(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
路面を切削可能な路面切削機と、路面切削機で切削された切削廃材を車体前後方向に搬送可能な切削物搬送装置と、車体上部に設けられた運転席と、車体側部に設けられ上記路面切削機の作動を指示する作動操作子と、を備える路面切削車両の安全監視装置であって、
車体前方を撮像する前方撮像部と、車体後方を撮像する後方撮像部と、上記路面切削機で切削される路面部分及び上記路面切削機の一部を撮像する切削撮像部と、
上記路面切削車両の前進・後進・停止という車両移動状態を検出する車両状態取得部と、
上記路面切削機への作動指示を出力する作動操作子の操作状態を検出する作動操作検出部と、
上記運転席若しくはその近傍に配置された運転席モニタと、
上記車体側部の両側にそれぞれ設置された左右の作業モニタと、
上記車両状態取得部が取得した車両移動状態と上記作動操作検出部が検出した作動操作子の作動状態と各モニタの設置位置とに応じて、各モニタに表示する画像を、上記前方撮像部、上記後方撮像部及び上記切削撮像部がそれぞれ撮像した画像から自動選択する画像選択部と、を備えることを特徴とする路面切削車両の安全監視装置。
上記画像選択部は、上記作動操作検出部の検出に基づき路面切削の作業状態と判定し且つ車両が前進中と判定した場合、上記左右の作業モニタに表示する画像として、前方撮像部及び切削撮像部が撮像した画像を選択し、且つ上記運転席モニタに表示する画像として、前方撮像部が撮像した画像を選択する第1画像選択モードを有することを特徴とする請求項1に記載した路面切削車両の安全監視装置。
上記画像選択部は、上記作動操作検出部の検出に基づき路面切削の作業状態と判定し且つ車両が停止中と判定した場合に、左側の作業モニタに表示する画像として、右側の前方撮像部、右側の切削撮像部及び後方撮像部が撮像する画像を選択し、右側の作業モニタに表示する画像として、左側の前方撮像部、左側の切削撮像部及び後方撮像部が撮像する画像を選択し、上記運転席モニタに表示する画像として、左右の両前方撮像部及び後方撮像部が撮像した画像を選択する第2画像選択モードを有することを特徴とする請求項3に記載した路面切削車両の安全監視装置。
上記画像選択部は、上記作動操作検出部の検出に基づき路面切削の作業状態と判定した場合、上記作業モニタへの表示をオンにすることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した路面切削車両の安全監視装置。
【背景技術】
【0002】
例えば、道路や橋梁路面などのアスファルト舗装(路面)は、車両走行などによって、経時的にわだち掘れやひび割れなどの劣化が生ずる。このため、例えば夜間などの交通量の少ない時間帯を利用して、定期的にあるいは随時その路面の修繕工事が行われる。
このような路面の修繕には、ロードカッターなどと称される専用の路面切削車両が使用され、車両に搭載された路面切削装置によって、路面の表層部分を切削除去する。その後、必要に応じて適宜、その切削路面上に新しいアスファルト合材などによって再舗装する。
【0003】
路面切削車両は、例えば、特許文献1などに記載の構造となっている。すなわち、この路面切削車両は、走行用の前後輪で自走可能になっていると共に、車体に対し昇降可能に設けられた路面切削機(カッター部)で路面を切削可能となっている。そして、路面切削車両は、自走しながら、路面切削機によってアスファルト舗装路面を削り取る(はつる)と共に、削り取った切削廃材を搬送コンベアによって車体前方などに連続して搬送する。
【0004】
このような産業車両による作業においては、車両周囲の安全を確認しながら作業を行う必要がある。
これに対し、例えば特許文献1には、ロードローラのような産業車両を対象とし、車両外周の前方・後方・側方をそれぞれカメラで撮像し、その複数の撮像画像を合成して、車両周囲の俯瞰画像を運転席のモニタに表示する産業車両の周囲安全監視装置が記載されている。これによって、運転者は、車両周囲の状態を監視しながら車両の運転を行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
<構成>
本実施形態の路面切削装置を搭載した路面切削車両1は、
図1に示すように、車体2と、走行用の車輪6と、車体2に対し昇降可能に支持された路面切削機3と、路面切削機3を昇降するアクチュエータ4と、車体前後方向に延在する搬送コンベア5とを備える。なお、運転席9が車体上部に設けられている。
【0011】
