(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抽出部は、前記抽出対象色のRGB値の範囲、および、前記抽出対象色のHSV値の範囲を変更せずに、前記撮像部で撮像された画像に膨張処理および収縮処理を行う、
ことを特徴とする請求項2から4のいずれかに記載の制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る印刷システム1を示す図である。
図1に示すように、印刷システム1は、印刷機10と、制御装置100とを備える。印刷機10は、被印刷物であるウェブ30に対して4色刷りが可能な多色グラビア輪転印刷機である。印刷機10は、第1印刷ユニット12aと、第2印刷ユニット12bと、第3印刷ユニット12cと、第4印刷ユニット12dと、巻出し部14と、巻取り部16と、複数のコンペンセータローラ32と、複数のレジスタモータ34とを備える。
【0017】
4つの第1印刷ユニット12a、第2印刷ユニット12b、第3印刷ユニット12c、および、第4印刷ユニット12dは、直列に配置されている。なお、第1印刷ユニット12a、第2印刷ユニット12b、第3印刷ユニット12c、および、第4印刷ユニット12dを総称する場合は、適宜「印刷ユニット12」と呼ぶ。
【0018】
第1印刷ユニット12aの上流には、印刷されるウェブ30を供給する巻出し部14が設置されている。また、第4印刷ユニット12dの下流には、印刷されたウェブ30を巻き取る巻取り部16が設置されている。各印刷ユニット12には、複数のガイドローラ18が設けられており、ウェブ30の搬送路が形成されている。
【0019】
各印刷ユニット12には、ウェブ30を挟む形で、その下側に塗工剤としてのインキを転写する円筒状の版胴20が、上側にウェブ30に圧力を加える円筒状の圧胴22が、それぞれ円筒軸周りに回転自在に取り付けられている。また、各版胴20の下流には、送風を行いウェブ30の印刷面を乾燥させる乾燥機24が配置されている。
【0020】
制御装置100は、見当誤差検出装置として機能し、印刷機10を制御する。制御装置100は、3つの撮像部26と、画像処理装置40と、表示部(モニタ)50とを備える。
【0021】
第2印刷ユニット12b、第3印刷ユニット12c、および、第4印刷ユニット12dのそれぞれにおける版胴20と乾燥機24との間には、撮像部26が配置されている。撮像部26は、例えば、光を受光して電気信号に変換するCCD(Charge Coupled Device)またはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等を用いて構成される。
【0022】
たとえば、第2印刷ユニット12bの撮像部26は、自身よりも上流の第1印刷ユニット12aで印刷された第1見当マークと、自身の版胴20で印刷された第2見当マークを撮像し、撮像されたカラー画像の各画素のRGB値を出力する。第1見当マークと第2見当マークは、印刷機10の印刷ずれを制御するためのマークであり、検査対象物である。撮像部26は、画像処理装置40に電気的に接続されている。撮像部26で撮像される領域は、図示しない照明装置によって照明されている。
【0023】
図2は、第1の実施形態に係る見当マーク200が印刷された印刷物300の一部を示す図である。印刷物300は、ウェブ30と、第1色の第1見当マーク202と、第1色と異なる第2色の第2見当マーク210とを備える。ウェブ30は、フィルム、紙またはアルミニウムなどから構成される。ウェブ30の色は、グレースケールの色の場合もあり、グレースケール以外の色の場合もある。第1色と第2色も、グレースケールの色の場合もあり、グレースケール以外の色の場合もある。第1見当マーク202と第2見当マーク210を総称して見当マーク200と呼ぶ。図示は省略するが、ウェブ30の見当マーク200が印刷された領域以外には第1色の絵柄と第2色の絵柄が印刷されている。
【0024】
