(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の反応器ゾーンは、成長中のポリマー粒子が高速流動化または輸送条件下で上方に流れる上昇管であり、ステップd)において、前記第1の反応器ゾーンでの上向きのガス速度は、前記マルチゾーン循環反応器内に供給される粒子状材料の最終自由落下速度よりも高い、請求項1に記載の方法。
前記反応器ガスは、1〜10個の炭素原子を有する1つ以上のアルカンを含み、反応器ガス内の1〜10個の炭素原子を有するアルカンの量は、30〜99体積%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
前記ポリオレフィンは、エチレンを単独重合するか、またはエチレンを1つ以上のコモノマーと共重合することによって製造されたエチレンポリマーである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
前記ポリオレフィンは、プロピレンを単独重合するか、またはプロピレンを1つ以上のコモノマーと共重合することによって製造されたプロピレンポリマーである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
マルチゾーン循環反応器で1種以上のオレフィンを重合させてポリオレフィンを製造する方法であって、前記重合反応が請求項1〜9のいずれかに記載の方法によって開始される方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ガス再循環システムへの微粒子の輸送を回避し、塊の形成を回避するマルチゾーン循環反応器オレフィン重合方法において気相オレフィン重合反応を開始する方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、マルチゾーン循環反応器で1種以上のオレフィンを重合させることによって
粒子状ポリオレフィンを製造するための気相オレフィン重合反応を開始する方法であって、
上記マルチゾーン循環反応器は、
− 垂直の第1の反応器ゾーンおよび
− 絞り弁、ポリマーを排出するためのライン、および上部で、第2の反応器ゾーン内のポリオレフィン粒子の沈降床のレベルを測定することを可能とする手段が底部に備えられている垂直の第2の反応器ゾーンを含み、
− 上記第1の反応器ゾーンの上部領域は、第1の連結部によって第2の反応器ゾーンの上部領域と連結され、
− 上記第2の反応器ゾーンの下部領域は、第2の連結部によって第1の反応器ゾーンの下部領域と連結され;
上記マルチゾーン循環反応器はさらに、
− 重合熱を除去するための圧縮機および熱交換器を具備して、第1の反応器ゾーンの上部、第2の反応器ゾーンの上部または少なくとも第1の連結部を連結するガス再循環ライン、
− 第1の反応器ゾーンの底部で上昇管ガスを供給するための上昇管ガス導入点、
− 上記絞り弁の上の第2の反応器ゾーン内に投入ガスを供給するための投入ガス導入点;および
− 選択的に、第2の反応器ゾーンの下部領域と連結される連結部の端部で第2の連結部に輸送ガスを供給するための輸送ガス導入点;を含み、
以下のステップを含む方法:
a)0.1〜20MPaの圧力および20〜200℃の温度で反応器ガスで充填されてポリオレフィン粒子を含有しないマルチゾーン循環反応器を提供するステップ;
b)第1の反応器ゾーンの上部、第2の反応器ゾーンの上部または第1の連結部からガス再循環ラインを通して上昇管ガス導入点まで、投入ガス導入点まで、および選択的に輸送ガス導入点まで反応器ガスを運搬するステップ;
c)重合触媒および選択的にポリオレフィンを含む粒子状材料をマルチゾーン循環反応器に供給するステップ;
d)絞り弁の開度、ならびに上昇管ガス導入点、投入ガス導入点、および選択的に輸送ガス導入点に供給されるガスの流量を調節することによって第2の反応器ゾーンでのガス流を制御し、したがって第2反応
器ゾーンの底部における上向きのガス速度がマルチゾーン循環反応器に供給される粒子状材料の最終自由落下速度より低いステップ;
e)選択的に、1種以上のオレフィンをマルチゾーン循環反応器に供給し、1種以上のオレフィンを重合触媒の存在下でポリオレフィンと反応させるステップ;
f)第2の反応器ゾーンでの粒子状ポリオレフィンの重量が上向き移動ガスのドラグ力よりも高く、ポリオレフィン粒子の沈降床が形成されるまで
、ポリマー排出ラインを
閉鎖して、重合触媒とポリオレフィンを含む粒子状材料若しくは1種以上のオレフィン、または重合触媒とポリオレフィンを含む粒子状材料および1種以上のオレフィン
を、マルチゾーン循環反応器に供給するステップ;
g)その後、絞り弁の開度を調節して投入ガスの流量を調節することによってマルチゾーン循環反応器内のポリマー粒子の循環速度を制御し、選択的にポリオレフィンを排出してマルチゾーン循環反応器内に重合触媒とポリオレフィンを含む粒子状材料および1種以上のオレフィンを供給する速度、ならびに生成されたポリオレフィンの選択的な排出速度を制御し、そうしてポリオレフィン粒子の沈降床のレベルが第2の反応器ゾーンの上部に到達するまで、導入されたポリオレフィンおよびオレフィ
ンの合計量が排出されたポリオレフィンの量より高くなるステップ;
h)その後、上記絞り弁の開度を調節して上記投入ガスの流量を調節することによって上記マルチゾーン循環反応器内の上記ポリマー粒子の循環速度を制御し、ポリオレフィンを排出してマルチゾーン循環反応器内の重合触媒およびにポリオレフィンを含む粒子状材料ならびに1種以上のオレフィンの供給速度および生成されたポリオレフィンの排出速度
を制御し、そうして導入されたポリオレフィンとオレフィ
ンの合計量が排出量とバランスを取るステップ。
【0007】
いくつかの実施形態において、第1の反応器ゾーンは、成長中のポリマー粒子が高速流動化または輸送条件下で上方に流れる上昇管である。
【0008】
いくつかの実施形態では、ステップd)において、第1の反応器ゾーンでの上向きのガス速度は、マルチゾーン循環反応器内に供給される粒子状材料の最終自由落下速度よりも高い。
【0009】
いくつかの実施形態において、第1の反応器ゾーンは、成長中のポリマー粒子の流動床で重合が起こる反応器ゾーンである。
【0010】
いくつかの実施形態では、ステップf)において、第2の反応器ゾーン内の条件下で気化する液体炭化水素は、第2の反応器ゾーン内に供給される。
【0011】
いくつかの実施形態において、重合触媒および選択的にポリオレフィンを含む粒子状材料は、第1の反応器ゾーンの下部または第2の連結部内に供給される。
【0012】
いくつかの実施形態において、絞り弁(throttling valve)は、バタフライ弁である。
【0013】
いくつかの実施形態において、反応器ガスは、1〜10個の炭素原子を有する1つ以上のアルカンを含み、反応器ガス内の1〜10個の炭素原子を有するアルカンの量は、30〜99体積%である。
【0014】
いくつかの実施形態において、粒子状材料は、予備重合された重合触媒である。
【0015】
いくつかの実施形態において、マルチゾーン循環反応器は、反応器カスケードの一部である。
【0016】
いくつかの実施形態において、重合触媒を含む粒子状材料は、マルチゾーン循環反応器の上流に配置された重合反応器で製造されたポリオレフィンである。
【0017】
いくつかの実施形態において、マルチゾーン循環反応器の上流に配置された重合反応器は、流動床反応器である。
【0018】
いくつかの実施形態において、ポリオレフィンは、エチレンを単独重合するか、またはエチレンを1つ以上のコモノマーと共重合することによって製造されたエチレンポリマーである。
【0019】
いくつかの実施形態において、ポリオレフィンは、プロピレンを単独重合するか、またはプロピレンを1つ以上のコモノマーと共重合することによって製造されたプロピレンポリマーである。
【0020】
