(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検査装置は、前記位置合わせ機構により組織検査における直接モードと、偏光モードとを切替え、位置ずれなく直接モードおよび偏光モードで組織画像を撮影する、請求項1または2に記載の検査装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき、実施形態を以て説明するが、本発明は後述する実施形態に限定されるものではない。
図1は、本実施形態の検査装置100の概略図である。本実施形態の検査装置100は、いわゆるデジタルダーモスコープとして利用することができ、デジタルカメラといった撮像装置106と、検査モジュール115とを含んで構成することができる。撮像装置106と、検査モジュール115とは、アダプタ107によって連結され、操作時には撮像装置106と検査モジュール115とが一体とされて、医師による取り扱いが可能とされている。検査モジュール115は、適切なテーパ角として形成された筐体115aを備え、筐体115a内に各種の要素を収容し、検査モジュール115に適切な剛性を付与すると共に、電池パッケージ114などの固定を可能としている。
【0013】
撮像装置106は、デジタルカメラを使用することが好ましいが、従来のフィルム型カメラの使用することを排除するものではない。撮像装置106は、レンズ光学系105およびCCDまたはCMOSアレイといった撮像素子120またはフィルムを搭載し、スチル画像撮影機能に加え動画撮影機能を含むことが好ましい。また、撮像装置106は、USB、HDMIといった有線接続、Wifi、3G、4G,5Gといった通信プロトコルによりパーソナルコンピュータといった情報処理装置に接続でき、取得した静止画像や動画像を、情報処理装置に送付し、遠隔的に記録することが可能とされている。
【0014】
検査モジュール115は、概ね円錐台形状として構成され、LEDホルダ103と、偏光状態調節部102aを含む円偏光フィルタ102と、保護部材101とを含んで構成されている。LEDホルダ103には、LED103aが搭載され、電池パッケージ114に収納された電池(実施形態においては、1.5V電池2本)から直流電力が供給され、皮膚、粘膜、上皮細胞構造といった組織に対して光を照射することができる。以下、本実施形態では、皮膚、粘膜、上皮細胞構造といった人体外部から光学的に認識できる人体部分を、総じて組織として参照する。
【0015】
保護部材101は、ガラス、透明プラスチックその他の光学的に透過性を有する材料から形成することができ、防塵機能を提供すると共に、組織を検査する際に塗布されるジェルなどが検査モジュール115内への侵入を防止する。また、検査モジュール115が、組織上でスムースに移動することを補助する。
【0016】
LED103aは、これまで知られたいかなる波長領域、輝度でも使用できるが、皮膚といった組織の肌色を通常の室内の色温度と同じ環境で観察・撮影する点では、白色LEDを使用することが好ましい。例えば白色LEDとしては、日亜化学工業株式会社製のNSDN510HS−K1(b2レベル)を例示的に挙げることができ、式温度が、(X,Y(0,31,3.1))で、プランク色温度で約6000°程度のものを利用することができる。
【0017】
また、白色LEDを使用しない場合、RGB色のLEDを使用することができ、この場合、ピーク波長が、370nm(紫)、470nm(青)、500nm(黄色)、535nm(黄赤)、570nm(オレンジ)、630nm(赤)などの波長のLEDを適宜組み合わせて、色温度約6000°を与えるようにすることができる。
【0018】
円偏光フィルタ102は、本実施形態では、光アイソレータ機能を提供すると共に、偏光状態調節部102aを提供する。本実施形態における偏光状態調節部102aは、円偏光フィルタ102の周方向に一定間隔で形成した円形アパーチャ(直径5.5mm〜6.5mm)として構成されていて、LED103aからの光を、直線偏光として組織に照射させるモード(以下、直接モードとして参照する。)、およびLED103aからの光を円偏光として照射する偏光モードを提供可能としている。
【0019】
本実施形態で使用する円偏光フィルタ102は、カメラ光学系用の汎用品であり、厚さが、0.28〜2.5mmとすることができ、有機系でも無機系でも構わない。なお、本実施形態では、偏光状態調節部102aは、円偏光フィルタ102に円形の開口を形成した円形アパーチャとして構成するものとして説明する。しかしながら、他の実施形態では、円形アパーチャに代えて、偏光特性のないフィルムなどの光学的材料と、円偏光材料とを交互に接合して円形、方形、六角形、八角形の多角形に構成することもでき、同様の機能を提供する限り特定の構成に限定されるものではない。
