特許第6705930号(P6705930)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6705930
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】棚板押さえ具
(51)【国際特許分類】
   A47F 5/00 20060101AFI20200525BHJP
   A47B 57/40 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   A47F5/00 Z
   A47B57/40 C
   A47B57/40 E
   A47F5/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-93507(P2019-93507)
(22)【出願日】2019年5月17日
【審査請求日】2019年9月11日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】394016874
【氏名又は名称】河淳株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002538
【氏名又は名称】特許業務法人あしたば国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 文勇
【審査官】 柿沼 善一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−136536(JP,A)
【文献】 特許第3876445(JP,B2)
【文献】 特開2015−029644(JP,A)
【文献】 特開平09−054370(JP,A)
【文献】 特開2005−299760(JP,A)
【文献】 特開2005−337430(JP,A)
【文献】 特開平09−287695(JP,A)
【文献】 特開2005−344813(JP,A)
【文献】 特開2015−096244(JP,A)
【文献】 特開2005−087225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47F 5/00
A47B 57/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定支持部のスリットに係止する係止片部と、
該係止片部と一体に付設される所定の厚みのある箱状の基部本体と、
該基部本体に配設され、該基部本体に対して上下移動する可動押さえ部と、を有し、
該可動押さえ部は、棚板を押圧するネジ頭を有するネジ本体が螺合する雌ネジ部が形成されたネジ本体保持部と、該ネジ本体保持部から該係止片部に近づく方向に突出する直線刃部であって、該ネジ本体保持部と横並びに位置する上下方向に複数のノコギリ刃を該基部本体の厚み方向に突出するように有する直線刃部と、を有し、
該基部本体には、該一つ以上のノコギリ刃と係止又は係止解除する、常時、係止する方向にバネ付勢される押し釦であって、該基部本体の該厚み方向に出没自在に付設され、該ノコギリ刃の刃先と対峙する方向から係止する係止刃を有する係止刃部と、該係止刃部の一方の側端から延びる押し部とを有する押し釦が、更に付設され、
該押し釦と該直線刃部の係止位置を選択することで、該可動押さえ部の上下位置の選択が可能であることを特徴とする棚板押さえ具。
【請求項2】
該ノコギリ刃の一つの刃は、断面が傾斜状の刃と起立状の刃とからなり、該起立状の刃が上方となるように配設されることを特徴とする請求項1記載の棚板押さえ具。
【請求項3】
該直線刃部は、該可動押さえ部の一方の側面側に形成したものであることを特徴とする請求項1又は2記載の棚板押さえ具。
【請求項4】
該押し釦は、該基部本体の上下方向と直交する方向に出没自在に付設され、該ノコギリ刃の刃先と対峙する方向から係止する係止刃を有する係止刃部と、該係止刃部の一方の側端から刃先方向に延びる押し部とで平面視L字形状を形成しており、
該押し部の先端をバネ力に抗して押すことで、該係止刃部と該直線刃部の係止を解除し、押すことを止めることで、該係止刃部と該直線刃部の係止を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の棚板押さえ具。
