特許第6705934号(P6705934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6705934シス−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの共沸混合物様の組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6705934
(24)【登録日】2020年5月18日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】シス−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテンの共沸混合物様の組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/00 20060101AFI20200525BHJP
   C09K 5/04 20060101ALI20200525BHJP
   C09K 3/30 20060101ALI20200525BHJP
   C08J 9/14 20060101ALI20200525BHJP
   C11D 7/50 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   C09K3/00 111B
   C09K5/04 F
   C09K3/30 J
   C08J9/14CER
   C08J9/14CEZ
   C11D7/50
【請求項の数】17
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2019-149014(P2019-149014)
(22)【出願日】2019年8月15日
(62)【分割の表示】特願2017-242320(P2017-242320)の分割
【原出願日】2010年12月15日
(65)【公開番号】特開2020-23696(P2020-23696A)
(43)【公開日】2020年2月13日
【審査請求日】2019年8月15日
(31)【優先権主張番号】12/967,522
(32)【優先日】2010年12月14日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/287,041
(32)【優先日】2009年12月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】ハルス,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ラジヴ・ラトナ
(72)【発明者】
【氏名】パオネッサ,マーティン・アール
(72)【発明者】
【氏名】チェニー,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ファム,ハン・ティー
(72)【発明者】
【氏名】ボグダン,メアリー
(72)【発明者】
【氏名】ジッテレ,クリフ
【審査官】 鶴 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/089511(WO,A1)
【文献】 特開平05−179043(JP,A)
【文献】 特表2010−522819(JP,A)
【文献】 特表2010−531926(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/014966(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0216904(US,A1)
【文献】 特表2012−528922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/00
C08J 9/14
C09K 3/30
C09K 5/04
C11D 7/50
WPI
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランス−1,1,1−トリフルオロ−3−クロロプロペン(E−HCFO−1233zd)及び10重量%までのシス−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(Z−HFO−1336mzzm)からなる共沸混合物様組成物を含む発泡剤組成物を含む独立気泡の熱硬化性噴霧フォーム。
【請求項2】
前記共沸混合物様組成物が、0.40〜7.05重量%のシス−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(Z−HFO−1336mzzm)及び92.95〜99.60重量%のトランス−1,1,1−トリフルオロ−3−クロロプロペン(E−HCFO−1233zd)からなる、請求項1に記載の独立気泡の熱硬化性噴霧フォーム。
【請求項3】
前記共沸混合物様組成物が、0.40〜4.21重量%のシス−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(Z−HFO−1336mzzm)及び95.79〜99.60重量%のトランス−1,1,1−トリフルオロ−3−クロロプロペン(E−HCFO−1233zd)からなる、請求項1に記載の独立気泡の熱硬化性噴霧フォーム。
【請求項4】
前記共沸混合物様組成物が、4重量%のシス−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(Z−HFO−1336mzzm)及び96重量%のトランス−1,1,1−トリフルオロ−3−クロロプロペン(E−HCFO−1233zd)からなる、請求項1に記載の独立気泡の熱硬化性噴霧フォーム。
【請求項5】
前記発泡剤組成物が150以下の地球温暖化係数(GWP)及び0.5以下のオゾン層破壊係数(ODP)を有する、請求項1〜4のいずれかに記載の独立気泡の熱硬化性噴霧フォーム。
【請求項6】
前記発泡剤組成物が50以下のGWPを有する、請求項1〜5のいずれかに記載の独立気泡の熱硬化性噴霧フォーム。
【請求項7】
前記発泡剤組成物が0.1以下のODPを有する、請求項1〜6のいずれかに記載の独立気泡の熱硬化性噴霧フォーム。
【請求項8】
前記フォームがポリウレタン又はポリイソシアヌレートフォームである、請求項1〜7のいずれかに記載の独立気泡の熱硬化性噴霧フォーム。
【請求項9】
前記フォームが、硬質フォームである、請求項8に記載の独立気泡の熱硬化性噴霧フォーム。
【請求項10】
前記フォームが0.5lb/ft〜40lb/ftの密度を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の独立気泡の熱硬化性噴霧フォーム。
【請求項11】
少なくとも1種のフォーム形成成分及び請求項1〜7のいずれかに記載の共沸混合物様組成物を含む発泡剤組成物を含む独立気泡の熱硬化性噴霧フォームを形成するために発泡性である発泡性組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種のフォーム形成成分がポリオールまたはポリオールの混合物を含む、請求項11に記載の発泡性組成物。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれかに記載の発泡剤組成物を発泡性組成物に加えることを含む独立気泡の熱硬化性噴霧フォームを形成する方法。
【請求項14】
前記独立気泡の熱硬化性噴霧フォームが請求項8〜10のいずれかに記載のフォームである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
トランス−1,1,1−トリフルオロ−3−クロロプロペン(E−HCFO−1233zd)及び10重量%までのシス−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(Z−HFO−1336mzzm)からなる共沸混合物様組成物を含む発泡剤組成物の、独立気泡の熱硬化性噴霧フォームの製造における使用。
【請求項16】
前記発泡剤組成物が、請求項2〜4のいずれかに記載の発泡剤組成物である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記フォームが請求項8〜10のいずれかに記載のフォームである、請求項15または16に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年12月16日出願の米国仮特許出願61/287,041(その開示事項は参照として本明細書中に包含する)の利益を主張する。
本発明は、数多くの用途において有用性を有する共沸混合物様の組成物、方法、及びシステム、特に有効量の、以下の構造:
【0002】
【化1】
【0003】
を有する化合物:シス−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(Z−HFO−1336mzzm)、並びに水、フルオロケトン、アルコール、ヒドロクロロフルオロオレフィン、及びこれらの2以上の組合せからなる群から選択される他の材料を含むか又は実質的にこれらから構成される共沸混合物様の組成物に関する使用に関する。
【背景技術】
【0004】
本発明の共沸混合物様の組成物は、次世代の低地球温暖化係数の材料に関する継続した探査の一環である。かかる材料は、非常に低い地球温暖化係数及びゼロに近いオゾン層破壊係数によって評価される低い環境影響を有していなければならない。