【0020】
LED103aからの光線は、本実施形態では、光軸に対して約16°42’傾斜して組織に照射される。この傾斜角度は、保護部材101からの乱反射を適切に抑制し、観察視野において輝度の濃淡を生じさせないように設定することができ、検査モジュール115の配置、撮像装置106の光学的構成、その他の要因に応じて適宜設定することができる。
【0021】
組織からの反射光は、円偏光フィルタ102を通過した後、対物レンズ104によりレンズ光学系105により集光され、CCDなどの撮像素子120上に結像される。撮像素子120は、結像された画像を、光電変換してデジタル画像を生成する。生成したデジタル画像は、撮像装置106が搭載する表示部(図示せず)に表示することができ、さらに情報処理装置(図示せず)に送付して、情報処理装置のディスプレイ装置上で、撮像装置106上の表示と非同期または同期的に表示させることができる。
【0022】
図2は、本実施形態の保護部材101、円偏光フィルタ102およびLEDホルダ103の構成を、LED103aおよび偏光状態調節部102aの配置と共に示す図である。保護部材101、円偏光フィルタ102およびLEDホルダ103は光軸201と同心に構成されている。円偏光フィルタ102は、光軸201を中心として回転可能に固定され、LEDホルダ103は、光軸201を中心として筐体115aに固定されている。円偏光フィルタ102は、光軸201に対して回転されLED103aの位置に位置合わせされると、本実施形態では、LED103aからの光が直接照射される直接モードとされる。
【0023】
また、円偏光フィルタ102を回転させ、LED103aを偏光状態調節部102aの間に配置させると、円偏光が組織に向かって照射される偏光モードが提供される。すなわち、本実施形態においては、検査モジュール115を組織から離すことなく、同じ位置で直接モードおよび偏光モードでの検査が可能とされる。
【0024】
図3は、本実施形態の直接モードと、偏光モードとを実現するためのLED103aと、偏光状態調節部102aとの配置の実施形態200を示す図である。
図3(a)が直接モードを与える配置であり、
図3(b)が、偏光モードを与える配置である。
図3(a)に示す直接モードでは、LED103aと、偏光状態調節部102aが位置合わせされており、組織には、LED103aからの光が直接照射される。
【0025】
なお、本実施形態において直接モードとは、LED103aからの光は、内部散乱により直線偏光がランダムに混合した状態(無偏光状態)として組織に照射されるモードである。反射光は、
図3(a)中、円偏光フィルタ102のハッチングした領域を通過して撮像装置106により撮影される。
【0026】
一方、
図3(b)に示す偏光モードは、LEDホルダ103を矢線Aの方向に回転させて、偏光状態調節部102aの位置が、LED103aに重合しない、すなわち、LED103aからの光を、円偏光フィルタ102を通過させ、円偏光状態として組織に照射するモードである。
図3(b)に示す実施形態では、LED103aからの光は、偏光板により好ましい実施形態では、1/4波長板のθ=45°、またはθ=−45°で1/4波長板に入射されて、円偏光とされた後、組織に照射される。
【0027】
偏光モードにおいては、円偏光フィルタ102は、光アイソレータとして機能し、組織からの直接反射光を遮断し、それ以外の反射光を透過させる。このため、偏光モードにおいては効率的に組織からの直接反射を遮断し、組織表面を通過して組織内部まで達して拡散反射した光線を効率的に検出することを可能としている。
【0028】
なお、説明する実施形態では、偏光状態調節部102aがLED103aからの光を偏光させず、それ以外の位置がLED103aからの光を偏光するものとして説明したが、これとは逆に、偏光状態調節部102aが、LED103aからの光を偏光し、それ以外の位置ではLED103aからの光を偏光させない構成、すなわち、例えば、扇形の円偏光材料を放射状に形成した円偏光フィルタ102を使用し、扇形の部分を偏光状態調節部102aとして機能させることもできる。また、偏光状態の調節に際しては、LEDホルダ103を移動させることもできるし、LEDホルダ103は固定しておき、円偏光フィルタを回転可能なフィルタホルダに保持させ、フィルタホルダを回転させる態様を用いることができる。
【0029】
なお、
図3に示した実施形態では、直接モードでは、LED103aからの光は、検出時に1度円偏光フィルタ102を通過し、変更モードでは、LED照射時に1度、検出時にも1度円偏光フィルタ102を通過する。このため、直接モードでは、偏光モードに比較して、LED103aを同一出力で動作させたとすると、約2倍検出光量が大きくなる。この光量の違いは、撮像装置106の絞りを調整することにより対応することもできる。