いくつかの実施形態において、本発明は、マルチゾーン循環反応器で1種以上のオレフィンを重合させてポリオレフィンを製造する方法であって、上記重合反応が前述のような方法によって開始される方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、1種以上のオレフィンを重合させることによって粒子状ポリオレフィンを製造するための気相オレフィン重合反応を開始する方法を提供する。本開示の方法において使用され得るオレフィンは、特に1−オレフィン、すなわち、末端二重結合を有する炭化水素であり、これに限定されるものではない。適切なオレフィンは、官能化されたオレフィン系不飽和化合物、たとえば、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミド誘導体、たとえば、アクリレート、メタクリレート、またはアクリロニトリルであり得る。アリール置換1−オレフィンを含む非極性オレフィン系化合物が好ましい。特に好ましい1−オレフィンは、直鎖または分岐鎖C
2−C
12−1−アルケン、特に、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンなどの直鎖C
2−C
10−1−アルケン、または4−メチル−1−ペンテンなどの分岐鎖C
2−C
10−1−アルケン、1,3−ブタジエン、1,4−ヘキサジエンまたは1,7−オクタジエンなどの共役および非共役ジエン、またはスチレンまたは置換スチレンなどのビニル芳香族化合物である。様々な1−オレフィンの混合物を重合することも可能である。適切なオレフィンは、二重結合が1つ以上の環系を有することができる環状構造の一部であるものも含む。その例としては、シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロドデセンまたはメチルノルボルネンまたはジエン、たとえば、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエンまたはエチルノルボルナジエンがある。2種以上のオレフィンの混合物を重合することも可能である。
【0023】
上記方法は、エチレンまたはプロピレンの単独重合または共重合に特に適しており、エチレンの単独重合または共重合に特に好ましい。プロピレン重合における好ましいコモノマーは、40重量%以下のエチレン、1−ブテンおよび/または1ーヘキセン、好ましくは0.5重量%〜35重量%のエチレン、1−ブテンおよび/または1−ヘキセンである。エチレン重合におけるコモノマーとして、20重量%以下、より好ましくは0.01重量%〜15重量%、特に0.05重量%〜12重量%のC
3−C
8−1−アルケン、特に1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセンおよび/または1−オクテンを使用するのが好ましい。エチレンが0.1重量%〜12重量%の1−ヘキセンおよび/または1−ブテンと共重合される方法が特に好ましい。
【0024】
本開示の好ましい実施形態において、重合は窒素などの不活性ガスまたはメタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン若しくはn−ヘキサンなどの1〜10個の炭素原子を有するアルカンまたはこれらの混合物の存在下で実施される。不活性ガスとして窒素またはプロパンを、適切であれば、さらなるアルカンと組み合わせて使用するのが好ましい。本開示の特に好ましい実施形態において、重合は、重合希釈剤としてのC
3−C
5アルカンの存在下で、最も好ましくはプロパンの存在下で、特にエチレンの単独重合または共重合の場合に実施される。反応器内の反応ガス混合物は、重合されるオレフィン、すなわち、主モノマーおよび1つ以上の選択的なコモノマーをさらに含む。本開示の好ましい実施形態において、反応ガス混合物は30〜99体積%、より好ましくは50〜95体積%、特に60〜90体積%の不活性成分の含有量を有する。本発明の別の好ましい実施形態において、特に主モノマーがプロピレンである場合、不活性希釈剤は全く添加されないか、または微量のみ添加される。反応ガス混合物は、水素のような分子量調節剤または一酸化炭素または水のような重合禁止剤などの追加成分をさらに含むことができる。反応ガス混合物の成分は、気相重合反応器にガス状で供給するか、または反応器内で気化する液体として供給することができる。
【0025】
オレフィンの重合は、すべての通常的なオレフィン重合触媒を使用して実施することができる。これは、酸化クロムベースのフィリップス触媒を使用するか、チーグラーまたはチーグラーナッタ触媒を使用するか、またはシングルサイト触媒を使用して重合を実施できることを意味する。本開示の目的のために、シングルサイト触媒は、化学的に均一な遷移金属配位化合物に基づく触媒である。さらに、オレフィンの重合のために、これら触媒のうちの2つ以上の混合物を使用することもできる。このような混合触媒は、しばしばハイブリッド触媒と呼ばれる。オレフィン重合用のこれら触媒の製造および使用は、一般に知られている。
【0026】
好ましい触媒は、チーグラー型であり、好ましくは担体材料としてチタンまたはバナジウムの化合物、マグネシウムの化合物および選択的に電子供与体化合物および/または粒子状無機酸化物を含む。
【0027】
チタン化合物としては、一般に、3価または4価チタンのハロゲン化物またはアルコキシドが使用され、チタンアルコキシハロゲン化合物または様々なチタン化合物の混合物も可能である。適切なチタン化合物の例は、TiBr
3、TiBr
4、TiCl
3、TiCl
4、Ti(OCH
3)Cl
3、Ti(OC
2H
5)Cl
3、Ti(O−i−C
3H
7)Cl
3、Ti(O−n−C
4H
9)C
l3、Ti(OC
2H
5)Br
3、Ti(O−n−C
4H
9)Br
3、Ti(OCH
3)
2Cl
2、Ti(OC
2H
5)
2C
l2、Ti(O−n−C
4H
9)
2C
l2、Ti(OC
2H
5)
2Br
2、Ti(OCH
3)
3Cl、Ti(OC
2H
5)
3Cl、Ti(O−n−C
4H
9)
3Cl、Ti(OC
2H
5)
3Br、Ti(OCH
3)
4、Ti(OC
2H
5)
4またはTi(O−n−C
4H
9)
4である。ハロゲンとして塩素を含むチタン化合物を使用するのが好ましい。同様に、チタン以外にハロゲンのみを含むハロゲン化チタン、これらの中でも特に塩化チタンおよび特に四塩化チタンが好ましい。バナジウム化合物の中で、バナジウムハライド、バナジウムオキシハライド、バナジウムアルコキシドおよびバナジウムアセチルアセトネートを特に挙げることができる。3〜5の酸化状態を有するバナジウム化合物が好ましい。
【0028】
固体成分の製造において、少なくとも1種のマグネシウム化合物を追加で使用するのが好ましい。この種の適当な化合物は、ハロゲン化マグネシウムのようなハロゲン含有マグネシウム化合物、特に塩化物または臭化物およびマグネシウム化合物であり、上記ハロゲン化マグネシウムは、慣用の方法、たとえば、ハロゲン化剤との反応によって得ることができる。本開示の目的のために、ハロゲンは塩素、臭素、ヨウ素若しくはフッ素、または2個以上のハロゲンの混合物であり、好ましくは塩素または臭素および特に塩素である。
【0029】
可能なハロゲン含有マグネシウム化合物は、特に塩化マグネシウムまたは臭化マグネシウムである。ハロゲン化物を得ることができるマグネシウム化合物は、たとえば、マグネシウムアルキル、マグネシウムアリール、マグネシウムアルコキシ化合物またはマグネシウムアリールオキシ化合物またはグリニャール化合物である。適切なハロゲン化剤は、たとえば、ハロゲン、ハロゲン化水素、SiCl
4またはCCl
4であり、好ましくは塩素または塩化水素である。
【0030】
