグリコポリマーは、不利な条件及び他の基本的な細胞プロセスにおいて、細菌の生存に重要な役割を果たす。公知のWTA構造は細菌種によって多様に異なる。S.aureusのTAは、リビトールリン酸またはグリセロールリン酸などの反復ポリオールリン酸サブユニットからなる。
【0022】
用語「タイコ酸」(WTA)とは、N−アセチルムラミン酸糖のC6ヒドロキシルへのホスホジエステル結合を介してペプチドグリカンに共有結合したアニオン性グリコポリマーを意味する。正確な化学構造は生物間で異なり得るが、一実施形態では、WTAは、2位にD−リビトール及びD−アラニルエステルの1,5−ホスホジエステル結合の反復単位、4位にグリコシル置換基を有するリビトールテタイコ酸である。グリコシル基は、S.Aureusに存在するN−アセチルグルコサミニルα(アルファ)またはβ(ベータ)であってもよい。アルジトール/糖アルコールリン酸リピートのヒドロキシルは、カチオン性D−アラニンエステル及びN−アセチルグルコサミンなどの単糖で置換される。一態様では、ヒドロキシル置換基は、D−アラニル及びアルファ(α)またはベータ(β)GlcNHAcを含む。特定の一態様では、WTAは、式:
【化6】
の化合物を含み、式中、波線は、反復結合単位またはポリアルジトール−Pもしくはペプチドグリカンの結合部位を示し、式中、XはD−アラニルまたは−Hであり;Yはα(アルファ)−GlcNHAcまたはβ(ベータ)−GlcNHAcである。
【化7】
【0023】
S.aureusにおいて、WTAはN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)−1−P及びN−アセチルマンノサミン(ManNAc)からなる二糖と、それに続く2〜3単位のグリセロールリン酸を介してN−アセチルムラミン酸(MurNAc)の6−OHに共有結合する。そういうわけで、実際のWTAポリマーは、11〜40個のリビトールリン酸(Rbo−P)反復単位からなる。WTAの段階的合成はTagOと呼ばれる酵素によって最初に開始され、TagO遺伝子を欠くS.aureus株(遺伝子の人為的欠失による)はWTAを全く作らない。反復単位は、C2−OHのD−アラニン(D−Ala)及び/またはα−(アルファ)またはβ−(ベータ)グリコシド結合を介したC4−OH位のN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)を用いてさらに適合させることができる。S.aureus株または同細菌の増殖期に応じて、グリコシド結合はα−、β−、または2つのアノマーの混合物であり得る。
【0024】
抗体重鎖及び軽鎖の同族対形成を保存するモノクローナル抗体発見技術を用いて、S.aureus感染後の患者由来の末梢B細胞から、抗β(ベータ)−GlcNAc WTA mAb及び抗α(アルファ)−GlcNAc WTA mAbに対するヒトIgG抗体をクローニングした(Meijer,P.J.,et al.(2006) Journal of molecular biology 358:764−772)。個々の抗体クローンを、哺乳類細胞形質移入によって発現させた(Meijer,P.J.,et al(2009) Methods Mol Biol 525:261−277,xiv)。完全長IgG1抗体を含有する上清を7日後に採取し、ELISAによる抗原結合のスクリーニングに用いた。これらの抗体は、USA300由来の細胞壁調製物への結合について陽性であった。次いで、200mlの一過性の形質移入によって抗体を産生し、プロテインAクロマトグラフィー(MabSelect SuRe(商標)、GE Life Sciences、ピスカタウェイ、NJ)で精製した。
【0025】
最高レベルの抗体結合は、WTA上のβ(ベータ)−O−結合GlcNAc糖修飾を認識するヒトIgGで見出された(Lehar,S.et al(2015)527(7578)323−328)。α(アルファ)−O−結合GlcNAcを認識するモノクローナル抗体では、より低い結合が達成され;サイトメガロウイルス(CMV)gDタンパク質に対するアイソタイプ対照抗体は、in vivo由来S.aureus上にプロテインAが発現しているために、いくらかの最小の反応性を示した。抗体の抗原特異性は、遺伝的手段によって決定したため、WTA上のα(アルファ)−またはβ(ベータ)−GlcNAcs糖修飾に対する抗体は、それぞれのグリコシルトランスフェラーゼを欠くS.aureus株に結合できなかった。
【0026】
抗WTA抗体は、米国特許第8283294号;Meijer PJ et al(2006)J Mol Biol.358(3):764−72;Lantto J,et al(2011)J Virol.85(4):1820−33に教示されている方法によって選択及び製造してもよい。
【0027】
抗体の反応部位においてシステインアミノ酸を改変してもよく、そしてそれは鎖内または分子間ジスルフィド結合を形成しない(Junutula,et al.,2008b Nature Biotech.,26(8):925−932;Dornan et al(2009)Blood 114(13):2721−2729;US 7521541;US 7723485;WO2009/052249,Shen et al(2012)Nature Biotech.,30(2):184−191;Junutula et al(2008)Jour of Immun.Methods 332:41−52)。改システインチオールは、マレイミドまたはα−ハロアミドのようなチオール反応性求電子基を有する本発明のリンカー試薬またはリンカー−抗生物質中間体と反応して、システイン改抗体(チオMab)及び抗生物質部分を有するAACを形成し得る。したがって、抗生物質部分の位置は、設計、制御可能であり、公知であり得る。改システインチオール基は、通常、チオール反応性リンカー試薬またはリンカー−抗生物質中間体と高収率で反応するため、抗生物質の負荷率を制御することができる。抗WTA抗体を改変し、重鎖または軽鎖上の単一部位での置換によってシステインアミノ酸を導入することは、対称テトラマー抗体上に2つの新規システインを与える。2に近い抗生物質の負荷率を達成することができ、そして複合体生成物AACほぼ均質
【0028】
特定の実施形態では、抗体の1つ以上の残基をシステイン残基で置換したシステイン改抗WTA抗体、例えば「チオMAb」を作製することが望ましい場合がある。特定の実施形態では、置換残基は、抗体の接近可能な部位で生じる。本明細書においてさらに説明するように、これらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基が抗体の接近可能な部位に位置し、これを用いて、抗体を、他の部分、例えば抗生物質部分またはリンカー−抗生物質部分に結合させ、免疫複合体を作製してもよい。特定の実施形態では、軽鎖のV205(Kabatナンバリング);重鎖のA118(EUナンバリング);重鎖Fc領域のS400(EUナンバリング)を含む、上記残基のいずれか1つ以上をシステインで置換してもよい。非限定的な例示的なシステイン改抗体は、抗WTA抗体の重鎖A118C及び軽鎖V205C変異体である。システイン改抗WTA抗体は、記載されているように生成してもよい(Junutula,et al.,2008b Nature Biotech.,26(8):925−932;US7521541;US−2011/0301334。
【0029】