【0030】
しかしながら、撮像装置106の絞りを調節する操作は、医師の診察において不要な動作を要求することももなり、また何かのはずみで撮影患部の位置ずれを生じさせる可能性もある。このため、本実施形態では、偏光モードでは、LED103aを全部点灯させ、直接モードでは、LED103aのうち、半分を点灯させるように点灯制御することが好ましい。点灯制御は、LEDホルダ103と、筐体115aとの間の電気的接続をLEDホルダ103の回転に応じて調節することにより行うことができる、なお、その他同様の機能を提供する機械的またはソフトウェア的な制御を使用することもできる。
【0031】
図4は、本実施形態のLEDホルダ103と、円偏光フィルタ102と、LEDホルダ103の回転および固定機構の実施形態を示す図である。
図4(a)が平面図であり、
図4(b)が側面図である。
図4(a)に示すように、フィルタ保持部110には磁性体で形成されたノブ110aが形成されている。また、検査モジュール115の筐体115aには、磁石112、113が固定されていて、円偏光フィルタ102のLED103aに対する位置を、変更自在に固定させている。
【0032】
ここで
図4(b)を参照して、円偏光フィルタ102およびLEDホルダ103の構成について説明する。円偏光フィルタ102は、フィルタ保持部材111によりフィルタ保持部110により光学軸を中心として回転自在に保持されている。一方、LEDホルダ103は、筐体115aにより保持されている。このため、検査を行う医師は、ノブ110aに指をかけ、円偏光フィルタ102を回転させることにより、偏光状態調節部102aの位置を、LED103aに重合する位置と、ずれ位置とに相互移動させることが可能である。
【0033】
またLEDホルダ103は、組織に向かって約16°45’の角度で光を照射するように光軸に向けて傾斜して保持され、LED103aからの光401、402を組織に向けて照射している。なお、本実施形態では、LED103aと、保護部材101との間の距離は約60mmとされている。ただし、この距離は、特定の装置の構成に応じて変更することができる
【0034】
図5は、本実施形態のLED103aによる照射光学系を説明する模式図である。LED103aは、組織500に向けて無偏光状態の光または円偏光に偏光された光を照射する。保護部材101を通過した光は、組織500対して上述したように、約16°45’の照射角で照射され、組織500で反射されて反射光とされる。
【0035】
反射光は、直接モードおよび偏光モードの両方のモードで、円偏光フィルタ102を通過した後、対物レンズ104に達する。対物レンズ104に達した反射光は、対物レンズ104により撮像装置106のレンズ光学系105へと進行し、撮像素子120上に結像される。フィルタ保持部110には、ノブ110aが形成されており、偏光状態調節部102aと、LED103aとの相対的な位置を調節自在とさせている。
【0036】
図6は、本実施形態における、直接モードと偏光モードとにおける光検出機構を説明する図である。
図6(a)が円偏光フィルタ102の例示的な構成を示す図であり、
図6(b)は、偏光モードにおける光検出機構を示し、
図6(c)は、直接モードにおける光検出機構を示す。
【0037】
本実施形態で使用する円偏光フィルタ102は、カメラ用の市販品を使用することができ、本実施形態では、市販品の円偏光フィルタ102に偏光状態調節部102aを形成することで、偏光モードと直接モードとを、回転操作により、検査装置100を組織から離すことなく切替できる構成とされている。円偏光フィルタ102は、概略的には、保護フィルム601、604により保護された、偏光板602と、1/4波長板603とを含んで構成されている。LED103aからの光は、紙面上側から円偏光フィルタ102に入射される。
【0038】
LED103aからの無偏光の光は、偏光板602により、1/4波長板603の光学軸に対して例えば、θ=45°の電場ベクトルEの方向を有する光を偏光板602により偏光され、1/4波長板603を通過する。1/4波長板603は、直線偏光の電場ベクトルEを、1/4波長(π/2)位相シフトさせて円偏光とした後、紙面下側に向かって透過させる。
【0039】
以下、
図6(b)、
図6(c)を使用して、本実施形態の光検出機構を詳細に説明する。反射光の検出においては、反射光は、紙面下側から円偏光フィルタ102に入射し、紙面上側に向かって透過する。
