(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<用語の説明>
[発明を実施するための形態]において用いる代表的な用語について以下に説明する。
【0014】
「ネットワークシステム」は、一の管理装置と、少なくとも一のルータ又はデバイスを備え、それらの通信装置間での通信を可能な状態にすることができるシステムをいう。以下において、「ネットワークシステム」を「NWS」と表記することにする。
【0015】
「管理装置」は、NWSにおける通信に用いるチャネル及びIDを決定することにより自己の属するネットワークシステムの管理を行う通信装置をいう。シンクノードは管理装置に含まれる。
【0016】
「ルータ」は、受け取ったデータを転送する機能を備え、管理装置により管理される通信装置をいう。
【0017】
「デバイス」は、受け取ったデータを転送する機能を備えず、管理装置により管理される通信装置をいう。
【0018】
「通信装置」は、管理装置、ルータ及びデバイスのうちの一をいう。
【0019】
「ID」は、NWSを論理的に識別するための識別子をいう。
【0020】
「キャリア」は、通信を行う信号を伝える、電流、光、電波などの搬送波をいう。
【0021】
「チャネル」は、通信に用いる周波数帯域をいう。なお、以下において、「チャネル」の次に表記する数字は、符号を表す番号ではなくチャネル番号を表すものとする。
【0022】
「ネットワーク開始」は、NWSにおける通信を可能な状態にすることをいう。
<本発明を適用可能なNWS>
次に、本発明を適用可能なNWSの例について説明する。
【0023】
図1は、本発明を適用可能なNWSのトポロジ構成例を表わす概念図である。
【0024】
NWS001は、管理装置101と、管理装置101に管理される通信装置である、デバイス106乃至111とルータ102乃至105とを備える。
【0025】
管理装置101は、デバイス107乃至111が送信するデータをルータ102乃至105を介して受信すると共に、ルータ102乃至105を起点として送信されるデータを受信するというマルチホップ動作を行う。また、管理装置101は、デバイス106のデータを管理装置101が直接収集するシングルホップ動作も行う。
【0026】
NWSは、特にセンサーNWSである場合には、管理される通信装置のトポロジ構成によりマルチホップとシングルホップが混在した構成になるのが一般的である。
【0027】
NWS001は、例えば、非特許文献1に示されるIETFが策定しているRPL等のツリー型トポロジ構成に適したマルチホップ向けのルーティングプロトコルにより構築、維持することができる。ここで、IETFはInternet Engineering
Task Forceを、RPLはIPv6 Routing Protocol
for Low−Power and Lossy Networksを、それぞれ表わす。
【0028】
NWSの構成は、
図1に表わしたツリー型トポロジ構成以外に、メッシュ型のトポロジの形態をとることも可能である。メッシュ型のトポロジ構成の場合には、例えば、非特許文献2に記載されているAODVや、非特許文献4のOLSR等のメッシュ型トポロジ構成に適したマルチホップ向けのルーティングプロトコルによりNWSのトポロジ構成を構築、維持することができる。ここで、AODVはAd hoc On−Demand Distance Vector Routingを、OLSRはOptimized Link State Routingを、それぞれ表わす。
【0029】
NWS001において行われる通信は、管理装置101が決定する、一のチャネル、及び、一のIDにより行われる。ここで、本実施形態において、チャネル対等の、複数のチャネルの組み合わせを用いて行う通信においては、当該チャネルの一の組み合わせを一のチャネルとみなすこととする。
【0030】
次に、NWS001の、チャネルの偏りが発生する場合があるという課題について説明する。ここで、「チャネルの偏り」は、チャネルの重複なしに割り当てることが可能であるにも拘らずチャネルが重複することをいう。
【0031】
図2は、チャネルの偏りが発生する場合のNWS構成例のイメージ図である。以下においては、同図に表した構成例を、非特許文献5に開示された920MHz帯のチャネル割り当て手順を例に説明する。同図においては、NWS170乃至172が隣接して存在している様子が表わされている。NWS170は管理装置121を、NWS171は管理装置141を、NWS172は管理装置151を、それぞれ備える。
【0032】
ここで、管理装置121がネットワーク開始を行い、次に管理装置141がネットワーク開始を行い、最後に管理装置151がネットワーク開始を行う場合を想定する。
【0033】
管理装置121がネットワーク開始を行う際には、チャネルスキャンを行い、その結果、例えばチャネル24、25を選択し、NWS170においてはチャネル24、25を用いた通信を行うことを決定する。そして、管理装置121の配下のルータとデバイス122乃至130がチャネル24、25によりNWS170に参加する。
【0034】
次に管理装置141がネットワーク開始を行う際にチャネルスキャンを行う。この際に、同図に示したように、管理装置141の電波到達範囲191にNWS170に属す通信装置が存在しない場合には管理装置141は、NWS170の存在を知ることができない。このため、管理装置141がチャネルスキャンを行い、ネットワーク開始を行う際に、チャネル24、25を選択してネットワーク開始を行う可能性がある。管理装置141がチャネル24、25を選択してネットワーク開始を行った場合、管理装置141に属するルータとデバイス142乃至147は、チャネル24、25によりNWS171に参加する。
【0035】
最後に、管理装置151がネットワーク開始を行う。管理装置151はNWS170に属するデバイス128が管理装置151の電波到達範囲192にあるため、チャネルスキャンにてNWS170が使用しているチャネルであるチャネル24、25とは異なるチャネル26、27にてネットワーク開始を行う。そして、ルータ152及びデバイス153乃至156はチャネル26、27にてNWS172に参加する。
【0036】
非特許文献5の表 3−12 2(単位チャネル同時使用時の中心周波数)に示される920MHz帯による無線通信では、割り当て可能な周波数チャネルが36あるので、3つのNWSであればチャネルの重複なしにチャネルを割り当てることが可能である。それにもかかわらず、上記のように複数のNWSにおいて使用するチャネルが重複する場合があり得る。
【0037】
以下においては、NWS001の課題である上記チャネルの偏りを抑えるための、本発明の実施形態について説明する。
<実施形態>
図3は、本実施形態の通信装置10の構成例を表す概念図である。
【0038】
通信装置10は、送信部11と、受信部12と、制御部13と、検査部14とを備える。
【0039】
送信部11は、制御部13から送られた情報に基づいて、通信装置10が管理するNWSの通信装置に対しての送信を行う。
【0040】
受信部12は、通信装置10の外部から自己に到達した信号の受信を行う。受信した信号は、検査部14に送られる。
【0041】
送信部11における送信及び受信部12における受信は、例えば、IEEE 802.15.4等の無線通信規格に従って行われる。
【0042】
制御部13は、通信装置10及びその構成要素の動作についての制御を行う。
【0043】
検査部14の動作は、通信装置10が管理装置か或いはルータ又はデバイスかの別、及び、その動作がネットワーク開始前に行う動作かネットワーク開始後に行う動作かの別、により異なる。