搬送コンベア5は、路面切削機3が削り取った切削廃材を、車体2の前後方向前方に搬送するコンベアであって、車体2に支持されている。そして、路面を切削する切削作業状態では、
図1のように、搬送コンベア5は、車体前後方向前方に延ばした状態に設定され、切削に伴う切削廃材をトラックの荷台などに搬送可能とする。この搬送コンベア5は切削物搬送装置を構成する。
【0012】
本実施形態の走行用の車輪6は、車体2の前側に設けられた前輪6Aと、車体2の後側に設けられた後輪6Bとから構成される。前輪6Aは、図示しないステアリング機構を操作することで操舵可能となっている。後輪6Bの車軸は変速機を介してエンジンに連結しており、エンジンからの駆動力で回転駆動する駆動輪を構成する。なお、路面切削車両1の走行形態はこれに限定されず、前輪6A側が駆動輪でも良いし、クローラなどによって自走する車両であっても良い。
【0013】
路面切削機3は、前輪6Aと後輪6Bとの間において、車体2下部に配置される。路面切削機3は、車体幅方向に軸を向けたカッタードラムの周面に多数のカッタービットが設けられて構成される。そのカッタードラムは、機枠7に回転自在に支持されていると共に、不図示の油圧モータによって回転駆動可能に構成されている。機枠7は、例えば下方が開放した箱状の枠体である。
【0014】
路面切削機3を昇降するアクチュエータ4は、左右一対の昇降用油圧シリンダで構成される。各昇降用油圧シリンダは、シリンダ本体が軸を上下に向けた状態で車体2に取り付けられると共に、シリンダロッドがシリンダ本体から下方に延在している。そのシリンダロッドの先端部が、機枠7に連結している。これによって、昇降用油圧シリンダ4A、4Bのストローク量に応じて、機枠7、すなわち路面切削機3の車体2に対する上下位置(路面に対する位置)が調整されて、路面切削機3による切削深さが調整される。路面切削機3は、上方の待機位置と切削作業状態の下方位置とのいずれかに位置調整される。
【0015】
また、車幅方向に斜行して、車体下部と機枠7を連結する第3の油圧シリンダ(不図示)を備え、その第3の油圧シリンダを駆動することで、機枠7,すなわち路面切削機3の車幅方向位置が左右にシフト可能となっている。なお、昇降用油圧シリンダ4A、4Bの各シリンダ本体は少なくとも車幅方向に揺動可能な状態で車体に支持されている。
ここで、機枠7の前側は、車体2の前後方向に延在する平行リンク8を介して車体2に連結する。平行リンク8は、車幅方向両側にそれぞれ一対づつ配設されている。平行リンク8を設けることで、機枠7は、昇降に伴う姿勢が一定に保持されるようになっている。
【0016】
アクチュエータを介した路面切削機3の昇降や回転駆動の指示は、指示盤20に設けられたボタンなどの操作子によって実行可能となっている。指示盤20が路面切削機3の操作子を構成する。
以上のような構成の路面切削車両1に安全監視装置が搭載されている。その安全監視装置について説明する。
【0017】
図2に示すように、運転席9や車体2の左右側面の所定位置には、車両の走行を指示する走行用の操作子や、路面切削の設定値や切削を操作するコントロールパネル21、22が設けられている。そして、オペレータが、コントロールパネル21、22を操作することで、車両の走行状態などが制御可能となっている。なお、切削の設定モードには手動切削モードと自動切削モードとがある。
【0018】
コントロールパネル22は運転席9の座席前側に設けられる。車体側方の各コントロールパネル21は、路面切削機3の前側に設けられて、路面切削機3による路面の切削状況が視認可能な位置にある。具体的には、左側のコントロールパネル21近傍からは、路面切削機3の左側部分での路面の切削状態(現在の切削部分と次に切削される路面部分)が視認可能であり、右側のコントロールパネル21近傍からは、路面切削機3の右側部分での路面の切削状態(現在の切削部分と次に切削される路面部分)が視認可能である。
【0019】
また、車体には、
図2に示す概略図のように、左右の前方カメラ30、後方カメラ32及び左右の作業確認用カメラ31が設けられている。
左右の前方カメラ30は、車体前部の左右両側に配置され、各前方カメラ30の光軸が、車体前方に向かうにつれて下側(地面側)に向かうように設定されている。これによって、少なくとも車体前方の路面を撮像可能となっている。左右の前方カメラ30は左右の前方撮像部を構成する。
【0020】
後方カメラ32は、車体後部の幅方向中央部に設けられ、カメラの光軸が、車体後方に向かうにつれて下側(地面側)に向かうように設定されている。これによって、少なくとも車両後方の路面を撮像可能となっている。後方カメラ32は後方撮像部を構成する。