【請求項5】
該係止刃部の反刃部側に、バネ部材が収納されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の棚板押さえ具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量販店、専門店及びスーパーなどで使用される商品陳列棚の棚板の跳ね上がりを防止する棚板押さえ具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、棚受け(ブラケット)としては、全体が細長い略三角形状に形成された棚受け本体の一端側に、棚板を架設する支柱に上下方向に所定のピッチで多数、形成されたスリットに係止する略横L字状の係止片が上下に2つ又は3つ付設されたものが知られている。
【0003】
このような棚受けを支柱に設置する場合、先ず棚受け本体の一端側の係止片を支柱のスリットに挿入し、次に、棚受け本体の全体を下方に下げることによって、支柱に係止させ設置する。これにより、棚受け上に板状の棚板を設置して、商品陳列棚を得ることができる。
【0004】
しかし、このような従来の商品陳列棚において、係止片はスリット内において、下方に下げられたものであるため、設置後、スリット内における係止片の上方に隙間が発生する。このため、意図せぬ外力が作用して、係止片が支柱のスリットから抜け、棚受けが支柱から脱落するという問題があった。また、棚受けが外れなくとも、棚板が棚受けからずれて落下するという問題があった。
【0005】
このような問題を解決するものとして、特開2008−136536号公報には、多数のスリット状の係合孔が設けられたサポート部材と、このスリット内に挿入される係止部を有し前記サポート部材に装着される支持部材と、この支持部材上に載置される棚板と、この棚板上部に位置するスリットに装着される棚板抑え金具と、を備え、前記棚板抑え金具は、前記スリット内に挿入される鉤部と、基部と、この基部に対して上下移動可能に設けられた抑え部とからなり、前記支持部材と抑え部とにより棚板を挟み込み、棚板を固定したことを特徴とする陳列棚(請求項1)が開示されている。この発明によれば、抑え部を基部に対して上下方向に移動可能に構成しているので、棚板を支持部材と棚板抑金具と間で挟み込むことができ、棚板を固定することができる。これにより、棚板の後方に跳ね上がり方向に力が加わっても棚板が跳ね上がることを防止することができる。また、抑え部が基部に対して上下に移動可能に構成されているので、種々の厚さの棚板に対応することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−136536号公報(請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、陳列の演出を高めるため、厚みの薄い棚板やこれとは逆に、厚みの厚い棚板を使用することがある。また、固定支持部である支柱のスリットのピッチ間隔も、支柱により異なることがある。このため、特開2008−136536号公報で使用する棚板抑え金具が、取り付けられないという問題がある。すなわち、棚板の上面と、該棚板の直上のスリットまでの寸法(間隔)が大きくなることがあり、この場合、棚板抑え金具の抑え部を基部から最大伸ばしたとしても、抑え部が棚板に接しないという問題がある。
【0008】
すなわち、本発明の目的は、棚板の上面と、棚板の直上の固定支持部のスリットまでの寸法(間隔)が大きくても使用できる棚板押さえ具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、上記課題を解決するものであって、
固定支持部のスリットに係止する係止片部と、
該係止片部と一体に付設される基部本体と、
該基部本体に配設され、該基部本体に対して上下移動する可動押さえ部と、を有し、
該可動押さえ部は、棚板を押圧するネジ頭を有するネジ本体が螺合する雌ネジ部が形成されたネジ本体保持部と、該ネジ本体保持部と横並びに位置する上下方向に複数のノコギリ刃を有する直線刃部と、を有し、
該基部本体には、該一つ以上のノコギリ刃と係止又は係止解除する、常時、係止する方向にバネ付勢される押し釦が、更に付設され、