【0044】
まず、通信装置10が管理装置である場合において、ネットワーク開始前に、検査部14が行う動作について説明する。
【0045】
検査部14は、チャネルスキャンを行い、チャネルスキャンの際に選択した各チャネルについて、他のNWSによる使用状況の検査(以下においては、「使用状況検査」ということにする。)を行う。
【0046】
使用状況検査は、例えば以下の内容である。すなわち、検査部14は、受信部12から送られた信号を受け取り、信号の解析を行う。そして、検査部14は、その信号に含まれる、キャリア検出情報、受信した信号のRSSI、受信パケットに含まれるIDや受信パケット数、受信バイト数等を取得し、記録する。ここで、RSSIは受信信号強度(Received Signal Strength Indicator)である。検査部14は、さらに、IDから、そのチャネルについて、他のNWSがそのチャネルを使用しているかを判定する。
【0047】
次に、通信装置10が管理装置である場合において、ネットワーク開始後に、検査部14が行う動作について説明する。
【0048】
検査部14は、通信装置10が現在使用中のチャネルについて使用状況検査を行う。
【0049】
次に、通信装置10がルータ又はデバイスである場合において、ネットワーク開始前に、検査部14が行う動作について説明する。
【0050】
検査部14は、管理装置探索検査を行う。ここで、「管理装置探索検査」は、ネットワーク開始前に、自己が参加する通信を行うNWSの管理装置をチャネルスキャンにより探索、特定するために行う検査である。
【0051】
管理装置探索検査は、例えば以下の内容である。すなわち、検査部14は、受信部12から送られた信号を受け取り、信号の解析を行う。そして、検査部14は、その信号に含まれる受信パケットから、管理装置から送られたパケットを探索する。管理装置から送られたパケットに含まれるIDと、そのパケットを受信したチャネルを特定し、そのID及びチャネルによりネットワーク開始を行うためである。
【0052】
次に、通信装置10がルータ又はデバイスである場合において、ネットワーク開始後に検査部14が行う動作について説明する。
【0053】
検査部14は使用状況検査を行う。そして、自己が属するNWSにおいて使われているチャネルの、他のNWSによる使用状況に関するデータを作成する。そのデータは、送信部11を通じて、通信装置10の属するNWSの管理装置に送られる。
【0054】
図4は、
図3に表した通信装置10の検査部14の構成例を表す概念図である。
【0055】
検査部14は、チャネル記録部14Aと、ID記録部14Bと、検査情報記録部14Cと、閾値記録部14Dと、候補チャネルリスト記録部14Eと、処理部14Fと、タイマー14Hとを備える。
【0056】
チャネル記録部14Aは、処理部14Fからの指示により、通信装置10が使用するチャネル番号を記録する。
【0057】
閾値記録部14Dは、チャネルの良否判定を行うための閾値を記録する。閾値は、例えば、IDの数やパケット受信に伴う統計情報やキャリアを検出した時間と回数などである。記録した閾値と、検査情報記録部14Cに保存される統計情報を比較することにより、使用しているチャネルが通信に適したものかについての判定等が可能となる。
【0058】
タイマー14Hは、処理部14Fが一つのチャネルについての使用状況検査を開始する際に、処理部14Fがタイマー14Hに作動を指示してから、あらかじめ設定した時間が経過したときに、そのことを処理部14Fに通知する。
【0059】
処理部14F、検査情報記録部14C及び候補チャネルリスト記録部14Eの動作は、通信装置10が管理装置か或いはルータ又はデバイスかの別、及び、その動作がネットワーク開始前に行う動作かネットワーク開始後に行う動作かの別、により異なる。
【0060】
まず、通信装置10が管理装置である場合において、ネットワーク開始前に、処理部14F等が行う動作等について説明する。
【0061】
処理部14Fは、チャネルスキャンを行い、スキャンした各チャネルについて使用状況検査を行うことにより、通信装置10が管理するNWSにおいて使用するチャネルを決定する。チャネルスキャンの結果、処理部14Fはいずれかのチャネルを選択するが、選択したチャネル番号は、チャネル記録部14Aに記録されるであろう。
【0062】
使用状況検査を行うために、処理部14Fは、受信部12が受信した信号の信号解析を行う。この信号解析には受信したパケットの解析(パケット解析)やキャリアの受信に関する解析(キャリア解析)が含まれる。処理部14Fは、受信パケットに含まれるIDにより、通信装置10が属するNWSの通信装置から送られたパケットと、他のNWSの通信装置から送られたパケットとの識別を行う。また、処理部14Fは、受信パケットに含まれる宛先アドレスから、通信装置10宛の情報と、他ノード宛の情報の識別を行う。処理部14Fは、さらに、検査情報記録部14Cにおいて統計情報として記録するための、受信パケットのバイト数や情報量や、受信信号のRSSI等の解析、取得を行う。処理部14Fは、例えば、RSSIが予め設定しておいた閾値よりも大きい場合にキャリア検出があったことを判定する。
【0063】
処理部14Fは、さらに、検査情報記録部14Cに保存される統計情報から単位時間当たりの通信装置10が属するNWSによるチャネルの使用率や、他のNWSによるチャネルの使用率を算出する場合がある。この場合は、これらの使用率を含む情報を用いて、現在使用中のチャネルの適性を判定することが可能になる。
【0064】
処理部14Fは、さらに、チャネルスキャンの期間に受信した全ての受信パケットに含まれるIDとID記録部14Bの内容を比較する。そして、処理部14Fは、IDが一致した場合には、全ての受信パケットに含まれていないIDを、通信装置10が属するNWSのIDとして選択し、ID記録部14Bに記録する。
【0065】
検査情報記録部14Cは、使用状況検査により得られた情報を記録する。その情報は、典型的には、キャリア検出やパケット受信に関する情報である。
【0066】
検査情報記録部14Cは、複数の記憶領域を有しても構わない。前述の920MHz帯の場合、チャネル24乃至チャネル61の38チャネルが定義されている。これを上回る数の記憶領域を持つ場合には、チャネルスキャンの際に得られた情報をチャネル毎に記憶領域に記録することができる。
【0067】
前述のように、NWSにおいては、同一のチャネルを複数のNWSが使用することが起こり得る。そのような場合を想定して、検査情報記録部14Cは、通信装置10の属するNWSの通信による統計情報と、他のNWSの通信による信号受信に伴う統計情報とは分離して管理することがより望ましい。分離して管理した場合は、他のNWSの通信による信号受信に伴う統計情報からは、他のNWSによるチャネルの使用状況を把握することが可能となる。また、通信装置10が属するNWSの通信による統計情報と他のNWSの通信による統計情報の和からは、当該チャネルの使用率を把握することもできる。ここで、チャネルの「使用率」は、チャネルが通信に使われている時間の割合である。使用率を把握することにより、使用率を含めた情報により、チャネルの適性を判定することができる。
【0068】
NWSを構成する通信装置は移動する場合があるが、その場合は、移動により通信状況が変わるため、移動前に取得した統計情報は意味をなさなくなる可能性がある。そのため、検査情報記録部14Cに記録する統計情報は定期的に削除し、作成しなおすことが望ましい。また、チャネル毎の状況の傾向を把握するために、統計情報をチャネル毎に記録することがより好ましい。
【0069】