本発明の抗体−抗生物質複合体(AAC)のリファマイシン型抗生物質部分は、細胞傷害性または細胞増殖抑制効果を有する。リファマイシンは、細菌Nocardia mediterranei、Amycolatopsis mediterraneiにより天然に、または人工的に得られる抗生物質の群である。それらは細菌RNAポリメラーゼを阻害するより大きなアンサマイシンファミリーのサブクラスであり(Fujii et al(1995)Antimicrob.Agents Chemother.39:1489−1492;Feklistov,et al(2008)Proc Natl Acad Sci USA,105(39):14820−5)、グラム陽性及び選択的なグラム陰性菌に対して効力を有する。リファマイシンは、マイコバクテリアに対して特に有効であり、したがって、結核、ハンセン病、及びmycobacterium avium complex(MAC)感染の治療に使用される。リファマイシン型の群には、「古典的」リファマイシン薬ならびにリファマイシン誘導体リファンピシン(リファンピン、化学抄録登録番号13292−46−1)、リファブチン(化学抄録登録番号72559−06−9;US2011/0178001)、リファペンチン及びリファラジル(Rothstein et al(2003)Expert Opin.Investig.Drugs 12(2):255−271;Fujii et al(1994)Antimicrob.Agents Chemother.38:1118−1122;Yamane,T.;et al(1992)Chem.Pharm.Bull.,40:2707;(b)Yamane,T.;et al(1993)Chem.Pharm.Bull.,41:148−155)が含まれる。多くのリファマイシン型抗生物質は、耐性発生の有害な特性を共有している(Wichelhaus et al(2001)J.Antimicrob.Chemother.47:153−156)。リファマイシンは、1957年にStreptomyces mediterraneiの発酵培養物から最初に単離された。リファマイシンA、B、C、D、E、S及びSVというおよそ7つのリファマイシンが発見された(米国特許第3150046号)。リファマイシンBは、商業的に最初に導入され、1960年代に薬剤耐性結核の治療に有用であった。多数の利用可能な類似体及び誘導体のために、リファマイシンは、一般的に使用される抗生物質に耐性になっている病原性細菌の除去に広く利用されている。
【0030】
ベンゾキサジノリファマイシンは、リファマイシンの誘導体である。リファラジル(KRM−1648、化学抄録登録番号129791−92−0)は、アンサマイシンのクラスにおけるベンゾキサジノリファマイシンの一例であり、結核及び他の細胞内病原体を治療するために開発されたリファマイシン型抗生物質である(Rothstein,D.M.et al(2003)Expert Opinion Investig.Drugs 12(2):255−271;Rothstein,D.M.et al(2006)Expert Opinion Investig.Drugs 15(6):603−623;US4983602;US7342011;US7678791)。リファマイシンのベンゾキサジノリファマイシン誘導体は、その抗菌特性が知られており(US4690919;EP0190709;US4983602)、アミノレゾルシノール化合物とリファマイシンSの酸化的環化によって調製し得る(Yamane,T.;et al(1992)Chem.Pharm.Bull.,40:2707;(b)Yamane,T.;et al(1993)Chem.Pharm.Bull.,41:148−155)。
【0031】
ベンゾキサジノリファマイシン類似体IVは、その高い効力、低いファゴリソソームpHにおけるその変化することのない殺菌活性、細胞内の傷害へのその耐性能力、及びそれが抗体複合体化され得る容易さから選択された。
【0032】
本発明の化合物は、非溶媒和形態、及び水、エタノールなどの薬学的に許容可能な溶媒との溶媒和形態で存在してもよく、本発明は、溶媒和形態及び非溶媒和形態の両方を包含することが意図される。
【0033】
本発明の化合物はまた、異なる互変異性体の形態で存在してもよく、そのような形態はすべて本発明の範囲内に包含される。用語「互変異性体」または「互変異性型」とは、低いエネルギー障壁を介して相互変換可能な、エネルギーの異なる構造異性体を指す。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピー互変異性体としても知られる)は、ケト−エノール異性化及びイミン−エナミン異性化などのプロトンの移動を介した相互変換を含む。原子価互変異性体には、いくつかの結合電子の再編成による相互変換が含まれる。
【0034】
本発明の化合物はまた、本明細書中で列挙したものと同一であるが、1つ以上の原子を、自然界に通常見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子で置換した同位体標識化合物も含む。指定する任意の特定の原子または元素のすべての同位体が、本発明の化合物及びその使用の範囲内において意図される。本発明の化合物に組込み可能な例示的な同位体として、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、塩素及びヨウ素の同位体、例えば、H、H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、32P、33P、35S、18F、36Cl、123I及び125Iが挙げられる。本発明の特定の同位体標識化合物(例えば、H及び14Cで標識したもの)は、化合物及び/または基質組織分布アッセイにおいて有用である。トリチウム化(H)及び炭素−14(14C)同位体は、それらの調製及び検出の容易さの点で有用である。さらに、重水素(すなわち、H)などのより重い同位体による置換は、より大きな代謝安定性に起因する一定の治療上の利点(例えば、in vivoでの半減期の増加または必要用量の低下)をもたらす場合があり、したがって、場合によっては好ましいことがある。15O、13N、11C及び18Fなどの陽電子放射同位体は、基質受容体占有率を調べるための陽電子放射断層撮影(PET)試験に有用である。本発明の同位体標識化合物は、非同位体標識試薬を同位体標識試薬に置換することにより、以下の実施例に開示されているものと類似の手順に従って一般に調製することができる。
【0035】
抗体−リファマイシン複合体の中間体を調製するための出発材料及び試薬は、一般的に市販供給元から入手可能であるか、または当業者に周知の方法を用いて容易に調製される(例えば、Louis F.Fieser and Mary Fieser,Reagents for Organic Synthesis,v.1−27,Wiley,N.Y.(1967−2013 ed.)、または補足資料を含むBeilsteins Handbuch der organischen Chemie,4,Aufl.ed. Springer−Verlag,Berlinに一般的に記載される方法によって調製される(Beilsteinのオンラインデータベースからも入手可能)。
【0036】
以下のスキーム1〜3は、本発明の実施形態を形成する、式Iの合成のための化学反応、プロセス、方法、ならびに特定の中間体及び試薬を説明する。
スキーム1:
【化8】
【0037】
スキーム1は、F−ベンゾキサジノリファマイシンIを得るための2−アミノ−5−フルオロベンゼン−1,3−ジオールIIIを用いたリファマイシンS IIの酸化的環化を示す。このプロセスの任意のメカニズムに限定するものではないが、推定イミン縮合中間体、またはその互変異性体は、I及びリファマイシンSVをもたらす(Kump,W.et al(1973)Helv.Chim.Acta 56:2348−2377)。周囲空気、酸素ガス、ベンゾキノン、酸化マンガン(MnO)、PhI(OTs)OH、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)、クロラニル、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)、過酸化水素(H)、Fe、Na、Co(acac)、Mn(acac)、Cu(OAc)、CuO、CuBr、ZnCl、InCl、Ag(OTf)、Sc(OTf)、及びYb(OTf)を含む、TEMPO以外の他の酸化剤(Kaizer et al(2002)Jour.Mol.Cat.180:91−96)は、リファマイシンS IIを、F−ベンゾキサジノリファマイシンIに、HPLC(実施例3)で計算した収率16%〜81%で変換した。4−アミノ、4−ベンジルオキシ、4−アセトアミド、及び4−ヒドロキシルTEMPO、2−アザアダマンタン−N−オキシル(Azado、Sigma−Aldrich)、ならびにシリカゲル上のTEMPO(Sigma−Aldrich)を含む、TEMPO類似体もまた、IIからIへの変換に有効である。酢酸エチル、トルエン、メタノール、及びテトラヒドロフランを含む、酢酸イソプロピル(iPrOAc)以外の他の溶媒を使用してもよい。