【0005】
本発明の共沸混合物様の組成物は、少数の好ましい用途が挙げられる発泡剤、冷媒、加熱剤、動力サイクル薬剤、洗浄剤、エアゾール噴射剤、滅菌剤、潤滑剤、香味料及び香料抽出剤、燃焼性低下剤、及び炎抑制剤のような広範囲の用途において用いることができる。
【発明の概要】
【0006】
出願人らは、必須成分としてZ−HFO−1336mzzmを含む幾つかの共沸混合物様の組成物を開発した。幾つかの態様においては、共沸混合物様の組成物の他の部分は少なくとも1種類のC〜C12アルコール化合物である。他の態様においては、共沸混合物様の組成物の他の部分は水である。他の態様においては、共沸混合物様の組成物の他の部分はフルオロケトン化合物である。他の態様においては、共沸混合物様の組成物の他の部分はヒドロクロロフルオロオレフィン化合物である。
【0007】
幾つかの態様によれば、本発明は、0より多く約99重量%までの化合物:Z−HFO−1336mzzm、及び約1重量%乃至100重量%未満のアルコール及びこれらの2以上の組合せを含むか又は好ましくは実質的にこれらから構成される共沸混合物様の組成物を提供する。好ましいアルコールはC〜C12アルコールである。メタノール及びエタノールが特に好ましい。
【0008】
Z−HFO−1336mzzmとして示される生成物は、小さい割合、例えば約0.5重量%乃至約5重量%以下の、特にE−HFO−1336mzzmなどの他の成分を含むことが通常的であり、予測されることを留意すべきである。本明細書において用いる「実質的にZ−HFO−1336mzzmから構成される」という用語は、かかる組成物を概して包含するように意図される。本明細書において用いる「から構成される」及び「から
構成され」という用語は、かかる他の成分を含まない。本明細書において記載する本発明の全ての態様は、所望の場合には、これらの態様が好ましくは少量(例えばppm)の不純物以外には示されている実際の成分のみから構成されるように実質的に精製形態で得ることができる。
【0009】
本発明は、好ましくはZ−HFO−1336mzzm/エタノール又はZ−HFO−1336mzzm/メタノールを含むか又は好ましくは実質的にこれらから構成される共沸混合物及び共沸混合物様の組成物を提供する。好ましくは、本発明の共沸混合物様の組成物は、有効量のZ−HFO−1336mzzmとエタノール又はZ−HFO−1336mzzmとメタノールを含むか又はより好ましくは実質的にこれらから構成される。本明細書において用いる有効量という用語は、1種類又は複数の他の成分と組み合わせると本共沸混合物様組成物を形成するそれぞれの成分の量を指す。
【0010】
幾つかの態様においては、共沸混合物様の組成物は、約75重量%乃至100重量%未満のZ−HFO−1336mzzm、及び0より多く約25重量%までのアルコール及びこれらの2以上の組合せを含むか又は好ましくは実質的にこれらから構成される。
【0011】
他の態様においては、共沸混合物様の組成物は、約85重量%乃至100重量%未満のZ−HFO−1336mzzm、及び0より多く約15重量%までのアルコール及びこれらの2以上の組合せを含むか又は好ましくは実質的にこれらから構成される。
【0012】
本発明の他の態様は、0より多く約99重量%までの化合物水、及び約1重量%乃至100重量%未満のZ−HFO−1336mzzmを含む共沸混合物様の組成物に関する。
幾つかの態様においては、共沸混合物様の組成物は、0より多く約50重量%までの水、及び約50重量%乃至100重量%未満のZ−HFO−1336mzzmをを含むか又は好ましくは実質的にこれらから構成される。
【0013】
他の態様においては、共沸混合物様の組成物は、0より多く約10重量%までの水、及び約90重量%乃至100重量%未満のZ−HFO−1336mzzmを含むか又は好ましくは実質的にこれらから構成される。
【0014】
本発明の一態様は、1種類以上の本発明の共沸混合物様の組成物を含むか又は実質的にこれから構成される発泡剤である。
本発明の他の態様は、発泡性組成物に、1種類以上の本発明の共沸混合物様の組成物を含むか又は実質的にこれから構成される発泡剤を加えることを含むフォームを形成する方法である。発泡剤には、ポリオールと、本発明の共沸混合物様の組成物を含む発泡剤とのプレミックスを更に含ませることができる。
【0015】
本発明の更に他の態様は、1種類以上の本発明の共沸混合物様の組成物を含むか又は実質的にこれから構成される発泡剤の存在下で発泡性組成物を発泡させることによって製造される独立気泡フォームである。好ましくは、独立気泡フォームは、ポリウレタン、ポリイソシアヌレート、ポリスチレン、ポリエチレン、及びこれらの混合物を更に含む発泡性組成物から形成される。
【0016】
本発明の一態様は、1種類以上の本発明の共沸混合物様の組成物を含むか又は実質的にこれから構成される冷媒組成物である。本発明の他の態様は、本発明の冷媒組成物を含む冷却システムである。本発明の更に他の態様は、本発明の冷媒組成物を冷却する物品の近傍で蒸発させることを含む物品の冷却方法である。
【0017】
本発明の他の態様は、1種類以上の本発明の共沸混合物様の組成物を含むか又は好まし
くは実質的にこれから構成される冷媒組成物を、加熱する物品の近傍で凝縮させることを含む物品の加熱方法である。
【0018】
本発明の一態様は、噴霧する材料、及び1種類以上の本発明の共沸混合物様の組成物を含むか又は実質的にこれから構成される噴射剤を含む噴霧可能な組成物である。
本発明の更に他の態様は、1種類以上の本発明の共沸混合物様の組成物を流体に加えることを含む、流体の燃焼性を減少させる方法である。
【0019】
本発明の他の態様は、炎を1種類以上の本発明の共沸混合物様の組成物を含む流体と接触させることを含む鎮火方法である。場合によっては、この流体には1種類以上のフルオロケトン化合物を更に含ませることができる。1つの好ましいフルオロケトン化合物はドデカフルオロ−2−メチルペンタン−3−オンである。この化合物に関する他の源は3M Company(商品名Novec 1230)である。
【0020】
本発明の更に他の態様は、洗浄又は滅菌する物品を、1種類以上の本発明の共沸混合物様の組成物を含むか又は実質的にこれから構成される組成物と接触させることを含む物品の洗浄及び/又は滅菌方法である。場合によっては、組成物にエチレンオキシドを更に含ませることができる。
【0021】
共沸混合物様:
共沸混合物様という用語は、共沸混合物のように挙動する組成物、即ち沸騰又は蒸発中に形成される蒸気の組成が元の液体の組成と同一か又は実質的に同一であることを指す。而して、沸騰又は蒸発によって、液体の組成は、あったとしても最小又は無視できる程度しか変化しない。これは、沸騰又は蒸発中に液体の組成が相当な程度変化する非共沸混合物様の組成物と対比されるものである。
【0022】
而して、共沸混合物様という用語は、その広い意味において、厳密に共沸性である組成物及び共沸混合物のように挙動する組成物の両方を包含するように意図される。基本原理からは、流体の熱力学的状態は、圧力、温度、液体の組成、及び蒸気の組成によって規定される。共沸混合物は、液体の組成と蒸気の組成がその状態の圧力及び温度において同等である2以上の成分の系である。実際にはこれは、共沸混合物の複数の成分が一定の沸点であり、相変化中に分離することができないことを意味する。
【0023】
「共沸混合物様」という用語は、特に、液体と実質的に平衡な蒸気が液体中に存在する成分と実質的に同等の濃度を有するという点に限って言えば実質的に単一の化合物のように挙動する、化合物:Z−HFO−1336mzzmと1種類以上の化合物との組み合わせを指す。
【0024】
本発明による共沸混合物様の組成物には、絶対共沸混合物(特定の圧力において全ての温度の値(臨界状態以下)にわたって共沸性状態が満足される組成物)、又は限定共沸混合物(特定の圧力において特定の温度範囲においてのみ共沸性状態が満足される組成物)が含まれる。本発明による共沸混合物様の組成物にはまた、所定の圧力において組成物が単一の液相で存在する均一共沸混合物、又は所定の圧力において組成物が2以上の液相として存在する異相共沸混合物も含まれる。更に、本発明による共沸混合物様の組成物は、組成物がそれぞれ2、3、4、又は5種類(又はそれ以上)の化合物から構成されるかどうかによって、二成分、三成分、四成分、又は五成分共沸混合物とすることができる。
【0025】
本発明の共沸混合物様の組成物には、新しい共沸混合物様の系を形成しない更なる成分、又は第1の蒸留留分中ではない更なる成分を含ませることができる。第1の蒸留留分は、蒸留カラムが全還流条件下で安定状態の運転を示した後に採取される最初の留分である
。成分の添加が新しい共沸混合物様の系を形成して本発明の範囲外になるかどうかを定める1つの方法は、その成分を有する組成物の試料を、非共沸性混合物がその別々の成分に分離されることが期待される条件下で蒸留することである。更なる成分を含む混合物が非共沸混合物様である場合には、更なる成分は共沸混合物様の成分から分別される。混合物が共沸混合物様である場合には、一定の沸点を有するか又は単一の物質として挙動する全ての混合物成分を含む多少の限定量の第1の蒸留留分が得られる。
【0026】