図6(b)は、本実施形態における偏光モードの光検出機構を示す。LED103aからの光は、円偏光フィルタ102に入射すると、偏光板602により、例えば1/4波長板603の光学軸に対してθ=45°の電場ベクトルEを有する所定の偏光方向の光が選択的に透過し、1/4波長板603を通過して、円偏光として組織610に照射される。
【0040】
組織610は、光をその表面で反射させるが、照射された光のうち多くの部分は、表皮内部へと侵入し、組織で散乱された拡散反射を生成する。ここで、組織610の表面で直接反射された光は、円偏光の方向が正反対となり、例えば図で示すように右円偏光が、左円偏光として反射される。この反射光は、円偏光フィルタ102の1/4波長板に入射する。
【0041】
この場合、1/4波長板603を通過した光線は、θ=−45°の直線偏光に変換されるので、円偏光フィルタ102の偏光板602の機能により、反射されて検出されることはない。すなわち、本実施形態では、円偏光フィルタ102は、直接反射した光に対する光アイソレータとして機能する。
【0042】
組織内部を通過した右円偏光は、乱反射に伴い、右円(楕円)偏光、左円(楕円)偏光が混合された無偏光状態として円偏光フィルタ102に到達する。1/4波長板603は、この状態にある反射光を、光の進行方向に対する位相φにかかわらず、右円偏光、右楕円偏光いずれも直線偏光に変換する。円偏光フィルタ102の偏光板602は、1/4波長板602により、光学軸に対してθ=45°の直線偏光に変換される限り、右円偏光または右楕円偏光をいずれも透過させることができる。
【0043】
このため、偏光モードでは、効率的に表面反射の影響を低減させ、組織内部からの反射を効率的に測定可能とする。さらに、1/4波長板603は、クロス配置の直線偏光フィルタとは異なり、楕円偏光の反射光でも透過強度の差こそあれ、円偏光フィルタ102を通過可能する。このため、偏光モードにおける反射光の強度は、クロス配置を使用する場合に比較してはるかに改善され、約1000倍程度に改善される。このことは、本実施形態で使用する検査装置100を、低照度、すなわち比較的低電力で動作することを可能とし、装置の小型化を可能とする。
【0044】
また、直接モードでは、LED103aからの光は、実質的に無偏光の光のままで組織610に照射される。この際、組織の表面からの反射光は、この場合には、反射したとしても電場ベクトルEの方向は、実質的に保持され、表面反射光も1/4波長板603、偏光板602を通して透過することが可能である。一方、組織内部で反射された反射光は、組織内部の乱反射により実質的に無偏光状態で反射されるので、1/4波長板603、偏光板602は、反射光のうち、θ=45°で配置された偏光板602を、通過させることができる偏光状態の反射光を通過させる。
【0045】
すなわち、直接モードは、表面反射および拡散反射の両方とも実質的にアイソレートすることなく円偏光フィルタ102を通過させる。ところで、直接反射した反射光の方は、拡散反射の場合に加え、はるかに効率的に対物レンズ104に向けて反射される。一方、拡散反射は、表皮内での乱反射により、その進行方向が分散され、対物レンズ104への反射率自体は弱いものとなる。このような反射率を考慮すれば、直接モードでは、直接反射が主に観察されるものと考えられる。
【0046】
すなわち、直接モードは、より直接反射を検出しやすくし、偏光モードは、拡散反射をより強調して観測されるようにするものということができる。本実施形態を特定の理論と関連付けるものではないが、
図6に説明した光検出機構が、本実施形態において偏光モードにおいて良好に拡散反射を検出することができる要因であるものと推定される。
【0047】
図7は、本実施形態の検査モジュール115の第2の実施形態を示す。第2の実施形態では、撮像装置106と、検査モジュール115とは別構成とされ、医師は、より軽量な検査モジュール115を手操作して検査が可能となる。この結果、医師といった検査者に対する捜査負担を軽減することが可能とされている。
【0048】
第2の実施形態の検査モジュール115は、さらに
図1に示した検査モジュール115に対して接眼部710が追加されていて、対物レンズ104で集光された光を、凹レンズ711で略平行な光線として、医師による直接観察が可能とされる。また、さらに他の実施形態では、接眼部710に対して光ファイバーを接続し、遠隔して設置された撮像装置106に対して画像を送付し、検査モジュール115による画像を、撮像装置106本体の液晶ディスプレイや情報処理装置のディスプレイ装置上で医師が確認する構成とすることができる。このため、
図7に示した実施形態では、医師といった検査者に対して不自然な体勢を強いることなく、検査に注意力を払わせることが可能となる。
【0049】