候補チャネルリスト記録部14Eは、NWSが使用する周波数帯において使用可能なチャネルのうち、通信装置10が属するNWSが使用する候補とするチャネルのチャネル番号のリストを記録する。例えば、2.4GHz帯のWLANの場合、チャネル1乃至チャネル14が規定されているが、干渉を防ぐために非特許文献7のARIB STD−T66 3.7版の参考7では推奨チャネルとしてチャネル1、6、11が表されている。よって、NWSが2.4GHz帯のWLANシステムであり、推奨チャネルを用いる場合には、候補チャネルリスト記録部14Eには、候補チャネルとして、チャネル1、6、11が記録される。
【0070】
次に、通信装置10が管理装置である場合において、ネットワーク開始後に処理部14F等が行う動作等について説明する。
【0071】
処理部14Fは、現在使用中のチャネルについて、使用状況検査を行う。使用状況検査の結果は、検査情報記録部14Cに記録される。使用状況検査の結果、現在使用中のチャネルが通信に適さないと判断した場合、処理部14Fは、チャネルスキャンをやり直す。この際、処理部14Fは、チャネル記録部14Aの内容を消去し、現在使用中のチャネルが通信に適さないことを示す。
【0072】
使用状況検査を行うために処理部14Fが行う具体的な動作は、通信装置10が管理装置である場合において、通信装置10ネットワーク開始前に行う動作と同様である。
【0073】
候補チャネルリスト記録部14Eの動作はない。
【0074】
次に、通信装置10がルータ又はデバイスである場合において、通信装置10がネットワーク開始を行う前に処理部14F等が行う動作等について説明する。
【0075】
処理部14Fは、管理装置探索検査を行う。具体的には、処理部14Fは、受信部12が受信した信号の信号解析を行う。この信号解析には受信したパケットの解析やキャリアの受信に関する解析が含まれる。処理部14Fは、受信パケットに含まれるIDにより、管理装置から送られたパケットの識別を行う。処理部14Fは、管理装置から送られたパケットを発見した時には、そのパケットに含まれるID及びそのパケットを発見したチャネルで、通信装置10が通信に参加することを決める。
【0076】
次に、通信装置10がルータ又はデバイスである場合において、ネットワーク開始後に処理部14F等が行う動作等について説明する。
【0077】
処理部14Fは、チャネル記録部14Aに記録されている、通信装置10が現在使用中のチャネルについて、使用状況検査を行う。使用状況検査を行うために処理部14Fが行う具体的な動作は、通信装置10が管理装置である場合において、通信装置10がネットワーク開始前に行う動作と同様である。
【0078】
処理部14Fは、使用状況検査により得られた情報を検査情報記録部14Cに記録する。
【0079】
候補チャネルリスト記録部14Eの動作はない。
【0080】
図5は、
図3に表した通信装置10がネットワーク開始前に行うチャネルスキャンの動作例を表す概念図である。同図は、2.4GHz帯におけるWLANの代表的なチャネルであるチャネル1、6、11および、チャネルの中心周波数は異なるが、周波数帯が重なるチャネル8を用いた場合を例に表してある。
【0081】
同図において、パケット5Aとパケット5Bはチャネル1を使用した通信のパケット、パケット5C乃至パケット5Eはチャネル6を使用した通信のパケットである。また、パケット5Fとパケット5Gはチャネル11を使用した通信のパケットであり、パケット5Hとパケット5Jはチャネル8を使用した通信のパケットである。
【0082】
同図において、ch1の検査期間、ch6の検査期間及びch11の検査期間は、それぞれ、チャネル1、チャネル6及びチャネル11の使用状況検査を行う期間を表す。
【0083】
同図の例では、チャネル1についての使用状況検査中はパケット5Cとパケット5Fが存在する。しかし、パケット5Cとパケット5Fは、使用状況検査中のチャネル1とは異なるチャネルを使用しているため、チャネル1を使用するパケットとしては検出されない。従い、チャネル1は使用されていないと判断される。また、中心周波数は異なるが一部の周波数が重なっているチャネルがある場合は、パケットとしては検出されないが、キャリアが検出される。チャネル1の使用状況検査中には、パケットが検出されずキャリアが検出されることもなかったことから、チャネル1と一部の周波数が重なっているチャネルもないことが判断される。
【0084】
一方、チャネル6の使用状況検査中にパケット5Dの受信が行われる。これにより、チャネル6は他のNWSにより使用中であることが判断される。また、パケット5Hのパケットについては、中心周波数が異なるのでパケットの検出はしないが、一部の周波数が重なるチャネル8のパケットなので、そのキャリアは検出される。これにより、チャネル6と中心周波数は異なるが一部の周波数が重なっているチャネルの使用があることが判断される。このチャネルがチャネル8であることは使用状況検査ではわからない。
【0085】
同様にチャネル11の使用状況検査中にパケット5Gの受信とパケット5Jのキャリアを検出する。これにより、チャネル11が使用中であることが判断され、また、チャネル11と中心周波数は異なるが一部の周波数が重なっているチャネルの使用があることが判断される。このチャネルはチャネル8であるが、そのことは使用状況検査ではわからない。
【0086】
以上の使用状況検査により、他のNWSによる使用もなく、中心周波数は異なるが一部の周波数が重なっているチャネルの使用もないと判断されたチャネル1を、自己の属するNWSで使用するチャネルとして選択することになる。
【0087】
図6乃至
図10に本実施形態の、管理装置、ルータ及びデバイスにおいて行われる処理例の概念図を表す。非特許文献1、2、3、4及び6にはそれぞれ異なる無線プロトコルが開示されており、適用する無線プロトコルにより、行われる処理の詳細は異なるが、処理の概念は同図に表したとおりである。
【0088】
図6は、
図3に表した通信装置10が管理装置である場合に、
図4に表した処理部14Fにおいて行われる、ネットワーク開始前のチャネルスキャン処理例を表す概念図である。本処理は、ネットワーク開始前において、チャネルスキャンにより管理装置が管理するNWSにおける通信に適したチャネルを探索し、探索したチャネルによりネットワーク開始を行う処理である。
【0089】
本処理に先立ち、S102において用いる使用状況検査時間を予め設定しておく。ここで、使用状況検査時間は、
図5に表した使用状況検査時間5K、すなわち、個々のチャネルについて使用状況検査を行う時間である。
【0090】
また、本処理に先立ち、通信装置10が属するNWSにおける通信に用いる候補となるチャネルのチャネルリストを作成し、候補チャネルリスト記録部14Eに記録しておく。
【0091】
そして、S101において、処理部14Fは、候補チャネルリスト記録部14Eからチャネルリストを読み込む。そして、処理部14Fは、チャネルリストにあるチャネルの中から最初に使用状況検査を行うチャネルを特定する。処理部14Fは、さらに、タイマー14Hの作動を開始させ、使用状況検査を開始する。
【0092】
そして、S102において、処理部14Fは、S101において使用状況検査を開始してからの経過時間が、予め設定しておいた使用状況検査時間に到達したかを判定する。その判定は、タイマー14Hが終了したかを判定することにより行う。
【0093】
S102において、その経過時間が、予め設定しておいた使用状況検査時間に到達したと判定しなかった場合は、S105に移行する。
【0094】
S105に移行した場合は、S105において、処理部14Fは、使用状況検査を開始してからその時までにパケット受信があったかを判定する。