このことから、共沸混合物様の組成物の他の特徴は、共沸混合物様か又は一定の沸点を有する種々の割合の同じ成分を含む一定範囲の組成物が存在するということになる。ここで用いる「一定の沸点を有する」とは、組成物の沸点が、共沸混合物様の組成物の変化に際して約±2℃以下、好ましくは約±1℃以下、より好ましくは約±0.5℃以下、最も好ましくは約±0.2℃以下まで変化しないことを意味する。全てのかかる組成物が「共沸混合物様」及び「一定の沸点を有する」という用語によってカバーされると意図される。一例として、異なる圧力においては、与えられた共沸混合物の組成は少なくとも僅かに変化し、組成物の沸点も同様である。
【0027】
上記に記載したように、本発明の共沸混合物様の組成物は一定の沸点又は実質的に一定の沸点を有する。言い換えれば、これらの共沸混合物様の組成物に関しては、沸騰又は蒸発中に形成される蒸気の組成は、元の液体の組成と同一か又は実質的に同一である。而して、沸騰又は蒸発させると、液体の組成は、あったとしても最小又は無視できる程度にしか変化しない。これは、沸騰又は蒸発中に液体の組成が相当程度に変化する非共沸混合物様の組成物と対比される。
【0028】
而して、成分A及び成分Bの共沸混合物様の組成物は、独特のタイプの関係を示すが、温度及び/又は圧力に応じて変化する組成を有する。このことから、共沸混合物様の組成物に関しては、共沸混合物様である種々の割合の同じ成分を含む一定範囲の組成物が存在するということになる。全てのかかる組成物は、本明細書において用いる「共沸混合物様」という用語によってカバーされると意図される。
【0029】
本発明の好ましい共沸混合物様の組成物は、環境的に許容することができ、地球の成層圏オゾン層の破壊に寄与しない。本発明の化合物及び組成物は、多くないオゾン層破壊係数(ODP)、好ましくは約0.5以下のODP、更により好ましくは約0.25以下のODP、最も好ましくは約0.1以下のODP;及び/又は約150以下の地球温暖化係数(GWP)、更により好ましくは約50以下のGWPを有する。好ましくは、両方の基準が本組成物によって満足される。
【0030】
本明細書において用いるODPは、世界気象協会のレポートである"Scientific Assessment of Ozone Depletion, 2002"(参照により本明細書中に包含する)において定義されている。
【0031】
本明細書において用いるGWPは、二酸化炭素のものに対して100年間の時間範囲にわたって定義されるものであり、上記のODPに関するものと同じ参照文献において定義されている。
【0032】
1つの好ましい態様においては、本発明は、Z−HFO−1336mzzm及びエタノールを含むか又は好ましくは実質的にこれらから構成される共沸混合物様の組成物を提供する。本発明の他の好ましい態様は、Z−HFO−1336mzzm及びメタノールを含むか又は好ましくは実質的にこれらから構成される共沸混合物様の組成物を提供する。プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナナール、デカノールなどのような他のアルコールを同様に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1はポリウレタンフォームのk因子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の共沸混合物様の組成物においては、Z−HFO−1336mzzmの量は広く変化させることができ、例えば全ての場合において組成物中の全ての他の成分を計上した後の組成物の残りを構成する。
【0035】
上記したように、メタノール及びエタノールが本発明の好ましい共沸混合物様の組成物において用いられる好ましいアルコールである。これらの態様は、好ましくは、0より多く約50重量部までのエタノール及び約50乃至100重量部未満のZ−HFO−1336mzzm、より好ましくは0より多く約20重量部までのエタノール及び約80乃至100重量部未満のZ−HFO−1336mzzm、更により好ましくは0より多く約10重量部までのエタノール及び約90乃至100重量部未満のZ−HFO−1336mzzmを含み、好ましくは実質的にこれらから構成される共沸混合物様の組成物を提供する。本発明の好ましいエタノールベースの共沸混合物様の組成物は、14.3psiaにおいて約31.3℃、好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃の沸点を有することを特徴とする。
【0036】
これらの態様は、好ましくは、約1〜約50重量部のメタノール及び約50〜約99重量部のZ−HFO−1336mzzm、より好ましくは約1〜約70重量部のメタノール及び約30〜約99重量部のZ−HFO−1336mzzm、更により好ましくは約1〜約85重量部のメタノール及び約15〜約99重量部のZ−HFO−1336mzzmを含み、好ましくは実質的にこれらから構成される共沸混合物様の組成物を提供する。本発明の好ましい組成物は、14.3psiaにおいて約29.7℃、好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃の沸点を有することを特徴とする。
【0037】
更なる成分を加えて、本発明の共沸混合物様の組成物の特性を必要に応じて調整することができる。一例として、本発明の共沸混合物様の組成物を冷媒として用いる場合においては油溶性助剤を加えることができる。また、安定剤及び他の材料を加えて、本発明の共沸混合物様の組成物の特性を向上させることもできる。
【0038】
エタノール又はメタノールは、水のような抽出剤を用いて共沸混合物から除去することができる。それぞれのアルコールの水中での高い溶解度のために、このアルコールは水性相に取り出され、Z−HFO−1336mzzmは水性相と別の相を形成して精製Z−HFO−1336mzzmが残留する。次に、モレキュラーシーブのような通常の乾燥技術を用いてアルコールを水から抽出することができる。
【0039】
他の態様は、好ましくは、約1〜約50重量部の水及び約50〜約99重量部のZ−HFO−1336mzzm、より好ましくは約10〜約40重量部の水及び約60〜約90重量部のZ−HFO−1336mzzm、更により好ましくは約15〜約35重量部の水及び約65〜約85重量部のZ−HFO−1336mzzmを含み、好ましくは実質的にこれらから構成される共沸混合物様の組成物を提供する。本発明の好ましい組成物は、14.5psiaにおいて約31.4℃、好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃の沸点を有することを特徴とする。
【0040】
他の態様は、好ましくは、約1〜約50重量部のフルオロケトン:ドデカフルオロ−2−メチルペンタン−3−オン及び約50〜約99重量部のZ−HFO−1336mzzm、より好ましくは約5〜約45重量部のNovec 1230及び約55〜約95重量部のZ−HF
O−1336mzzm、更により好ましくは約10〜約30重量部のフルオロケトン及び約70〜約90重量部のZ−HFO−1336mzzmを含み、好ましくは実質的にこれらから構成される共沸混合物様の組成物を提供する。本発明の好ましい組成物は、14.5psiaにおいて約32.0℃、好ましくは±2℃、より好ましくは±1℃の沸点を有することを特徴とする。
【0041】
好ましい共沸混合物様の組成物を含む本発明による組成物には、新しい共沸混合物様の組成物を形成することができない添加剤のような1種類以上の成分を含ませることができる。特定の使用のために組成物を調整するために、公知の添加剤を本組成物中において用いることができる。また、本組成物に抑制剤を加えて、分解を抑制し、望ましくない分解生成物と反応させ、及び/又は金属表面の腐食を抑えることもできる。通常は、共沸混合物様の組成物の全重量を基準として約2%以下の抑制剤を用いることができる。
【0042】
共沸混合物添加剤:
本発明の共沸混合物様の組成物には、安定剤、金属不動態化剤、腐食抑制剤などをはじめとする任意の種々の場合によって用いる添加剤を更に含ませることができる。
【0043】
幾つかの態様によれば、本発明の共沸混合物様の組成物は安定剤を更に含む。本発明の共沸混合物様の組成物を安定化させるのに好適な任意の種々の化合物を用いることができる。幾つかの好ましい安定剤の例としては、少なくとも1種類のフェノール組成物、並びに、芳香族エポキシド、アルキルエポキシド、アルケニルエポキシド、及びこれらの2以上の組合せからなる群から選択される少なくとも1種類のエポキシドを含む安定剤組成物が挙げられる。安定剤混合物には、ニトロメタン、1,2−ブチレンオキシド、及び1,3−ジオキソラン、又は1,4−ジオキソランを更に含ませることができる。種々のテルペン炭化水素及びテルペンアルコール、並びに無機スピリット、グリコールエーテル、アルコール、及びケトンを、上記に示す安定剤混合物と組み合わせて用いることができることも分かった。
【0044】
