(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0040】
(第1実施形態)
まず、
図1から
図8を参照して、本発明の第1実施形態に係るウィング開閉装置100,101の全体構成について説明する。
【0041】
ウィング開閉装置100,101は、
図1に示すように、荷室4を覆う左右一対のウィング2,3を備えたトラック車1に搭載される。一対のウィング2,3は、それぞれ荷室4の上部に設けられる回動軸5を介して荷室4に回動自在に連結される。
【0042】
左右のウィング2,3は、トラック車1に設けられる一対の作動スイッチ6,7(
図2参照)が作業者によって押されることにより、ウィング開閉装置100,101によってそれぞれ独立して上下に開閉される。左右のウィング2,3は同時に開閉されることはなく、どちらか一方のウィング開閉装置100,101の作動中には他方のウィング開閉装置100,101は作動しないように構成される。
【0043】
左右のウィング2,3を開閉するウィング開閉装置100,101は、互いに対称構造を有して同様の作動をする。このため、以下では、主に左側のウィング2を開閉するウィング開閉装置100について説明し、右側のウィング3を開閉するウィング開閉装置101の説明は省略する。
【0044】
図2に示すように、ウィング開閉装置100は、電力供給によって回転する電動モータ11を一体的に有し電動モータ11の回転によって伸縮作動してウィング2を開閉する一対の電動アクチュエータとしての電動油圧シリンダ10と、一対の電動油圧シリンダ10の作動を制御するコントローラ30と、一対の電動油圧シリンダ10の作動状態をそれぞれ検出する一対の検出部40と、を備える。
【0045】
一対の電動油圧シリンダ10は、
図1に示すように、荷室4内の前後にそれぞれ設けられる。一対の電動油圧シリンダ10が伸縮作動することにより、ウィング2が開閉される。
【0046】
一対の電動油圧シリンダ10は、
図3に示すように、電動モータ11に加え、作動液としての作動油を貯留するタンク12と、二つのシリンダ室内24,25の作動油の油圧により駆動するシリンダ20と、電動モータ11によって駆動されタンク12から作動油を吸い込んで吐出するポンプ13と、シリンダ20とポンプ13との間で流れる作動油の流れを制御する制御弁14と、をそれぞれ一体的に有する。つまり、電動モータ11、タンク12、ポンプ13、及び制御弁14が一つのユニット部材Uを構成し、ユニット部材Uはシリンダ20に隣接するように設けられる。これにより、電動油圧シリンダ10は、構成をコンパクトにすることができる。
【0047】
電動モータ11は、三相ブラシレスモータである。電動モータ11は、例えばインバータによるPWM制御によって電力が供給されて、回転が制御される。
【0048】
図3に示すように、シリンダ20は、円筒状の筒部21と、筒部21の一端側から筒部21内に挿入されるピストンロッド22と、ピストンロッド22の端部に設けられ筒部21の内周面に沿って摺動するピストン23と、を備える。
【0049】
筒部21の内部は、ピストン23によって、第1シリンダ室24及び第2シリンダ室25に仕切られる。これら第1シリンダ室24及び第2シリンダ室25には作動油が充填される。
【0050】
シリンダ20は、作動油が第1シリンダ室24に供給されるとともに第2シリンダ室25から排出されることでピストンロッド22が伸長方向(
図3中右方向)に移動する。また、シリンダ20は、作動油が第2シリンダ室25に供給されるとともに第1シリンダ室24から排出されることでピストンロッド22が収縮方向(
図3中左方向)に移動する。このように、シリンダ20は、複動式シリンダである。
【0051】
シリンダ20の反ピストンロッド側の端部は、締結部21Aを介して荷室4の所定位置に回動自在に固定される。ピストンロッド22の先端部は、締結部22Aを介してウィング2に回動自在に固定される。これにより、一対の電動油圧シリンダ10におけるシリンダ20が同調して伸縮作動すると、ウィング2は回動軸5を中心に回動して車両の上下方向に開閉される。ウィング2の開閉に伴い、シリンダ20は締結部21Aを中心に回動する。
【0052】
ポンプ13は、電動モータ11の回転軸(図示省略)に連結されて、電動モータ11の回転によって駆動されるギヤポンプである。ポンプ13から吐出される作動油の吐出方向は、電動モータ11の回転方向に応じて選択的に切り換えられる。
【0053】
制御弁14は、シリンダ20とポンプ13の間に設けられる。制御弁14は、オペレートチェック弁(図示省略)やスローリターン弁(図示省略)などを有し、シリンダ20とポンプ13との間の作動油の流れを制御する。制御弁14は、タンク通路(図示省略)を介してタンク12に接続されている。
【0054】
このように、電動油圧シリンダ10は、電動モータ11、シリンダ20、ポンプ13、タンク12、及び制御弁14を一体的に有しているため、電動モータ11に電力を供給する電線を荷室4内に配線すれば作動することができる。このため、荷室4内に油圧配管を設ける必要がなく、油漏れの発生を抑制することができる。
【0055】
コントローラ30は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。
【0056】
図2に示すように、コントローラ30は、電動モータ11の回転を制御することにより一対の電動油圧シリンダ10の伸縮作動を互いに同調させる同調制御部31と、一対の電動油圧シリンダ10の伸縮速度を個別に制御する一対の速度制御部32と、を備える。同調制御部31と速度制御部32とは、単一のコントローラ30内に設けられる。また、同調制御部31は、左側のウィング開閉装置100と右側のウィング開閉装置101とで、共通に用いられる。
【0057】
同調制御部31は、一対の電動油圧シリンダ10のうち伸縮速度が速い電動油圧シリンダ10における電動モータ11の回転数を減少させ、伸縮速度が速い電動油圧シリンダ10を伸縮速度が遅い電動油圧シリンダ10の速度と同じ速度で作動させる同調制御を行う。
【0058】
図4は、ウィング2に所望の開閉作動をさせるための電動油圧シリンダ10の伸縮速度と時間との関係を示す図である。
図5は、電動油圧シリンダ10を
図4に示すように伸縮作動させるための電動モータ11への通電率と時間との関係を示す速度制御マップである。
【0059】
一対の速度制御部32は、電動モータ11への通電率を変更することにより回転数を制御する。速度制御部32は、予め定められる速度制御マップ(
図5参照)に基づいて電動モータ11の回転数を制御してポンプ13の吐出量を制御することにより、個別に電動油圧シリンダ10の伸縮速度を制御する。速度制御マップは、ウィング2の重量などのトラック車1の仕様や電動油圧シリンダ10の仕様などに応じて設定されコントローラ30内に格納される。
【0060】