【0095】
S105において、使用状況検査を開始してからその時までにパケット受信があったと判定した場合は、S108に進む。
【0096】
そして、S108において、処理部14Fは、そのパケット受信が、通信装置10が属するNWSの通信装置から送られたパケット受信かを判定する。パケット受信を検出したとしても、通信装置10の属するNWSに属するルータやデバイスからの情報の場合と、他のNWSに属する通信装置からの情報の場合が有るので、その別を判定するのである。
【0097】
S108において、そのパケット受信が、通信装置10が属するNWSと同じNWSからのパケット受信であると判定しなかった場合は、S112に移行する。
【0098】
そして、S112において、処理部14Fは、受信バイト数、パケット数、ID、RSSI等を統計情報として、検査情報記録部14Cに記録する。他のNWSに属する通信装置からのパケット受信であれば、該当チャネルが他のNWSにより使用されていることになるので、その関連情報を記録するのである。
【0100】
一方、S108において、処理部14Fがそのパケット受信が、通信装置10が属するNWSの通信装置からのパケット受信であると判定した場合は、S102に移行する。
【0101】
S105において、処理部14FがS101で使用状況検査を開始してからその時までにパケット受信があったと判定しなかった場合は、S107に移行する。
【0102】
そして、S107において、処理部14Fは、使用状況検査を開始してからその時までにキャリア検出があったかを判定する。例えば、RSSIが予め設定しておいた閾値よりも大きい場合にキャリア検出があったと判定する。
【0103】
S107において、処理部14Fがキャリア検出があったと判定した場合は、S111に移行する。
【0104】
そして、S111において、処理部14Fは、キャリア検出時間、回数等を統計情報として、検査情報記録部14Cに記録する。S105でパケットを受信しなかったにも拘らず、S107で処理部14Fがキャリアを検出した場合は、中心周波数は異なるが、チャネルスキャン中のチャネルの周波数帯と他のNWSが使用しているチャネルの周波数帯域とが重なっていることを意味する。
【0106】
S115に移行した場合は、同ステップにおいて、処理部14Fは、そのチャネルを、使用されているチャネルとして、検査情報記録部14Cに記録する。
【0108】
一方、S107において、処理部14Fがキャリア検出があったと判定しなかった場合は、S102に移行する。
【0109】
S102において、処理部14Fが使用状況検査時間に達したと判定した場合は、S104に移行する。
【0110】
そして、S104において、処理部14Fは、検査情報記録部14Cに記録されたIDから、使用状況検査を行ったチャネルが、他のNWSに使われているかを判定する。
【0111】
S104において、処理部14Fが使用状況検査を行ったチャネルが、他のNWSに使われていると判定した場合は、S106に移行する。
【0112】
そして、S106において、処理部14Fは、チャネルリストにあるチャネルについて、使用状況検査を行っていないチャネルがないかを判定する。
【0113】
S106において、使用状況検査を行っていないチャネルがないと判定した場合は、S110に移行する。
【0114】
そして、S110において、処理部14Fは、チャネルリストにあるすべてのチャネルのうち最も使用率の低いチャネルを、自己の属するNWSが行う通信に用いるチャネルとして選択する。
【0116】
一方、S106において、処理部14Fが使用状況検査を行っていないチャネルがないと判定しなかった場合は、S114に移行する。
【0117】
そして、S114において、チャネルリストにあるチャネルから、使用状況検査が行われていない一のチャネルを指定して使用状況検査を開始する。
【0119】
一方、S104において、処理部14Fが使用状況検査を行ったチャネルが、他のNWSに使われていると判定しなかった場合は、S109に移行する。
【0120】
そして、S109において、処理部14Fは、そのチャネルスキャンを行ったチャネルを、自己の属するNWSが行う通信に用いるチャネルとして選択する。
【0122】
S113に移行した場合は、同ステップにおいて、処理部14Fは、他のNWSで用いられていない、重複しないIDを決定する。
【0123】
そして、S116において、処理部14Fは、S109で選択したチャネルと、S113で決定したIDとを、使用するチャネルとIDとして、チャネル記録部14A及びID記録部14Bにそれぞれ記録する。
【0124】
そして、S117において、処理部14Fは、ネットワーク開始を行う。
【0126】
同図に表した処理においては、S104においてそのチャネルが他のNWSにより使われていると判定しなかった場合に、S109において、そのチャネルを、自己の属するNWSにおいて行う通信に用いるチャネルとして選択する。しかしながら、そのチャネルが他のNWSにより使われていたとしても、その使用の程度が許容の範囲にある等により、自己の属するNWSにおいて行う通信に用いることができると判定できる場合もあり得る。その場合は、そのチャネルが他のNWSにより使われている使用の程度が予め設定しておいた条件を満たす場合に、そのチャネルを、自己の属するNWSが行う通信に用いるチャネルとして選択することもできる。ここで、「他のネットワークシステムによる使用の程度」は、典型的には、そのチャネルが他のネットワークシステムにより使用される場合の、使用率や使用頻度であるが、使用の程度を表すものであればこれらに限定されない。また、前記条件は、例えば、前記使用の程度が使用率や使用頻度である場合には、それらが閾値よりも小さいこととすることができる。
【0127】
図7は、
図3に表した通信装置10がルータ又はデバイスである場合の
図4に表した処理部14Fにおける、ネットワーク開始前のチャネルスキャン処理例を表す概念図である。本処理は、ルータ又はデバイスが、ネットワーク開始前に、自己が参加する通信を行うNWSをチャネルスキャンにより特定し、そのNWSに参加する処理である。
【0128】
本処理に先立ち、処理部14Fは、予め、S202において用いる検査時間を設定しておく。検査時間は、個々のチャネルについて管理装置探索検査を行う時間である。
【0129】
また、本処理に先立ち、処理部14Fは、自己の属するNWSにおける通信に用いる候補となるチャネルのチャネルリストを作成し、候補チャネルリスト記録部14Eに記録しておく。
【0130】
そして、S201において、処理部14Fは、チャネルリストにあるチャネルの中から最初に管理装置探索検査を行うチャネルを指定し、管理装置探索検査を開始する。管理装置探索検査は、自己にパケットを送る管理装置を探す検査である。管理装置探索検査においては、あるチャネルにおいて、処理部14Fは、送られてきたパケットがあった場合にそのパケットを解析し、そのパケットが管理装置から送られたものであるかを判定する。そして、そのパケットが管理装置から送られたものであると判定した場合に、その管理装置が管理するNWSが使用しているチャネル及びIDにより、そのNWSにおける通信に参加する。
【0131】
チャネルスキャンの方法としては、周辺ノード探索のためビーコンを利用するアクティブスキャンと、ビーコンを利用しないパッシブスキャンという手法が広く知られている。ルータやデバイスである通信装置10が行う管理装置探索検査を行うチャネルスキャンの方法としては、どちらを利用しても構わない。
【0132】
そして、S202において、処理部14Fは、S201において管理装置探索検査を開始してからの経過時間が、あらかじめ設定しておいた管理装置探索検査時間に到達したかを判定する。この判定は、タイマー14Hの作動が終了しているかを判定することにより行う。