任意の種々のフェノール化合物が本発明組成物において用いるのに好適である。本出願人らはいかなる動作理論によっても又はこれにも縛られることは望まないが、フェノール類は共沸混合物様の組成物においてラジカルスキャベンジャーとして作用し、それによってかかる組成物の安定性を向上させる傾向があると考えられる。ここで用いるフェノール化合物という用語は、一般に任意の置換又は非置換フェノールを指す。好適なフェノール化合物の例としては、1以上の置換又は非置換の環式、直鎖、又は分岐脂肪族置換基を含むフェノール類、例えばアルキル化モノフェノール類、例えば2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール;2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール;2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール;トコフェロールなど;ヒドロキノン及びアルキル化ヒドロキノン類、例えばt−ブチルヒドロキノン;ヒドロキノンの他の誘導体など;ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル類、例えば4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノールなど;アルキリデンビスフェノール類、例えば4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);4,4‘−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール;2,2−又は4,4−ビフェニルジオール類の誘導体;2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール);4,4−イソプロピリデンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−ノニルフェノール):2,2’−イソブチリデンビス(4,6−ジメチルフェノール);2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2−又は4,4−ビフ
ェニルジオール類、例えば2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール);ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ヘテロ原子を含むビスフェノール類、例えば2,6−ジ−tert−α−ジメチルアミノ−p−クレゾール;4,4−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)など;アシルアミノフェノール類;2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール);スルフィド類、例えばビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)スルフィド;ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィドなど;並びにフェノールUV吸収及び光安定剤が挙げられる。
【0045】
幾つかの好ましいフェノール類としては、トコフェロール、BHT、ヒドロキノン類などのようなアルキル化モノフェノール類が挙げられる。幾つかの特に好ましいフェノール類としてはトコフェロールなどが挙げられる。殆どのフェノール類は商業的に入手できる。単一のフェノール化合物及び/又は2種類以上のフェノール類の混合物を本組成物において用いることができる。任意の種々のエポキシドが本発明の共沸混合物様の組成物において用いるのに好適である。本出願人らはいかなる動作理論によっても又はそれにも縛られることは望まないが、本発明のエポキシドは共沸混合物様の組成物において酸スキャベンジャーとして作用し、それによってかかる組成物の安定性を向上させる傾向があると考えられる。単一の芳香族エポキシド及び/又は2種類以上の芳香族エポキシドの混合物を本組成物において用いることができる。
【0046】
幾つかの他の好ましい態様においては、本組成物において酸スキャベンジャーとして用いるためのアルキルエポキシドは、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルを含む。本発明において用いるのに好適なポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルの例としては、SACHEM, Europeから商業的に入手できるエーテルが挙げられる。
【0047】
更に、幾つかの態様においては、本発明において用いるためのエポキシドは、2種類以上の芳香族、アルキル、及び/又はアルケニル置換基の組合せを含む。かかるエポキシドは、一般に「多置換エポキシド」と呼ばれる。幾つかの好ましい態様によれば、本発明において用いるための安定剤は、少なくとも1種類のフェノール化合物、及び少なくとも1種類の芳香族、アルキル、又はアルケニルエポキシドの組合せを含む。好適な組合せの例としては、トコフェロール及びアリルグリシジルエーテル、BHT及びグリシジルブチルエーテルなどを含む安定剤が挙げられる。幾つかの特に好ましい組合せとしては、トコフェロール及びアリルグリシジルエーテルなどを含む安定剤が挙げられる。
【0048】
任意の好適な相対量の少なくとも1種類のフェノール化合物と、少なくとも1種類の芳香族、アルキル、又はアルケニルエポキシドを、好ましい安定剤において用いることができる。例えば、1種類又は複数のフェノール化合物と1種類又は複数の芳香族又はフッ素化アルキルエポキシドとの重量比は、約1:99〜約99:1で変化させることができる。幾つかの好ましい態様においては、1種類又は複数の芳香族、アルキル、アルケニル、多置換、又はフッ素化アルキルエポキシドに対する1種類又は複数のフェノール化合物の重量比は、約30〜約1、より好ましくは約7〜約1、より好ましくは約2〜約1、更により好ましくは約1:1である。
【実施例】
【0049】
共沸混合物の実施例:
実施例1:
69.4重量%のZ−HFO−1336mzzm、3.1重量%のエタノール、7.6重量%の軽質物質、及び残りが重質物質の試料を、Monel蒸留カラム中に充填した。蒸留
カラムは、大気圧において運転する回転バンドカラムである。温度調節したプロピレングリコール水溶液を用いて凝縮器を冷却した。
【0050】
まず、蒸留カラムを全還流で運転して、それぞれの所望の条件において平衡の温度及び圧力に到達させた。カラムが平衡に達したら、蒸留カラムの塔頂から蒸気試料を採取した。蒸留物が回収される間は、カラムの塔頂流を周期的にサンプリングした。蒸留カラムから軽質分を取り出した後、試料を採取した。試料は、Z−HFO−1336mzzm中の2.0重量%のエタノールを示した。エタノールがZ−HFO−1336mzzm留分中に残留し、これは共沸混合物が形成されたことを示した。
【0051】
実施例2:
沸点測定装置を用いて、Z−HFO−1336mzzm及びエタノールの共沸混合物を測定した。沸点測定装置は、底部が密封されており、頂部が大気に開放されている真空断熱ガラス容器から構成されている。沸点測定装置の頂部又は凝縮器部分はドライアイスで取り囲んで、全ての蒸気が凝縮して沸点測定装置中に還流されることを確保している。まず、Z−HFO−1336mzzmを沸点測定装置中に充填し、エタノールを計量投入した。
【0052】
表1に、共沸混合物が形成されたことを示す温度の最小値を示す。混合物の沸点温度は一定に維持され、これはこの混合物が大きな組成範囲にわたって共沸混合物様であることを示す。
【0053】
【表1】
【0054】
実施例2:
実施例2においては沸点測定装置を用いてZ−HFO−1336mzzm及びメタノールの共沸混合物を測定した。まず、Z−HFO−1336mzzmを沸点測定装置中に充填し、メタノールを計量投入した。
【0055】
表2に、共沸混合物が形成されたことを示す温度の最小値を示す。混合物の沸点温度は一定に維持され、これはこの混合物が大きな組成範囲にわたって共沸混合物様であることを示す。
【0056】
【表2】
【0057】
実施例3:
実施例2において用いた沸点測定装置を用いて、Z−HFO−1336mzzm及びドデカフルオロ−2−メチルペンタン−3−オン(Novec 1230)の共沸混合物を測定した。まず、Z−HFO−1336mzzmを沸点測定装置中に充填し、フルオロケトン:Novec 1230(3M Company)を計量投入した。
【0058】
表3に、共沸混合物が形成されたことを示す温度の最小値を示す。混合物の沸点温度は一定に維持され、これはこの混合物が大きな組成範囲にわたって共沸混合物様であることを示す。
【0059】
【表3】
【0060】
実施例4:
また、化合物:E−HCFO−1233zd(トランス−1,1,1−トリフルオロ−3−クロロプロペン)も、Z−HFO−1336mzzmと共沸混合物様の組成物を形成することが分かった。下表4に示すように、この組成物の共沸混合物様特性は約10重量%のZ−HFO−1336mzzmまで継続することが分かった。これらの組成物は噴霧フォーム用途のために特に有用である。
【0061】
【表4】
【0062】
実施例5:
実施例2における沸点測定装置を用いて、Z−HFO−1336mzzm及び水の共沸混合物を測定した。まず、Z−HFO−1336mzzmを沸点測定装置中に充填し、水を計量投入した。表5に、共沸混合物が形成されたことを示す温度の最小値を示す。混合物の沸点温度は一定に維持され、これはこの混合物が大きな組成範囲にわたって共沸混合物様であることを示す。
【0063】
【表5】
【0064】
共沸混合物様の組成物の使用:
上記に記載したように、本発明の任意の共沸混合物様の組成物は、広範囲の用途において、CFCに対する代替物として、及びより望ましくないHCFCを含む組成物に対する代替物として用いることができる。
【0065】