図7に示した実施形態では、検査装置100のうち手操作するのを検査モジュール115程度まで低減することが可能となり、より操作性が改善すると共に、画像の確認も撮像装置106の幾何学的配置とは独立して行うことが可能とされるので、より取扱性が改善できる。
【0050】
図8は、本実施形態の組織検査を行うための検査装置100の制御方法のフローチャートである。
図8の処理は、ステップS800から開始し、ステップS801で検査モジュール115を通してLED103aからの光を直接組織に照射する。ステップS802では、円偏光フィルタを通して反射光をデジタル的に記録し、第1のデジタル画像を記録する。ステップS803では、偏光状態調節部を回転させ、LED103aからの光を、円偏光フィルタ102を通して組織に照射する。
【0051】
ステップS804では、円偏光フィルタ102を通して反射光をデジタル的に記録し、第2のデジタル画像を生成する。ステップS805では、第1のデジタル画像と第2のデジタル画像とを患者の個人識別情報に対応付けて登録する。この際、登録は、撮像装置106自体に登録することもできるし、撮像装置106に接続された情報処理装置に直接記録することもできる。
図8の制御方法は、その後ステップS806で終了する。
【0052】
図8に示した実施形態では、医師などによる観察は、撮像装置106に搭載された液晶ディスプレイ上で行行い、撮影した画像を情報処理装置上で、患者に検査後に医師が患者に説明するものである。
【0053】
図9は、本実施形態の組織検査を行うための検査装置100の第2の実施形態の制御方法のフローチャートである。
図9の処理は、ステップS900から開始し、ステップS901で検査モジュール115を通してLED103aからの光を直接組織に照射する。ステップS902では、円偏光フィルタ102を通して反射光をデジタル的に記録し、第1のデジタル画像を生成する。それと同時に、撮像装置106は、取得した画像を情報処理装置にも送付する。ステップS807では、情報処理装置のモニタ上に画像を表示させ、医師による説明が、検査の進行と同時に可能とされる。
【0054】
さらに、ステップS904では、LED103aからの光を、円偏光フィルタ102を通して組織に照射する。ステップS904では、円偏光フィルタ102を通して反射光をデジタル的に記録し、第2のデジタル画像を生成する。それと同時に、撮像装置106は、取得した画像を情報処理装置にも送付する。ステップS908では、情報処理装置のモニタ上に画像を表示させ、医師による説明が、検査の進行と同時に可能とされる。
【0055】
その後、ステップS905では、第1のデジタル画像と、第2のデジタル画像とを患者の個人識別情報に対応付けて登録する。この際、登録は、撮像装置106自体に登録することもできるし、撮像装置106に接続された情報処理装置に直接記録することもできる点は、第1の実施形態と同様である。その後、
図9の制御方法は、ステップS906で終了する。
【0056】
第2の実施形態では、医師が情報処理装置のディスプレイ装置を示しながら検査と同時に患者に対してインフォームドコンセントを行うことが可能となり、より患者満足度の高い医療が可能とされる。また、医師は、撮像装置106の空間的位置から離れてより拡大された画像を使用して検査を行うことが可能となり、検査品質も向上させることができる。
【0057】
図10は、本実施形態の検査装置100を使用する検査システム1000の実施形態を示す。本実施形態の検査システム1000は、本実施形態の検査装置100と、ディスプレイ装置、キーボード、マウスといった要素を含む情報処理装置1010とを含んで構成される。情報処理装置1010は、本実施形態のプログラムを実行するためのCPU、メモリ、および記憶装置1020を含んで構成され、本実施形態の各ステップを実行するように、情報処理装置を機能させる。
【0058】
なお、検査装置100と、情報処理装置1010との間の接続は、上述したように、USB接続とすることもできるし、WiFi接続とすることもできるし、その他IEEE802.11xによる無線LAN接続を使用して接続することができる。なお検査装置100と、情報処理装置1010との間の接続は、ユーザの要求に応じて適宜変更することができる。
【0059】
検査装置100は、患者1001の患部1002に接触しており、その画像が、説明する実施形態では、撮像装置106本体の他、情報処理装置のディスプレイ装置にも表示されている。ディスプレイ装置に表示された患部1002の画像は、撮像装置106が搭載する液晶ディスプレイ装置よりも拡大表示することができるので、より鮮明で高い精度での検査が可能とされている。
【0060】