該押し釦と該直線刃部の係止位置を選択することで、該可動押さえ部の上下位置の選択が可能であることを特徴とする棚板押さえ具を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、該ノコギリ刃の一つの刃は、断面が傾斜状の刃と起立状の刃とからなり、該起立状の刃が上方となるように配設されることを特徴とする前記棚板押さえ具を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、該直線刃部は、該可動押さえ部の一方の側面側に形成したものであることを特徴とする前記棚板押さえ具を提供するものである。
【0012】
また、本発明は、該押し釦は、該基部本体の上下方向と直交する方向に出没自在に付設され、該ノコギリ刃の刃先と対峙する方向から係止する係止刃を有する係止刃部と、該係止刃部の一方の側端から刃先方向に延びる押し部とで平面視L字形状を形成しており、
該押し部の先端をバネ力に抗して押すことで、該係止刃部と該直線刃部の係止を解除し、押すことを止めることで、該係止刃部と該直線刃部の係止を行うことを特徴とする前記棚板押さえ具を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、該係止刃部の反刃部側に、バネ部材が収納されることを特徴とする前記棚板押さえ具を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、押し釦を押し、係止刃部と可動押さえ部の直線刃部との係止を解除し、基部本体から可動押さえ部を下方に引き出す第1段階のストロークを実施し、次いで、引き出された可動押さえ部からネジ本体を下方に引き出す第2段階のストロークを実施するため、ストロークを大きく採れる。このため、棚板の上面と、棚板の直上のスリットまでの寸法が大きくても、棚板を棚受けと棚板押さえ具の間で挟み込み、棚板の跳ね上がりを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態における棚板押さえ具の斜視図である。
図2図1の棚板押さえ具の右側面図である。
図3図2の棚板押さえ具を上から見た図である。
図4図3のX−X線に沿って見た断面図である。
図5図1の棚板押さえ具の正面図である。
図6図1の棚板押さえ具の背面図である。
図7図1の棚板押さえ具の左側面図である。
図8図1の棚板押さえ具の分解斜視図である。
図9図1の棚板押さえ具の可動押さえ部を引き出した状態の右側面図である。
図10図1の棚板押さえ具の可動押さえ部を引き出した状態の左側面図である。
図11図9の棚板押さえ具からネジ本体部を引き出した状態の右側面図である。
図12図4のY−Y線に沿って見た図である。
図13図12の押し釦を押した状態の断面図である。
図14】可動押さえ部と押し釦とバネ部材の位置関係を説明する図である。
図15】直線刃部と押し釦の係止刃部の係止状態を示す簡略図である。
図16】直線刃部と押し釦の係止刃部の係止解除を示す簡略図である。
図17】直線刃部と押し釦の係止刃部の他の係止状態を示す簡略図である。
図18】直線刃部と押し釦の係止刃部の係止状態を示す断面図である。
図19】直線刃部と押し釦の係止刃部の係止解除を示す断面図である。
図20図1の棚板押さえ具の使用方法であって、押し釦を使用しない方法を説明する図である。
図21図20に続く工程であり、押し釦を使用せず、ネジ本体部を引き出し棚板を押さえる方法を説明する図である。
図22図1の棚板押さえ具の使用方法であって、押し釦を使用し、可動押さえ部を引き出した状態を説明する図である。
図23図22に続く工程であり、可動押さえ部からネジ本体部を引き出し棚板を押さえる方法を説明する図である。
図24】本発明の他の実施の形態における棚板押さえ具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態における棚板押さえ具を図1図23を参照して説明する。本明細書において、「上下」、「左右」は、棚板押さえ具の設置状態における顧客側から見た位置関係を言い、係止片部2が後側となる位置である。
【0017】