適したハロゲンフリーマグネシウム化合物の例は、ジエチルマグネシュム、ジ−n−プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−sec−ブチルマグネシウム、ジ−tert−ブチルマグネシウム、ジアミルマグネシュム、n−ブチルエチルマグネシウム、n−ブチル−sec−ブチルマグネシウム、n−ブチルオクチルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、ジエトキシマグネシウム、ジ−n−プロピルオキシマグネシウム、ジイソプロピルオキシマグネシウム、ジ−n−ブチルオキシマグネシウム、ジ−sec−ブチルオキシマグネシウム、ジ−tert−ブチルオキシマグネシウム、ジアミルオキシマグネシウム、n−ブチルオキシエトキシマグネシウム、n−ブチルオキシ−sec−ブチルオキシマグネシウム、n−ブチルオキシオクチルオキシマグネシウムおよびジフェノキシマグネシウムである。これらの中で、n−ブチルエチルマグネシウムまたはn−ブチルオクチルマグネシウムを使用するのが好ましい。
【0031】
グリニャール化合物の例は、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムヨージド、n−プロピルマグネシウムクロリド、n−プロピルマグネシウムブロミド、n−ブチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムブロミド、sec−ブチルマグネシウムクロリド、sec−ブチルマグネシウムブロミド、tert−ブチルマグネシウムクロリド、tert−ブチルマグネシウムブロミド、ヘキシルマグネシウムクロリド、オクチルマグネシウムクロリド、アミルマグネシウムクロリド、イソアミルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムクロリドおよびフェニルマグネシウムブロミドである。
【0032】
粒子状固体を製造するためのマグネシウム化合物としては、マグネシウムジクロリドまたはマグネシウムジブロミドとは別に、ジ(C
1−C
10−アルキル)マグネシウム化合物を使用するのが好ましい。好ましくは、チーグラーまたはチーグラーナッタ触媒は、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロムから選択された遷移金属を含む。
【0033】
チーグラー型触媒を製造するために適した電子供与体化合物は、たとえば、アルコール、グリコール、エステル、ケトン、アミン、アミド、ニトリル、アルコキシシランおよび脂肪族エーテルである。これらの電子供与体化合物は、単独で使用することができ、または互いに混合して、だけでなく追加の電子供与体化合物と混合しても使用することができる。
【0034】
好ましいアルコールは、式R
1OHのものであり、式中、R
1基はC
1−C
20炭化水素基である。好ましくは、R
1はC
1−C
10アルキル基である。具体例は、メタノール、エタノール、イソプロパノールおよびn−ブタノールである。好ましいグリコールは、50未満の総炭素原子数を有するものである。25未満の総炭素原子数を有する1,2または1,3グリコールが特に好ましい。具体例は、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコールおよび1,3−プロピレングリコールである。好ましいエステルは、C
1−C
20脂肪族カルボン酸のアルキルエステルおよび特に酢酸エチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチルのような脂肪族モノカルボン酸のC
1−C
8アルキルエステルである。好ましいアミンは、式NR
23のものであり、式中、R
2基は独立的に水素またはC
1−C
20炭化水素基であり、但し、R
2基は同時に水素ではない。好ましくは、R
2はC
1−C
10アルキル基である。具体例は、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミンおよびトリエチルアミンである。好ましいアミドは、式R
3CONR
42のものであり、式中、R
3およびR
4は、独立的に水素またはC
1−C
20炭化水素基である。具体例は、ホルムアミドおよびアセトアミドである。好ましいニトリルは、式R
1CNのものであり、式中、R
1は上記と同じ意味を有する。具体例は、アセトニトリルである。好ましいアルコキシシランは、式R
5aR
6bSi(OR
7)
cのものであり、式中、aおよびbは0〜2の整数であり、cは1〜4の整数であり、合計(a+b+c)は4であり;R
5、R
6、およびR
7は、選択的にヘテロ原子を含む1〜18個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリールラジカルである。aが0または1であり、cが2または3であり、R
6が選択的にヘテロ原子を含むアルキルまたはシクロアルキル基であり、R
7がメチルであるケイ素化合物が特に好ましい。このような好ましいケイ素化合物の例は、メチルトリメトキシシルシラン、ジメチルジメトキシシルシラン、トリメチルメトキシシランおよびt−ブチルトリメトキシシランである。
【0035】
好ましい電子供与体化合物は、アミド、エステル、およびアルコキシシランからなる群から選択される。
【0036】
チーグラー型の触媒は、通常的に助触媒の存在下で重合される。好ましい助触媒は、元素周期律表の1、2、12、13または14族の金属の有機金属化合物、特に13族の金属の有機金属化合物および特に有機アルミニウム化合物である。好ましい助触媒は、たとえば、有機金属アルキル、有機金属アルコキシド、または有機金属ハライドである。
【0037】
好ましい有機金属化合物は、リチウムアルキル、マグネシウムまたは亜鉛アルキル、マグネシウムアルキルハライド、アルミニウムアルキル、シリコンアルキル、シリコンアルコキシドおよびシリコンアルキルハライドを含む。より好ましくは、有機金属化合物は、アルミニウムアルキルおよびマグネシウムアルキルを含む。さらにより好ましくは、有機金属化合物は、アルミニウムアルキル、好ましくはトリアルキルアルミニウム化合物を含む。好ましくは、アルミニウムアルキルはたとえば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−イソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリドまたはそれらの混合物を含み、特にトリエチルアルミニウム、トリ−イソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリドまたはそれらの混合物である。
【0038】
本開示は、マルチゾーン循環反応器において気相オレフィン重合反応を開始する方法を提供し、ここで重合は、流動化、高速流動化または輸送条件下で成長中のポリマー粒子が上方に流れる第1重合ゾーン、および成長中のポリマー粒子が高密度化形態で下方に流れる第2重合ゾーンにて実施される。第1重合ゾーンを出たポリマー粒子は、第2重合ゾーンに伝達され、第2重合ゾーンを出たポリマー粒子は、第1重合ゾーンに再導入され、したがって第1および第2重合ゾーンの間にポリマー粒子の循環が確立される。したがって、マルチゾーン循環反応器は、垂直の第1の反応器ゾーンおよび垂直の第2反応器ゾーンを含み、第1の反応器ゾーンの上部領域は、第1の連結部によって第2の反応器ゾーンの上部領域と連結され、第2の反応器ゾーンの下部領域は、第2の連結部によって第1の反応器ゾーンの下部領域と連結される。
【0039】
本開示の好ましい実施形態において、垂直の第1の反応器ゾーンは、成長中のポリマー粒子の流動床を含むように設計される。次いで、第1の反応器ゾーンは、流動床反応器のような完全混合気相反応器として操作する。このような反応器において、重合は、ポリマー粒子の床で起こり、ポリマー粒子の床は、通常的にガス流を分配する機能を有するガス分配グリッドの下にある反応器の下端部における反応ガス混合物に供給し、その上端部でガスを再び取り除くことによって流動状態に維持される。次いで、反応ガス混合物は、圧縮機および重合熱を除去するための熱交換器を具備した再循環ラインを介して反応器に下端部に戻る。反応ガス混合物の速度は、第一に、重合ゾーンとして役割を果たす管内に存在する微細に分割されたポリマーの混合床を流動化させ、第二に、重合熱を効果的に除去するために十分に高くなければならない。