【0133】
S202において、処理部14Fが管理装置探索検査時間に到達したと判定した場合は、S203に移行する。
【0134】
一方、S202において、処理部14Fが管理装置探索検査時間に到達したと判定しなかった場合は、S204に移行する。
【0135】
S203に移行した場合は、処理部14Fは、同ステップにおいて、予め作成しておいたチャネルリストのチャネルに管理装置探索検査を行っていないものがないかについて判定する。
【0136】
S203において、処理部14Fが管理装置探索検査を行っていないものがないと判定しなかった場合は、S205に移行する。
【0137】
一方、S203において、処理部14Fが管理装置探索検査を行っていないものがないと判定した場合には、S206に移行する。
【0138】
S205に移行した場合は、同ステップにおいて、処理部14Fは、予め作成しておいたチャネルリストから、まだ管理装置探索検査を行っていないチャネルを一つ選択し、そのチャネルについての管理装置探索検査を開始する。
【0140】
S206に移行した場合は、処理部14Fは、同ステップにおいて予め設定しておいた規定時間だけ待ち合わせる。S206に移行した場合は、一回のチャネルスキャンにより管理装置が見つからなかったことを意味する。その理由として、チャネル時間を行った時間帯が管理装置がパケットを送っていなかった時間帯である可能性が想定される。そのため、規定時間だけ待ってから再度チャネルスキャンを行い、管理装置の探索を試みるために、待ち合わせるのである。待ち合わせている間はチャネルスキャン動作による通信装置の処理資源を使うことがないので、その分通信装置は通常の送受信等の処理スピードを上げることができる。ただし、そのような必要がない場合や、スキャン動作により処理スピードが低下する懸念が少ない場合等は、S206は省略することもできる。
【0142】
S204に移行した場合は、同ステップにおいて、処理部14Fは、パケットを受信したかを判定する。
【0143】
S204において、パケットを受信したと判定した場合は、S207に移行する。
【0144】
一方、S204において、パケットを受信したと判定しなかった場合は、S202に移行する。
【0145】
S207に移行した場合は、同ステップにおいて、処理部14Fは、受信したパケットが管理装置から送られたものかを判定する。
【0146】
S207において、処理部14Fが受信したパケットが管理装置から送られたものと判定しなかった場合は、S202に移行する。
【0147】
S207において、処理部14Fが受信したパケットが管理装置から送られたものと判定した場合は、S208に移行する。
【0148】
S208に移行した場合は、同ステップにおいて、処理部14Fは、その管理装置が管理しているチャネルとIDを、使用するチャネルとIDとして、ID記録部14Bに記録する。IDはその管理装置から送られたパケットに含まれる情報である。
【0149】
そして、S209において、処理部14Fは、使用することを決定したIDにより特定されるNWSにおけるネットワーク開始を、そのチャネルにより行う。
【0150】
次に、ネットワーク開始後における、通信装置(管理装置、ルータ及びデバイス)において行われる処理について説明する。
【0151】
図8は、
図3に表した通信装置10が管理装置である場合に、
図4に表した処理部14Fがネットワーク開始後に行う処理例を表す概念図である。本処理は、ネットワーク開始後において、通信装置10が、自己が管理するNWSに既に適用しているチャネルが、自己が管理するNWSにおいて使用するチャネルとして適当かについて判定するために行う処理である。通信装置10は、適当であると判定しなかった場合は、再び
図6に表したチャネルスキャン処理を行うことにより、自己が管理するNWSにおいて使用するチャネルとして適当と判定されるチャネルを探索する。
【0152】
まず、S301において、処理部14Fは、タイマー14Hの動作をスタートする。ここで、タイマーは、本処理において、一定時間ごとの統計情報の算出を行うために用いられる。なお、タイマー作動時間(検査時間)は本処理に先立ち予め定めておくものとする。また、タイマーの作動時間は
図6に表した処理におけるタイマーの作動時間と異なっていても構わない。
【0153】
次に、S302において、処理部14Fはパケットの受信があるかについて判定する。
【0154】
S302において、処理部14Fがパケットの受信があると判定した場合には、S306に移行する。
【0155】
そして、S306において、処理部14Fは、受信バイト数、パケット数、ID、RSSI等を統計情報として、検査情報記録部14Cに記録する。
【0156】
そして、S303において、処理部14Fは、そのパケットの受信が、通信装置10が属するNWSからの受信かを判定する。
【0157】
S303において、処理部14Fがそのパケットの受信が、通信装置10が属するNWSからの受信であると判定した場合は、S308に移行する。
【0158】
S303において、処理部14Fが、そのパケットの受信が通信装置10の属するNWSからの受信であると判定しなかった場合は、S317に移行する。
【0159】
S308に移行した場合は、同ステップにおいて、処理部14Fは、その受信したパケットが、通信装置10宛のものかを判定する。
【0160】
S308において、処理部14Fがその受信したパケットが、通信装置10宛のものと判定した場合には、S310に移行する。
【0161】
S308において、処理部14Fがその受信したパケットが、通信装置10宛のものと判定しなかった場合には、S312に移行する。
【0162】
S310に移行した場合は、処理部14Fは、パケット受信処理をする。そして、処理部14Fは、必要に応じ応答パケットを生成する。
【0163】
そして、S314において、処理部14Fは、通信装置10宛のパケットが、通信装置10が管理するルータやデバイスからの統計情報を含むパケットかを判定する。下記の
図9及び
図10の説明において説明するように、ルータやデバイスは、自己に送られるパケットの情報及びキャリアに関する情報を解析する。そして、ルータやデバイスは、解析結果の統計情報を含むパケットにした上で、自己が属するNWSの管理装置に送る処理を行う。本処理は、そのようなパケットを探すために行う処理である。
【0164】
S314において、処理部14Fが通信装置10宛のパケットが、通信装置10が管理する、配下のルータやデバイスからの統計情報を含むパケットであると判定した場合は、S318に移行する。
【0165】
一方、S314において、処理部14Fが通信装置10宛のパケットが、通信装置10が管理する、配下のルータやデバイスからの統計情報を含むパケットであると判定しなかった場合は、S304に移行する。
【0166】
S318に移行した場合は、処理部14Fは、通信装置10が管理するルータやデバイスから送られた統計情報を、通信装置10がルータやデバイスを介さずに直接得た統計情報に合算する。通信装置10の属するNWSの統計情報を、通信装置10が直接得たものだけでなく、通信装置10が管理するルータやデバイスが得たものも含めたものにするためである。
【0167】
S312に移行した場合は、処理部14Fは、同ステップにおいて、次転送ノードへのパケット転送を行うパケットの中継処理を行う。ただし、管理装置が属するNWSがセンサーネットワークの場合などでは、処理部14Fは、中継処理の代わりに廃棄処理を行う場合もあり得る。
【0169】