【0038】
図1は、半連続ループプロセスによる、F−ベンゾキサジノリファマイシンIを得るための2−アミノ−5−フルオロベンゼン−1,3−ジオールIIIを用いたリファマイシンS IIの酸化的環化のための一般的なプロセス(スキーム1)の概略図を示す。一実施形態は、酸化剤として酸素流及びTEMPOを使用する(実施例3.3)。一実施形態では、酸素ガスは、反応ガス相の約1%〜約100構成する。一実施形態では、酸素が前記ガスの5〜100v/v構成する、酸素と窒素との混合物を酸化剤として使用する。別の実施形態は、酸化剤としてベンゾキノンを使用する(実施例3.1)。半連続系は、酸化剤とレゾルシノールIIIを分離して保持し、IIIの非生産的酸化を避けることを保証する。2−アミノベンゼン−1,3−ジオールは、HCl塩としては安定であるものの、遊離塩基としては、特に溶液中において酸素に対して安定ではない(Yamane,T.;et al(1992)Chem.Pharm.Bull.,40:2707;(b)Yamane,T.;et al(1993)Chem.Pharm.Bull.,41:148−155)。IIIとしての5位の2−アミノベンゼン−1,3−ジオールのフッ素化は、より大きな安定性を与える。ループシステムは、酸化中に生成するリファマイシンS IIが、さらなるレゾルシノールIIIとさらに反応するようにリサイクルされることを保証する。リファマイシンS II及びレゾルシノールIIIを、20〜60℃酢酸イソプロピル(推定イミン中間体を提供する)などの溶媒中のバッチ反応器中で予混合し、これにより、F−ベンゾキサジノリファマイシンI及びリファマイシンSVが部分的に形成される(図1)。リファマイシンSVはIIの還元型である。次いで、混合物を0〜60℃で酸化ループに供し、II(リファマイシンSV由来)を改質する。次いで、部分変換混合物をさらなるIIIで処理し、改質したリファマイシンS IIをより多く消費してI及びリファマイシンSVを得る。反応が完了したとみなされるまで、混合物を酸化ループ及びレゾルシノール添加に供する。レゾルシノールIIIは段階的または連続的様式で添加することができる。反応の終わりに、混合物をアスコルビン酸の水溶液で、次に水で抽出する。有機相をエバポレートして乾燥させ、残渣をDCM/MeOHに溶解し、シリカゲルでクロマトグラフィーに供する。次いで、生成物をMeOH/水から再結晶させる。
【0039】
2つの反応セグメントを分離することにより、(a)連続攪拌タンク中でのII及びIIIの中間体への効率的な変換、続いてI及びリファマイシンSVの形成を含む酸化還元ステップ、ならびにb)IIIの酸化的消費を避けるためのプラグフローカラム内でのリファマイシンSVのIIへの酸化が可能になる。複数のサイクルを経て反応を進行させ、IIのIへの変換を完了させる。
【0040】
一実施形態では、静的混合要素(実施例3.4)を有するフローリアクターにT字接合部を介して二重ジャケットガラス反応器を接続する。T字接合部の第三の端部を、酸化剤溶液投与するポンプに接続する。フローリアクターの出口は、二重ジャケットガラス反応器に接続する。試薬II及びIIIをガラス反応器中で約20〜60℃で一晩iPrOAcと混合する。フローリアクターにわたって溶液を酸化剤溶液と一緒にポンプ輸送する。フローリアクターは、約−5〜5℃の出口温度に保持する。出口溶液を二重ジャケットガラス反応器にポンプで戻す(ループプロセス)。ループは約8時間にわたって実行する。次いで、レゾルシノールをガラス反応器に加え、一晩反応させる(サイクル1)。ループ処理を再開する。合計3サイクルを実行する。
【0041】
別の実施形態では、バッチ連続ループプロセス反応において、ジャケット付きガラス容器を、T字接合部を介してフローリアクター及び酸化剤供給器に接続する(実施例3.3)。フローリアクターを、冷却コイルを介して気液分離フラスコに接続する。分離フラスコをジャケット付きガラス容器に接続する。分離フラスコとジャケット付き容器との間にフィルターを配置する。酸化ループの液体部分は、蠕動ポンプの補助により冷却容器にポンプで戻される。このポンプの直後にサンプリングバルブを配置する。レゾルシノール溶液をジャケット付きガラス反応器に供給する。酸素流を、ガスマスフローコントローラによって制御する。ジャケット付きガラス反応器中で、リファマイシンS II及びTEMPOを酢酸イソプロピル(iPrOAc)に溶解し、容器温度を約50℃に設定する。酢酸イソプロピル中のレゾルシノールIII溶液を混合しながら60分間、容器に供給する。その後、混合物を酸素とともに60℃でフローリアクターを通してポンプ輸送し、レゾルシノール供給を一定に保ちながらループプロセスを開始する。ループは約6〜8時間実行する。
【0042】
スキーム2:
【化9】
スキーム2は、アミノ−ベンゾキサジノリファマイシン類似体IVを得るための、第2級アミンRNHを用いたF−ベンゾキサジノリファマイシンIからのフッ化物置換基の求核置換を示しており、式中、Rは、様々なアルキル及び環式置換基から独立して選択される。第二級アミンRNHとして、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、1−メチルピペラジン、N1−イソブチルピペラジン、及びN,N−ジメチルピペリジン−4−アミンが挙げられるが、これらに限定されない。ベンゾキサジノリファマイシン類似体IVは、N,N−ジメチルピペリジン−4−アミン(US7265107;US7271165;US7884099)を含む第三級アミンで、′位でリファラジルのN−イソブチルピペラジン基を置換する(US7547692の欄13の変換後に)。
【0043】
スキーム3:
【化10】
スキーム3は、リンカー−抗生物質VIを得るための、第三級アミンリファラジル類似体IVによるリンカー塩化物Vのアルキル化を示す。
【実施例】
【0044】
実施例1 (((5−フルオロ−2−ニトロ−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(メチレン))ジベンゼン
【化11】
THF(300ml)中のカリウムtert−ブトキシド(66.5g、593mmol)の懸濁液に、フェニルメタノール(ベンジルアルコール、66.3g、613mmol)のTHF溶液(60ml)を20分かけて滴下し、黄色の溶液を得た。他のアルコキシド試薬、例えばナトリウムtert−ブトキシド、カリウムイソプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、及びナトリウムメトキシドを使用することができる。あるいは、2−メチルテトラヒドロフランまたはジイソプロピルエーテルなどの他のエーテル溶媒を使用することができる。あるいは、THF中のリチウムヘキサメチルジシラザン(LiHMDS)の1M溶液にフェニルメタノールを内部温度1〜4℃で2h(2時間)かけて添加することができる。この黄色の溶液を、テフロン(登録商標)カニューレを介して2−Me−THF(400ml)中の化学抄録登録番号315−14−0の1,3,5−トリフルオロ−2−ニトロベンゼン(50.0g、282mmol)の透明な溶液に0〜10℃の内部温度で1時間かけて滴下し、得られた橙赤色溶液を0〜5℃で1時間、攪拌した。あるいは、1,3,5−トリフルオロ−2−ニトロベンゼンをTHFに溶解することができる。次に水(500ml)及びNaCl溶液(30ml、飽和)を加え、相を分離した。水相を2−Me−THF(250ml)で抽出し、有機相をブライン(600ml)で洗浄した。あるいは、水相をジクロロメタンで抽出することができる。有機相を合わせて、NaSOで乾燥させ、生成物の結晶化が始まるまで、黄色透明溶液を真空下で濃縮した。次に、2−Me−THF(150ml)及びEtOH(500ml)を添加し、懸濁液を氷浴中で3時間撹拌した。結晶を濾別し、氷冷したn−ヘプタン(200ml)で洗浄し、重量が一定になるまで真空下で乾燥して、化学抄録登録番号1639352−18−3の(((5−フルオロ−2−ニトロ−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(メチレン))−ジベンゼン(91.6g、1,3,5−トリフルオロ−2−ニトロベンゼンを基準にして89.9%)を淡黄色固体として得た。融点:117.8〜119.4℃。H−NMR(CDCl):δ7.44−7.27 (, 10H), 6.37 (d, J= 10.2 Hz, 2H), 5.18−5.06 (m, 4H)。MS (ESI): 352.1 [M−H]。C2016FNOの計算値:C 67.98、H 4.56、N 3.96;実測値C 67.89、H 4.50、N 3.94。