【0040】
第1の反応器ゾーンが成長中のポリマー粒子の流動床を含むように設計される場合、第2の反応器ゾーンは、第1の反応器ゾーン内に、周りにまたは隣接して配置され得る。成長中のポリマー粒子が、高密度化形態で下方に流れる2つ以上の分離されたユニットを第2の反応器ゾーンとして使用することもできる。
【0041】
本開示の特に好ましい実施形態において、垂直の第1の反応器ゾーンは、成長中のポリマー粒子の上方移動が高速流動化または輸送条件下で起こる上昇管である。上昇管内の高速流動化条件は、反応ガス混合物をポリマー粒子の輸送速度よりも高い速度で供給することによって確立される。反応ガス混合物の速度は、一般に、0.5〜15m/s、好ましくは0.8〜5m/sである。用語「輸送速度」および「高速流動化条件」は、当業界によく知られている。これらの用語の定義については、たとえば、「D.Geldart,Gas Fluidization Technology,page 155 et seq.,J.Wiley&Sons Ltd.,1986」を参照する。また、第1の反応器ゾーンを上昇管として操作するときも、反応ガスは、マルチゾーン循環反応器の上端部で取り出され、圧縮機および熱交換器が備えられた再循環ラインを通って運搬された後、上昇管ガスとして再使用される。
【0042】
本開示のマルチゾーン循環反応器は、成長中のポリマー粒子が高密度化形態で下方に流れる下降管として作動するように設計された垂直の第2の反応器ゾーンをさらに含む。このような反応器ゾーンはまた、「移動床」もしくは「沈降床」反応ユニットまたは反応器と呼ばれ得る。本開示の全体を通して、ポリマーの「高密度化形態」という用語は、ポリマーの質量と反応器体積との間の比が、生成されたポリマーの「流動嵩密度(poured bulk density)」の80%より高いことを意味する。したがって、たとえば、420kg/m
3と同一のポリマー嵩密度の場合、ポリマーの「高密度化形態」は、ポリマー質量/反応器体積比が少なくとも336kg/m
3であることを意味する。ポリマーの「流動嵩密度」は、当業者に周知のパラメーターであり、これはDINENISO60:1999にしたがって測定することができる。反応器内部の固体の密度は、ポリマーが占める反応器の体積当たりのポリマーの質量として定義される。
【0043】
典型的には、下降管は、実質的にプラグ流モード(plug flow mode)で下方に移動する成長中のポリマー粒子の床を含有する重合ゾーンである。「プラグ流モード」とは、ポリマー粒子の逆混合がほとんどないか、好ましくは全くないことを意味する。本開示による方法の好ましい実施形態において、ポリマー粒子は、0.01〜0.7m/s、好ましくは0.1〜0.6m/s、より好ましくは0.15〜0.5m/sの速度で下降管で下方に流れる。
【0044】
反応したオレフィンを置換するために、また下降管内のガス流を制御するために、ガス状または液状供給流を1つ以上の位置で下降管内に導入することができる。供給流は、好ましくは主モノマーを含み、1つ以上のコモノマー、プロパンなどの不活性成分、または水素をさらに含むことができる。下降管にガス状または液状供給流の添加量および下降管内の圧力条件に応じて、ポリマー粒子を取り囲むガス状媒体は、ポリマー粒子と同時に下方へ、またはポリマー粒子対して向流で上方へ移動するように設計され得る。下降管に液体流を供給するとき、これらの液体流は、好ましくは下降管内で気化して、下降管内の反応ガス混合物の組成に寄与する。1つ以上の供給流で下降管を操作するとき、供給流を下降管に導入するための供給点は、下降管の高さにわたって均一に分布するのが好ましい。
【0045】
本発明のマルチゾーン循環反応器の第2の反応器ゾーンは、底部に絞り弁が備えられる。この弁は、第2の反応器ゾーンから第1の反応器ゾーンへ成長中のポリマー粒子の流れを制御するために使用される。絞り弁は、単純若しくは二重バタフライ弁またはボール弁のような機械式弁が好ましい。より好ましくは、この弁はバタフライ弁である。好ましくは、時々「投入ガス」と呼ばれるガス流が、弁を通って成長中のポリマー粒子の流れを促進するために、弁の直上の1つ以上の位置で第2の反応器ゾーンの下部に供給される。投入ガスは、好ましくは、圧縮機の下流の未反応モノマーの再循環流から取り出される。弁の開度(opening)を変化させ、および/または投入ガスの流速を変化させることにより、第2の反応器ゾーン内のポリマー粒子の速度を調節することができる。
【0046】
第2の反応器ゾーンには、ポリマーを排出するためのラインが備えられ、上部には、ガンマ線検出器のような第2の反応器ゾーン内のポリオレフィン粒子の沈降床のレベルが測定できる手段がさらに備えられる。
【0047】
マルチゾーン循環反応器は、マルチゾーン循環反応器の上端部で取り出される反応ガス混合物をマルチゾーン循環反応器の底部に戻るように運搬するためのガス再循環ラインを含む。ガス再循環ラインは、圧縮機および重合熱を除去するための熱交換器を具備する。ガス再循環ラインから出るガスは、第1の反応器ゾーンを通して流動化、高速流動化または輸送条件下で成長中のポリマー粒子を輸送するための上昇管ガスとして使用され、絞り弁を通って成長中のポリマー粒子の流れを容易にするための投入ガスとして使用され、また選択的に第2の反応器ゾーンの底部から第2の連結部を介して第1の反応器ゾーンに成長中のポリマー粒子を運搬するための輸送ガスとして使用される。したがって、ガス再循環ラインは、第1の反応器ゾーンの上部、第2の反応器ゾーンの上部または第1の反応器ゾーンの底部に少なくとも上昇管ガス導入点を有する第1の連結部、絞り弁の上の第2の反応器ゾーンでの投入ガス導入点、および選択的に第2の反応器ゾーンの下部領域と連結される連結部の端部にある輸送ガス導入点を連結する。
【0048】
本開示の最も好ましい実施形態において、マルチゾーン循環反応器は、第1の反応器ゾーンとして上昇管を含む。このようなマルチゾーン循環反応器は、たとえば、国際公開WO97/04015A1号および国際公開WO00/02929A1号に記載されており、2つの相互連結された重合ゾーン、すなわち、成長中のポリマー粒子が高速流動化または輸送条件下で上方に流れる上昇管、および成長中のポリマー粒子が重力の作用下で、高密度化形態で流れる下降管を有する。上昇管を出たポリマー粒子は、下降管に入り、下降管を出たポリマー粒子は、上昇管内に再導入され、それにより2つの重合ゾーンの間でポリマーの循環が確立され、ポリマーはこれらの2つのゾーンを通して交互に複数回通過する。このような重合反応器において、固体/ガス分離器が下降管の上部に配置され、上昇管から来るポリオレフィンと反応ガス状混合物とを分離する。成長中のポリオレフィン粒子は、下降管に入り、上昇管の分離された反応ガス混合物は、ガス再循環ラインを通して重合反応器内に1つ以上の再導入点へ連続的に再循環する。好ましくは、再循環ガスの大部分は、上昇管の底部に再循環する。好ましくは、触媒供給のためのラインが上昇管の上に配列され、ポリマー排出システムが下降管の底部に配置される。メーキャップモノマー、コモノマー、水素および/または不活性成分の導入は、上昇管および下降管に沿って様々な点において起こり得る。
【0049】
高速流動化または輸送条件下で操作する上昇管を含む重合反応器において重合を実施すると、成長中のすべてのポリマー粒子が重合反応器のすべての重合ゾーンを繰り返し的に通過するという利点をもたらす。1つの気相重合反応器内で、改善されたポリマー特性の組み合わせを有する均質な多峰性オレフィンポリマーを製造することが可能である。
【0050】
図1は、本発明の方法を実施するためのマルチゾーン循環反応器を概略的に示す。マルチゾーン循環反応器は、予備重合触媒を供給するように設計されている。