S317に移行した場合は、同ステップにおいて、処理部14Fは、そのパケットを受信したチャネルを、他のNWSに使用されているチャネルとして、検査情報記録部14Cに記録する。
【0171】
S304に移行した場合は、同ステップにおいて、処理部14Fは、キャリア検出があるかを判定する。処理部14Fは、例えば、RSSIが予め設定しておいた閾値よりも大きい場合にキャリア検出があったことを判定する。
【0172】
S304において、処理部14Fがキャリア検出があると判定した場合は、S305に移行する。
【0173】
そして、S305において、処理部14Fは、キャリア検出時間等を統計情報として、検査情報記録部14Cに記録する。キャリア検出はあるが、パケット受信が無い場合は、他のNWSが組み合わせて使用している近接する周波数帯域をもつチャネルの組み合わせの一部が、通信装置10の管理するNWSで使用しているチャネルと重なっている可能性が推定できる。そのため、処理部14Fは、このチャネルを他のNWSが組み合わせて使用している可能性があるものとするために、キャリア検出を統計情報として収集するのである。
【0175】
一方、S304において、処理部14Fがキャリア検出があると判定しなかった場合は、S307に移行する。
【0176】
次に、S307において、処理部14Fは、通信装置10から送信すべきパケットの有無を判定する。
【0177】
S307において、処理部14Fが通信装置10から送信すべきパケットがあると判定した場合は、S309に移行する。
【0178】
そして、S309において、処理部14Fは、パケット送信処理を行い、パケット送信処理を行ったことを統計情報として、検査情報記録部14Cに記録する。
【0180】
S307において、処理部14Fが通信装置10から送信すべきパケットがあると判定しなかった場合は、S311に移行する。
【0181】
次に、S311において、処理部14Fは、タイマーが満了したかを判定する。
【0182】
S311において、処理部14Fがタイマーが満了したと判定した場合は、S315に移行する。
【0183】
そして、S315において、処理部14Fは、現在のチャネルの品質を表す値を求める。現在のチャネルの品質を表す値は、S305において統計情報としたキャリア検出時間等により求める。現在のチャネルの品質を表す値として、例えば、キャリア検出時間の検査時間(タイマー作動時間)に対する割合を用いることもできる。
【0184】
次に、S316において、処理部14Fは、S315において求めた現在のチャネルの品質を表す値が予め設定しておいた閾値以下であるかを判定する。
【0185】
S316において、処理部14Fがチャネルの品質を表す値が予め設定しておいた閾値以下であると判定した場合は、S319に移行する。
【0186】
そして、S319において、処理部14Fが記録したチャネルの情報を削除し、チャネルスキャンをやり直す。すなわち、
図6に表した処理を再度行う。チャネルの品質を表す値が予め設定しておいた閾値以下であると判定したことにより、現在使われているチャネルが通信に適さないことを判定し、より通信に適した他のチャネルを探すのである。
【0188】
一方、S316において、処理部14Fがチャネルの品質を表す値が予め設定しておいた閾値以下であると判定しなかった場合は、S320に移行する。
【0189】
そして、S320において、処理部14Fは、検査情報記録部14Cに記録してある統計情報を削除し、タイマーを再スタートする。この時に、処理部14Fは、検査情報記録部14Cに記録してある統計情報を削除せず、履歴情報として統計情報とは区別して検査情報記録部14Cに記録することもできる。この場合には、履歴情報を長期にわたる品質測定に利用することも可能である。
【0191】
図8に表した処理の場合は、上記のように、処理部14Fは、通信装置10が直接得た統計情報と、通信装置10が管理する通信装置が得て通信装置10に送った統計情報の両方を利用する。そのため、処理部14Fは、通信装置10の管理するNWS全体のチャネルの使用状況を把握することができる。そのため、通信装置10は、通信装置10の電波到達範囲外や通信品質が悪い場合についても、通信装置10が自己の管理するNWSに適用しているチャネルの他のNWSによる使用状況を把握することができる可能性がある。
【0192】
図9は、ルータにより行われる、ネットワーク開始後の処理例を表す概念図である。ネットワーク開始後にルータにより行われる処理は、通信装置10に送られる信号を解析し、統計情報とした上で、通信装置10が属するNWSの管理装置に送る処理である。
【0193】
まず、S401において、処理部14Fは、タイマーをスタートする。ここで、タイマーは、ある定められた時間が経過したことを示すものであり、一定時間ごとの統計情報の算出を可能にするために用いられる。処理部14Fは、タイマーの作動時間(検査時間)を、本処理に先立ち予め設定しておく。
【0194】
次に、S402において、処理部14Fは、パケットの受信があるかについて判定する。
【0195】
S402において、処理部14Fがパケットの受信があると判定した場合は、S406に移行する。
【0196】
そして、S406において、処理部14Fは、受信バイト数、パケット数、ID、RSSI等を統計情報として、検査情報記録部14Cに記録する。
【0197】
そして、S403において、処理部14Fは、そのパケットの受信が、通信装置10が属するNWSからの受信かを判定する。
【0198】
S403において、処理部14Fがそのパケットの受信が通信装置10の属するNWSからの受信であると判定した場合は、S409に移行する。
【0199】
そして、S409において、処理部14Fは、そのパケットが通信装置10宛のものであるかを判定する。
【0200】
処理部14Fは、S409において、そのパケットが通信装置10宛のものであると判定した場合は、S412に移行する。
【0201】
そして、S412において、処理部14Fは、パケット受信処理を行い、必要に応じ応答パケットを生成する。
【0203】
一方、S409において、処理部14Fがそのパケットが通信装置10宛のものであると判定しなかった場合は、S414に移行する。
【0204】
そして、S414において、処理部14Fは、次転送ノードへのパケット転送であるパケットの中継処理を行う。
【0206】
一方、S403において、処理部14Fがそのパケットの受信が通信装置10の属するNWSからの受信と判定しなかった場合は、S411に移行する。
【0207】
そして、S411において、処理部14Fは、通信装置10が使用しているチャネルを、他のNWSに使用されているチャネルとして、検査情報記録部14Cに記録する。
【0209】
S404に移行した場合は、同ステップにおいて、処理部14Fは、キャリア検出があるか判定する。
【0210】
S404において、処理部14Fがキャリア検出があると判定した場合は、S405に移行する。
【0211】
そして、S405において、処理部14Fは、キャリア検出時間等を統計情報として、検査情報記録部14Cに記録する。
【0213】
次に、S408において、処理部14Fは、送信パケットがあるかを判定する。
【0214】
S408において、処理部14Fが送信パケットがあると判定した場合は、S410に移行する。
【0215】
そして、S410において、処理部14Fは、パケット送信処理を行い、パケット送信処理に関する情報を統計情報として、検査情報記録部14Cに記録する。
【0217】
S408において、処理部14Fが送信パケットがあると判定しなかった場合はS413に移行する。
【0218】
S413に移行した場合は、処理部14Fは、同ステップにおいて、タイマーが満了したかを判定する。