一対の速度制御部32は、
図5に示すように、電動油圧シリンダ10の始動時において停止状態から次第に通電率を上昇させ電動モータ11の回転数を増加させることにより電動油圧シリンダ10を加速させる加速制御と、電動油圧シリンダ10を定常速度V(
図4参照)で作動させる定常制御と、電動油圧シリンダ10の停止時において次第に通電率を減少させて電動モータ11の回転数を減少させることにより電動油圧シリンダ10を減速させる減速制御と、を個別に行う。加速制御は、伸縮作動の開始から所定時間Tが経過するまでの間に行われる。所定時間Tは、コントローラ30に内蔵されるタイマー(図示省略)によって検出される。減速制御は、一対の検出部40の検出結果を基に出力される減速信号が速度制御部32に入力されることにより行われる。
【0061】
このように、電動油圧シリンダ10の始動時には、速度制御部32が停止状態から定常速度Vまで次第に電動モータ11の回転数を増加させる加速制御を行うことにより、ウィング2が動き始める際の衝撃を低減することができる。特にウィング2が閉状態から開き始める際の急加速が防止されるため、荷室4内への雨水等の巻き込みが防止される。
【0062】
また、電動油圧シリンダ10の停止時には、速度制御部32が定常速度Vから停止状態まで次第に電動モータ11の回転数を減少させて電動油圧シリンダ10を減速させる減速制御を行うことにより、ウィング2が全開または全閉になる際に、荷室4にかかる衝撃を低減することができる。
【0063】
一対の検出部40は、一対の電動油圧シリンダ10の作動状態をそれぞれ検出して、検出結果を同調制御部に伝達する。ウィング開閉装置100は、複数の検出部40を備えていなくてもよく、単一の検出部40を備えて一対の電動油圧シリンダ10のうちの少なくとも1つの作動状態を検出して同調制御部に検出結果を伝達するものでもよい。
【0064】
一対の検出部40は、
図6及び
図7に示すように、荷室4及びウィング2に回動自在に連結され一対の電動油圧シリンダ10の伸縮作動に伴い回動するリンク機構と、リンク機構の回動によって作動する一対のセンサ部としての一対のリミットスイッチ43と、をそれぞれ有する。
【0065】
リンク機構は、荷室4に回動自在に連結される第一リンク部材41と、荷室4との連結部分から離れた位置で第一リンク部材41とウィング2とを連結する第二リンク部材42と、を有する。
【0066】
第一リンク部材41は、回転ピン44を介して荷室4の下部に回動自在に連結される。第一リンク部材41は、第二リンク部材42が連結される一端と回転ピン44との間の長さが、他端と回転ピン44との間の長さよりも長くなるように荷室4に連結される。回転ピン44と第一リンク部材41との連結部分には、第一リンク部材41を回転ピン44に向けて一方向に付勢する付勢部材としてのコイルスプリング(図示省略)が設けられる。これにより、第一リンク部材41と回転ピン44との間のがたをなくすことができる。
【0067】
第二リンク部材42は、一端が回転ピン44から離れた位置で第一リンク部材41に回動自在に連結され、他端がウィング2の上部に回動自在に連結される板状部材である。第二リンク部材42は、電動油圧シリンダ10におけるシリンダ20のピストンロッド22に連結されてもよい。なお、第二リンク部材42は、ひも状の部材でもよい。
【0068】
一対のリミットスイッチ43は、回転ピン44を挟んで第二リンク部材42とは反対側であって、第一リンク部材41を上下から挟むように荷室4に設けられる。一対のリミットスイッチ43は、第一リンク部材41よりも下方に設けられる上げ側スイッチ43A、第一リンク部材41よりも上方に設けられる下げ側スイッチ43Bと、を有する。
【0069】
図6及び
図7中実線で示すように、ウィング2が完全に閉じた状態では、第一リンク部材41と下げ側スイッチ43Bとが接触し、下げ側スイッチ43Bはオンの状態になる。ウィング2が完全に閉じた状態では、第一リンク部材41と上げ側スイッチ43Aとは接触せず、上げ側スイッチ43Aはオフの状態である。
【0070】
電動油圧シリンダ10の伸長作動によって、ウィング2が閉じた状態から開作動し始めると、第二リンク部材42が上方に移動して、第一リンク部材41が回転ピン44を中心に回動する。第一リンク部材41が所定の角度を回動すると、第一リンク部材41と下げ側スイッチ43Bとが接触しなくなり、下げ側スイッチ43Bがオフになる。
【0071】
さらにウィング2が開いて第一リンク部材41が回動すると、
図6及び
図7中破線で示すように、第一リンク部材41と上げ側スイッチ43Aとが接触し、上げ側スイッチ43Aがオンとなる。上げ側スイッチ43Aがオンになると、上げ側スイッチ43Aの検知信号が同調制御部31に伝達される。
【0072】
ウィング2が完全に開いた状態から閉作動する場合には、ウィング2の閉作動に伴い上げ側スイッチ43Aがオフになる。さらにウィング2が閉作動すると、第一リンク部材41と下げ側スイッチ43Bとが接触して、
図6及び
図7中実線で示すように、下げ側スイッチ43Bがオンになる。下げ側スイッチ43Bがオンになると、下げ側スイッチ43Bの検知信号が同調制御部31に伝達される。
【0073】
次に、電動油圧シリンダ10の伸縮作動の制御について説明する。
【0074】
それぞれウィング2の前後に連結される一対の電動油圧シリンダ10には、ウィング2の重量バランス等により電動モータ11への通電率とシリンダ20の伸縮ストロークとの関係に個体差が生じることがある。このため、一対の速度制御部32がそれぞれ同一の速度制御マップに基づいて一対の電動油圧シリンダ10を制御しても、一対の電動油圧シリンダ10は同じ作動をせずに、作動がずれることがある。つまり、一対の電動油圧シリンダ10のそれぞれに同じ通電率で電圧を印加しても、電動油圧シリンダ10の作動速度が異なる。一対の電動油圧シリンダ10の作動速度が異なると、ウィング2の開閉時にねじれが生じる。
【0075】
以下では、一対の電動油圧シリンダ10のうち同じ通電率で作動した場合に伸縮速度が速い電動油圧シリンダ10を「高速電動油圧シリンダ10A」、高速電動油圧シリンダ10Aの速度制御を行う速度制御部32を「高速速度制御部32A」と称する。また、同じ通電率で作動した場合に伸縮速度が遅い電動油圧シリンダ10を「低速電動油圧シリンダ10B」、低速電動油圧シリンダ10Bの速度制御を行う速度制御部32を「低速速度制御部32B」と称する。
【0076】
一対の電動油圧シリンダ10を互いに同調して伸縮作動させるために、まず初期設定として一対の電動油圧シリンダ10のティーチングが行われる。
【0077】
同調制御部31は、一対の電動油圧シリンダ10をウィング2の前後に連結した状態で伸縮作動させて伸縮速度を演算し、演算結果を基に制御指令として互いの伸縮速度が同調するような速度制御マップをそれぞれの速度制御部32に出力するティーチングを行う。
【0078】