棚板押さえ具10は、係止片部2と、係止片部2と一体に付設される基部本体1と、基部本体1に配設され、基部本体1に対して上下移動する可動押さえ部3と、を有する。また、可動押さえ部3は、棚板を押圧するネジ頭71を有するネジ本体73が螺合する雌ネジ部4を有するネジ本体保持部31と、ネジ本体保持部31と並列に位置する、上下方向に複数のノコギリ刃51を有する直線刃部5を有する板状体32と、を有する。また、基部本体1には、直線刃部5の一つのノコギリ刃51と係止又は係止解除する、常時、直線刃部5に係止する方向にバネ付勢される押し釦6が付設されている。
【0018】
棚板押さえ具10において、係止片部2は、固定支持部50に上下方向、所定のピッチで多数形成されるスリット57a、57bに係止するものであり、本例では、板状体の後方上部を上下に2つの段差22a、22bが形成されるように切り欠き、下方先端部21を下方に延びる鉤状としたものである(図20参照)。鉤部21の内側の係止端231から上部の段差22aまでの寸法Lは、スリット57のスリット長よりやや小さい。この係止片部2によれば、スリット57に挿入し易く、挿入後は、上部の段差22aが、スリット57の上端近傍に接近し、取り付けが安定する。なお、係止片部2は、上記形状に限定されず、ひとつの段差22aの鉤状であってもよい。この場合、段差22aの角は、切り落とされ(面取りされ)ていれば、スリット57に確実に係止できる。係止片部2は金属製が剛性が高い点で好ましい。
【0019】
棚板押さえ具10が係止する固定支持部50としては、スリット57を有するコ字断面、H字断面又はL字断面を有するチャンネル(溝型)鋼材やパイプ鋼材が挙げられる。スリット57は、このような鋼材の上下方向に所定にピッチで多数、形成されたものであり、例えば、縦寸法L、幅寸法wの矩形断面形状の貫通孔が挙げられる。図20図21に示すように、スリット57が形成された鋼材50において、スリット57の上方の内壁面、下方の内壁面及びスリット57の上方の鋼材の内壁面が係止片部2が係止あるいは当接する部分となる。
【0020】
棚板押さえ具10において、基部本体1の後部が、係止片部2と接続している。また、基部本体1には、可動押さえ部3と押し釦6が取り付けられる。基部本体1は厚みのある中実の箱状体に、上下方向に貫通する縦くり抜き部12を形成し、右側面から縦くり抜き部12まで貫通する横くり抜き部13を形成したものである。縦くり抜き部12には、可動押さえ部3が上下方向に移動自在に挿通され、横くり抜き部13には、押し釦6の押し部62が横方向に出没自在に挿通される。基部本体1は樹脂製が好ましい。縦くり抜き部12は、平面視が円形部121と、円形部121の一部の円弧から横方向に延びる矩形部122とからなる形状である。また、横くり抜き部13は、本例では側面視が四角形状である。なお、縦くり抜き部12の手前の内壁面には、可動押さえ部3の上下移動をガイドする縦突起112が形成されている。
【0021】
可動押さえ部3は、ネジ本体73が収納される円柱状のネジ本体保持部31と、ネジ本体保持部31と横並びに位置す直線刃部5を有する板状体32からなる。ネジ本体保持部31の内部には、雌ねじ4が切られており、ネジ本体73の雄ねじが螺合する。これにより、ネジ頭71をネジが外れる方向に回すことで、可動押さえ部3からネジ本体73を下方に引き出し、ネジを締める方向に回すことで、ネジ本体73を可動押さえ部3に収納させることができる。ネジ本体保持部31の内部の雌ねじ4は、ネジ本体保持部31の全長に形成されたものでもよく、下方から上方の途中まで部分的に形成されてものであってもよい。なお、可動押さえ部3の手前の側面には、基部本体1の縦突起121に嵌る縦ガイド溝33が形成されている。
【0022】
直線刃部5は、板状体の一側面に、上下方向に複数のノコギリ刃51を形成したものである。本例では、4つのノコギリ刃51が形成され、押し釦6の係止刃61が係止する溝は5つの内の2つとなっている。これにより、可動押さえ部3は、基部本体1から上下方向に4段階で位置選択が可能となる。本例では、押し釦6の係止刃61a、61bが、直線刃部5の最下のノコギリ刃51dの上下の溝52d、52eに係止する場合が、図1及び図2並びに図15に示す使用前の待機状態であり、可動押さえ部3が基部本体1に収納された状態である。
【0023】