【0051】
固体触媒成分は、ライン1を介して供給され、助触媒、希釈剤、たとえばプロパン、および選択的に1つ以上の電子供与体化合物は、ライン2を介して予備接触容器3に供給される。形成された触媒システムは、ライン4を介してループ予備重合反応器5に供給される。オレフィン、たとえばプロピレンは、ライン6を介してループ反応器5に供給される。予備重合された触媒粒子を含有する懸濁液は、ループ反応器5から排出され、ライン7を介してマルチゾーン循環反応器21の触媒注入点10に供給される。
【0052】
マルチゾーン循環反応器21は、成長中のポリオレフィン粒子によって繰り返して通過する第1の反応器ゾーンとして上昇管22および第2の反応器ゾーンとして下降管23を含む。上昇管22内において、ポリオレフィン粒子は、矢印24の方向に沿って高速流動化条件下で上方に流れる。下降管23内において、ポリオレフィン粒子は、重力の作用下で矢印25の方向に沿って下方に流れる。上昇管22と下降管23は、相互連結屈曲部26と27によって適切に相互連結されている。
【0053】
上昇管22を通って流れた後、ポリオレフィン粒子および反応ガス混合物は上昇管22を出て、固体/ガス分離ゾーン28に運ばれる。このような固体/ガス分離は、たとえば、サイクロンのような遠心分離器などの従来の分離手段を使用して実施することができる。分離ゾーン28から、ポリオレフィン粒子は、下降管23に入る。
【0054】
分離ゾーン28を出た反応ガス混合物は、圧縮機30および熱交換器31が具備された再循環ライン29によって上昇管22に再循環する。圧縮機30と熱交換器31との間で、再循環ライン29が分離され、ガス状混合物は2つの分離された流れに分割され:ライン32は再循環ガスの一部を相互連結屈曲部27に運搬する一方、ライン33は再循環ガスの別の部分を上昇管22の底部に運搬し、その中で高速流動化条件を確立する。
【0055】
マルチゾーン循環反応器21で得られたポリオレフィン粒子は、排出管35を介して下降管23の底部から連続的に排出される。
【0056】
分離ゾーン28を出たガス状混合物の一部は、圧縮機30を通過した後に再循環ライン29を出て、ライン36を通って熱交換器37に送られ、ここでモノマーおよび選択的な不活性ガスが部分的に凝縮する温度に冷却される。分離容器38は、熱交換器37の下流に配置されている。分離された液体は、ライン39を介して分離容器38から引き出され、かつポンプ41によってライン40を通って下降管23に供給されて、上昇管22の反応ガス混合物が下降管23に入ることを防止するためのバリアを生成する。分離容器38内で気相として得られたガス状混合物は、ライン42を通って再循環ライン29に再循環する。メーキャップモノマー、メーキャップコモノマーおよび選択的に不活性ガスおよび/またはプロセス添加剤は、ライン43を介して再循環ライン29内にさらに導入され得る。
【0057】
下降管23の底部には、下降管23から相互連結屈曲部27を通って上昇管22へのポリオレフィン粒子の流れを調節するための調節可能な開口部を有するバタフライ弁44が備えられている。バタフライ弁44の上部で、ライン45を通って再循環ライン29から来る再循環ガス混合物の量は投入ガスとして下降管23に導入される。
【0058】
本開示の好ましい実施形態において、マルチゾーン循環反応器は、反応器カスケードの一部である。反応器カスケードのさらなる重合反応器は、気相反応器または懸濁反応器のような任意の種類の低圧重合反応器であり得る。反応器カスケードの重合方法が懸濁重合を含む場合、懸濁重合は気相重合の上流で実施するのが好ましい。このような懸濁重合を実施するのに適した反応器は、たとえば、ループ反応器または撹拌タンク型反応器である。適切な懸濁媒体は、とりわけ、イソブタンのような不活性炭化水素若しくは炭化水素の混合物、または他のモノマー自体である。オレフィンの多段重合が気相で実施される追加の重合段階を含む場合、追加の気相重合反応器は、水平または垂直の撹拌式気相反応器、流動床反応器またはマルチゾーン循環反応器のような任意のタイプの気相反応器であり得る。このような追加の気相重合反応器は、気相重合反応器の下流または上流に配置され得る。本開示の特に好ましい実施形態において、マルチゾーン循環反応器は、流動床重合反応器がマルチゾーン循環反応器の上流に配置される反応器カスケードの一部である。
【0059】
図2は、本開示の方法を実施するための流動床反応器およびマルチゾーン循環反応器を含む重合反応器カスケードの構成を概略的に示す。
【0060】
第1の気相反応器、流動床反応器101は、ポリオレフィン粒子の流動床102、ガス分配グリッド103および減速ゾーン104を含む。減速ゾーン104は、一般に反応器の流動床部分の直径と比較して増加した直径を有する。ポリオレフィン床は、反応器101の底部に配置されたガス分配グリッド103を通して供給されるガスの上向きの流れによって流動化状態に維持される。再循環ライン105を介して減速ゾーン104の上部を出る反応ガス混合物のガス状流は、圧縮機106によって圧縮され、熱交換器107に移され、ここで冷却された後、位置108のガス分配グリッド103の下の点で流動床反応器101の底部に再循環する。適切な場合には、再循環ガスは、反応器を凝縮した材料で、すなわち、凝縮モードで反応器を操作するように、熱交換器内の1つ以上の再循環ガス成分の露点以下に冷却することができる。再循環ガスは、未反応モノマーの他にも、アルカンのような不活性凝縮性ガス、および窒素のような不活性非凝縮性ガスをまた含むことができる。メーキャップモノマー、水素および選択的な不活性ガスまたはプロセス添加剤は、たとえば、圧縮機106の上流にあるライン109を介して様々な位置で反応器101に供給され得、これは本発明の範囲を制限しない。一般に、触媒は、好ましくは流動床102の下部に配置されるライン110を介して反応器101に供給される。
【0061】
流動床反応器101から得られたポリオレフィン粒子は、ライン111を介して不連続的に排出され、流動床反応器101から来るガス状混合物がマルチゾーン循環反応器に入ることを避けるために固体/ガス分離器112に供給される。固体/ガス分離器112を出るガスは、ライン113を介してオフガスとして反応器を出る一方、分離されたポリオレフィン粒子は、ライン114を介してマルチゾーン循環反応器21に供給される。
【0062】
図2に示すマルチゾーン循環反応器21は、予備重合された触媒がマルチゾーン循環反応器21に供給されないが、ライン114を介して流動床反応器101から出るポリオレフィン粒子は、位置34における相互連結屈曲部27でマルチゾーン循環反応器21に入ることを除いては、
図1に示すマルチゾーン循環反応器21と同一である。さらに、分離容器38から引き出された液体は、ライン46を通って下降管23にさらに供給される。メーキャップモノマー、メーキャップコモノマー、および選択的に不活性ガスおよび/またはプロセス添加剤は、ライン47を介してライン46に導入された後、モノマー供給点48で下降管23に供給される。
【0063】
本発明の方法は、空のマルチゾーン循環反応器を使用し、すなわち、粒子状ポリオレフィンを含有しない反応器を使用し、重合を開始することを特徴とする。開示方法のステップa)として、マルチゾーン循環反応器を反応器ガスで充填して0.1〜20MPaの圧力および20〜200℃の温度とする。起動(start‐up)前の条件に応じて、反応器は、ステップa)を実施する前に不活性ガスでパージングすることによって、または有機アルミニウム化合物のようなスカベンジャーを導入することによって不活性となり得る。ステップa)において使用される反応器ガスは、開始された重合が定常状態に到達した後にマルチゾーン循環反応器で反応ガスの組成と同一または類似の組成を有することができる。しかしながら、ステップa)において使用される反応器ガスの組成は、組成が異なってもよく、たとえば、不活性成分のみを含有してモノマーを含有しなくてもよい。