【0045】
実施例2 2−アミノ−5−フルオロ−ベンゼン−1,3−ジオールIII
【化12】
化学抄録登録番号1639352−18−3の(((5−フルオロ−2−ニトロ−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(メチレン))−ジベンゼンIX(3.0kg、8.49mol)、Pd/C E101 N/D、5%Pd触媒(15g)及びiPrOAc(829kg)を、50Lのオートクレーブに連続的に充填し、オートクレーブをAr、次いで水素ガス(H)でパージした。Pd/C触媒は、マトリックス活性化炭素、wet support、Degussa型E101 NE/W、E101 N/D、E105R/W(Evonik Industries、Johnson Matthey)、タイプ128M(Evonik Industries)、5207 Escat 162(BASF)、Noblyst(登録商標)P1070またはNoblyst(登録商標)P1090(Evonik Industries)であってもよい。ベンジル及びニトロ基の還元には、炭素またはアルミナ担体上のパラジウム、白金またはルテニウムなどの他の不均質金属触媒を使用することができる。次いで、水素圧を2barに調整し、反応混合物を攪拌しながら28〜32℃に加熱し、この温度で21時間水素化した。反応混合物を周囲温度に冷却し、圧力を注意深く解放した。この反応を、2段階以上にわたって行ってもよく、部分的に還元されたニトロまたはベンジル中間体、例えば5−フルオロ−2−ニトロベンゼン−1,3−ジオールを単離し、さらに水素ガス及び不均一系金属触媒で処理してIIIを得てもよい。
【0046】
反応混合物をAr下で濾過し、オートクレーブ及びフィルターをiPrOAcで洗浄し、粗水素化溶液を2つの類似の水素化作業の生成物溶液と合わせた。次いで、溶媒を真空下で部分的に除去し、その際、生成物が沈殿し始めた。次いで、n−ヘプタン(40l)を加え、懸濁液を0〜5℃に冷却し、この温度で18時間撹拌した。この懸濁液を、予め冷却した(0〜5℃)フィルター乾燥機に移し、結晶をn−ヘプタン(15l、冷却)で洗浄し、乾燥させて、2−アミノ−5−フルオロ−ベンゼン−1,3−ジオールIII、化学抄録登録番号16393406−55−5(3.0kg、出発物質に基づいて81.9%)をベージュ色固体として得た。H−NMR (d−DMSO): δ 10.18−7.54 (m, 1H), 6.05 (d, J= 7.0 Hz, 2H), 3.96 (br d, J= 10.4 Hz, 1H)。13C−NMR (d−DMSO): δ 154.6 (d, J= 230.3 Hz, 1C), 145.4, 145.3, 120.3, 99.6, 99.1。MS (EI): m/z 143.0 (M, 100%)。CFNOの計算値: C 50.35, H 4.23, N 9.79; 実測値 C 50.36, H 4.33, N 9.72。
【0047】
あるいは、IXの還元を停止することができ、脱ベンジル化されたニトロジオール中間体5−フルオロ−2−ニトロベンゼン−1,3−ジオール:
【化13】
を、ほぼ定量的収率で、及びGC分析による純度>95%の橙色固体として、単離することができる。H−NMR (d6−DMSO) δ 11.20 (s, 2 H), 6.24 (d, 2 H)。CFNO分析計算値: C 46.63, H 2.33, N 8.09; 実測値 C 41.58, H 2.52, N 8.04。5−フルオロ−2−ニトロベンゼン−1,3−ジオールを、広範囲の炭素分散パラジウム、白金、白金−バナジウム、ならびにPt/C、Pt.V/C、Ra−Ni(ラネーニッケル)、及びRa−Coを含むニッケル不均一系金属触媒を用いた不均一水素化によってIIIに還元した。
【0048】
実施例3 F−ベンゾキサジノリファマイシンI
3.1 ベンゾキノンでの完全バッチプロセス
500mlのガラス反応器中で、ChemShuttle Inc.、Fremont、CA、US7342011;US7271165;US7547692から市販されているリファマイシンS II(13.92g、20mmol)、2−アミノ−5−フルオロベンゼン−1,3−ジオールIII(4.9g、34mol、1.6当量)及びベンゾキノン(2.38g、24mmol、1.2当量)をiPrOAc(185mL)に溶解する。溶液を25℃で40時間撹拌する。溶液を研磨濾過し、次いで濾液をエバポレートして乾燥させて、25.3gの粗製F−ベンゾキサジノリファマイシンIを得る(収率29.2%、分析値18.93%)。MS (EI): m/z 817.6 (M, 15%)。HPLC (方法A): 5.32分。
HPLC方法A:
試料調製:100mlのアセトニトリル中の50mgの物質
システム:Agilent 1200、バイナリ
溶離液A:ACN/HO 9:1+0.25%TFA
溶離液B:ACN/HO 1:9+0.25%TFA
カラム:x−Bridge C18 4.6×50mm、2.5μm
流速:1.5ml/分
注入:10μl
λ:220nm
カラム温度:40℃
勾配:
【表1】
ポストタイム:3分
【0049】
3.2 ベンゾキノンでのバッチプロセス
500mlのガラス反応器中で、リファマイシンS II(20.0g、29mmol)、2−アミノ−5−フルオロベンゼン−1,3−ジオールIII(4.9g、35mmol、1.2当量)をiPrOAc(300mL)に溶解する。溶液を25℃で一晩撹拌する。次いで、溶液を−5.0℃に冷却し、ベンゾキノンのiPrOAc溶液(45mLの溶媒中、1.86g、17mmol、0.6当量)を8時間かけて添加する。次いで、追加のレゾルシノール(2.5g、17mmol、1.2当量)を25℃で添加し、混合物を一晩反応させる。この時間後、ベンゾキノンのiPrOAc溶液(0.93g、9mmol、22.5mL中0.3当量)を4時間かけて添加する。このレゾルシノールとベンゾキノンの逐次添加を、以下のように合計3サイクル繰り返す:
【表2】
【0050】
サイクルが完了したら、反応混合物をアスコルビン酸の水溶液(100ml、10%w/w)で抽出し、次いで水(100ml)で3回抽出する。有機相をエバポレートして乾燥させて、33.7gの粗製F−ベンゾキサジノリファマイシンI(収率73.1%、分析値51.0%)を黒色泡状物として得る。MS (EI): m/z 817.6 (M, 89%)。HPLC (方法A): 5.34分。
【0051】
3.3 酸素ガスとTEMPOでのバッチプロセス
1.5Lのガラス反応器中で、リファマイシンS II(40.0g、58mmol)、2−アミノ−5−フルオロベンゼン−1,3−ジオールIII(20.6g、144mmol、2.5当量)をiPrOAc(600mL)に溶解する。混合物をアルゴン下、60℃で2時間撹拌する。この時間の後、2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ、フリーラジカルTEMPO(Kaizer et al(2002)Jour.Mol.Cat.180:91−96)(0.90g、5.8mmol、0.1当量)を添加し、アルゴンを酸素ガスO(N中5v/v%)流(400mL/分)で置換する。反応混合物を60℃で22時間撹拌する。この混合物を室温に冷却し、その後、紙フィルターで濾過する。フィルターを酢酸エチル(300mL)で洗浄する。濾液を集め、Na(10%w/w、100mL)及びブライン(100mL)の水溶液で抽出する。有機相を集め、エバポレートして乾燥させる。残渣を2%v/vのMeOHを含むDCM(150mL)に溶解し、シリカゲル(250g、溶離液:2%v/vのMeOHを含むDCM)でクロマトグラフィーにかける。生成物を含む画分をエバポレートして乾燥させて、22.3gのF−ベンゾキサジノリファマイシンI(収率45%、分析値95%)を暗赤色固体として得る。1H NMR (600 MHz, CHCl): δ 14.42−14.33 (m, 1H), 10.29−10.00 (m, 1H), 6.77−6.62 (m, 1H), 6.58−6.48 (m, 1H), 6.39−6.35 (m, 1H), 6.10−4.60 (m, 4H), 4.04−3.90 (m, 1H), 3.61 (s, 1H), 3.50 (s, 1H), 3.35 (s, 1H), 3.11 (s, 1H), 2.33 (s, 1H), 2.29 (s, 1H), 2.23 (s, 2H), 2.16−2.11 (m, 6H), 2.05 (d, J = 18Hz, 2H), 1.78 (d, J= 12 Hz, 2H), 1.58−1.54 (m, 6H), 1.37−0.51 (m, 13H)。HRMS: m/z 818.3061 (質量の計算値: 818.3062)。HPLC (方法B): 5.86分。