まず、同調制御部31は、電動モータ11を所定の通電率、例えば通電率100%で駆動して、一対の電動油圧シリンダ10の伸縮速度を測定し、電動モータ11への通電率と電動油圧シリンダ10の伸縮速度との関係をそれぞれ演算する。電動油圧シリンダ10の伸縮速度は、同調制御部31に入力される電動モータ11の回転数と時間から演算される。
【0079】
次に、同調制御部31は、
図8中実線で示すように、トラック車1や電動油圧シリンダ10の仕様に基づき予め設定される速度制御マップ(以下、「理想制御マップ」と称する。)に基づいて速度制御を行うように制御指令を低速速度制御部32Bに出力する。
【0080】
次に、同調制御部31は、演算したそれぞれの通電率と伸縮速度との関係に基づいて、理想制御マップを変換し、高速電動油圧シリンダ10Aが低速電動油圧シリンダ10Bの伸縮速度と同じ速度で作動するための同調制御マップ(
図8中破線)を生成する。
【0081】
例えば、
図8に示すように、時間T1において低速速度制御部32Bが理想制御マップに基づいて通電率100%で電動モータ11を駆動し、低速電動油圧シリンダ10Bを定常速度V(
図4参照)で作動する場合には、時間T1において高速電動油圧シリンダ10Aが定常速度Vで伸縮作動する通電率である80%で高速速度制御部32Aが電動モータ11を駆動するような同調制御マップが生成される。
【0082】
同調制御部31は、高速速度制御部32Aに同調制御マップに基づき電動モータ11を駆動するように制御指令を出力する。
【0083】
このようなティーチングを初期設定として予め行うことにより、低速速度制御部32Bは理想制御マップに基づき低速電動油圧シリンダ10Bを制御し、高速速度制御部32Aは同調制御部31によって演算されて入力される同調制御マップに基づき高速電動油圧シリンダ10Aを制御する。ウィング2の開閉作動時には、一対の電動油圧シリンダ10は、異なる速度制御マップによって作動が制御されて、同じ伸縮速度で作動する。つまり、同調制御部31は、高速速度制御部32Aに同調制御マップに基づいた制御をさせることにより、高速電動油圧シリンダ10Aを低速電動油圧シリンダ10Bの伸縮速度に合わせて作動させて、一対の電動油圧シリンダ10の伸縮速度を互いに同調させる。これにより、ねじれを生じることなくウィング2を開閉することができる。
【0084】
一対の速度制御部32は、このように同調制御部31から伝達される異なる速度制御マップに基づいて電動モータ11の回転を制御することにより、一対の電動油圧シリンダ10の伸縮速度を互いに同調させながら伸縮作動させる。
【0085】
作業者によって作動スイッチ6が押されると、一対の速度制御部32は、それぞれ理想制御マップ及び同調制御マップに基づいて、停止状態から定常速度Vに達するまで、時間Tをかけて電動油圧シリンダ10を加速させる加速制御を行い、電動油圧シリンダ10を伸縮作動させる。理想制御マップ及び同調制御マップにおいて、定常速度V及び加速制御を行う時間Tは、任意に設定することができる。
【0086】
電動モータ11の回転数が上昇して、電動油圧シリンダ10の伸長速度が定常速度Vに達すると、速度制御部32により、電動モータ11の回転数が維持される。これにより、電動油圧シリンダ10は、定常速度Vで伸長作動を続ける。
【0087】
電動油圧シリンダ10のストローク量が所定値に達すると、一対の検出部40における一対のリミットスイッチ43の一方がそれぞれオンになる。つまり、電動油圧シリンダ10の伸長作動時には一対の検出部40の上げ側スイッチ43Aがオンになり、収縮作動時には下げ側スイッチ43Bがオンになる。一対の検出部40のリミットスイッチ43の検知信号は、それぞれ同調制御部31に入力される。
【0088】
同調制御部31は、一対の検出部40から入力される2つの検知信号に基づいて減速信号を一対の速度制御部32に出力する。同調制御部31は、一方の検出部40からの検知信号のみが入力されても速度制御部32には減速信号を伝達せず、一対の検出部40の両方から検知信号が入力されると、一対の速度制御部32それぞれに減速信号を出力する。つまり、同調制御部31は、低速電動油圧シリンダ10Bがリミットスイッチ43を作動させると減速制御を開始するように一対の速度制御部32のそれぞれに減速信号を伝達する。これにより、一対の速度制御部32による減速制御の開始が同調され、一対の電動油圧シリンダ10の伸縮作動をより確実に同調させることができる。なお、同調制御部31は、1つの検出部40から入力される1つの検知信号のみに基づいて減速信号を一対の速度制御部32に出力してもよい。
【0089】
また、ウィング開閉装置100は一対の電動油圧シリンダ10における一方の作動状態を検出する単一の検出部40を備え、同調制御部31は単一の検出部40の検知信号に基づいて減速信号を一対の速度制御部32に出力するものでもよい。この場合には、単一の検出部40は、低速電動油圧シリンダ10Bの作動状態を検出することが望ましい。これにより、一対の電動油圧シリンダ10は、作動速度が遅い低速電動油圧シリンダ10Bの作動に同調されるため、電動モータ10に過負荷をかけることなく互いの作動を同調させることができる。このように、ウィング開閉装置100は、複数の電動油圧シリンダ40のうち少なくとも一つの作動状態を検出する検出部40を備えていればよい。
【0090】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0091】
ウィング開閉装置100は、電動油圧シリンダ10が一体的に設けられる電動モータ11の回転によって伸縮作動するため、油圧配管を設ける必要がない。また、一対の電動油圧シリンダ10は、同調制御部31によって電動モータ11の回転が制御されることにより、伸縮作動が同調される。したがって、ウィング開閉装置100の油漏れを抑制しつつウィング開閉時のねじれを抑制することができる。
【0092】
また、ウィング開閉装置100における一対の電動油圧シリンダ10は、速度制御部32によって、始動時には次第に加速する加速制御が行われ、停止時には次第に減速する減速制御が行われる。速度制御部32によって加速制御が行われることにより、ウィング2の動き始めの衝撃を低減することができる。特に、ウィング2が閉状態から開き始める際の急加速が防止されるため、荷室4内への雨水等の巻き込みが防止される。また、速度制御部32によって減速制御が行われることにより、ウィング2が全開または全閉になる際に荷室4にかかる衝撃を低減することができる。
【0093】
また、一対のリミットスイッチ43は、第二リンク部材42を介してウィング2に連結されウィング2の開閉作動の伴い回動する第一リンク部材41によって作動される。したがって、第一リンク部材41及び第二リンク部材42を荷室4及びウィング2にそれぞれ取り付けるだけで電動油圧シリンダ10の作動状態を検出することができ、ウィング2、荷室4、及び回動軸5に大幅な加工を施す必要がないため、容易に取り付けることができる。