【0064】
起動のための目標の圧力および温度に到達した後、再循環ガスラインを通った反応器ガスの循環がステップb)として開始される。再循環ガスラインに配置された圧縮機によって駆動され、反応器ガスは、マルチゾーン循環反応器の上端部から、すなわち、第1の反応器ゾーンの上部、第2の反応器ゾーンの上部または第1の連結部からガス再循環ラインを通して、上昇管ガス導入点まで、投入ガス導入点までおよび選択的に輸送ガス導入点まで運搬される。ガス導入点におけるガス供給速度は、重合の定常状態における起動完了後のものよりも低くてもよい。本発明の好ましい実施形態において、ステップb)において、投入ガス導入点および選択的な輸送ガス導入点で供給されるガスの量は、粒子状材料をステップc)において導入するときに詰まりを回避するだけのためのものである。ステップb)において、マルチゾーン循環反応器は、反応器内に粒子状材料を依然として含有しないため、上昇管ガス導入点で、投入ガス導入点で、および選択的に輸送ガス導入点でマルチゾーン循環反応器の下部に導入された反応器ガスは、第1の反応器ゾーンおよび第2の反応器ゾーンの両方を通ってマルチゾーン循環反応器の上端部に流れ得る。
【0065】
再循環ガスラインを通して反応器ガスの循環を確立した後、重合触媒および選択的にポリオレフィンを含む粒子状材料をステップc)としてマルチゾーン循環反応器に供給する。重合触媒および選択的にポリオレフィンを含む粒子状材料は、純粋な重合触媒、予備重合された重合触媒またはマルチゾーン循環反応器の上流に配置された重合反応器で製造された成長中のポリオレフィン粒子であり得る。
【0066】
本発明の好ましい実施形態において、粒子状材料は、予備重合された重合触媒である。触媒の予備重合反応は、1個、2個またはそれ以上の予備重合容器内の希釈剤中で実施してもよく、選択的に触媒予備活性化ステップが先行されてもよい。好ましい実施形態において、予備重合は、ループ反応器で実施される。予備重合は、0.1〜10MPaの圧力で0〜80℃、好ましくは20〜50℃の温度で実施され得る。1個、2個またはそれ以上の予備重合容器内で触媒の滞留時間は、2分〜3時間、好ましくは5分〜1時間であり得る。予備重合度は、固体触媒1g当たりポリマー0.2〜800g、好ましくは固体触媒1g当たりポリマー1〜400gであり得る。予備重合は、モノマーとして1つのみのオレフィン、好ましくはプロピレンまたはエチレンを使用して実施できるか、または2種以上のオレフィンの組み合わせによる共重合であり得る。さらに、水素または電子供与体化合物のような添加剤の存在下で予備重合を実施することが可能である。
【0067】
本発明の別の好ましい実施形態において、マルチゾーン循環反応器は、反応器カスケードの一部であり、重合触媒を含む粒子状材料は、マルチゾーン循環反応器の上流に配置された重合反応器で製造されたポリオレフィンである。
【0068】
重合触媒および選択的にポリオレフィンを含む粒子状材料は、好ましくは第1の反応器ゾーンの下部または第2の連結部内に供給される。
【0069】
本発明の方法は、重合触媒を含む粒子状材料の供給を開始した後、ステップd)として、第2の反応器ゾーンでのガス流は絞り弁の開度を調節し、上昇管ガス導入点、投入ガス導入点、および選択的に輸送ガス導入点に供給されるガスの流量を調節することによって第2の反応器ゾーンでのガス流が制御され、その結果、第2反応ゾーンの底部における上向きのガス速度は、マルチゾーン循環反応器に供給される粒子状材料の最終自由落下速度よりも低いことを特徴とする。粒子の最終自由落下速度は、粒子が静止流体を通って落下するときに到達する速度である。この速度は、粒子の大きさと形態に依存する。粒子が上方に流れるガス内に位置し、この上方に流れるガスの速度が粒子の最終自由落下速度よりも高い場合、粒子は、ガスによって運搬される。マルチゾーン循環反応器に供給される粒子状材料の最終自由落下速度を計算するため、この粒子状材料の平均粒径を使用しなければならない。
【0070】
本発明の一実施形態では、ステップd)において、第2の反応ゾーンの底部における上向きのガス速度は、最終自由落下速度より低いが、マルチゾーン循環反応器に供給される粒子状材料の最小流動化速度より高い。こうして、重合触媒を含む粒子状材料の供給を開始した後に、粒子状材料は、直ちに第2の反応ゾーンで沈降し、1種以上のオレフィンがステップd)において存在する場合、制御されない重合反応および塊の形成をもたらし得ることを防止する。
【0071】
本発明の好ましい実施形態では、ステップd)において、第1の反応器ゾーンでの上向きのガス速度は、マルチゾーン循環反応器内に供給される粒子状材料の最終自由落下速度よりも高い。その結果、第1の反応器ゾーンは、上昇管として作動する。
【0072】
好ましくは、ステップe)として、ステップc)において粒子状材料の供給が開始された後、1種以上のオレフィンがマルチゾーン循環反応器に供給され、次いで1種以上のオレフィンが重合触媒の存在下でポリオレフィンと反応する。しかしながら、本発明の起動方法は、またステップc)において粒子状材料がポリオレフィンを含む場合、特に粒子状材料が上流に配置された重合反応器で製造された成長中のポリオレフィン粒子の場合、オレフィンを供給せずに実施され得る。このような場合に、オレフィンをマルチゾーン循環反応器に供給せずに後続ステップf)〜h)の一部または全部を実施し、その後、最終的に定常状態の重合条件に到達するように単に1種以上のオレフィンを供給しながら開始するのが本発明の範囲内にある。
【0073】
本発明の方法のステップf)によれば、1種以上のオレフィン若しくは重合触媒およびポリオレフィンまたは1種以上のオレフィンを含む粒子状材料、ならびに重合触媒およびポリオレフィンを含む粒子状材料をマルチゾーン循環反応器に供給する一方、ポリマー排出ラインは閉鎖され、すなわち、マルチゾーン循環反応器からポリオレフィンは排出されない。したがって、マルチゾーン循環反応器内でポリオレフィンが形成され、および/またはポリオレフィンがマルチゾーン循環反応器に導入されるので、マルチゾーン循環反応器内のポリオレフィンの量が増加する。ステップd)にしたがって第2の反応器ゾーンでガス流を制御することにより、マルチゾーン循環反応器に供給された粒子の少なくとも大部分が第2の反応器ゾーンから上向きに運搬されないということが保障される。粒子の大きさおよび第2の反応器ゾーンでのガスの流量に応じ、粒子は、第2の反応器ゾーン内で流動化状態で残り得るか、または粒子は、絞り弁の開口を通ってガス流に向流で第2の反応器を出ることができる。
【0074】
本発明の好ましい実施形態において、マルチゾーン循環反応器内の粒子、またはマルチゾーン循環反応器内の粒子の少なくともより粗い部分が流動状態で維持され、すなわち、第1の反応器ゾーンが流動床反応器として作動するように、第1の反応器ゾーンでの上向きのガス速度をステップd)において制御する。第1の反応器ゾーンまたは第2の連結部内に供給された粒子状材料および第2の反応器ゾーンを出た粒子は、第1の反応器ゾーンが完全に満たされて流動床が第2の反応器に流れ始めるまで、第1の反応器ゾーン内の流動床に蓄積されるであろう。本発明のさらに別の好ましい実施形態において、第1の反応器ゾーンでの上向きのガス速度は、マルチゾーン循環反応器内の粒子の最終自由落下速度よりも高く、すなわち、第1の反応器ゾーンは、上昇管として作動する。次いで、第1の反応器ゾーンまたは第2の連結部に供給された粒子状材料および第2の反応器ゾーンを出た粒子は、直ちに第2の反応器ゾーンに輸送される。本発明の2つの実施形態において、第2の反応器ゾーン内の粒子の量が増加し、したがって、第2の反応器ゾーンで粒子状ポリオレフィンの重量が増加し、第2の反応器ゾーン内の粒子のより高い抵抗によって、第2の反応器ゾーン内のガスの上向き速度が減少する。第2の反応器ゾーンで粒子状ポリオレフィンの重量が上向きに移動するガスのドラグ力より高くなると、第2の反応器ゾーン内の流動床は崩壊してポリオレフィン粒子の沈降床が形成される。その時点から、第2反応ゾーンの底部における上向きのガス速度は、必然的に最終自由落下速度よりも低く、マルチゾーン循環反応器に供給される粒子状材料の最小流動化速度より低い。