ノコギリ刃51a〜51dの一つの刃は、図15に示すように、断面が傾斜状の刃512と起立状の刃511とからなり、起立状の刃511が上方となるように配設される。起立状とは、板状体の一側面から起立する意味であり、設置状態においては水平方向に延びるものである。これにより、押し釦6の係止刃61が刃間の溝52a〜52dに係止した際、基部本体1に対して、可動押さえ部3は上方には上げることができず、下方にはバネ付勢に抗して、下げることができる。
【0024】
押し釦6は、上下方向と直交する方向(左右方向)に出没自在に付設され、且つノコギリ刃51の刃先と対峙する方向から係止する係止刃61を有する板状の係止刃部63と、係止刃部63の一方の側端から刃先方向に延びる押し部62とで平面視L字形状を形成している。すなわち、押し釦6の係止刃61は、図8、14及び16に示すように、板状体の一側面(本例では右側面)に、隣接するノコギリ刃51間の刃溝52に係止する2つの刃を形成したものである。従って、係止刃61の刃形状は、ノコギリ刃51間の溝形状に対応する形状であり、上面611は、傾斜面であり、下面612は起立面(使用状態において水平面)である。また、押し部62は、係止刃61を有する板状体63の側端(後方端)から刃先方向(本例では右方向)に延びる板状体である。板状の係止刃部63から起立する押し部62の起立高さは、押し釦6の係止刃61がバネ付勢により、ノコギリ刃51に係止している状態で、基部本体1の側面から押し代が突出する高さであり、且つ押し部62を押すことで、係止刃61とノコギリ刃51の係止が解除された状態で、基部本体1に没入する高さである。
【0025】
バネ部材8は、コイルバネであり、係止刃61の反刃部側、すなわち、板状の係止刃部63の背面側(左側面側)に収納される。コイルバネ8の一端は、基部本体1の縦くり抜き部12の矩形部122の内壁に当接しており、他端は、板状の係止刃部63の背面に当接している。
【0026】
図1及び図2の棚板押さえ具10は、係止片部2を有する基部本体1に、可動押さえ部3、バネ部材8及び押し釦6を組付けたものである。すなわち、基部本体1の横くり抜き部13に、押し釦6を入れ込む。この際、コイルバネ8が所定の場所に収納されるよう、予め入れておく。なお、ネジ本体73は、可動押さえ部3の雌ねじ4に予め、ねじ込んでおくことが好ましい。次いで、ネジ本体73が組み込まれた可動押さえ部3を、基部本体1の縦くり抜き部12に、下方から上方に向けて押し込む。これにより、図1及び図2の棚板押さえ具10が得られる。この際、ネジ頭71が基部本体1から下方に突出し、可動押さえ部3の上部の一部が、基部本体1から突出している。また、押し釦6の係止刃61(61a、61b)は、直線刃部5の最下のノコギリ刃51dの上下2つの溝52d、52eに係止している(図15参照)。図1及び図2の棚板押さえ具10によれば、可動押さえ部3は、バネ付勢された押し釦6により、基部本体1内において、係止され固定されている。但し、基部本体1から可動押さえ部3を手で下方に引き出すことは可能である。この際、押し釦6の係止刃61は、直線刃部5のノコギリ刃51を乗り越えた係止解除状態と、バネ付勢により刃溝に嵌る係止状態を繰り返すことになる。
【0027】
図9及び図10は、基部本体1から可動押さえ部3を最大ストロークlまで引き出した状態を示す図である。この際、押し釦6の係止刃61(61a、61b)は、直線刃部5の最上のノコギリ刃51aの上下2つの溝52a、52bに係止している(図17)。最大ストロークlは、棚板押さえ具10の使用状態における基部本体1から可動押さえ部3が引き出される最大長さを言う。更に、図9及び図10の棚板押さえ具10において、ネジ本体73のネジを緩める方向に回すことで、可動押さえ部3からネジ頭71を下方にストロークl分、引き出すことができる(図11)。棚板押さえ具10によれば、基部本体1からネジ頭71を、最大(l+l)分、下方に引き出すことができる。図11の棚板押さえ具10は、ネジ頭71が下方からの押圧を受けても、ネジ本体73は可動押さえ部3に対して螺合しており上方に上がらず、また、可動押さえ部3は押し釦6によりバネ付勢されて係止しており、これ以上、上方に上がらない。
【0028】