【0094】
また、第一リンク部材41及び第二リンク部材42を取り付けるだけで電動油圧シリンダ10の作動状態を検出することができるため、既存のトラック車1に容易に後付けすることができる。
【0095】
また、第一リンク部材41及び第二リンク部材42を介してウィング2の開閉作動を検知することにより、リミットスイッチ43は荷室4の下部に設けることができる。したがって、荷室4の下部でリミットスイッチ43の調整等の作業を行うことができるので、リミットスイッチ43が上方に設けられる場合と比較して、作業性を向上させることができる。
【0096】
次に、
図9から
図15を参照して、上記第1実施形態の変形例について説明する。
【0097】
上記第1実施形態では、検出部40は、センサ部としてのリミットスイッチ43を有する。これに代えて、検出部40は、センサ部として近接スイッチや光センサを有していてもよい。つまり、センサ部は、電動油圧シリンダ10の伸縮作動に伴い作動するセンサであればよい。
【0098】
また、上記第1実施形態では、一対のリミットスイッチ43は、荷室4に設けられる。作業性を向上させるためには、上記第1実施形態のように荷室4の下部に一対のリミットスイッチ43を設けることが望ましいが、第一リンク部材41を荷室4の上部に連結し、一対のリミットスイッチ43を第一リンク部材41に設けてもよい。この場合には、一対のリミットスイッチ43は、第二リンク部材42によって作動される。
【0099】
具体的に説明すると、
図9及び
図10に示すように、第二リンク部材42は、一端側がウィング2に回動自在に連結されると共に他端側には第一リンク部材41が回動自在に連結する板状部42Aと、板状部42Aから折れ曲がって形成される屈曲部42Bと、を有する略L字状に形成される。
【0100】
一対のリミットスイッチ43は、第一リンク部材41の長手方向に並んで設けられる。一対のリミットスイッチ43は、第一リンク部材41と荷室4とが連結される回転ピン44側(
図9中左側)に配置される上げ側スイッチ43Aと、上げ側スイッチ43Aよりも第一リンク部材41と第二リンク部材42との連結部分側(
図9中右側)に配置される下げ側スイッチ43Bと、を有する。
【0101】
図9に示すように、ウィング2が完全に閉じた状態では、第二リンク部材42の板状部42Aによって、下げ側スイッチ43Bがオンされる。電動油圧シリンダ10の伸長作動によって、ウィング2が閉じた状態から開作動し始めると、第一リンク部材41と第二リンク部材42とが相対回転して開き始める。第一リンク部材41と第二リンク部材42との間の角度が所定の角度に達すると、第二リンク部材42と下げ側スイッチ43Bとが接触しなくなり、下げ側スイッチ43Bがオフになる。
【0102】
さらにウィング2が開いて第一リンク部材41と第二リンク部材42との間の角度が大きくなると、
図10に示すように、第二リンク部材42の屈曲部42Bが上げ側スイッチ43Aと接触し、上げ側スイッチ43Aがオンになる。上げ側スイッチ43Aが作動すると、上げ側スイッチ43Aの検知信号が同調制御部31に伝達される。
【0103】
ウィング2が完全に開いた状態から閉作動する際には、ウィング2が閉じるにつれて第二リンク部材42の屈曲部42Bと上げ側スイッチ43Aとが接触しなくなり、上げ側スイッチ43Aがオフになる。さらにウィング2が閉じると、第二リンク部材42の板状部42Aと下げ側スイッチ43Bとが接触し、下げ側スイッチ43Bがオンになる。下げ側スイッチ43Bがオンになると、下げ側スイッチ43Bの検知信号が同調制御部31に伝達される。
【0104】
このような変形例であっても、上記第1実施形態と同様に、第一リンク部材41及び第二リンク部材42を荷室4及びウィング2にそれぞれ取り付けるだけでよく、ウィング2、荷室4、及び回動軸5に大幅な加工を施す必要がないため、容易に電動油圧シリンダ10の作動状態を検出することができる。また、第一リンク部材41及び第二リンク部材42を取り付けるだけで電動油圧シリンダ10の作動状態を検出することができるため、既存のトラック車1に容易に後付けすることができる。
【0105】
また、
図11から
図13に示すように、一対の検出部40は、ウィング2の開閉作動に伴って回動軸5を中心に回動する検出部材46と、荷室4に設けられウィング2の開閉作動に伴い作動する一対のリミットスイッチ43と、をそれぞれ有していてもよい。
【0106】
図11は、(A)が検出部40が有する検出部材46の平面図であり、(B)が検出部材46の正面図である。
図11に示すように、検出部材46は、ウィング2の上面の内側に設けられる半円形状の板部材であり、ウィング2の開閉作動に伴い回動軸5周りに回動する。検出部材46は、他の部分よりも厚く形成されて、ウィング2の開閉作動に伴い一対のリミットスイッチ43に接触可能な接触部46Aを有する。
【0107】
図12に示すように、一対のリミットスイッチ43は、トラック車1の左右方向に並んで荷室4の内側に設けられる。一対のリミットスイッチ43は、トラック車1の中央側(
図12中左側)に設けられる下げ側スイッチ43Bと、下げ側スイッチ43Bよりもトラック車1の外側(
図12中右側)に設けられる上げ側スイッチ43Aと、を有する。
【0108】
ウィング2が完全に閉じた状態では、下げ側スイッチ43Bはオンの状態となり、上げ側スイッチ43Aはオフの状態となる。
【0109】
ウィング2が開いて検出部材46が所定角度回動すると、接触部46Aと下げ側スイッチ43Bとが接触しなくなり、下げ側スイッチ43Bがオフになる。さらにウィング2が開いて検出部材46が回動すると、
図13に示すように、接触部46Aと上げ側スイッチ43Aとが接触し、上げ側スイッチ43Aがオンとなる。上げ側スイッチ43Aがオンになると、上げ側スイッチ43Aの検知信号が同調制御部31に伝達される。
【0110】
ウィング2が完全に開いた状態から閉作動し始めると、接触部46Aと下げ側スイッチ43Bとが接触して、下げ側スイッチ43Bがオンになる。
【0111】
このような変形例であっても、一対の電動油圧シリンダ10の作動状態を検知することができる。
【0112】
また、
図14及び
図15に示すように、一対の検出部40は、電動油圧シリンダ10におけるシリンダ20のピストンロッド22に設けられピストンロッド22と共に移動する検出棒47と、電動油圧シリンダ10におけるシリンダ20の筒部21に設けられ検出棒47の移動に伴い作動する一対のリミットスイッチ43と、を有していてもよい。
【0113】
検出棒47には、軸方向に延びる溝47Aが形成される。一対のリミットスイッチ43と溝47Aとが対向することにより、一対のリミットスイッチ43と検出棒47とが接触しなくなり、リミットスイッチ43はオフになる。
【0114】