第1見当マーク202は、印刷機10の第1印刷ユニット12aの版胴(第1の版胴)20によりウェブ30に印刷されている。第2見当マーク210は、印刷機10の第2印刷ユニット12bの版胴(第2の版胴)20によりウェブ30に印刷されている。第1見当マーク202と第2見当マーク210は、互いに等しい直角二等辺三角形であるが、形状は特に限定されない。第1見当マーク202と第2見当マーク210は、印刷機10におけるウェブ30の搬送方向dtに沿って配置されているが、配置は特に限定されない。
【0025】
第1見当マーク202と第2見当マーク210の搬送方向dtに直交する2辺間の距離を、距離Dis1とする。第1見当マーク202と第2見当マーク210の搬送方向dtに沿った2辺の延長線間の搬送方向dtに直交する方向(横方向と呼ぶ)の距離を、距離Dis2とする。印刷ずれが無い場合には、距離Dis1が基準距離に一致し、且つ、距離Dis2がゼロになるように、第1見当マーク202と第2見当マーク210は配置されている。縦方向の印刷ずれがある場合には、距離Dis1は基準距離に一致しない。横方向の印刷ずれがある場合には、距離Dis2はゼロにならない。
【0026】
図3は、
図1の撮像部26で撮像された見当マーク200の画像を示す図である。画像は、第1見当マーク202と第2見当マーク210を含んでいる。
【0027】
図1に戻り、表示部50は、画像処理装置40に接続され、撮像部26で撮像された画像などを表示する。ユーザは、表示部50を監視することにより、見当ずれの状況を視認することができる。
【0028】
画像処理装置40は、変換部41と、受付部42と、抽出対象色設定部43と、抽出部44と、演算部45と、制御部46とを有する。
【0029】
変換部41は、撮像部26で撮像された画像において、RGB値の各々が等しい画素およびRGB値の各々が近似する画素をグレースケール領域の画素として特定し、当該グレースケール領域以外の各画素のRGB値を、HSV色空間のHSV値に変換する。RGB値の各々が等しい画素とは、グレースケールの色の画素である。RGB値の各々が近似する画素とは、RGB値の各々が等しい画素の色と同一色とみなせる画素である。RGB値の各々が近似する画素の具体的なRGB値の範囲は、実験などによって適宜設定できる。RGB値からHSV値への変換は、周知の技術を用いて行うことができる。
【0030】
例えば、
図3の第1見当マーク202の第1色が赤であり、第2見当マーク210の第2色が黒であり、ウェブ30の色が灰色である場合、第2見当マーク210とウェブ30の画素がグレースケール領域の画素として特定される。第1見当マーク202の画素がグレースケール領域以外の画素である。
【0031】
受付部42は、印刷開始時などの初期設定時および設定変更が必要な時に、表示部50に表示された画像における1つまたは複数の抽出対象の画素の指定を受け付ける。抽出対象の画素の指定は、例えば、ユーザが行う。抽出対象の画素は、第1見当マーク202の画素と、第2見当マーク210の画素である。抽出対象の画素の指定方法は特に限定されないが、例えば、
図3に示すように、表示部50に表示された画像の1点P1をユーザが指定すると、指定された1点P1を中心とする所定のサイズの矩形の領域R1が設定され、その領域R1内の第1見当マーク202を表す三角形内の複数の画素が抽出対象の画素として指定されてもよい。この場合、領域R1内の三角形内の画素を認識する方法は特に限定されないが、以下に説明するように、三角形内の画素数が領域R1の画素数の所定の割合であることを利用できる。
【0032】
領域R1内の画素がグレースケール領域の画素である場合、つまり領域R1内の2色がグレースケールの場合、領域R1内の画素のR値毎の画素数分布は、2色に対応する2つのピークを有する。2つのピークのうち、領域R1の画素数の所定の割合の画素数を有するピークが、三角形内の画素に対応する。領域R1内の画素のG値毎の画素数分布、および、領域R1内の画素のB値毎の画素数分布に関しても同様である。この場合、抽出対象色設定部43は、領域R1内の画素のRGB値の各々を2分割して抽出対象の画素のRGB値を特定する。
【0033】