次に、固定支持部50のスリット57に、棚板受け70を取り付け、一般的な厚みtの棚板60aを設置し、棚板受け70および棚板押さえ具10を取り付ける方法について、図20及び図21を参照して説明する。固定支持部50のスリット57に、棚板受け70のフック状の係止片71a、71bを係止させて、固定支持部50に棚板受け70を取り付ける。次いで、棚板受け70上に棚板60aを載せる。この場合、棚板受け70のフック状の係止片71a、71bのスリット内における上部隙間80a、80bが存在するため、意図せぬ外力により、棚板受け70が上方へ外れる恐れがある。
【0029】
次いで、棚板60aの直上のスリット57bに、棚板押さえ具10を取り付ける。先ず、棚板押さえ具10の係止片部2を、スリット57bに挿入し、鉤状の先端と上部段差22aをスリット57bに係止させる。この状態において、棚板押さえ具10のネジ頭71と棚板60aの距離はそれほど大きくはない。このため、棚板押さえ具10の可動押さえ部3を基部本体1から引き出すことなく、ネジ本体73を、ネジ頭71が棚板60aの上面611aを押し込むまでネジを緩める方向に回す。ネジ頭71が棚板60aの上面611aを強く押すことで反力が生じ、棚板押さえ具10の係止片部2が、固定支持部50側に強く当接して、棚板60aを固定することになる。すなわち、棚板60aを棚板受け70と棚板押さえ具10の間で挟み込み、棚板60aの跳ね上がりを防止できる。また、棚板押さえ具10を取り外す場合、棚板押さえ具10の取り付け方法とは逆の順序で行えばよい。
【0030】
次に、固定支持部50のスリット57に、棚板受け70を取り付け、一般的な厚みtより大の厚みtの棚板60bを設置し、棚板受け70および棚板押さえ具10を取り付ける方法について、図22及び図23を参照して説明する。固定支持部50のスリット57に、棚板受け70のフック状の係止片71a、71bを係止させて、固定支持部50に棚板受け70を取り付ける。次いで、棚板受け70上に棚板60bを載せる。この場合、棚板受け70のフック状の係止片71a、71bのスリット内における上部隙間80a、80bが存在するため、意図せぬ外力により、棚板受け70が上方へ外れる恐れがある。また、棚板60bの厚みが大のため、棚板60bに対応するスリット57bには、棚板押さえ具10を取り付けることはできない。
【0031】
そこで、スリット57bより上のスリット57aに、棚板押さえ具10を取り付ける。この場合、ネジ頭71と棚板60b間は、図20に比べて大きく離れることになる。そこで、先ず、基部本体1から可動押さえ部3を手で下方に引き出す。引き出す最大ストロークは、lであり(図9図11参照)、且つネジ本体73を引き出す少しの寸法を残しておく(図22)。なお、基部本体1から可動押さえ部3を下方に引き出す際、押し釦6の押し部62を押して、可動押さえ部3と押し釦6の係止を解除して行ってもよい。可動押さえ部3を最大ストロークl引き出した場合、可動押さえ部3の直線刃部5と押し釦6の係止刃部63の動き及び係止関係は、図15図17の順に示す通りとなる。図22に示す途中段階において、可動押さえ部3は押し釦6によりバネ付勢されて係止しており、押し釦6を押さない限り、基部本体1内に収納されることはない。
【0032】
次いで、ネジ本体73を、ネジ頭71が棚板60bの上面611bを押し込むまでネジを緩める方向に回す。ネジ頭71が棚板60bの上面611bを強く押すことで反力が生じ、棚板押さえ具10の係止片部2が、固定支持部50側に強く当接して、棚板60bを固定することになる。すなわち、棚板60bを棚板受け70と棚板押さえ具10の間で挟み込み、棚板60bの跳ね上がりを防止できる。
【0033】
次に、図23の棚板押さえ具10を取り外す場合、押し釦6の押し部62の先端面を、バネ力に抗して基部本体1側に押し込む。これにより、押し釦6の係止刃部61と可動押さえ部3の直線刃部5との係止が解除され、可動押さえ部3は、基部本体1に対して、上方移動が可能となる。この状態で、可動押さえ部3を手で上方に移動させて、ネジ頭71の棚板60bへの押圧を解除させ、その後、固定支持部5から棚板押さえ具10を取り外す。その後、ネジ本体73をネジを締め込む方向に回して、ネジ本体73を可動押さえ部3に収納させれば、図1の棚板押さえ具10となる。
【0034】