一対のリミットスイッチ43は、シリンダ20の筒部21における軸方向の両端部に設けられる。一対のリミットスイッチ43は、シリンダ20におけるピストンロッド22の伸長方向のストローク端付近で作動する上げ側スイッチ43Aと、シリンダ20におけるピストンロッド22の収縮方向のストローク端付近で作動する下げ側スイッチ43Bと、を有する。検出棒47がピストンロッド22と共に移動することにより、それぞれのリミットスイッチ43と接触して、リミットスイッチ43の検出信号が同調制御部31に伝達される。
【0115】
このような変形例であっても、一対の電動油圧シリンダ10の作動状態を検知することができる。
【0116】
また、ピストンロッド22と共に移動する検出棒47によってリミットスイッチ43を作動する場合には、シリンダ20の筒部21に設けられ検出棒47が挿入される筒状のガイド部を有していてもよい。この場合には、検出棒47は大径部及び当該大径部とピストンロッドへの連結部との間に形成され大径部よりも外径が小さい小径部を有し、リミットスイッチ43はガイド部の両端に設けられる。電動油圧シリンダ10の伸縮作動に伴い検出棒47が移動することにより、大径部とリミットスイッチ43とが接触して、リミットスイッチ43の検出信号が同調制御部31に伝達される。このような場合には、検出棒47の移動に伴う異物の噛み込みが防止される。
【0117】
(第2実施形態)
次に、
図16及び
図17を参照して本発明の第2実施形態に係るウィング開閉装置200ついて説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態のウィング開閉装置100と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0118】
上記第1実施形態では、一対の検出部40は、電動油圧シリンダ10の伸縮作動に伴い作動するリミットスイッチ43をそれぞれ有する。
【0119】
これに対し、ウィング開閉装置200における一対の検出部140は、
図16に示すように、電動油圧シリンダ10の伸縮作動に伴い回動するウィング2の回動角度を検出する角度検出部としてのポテンショメータ141をそれぞれ有する点において、上記第1実施形態とは相違する。
【0120】
図17に示すように、一対の検出部140におけるそれぞれのポテンショメータ141は、軸部143がウィング2の回動軸5に同軸的に挿入され、本体部142がウィング2に連結される。これにより、ポテンショメータ141によって、ウィング2の回動角度が直接検出される。ポテンショメータ141は、軸部143の回転角度を電圧信号として同調制御部31に出力する。このように、検出部140のポテンショメータ141は、電動油圧シリンダ10の伸縮作動に伴い回動するウィング2の回動角度を検出することにより、間接的に電動油圧シリンダ10の伸縮状態を検出する。なお、角度検出部は、ポテンショメータ141に限らず、例えばエンコーダなど回転角度を検出できるものであればよい。
【0121】
同調制御部31は、一対のポテンショメータ141によって検出されるウィング2の回動角度の両方が所定の回動角度になると、一対の速度制御部32に減速信号を伝達する。つまり、同調制御部31は、ウィング2の回動速度が遅い方が所定の回動角度に達した際に、一対の速度制御部32のそれぞれに減速信号を伝達する。このように、同調制御部31によって、一対の電動油圧シリンダ10の減速の開始が同調され、互いの伸縮作動が同調される。
【0122】
ポテンショメータ141は、常に回動角度を検出するため、ウィング2の開閉作動開始から停止までのウィング2の回動角度を常に検出することができる。
【0123】
このため、タイマーを使用しなくても、ポテンショメータ141の検出結果をもとに、加速制御の終了位置を規定することができる。
【0124】
以上の第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏すると共に、以下に示す効果を奏する。
【0125】
一対の検出部140は、ウィング2の回動角度を検出するポテンショメータ141をそれぞれ有しているため、ウィング2の開閉作動開始から停止までのウィング2の回動角度と時間との関係を取得することができる。したがって、加速制御の終了及び減速制御の開始の両方の信号をポテンショメータ141から取得することができる。
【0126】
次に、
図18及び
図19を参照して、第2実施形態の変形例について説明する。
【0127】
図18に示すように、一対の検出部140は、外周にギヤ部144Aを有しウィング2の開閉作動に伴って回動軸5を中心に回動するギヤ板144を有し、ポテンショメータ141は、ギヤ板144のギヤ部144Aと噛み合う検出ギヤ141Aを有して荷室4に設けられてもよい。この場合にも、ウィング2の回動に伴いギヤ板144が回動し、ギヤ板144の回動をポテンショメータ141が検出することにより、ウィング2の回動角度を検出することができる。この場合であっても、上記第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0128】
また、上記第2実施形態では、ポテンショメータ141は、ウィング2と荷室4とが連結される回動軸5に取り付けられ、直接ウィング2の回動角度を検出する。これに代えて、ポテンショメータ141は、電動油圧シリンダ10におけるシリンダ20の締結部22Aと荷室4との取付部分に設けられてもよい。電動油圧シリンダ10は、伸縮作動してウィング2が回動するのに伴い、シリンダ20の締結部22Aと荷室4との連結部分を中心に回動する。このため、連結部分にポテンショメータ141を取り付けることにより、間接的にウィング2の回動角度を検出することができる。この場合であっても、上記第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0129】
また、一対の検出部140は、上記第1実施形態のように、リンク機構として、荷室4に回動自在に連結される第一リンク部材41と、荷室4との連結部分から離れた位置で第一リンク部材41とウィング2とを連結する第二リンク部材42と、を有していてもよい。この場合には、ポテンショメータ141は、第一リンク部材41と荷室4との連結部分、第一リンク部材41と第二リンク部材42との連結部分、第二リンク部材42とウィング2との連結部分のいずれに設けられてもよい。例えば、
図19に示すように、第一リンク部材41と荷室4との連結部分である回転ピンにポテンショメータ141を設けてもよい。この場合、第一リンク部材41を上下から挟むように荷室4に設けられ、第一リンク部材41の所定量以上の回動を規制する回り止めピン145を設けることが望ましい。
【0130】
このように、一対の検出部140がリンク機構を有する場合には、ポテンショメータ141は、リンク機構としての第一リンク部材41と第二リンク部材42とを介して、間接的にウィング2の回動角度を検出する。この場合であっても、上記第2実施形態と同様の効果を奏する。