【0075】
本発明の好ましい実施形態において、第2の反応器ゾーン内の条件下で気化する液体炭化水素は、ステップf)中に、第2の反応器ゾーンに、好ましくは第2の反応器ゾーンの底部に供給される。液体炭化水素の気化は、ステップf)中に第2の反応器ゾーン内で生成された重合熱を効果的に除去することが可能である。
【0076】
ステップf)の終結時に形成された沈降床は、第2の反応器ゾーンを完全には満たさない。したがって、ステップg)は、1種以上のオレフィン並びに重合触媒およびポリオレフィンを含む粒子状材料のマルチゾーン循環反応器への供給速度および生成されたポリオレフィンの選択的な排出速度を制御することにより、ポリオレフィンが反応器から引き出されることよりも多い量の1種以上のオレフィンおよび/またはポリオレフィンがマルチゾーン循環反応器に導入されることを提供する。さらに、ステップf)の終結時に形成された沈降床が第2の反応器ゾーンを完全には満たさないが、それにもかかわらず上記床は、絞り弁の上方にある。こうして、絞り弁の開度を調節して投入ガスの流速を調節することにより、マルチゾーン循環反応器内のポリマー粒子の循環速度を制御することが可能となる。好ましくは、ステップg)は、マルチゾーン循環反応器からポリオレフィンを排出せずに実施される。
【0077】
ステップg)の条件下でマルチゾーン循環反応器を操作することは、ポリオレフィン粒子の沈降床が第2の反応器ゾーンの上部に到達するまで継続される。その後、定常状態の重合が行われる。その結果、ステップh)において、マルチゾーン循環反応器からポリオレフィンの排出が開始されるか、または増加し、排出されたポリオレフィンの量は、1種以上のオレフィン並びに重合触媒およびポリオレフィンを含む粒子状材料のマルチゾーン循環反応器への供給速度を制御し、また製造されたポリオレフィンの排出量を制御することにより、導入されたオレフィ
ンとポリオレフィンの混合量
のバランスを取る。さらに、マルチゾーン循環反応器内のポリマー粒子の循環速度は、絞り弁の開度を調節し、投入ガスの流量を調節することによって制御される。
【0078】
一実施形態において、本発明は、マルチゾーン循環反応器で1種以上のオレフィンを重合させてポリオレフィンを製造する方法であって、重合反応が、本発明の起動方法のいずれかによって開始される方法をさらに提供する。好ましくは、上記方法は、エチレンを単独重合させるか、またはエチレンを1つ以上のコモノマーと共重合させることによってエチレンポリマーを製造する方法であるか、または上記方法は、プロピレンを単独重合させるか、またはプロピレンを1つ以上のコポリマーと共重合させることによってプロピレンポリマーを製造する方法である。
【0079】
本開示の好ましい実施形態において、マルチゾーン循環反応器における最終定常状態重合は、第1の反応器ゾーンを出る反応ガス混合物が、第1の反応器ゾーンと第2の反応器ゾーンの少なくとも一部との間に異なる重合条件を確立するために、第2の反応器ゾーンに入ることが部分的にまたは全体的に防止されるような方法で実施される。これは、たとえば、ガスおよび/または液体混合物の形態のバリア流体を第2の反応器ゾーンに、好ましくは第2の反応器ゾーンの上部に供給することによって達成され得る。バリア流体は、第1の反応器ゾーン内にあるガス混合物とは異なる適切な組成を有するべきである。バリア流体の添加量は、ポリマー粒子の流れに対して向流のガスの上向き流れが、特にその上部で発生し、第1の反応器ゾーンから来る粒子と同伴されるガス混合物に対するバリアとして作用するように調整することができる。
【0080】
バリア流体は、好ましくは再循環ガス流から出る。、より好ましくはその流れを部分的に凝縮することによって得られる。結果的に、バリア流体は、重合されるモノマー以外に、窒素または1〜10個の炭素原子を有するアルカンのような重合希釈剤として使用される不活性化合物、水素または反応ガス混合物の他の成分を含有することができる。
【0081】
バリア流体の製造は、再循環ガス流の一部、好ましくは圧縮機の下流および再循環ラインに含まれた熱交換器の上流を分離し、分離したガスを熱交換器または蒸留セクションに通過させて部分的に凝縮させ、得られた液体−ガス混合物を液体およびガス状流に分離することによって達成することができる。バリア流体は、バリア流体を気化させることによって生成されたガスが10体積%未満の水素、好ましくは3体積%未満の水素を有する組成を有し得る。好ましい実施形態において、バリア流体は、バリア流体を気化させることによって生成されたガスが0.5体積%未満の水素、好ましくは0.2体積%未満の水素、より好ましくは0.1体積%未満の水素を有する組成を有する。好ましくは、エチレンおよび選択的に1つ以上のコモノマーを含む供給流は、バリア流体と共に、またはバリア流体の供給点に近接して第2の反応器ゾーン内に導入される。
【0082】
好ましくは、バリア流体は、液体形態で第2の反応器ゾーンの上部に供給される。
【実施例】
【0083】
溶融流量MFR
190/2.16は、2.16kgの荷重下で、190℃の温度でDIN EN ISO 1133−1:2012−03に従って測定した。
【0084】
溶融流量MFR
190/21.6は、21.6kgの荷重下で、190℃の温度でDIN EN ISO 1133−1:2012−03に従って測定した。
【0085】
密度は、DIN EN ISO 1183−1:2004、方法A(液浸)に従って2mm厚さの圧縮成形プラークで測定した。圧縮成形プラークは、規定された熱履歴で製造した:180℃、20MPaで8分間加圧し、続いて30分間沸騰水で結晶化した。
【0086】
溶融流量MFR
230/2.16は、2.16kgの荷重下で、230℃の温度でDIN EN ISO 1133−1:2012−03に従って測定した。
【0087】
実施例1
図2に示すような2つの相互連結された反応ゾーンを有する流動床反応器およびマルチゾーン循環反応器のカスケードにおけるポリエチレン生産は、2つの反応器両方ともが空いている状態で;すなわち、2つの反応器両方ともがポリマー粒子を含まない状態で開始された。
【0088】
流動床反応器101は、内径が500mmで高さが4mであり、反応器内の流動床の重量を測定するための差圧計が備えられた。起動のために、流動床反応器101をプロパンで3.0MPaに加圧して80℃まで加熱した。その後、エチレンおよび水素を流動床反応器101に供給して、6体積%のエチレン、8体積%の水素および残りがプロパンであるガス組成を確立した。流動床反応器102および再循環ライン105を通るガスの循環を開始し、流動床反応器101の円筒形部分における上向きのガス速度は、0.45m/sに設定した。
【0089】
上昇管22は内径200mm、長さ19mであった。下降管23は全長18m、内径300mmを有する上部5mおよび内径150mmを有する下部13mを有する。下降管23には、0.5mの高さでバタフライ弁44が備えられ、上昇管22および下降管23の両方に、これら反応器ゾーン内の反応混合物の密度を測定するためのガンマ線源およびガンマ線検出器が備えられた。起動のために、マルチゾーン循環反応器21をプロパンで2.6MPaに加圧して80℃に加熱した。エチレンと水素をマルチゾーン循環反応器21に供給し、5体積%のエチレン、2.5体積%の水素および残りがプロパンであるガス組成を確立した。マルチゾーン循環反応器21および再循環ライン29を通るガスの循環を開始し、上昇管22の上向きのガス速度は、1.2m/sに設定した。
【0090】