左右の作業確認用カメラ31は、車体側方であって路面切削機3の前側にそれぞれ設けられている。本実施形態では、左右の作業確認用カメラ31は各コントロールパネル21の近傍に設けられている。各作業確認用カメラ31は、カメラの光軸が、車体後方に向かうにつれて下側(地面側)に向かうように設定されて、設置側において、路面切削機で切削される路面部分及び路面切削機の一部であるカッタ周りを撮像可能となっている。作業確認用カメラ31は切削撮像部を構成する。
【0021】
また、路面切削車両1は、画像表示部として運転席モニタ41と左右の作業モニタ40を有する。
運転席モニタ41は、運転席9において、コントロールパネル22の近傍に配置されていて、運転席9に着座した運転者から運転席モニタ41が視認可能な位置に設置されている。
【0022】
また、左右の作業モニタ40は、対応するコントロールパネル21の近傍に配置されている。具体的には、対応するコントロールパネル21よりも路面切削機側に配置されていて、コントロールパネル21側に位置するオペレータが、路面切削機と共に作業モニタ40が視認可能となっている。
また、本実施形態の路面切削車両1は、安全監視コントローラ50を備える。
安全監視コントローラ50は、
図3に示すように、車両状態取得部50A、作動操作検出部50B、画像選択部50C及び画像供給部50Dを備える。
【0023】
車両状態取得部50Aは、上記路面切削車両の前進・後進・停止という車両移動状態を検出する。車両状態取得部50Aは、例えば車両の前後進などを指示するシフトレバーの位置で車両移動状態を検出する。車速センサなどで実際の車両の移動を検出するようにしても良い。
作動操作検出部50Bは、路面切削機への作動指示を出力する作動操作子の操作状態を検出する。作動操作検出部50Bは、例えば、路面切削機が待機位置から路面側に降下している状態と判定すると切削作業状態と判定する。
【0024】
画像選択部50Cは、車両状態取得部50Aが取得した車両移動状態と、作動操作検出部50Bが検出した作動操作子の操作状態と、各モニタの設置位置とに応じて、各モニタに表示する画像を個別に選択する。すなわち、画像選択部50Cは、表示するモニタ毎に、左右の前方カメラ30、上記後方カメラ32、及び左右の作業確認用カメラ31がそれぞれ撮像した画像のうちから、表示するモニタに応じた画像を自動選択する。
【0025】
本実施形態の画像選択部50Cは、車両移動状態と切削作業状態とよって表示する画像を、
図4に示すような表に合わせて各モニタに表示する画像を選択する。
図4に示すような情報は、記憶部に記憶しておけばよい。具体的には、車両移動状態と切削作業状態とモニタの設置位置とによって、モードA〜モードGの7種類の画像選択パターンに区分して画像を選択する。
【0026】
図4で示される各モードと選択される画像との関係は、次の通りである。
モードA:左右の前方カメラ30及び後方カメラ32が撮像した画像
モードB:左右の前方カメラ30が撮像した画像
モードC:後方カメラ32が撮像した画像
モードD:右の前方カメラ30B、右の作業確認用カメラ31B及び後方カメラ32が撮像した画像
モードE:左の前方カメラ30A、左の作業確認用カメラ31A及び後方カメラ32が撮像した画像
モードF:右の前方カメラ30B及び右の作業確認用カメラ31Bが撮像した画像
モードG:左の前方カメラ30A及び左の作業確認用カメラ31Aが撮像した画像
【0027】
ここで、モードB、F、Gの組合せが第1画像選択モードに対応する。モードA、D、Eの組合せが第2画像選択モードに対応する。
また、この
図4に示すモードの区分けでは、一つのモニタに表示するために選択される画像が3個以内の画像となっている。
画像供給部50Dは、画像選択部50Cで選択された画像データを選択されたモード毎に一つの画面用の画像に編集した後に、対応するモニタに供給する。
【0028】
例えば、2つの画像が選択されてモニタに表示する場合には、
図5(a)のように、2つの画像を左右に並べて表示する。
図5(a)は、モードFの場合の例である。また、3つの画像が選択されてモニタに表示する場合には、例えば
図5(b)のように、上側に2つの画像を表示し、下側に1つの画像を表示する。なお、3画像を表示する場合には、後方カメラ32が撮像した画像が必ず選択されているので、
図5(b)のように、下側に後方カメラ32が撮像した画像を配置することが好ましい。