具体的には、有効量の、Z−HFO−1336mzzm、並びに水、フルオロケトン、アルコール、ヒドロクロロフルオロオレフィン、及びこれらの2以上の組合せからなる群から選択される他の材料を含むか又は実質的にこれらから構成される共沸混合物様の組成物は、少数の好ましい用途が挙げられる発泡剤、冷媒、加熱剤、動力サイクル薬剤、洗浄剤、エアゾール噴射剤、滅菌剤、潤滑剤、香味料及び香料抽出剤、燃焼性低下剤、及び炎抑制剤として有用である。これらの使用のそれぞれを下記においてより詳細に議論する。
【0066】
発泡剤:
本発明の一態様は、1種類以上の本発明の共沸混合物様の組成物を含む発泡剤に関する。他の態様においては、本発明は、発泡性組成物、好ましくはポリウレタン及びポリイソシアヌレートフォーム組成物、並びにフォームを製造する方法を提供する。かかるフォームの態様においては、1種類以上の共沸混合物様の組成物は、当該技術において周知のように、好ましくは適当な条件下で反応及び発泡してフォーム又は気泡構造を形成することができる1種類以上の更なる成分を含む発泡性組成物中に発泡剤として含まれる。
【0067】
本方法は、好ましくはかかる発泡性組成物を準備し、フォーム、好ましくは独立気泡フォームを得るのに有効な条件下でそれを反応させることを含む。本発明はまた、本発明の共沸混合物様の組成物を含む発泡剤を含むポリマーフォーム配合物から製造されるフォーム、好ましくは独立気泡フォームにも関する。
【0068】
幾つかの態様においては、以下のHFC異性体の1以上が本発明の共沸混合物様の組成物において共発泡剤として用いるのに好ましい:
1,1,1,2,2−ペンタフルオロエタン(HFC−125);
1,1,2,2−テトラフルオロエタン(HFC−134);
1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a);
1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a);
1,1,1,2,3,3,3−ヘプタフルオロプロパン(HFC−227ea);
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン(HFC−236fa);
1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa);及び
1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)。
【0069】
上記に記載の任意の更なる共発泡剤、及び本共沸混合物様組成物中に含ませることができる任意の更なる成分の相対量は、組成物に関する特定の用途にしたがって本発明の一般的な広い範囲内で広く変化させることができ、全てのかかる相対量は本発明の範囲内であるとみなされる。
【0070】
フォーム:
本発明はまた、Z−HFO−1336mzzm、並びに1種類以上のアルコール、好ましくはメタノール又はエタノールを含むか又は実質的にこれらから構成される共沸混合物様の組成物を含む発泡剤を含むポリマーフォーム配合物から製造される全てのフォーム(独立気泡フォーム、連続気泡フォーム、硬質フォーム、軟質フォーム、スキン層付きフォーム等を含むが、これらに限定されない)にも関する。本出願人らは、本発明によるフォーム、特にポリウレタンフォームのような熱硬化性フォームの一つの有利性は、好ましくは熱硬化性フォームの態様と関連して、特にそして好ましくは低温条件下で例えば図1に示すようにK−因子又はラムダによって測定することができる、非常にすぐれた熱性能を達成する能力であることを見出した。
【0071】
本フォーム、特に本発明の熱硬化性フォームは広範囲の用途において用いることができると意図されるが、幾つかの好ましい態様においては、本発明は、冷蔵庫用フォーム、冷凍庫用フォーム、冷蔵庫/冷凍庫用フォーム、パネル用フォーム、及び他の低温又は極低
温製造用途などの本発明による電気器具用フォームを包含する。
【0072】
本発明にしたがって製造されるフォームは、幾つかの好ましい態様においては、断熱効率(特に熱硬化性フォームに関して)、寸法安定性、圧縮強さ、断熱特性の経時変化などの1つ以上の非常にすぐれた特徴、性質、及び/又は特性を、全て多くの本発明の好ましい発泡剤に関連する低いオゾン層破壊係数及び低い地球温暖化係数に加えて与える。
【0073】
幾つかの非常に好ましい態様においては、本発明は、同じ発泡剤(又は通常用いられる発泡剤であるHFC−245fa)を同じ量で用いるが、本発明の共沸混合物様の組成物を用いずに製造されるフォームに比べて向上した熱伝導性を示すフォーム物品に成形されるフォームなどの熱硬化性フォームを与える。
【0074】
Polyurethanes Chemistry and Technology, Vol. I及びII, Saunders及びFrisch, 1962, John Wiley and Sons, New York, NY(参照として本明細書中に包含する)に記載され
ているもののような当該技術において周知の任意の方法を、本発明のフォームの態様にしたがって用いることができ、又は用いるように適合させることができる。一般に、かかる好ましい方法は、イソシアネート、ポリオール又は複数のポリオールの混合物、1種類以上の本組成物を含む発泡剤又は複数の発泡剤の混合物、及び、触媒のような他の材料、並びに界面活性剤、及び場合によっては難燃剤、着色剤、又は他の添加剤を混合することによってポリウレタン又はポリイソシアヌレートフォームを製造することを含む。
【0075】
多くの用途においては、ポリウレタン又はポリイソシアヌレートフォームのための成分を予めブレンドした配合物で与えることが好都合である。より通常的には、フォーム配合物は2つの成分に予めブレンドする。イソシアネート及び場合によっては幾つかの界面活性剤及び発泡剤が、通常はA成分と呼ばれる第1の成分を構成する。ポリオール又はポリオール混合物、界面活性剤、触媒、発泡剤、難燃剤、及び他のイソシアネート反応性成分が、通常はB成分と呼ばれる第2の成分を構成する。したがって、ポリウレタン又はポリイソシアヌレートフォームは、少量の製造のためには手作業での混合、及び好ましくはブロック、スラブ、積層体、現場注入パネル及び他の部材、噴霧適用フォーム、泡などを形成する機械混合技術のいずれかによって、A側及びB側の成分を混合することによって容易に製造される。場合によっては、難燃剤、着色剤、補助発泡剤、及び更には他のポリオールのような他の成分を、第3の流れとして混合ヘッド又は反応場に加えることができる。しかしながら、最も好都合には、これらは全て1つの上記記載のB成分中に含ませる。
【0076】
また、本発明の共沸混合物様の組成物を用いて熱可塑性フォームを製造することもできる。例えば、通常のフォーム用ポリウレタン及びイソシアヌレート配合物を、通常の方法で共沸混合物様の組成物と混合して硬質フォームを製造することができる。
【0077】
また、分散剤、気泡安定剤、及び界面活性剤を発泡剤混合物中に含ませることもできる。界面活性剤、最も特にはシリコーン油は、気泡安定剤として機能させるために加える。幾つかの代表的な材料は、DC-193、B-8404、及びL-5340の名称で販売されており、これらは一般に、米国特許2,834,748、2,917,480、及び2,846,458において開示されているもののようなポリシロキサンポリオキシアルキレンブロックコポリマーである。発泡剤混合物のための他の場合によって用いる添加剤としては、トリ(2−クロロエチル)ホスフェート、トリ(2−クロロプロピル)ホスフェート、トリ(2、3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリ(1,3−ジクロロプロピル)ホスフェート、ジアンモニウムホスフェート、種々のハロゲン化芳香族化合物、酸化アンチモン、アルミニウム三水和物、ポリ塩化ビニルなどのような炎抑制剤を挙げることができる。
【0078】
一般に、本発明の発泡性組成物を形成するために用いるブレンドされた混合物中に存在する発泡剤の量は、最終ポリウレタン又はポリイソシアヌレートフォーム生成物の所望のフォーム密度によって決定される。製造されるポリウレタンフォームは、密度を、硬質ポリウレタンフォームに関しては約0.5lb/ft〜約40lb/ft、好ましくは約1.0〜約20.0lb/ft、最も好ましくは約1.5〜約6.0lb/ft、軟質フォームに関しては約1.0〜約4.0lb/ftで変化させることができる。得られる密度は、どのくらい多くの発泡剤又は発泡剤混合物が、A及び/又はB成分中に存在しているか、或いはフォームが製造される時点で加えられるかなどの幾つかのファクターの関数である。
【0079】
発泡剤及びフォームの実施例:
本実施例は、ポリウレタンフォームの製造と関連して用いるZ−HFO−1336mzzm及びアルコールを含む発泡剤の性能を示す。この実施例に関しては、3つの別々の発泡剤を製造した。第1の発泡剤はHFC−245faである。第2の発泡剤はZ−HFO−1336mzzmである。第3の発泡剤は、全発泡剤の約98重量%の濃度のZ−HF
O−1336mzzm、及び全発泡剤の約2重量%の濃度のエタノールを含む共沸混合物様の組成物を含む。
【0080】
それぞれの系において、発泡剤を実質的に同じモル濃度でポリオールブレンド中に加えた。次に、それぞれの発泡剤を用いてフォームを形成し、フォームのk因子を測定した。用いた配合を下表6に含ませる。フォームは、3秒間の注入時間及び8秒間の混合時間を用いて製造した。原材料の温度は50°F−ポリオール/70°F−MDIであった。