HPLC方法B:
試料調製:アセトニトリル1ml中の2mgの物質
システム:Agilent 1200、バイナリ
溶離液A:H
溶離液B:ACN
溶離液C:HO中の0.1%TFA
カラム:x−Bridge C18 4.6×50mm、2.5μm
流量:1.5ml/分
注入:2μl
λ:220nm
カラム温度:40℃
勾配:
【表3】
【0052】
3.4 ベンゾキノンでのループプロセス
二重ジャケットガラス反応器を、静的混合要素を有するフローリアクターにT字接合部を介して接続する。T字接合部の第三の端部を、酸化剤溶液投与するポンプに接続する。フローリアクターの出口は二重ジャケットガラス反応器に接続する。18Lのガラス反応器中で、リファマイシンS II(200.4g、288mmol)及び2−アミノ−5−フルオロベンゼン−1,3−ジオールIII(49.5g、347mmol、1.2当量)をiPrOAc(3.0L)に溶解する。溶液を25℃で一晩撹拌する。あるいは、II及びIIIをガラス反応器中でiPrOAcと20〜60℃で一晩混合する。次いで、−5.0〜5.0℃で、構造化ミキサーフローリアクター(V=130ml)上でiPrOAc中のベンゾキノン溶液とともに、フローリアクターに溶液をポンプ輸送(5.2L/時)する(詳細は表を参照のこと)。次いで、得られる溶液を、25℃に保たれるバッチ反応器にポンプで戻す。ループプロセスは、ベンゾキノン投与時間中に実施する(表参照)。その後、追加のレゾルシノール(24.7g、173mmol、0.6当量)を25℃で添加し、混合物を一晩反応させる。ベンゾキノンとレゾルシノールの逐次添加を、以下の表に従って合計3回繰り返す。
【表4】
【0053】
サイクルが完了したら、反応混合物をアスコルビン酸の水溶液(1.0L、10%w/w)で抽出し、次に水(1.0L)で3回抽出する。有機相をエバポレートして乾燥させる。残渣を2%v/vのMeOHを含むDCM(2.0L)に溶解し、シリカゲル(3.0kg、溶離液:2%v/vのMeOHを含むDCM、32L)でクロマトグラフィーにかける。生成物を含む画分をエバポレートして乾燥させる。186.4gの生成物(収率81.5%、分析値85.5%)が黒い泡として得られる。泡を40℃でメタノール(8.0L)に溶解し、次いで水(4.8L)を4時間かけて添加する。懸濁液を40℃で2時間保持し、次いで0℃に8時間冷却し、この温度で2時間保持する。懸濁液を濾過し、水(0.5L)及びメタノール(0.3L)の溶液で洗浄し、水(0.8L)で2回洗浄する。黒色の結晶を10mbarの真空コンパートメント乾燥機で40時間乾燥する。148.8gのF−ベンゾキサジノリファマイシンIを暗赤色結晶として得る(収率63.4%、分析値97.4%)。H NMR (600 MHz, CHCl): δ 14.42−14.33 (m, 1H), 10.29−10.00 (m, 1H), 6.77−6.62 (m, 1H), 6.58−6.48 (m, 1H), 6.39−6.35 (m, 1H), 6.10−4.60 (m, 4H), 4.04−3.90 (m, 1H), 3.61 (s, 1H), 3.50 (s, 1H), 3.35 (s, 1H), 3.11 (s, 1H), 2.33 (s, 1H), 2.29 (s, 1H), 2.23 (s, 2H), 2.16−2.11 (m, 6H), 2.05 (d, J = 18Hz, 2H), 1.78 (d, J= 12 Hz, 2H), 1.58−1.54 (m, 6H), 1.37−0.51 (m, 13H)。HRMS: m/z 818.3069 (質量の計算値: 818.3062)。HPLC (方法A): 5.35分。
【0054】
3.5 TEMPOでのバッチプロセス
反応器にi−PrOAc(355g)、リファマイシンS II(40.0g、57.5mmol)及び2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ、フリーラジカル(TEMPO)(9.0g、 57.6mmol)を窒素ガス下で添加した。反応器の内容物を1時間、60℃に加温した後、2−アミノ−5−フルオロベンゼン−1,3−ジオールIII(8.0g、55.9mmol)をi−PrOAc(266g)中の溶液として1時間にわたってチャージした。さらにTEMPO(9.0g、57.6mmol)を加え、混合物を60℃で1時間撹拌した。追加の2−アミノ−5−フルオロ−ベンゼン−1,3−ジオールIII(8.0g、55.9mmol)を1時間、i−PrOAc(266g)中の溶液としてチャージし、続いて温度で2時間撹拌した。さらにi−PrOAc(10g)中のTEMPO(1.8g、11.5mmol)を加え、混合物を60℃で1時間撹拌した。追加の2−アミノ−5−フルオロ−ベンゼン−1,3−ジオールIII(1.6g、11.2mmol)をi−PrOAc(60g)中の溶液として1時間にわたって添加し、続いて2時間混合した。i−PrOAc(60g)の溶液として、2−アミノ−5−フルオロ−ベンゼン−1,3−ジオールIII(1.6g、11.2mmol)の最終チャージを1時間かけて加え、続いて60℃で2時間混合した。
【0055】
バッチを減圧蒸留下で体積の50%まで濃縮した。20〜25℃に冷却した後、ヘプタン(410g)をチャージし、シリカ(160g)のパッドで混合物を濾過し、Celite(登録商標)(40g)のパッドで覆った。パッドを1:1ヘプタン/i−PrOAc(943g)で洗浄し、合わせた濾液を濃縮して体積の5%にした。一旦20〜25℃に冷却すると、i−PrOAc(71g)、続いて1時間にわたってヘプタン(129g)をチャージした。内容物を20〜25℃で3時間撹拌した後、スラリーを濾過した。ケーキを3:1ヘプタン/i−PrOAc(39g)で洗浄した後、新しい反応器に移した。湿った物質をi−PrOAc(73g)に溶解し、20〜25℃で1時間攪拌した後、ヘプタン(129g)を1時間にわたって添加した。内容物を20〜25℃で3時間撹拌した後、スラリーを濾過し、3:1ヘプタン/i−PrOAc(39g)でケーキを洗浄した。最終的な湿ったケーキを真空下で乾燥させて、F−ベンゾキサジノリファマイシンI(23.5g、収率50.0%)を得た。H NMR (600 MHz, ベンゼン−d:クロロホルム−d 3:1, 60 ℃) δ 14.59 (s, 1H), 10.41 (s, 1H), 7.76 (s, 1H), 7.18 (p,