【0029】
<動作その他>
本実施形態の安全監視装置は、各モニタに表示する画像選択は、車両移動状態と切削作業状態とモニタ設置位置によって、
図4に示す条件で行われる。但し、安全監視コントローラ50によるモニタ表示制御は、車両のイグニッションがオンとなっている場合や、モニタ表示作動開始ボタン(不図示)などでモニタ表示制御中と判定された場合に実行される。
【0030】
路面切削車両1は、切削する路面の作業領域まで移動中や、切削領域から撤退する場合などの回送状態では、路面切削機3は上方の待機位置に格納された状態となっている。この回送状態では、
図4に示すように、左右の作業モニタ40の表示をオフとし、運転席モニタ41に対し、車両移動状態に応じて、モードA〜Cのいずれかのモードの画像が選択されて表示される。例えば、停止時には、車体の左右前方及び後方の状態がモニタに表示されて、車両移動可能方向の状態が確認される。なお、運転席9は、上方の高い位置にあるため、車体側方は直接確認しやすい。又、車両前進中は、運転席モニタ41には、車体の左右前方の2画面が表示される。なお、切削作業状態であっても、運転席モニタ41には、車両移動状態に応じて、モードA〜Cのいずれかのモードの画像が選択されて表示される。
【0031】
一方、路面切削機が待機位置から降下して切削作業状態の場合には、オペレータは、例えば、路面切削時の基準となる側の車体側方に位置して、路面切削機による切削状態を確認する。
例えばオペレータが車体の左側の側面におけるコントロールパネル21Aに位置して操作する場合には、左側の車体前方や、路面切削の左側は直接視認可能であるが、右側の車体前方や路面切削の右側は直接視認することは困難である。これに対し、本実施形態では、左側の車体側方に設置された作業モニタ40Aには、車両移動状態に応じてモードD、F、Cのいずれかのモードの画像が自動選択されて表示されて、走行状態に応じて画像が自動的選択されて切り替わりつつ車体の死角となっている箇所の状態を確認することが出来る。しかも、車両移動状態の変化に応じて画像の切換が行われることから、オペレータを煩わせることもない。
【0032】
例えば、切削作動状態で車両が前進中の場合には、左側の作業モニタ40Aには、右側の車体前方及び右側の切削状態の画像が自動選択されて表示される。これによって、車体の左側側方で操作するオペレータは、右側の車両前方の状態や路面切削機による右側の切削周りの状態も監視しながら路面の切削作業を行うことが可能となる。また、このとき左側の作業モニタ40Aに表示される画像は2つだけであるので、各画像の表示が必要以上に小さく表示されることも回避される。
【0033】
またオペレータは、路面の状況に応じて、切削位置を車幅方向に適宜シフトさせて切削する必要がある。例えば
図6のように、塀、歩道、縁石などの既設構造物60のきわに沿った切削作業において、進行方向前方のグレーチングや電柱61を避けるために、路面切削機3を左右方向に移動させて作業を行う必要もある。
このとき、必ずしも避けたいもののある場所に作業員が居られるわけではない。このとき、本実施形態では、例えば
図6の左側に位置するオペレータ62が路面切削機3を左右にシフトさせる際に、作業員63の居る反対側(
図6では右側)の状況をモニタで監視しながら路面切削機3を左右方向に移動させることが可能となり、右側の作業員63が挟まれる心配はなくなる。また、路面切削機3だけを左右にシフト出来るため、路面切削機3の位置を左右にシフトさせる際に、路面切削車両1そのものを左右方向に移動させるわずらわしさもない。
【0034】
更に、前進していた車両が停止すると、左側の作業モニタ40Aの表示が、自動的に3分割表示に切り替わり、モードDの表示となって車体後方の状態も併せて監視可能となる。
このように、本実施形態の安全監視装置は、運転席9とは別に車体側方にもモニタを配置し、切削作業状態と車両移動状態の両方に応じて、各モニタの設置位置によって死角になると想定される箇所の画像が、走行状態などによって自動的に切り替わりつつ、各モニタに表示される。
【0035】
この結果、本実施形態では、運転席9以外にもモニタを設定することで、複数の箇所で安全確認のための監視(モニタリング)が可能となる。
更に、車両の走行状態等に応じて、そのモニタに対し、当該モニタの設置位置に対し適切な画像を選択して表示することで、必要以上に表示する各画像が小さくなることを回避可能となる。また選択する画像を自動選択させることで、オペレータに対し、画像選択のための操作の煩わしさを低減可能となる。