【0081】
【表6】
【0082】
下表7及び図1は、3つの発泡剤のk因子性能を示す。
【0083】
【表7】
【0084】
この実施例によって示される1つの予期しなかった結果は、ニートのZ−HFO−1336mzzm発泡剤のものよりも向上した98重量%のZ−HFO−1336mzzm及
び2重量%のエタノールのブレンドの低温k因子である。
【0085】
噴霧フォーム:
噴霧フォームの実施例においては、驚くべきことに、4重量%のZ−HFO−1336mzzm及び96重量%の1233zd(E)から実質的に構成される共沸混合物様の組成物を用いることによって、フォームの熱伝導性に対する大きく予期しないプラスの効果があったことが見出された。この発泡剤組成物を用いて製造したフォームは、1233zd(E)のみを含む発泡剤を用いて製造したフォームよりも、全ての温度範囲にわたってよりゆっくりと経時変化し、より良好な熱伝導特性を有していた。
【0086】
方法及びシステム:
本発明の共沸混合物様の組成物はまた、冷却、空調、及びヒートポンプシステムにおいて用いる冷媒のような熱を伝達する方法及びシステムにおける熱伝達流体などとして、数多くの方法及びシステムに関連して有用である。本共沸混合物様組成物はまた、好ましくはかかるシステム及び方法においてエアゾール噴射剤を含むか又はそれから構成されるエアゾールを生成させるシステム及び方法において用いるのにも有利である。フォームを形成する方法、並びに消火及び鎮火する方法も、本発明の幾つかの形態に含まれる。本発明はまた、幾つかの形態においては、かかる方法及びシステムにおいて本共沸混合物様組成物を溶媒組成物として用いる、物品から残留物を除去する方法も提供する。
【0087】
熱伝達方法:
好ましい熱伝達方法は、一般に、本発明の共沸混合物様の組成物を準備し、組成物の相を変化させることによって組成物へか又は組成物から熱を伝達させることを含む。例えば、本方法は、好ましくは本冷媒組成物を冷却する物体又は流体の近傍で蒸発させることによって流体又は物品から熱を吸収して本組成物を含む蒸気を生成させることによって冷却を与える。
【0088】
好ましくは、本方法は、通常は圧縮器又は同様の装置によって冷媒蒸気を圧縮して比較的高圧の本組成物の蒸気を生成させる更なる工程を含む。一般に、蒸気を圧縮する工程によって、蒸気に対して熱が加えられ、これにより比較的高圧の蒸気の温度上昇が引き起こされる。好ましくは、本方法は、この比較的高温で高圧の蒸気から、蒸発工程及び圧縮工程によって加えられる熱の少なくとも一部を取り出すことを含む。熱取り出し工程は、好ましくは、蒸気が比較的高圧条件にある間に高温で高圧の蒸気を凝縮して、本発明の組成物を含む比較的高圧の液体を生成させることを含む。この比較的高圧の液体は、好ましくは、次に見かけ上等エンタルピーの減圧にかけて、比較的低温で低圧の液体を生成させる。かかる態様においては、この低下した温度の冷媒液体を、次に冷却する物体又は流体から伝達される熱により蒸発させる。
【0089】
本発明の他の方法の態様においては、本発明の共沸混合物様の組成物は、加熱する液体又は物体の近傍で本発明の共沸混合物様の組成物を含むか又は実質的にこれから構成される冷媒組成物を凝縮することを含む、加熱を生成させる方法において用いることができる。かかる方法は、上述したように、上記の冷却サイクルに対して逆のサイクルであることが多い。
【0090】
冷媒組成物:
本発明の共沸混合物様の組成物は、自動車用空調システム及び装置、商業用冷却システム及び装置、冷凍機、住宅用冷蔵庫及び冷凍庫、一般的な空調システム、ヒートポンプなどに関連して用いるように適合させることができる。
【0091】
多くの既存の冷却システムは、現在は既存の冷媒と関連して用いるように適合されてお
り、本発明の共沸混合物様の組成物はシステムの変更を行うか又は行わないでかかるシステムの多くにおいて用いるように適合させることができると考えられる。多くの用途において、本発明の共沸混合物様の組成物は、現在は比較的高い能力を有する冷媒をベースとするシステムにおける代替品としての有利性を与えることができる。更に、例えば効率性の理由のために本発明のより低い能力の冷媒組成物を用いてより高い能力の冷媒を置き換えることが望ましい態様においては、かかる態様の本組成物は潜在的な有利性を与える。
【0092】
而して、幾つかの態様においては、Z−HFO−1336mzzm及び1種類以上のアルコールを含むか又は実質的にこれらから構成される共沸混合物様の組成物を、HCFC−123又はHFC−134aのような既存の冷媒に対する代替物として用いることが好ましい。幾つかの用途においては、本発明の冷媒によって、より大型の容積型圧縮器を有効に用いることが潜在的に可能になり、それによってHCFC−123又はHFC−134aのような他の冷媒よりも良好なエネルギー効率が得られる。したがって、本発明の冷媒組成物は、冷媒置換用途に関するエネルギーベースの競争上の優位性を達成する可能性を与える。
【0093】
本発明の共沸混合物様の組成物には広範囲の量の成分を含ませることができると意図されるが、本発明の冷媒組成物は組成物の少なくとも約50重量%、更により好ましくは少なくとも約70重量%の量のZ−HFO−1336mzzmを含むか又は実質的にこれから構成されることが一般に好ましい。
【0094】
動力サイクルの用途:
ランキンサイクルシステムは、熱エネルギーを機械的軸動力に変換する単純で信頼できる手段であることが公知である。低グレードの熱エネルギーに遭遇する場合には、水/蒸気の代わりに有機作動流体が有用である。低グレードの熱エネルギー(通常は400°F以下)で運転する水/蒸気システムは、大きな体積及び低い圧力を伴う。システムの寸法を小さく且つ効率を高く維持するためには、室温付近の沸点を有する作動流体が用いられる。かかる流体は、より高い容量及び好ましい移送に役立つより高い気体密度、並びに低い運転温度において水と比較してより高い効率に役立つ熱伝達特性を有する。工業環境においては、特に工業環境がプロセス又は貯蔵において施設に既に大量の可燃物を有している場合には、トルエン及びペンタンのような可燃性の作動流体を用いる機会がより多い。例えば、人口の多い地域又はビルの近辺での発電のように可燃性の作動流体を用いることに関連する危険性が許容できないものである場合には、CFC−113及びCFC−11のような他の流体が用いられていた。これらの材料は不燃性であるが、これらのオゾン層破壊係数のためにこれらは環境に対して危険であった。理想的には、有機作動流体は環境的に許容でき、不燃性で、低いオーダーの毒性のものであり、正圧で運転されるものでなければならない。
【0095】
本明細書において用いる「不燃性」という用語は、標準的な引火点法の1つ、例えばASTM−1310−86:"Flash point of liquids by tag Open-cup apparatus"によって測定して引火点を示さない本発明の化合物及び組成物を指す。
【0096】
有機ランキンサイクルシステムは、工業プロセスからの廃熱を回収するためにしばしば用いられている。熱電供給(コジェネレーション)用途においては、発電機セットの一次原動機を駆動するのに用いる燃料の燃焼からの廃熱を回収し、これを用いて、例えば熱を供給するためか、或いは吸収冷凍機を運転して冷却を与えるための熱を供給するための熱水を生成させる。幾つかの場合においては、熱水に対する需要は小さいか又は存在しない。最も困難なケースは、熱的要件が変動し、負荷整合が困難になり、熱電供給システムの効率的な運転が混乱する場合である。このような場合においては、有機ランキンサイクルシステムを用いることによって廃熱を軸動力に変換することがより有用である。軸動力を
用いて例えばポンプを運転することができ、或いはこれを用いて電気を生成させることができる。このアプローチを用いることによって、システム全体の効率がより高く、燃料の利用率がより大きい。同量の燃料投入量についてより多くの電力を生成させることができるので、燃料の燃焼からの大気放出を減少させることができる。
【0097】
廃熱を生成するプロセスは、燃料電池、内燃エンジン、内部圧縮エンジン、外部燃焼エンジン、及びタービンからなる群から選択される少なくとも1つである。廃熱の他の源は、精油業者、石油プラント、石油及びガスのパイプライン、化学産業、商業ビル、ホテル、ショッピングモール、スーパーマーケット、製パン所、食品加工産業、レストラン、塗料硬化オーブン、家具製造、プラスチック成形、セメント窯、木材窯(乾燥)、か焼運転、製鉄業、ガラス産業、鋳造所、製錬所、空調、冷却、及びセントラルヒーティングにおける運転に関連して見出すことができる。米国特許7,428,816(その開示事項は参照として本明細書中に包含する)を参照。
【0098】
この化合物の動力サイクル用途の他の具体的な態様は、作動流体がZ−HFO−1336mzzm及び1種類以上のアルコール、好ましくはメタノール又はエタノールを含むか又は実質的にこれらから構成される共沸混合物様の組成物である有機ランキンサイクルシステムにおける廃熱を回収するためのプロセスである。
【0099】
動力サイクルの例:
この例は、ランキン動力サイクル用組成物として用いるための本発明の共沸混合物様の組成物の使用を示す。
【0100】