J = 1.1 Hz, 1H), 6.46 (dd, J = 10.3, 2.5 Hz, 2H), 6.29 (dd, J = 9.0, 2.4 Hz, 1H), 6.22 − 6.13 (m, 1H), 5.94 (d, J = 10.7 Hz, 1H), 5.59 (s), 5.16 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 5.11 (dd, J = 12.3, 7.7 Hz, 1H), 3.76 − 3.60 (m, 1H), 3.44 (d, J = 9.0 Hz, 1H), 3.13 (dd, J = 7.7, 5.6 Hz, 1H), 3.03 − 2.94 (m, 1H), 2.89 (s, 4H), 2.34 (s, 3H), 2.15 − 2.06 (m, 1H), 2.04 (d, J = 1.4 Hz, 3H), 1.65 (s, 3H), 1.57 (dddd, J = 14.1, 12.0, 6.9, 3.2 Hz, 3H), 0.94 (d, J = 7.0 Hz, 3H), 0.65 (d, J = 6.8 Hz, 3H), 0.43 (s, 5H), 0.43 − 0.32 (m, 4H)。13C NMR (151 MHz, C:CDCl 3:1, 60 ℃) δ 193.8, 184.4, 174.3, 171.8, 168.9, 168.3, 166.6, 158.1, 158.0, 144.9, 144.8, 143.4, 141.8, 140.6, 133.3, 131.6, 126.4, 120.1, 115.6, 114.8, 113.2, 112.7, 108.1, 107.8, 99.7, 99.5, 94.9, 94.7, 79.1, 78.4, 73.8, 73.4, 56.3, 41.3, 40.2, 37.3, 33.2, 22.2, 20.8, 20.4, 16.9, 11.2, 11.0, 7.7。
【0056】
実施例4:ジメチルアミノピペリジルリファIVa
【化14】
乾燥THF(135g)及びF−リファI(10.0g、12.2mmol)をN下で反応器にチャージした。反応器の内容物を0〜5℃に冷却した後、内部温度を≦5℃に維持しながらN,N−ジメチルピペリジン−4−アミン(2.3g、17.9mmol)を0.5時間にわたってチャージした。添加後、反応器の内容物を20〜25℃に加温し、2時間保持した。EtOAc(135g)をチャージし、混合物を0.5時間撹拌した。内容物を濾過し、EtOAc(25g)で洗浄した。合わせた濾液を真空下で25mL体積まで蒸留した。20〜25℃に冷却した後、EtOAc(185g)、続いて7%NaHCO水溶液(45g)、25%NaCl水溶液(45g)、及び精製水(45g)をチャージした。相分離後、水層を除去し、25%NaCl水溶液(45g)及び精製水(45g)を有機相に添加した。水層を除去し、有機層を7%NaHCO水溶液(45g)、25%NaCl水溶液(45g)、精製水(45g)での処理に供した。相分離後、水層を除去し、25%NaCl水溶液(45g)及び精製水(45g)を有機相に添加した。有機相を濾過し、濾液を25mL体積まで濃縮してから、ヘプタン(90g)で希釈した。さらに25mLの体積に濃縮した後、ヘプタン(90g)で希釈し、最終濃度を25mL体積とした。懸濁液を濾過し、ヘプタン(2×20g)でケーキを洗浄して固体を得、これを一度減圧下で乾燥させてジメチルアミノピペリジルリファIVa(10.6g、収率93.5%)を得た。H NMR (600 MHz, トルエン−d) δ 16.53 (s, 1H), 11.59 (s, 1H), 9.86 (s, 1H), 7.35 (s, 1H), 6.47 − 6.32 (m, 1H), 6.21 (d, J = 11.9 Hz, 1H), 5.87 (s, 1H), 5.62 (s, 1H), 5.44 (d, J = 11.4 Hz, 1H), 5.30 − 5.18 (m, 1H), 4.87 (dd, J = 14.6, 10.0 Hz, 1H), 3.58 (d, J = 7.7 Hz, 1H), 3.26 − 3.11 (m, 2H), 3.03 (d, J = 10.9 Hz, 1H), 2.91 (d, J = 12.1 Hz, 1H), 2.73 (s, 3H), 2.64 (s, 3H), 2.28 (s, 2H), 2.24 (s, 3H), 2.15 (s, 3H), 2.04 (s, 6H), 2.00 (s, 1H), 1.97 − 1.89 (m, 1H), 1.79 (d, J = 28.4 Hz, 2H), 1.66 (s, 3H), 1.64 (s, 5H), 1.17 (d, J = 6.9 Hz, 6H), 0.78 (d, J = 6.3 Hz, 3H), 0.49 (d, J = 6.5 Hz, 5H)。13C NMR (151 MHz, Tol) δ 193.0, 182.6, 175.7, 175.1, 171.5, 171.2, 158.0, 157.2, 146.4, 145.2, 144.5, 142.2, 131.5, 131.0, 130.9, 128.9, 128.0, 119.6, 114.0, 112.6, 111.5, 109.4, 107.7, 106.3, 95.0, 92.9, 79.9, 79.0, 74.8, 73.8, 61.5, 55.2, 47.0, 46.4, 44.1, 42.4, 42.3, 37.3, 33.1, 29.2, 29.0, 23.6, 23.1, 21.4, 16.4, 13.2, 13.0, 11.7, 8.5。
【0057】
実施例5 N−((S)−1−(((S)−1−((4−(クロロメチル)フェニル)アミノ)−1−オキソ−5−ウレイドペンタン−2−イル)アミノ)−3−メチル−1−オキソブタン−2−イル)−6−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)ヘキサンアミドV
乾燥N−メチルピロリドン、NMP(55g)及び6−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)−N−((S)−1−(((S)−1−((4−(ヒドロキシメチル)フェニル)アミノ)−1−オキソ−5−ウレイドペンタン−2−イル)アミノ)−3−メチル−1−オキソブタン−2−イル)ヘキサンアミド、MC−VC−PAB−OH(10.0g、17.5mmol)をN下で反応器にチャージした。
【化15】
【0058】
内容物を50〜55℃に1時間加温した後、0〜5℃に冷却した。塩化チオニル(2.6g、21.9mmol)を、≦5℃の温度で1時間にわたって反応器にチャージした。添加後、反応器の内容物を20〜25℃に加温し、1時間保持した。出発材料の残存をLCが示したため、バッチを0〜5℃に冷却し、塩化チオニル(0.2g、1.7mmol)を1時間にわたって反応器に加えた。添加後、内容物を20〜25℃に加温し、1時間保持した。バッチを0〜5℃に冷却し、温度を≦5℃に維持しながら水(170g)を添加した。得られたスラリーを濾過し、フィルターケーキを水(2×30g)で洗浄した。次いでケーキをEtOAc(30g)、CHCN(2×30g)、及びMTBE(1×30g)で洗浄した。湿ったケーキを真空下で20〜25℃で乾燥させて、淡く着色した固体を得た(8.3g、収率80%)。H NMR (600 MHz, DMSO−d6, 28 ℃) δ 10.02 (s, 1H), 8.06 (d, 7.5,
1H), 7.78 (d 8.7, 1H), 7.60 (d, 8.6, 2H), 7.36 (d, 8.6, 2H), 6.99 (s, 2H), 5.98
(bs, 1H), 5.40 (vbs, 1H), 4.71 (s, 2H),
4.38 (m, 1H), 4.19 (dd, .5, 6.9, 1H), 3.37 (t, 7.1, 2H), 3.03 (m, 1H), 2.94 (m,
1H), 2.18 (m, 1H), 2.12 (m, 1H), 1.97 (m, 1H), 1.70 (m, 1H), 1.60 (m, 1H), 1.48
(m, 5H), 1.37 (m, 1H), 1.19 (pen, 7.7, 2H), 0.85 (d, 6.8, 3H), 0.82 (d, 6.8, 3H)。13C NMR (151 MHz, DMSO−d6, 28 ℃) δ 172.2, 171.2, 170.9, 170.6, 158.8, 138.9, 134.3, 132.2, 129.4, 119.0, 57.5, 53.0, 46.1, 38.5, 36.9, 34.8, 30.3, 29.2, 27.7,
26.7, 25.7, 24.8, 19.1, 18.1。
【0059】
実施例6 リンカー−抗生物質VI
【化16】