領域R1内の画素がグレースケール領域以外の画素である場合、つまり領域R1内の2色がグレースケール以外の場合、領域R1内の画素のH値毎の画素数分布は、2色に対応する2つのピークを有する。2つのピークのうち、領域R1の画素数の所定の割合の画素数を有するピークが、三角形内の画素に対応する。この場合、抽出対象色設定部43は、領域R1内の画素のH値を2分割して抽出対象の画素のH値を特定する。
【0034】
領域R1内の画素がグレースケール領域の画素とグレースケール領域以外の画素である場合、つまり領域R1内の2色がグレースケールとグレースケール以外の場合、領域R1内の画素のR値毎の画素数分布と、G値毎の画素数分布と、B値毎の画素数分布と、領域R1内の画素のH値毎の画素数分布は、それぞれ1つのピークを有する。領域R1の画素数の所定の割合の画素数を有するピークが、三角形内の画素に対応する。この場合、抽出対象色設定部43は、領域R1内の画素のRGB値を抽出対象の画素のRGB値として特定するか、または、領域R1内の画素のH値を抽出対象の画素のH値として特定する。
【0035】
抽出対象色設定部43は、抽出対象の画素がグレースケール領域の画素である場合、抽出対象の画素のRGB値を含むよう抽出対象色のRGB値の範囲を設定する。抽出対象色設定部43は、抽出対象の画素のRGB値に所定のマージンを加えて抽出対象色のRGB値の範囲を設定する。
【0036】
抽出対象色設定部43は、抽出対象の画素がグレースケール領域以外の画素である場合、抽出対象の画素のHSV値を含むよう抽出対象色のHSV値の範囲を設定する。抽出対象色設定部43は、抽出対象の画素のHSV値に所定のマージンを加えて抽出対象色のHSV値の範囲を設定する。
【0037】
ここで、照明の明るさが変動した場合、撮像された画像のRGB値およびHSV値が変化する。また、ウェブ30は、乾燥機24の送風などにより、ばたつく場合がある。ウェブ30がばたつくと、照明装置による光の当たり具合が変化するので、撮像された画像のRGB値およびHSV値が変化する。そこで、各マージンは、照明環境が変化した場合およびウェブがばたついた場合のRGB値およびHSV値の変動を含むように設定され、その最適値は実験などによって適宜設定できる。
【0038】
このように、照明装置による光の当たり具合が変化することにより、同一色で印刷された見当マーク内においてもRGB値またはHSV値が変化する。そのため、抽出対象の画素として、同一色の見当マーク内のより多くの画素を含んでいることが好ましい。これにより、見当マークの全体を抽出することができる。
【0039】
また、抽出対象色設定部43は、撮像部26で撮像された画像からエッジを抽出し、抽出対象の画素からエッジの画素を除外して、抽出対象色のRGB値の範囲、および、抽出対象色のHSV値の範囲を設定する。エッジを抽出する技術としては、周知の技術を用いることができる。
【0040】
図4は、
図1の撮像部26で撮像された画像の一例を示す図である。説明の都合上、
図4の画像は、
図3の画像と異なる。
図4の画像は、背景部分220と、絵柄部分222と、絵柄部分224とを含む。撮像される画像の画素数が有限であることと、グラビア印刷によりドット状にインキが転写されることに起因して、絵柄部分222のエッジE1および絵柄部分224のエッジE2では、背景部分220の色が混色している。
【0041】
図5は、
図4の画像から抽出されたエッジE1aとエッジE2aを示す図である。このようなエッジを除外して、抽出対象色のRGB値の範囲、および、抽出対象色のHSV値の範囲を設定するので、不確実な色を抽出対象色に含めないようにできる。
【0042】
抽出対象色設定部43は、抽出対象の画素として第1見当マーク202の画素が指定された場合と、抽出対象の画素として第2見当マーク210の画素が指定された場合のそれぞれにおいて、抽出対象色の範囲を設定する。抽出対象色設定部43は、設定された抽出対象色のRGB値の範囲、および、抽出対象色のHSV値の範囲を記憶する。
【0043】