【0131】
(第3実施形態)
次に、
図20を参照して本発明の第3実施形態に係るウィング開閉装置300ついて説明する。以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第1実施形態のウィング開閉装置100と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0132】
上記第1実施形態では、一対の検出部40は、電動油圧シリンダ10の伸縮作動に伴い作動するリミットスイッチ43をそれぞれ有する。
【0133】
これに対し、ウィング開閉装置300における一対の検出部240は、電動油圧シリンダ10のストローク量を個別に検出するストロークセンサ241をそれぞれ有する点において、ウィング開閉装置100とは相違する。
【0134】
ストロークセンサ241は、電動油圧シリンダ10のシリンダ20に内蔵される。言い換えれば、シリンダ20は、ストロークセンサ付の油圧シリンダである。ストロークセンサ241は、例えば、ロータリーエンコーダである。
【0135】
同調制御部31には、ストロークセンサ241から電動油圧シリンダ10のストローク量が入力される。同調制御部31は、ストロークセンサ241によって入力される一対の電動油圧シリンダ10のストローク量が、共に予め定められたストローク量に達すると、一対の速度制御部32のそれぞれに減速信号を伝達する。つまり、同調制御部31は、低速電動油圧シリンダ10Bが所定のストローク量に達すると、一対の速度制御部32の両方に減速信号を伝達する。したがって、同調制御部31によって、一対の電動油圧シリンダ10の減速の開始が同調され、互いの伸縮作動が同調される。
【0136】
このように、ウィング開閉装置300における検出部240のストロークセンサ241は、常に電動油圧シリンダ10のストローク量を検出するため、ウィング2の開閉作動開始から停止まで時間と電動油圧シリンダ10のストローク量との関係を求めることができる。このため、ストロークセンサ241の検出結果をもとに、加速制御の終了位置を規定することもできる。
【0137】
以上の第3実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏すると共に、以下に示す効果を奏する。
【0138】
一対の検出部240は、電動油圧シリンダ10におけるシリンダ20のストローク量を検出するストロークセンサ241をそれぞれ有しているため、ウィング2の開閉作動開始から停止までの一対の電動油圧シリンダ10のストローク量を常に検出することができる。したがって、加速制御の終了及び減速制御の開始の両方の信号をストロークセンサ241から取得することができる。
【0139】
(第4実施形態)
次に、
図21を参照して本発明の第4実施形態に係るウィング開閉装置400について説明する。以下では、上記第2実施形態と異なる点を中心に説明し、上記第2実施形態のウィング開閉装置200と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0140】
上記第2実施形態では、同調制御部31は、初期設定としてティーチングを行い、異なる速度制御マップで速度制御するように予め一対の速度制御部32に制御指令を出力して、高速電動油圧シリンダ10Aと低速電動油圧シリンダ10Bとを同じ速度で伸縮作動させる。このようにして、上記第2実施形態では、一対の電動油圧シリンダ10が伸縮速度の遅い電動油圧シリンダ10の伸縮作動に同調される。
【0141】
これに対し、ウィング開閉装置400では、同調制御部331が、所定の時間間隔ごとにポテンショメータ141によって検出されるウィング2前後の回動角度から一対の電動油圧シリンダ10の伸縮速度を演算する。同調制御部331は、高速電動油圧シリンダ10Aが低速電動油圧シリンダ10Bの伸縮速度に合わせて同じ伸縮速度で作動するように、高速速度制御部332Aに対して所定の時間間隔ごとに制御指令を出力する。また、一対の速度制御部332は、ポテンショメータ141によって検出されるウィング2の回動角度に基づいて、速度制御マップどおりに電動油圧シリンダ10が作動するようにそれぞれフィードバック制御を行う。以上の点において、ウィング開閉装置400は、ウィング開閉装置200とは相違する。
【0142】
一対の電動油圧シリンダ10が伸縮作動を開始すると、ポテンショメータ141によってウィング2前後の回動角度が検出されて、同調制御部331に入力される。
【0143】
同調制御部331は、所定の時間間隔ごとに、一対のポテンショメータ141から入力される回動角度に基づいて、一対の電動油圧シリンダ10の伸縮速度をそれぞれ演算して、速度の大小を判定する。
【0144】
同調制御部331は、高速速度制御部332Aに対して、高速電動油圧シリンダ10Aが低速電動油圧シリンダ10Bと同じ伸縮速度で作動するように制御指令として同調制御マップを出力する。つまり、同調制御部331は、所定の時間間隔ごとにウィング2の開閉作動時における低速電動油圧シリンダ10Bの伸縮速度に合わせるように同調制御マップを更新し、制御指令として高速速度制御部332に伝達する。
【0145】
制御指令が伝達された高速速度制御部332Aは、制御指令を基に高速電動油圧シリンダ10Aの電動モータ11の回転数を低減させて、低速電動油圧シリンダ10Bの伸縮速度と同じ速度になるように制御する。
【0146】
これにより、一対の電動油圧シリンダ10の伸縮速度が遅い方に合わせて同調される。このように、伸縮作動時に所定間隔ごとに伸縮速度を同調させる制御指令が伝達されることにより、一対の電動油圧シリンダ10の伸縮作動のずれをさらに抑制することができる。
【0147】
また、同調制御部331による同調制御と同時に、速度制御部332によって伸縮速度のフィードバック制御が行われる。
【0148】
図21に示すように、一対の速度制御部332には、それぞれのポテンショメータ141が検出した回動角度が入力される。一対の速度制御部332は、それぞれ同調制御部331から伝達された速度制御マップと入力された回動角度から演算される伸縮速度との差分を演算して、電動油圧シリンダ10をフィードバック制御する。
【0149】
これにより、一対の電動油圧シリンダ10をそれぞれ制御して、ウィング2の開閉作動における所望の作動を行うことができる。
【0150】
以上の第4実施形態によれば、第2実施形態と同様の効果を奏すると共に、以下に示す効果を奏する。
【0151】
同調制御部331は、ポテンショメータ141の検出結果に基づいて電動油圧シリンダ10の伸縮速度を演算し、所定の時間間隔ごとに伸縮速度を同調する同調制御を行う。このように、電動油圧シリンダ10の伸縮作動中においても、常に同調制御が行われるため、電動油圧シリンダ10の作動のずれが防止され、ウィング2の開閉作動時に生じるねじれをさらに防止することができる。