反応器に、NMP(495g)、ジメチルアミノピペリジルリファIVa(90.0g、97.1mmol)及びN−((S)−1−(((S)−1−((4−クロロメチル)フェニル)アミノ)−1−オキソ−5−ウレイドペンタン−2−イル)アミノ)−3−メチル−1−オキソブタン−2−イル)−6−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロ−1H−ピロール−1−イル)ヘキサンアミドV(60.0g、101.5mmol)をN下で加えた。内容物を55〜60℃に12時間加熱した。冷却後、EtOAc(1.2kg)をチャージし、内容物を4時間熟成させた。スラリーを濾過し、ケーキをEtOAc(158g)で洗浄した。フィルターケーキを真空下で20〜25℃で乾燥させて、粗製リンカー−抗生物質VIを暗青色固体として得た(137.1、収率93%)。
【0060】
精製:粗製リンカー−抗生物質VI(113.3g)を0.05%ギ酸(FA)(8.5L)を含む1:1アセトニトリル(ACN)/水に溶解した。溶液をCelite(登録商標)(200g)で濾過し、濾液を水中0.05%FA(34.0L)で処理した。希釈した溶液を予め平衡化したカラムにチャージし、続いて以下の移動相組成物で溶離した:
【表5】
【0061】
高度に架橋された水和ポリスチレンからなるHP20SS樹脂(DIAION(商標)HP20SS、Mitsubishi Chemical);30〜70%のベンゼン、エテニルベンゼンとエテニルエチルベンゼンとのジエテニル−ポリマーをカラムに充填した。濃縮ステップは、粗製リンカー−抗生物質VI溶液を水中0.05%FA(165L)で最初に希釈することにより開始し、ACN/HO/FA:10/90/0.05の組成を得た。次いで、予め平衡化した樹脂(10/90/0.05)に希釈溶液を0.8L/分の速度でチャージした。溶出は、90/10/0.05で0.8L/分で37分間続けた。ブルーバンドがカラムから溶出し始め、すべての青色物質が1つの画分に集められたときに、生成物を回収した。捕捉画分の純度は94.4%(約10L)であった。カラムを60:40のMeOH/水(22.4L)ですすいだ。
【0062】
生成物のリンカー−抗生物質VIを含む画分を、25℃の最高温度で、溶媒(ACN)が凝縮しなくなるまで減圧濃縮した。濃縮物を移し、蒸留フラスコを注射用水(WFI、0.5L)ですすいだ。希釈した濃縮物を研磨濾過し、濾液を凍結乾燥して精製リンカー−抗生物質VIを暗青色固体として得た(45.6g、収率40.2%)。H NMR
(600 MHz, CDCl:d4−MeOH 9:1, 4 ℃) δ 7.80 (d, 8.4, 2H), 7.42 (d, 8.3, 2H), 6.74
(dd, 15.9, 11.2, 1H), 6.69 s, 2H), 6.52
(s, 1H), 6.39 (s, 1H), 6.34 (d, 10.6, 1H), 6.17 (d, 12.8, 1H), 6.15 (dd, 15.9, 7.5, 1H), 4.96 (dd, 12.7, 7.5, 1H), 4.86
(d, 10.8, 1H), 4.49 (dd, 9.6, 4.0, 1H),
4.46 (s, 2H), 4.23 (m, 4H), 4.08 (d, 7.2, 1H), 3.79 (m, 1H), 3.61 (d, 10.4, 1H), 3.45 (t, 7.2, 2H), 3.25 (d, 7.3, 1H), 3.18 (m, 5H), 3.07 (m, 1H), 2.93 (s, 9H), 2.09 (m, 1H), 2.41 (m, 2H), 2.33 (m, 1H), 2.27 (s, 3H), 2.24 (m, 2H), 2.10 (s,
3H), 2.02 (m, 4H), 1.94 (s, 3H), 1.86 (m, 1H), 1.80 (s, 3H), 1.69 (m, 1H), 1.60
(m, 2H), 1.54 (m, 3H), 1.27 (m, 2H), 1.22 (m, 1H), 0.92 (m, 9H), 0.81 (d, 6.6, 3H), 0.79 (m, 1H), 0.02 (d, 6.8, 3H), −0.40 (d, 6.6, 3H)。13C NMR (600 MHz, CDCl:d4−MeOH 9:1, 4 ℃) δ 193.9, 183.2, 175.3, 174.7, 173.1, 172.0, 171.9, 171.8, 169.8, 161.2, 158.0, 156.1, 147.0, 145.4, 143.9, 141.6, 140.1, 134.6, 134.1, 133.6, 132.4, 132.0, 126.5, 121.7, 120.7, 119.3, 118.9, 112.5, 112.1, 110.6, 108.8, 108.1, 96.0, 91.5, 77.0, 76.8, 74.7, 74.1, 71.2, 65.9, 59.8, 57.0, 47.4, 46.6, 46.5, 40.3, 38.2, 38.0, 37.4, 36.2, 33.3, 31.0, 29.4, 28.8, 26.9, 26.1, 25.7, 22.5, 21.1, 20.5, 19.5, 18.6, 18.5, 10.6, 9.4, 8.3, 7.8。
【0063】
実施例7 抗WTA抗体−抗生物質複合体の調製におけるリンカー−抗生物質VIと抗体との複合体化
抗WTA抗体のシステイン改(THIOMAB(商標)、Genentech)変異体の構築及び産生を、以前に他の抗体について報告されたように行った(WO2014/194247、参照により援用する;Junutula,et al.,2008b Nature Biotech.,26(8):925−932)。簡潔に述べると、システイン残基を抗WTA重鎖のAla118位で改変し、そのcys118 THIOMAB(商標)変異体(HC A118C)を作製した。抗WTA抗体−抗生物質複合体は、システイン改変した抗WTA抗体をリンカー−抗生物質VI中間体に複合体化することによって調製した。複合体化の前に、その記載を本目的のために参照として援用するWO2004/010957に記載されている方法論による標準的な方法を用いて、システイン改抗WTA抗体をTCEPで部分的に還元した。部分的に還元した抗体を、例えばDoronina et al.(2003)Nat.Biotechnol.21:778−784及びUS2005/0238649に記載されている方法による標準的な方法を用いてリンカー−抗生物質VI中間体に複合体化した。簡潔に述べると、部分的に還元した抗体をVIと組み合わせて、リンカー−抗生物質中間体を、抗体の還元システイン残基へ複合体化できるようにした。複合体化反応を停止させ、AACを精製した。AACの抗生物質負荷(抗体あたりの抗生物質部分の平均数)を測定したところ、単一のシステイン変異部位で改変した抗壁タイコ酸抗体について、約1〜約2の間であった。
【0064】
複合体化のためのThioMabの還元/酸化:CHO細胞内で発現させた全長システイン改モノクローナル抗体(ThioMabs−Junutula,et al.,2008b Nature Biotech.,26(8):925−932;Dornan et al(2009)Blood 114(13):2721−2729;US7521541;US7723485;WO2009/052249,Shen et al(2012)Nature Biotech.,30(2):184−191;Junutula et al(2008)Jour of Immun.Methods 332:41−52)を、2mM EDTAを含む50mMトリスpH7.5中、約20〜40倍過剰のTCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩またはDTT(ジチオスレイトール)を用いて37℃で3時間または室温で一晩還元した。(Getz et al(1999)Anal.Biochem.Vol273:73−80;Soltec Ventures,Beverly,MA)。還元したThioMabを希釈し、pH5の10mM酢酸ナトリウム中のHiTrap Sカラムに負荷し、0.3M塩化ナトリウムを含むPBSで溶出した。あるいは10%酢酸の1/20体積を添加して抗体を酸性化し、pH5の10mMコハク酸塩で希釈し、カラムにロードし、次いで10カラム体積のコハク酸緩衝液で洗浄した。カラムをpH7.5の50mM トリス、2mM EDTAで溶出した。
【0065】