図1に戻り、抽出部44は、グレースケール領域の画素ではRGB値に基づいて、当該グレースケール領域以外の画素ではHSV値に基づいて、撮像部26で撮像された画像から抽出対象色の画素を抽出する。具体的には、抽出部44は、グレースケール領域の画素のRGB値が抽出対象色のRGB値の範囲に含まれる場合、当該画素を抽出対象色の画素として抽出する。抽出部44は、グレースケール領域以外の画素のHSV値が抽出対象色のHSV値の範囲に含まれる場合、当該画素を抽出対象色の画素として抽出する。
【0044】
また、抽出部44は、抽出対象色と異なる色の画素が抽出対象色の画素の周囲に少なくとも1つ存在している場合、抽出対象色の画素の周囲の抽出対象色と異なる色の画素を、抽出対象色の画素として抽出する(膨張処理)。また、抽出部44は、抽出対象色と異なる色の画素が抽出対象色の画素の周囲に少なくとも1つ存在している場合、抽出対象色と異なる色の画素に隣接する抽出対象色の画素を、抽出対象色の画素として抽出しない(収縮処理)。つまり、抽出部44は、抽出対象色の画素に対して膨張処理および収縮処理を行う。このとき、抽出部44は、抽出対象色のRGB値の範囲、および、抽出対象色のHSV値の範囲を変更しない。
【0045】
図6は、
図1の撮像部26で撮像された第1見当マーク202の画像を示す図である。説明の都合上、
図6の画像は、
図3の画像と向きが異なる。見当マーク200には、かすれ、または、異物が入る可能性がある。
図6では、第1見当マーク202に複数の異物232が入っている。異物232の色は、第1見当マーク202の色と異なる。
【0046】
図7は、比較例に係る
図6の画像から抽出された抽出対象色の画素を示す図である。
図7では、抽出対象色の画素は、白色に表示され、抽出対象色とは異なる色の画素は、黒色に表示されている。比較例では、第1見当マーク202の色に加え、異物232の色も抽出対象色に設定している。そのため、第1見当マーク202の外の背景部分の一部の画素も抽出対象色の画素として抽出されている。従って、比較例では、第1見当マーク202のみを正確に抽出することは困難である。
【0047】
図8は、第1の実施形態に係る
図6の画像から抽出された抽出対象色の画素を概略的に示す図である。抽出対象色のRGB値の範囲、および、抽出対象色のHSV値の範囲を変更せずに、膨張処理および収縮処理を行うことにより、
図8に示すように、第1見当マーク202の画素を抽出対象色の画素として正確に抽出できており、背景部分の画素は抽出されていない。
【0048】
図1に戻り、演算部45は、抽出部44で抽出された抽出対象色の画素に基づいて、画像における第1見当マーク202と第2見当マーク210のずれ量を見当誤差として演算する。演算部45は、ウェブ30の搬送方向d1の見当ずれである縦方向見当誤差と、横方向の見当ずれである横方向見当誤差とを演算することができる。縦方向見当誤差は、距離Dis1と基準距離との差である。横方向見当誤差は、距離Dis2である。
【0049】
同様に、第3印刷ユニット12cと第4印刷ユニット12dのそれぞれの撮像部26も、自身よりも上流の印刷ユニット12で印刷された第1見当マークと、自身の版胴20で印刷された第2見当マークを撮像する。演算部45は、第3印刷ユニット12cと第4印刷ユニット12dのそれぞれに関しても、撮像部26で撮像された画像に基づいて、第1見当マークと第2見当マークとの見当誤差を演算する。
【0050】
制御部46は、抽出部44で抽出された抽出対象色の画素に基づいて、印刷ずれを修正するよう印刷機10を制御する。具体的には、制御部46は、演算部45で演算された見当誤差が小さくなるよう印刷機10を制御する。
【0051】
第1印刷ユニット12aと第2印刷ユニット12bの間、第2印刷ユニット12bと第3印刷ユニット12cの間、第3印刷ユニット12cと第4印刷ユニット12dの間には、それぞれウェブ30の供給位相を調整するコンペンセータローラ32が配置されている。このコンペンセータローラ32は、レジスタモータ34により駆動される。各レジスタモータ34は、画像処理装置40に電気的に接続されており、画像処理装置40の制御部46からの指示により、縦方向見当誤差が小さくなるようにコンペンセータローラ32を上下に移動させる。これにより、各印刷ユニット12において縦方向の印刷ずれを修正することができる。
【0052】