【0219】
S413において、処理部14Fがタイマーが満了したと判定しなかった場合は、S420に移行する。
【0220】
一方、S413において、処理部14Fがタイマーが満了したと判定した場合は、S415に移行する。
【0221】
そして、S415において、処理部14Fは、タイマーが満了するまでに検査情報記録部14Cに記録した統計情報を含むパケットを生成し、そのパケットを通信装置10の属するNWSの管理装置宛に送付する送信する。
【0222】
そして、S416において、処理部14Fは、タイマーが満了するまでに検査情報記録部14Cに記録した統計情報を消去し、タイマーを再スタートする。
【0224】
S420に移行した場合は、処理部14Fは、同ステップにおいて、本処理を終了するかを判定する。
【0225】
S420において、処理部14Fが本処理を終了するという判定をした場合は、本処理を終了する。
【0226】
一方、S420において、処理部14Fは、本処理を終了するという判定をしなかった場合は、S402に移行する。
【0227】
図10は、デバイスにより行われる、ネットワーク開始後の処理例を表す概念図である。ネットワーク開始後にデバイスにより行われる処理は、デバイスである通信装置10に送られたパケット情報及びキャリア情報を解析し、統計情報とした上で、デバイスである通信装置10が属するNWSの管理装置に送る処理である。
【0228】
ネットワーク開始後にデバイスにより行われる処理は、ネットワーク開始後にルータにより行われる
図9に表した処理とは、同図のS414に表したパケットの中継処理がない点のみが異なる。従い、その説明は、次の一文を除いて、
図9の説明において、S414についての説明を削除し、処理を表す記号のSの次の数字である「4」を「5」に置き換えたものと同じである。
【0229】
一方、S509において、処理部14Fがそのパケットが通信装置10宛のものであると判定しなかった場合は、S504に移行する。
[具体例]
次に、本実施形態の通信装置の具体的な適用例について説明する。
【0230】
図11は、本発明の通信装置であるルータ又はデバイスが電力のスマートメータの場合のNWS例を表すイメージ図である。
【0231】
同図に表したNWSは、電柱220と221の柱上に設置された、管理装置に相当する親機200及び210と、各家庭に設置されたスマートメータ201乃至204及び、211乃至215で構成される。同図には、親機200及びスマートメータ201乃至204で構成されるNWSと、親機210及びスマートメータ211乃至214で構成されるNWSと、の2つのNWSが隣接する例を表してある。
【0232】
親機200及び親機210は、それぞれ
図6に表した処理によりチャネルスキャンを行い、IDを決定した後にネットワーク開始を行う。親機200と親機210の電波到達範囲はそれぞれ、電波到達範囲200Rと210Rであることを想定する。その場合、親機210が行う通信を親機200は直接電波を受け取ることによっては認識できず、同様に親機200が行う通信を親機210は直接電波を受け取ることによっては認識できない。そのため、親機200と親機210とは、直接電波を受け取ることのみによる通信で判断した場合には、同一のチャネルを選択する可能性が高い状況にある。
【0233】
以下においては、親機200と親機210は、上記状況下において、共に920MHz帯のチャネル24、25を選択したとして説明する。
【0234】
親機200が管理するNWSにおいて行われる通信には、まずスマートメータ201が参加し、次にスマートメータ202が参加し、さらにスマートメータ203と204が参加する場合を想定する。
【0235】
また、親機210の管理するNWSにおいて行われる通信には、まずスマートメータ211が参加し、次にスマートメータ212が参加し、さらにスマートメータ213、214と参加することを想定する。
【0236】
スマートメータ201乃至204は、それぞれが内蔵するタイマーの作動が満了すると、それぞれが得た統計情報を含むパケットを、親機200に送付する。同様に、スマートメータ211乃至214はそれぞれが得た統計情報を含むパケットを親機210に送付する。
【0237】
ここで、スマートメータ201の電波到達範囲201Rに、スマートメータ201が属するNWSを管理する親機200とは異なる親機である親機210が管理するNWSに属するスマートメータ213が存在する。そのため、スマートメータ201から送付される統計情報には、親機200が管理するNWSと、親機210が管理するNWSの2つのNWSに関する統計情報が含まれる。同様に、スマートメータ204とスマートメータ213及び214が送信する統計情報にも、これら2つのNWSに関する統計情報が含まれる。
【0238】
スマートメータ201及び204からの統計情報により、親機200は、親機210が管理するNWSの存在を認識することができる。また、親機210は、スマートメータ213及び214が送信する統計情報により、親機200が管理するNWSの存在を認識することができる。
【0239】
同図に表した例では、スマートメータ213の電波到達範囲213R内のスマートメータ201は、スマートメータ202乃至204の3台のスマートメータから送られるデータを転送処理するものとする。その場合、スマートメータ201は、スマートメータ201乃至204の4台分のデータを送信することになる。これに対し、スマートメータ213はスマートメータ213乃至214の2台分のデータを送信するものとする。
【0240】
スマートメータ201は4台分のデータを送信するため自己が行う通信のトラヒック量が多いため、スマートメータ213によるスマートメータ214のデータの中継動作は、スマートメータ201が行う通信の影響を受ける。これにより、スマートメータ213を介してのスマートメータ214からのデータ受信頻度が下がると、親機210は使用中のチャネルが通信に適さないと判断することになる。すなわち、親機210は、
図8のS316における判定で、S315において求めた現在のチャネルの品質を表す値が予め設定しておいた閾値以下であることを判定し、S319の処理を実行する。これにより親機210は
図6に表したチャネルスキャンを再度実行する。それにより、親機200が使用しているチャネルではない、例えばチャネル26、27を用いて親機210の管理するNWSを再開する。これにより、親機200と親機210のNWSは異なるチャネルを使用することになり、異なるNWSで行われる通信間の干渉を避けることができるようになる。
[効果]
本発明の通信装置は、指定したチャネルにおいて信号の受信を行い、その信号に含まれるパケットを解析し、そのチャネルの、他のNWSによる使用状況を求め、その使用状況から、通信装置が管理を行うNWSで行う通信へのそのチャネルの適性の判定を行う。
【0241】
そのため、その管理装置が管理するNWSの通信装置が、管理装置が直接通信できる範囲にない場合についても、そのチャネルの適性の判定を行うことができる。ここで、「直接通信できる」は、NWSが無線による通信を行うNWSである場合における、電波到達範囲にあるような場合である。その場合は、その通信装置から、他のNWSによる使用状況を含む情報を送らせ、その情報を含めてそのチャネルの適性を判定することができるからである。
【0242】
そのため、本発明の通信方法等は、マルチホップを含む通信を行うネットワークシステムにおいて、複数のネットワークシステムにおける同一チャネルの同時使用の発生を一層抑えることができる。
【0243】
なお、本発明の最小構成の通信方法を表わす概念図を
図12に表す。
【0244】