また、情報処理装置1010は、ハードディスクといった記憶装置1020を備えており、直接モードおよび偏光モードで測定したデジタル画像を、個人情報に紐づけて、例えばデータベースの形式で格納する。本実施形態によれば、少なくとも1人の患者1001に対して複数生成される直接モードおよび偏光モードの画像を患者1001の個人識別情報に紐づけて一連の操作として記録できるので、診断内容の取り違えなどのミスを効率的に防止できる。
【0061】
この結果、本実施形態によれば、医師の注意力を、情報処理装置の操作に割くことなく、診断のために向けることが可能となり、さらに検査の品質を改善することが可能となる。
【0062】
図11は、本実施形態による直接モードおよび偏光モードによる患部映像の相違を説明する概略図である。
図11に示すように、患者1001の皮膚組織は、皮膚表面の他、表皮内部の真皮組織を含んでおりこれらが組織を構成する。このうち、皮膚疾患は、表皮部分だけではなく、その下に続く真皮組織にまで達する場合がある。このため、表面的な観察では、患部1002は、部位1002aのように表面観察からは、見えなくとも、患部1002は、部位1002bのように真皮組織にまで内部深くに浸潤しているケースもある。
【0063】
直接モードで観察する場合、表皮近傍に存在する部位1002aと、内部の部位1002bからの反射とが十分分離できず、また、光学的にも表皮からの直接反射の方が高い強度で検出されるので、真皮まで到達した拡散反射を充分なS/N比で観察するには向かない。このことから、表皮の部位1002aに関する画像は明瞭に観測されるものの、内部の真皮の部位100bについては、
図11(a)に示すように低いコントラストでしか観察されないか、または観察されない場合もあり、またその広がり、形状、色合い、細胞壁浸潤に伴う糜爛、滲出についても明確な診断ができない。
【0064】
一方で、偏光モードで患部1002を観察すると、
図6を使用して説明したように、より強度の強い直接反射は、円偏光フィルタ102の光アイソレータ機能によりカットされ、組織内部の部位1002bからの反射光が検出される。このため、ディスプレイ装置上に表示される患部画像は、組織内部の部位1002bを明確に示すものとなり、より検査制度が向上できる。
【0065】
なお、本実施形態では、直接モードと、偏光モードとの間で、背景の照度を調節し、概ね同様の明るさの下で、比較判断することができるように、LED103aの輝度を調整することもできる。輝度の調整は、例えば、ノブ110aに切り替えスイッチを連動させておき、直接モードの場合には、低光量となるように、LED103aの点灯数を例えば半数とし、偏光モードでは、全数点灯させる構成を採用することもできる。
【0066】
さらに他の実施形態では、特定の検査モジュール115の特性に対応して、背景の輝度が同程度になるように、検査モジュール115にLED103aの輝度を調整するためのボリュームを配置することもできる。その他、LED103aの輝度を調整するために使用することができるこれまで知られたいかなる方法でも使用することができる。
【0067】
また、本実施形態では、検査モジュール115の位置は、直接モードおよび偏光モードで変わらないので、患部の浸潤の程度を位置ずれに配慮することなく判断することが可能となり、医師の検査負担を軽減し、さらにより高精度の診断を可能とする。
【0068】
図12は、
図10に示した情報処理装置1010が記憶装置1020に格納するデータの実施形態を示す。本実施形態では、画像データは、直接モードおよび偏光モードのペアとして生成され、時系列的にdata1、data2,,,などとして生成される。またこれらのデータは、診断終了時に確実にセットとして患者1001の個人識別情報に対応付けて格納される。このため、医師は、データを誤った対応付けで登録することがなくなり、結果の取り違えなどを予防することが可能となる。また、撮影の年月日も正確に対応付けて記録することができるので、継続的な診断の精度を高めることも可能となる。
【0069】
以下、
図13〜
図15を使用して、本実施形態の検査装置100に装着して使用されるライトガイド1300について説明する。
図13は、本実施形態のライトガイド1300の側面図を示す。本実施形態のライトガイド1300は、検査装置100の検査モジュール115の先端に装着されて、狭い患部領域に対してLED光を照射し、組織患部の狭い領域から反射した反射光を、カメラの対物レンズへと導く。
【0070】
図14は、本実施形態のライトガイド1300の構成を示す分解図である。ライトガイド部材1310と、アダプタ1320とから構成される。ライトガイド部材1310は、例えばポリカーボネート樹脂、PMMAなどの光学グレードの樹脂材料を削り出して構成されていて、中心軸を中心として延びた導光部1310aと、導光部1310aに連続し、ライトガイド部材1310を、ホルダ1320に保持させるための基部1310cとからなる。導光部1310aは、その先端面と、基部1310cの基部面が、光学的グレードの平坦面とされていて、透過する光を散乱させることなく、また不必要に減衰させないようにされている。