また、第2印刷ユニット12b、第3印刷ユニット12c、および、第4印刷ユニット12dのそれぞれの版胴20は、画像処理装置40の制御部46からの指示により、横方向見当誤差が小さくなるように横方向に移動する。これにより、各印刷ユニット12において横方向の印刷ずれを修正することができる。
【0053】
以上で説明した撮像と、見当誤差の演算と、印刷ずれの修正は、一組の第1見当マーク202と第2見当マーク210が印刷される毎に行われ、印刷中にリアルタイムに印刷ずれが修正される。
【0054】
画像処理装置40はコンピュータを含み、画像処理装置40の各種機能は、ハードウェア的には、回路ブロック、メモリ、その他のLSIで構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、画像処理装置40の各種機能はハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
【0055】
次に、制御装置100の全体的な動作を説明する。ここでは、抽出対象色のRGB値の範囲、および、抽出対象色のHSV値の範囲の設定が終了している場合の動作を説明する。
【0056】
図9は、
図1の制御装置100の処理を示すフローチャートである。まず、撮像部26が第1見当マークと第2見当マークを撮像する(S10)。次に、変換部41が、S10で撮像された画像において、グレースケール領域以外の各画素のRGB値をHSV値に変換する(S12)。次に、抽出部44が、グレースケール領域の画素ではRGB値に基づいて、グレースケール領域以外の画素ではHSV値に基づいて、S10で撮像された画像から抽出対象色の画素を抽出する(S14)。次に、演算部45が、S14で抽出された抽出対象色の画素に基づいて、見当誤差を演算する(S16)。次に、制御部46が、S16で演算された見当誤差が小さくなるよう印刷機10を制御し(S18)、S10に戻る。
【0057】
以上のように本実施形態によれば、グレースケール領域の画素では、RGB値に基づいて、撮像された画像から抽出対象色の画素を抽出するので、グレースケールの抽出対象色の画素を適切に抽出できる。よって、グレースケールの色の見当マーク200を適切に抽出できる。
【0058】
また、グレースケール領域以外の画素では、HSV値に基づいて、撮像された画像から抽出対象色の画素を抽出する。照明の当たり具合いなどによりグレースケール以外の色が明るくなったり暗くなったりしても、H値は殆ど変化せず、V値が変化するため、グレースケール以外の抽出対象色の画素を適切に抽出できる。よって、グレースケール以外の色の見当マーク200を適切に抽出できる。また、見当マーク200以外の部分は抽出されにくい。
【0059】
また、抽出対象の画素からエッジの画素を除外して、抽出対象色のRGB値の範囲、および、抽出対象色のHSV値の範囲を設定するので、エッジに含まれる不確実な色を抽出対象色に含めないようにできる。よって、見当マーク200以外の部分の誤検出を抑制することができる。
【0060】
また、抽出対象の画素のRGB値に所定のマージンを加えて抽出対象色のRGB値の範囲を設定し、抽出対象の画素のHSV値に所定のマージンを加えて抽出対象色のHSV値の範囲を設定している。これにより、照明環境が変化した場合およびウェブ30がばたついた場合にも、見当マーク200をより正確に検出できる。
【0061】
さらに、抽出対象色のRGB値の範囲、および、抽出対象色のHSV値の範囲を変更せずに、撮像部26で撮像された画像に膨張処理および収縮処理を行う。これにより、見当マーク200をより正確に検出でき、抽出対象色の画素の周囲以外に存在する抽出対象色と異なる色の画素が、抽出対象色の画素として誤って抽出されないようにできる。
【0062】
従って、撮像された印刷物300の画像から特定の色の画素をより正確に抽出でき、抽出された画素に基づいてより高精度な処理を行うことができる。つまり、より高精度に印刷ずれを修正できる。
【0063】
また、表示部50に表示されたカラー画像を用いて抽出対象の画素が指定されるので、第1見当マーク202と第2見当マーク210をユーザに間違えにくくさせることができる。