電子供与体/Tiのモル供給比が8である国際公開WO2014/202420A1号の実施例1aに従って製造されたチーグラーナッタ触媒9.1g/hは、5kg/hの液体プロパンを使用して、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)、ジエチルアルミニウムクロリド(DEAC)およびテトラヒドロフラン(THF)をまた注入した第1の撹拌予備接触容器に供給した。トリイソブチルアルミニウム対ジエチルアルミニウムクロリドの重量比は7:1であった。アルミニウムアルキル対固体触媒の重量比は5:1であった。アルミニウムアルキル対THFの重量比は70:1であった。第1の予備接触容器を50℃で滞留時間30分に維持させた。第1の予備接触容器の触媒懸濁液を第2の撹拌予備接触容器に連続的に移し、これをまた50℃にて滞留時間30分で操作した。触媒懸濁液を、ライン110を介して流動床反応器101に連続的に移した。
【0091】
第1の予備接触容器への触媒供給が開始されてから3時間後に、流動床反応器101における床レベルが検出された。ライン109を介して流動床反応器101へのエチレンおよび水素の供給を徐々に調節し、12体積%のエチレンの濃度および16体積%の水素濃度を得た。コモノマーは添加しなかった。第1の予備接触容器への触媒供給を開始して8時間後に、床レベルは140kgの流動床反応器でポリマーの目標値のホールドアップ量(hold−up)に到達した。得られたエチレンおよび水素の供給速度は、エチレン42kg/hおよび水素140g/hであった。
【0092】
流動床反応器101における目標値の床レベルに到達した後、流動床反応器101からのポリマー排出を開始した。ポリエチレン粒子は、ライン111を介して固体/ガス分離器112に不連続的に排出され、次いでライン114を介してマルチゾーン循環反応器21に運搬された。
【0093】
下降管23の底部のバタフライ弁44は、最大開度の20%の開度に設定し、マルチゾーン循環反応器21においてポリエチレン粒子の循環速度を制限した。ライン45を介して供給された投入ガスの量は、200g/hに設定した。流動床反応器101からマルチゾーン循環反応器21へのポリマー排出が開始されてから2時間後に、上昇管22の密度は、90kg/m
3の値に到達した。下降管23の底部の密度は、150kg/m
3の値に到達した。流動床反応器101からマルチゾーン循環反応器21へのポリマー排出が開始されてから3時間後に、上昇管22の密度は、110kg/m
3に到達した。下降管23の底部の密度は、430kg/m
3に到達し、これはポリエチレン粒子の移動床の密度に該当する。
【0094】
エチレンおよび水素濃度をライン47を介してエチレンおよび水素供給量を増加させることによって10体積%のエチレンおよび1体積%の水素に徐々に調節した。
【0095】
流動床反応器101からマルチゾーン循環反応器21へのポリマー排出を開始して6時間後に、下降管内のレベルは、16.5mの目標値に到達し、ライン35を介してマルチゾーン循環反応器21からポリマー粒子の排出が開始された。10時間後、マルチゾーン循環反応器21の最大処理量90kg/hに到達した。上昇管22の密度は、150kg/m
3の安定値に到達した。下降管23の底部の密度は、430kg/m
3で一定に維持された。
【0096】
流動床反応器101で得られたポリエチレンは、12g/10分のMFR
190/2.16および0.967g/cm
3の密度を有していた。マルチゾーン循環反応器21から排出されたポリエチレンは、20g/10分のMFR
190/21.6および0.960g/cm
3の密度を有していた。
【0097】
比較例A
実施例1に記載されたポリエチレンの製造のための起動を同一の条件下で繰り返した。しかしながら、流動床反応器101で目標値の床レベルに到達した後、ポリマー粒子は、下降管23の底部でバタフライ弁44が完全に開放されたマルチゾーン循環反応器21に排出された。
【0098】
ポリマー排出が開始された2時間後に、上昇管22の密度は、130kg/m
3の値に到達した。下降管23の底部の密度は、140kg/m
3の値に到達した。流動床反応器101からマルチゾーン循環反応器21へのポリマー排出が開始されてから3時間後に、上昇管22の密度は、150kg/m
3に到達した。下降管23の底部の密度は、180kg/m
3に到達した。上昇管22と下降管23の密度判読値は、顕著に変動しており、これはマルチゾーン循環反応器21内のポリマー粉末の循環速度が不規則であるということを意味する。流動床反応器101からマルチゾーン循環反応器21へのポリマー排出が開始されてから5時間後に、マルチゾーン循環反応器21を停止しなければならなかった。ポリマー粉末は、圧縮機30および熱交換器31の再循環ライン29で発見された。
【0099】
実施例2
図1に示すように2つの相互連結された反応ゾーンを有するマルチゾーン循環反応器でポリプロピレン製造は、マルチゾーン循環反応器が空の状態で、すなわち、反応器がポリマー粒子を含有しない状態で開始された。
【0100】
上昇管22は内径1800mm、長さ34mであった。下降管23は全長35m、内径2200mmを有する上部7m、内径1800mmを有する中央部5mおよび内径1100mmを有する下部21mを有する。下降管23には、下降管の下部の直下に設置されたバタフライ弁44が備えられており、上昇管22および下降管23の両方にこれら反応器内の反応混合物の密度を測定するためのガンマ線源およびガンマ線検出器が備えられた。起動のために、マルチゾーン循環反応器21をプロピレンで2.8MPaに加圧して75℃に加熱した。その後、水素をマルチゾーン循環反応器21に供給し、0.6体積%の水素および残りがプロピレンであるガス組成を確立した。マルチゾーン循環反応器21と再循環ライン29を通るガスの循環を開始し、上昇管22の上方向ガス速度は、1.7m/sに設定された。
【0101】
出発担持体が、式MgCl
2−1.7EtOHを有することを除いては、EP 0728 769 B2の実施例5、48〜55行にしたがって製造されたチーグラー−ナッタ触媒0.4kg/hを、トリエチルアルミニウムおよびジシクロペンチルジメトキシシランが注入された攪拌予備接触容器3に供給した。トリエチルアルミニウム対固体触媒の重量比は5:1であった。トリエチルアルミニウム対ジシクロペンチルジメトキシシランの重量比は4:1であった。予備接触容器3を15℃で滞留時間5分に維持させた。その後、触媒懸濁液を、予備重合反応器5に連続的に移した。予備重合反応器5を25℃の温度で15分の滞留時間で作動させた。液体プロピレンを予備重合反応器5に連続的に供給した。予備重合触媒粒子は、ライン7を介して上昇管22の底部に連続的に供給した。
【0102】
下降管23の底部で弁44は、最大開度の100%の開度に設定した。予備−ポリ反応器5から予備重合触媒粒子の排出が開始されてから2時間後に、上昇管22の密度は、90kg/m
3の値に到達した。下降管23の底部の密度は、200kg/m
3の値に到達した。予備−ポリ反応器5から予備重合触媒粒子の排出が開始されてから2時間30分後に、上昇管22の密度は、110kg/m
3に到達した。下降管23の底部の密度は、450kg/m
3に到達しており、これはポリプロピレン粒子の移動床の密度に相応する。
【0103】
投入ガスは、下降管23の底部の密度が450kg/m
3に到達するまで5t/hに維持させた後、20t/hの定常状態値に急速に増加させた。同時に、上昇管ガス速度は、240kg/m
3の定常状態で上昇管密度に到達するために2m/sの定常状態値に増加した。
【0104】
ライン43を介して水素供給量を徐々に増加させることにより、水素濃度を目標レベルに維持した。
【0105】
予備−ポリ反応器5から予備重合触媒粒子の排出が開始されてから5時間後に、下降管内のレベルは、定常状態値に到達しており、ライン35を介してマルチゾーン循環反応器21からポリマー粒子の排出が開始された。予備−ポリ反応器5から予備重合触媒粒子の排出が開始されてから10時間後に、20t/hのマルチゾーン循環反応器21の最大処理量に到達した。
【0106】
得られたポリプロピレンは、15g/10分のMFR
230/2.16を有していた。