図23の棚板押さえ具10を取り外す方法としては、上記方法以外に、他の方法を採ることができる。すなわち、先ず、ネジ本体73をネジを締め込む方向に回して、ネジ本体73を可動押さえ部3に収納させる。これにより、ネジ頭71の棚板60bへの押圧を解除でき、その後、固定支持部5から棚板押さえ具10を取り外す。その後、押し釦6の押し部62の先端を、バネ力に抗して基部本体1側に押し込む。これにより、押し釦6の係止刃部63と可動押さえ部3の直線刃部5との係止が解除され、可動押さえ部3は、基部本体1に押し込むことが可能となる。この押し釦6を押した状態で、可動押さえ部3を手で押し込めば、図1の棚板押さえ具10となる。
【0035】
棚板押さえ具10によれば、棚板の厚みや固定支持部のスリットのピッチが異なり、棚板とネジ頭の距離が種々の寸法を採ることがあっても、棚板をネジ頭で強く押圧できる。すなわち、棚板押さえ具10を、可動押さえ部3を使用することなく、ネジ本体73を引き出し固定するという従来の方法を採ることができ、更に、可動押さえ部3を基部本体1に対して、最大ストロークl内において5段階の任意の位置で固定することができる。また、選択された位置から更に、ネジ頭71を下方にストロークl分、引き出すことができる。
【0036】
本発明は、上記実施の形態例に限定されず、種々の変形を採ることができる。棚板押さえ具10は、図3に示すように、係止片部2は、基部本体1に対して、同じ方向(前後方向)に真っすぐ延びるものであるが、これに限定されず、例えば図24に示すように、基部本体1に対して、平面視において屈曲していてもよい。すなわち、図24の棚板押さえ具10aは、平面視において「く」字形状となっている。棚板押さえ具10aによれば、係止片部2に対して、基部本体1が屈曲しており、例えば棚板の少し内側を押圧することができる。これは例えば、棚板の左右長さが少し短く、支柱の前方で且つ棚板受け上に、棚板面が延びていない場合に有効である。また、棚板押さえ具10aの係止片部2が屈曲する方向は、棚板押さえ具10aとは反対方向であってもよい。
【0037】
また、可動押さえ部3において、円柱状のネジ本体保持部31と板状の直線刃部32の前後関係は、上記実施の形態例に限定されず、その逆である板状の直線刃部32が手前で、その後ろを円柱状のネジ本体保持部31としてもよい。その場合、可動押さえ部3の縦くり抜き部12は、その形状に対応したものとする。また、押し釦6は、左側に付設してもよい。この場合、可動押さえ部3の直線刃部の刃の向きは、図7とは反対の右向きとなる。また、基部本体1から可動押さえ部3の下方への脱落を抑制するため、例えば、図8の板状体32の上端に、ノコギリ刃51の刃の向きと同じ方向に延びる小突起を形成してもよい。また、直線刃部32のノコギリ刃51と、押し釦6の係止刃部61の係止は、図15図17に示す2つの刃に限定されず、1つでも、3つであってもよい。1つの場合、5段階の位置選択ができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、棚板の上面と、棚板の直上の固定支持部のスリットまでの寸法(間隔)が大きくても、棚板を強く押圧でき、固定支持部への強い固定が可能となる。このため、意図せぬ外力が作用しても、棚板受けや棚板が外れることはない。
【符号の説明】
【0039】
1 基部本体
2 係止片部
3 可動押さえ部
4 雌ネジ
5 直線刃部
6 押し釦
7 雄ネジ
10 棚板押さえ具
50 固定支持部
51 ノコギリ刃
57 スリット
60、60a、60b 棚板
71 ネジ頭
73 ネジ本体
【要約】
【課題】棚板の上面と、棚板の直上の固定支持部のスリットまでの寸法(間隔)が大きくても使用できる棚板押さえ具を提供する。
【解決手段】固定支持部のスリットに係止する係止片部2と、係止片部と一体に付設される基部本体1と、基部本体に配設され、該基部本体に対して上下移動する可動押さえ部3と、を有し、可動押さえ部には、棚板を押圧するネジ頭を有するネジ本体部が螺合する雌ネジ部と、雌ネジ部と並列に配置される、上下方向に複数のノコギリ刃を有する直線刃部と、直線刃部のノコギリ刃と係止又は係止解除する、常時直線刃部に係止する方向にバネ付勢される押し釦6が付設され、押し釦と該直線刃部の係止位置を選択することで、該可動押さえ部の上下位置の選択が可能な棚板押さえ具10。
【選択図】図9
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24