【0064】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第1の実施形態の画像処理技術に基づいて印刷物加工装置を制御することが、第1の実施形態と異なる。以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0065】
図10は、第2の実施形態に係る印刷物加工システム2を示す図である。
図10に示すように、印刷物加工システム2は、印刷物加工装置80と、制御装置100Aとを備える。印刷物加工装置80は、印刷物を加工する。印刷物加工装置80は、例えば、印刷物を断裁する断裁機である。
【0066】
制御装置100Aは、印刷物加工装置80を制御する。制御装置100Aの撮像部26は、印刷物に印刷された検査対象物として、カットマークまたはスリッターマークを撮像する。制御装置100Aの画像処理装置40Aにおいて、制御部46Aは、抽出部44で抽出された抽出対象色の画素から構成される検査対象物の画像に基づいて、印刷物の加工位置、即ち断裁位置を調整するよう印刷物加工装置80を制御する。
【0067】
本実施形態によれば、撮像された印刷物の画像から特定の色の画素をより正確に抽出でき、抽出された画素に基づいてより高精度な処理を行うことができる。つまり、より高精度に加工位置を制御できる。
【0068】
なお、印刷物加工装置80は、印刷物に穴を開ける穿孔機などであってもよい。この場合、印刷物に印刷された検査対象物はカットマークおよびレジスターマークであり、印刷物の加工位置は穴あけ位置である。
【0069】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態の画像処理技術に基づいて印刷物を検査することが、第1の実施形態と異なる。以下では、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0070】
図11は、第3の実施形態に係る検査システム3を示す図である。
図11に示すように、検査システム3は、巻き替え検品機90と、検査装置400とを備える。巻き替え検品機90は、ロール状の印刷物を巻き替える。検査装置400は、巻き替え検品機90に取り付けられ、印刷物を検査する。検査装置400は、撮像部26と、画像処理装置40Bと、表示部50とを備える。撮像部26は、印刷物に印刷された検査対象物として、絵柄を撮像する。
【0071】
画像処理装置40Bは、制御部46に替えて比較部47を備えることが第1の実施形態と異なる。比較部47は、抽出部44で抽出された抽出対象色の画素に基づいて、抽出された抽出対象色の画素から構成される検査対象物の画像と、予め記憶された基準の画像とを比較する。比較部47は、検査対象物の画像と基準の画像とが不一致の場合、不一致であることを外部に通知する。これにより、不良品を確認する一つの手段として用いることができる。
【0072】
本実施形態によれば、撮像された印刷物の画像から特定の色の画素をより正確に抽出でき、抽出された画素に基づいてより高精度な処理を行うことができる。つまり、より高精度に検査対象物を検査できる。
【0073】
なお、巻き替え検品機90に替えて、印刷された2枚のウェブを蒸着するラミネータ機を用いてもよい。この場合にも、不良品を確認する一つの手段として用いることができる。
【0074】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0075】
例えば第1の実施形態では、制御装置100により制御される印刷機10は、グラビア印刷用の輪転印刷機である一例について説明したが、これに限らない。印刷機10は、例えば、オフセット印刷用またはフレキソ印刷用の輪転印刷機でもよい。また、印刷機10は、多色輪転印刷機であればよく、4色刷りに限定されない。さらに、印刷機10は、枚葉印刷機であってもよい。
【0076】
また、第1の実施形態において、演算部45は、既知の画像処理によって求めた第1見当マーク202の重心の位置と第2見当マーク210の重心の位置とに基づいて、見当誤差を演算してもよい。