本発明の最小構成の通信方法は、あるネットワークシステムにおける通信方法である。本発明の最小構成の通信方法は、あるチャネルにおいて信号の受信を行うステップ(S601)と、前記受信を行った信号に含まれるパケットについてのパケット解析を行うステップ(S602)とを含む。本発明の最小構成の通信方法は、さらに、前記パケット解析を行った結果から、前記チャネルの、他のネットワークシステムによる使用の程度の導出及び出力を行うステップ(S603)を含む。
【0245】
本発明の最小構成の通信方法は、上記構成により、[発明の効果]に記載した効果を奏する。
【0246】
以上好ましい実施形態をあげて本発明を説明したが、本発明は必ずしも上記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々に変形し実施することができる。
【0247】
また、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記述され得るが、以下には限られない。
【0248】
(付記A1)
あるネットワークシステムにおける通信方法であって、
あるチャネルにおいて信号の受信を行うステップと、
前記受信を行った信号に含まれるパケットについてのパケット解析を行うステップと、
前記パケット解析を行った結果から、前記チャネルの、他のネットワークシステムによる使用の程度の導出及び出力を行うステップと、
を含む、通信方法。
【0249】
(付記A2)
前記パケット解析がパケットの受信の有無に関しての解析を含む、付記A1に記載された通信方法。
【0250】
(付記A3)
前記パケット解析が、自己に到達したパケットの有無に関する判定を行うステップを含む、付記A2に記載された通信方法。
【0251】
(付記A4)
前記パケットが、前記他のネットワークシステムに属する装置から送られたパケットを含む、付記A1乃至付記A3のうちのいずれか一に記載された通信方法。
【0252】
(付記A5)
前記パケット解析が、受信したパケットに含まれる情報の解析を含む、付記A1乃至付記A4のうちのいずれか一に記載された通信方法。
【0253】
(付記A6)
前記パケット解析が、自己に到達したパケットが、自己宛に送られたパケットであることに関しての判定を行うステップを含む、付記A5に記載された通信装置。
【0254】
(付記A7)
前記パケット解析が、自己に到達したパケットが、自己宛に送られたパケットでない場合に、前記チャネルが他のネットワークシステムにより使用されているチャネルである旨の判定を行うステップを含む、付記A6に記載された通信方法。
【0255】
(付記A8)
前記パケットが、前記あるネットワークシステムに属す装置から送られたパケットを含む、付記A1乃至付記A7のうちのいずれか一に記載された通信方法。
【0256】
(付記A9)
前記あるネットワークシステムに属す装置から送られた前記パケットが、前記あるネットワークシステムに属す装置による、前記チャネルについての、他のネットワークシステムによる使用の程度の調査結果を備えるパケットを含む、付記A8に記載された通信方法。
【0257】
(付記A10)
前記信号のキャリア解析を行いキャリア解析結果を求めるステップをさらに含み、
前記キャリア解析結果と前記パケット解析結果とから前記使用の程度の導出を行う、
付記A1乃至付記A9のうちのいずれか一に記載された通信方法。
【0258】
(付記A11)
前記キャリア解析が、前記キャリアの検出はあるが自己に到達したパケットがない場合に、前記チャネルの周波数帯域と、他のネットワークシステムにより使用されているチャネルの周波数帯域とが重なっている旨を判定を行うステップを含む、付記A10に記載された通信方法。
【0259】
(付記A12)
前記キャリア解析が、前記キャリアの検出はあるが前記通信装置に到達したパケットがないと判断された場合に、前記チャネルは他のネットワークシステムにより使用されている旨を判定を行うステップを含む、付記A10又は付記11に記載された通信方法。
【0260】
(付記A13)
前記信号の受信信号強度が設定した閾値以上である旨の判定が、前記キャリアの検出がある旨の判定である、付記A11又は付記A12に記載された通信方法。
【0261】
(付記A14)
前記使用の程度が、設定した条件を満たすと判定された場合に、前記チャネルについて、前記あるネットワークシステムで行う通信のチャネルとしての選択を行う、付記A1乃至付記A13のうちのいずれか一に記載された通信方法。
【0262】
(付記A15)
前記チャネルについて、前記他のネットワークシステムによる使用がないと判定された場合に、前記チャネルについて、前記あるネットワークシステムで行う通信のチャネルとしての選択を行う、付記A1乃至付記A14のうちのいずれか一に記載された通信方法。
【0263】
(付記A16)
候補とした複数の前記チャネルのそれぞれについて、順次、前記パケット解析と前記キャリア解析を行うことにより、前記使用の程度の前記導出を行い、前記チャネルについての前記使用の程度が、設定した条件を満たす場合に、当該前記チャネルについて、前記ネットワークシステムで行う通信のチャネルとしての選択を行う、付記A10乃至付記A13のうちのいずれか一に記載された通信方法。
【0264】
(付記A17)
前記使用の程度が最も少ないと判定した前記チャネルについて、前記選択を行う、付記A16に記載された通信方法。
【0265】
(付記A18)
前記あるネットワークシステムで用いるチャネルとして適している旨の判定を行ったチャネルを用いて、前記ネットワークシステムにおける通信を行う、付記1乃至17のうちのいずれか一に記載された通信方法。
【0266】
(付記A19)
前記ネットワークシステムを特定する識別情報を決定し、当該識別情報を用いて、前記ネットワークシステムにおける通信を行う、付記18に記載された通信方法。
【0267】
(付記A20)
前記導出及び出力を、前記選択を行う前に行う、付記1乃至付記19のうちのいずれか一に記載された通信方法。
【0268】
(付記A21)
前記導出および出力を、前記選択を行った後に、その選択を行った前記チャネルについて行う、付記1乃至付記20のうちのいずれか一に記載された通信方法。
【0269】
(付記A22)
前記選択を行った前記チャネルについて、前記導出及び出力を行った後に、前記選択を行った前記チャネル以外の他の前記チャネルについて、前記導出及び出力を行う、付記A21に記載された通信方法。
【0270】
(付記A23)
前記あるネットワークシステムが、マルチホップ通信を行い得るネットワークシステムである、付記A1乃至付記A22のうちのいずれか一に記載された通信方法。
【0271】
(付記A24)
前記あるネットワークシステムが、シングルホップ通信を行い得るネットワークシステムである、付記A23に記載された通信方法。
【0272】
(付記B1)
あるネットワークシステムに属する通信装置であって、
あるチャネルにおいて信号の受信を行う受信部と、
前記受信を行った信号に含まれるパケットについてのパケット解析を行い、前記パケット解析を行った結果から、前記チャネルの、他のネットワークシステムによる使用の程度を求める処理部と、
前記使用の程度を出力する出力部と、
を備える、通信装置。
【0273】
(付記C1)
あるネットワークシステムにおける処理をコンピュータに実行させる通信プログラムであって、
あるチャネルにおいて信号の受信を行う処理と、
前記受信を行った信号に含まれるパケットについてのパケット解析を行う処理と、
前記パケット解析を行った結果から、前記チャネルの、他のネットワークシステムによる使用の程度を求め、当該使用の程度を出力する処理と、
を含む処理を、コンピュータに実行させる通信プログラム。