【0152】
また、一対の検出部140のポテンショメータ141によって電動油圧シリンダ10の伸縮速度を常に検出できるため、速度制御部332はポテンショメータ141の検出結果に基づいて電動油圧シリンダ10の作動をフィードバック制御することができる。このため、一対の電動油圧シリンダ10に所望の作動をさせることができ、ウィング2に所望の開閉作動をさせることができる。
【0153】
次に、第4実施形態の変形例について説明する。
【0154】
上記第4実施形態では、同調制御部331は、ポテンショメータ141の検出結果を基に、一対の電動油圧シリンダ10の伸縮速度を演算し、所定の時間間隔ごとに伸縮速度を互いに同調する。これに代えて、同調制御部331は、ポテンショメータ141の検出結果を基に、一対の電動油圧シリンダ10のストローク量を演算し、所定の時間間隔ごとにストローク量を互いに同調させてもよい。
【0155】
また、上記第4実施形態では、一対の検出部40は、上記第2実施形態と同様のポテンショメータ141を有する。これに代えて、一対の検出部40は、上記第3実施形態と同様のストロークセンサ241を有していてもよい。ストロークセンサ241により電動油圧シリンダ10の伸縮速度が常に検出できるため、同調制御部331及び速度制御部332は同様の制御を行うことができる。
【0156】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0157】
ウィング開閉装置100,200,300,400は、荷室4の上部に回動自在に連結されて上下方向に回動するウィング2を開閉するウィング開閉装置100,200,300,400であって、電力供給によって回転する電動モータ11を一体的に有し電動モータ11の回転によって伸縮作動してウィング2を開閉する一対の電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)と、電動モータ11の回転を制御することにより一対の電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)の伸縮作動を互いに同調させる同調制御部31,331と、を備える。
【0158】
この構成では、電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)は一体的に設けられる電動モータ11の回転によって伸縮作動するため、油圧配管を設ける必要がない。また、一対の電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)は、同調制御部31,331によって電動モータ11の回転が制御されることにより、伸縮作動が同調される。
【0159】
したがって、ウィング開閉装置100,200,300,400の油漏れを抑制しつつウィング2開閉時のねじれを抑制することができる。
【0160】
また、ウィング開閉装置100,200,300,400は、一対の電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)のうち少なくとも一つの作動状態を検出する検出部40,140,240をさらに備え、同調制御部31,331は、検出部40,140,240の検出結果に基づいて一対の電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)の伸縮作動を互いに同調させる。
【0161】
また、ウィング開閉装置100,200,300,400は、一対の電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)の伸縮速度を電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)ごとに個別に制御する一対の速度制御部32,332をさらに備え、速度制御部32,332は、電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)の始動時には停止状態から次第に電動モータ11の回転数を増加させて電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)を加速させる加速制御を行い、電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)の停止時には次第に電動モータ11の回転数を減少させて電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)を減速させる減速制御を行う。
【0162】
この構成では、ウィング2の開閉作動の開始及び終了が低速で行われる。
【0163】
この構成によれば、ウィング2が動き始める際の衝撃を低減することができる。また、ウィング2が全開または全閉になる際に、荷室4にかかる衝撃を低減することができる。
【0164】
また、ウィング開閉装置100,200,300,400は、同調制御部31,331と各速度制御部32,332とが、単一のコントローラ30内に設けられる。
【0165】
この構成によれば、ウィング開閉装置100,200,300,400をコンパクトに構成することができる。
【0166】
また、ウィング開閉装置100,200,300,400は、同調制御部31,331と各速度制御部32,332とが、それぞれ別々のコントローラ内に設けられてもよい。
【0167】
また、ウィング開閉装置100,200,300,400は、同調制御部31,331が、検出部40,140,240の検出結果に基づき、減速制御を開始する減速信号を各速度制御部に伝達することにより、一対の電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)の減速の開始を互いに同調させる。
【0168】
この構成では、同調制御部から減速信号が伝達されることにより、各速度制御部による一対の電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)の減速制御の開始が同調される。
【0169】
この構成によれば、ウィング2の開閉途中から再び開閉作動を行う場合であっても、一対の電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)の減速の開始を同調させることができる。
【0170】
また、ウィング開閉装置100は、検出部40が、一対の電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)のうち少なくとも一つの伸縮作動に伴い作動するリミットスイッチ43を有する。
【0171】
この構成によれば、安価な構成で電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)作動状態を検出することができる。