溶出した還元ThioMabを15倍モル過剰のDHAA(デヒドロアスコルビン酸)または200nM硫酸銅水溶液(CuSO)で処理した。鎖間ジスルフィド結合の酸化は約3時間以上で完了した。周囲空気による酸化も有効であった。再酸化した抗体をpH5の20mMコハク酸ナトリウム、150mM NaCl、2mM EDTAに透析し、−20℃で凍結保存した。
【0066】
Thio−Mab抗体とリンカー−抗生物質中間体VIとの複合体化:脱ブロックされ、再酸化した、チオ抗体(ThioMab)を標的とするタイコ酸(抗WTA)は、pH8の50mMトリス中の6〜8倍モル過剰などの過のリンカー抗生物質中間体VI(DMSOストックから約20mMの濃度で)と、反応混合物のLC−MS分析での判定による反応完了(16〜24時間)まで、水性混合物中で反応させた。複合体化反応の水性混合物は、プロピレングリコール、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)から選択される溶媒を含んでいてもよい。
【0067】
その後、粗製抗体−抗生物質複合体(AAC)を、0mMコハク酸ナトリウム、pH5で希釈した後、カチオン交換カラムにアプライした。カラムを少なくとも10カラム容量20mMコハク酸ナトリウム、pH5で洗浄し、抗体をPBSで溶出した。AACを、ゲル濾過カラムを用いて240mMスクロースを含む0mM His/酢酸、pH5中に製剤化した。タンパク質濃度を測定するためのUV分光法、凝集分析のための分析SEC(サイズ排除クロマトグラフィー)、及びリジンCエンドペプチダーゼ処理前及び後のLC−MSによって、AACを特徴付けた。
【0068】
サイズ排除クロマトグラフィーは、Shodex KW802.5カラムを用いて、0.25mM塩化カリウム及び15%IPAを含むpH6.2の0.2Mリン酸カリウム中で、0.75ml/分の流速で実施した。AACの凝集状態は、280nmにおける溶出ピーク面積吸光度の積分によって測定した。
【0069】
LC−MS分析は、Agilent QTOF 6520 ESI機器を用いて行った。一例として、この化を用いて生成したAACを、pH7.5のトリス中の1:500w/wのエンドプロテイナーゼLys C(Promega)で、37℃、30分間処理した。得られた切断断片を、80℃に加熱した1000A、8umのPLRP−Sカラムに充填し、5分間で30%B〜40%Bの勾配で溶出させた。移動相A:0.05%TFAを含むHO。移動相B:0.04%TFAを含むアセトニトリル。流速:0.5ml/分。エレクトロスプレーイオン化及びMS分析の前に、タンパク質溶出を280nmでのUV吸光度検出によってモニタリングした。非複合体化Fcフラグメント、残留非複合体化Fab及び抗生物質−Fabのクロマトグラフィー分離が多くの場合に達成された。得られたm/zスペクトルをMass Hunter(商標)ソフトウェア(Agilent Technologies)を用いてデコンボリューションし、抗体断片の質量を計算した。
【0070】
前述の発明は、理解を明確にするために、例示及び実施例によって幾分詳細に記載されているが、説明及び実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。したがって、すべての適切な改変及び均等物は、以下の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲内に含まれるものと見なし得る。本明細書中に引用するすべての特許及び科学文献の開示は、その全体を参照として明示的に援用する。
本発明の好ましい実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
(項1)
F−ベンゾキサジノリファマイシンIの製造プロセスであって、
【化17】
リファマイシンS II、2−アミノ−5−フルオロベンゼン−1,3−ジオールIII、と、TEMPO及びTEMPO類似体、周囲空気、酸素ガス、ベンゾキノン、酸化マンガン(MnO)、(PhI(OTs)OH、過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)、クロラニル、過酸化水素、Fe、Na、Co(acac)、Mn(acac)、Cu(OAc)、CuO、CuBr、ZnCl、InCl、Ag(OTf)、Sc(OTf)、ならびにYb(OTf)から選択される1つ以上の酸化剤とを反応させて、Iを形成することを含む、前記製造プロセス。
【化18】
(項2)
前記酸化剤が、酸素ガスを含む、項1に記載のプロセス。
(項3)
前記酸素ガスが、前記反応ガス相の約5%〜約100%を構成する、項2に記載のプロセス。
(項4)
前記酸化剤が、触媒量のTEMPOを含む、項2に記載のプロセス。
(項5)
前記酸化剤が、触媒量の銅塩を含む、項2に記載のプロセス。
(項6)
前記銅塩が酸化銅である、項5に記載のプロセス。
(項7)
前記酸化剤が、半連続プロセスによりIIIから分離され、IIがループプロセスにより改質されリサイクルされる、項2に記載のプロセス。
(項8)
II及びIIIの反応を、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、トルエン、メタノール、及びテトラヒドロフランから選択される溶媒中で行う、項1に記載のプロセス。
(項9)
F−リファIと、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、1−メチルピペラジン、N1−イソブチルピペラジン、及びN,N−ジメチルピペリジン−4−アミンから選択される第二級アミンRNHとを反応させ、IVを形成することをさらに含む、項1に記載のプロセス。
【化19】
(項10)
前記第二級アミンがN,N−ジメチルピペリジン−4−アミンであり、IVが構造IVa
【化20】
を有する、項9に記載のプロセス。
(項11)
前記第二級アミンがN1−イソブチルピペラジンであり、IVが構造IVb
【化21】
を有する、項9に記載のプロセス。
(項12)
IVa及びVを反応させてリンカー−抗生物質VIを形成することをさらに含む、項9に記載のプロセス。
【化22】

(項13)
VIと抗体とを水性混合物中で反応させて抗体−リファマイシン複合体を形成することをさらに含む、項12に記載のプロセス。
(項14)
前記水性混合物が、プロピレングリコール、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、及びジメチルスルホキシド(DMSO)から選択される溶媒を含む、項13に記載のプロセス。
(項15)
前記抗体が抗壁タイコ酸抗体である、項13に記載のプロセス。
(項16)
VII及び塩化チオニルを反応させてVを形成することをさらに含む、項12に記載のプロセス。
【化23】
(項17)
Vを水から単離する、項16に記載のプロセス。
(項18)
2−アミノ−5−フルオロベンゼン−1,3−ジオールIIIの製造プロセスであって:
【化24】
(a)1,3,5−トリフルオロ−2−ニトロベンゼンVIIIと、フェニルメタノールと、リチウムビス(トリメチルシリルアミド)、リチウムジイソプロピルアミド、及びアルコキシド試薬から選択される塩基性試薬とを反応させて、(((5−フルオロ−2−ニトロ−1,3−フェニレン)ビス(オキシ))ビス(メチレン))ジベンゼンIXを形成し;
【化25】
ならびに
(b)IXと、水素ガス及び不均一系金属触媒とを反応させてIIIを形成することを含む、前記製造プロセス。
(項19)
前記アルコキシド試薬が、カリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムイソプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、及びナトリウムメトキシドから選択される、項18に記載のプロセス。
(項20)
前記アルコキシド試薬がカリウムtert−ブトキシドである、項18に記載のプロセス。
(項21)
前記不均質金属触媒が、炭素またはアルミナ担体上の、パラジウム、白金、またはルテニウムから選択される、項18に記載のプロセス。
(項22)
IXと、水素ガス及び不均一系金属触媒とを反応させて、脱ベンジル化中間体である5−フルオロ−2−ニトロベンゼン−1,3−ジオールを形成し、これを単離し、続いて水素ガス及び不均一系金属触媒でさらに処理してIIIを形成する、項18に記載のプロセス。
図1