Smith, J.M.ら, Introduction to Chemical Engineering Thermodynamics; McGraw-Hill (1996)に概説されている手順にしたがって、有機ランキンサイクルにおける種々の作動流体の有効性を比較することができる。この例において有機ランキンサイクルの計算において用いる条件は、75%のポンプ効率、80%の膨張器効率、190℃のボイラー温度、45℃の凝縮器温度、及び1000Wのボイラーへ供給される熱量である。Z−HFO−1336mzzm:メタノールの95:5重量%混合物の性能を、商業的に入手できる流体であるHFC−245fa(Honeywellから入手できる)と比較する。指定の条件に
おけるHFC−245fa及びZ−HFO−1336mzzm:メタノールの95:5重量%混合物の熱効率は、それぞれ0.142及び0.158である。これは、Z−HFO−1336mzzm:メタノールの95:5重量%混合物が動力サイクルにおいてHFC−245faよりも良好に機能することを示す。
【0101】
洗浄及び汚染物質除去:
本発明はまた、本発明の共沸混合物様の組成物を物品に適用することによって、製品、部材、部品、基材、又は任意の他の物品若しくはその一部から汚染物質を除去する方法も提供する。便宜上の目的から、「物品」という用語は、本明細書においては、全てのかかる製品、部材、部品、基材などを指すように用いられ、更に、任意の表面又はその一部を指すように意図される。更に、「汚染物質」という用語は、かかる物質が物品の上に意図的に配置されている場合であっても、物品の上に存在する任意の望ましくない材料又は物質を指すように意図される。例えば、半導体デバイスの製造においては、基板の上にフォトレジスト材料を堆積させてエッチング操作のためのマスクを形成し、次いでフォトレジスト材料を基板から除去することが通常的である。本明細書において用いられる「汚染物質」という用語は、かかるフォトレジスト材料をカバーし且つ包含するように意図される。
【0102】
本発明の好ましい方法は、本組成物を物品に適用することを含む。多くの様々な洗浄方法において本発明の共沸混合物様の組成物を良好な有利性で用いることができると意図さ
れるが、本組成物を超臨界洗浄法に関連して用いることが特に有利であると考えられる。超臨界洗浄は、米国特許第6,589,355号(本発明の譲受人に譲渡され、参照として本明細書中に包含する)に開示されている。
【0103】
超臨界洗浄用途のためには、幾つかの態様においては、本発明の共沸混合物様の組成物に加えて、CO、及び超臨界洗浄用途に関連して用いることが公知の他の更なる成分のような他の成分を本洗浄組成物中に含ませることが好ましい。
【0104】
また、幾つかの態様においては、特定の亜臨界蒸気脱脂法や溶剤洗浄法に関連して本洗浄組成物を用いることが可能で且つ望ましい可能性もある。
本発明の他の洗浄の態様は、システムを製造及び運転する際に蒸気圧縮システム及びこれらの付属部品から汚染物質を除去することを含む。本明細書において用いる「汚染物質」という用語は、処理流体、潤滑剤、粒子状物質、スラッジ、及び/又はこれらのシステムの製造中に用いられるか若しくはこれらの使用中に生成する他の物質を指す。一般に、これらの汚染物質は、アルキルベンゼン、鉱油、エステル、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、及び主として炭素、水素、及び酸素から形成される他の化合物のような化合物を含む。本発明の共沸混合物様の組成物はこの目的のために有用である。
【0105】
洗浄組成物の例:
この例は、洗浄組成物として使用するための、本発明の共沸混合物様の組成物の使用を示す。
【0106】
95重量%のZ−HFO−1336mzzmを約5重量%のエタノールと共に含む共沸混合物様の組成物を製造する。幾つかのステンレススチール試験片を、鉱油、ロジンフラックス、又は他の汚染物質で汚す。次に、これらの試験片を溶媒ブレンド中に浸漬する。このブレンドは油を短時間で除去することができる。試験片を清浄性に関して視認観察する。他の混合物を用いて同様の結果が期待される。同様の結果はシリコンオイルを用いても期待される。
【0107】
噴霧可能な組成物用の噴射剤:
他の態様においては、本発明の共沸混合物様の組成物は、単独か又は公知の噴射剤と組み合わせて、噴霧可能な組成物において噴射剤として用いることができる。噴射剤組成物は、本発明の共沸混合物様の組成物を含み、より好ましくは実質的にこれから構成され、更により好ましくはこれから構成される。噴霧する活性成分を、不活性成分、溶媒、及び他の物質と一緒に噴霧可能な混合物中に存在させることもできる。好ましくは、噴霧可能な組成物はエアゾールである。噴霧する好適な活性物質としては、限定なしに、潤滑剤、殺虫剤、洗浄剤、消臭剤、香水、及びヘアスプレーのような化粧物質、艶出し剤、並びに皮膚冷却剤(日焼けの処置)、局所麻酔薬、及び抗喘息薬のような医薬物質が挙げられる。
【0108】
噴霧可能な組成物は、噴霧する物質、及び本発明の共沸混合物様の組成物を含む噴射剤を含む。不活性成分、溶媒、及び他の物質を噴霧可能な混合物中に存在させることもできる。好ましくは、噴霧可能な組成物はエアゾールである。噴霧する好適な物質としては、限定なしに、消臭剤、香水、ヘアスプレー、洗浄剤、洗顔クリーム、艶出し剤のような化粧物質、並びに抗喘息薬、口臭予防薬のような医薬物質が挙げられる。
【0109】
滅菌:
特に医療分野で用いるための多くの物品、装置、及び材料は、患者や病院職員の健康及び安全などの健康上及び安全上の理由のために、使用する前に滅菌しなければならない。本発明は、滅菌する物品、装置、又は材料を、場合によっては1種類以上の更なる滅菌剤
と組み合わせた本発明の共沸混合物様の組成物と接触させることを含む滅菌方法を提供する。
【0110】
多くの滅菌剤が当該技術において公知であり、本発明に関連して用いるように適合させることができると考えられるが、幾つかの好ましい態様においては、滅菌剤は、エチレンオキシド、ホルムアルデヒド、過酸化水素、二酸化塩素、オゾン、及びこれらの組み合わせを含む。幾つかの態様においては、エチレンオキシドが好ましい滅菌剤である。本明細書に含まれる教示事項を考慮すると、当業者であれば、本滅菌組成物及び方法に関連して用いられる滅菌剤と1種類又は複数の本化合物との相対割合を容易に決定することができ、全てのかかる範囲は本発明の広い範囲に含まれる。
【0111】
当業者に公知なように、エチレンオキシドのような幾つかの滅菌剤は非常に可燃性の成分であり、本発明による1種類又は複数の化合物は、組成物中に存在する他の成分と共に、滅菌組成物の可燃性を許容可能なレベルまで低減させるのに有効な量で本組成物中に含まれる。本発明の滅菌方法は高温又は低温のいずれでもよいが、本発明の滅菌は、約250°F〜約270°Fの温度において、好ましくは実質的に密閉された室内で本発明の化合物又は組成物を使用することを含む。このプロセスは通常は約2時間未満で完了させることができる。しかしながら、プラスチック物品及び電気部品のような幾つかの物品はかかる高温に耐えることができず、低温の滅菌を必要とする。
【0112】
滅菌の例:
低温滅菌方法においては、滅菌する物品を、ほぼ室温乃至約200°Fの温度、より好ましくはほぼ室温乃至約100°Fの温度において、本発明の組成物を含む流体に曝露する。
【0113】
本発明の低温滅菌は、好ましくは、実質的に密閉され、好ましくは気密の室内で行なう少なくとも二工程のプロセスである。第一工程(滅菌工程)においては、洗浄して気体透過性の袋の中に収容した物品を室内に配置する。
【0114】
次に、真空に引き、及び場合によっては空気を水蒸気で置換することによって、室から空気を排出する。幾つかの態様においては、室中に水蒸気を注入して、好ましくは約30%〜約70%の範囲の相対湿度を達成することが好ましい。かかる湿度は、所望の相対湿度が達成された後に室中に導入される滅菌剤の滅菌効果を最大にすることができる。滅菌剤が被包を透過して物品の隙間に到達するのに十分な一定の時間の後、滅菌剤と水蒸気を室から排出する。
【0115】
プロセスの好ましい第二工程(通気工程)においては、物品を通気して滅菌剤残留物を除去する。かかる残留物を除去することは、毒性の滅菌剤の場合においては特に重要であるが、実質的に非毒性の本発明の化合物を用いる場合にはこの工程は任意である。典型的な通気プロセスは、空気洗浄、連続通気、及びこれら二つの組み合わせを含む。空気洗浄はバッチプロセスであり、通常は、室を比較的短い時間、例えば12分間排気し、次に室中に空気を大気圧以上で導入することを含む。
【0116】
本明細書において用いる「非毒性」という用語は、Anesthesiology, vol.14, p.466-472, 1953(参照として本明細書中に包含する)において公開されている方法によって測定
して、HFO−1233xdの毒性レベルよりも実質的に低く、好ましくは少なくとも約30相対%低い急性毒性レベルを有する本発明の化合物及び組成物を指す。
【0117】
滅菌剤の所望の除去が達成されるまでこのサイクルを任意の回数繰り返す。連続通気は、通常は室の一方の側の入口を通して空気を導入し、次に出口に僅かな真空を適用するこ
とによって室の他の側の出口を通してそれを排出することを含む。2つのアプローチを組み合わせることが多い。例えば、通常のアプローチは、空気洗浄、次に通気サイクルを行うことを含む。
【0118】
潤滑剤:
幾つかの好ましい態様においては、本発明の共沸混合物様の組成物は更に潤滑剤を含む。任意の種々の通常の潤滑剤を本発明の共沸混合物様の組成物において用いることができる。潤滑剤に関する重要な要件は、冷媒系において用いる場合に、圧縮器が潤滑されるようにシステムの圧縮器に十分な潤滑剤が戻されなければならないということである。而して、任意の与えられたシステムに関する潤滑剤の好適性は、部分的には冷媒/潤滑剤の特徴によって、及び部分的にはその中で潤滑剤を用いることが意図されるシステムの特徴によって決定される。
【0119】
好適な潤滑剤の例としては、鉱油、アルキルベンゼン、ポリオールエステル、例えばポリアルキレングリコール、PAG油などが挙げられる。パラフィン油又はナフテン油を含む鉱油は商業的に入手できる。商業的に入手できる鉱油としては、WitcoからのWitco LP 250(登録商標)、Shrieve ChemicalからのZerol 300(登録商標)、WitcoからのSunisco
3GS、及びCalumetからのCalumet R015が挙げられる。商業的に入手できるアルキルベン
ゼン潤滑剤としては、Zerol 150(登録商標)が挙げられる。商業的に入手できるエステ
ルとしては、Emery 2917(登録商標)及びHatcol 2370(登録商標)として入手できるネ
オペンチルグリコールジペラルゴネートが挙げられる。他の有用なエステルとしては、リン酸エステル、二塩基酸エステル、及びフルオロエステルが挙げられる。好ましい潤滑剤としては、ポリアルキレングリコール及びエステルが挙げられる。幾つかのより好ましい潤滑剤としてはポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0120】
香味料及び香料の抽出:
本発明の共沸混合物様の組成物はまた、バイオマスから所望の物質を運搬、抽出、又は分離するために用いる場合にも有利性を与える。これらの物質としては、香味料及び香料のようなエッセンシャルオイル、燃料、医薬、栄養補助食品等として用いることができるオイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
抽出の例:
この目的に関する本発明の共沸混合物様の組成物の好適性を、ジャスモンの試料を厚肉ガラスチューブ中に配置する試験手順によって示す。好適な量の本発明の共沸混合物様の組成物をガラスチューブに加える。次に、チューブを冷凍し、密封する。チューブを解凍すると、混合物がジャスモン及び共沸混合物様の組成物を含む1つの液相を有する場合には、この試験は、エアゾール及び他の配合物において香味料及び香料配合物に関する抽出剤、キャリア、又はデリバリーシステムの一部としての組成物の好ましい使用を達成する。また、植物などからの香味料及び香料の抽出剤としてのその潜在性も達成される。
【0122】
可燃性減少方法:
幾つかの他の好ましい態様によれば、本発明は、本発明の共沸混合物様の組成物を流体に加えることを含む、流体の可燃性を減少させる方法を提供する。任意の広範囲の可燃性の流体に関係する可燃性を、本発明によって減少させることができる。例えば、エチレンオキシド、可燃性ヒドロフルオロカーボン及び炭化水素、例えばHFC−152a、1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a)、ジフルオロメタン(HFC−32)、プロパン、ヘキサン、オクタンなどのような流体に関係する可燃性を、本発明によって減少させることができる。本発明の目的のためには、可燃性流体は、ASTM−E681などのような任意の標準的な通常の試験法によって測定して空気中で可燃性範囲を示す任意の流体であってよい。
【0123】
任意の好適な量の本化合物又は組成物を加えて、本発明にしたがって流体の可燃性を減少させることができる。当業者に認められるように、加える量は、少なくとも部分的に、対象の流体の可燃性の程度、及びその可燃性を減少させることが望まれている程度によって定まる。幾つかの好ましい態様においては、可燃性流体に加える化合物又は組成物の量は、得られる流体を実質的に不燃性にするのに有効なものである。
【0124】
可燃性減少の例:
この例は、他の組成物の可燃性流体を減少させるための本発明の共沸混合物様の組成物の使用を示す。
【0125】
ASTM−E681装置内で、雰囲気条件において、イソペンタン蒸気と97:2重量%のZ−HFO−1336mzzm:エタノールの共沸混合物様の混合物を混合することによって、より多くの97:2重量%のZ−HFO−1336mzzm:エタノールの共沸混合物様の混合物を加えると燃焼下限界(LFL)が上昇することが分かる。これは、このブレンドに関してはイソペンタン単独のものよりも可燃性が低く、これによって安全に用いることがより容易な可燃性のより低い材料が得られることを示す。このより高いLFLによって、点火源及び潜在的な火災又は爆発に関する心配なしに、空気中のより高い濃度が可能である。
【0126】
2つのエアゾール缶にメタノール/水を充填し、一方をHFC−152aで加圧し、他方をHFC−152a及び97:2重量%のZ−HFO−1336mzzm:エタノールの共沸混合物様の混合物で加圧する。エアゾール炎拡大試験手順におけるようにろうそくの炎の上方及び中に缶からのエアゾールを噴霧すると、97:2重量%のZ−HFO−1336mzzm:エタノールの共沸混合物様の混合物で加圧した缶からの炎拡大はより小さいことが観察される。
【0127】
炎抑制方法:
本発明は、炎を、本発明の共沸混合物様の組成物に接触させることを含む炎を抑制する方法を更に提供する。所望の場合には、更なる炎抑制剤を、本発明の組成物と共に、混合してか又は補助的な炎抑制剤として用いることもできる。この目的のために有用な化合物の1つの種類はフルオロケトンである。特に好ましいフルオロケトンはドデカフルオロ−2−メチルペンタン−3−オンである。この好ましい化合物に関する商業的供給源は、3M
Company(商品名Novec 1230)である。
【0128】
炎を本組成物と接触させるための任意の好適な方法を用いることができる。例えば、本発明の組成物を炎上に噴霧、注入などすることができ、或いは炎の少なくとも一部を組成物中に浸漬させることができる。
【0129】
好ましい態様を参照して本発明を特に示し且つ記載したが、本発明の範囲から逸脱することなく種々の変更及び修正を行うことができることは、当業者には容易に認められるであろう。特許請求の範囲は、開示されている態様、上記で議論したこれらの代替物、及びこれに対する全ての均等物をカバーするように解釈すると意図される。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
0より多く約99重量%までの有効量の化合物:シス−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(Z−HFO−1336mzzm)、及び約1重量%乃至100重量%未満の有効量の、水、フルオロケトン、アルコール、ヒドロクロロフルオロオレフィン、及びこれらの2以上の組合せからなる群から選択される他の材料を含む共沸混合物様の組成物。
[2]
少なくとも1種類のアルコールがメタノールである、[1]に記載の共沸混合物様の組成物。
[3]
少なくとも1種類のアルコールがエタノールである、[1]に記載の共沸混合物様の組成物。
[4]
約75重量%乃至100重量%未満の有効量のZ−HFO−1336mzzm、及び0より多く約25重量%までの有効量のアルコール及びこれらの2以上の組合せを含む、[1]に記載の共沸混合物様の組成物。
[5]
約85重量%乃至100重量%未満の有効量のZ−HFO−1336mzzm、及び0より多く約15重量%までの有効量のアルコール及びこれらの2以上の組合せを含む、[1]に記載の共沸混合物様の組成物。
[6]
0より多く約50重量%までの有効量の水、及び約50重量%乃至100重量%未満の有効量のZ−HFO−1336mzzmを含む、[1]に記載の共沸混合物様の組成物。
[7]
0より多く約10重量%までの有効量の水、及び約90重量%乃至100重量%未満の有効量のZ−HFO−1336mzzmを含む、[1]に記載の共沸混合物様の組成物。
[8]
50重量%〜約99重量%の有効量のZ−HFO−1336mzzm、及び約1重量%乃至50重量%未満の有効量のフルオロケトンを含む、[1]に記載の共沸混合物様の組成物。
[9]
60重量%〜約95重量%の有効量のZ−HFO−1336mzzm、及び約5重量%乃至40重量%未満の有効量のフルオロケトンを含む、[1]に記載の共沸混合物様の組成物。
[10]
約1重量%〜約99重量%の有効量のZ−HFO−1336mzzm、及び約1重量%〜約99重量%の有効量のトランス−1,1,1−トリフルオロ−3−クロロプロペンを含む、[1]に記載の共沸混合物様の組成物。
[11]
約90重量%〜約99重量%のZ−HFO−1336mzzm、及び約1重量%〜約10重量%のトランス−1,1,1−トリフルオロ−3−クロロプロペンを含む、[1]に記載の共沸混合物様の組成物。
[12]
約4重量%のZ−HFO−1336mzzm、及び約96重量%のトランス−1,1,1−トリフルオロ−3−クロロプロペンを含む、[1]に記載の共沸混合物様の組成物。
[13]
HFO−1233zd、及び約10重量%以下のZ−HFO−1336mzzmを含む、[1]に記載の共沸混合物様の組成物。
[14]
[1]に記載の共沸混合物様の組成物を含む噴霧フォーム用の発泡剤。
[15]
[1]に記載の共沸混合物様の組成物を含む冷媒組成物。
図1