【0071】
導光部1310aの先端面は、組織患部といった領域に接触し、検査モジュール115を通して照射される光を患部に照射する。また、導光部1310aは、組織からの反射光を、偏光フィルタ保持部を通してカメラの対物部へと導いている。
【0072】
さらに、導光部1310aの外面および基部1310cの外面は、外部からの迷光が侵入しないように、摺りガラス加工が施されていて、患部以外を除いた外部からの光線が、導光部1310aの内部に侵入しないように構成されている。
【0073】
アダプタ1320は、概ね中空の円錐台の形状とされていて、その断面が
図14に示されている。アダプタ1320の内面形状は、検査モジュール115の外面形状に適合する形状とされていて、検査モジュール115に摩擦力および収縮力で、しっかりと検査モジュールの先端部に着脱自在に装着することができる。
【0074】
また、
図14では、アダプタ1320の内部構成と、検査モジュール115に装着される側の底面構造とを、ホルダ1320の内部形状とを対応付けて示す。アダプタ1320は、柔軟な材料、例えば白色のシリコーン樹脂などから形成され、その一端にライトガイド部材1310を保持し、他端が円錐台形状の検査モジュール115の先端に装着され、アダプタ1320の材料の摩擦抵抗で、ライトガイド部材1310を着脱自在に保持可能としている。
【0075】
アダプタ1320の内面は、脱着時の摩擦抵抗を低減させる目的で、一部が円周方向に肉薄に形成されている。また、アダプタ1320の一端には、ライトガイド部材1310の基部1310cを保持するための開口が形成されており、アダプタ1320を形成するシリコーン樹脂の弾性力により、ライトガイド部材1310が保持される。
【0076】
一方、アダプタ1320の大径側の端部は、検査モジュール115の円錐台の先端に装着可能なテーパ形状とされており、ライトガイド部材1310の基部1310cを、偏光フィルタ保持部の先端部に密着させるように固定しつつ、カメラに保持させている。
【0077】
本実施形態のライトガイド1300の構成を、
図14を使用して説明する。ライトガイド部材1310の基部1310cを、アダプタ1320の小径側に形成された開口部にはめ込み、基部1310cに形成されたノッチをアダプタ1320の小径側の開口部の縁部により保持させることで、カメラ用ライトガイド1300が形成される。アダプタ1320の大径側の開口は、検査モジュール115の先端に摩擦力により固定される。
【0078】
本実施形態では、ライトガイド部材1310の中心の導光部1310aは、光学的に透明であり、下地までほぼ光学的損失無く光を透過させる。一方、ライトガイド部材1310の導光部1310aの外面から基部1310cまでは、摺りガラス状処理されていて、周囲からの迷光が導光部1310aに入り込まないようにしている。このため、ライトガイド部材1310の導光部1310a内部へと、外部からの光線が入り込むことを防止することができる。さらに、導光部1310aの内部から基部1310cまでは光学的に透明なので、効率的にライトガイド部材1310を通してLED光を照射し、また反射光を撮像装置106へと導くことが可能となる。
【0079】
図15は、本実施形態のライトガイド1330を検査用モジュール115に装着したときの使用態様を示す図である。ライトガイド1330は撮像装置116に装着された検査モジュール115の先端部に装着されて使用される。ライトガイド1330の使用時には、ライトガイド1330の先端部にある導光部1310aが、狭小な患部、例えば指の間、脇の下、足の裏、口腔内、耳孔内などの組織に接触するように近接して配置される。撮像装置116は、組織における患部の画像を外部からの迷光を排除しながら撮影するのを可能としている。
【0080】
図16および
図17を使用して、本実施形態のスケール1600について説明する。本実施形態のスケール1600は、検査モジュール115の先端に装着され、予め決まった寸法、例えば1mmの目盛りを、撮像装置116によって患部とともに、撮影可能とする。このため、撮像装置116により患部を撮影する医師は、撮影した画像からメモリの寸法を使用して直接患部の病変の大きさや面積を知ることができる。
【0081】
以下、