【0172】
また、ウィング開閉装置100は、検出部40が、荷室4及びウィング2に回動自在に連結され電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)のうち少なくとも一つの伸縮作動に伴い回動するリンク機構を有し、同調制御部31が、リンク機構の回動によって作動する一対のリミットスイッチ43の検知信号に基づき、減速信号を各速度制御部32に伝達する。
【0173】
この構成では、検出部40は、リンク機構を有するため、一対のリミットスイッチ43を荷室4の下部に設けることができる。
【0174】
この構成によれば、検出部40を容易に調整することができ、作業性が向上する。
【0175】
また、ウィング開閉装置400は、同調制御部331が、検出部140の検出結果に基づいて所定の時間間隔ごとに一対の電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)の伸縮作動を互いに同調させる。
【0176】
この構成では、同調制御部331が、伸縮作動中の一対の電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)の作動状態を検出して、所定間隔ごとに互いの伸縮作動を同調させる。
【0177】
また、ウィング開閉装置200,400は、検出部140が、ウィング2の回動角度を検出する角度検出部を有する。
【0178】
また、ウィング開閉装置200,400は、角度検出部が、ウィング2の回動軸5に設けられウィング2の回動角度を検出するポテンショメータ141を有する。
【0179】
この構成では、一対の電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)の作動状態を常に検出することができる。
【0180】
また、ウィング開閉装置300,400は、検出部240が、一対の電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)のうち少なくとも一つのストローク量を個別に検出するストローク検出部(ストロークセンサ241)を有する。
【0181】
この構成では、一対の電動アクチュエータ(電動油圧シリンダ10)の作動状態を常に検出することができる。
【0182】
また、ウィング開閉装置100,200,300,400は、電動アクチュエータが、作動液を貯留するタンク12と、二つのシリンダ室24,25内の作動油の油圧により駆動するシリンダ20と、電動モータ11によって駆動されタンク12から作動油を吸い込んで吐出するポンプ13と、シリンダ20とポンプ13との間で流れる作動油の流れを制御する制御弁14と、を一体的に有する電動油圧シリンダ10である。
【0183】
この構成では、電動モータ11の回転によって駆動されるポンプ13が吐出する作動油の圧力により、シリンダ20が駆動される。
【0184】
この構成によれば、大きな出力を発揮することができると共に、作動時の振動を低減することができる。
【0185】
また、ウィング開閉装置100,200,300,400は、電動モータ11が、ブラシレスモータである。
【0186】
この構成では、電動モータ11が、駆動用のドライバによって駆動されるブラシレスモータによって構成される。
【0187】
この構成によれば、ブラシを有していないため、電動モータ11の耐久性を向上させることができる。
【0188】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記各実施形態は本発明の適用例の一つを示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0189】
上記各実施形態では、電動アクチュエータは、電動油圧シリンダ10である。電動油圧シリンダ10は、油圧によりシリンダ20が伸縮作動するため、大きな出力を発揮すると共に、機械式の電動アクチュエータと比較して振動が少ない。また、過負荷が作用したときのフェールセーフとして、制御弁14にリリーフ弁を設けることもできる。このため、電動アクチュエータは、電動油圧シリンダ10であることが望ましいが、例えばボールねじと電動モータ11とを組み合わせた機械式の電動アクチュエータであってもよい。
【0190】
また、上記各実施形態では、電動モータ11はブラシレスモータである。ブラシレスモータはブラシがないことから耐久性が比較的高いため、電動モータ11はブラシレスモータであることが望ましいが、ブラシモータでもよい。この場合には、速度制御部32,332によって制御を行うために通電量と回転数との関係を把握する必要があるため、ブラシモータの回転数を検出する検出器を別途設ける必要がある。
【0191】
また、上記各実施形態では、同調制御部31,331と速度制御部32,332とは、単一のコントローラ30内に設けられる。これに代えて、一対の速度制御部32,332は、それぞれ別々のコントローラ内に設けられてもよい。また、同調制御部31,331と各速度制御部32,332とは、それぞれ別々のコントローラ内に設けられてもよい。各速度制御部32,332がそれぞれ別々に設けられ、同調制御部31,331と各速度制御部32,332とが別々のコントローラ内に設けられる場合には、電動モータ11がブラシレスモータであることが望ましい。電動モータ11がブラシレスモータである場合には、ブラシレスモータがもともと備える駆動用のドライバを速度制御部32,332とすることができるため、速度制御部32,332を別に設ける必要がない。したがって、電動モータ11がブラシモータである場合と比較して、ウィング開閉装置100,200,300,400をコンパクトな構成にすることができ、コストを低減することができる。
【0192】
また、上記各実施形態では、ウィング開閉装置100,200,300,400は、一対の電動油圧シリンダ10と、一対の電動油圧シリンダ10の伸縮速度を個別に制御する一対の速度制御部32,332と、を備える。これに限らず、ウィング開閉装置100,200,300,400は、3以上の電動油圧シリンダ10と、電動油圧シリンダ10を個別に制御する3以上の速度制御部32,332と、を備えていてもよい。
【0193】
また、上記各実施形態では、ウィング開閉装置100,200,300,400は、一対の電動油圧シリンダ10の作動状態を検出する一対の検出部40,140,240を備える。一対の検出部40,140,240を備えることにより、ウィングの開閉作動を途中で一度停止し再度作動させた場合であっても、減速制御の開始を互いに同調させることができる。このため、ウィング開閉装置100,200,300,400は一対の検出部40,140,240を備えることが望ましいが、一対の検出部40,140,240を備えずに、タイマーによって検出される伸縮作動の開始からの時間によって減速制御を開始してもよい。