図16を使用して本実施形態のスケール1600を詳細に説明する。本実施形態のスケール1600は、アダプタ1320に、スケール部材1610をはめ込んで、アダプタ1320の上辺のレベルにスケール1610を保持させた構造となっている。スケール部材1610は、上面および底面が光学的グレードとされたプラスチック材料から削出し加工されており、底面には、例えば1mm間隔のメモリがレーザ加工により刻み込まれている。底面は、上面よりも大径に形成されていて、上面と底面との間に形成された凹部が、ホルダの上部に形成された開口にはめ込まれてスケール1610をアダプタ1320が保持することができる形状とされている。
【0082】
スケール部材1610にスケール部材1610の底面には、視野を取り囲むように、所定の間隔、例えば1mmの目盛り1610aが刻まれており、目盛り1610aは、光学的に視認できるように、目盛り1610a以外の領域に比較して色または透明度が変えられている。色は、例えば黒とすることができるが、光学的に識別できるように、透過度を変化させることができれば、白色でも構わない。
【0083】
図16を使用して本実施形態のスケール1600の構成をさらに詳細に説明する。スケール1600は、スケール部材1610を、アダプタ1320の上部に形成した開口にはめ込んで、スケール部材1610をアダプタ1620に保持させることで構成される。スケール部材1610の上面の径は、アダプタ1620の上部開口と略同一の径とされている。
【0084】
またスケール部材1610の底面の径は、アダプタ1620の内側平坦部の径よりも僅かに小さく形成されており、スケール部材1610が、検査モジュール115の先端面に確実に面接触して、アダプタ1320の形成する平面と正確に平行に、がたつきなく保持されることを可能としている。アダプタ1320は、
図13で説明したと同一の構成、寸法のものを使用することができる。
【0085】
アダプタ1320は、概ね中空の円錐台の形状とされていて、
図16には、その断面が示されている。また、
図16には、アダプタ1320の内部構成と、底面とを対応付けて示す。アダプタ1320は、柔軟な材料、例えば白色のシリコーン樹脂などから形成され、その一端にスケール部材1610を保持し、他端が円錐台形状の検査モジュール115の先端に装着され、アダプタ1320の材料の摩擦抵抗で、スケール部材1610を偏光フィルタ保持部の先端に着脱自在に保持させている。
【0086】
アダプタ1320の内面は、脱着時の摩擦抵抗を低減させる目的で、一部が円周方向に肉薄に形成されている。また、アダプタ1320の一端には、スケール部材1610を保持するための開口が形成されており、アダプタ1320を形成するシリコーン樹脂の弾性力およびスケール部材1610の上面と、底面と、の間に形成された凹部により、スケール部材1610が着脱自在に保持される。
【0087】
一方、ホルダ20の大径側の端部は、検査モジュール115の円錐台形状の先端に装着可能なテーパ形状とされており、スケール部材1610を、検査モジュール115の先端部に密着させるように固定しつつ、撮像装置116に保持させている。
【0088】
ここで、本実施形態のスケール1600の機能を説明する。スケール1600は、光学的に透明無色のスケール部材1610が、白色のシリコーンゴム製のアダプタ1620にはめ込まれて構成されている。撮像装置116が、組織患部の画像を撮影する場合には、スケール1610の目盛り1610aが患部とともに撮影されるので、医師は、画像から直接患部の大きさを得ることができる。
【0089】
図17は、本実施形態のスケール1600を、検査装置100に装着した場合の実施形態を示す。スケール1600は、撮像装置116の検査モジュール115の先端部に装着されて使用される。スケール1600の使用時には、スケール1600が、患部に接触するように近接して配置される。撮像装置116が、患部の画像を撮影すると、それとともにスケール1610aが画像に映り込み、画像から患部の大きさを取得することが可能となる。また、スケール1600は、撮像装置116に装着された検査モジュール115から着脱自在なので、使用後、スケール1610とアダプタ1320を分解し、エタノールなどによる消毒が可能とされている。
【0090】
本実施形態のライトガイド1300およびスケール1600は、医師などの必要に応じて検査モジュール115に装着して使用することができ、本実施形態の検査装置の利用性を改善することができる。また、アダプタ1320は、ライトガイド部材1310やスケール1610を装着することなく、検査モジュール115の先端に装着して組織を観察する場合にも使用できる。アダプタ1320を検査モジュール115の先端に装着することで、患部近傍の毛細血管などに対する圧力を低減でき、より、血流量の変化を伴わずに観察が可能となる。
【0091】
これまで本発明の実施形態を以て説明してきたが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。