特許第6706028号(P6706028)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6706028
(24)【登録日】2020年5月19日
(45)【発行日】2020年6月3日
(54)【発明の名称】エンジンのオイル回路のリリーフ装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 14/00 20060101AFI20200525BHJP
   F01M 1/16 20060101ALI20200525BHJP
   F04C 14/24 20060101ALI20200525BHJP
   F04B 49/08 20060101ALI20200525BHJP
   F04B 49/24 20060101ALI20200525BHJP
【FI】
   F04C14/00 C
   F01M1/16 A
   F04C14/24 A
   F04B49/08 311
   F04B49/24
【請求項の数】9
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-92295(P2015-92295)
(22)【出願日】2015年4月28日
(65)【公開番号】特開2016-27252(P2016-27252A)
(43)【公開日】2016年2月18日
【審査請求日】2018年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2014-134748(P2014-134748)
(32)【優先日】2014年6月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】宮島 淳一
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 貴俊
(72)【発明者】
【氏名】加藤 悠也
【審査官】 岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−180007(JP,U)
【文献】 実公昭45−014976(JP,Y1)
【文献】 特開2010−001739(JP,A)
【文献】 特開平06−123211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 14/00
F01M 1/16
F04C 14/24
F04B 49/08
F04B 49/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルポンプと、該オイルポンプの吐出部側からエンジンまで設けられた上流流路と、オイルの圧力にて弁体が移動することでオイルのリリーフを行う油圧リリーフバルブと、オイルの油温を感知して無段階に開閉することでオイルのリリーフを行う感温リリーフバルブとを具備し、前記上流流路には前記油圧リリーフバルブと前記感温リリーフバルブとが並列に配置され、前記上流流路から前記オイルポンプ側寄りの位置に第1分岐部を介して分岐する第1リリーフ分岐流路と、前記エンジン側寄りの位置で第2分岐部を介して分岐する第2リリーフ分岐流路とに分かれ、前記第1リリーフ分岐流路に前記油圧リリーフバルブが設けられると共に前記感温リリーフバルブは設けられず、前記第2リリーフ分岐流路に前記感温リリーフバルブが設けられ前記油圧リリーフバルブは設けられず、前記感温リリーフバルブは、感温弁体と感温ハウジングとを備え、前記感温弁体は感温駆動部と感温弁部とを備え、該感温弁部は流入孔を有し、前記感温ハウジングは内周側面内に第2リリーフ流出部が形成され、前記感温弁部は摺動により前記第2リリーフ流出部を開閉可能としてなり、前記流入孔は前記第2リリーフ流出部よりも開口面積が小なる構成とし
てなることを特徴とするエンジンのオイル回路のリリーフ装置。
【請求項2】
請求項1において、低油温のとき、前記感温リリーフバルブは、オイルリリーフが行われてなることを特徴とするエンジンのオイル回路のリリーフ装置。
【請求項3】
請求項1において、中油温のとき、前記感温リリーフバルブは低油温付近でオイルリリーフの量が多く、高油温付近でオイルリリーフの量が少なくなるように行われてなることを特徴とするエンジンのオイル回路のリリーフ装置。
【請求項4】
請求項1において、高油温のとき、前記感温リリーフバルブは、オイルリリーフは行われないことを特徴とするエンジンのオイル回路のリリーフ装置。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4の何れか1項の記載において、前記感温リリーフバルブは前記エンジンに設けられてなることを特徴とするエンジンのオイル回路のリリーフ装置。
【請求項6】
請求項1,2,3,4又は5の何れか1項の記載において、前記感温駆動部はサーモワックスによる油温検知によって出没するピストンを有してなることを特徴とするエンジンのオイル回路のリリーフ装置。
【請求項7】
請求項6において、前記感温弁部の流入孔は、前記感温弁部の頂部の外周とは交わらない構成としてなることを特徴とするエンジンのオイル回路のリリーフ装置。
【請求項8】
請求項1,2,3,4,5,6又は7の何れか1項の記載において、前記吐出部で且つ前記感温リリーフバルブの上流側近傍の位置には、前記感温リリーフバルブの感温駆動部にオイルの流れを集中させる突起部が膨出形成されてなることを特徴とするエンジンのオイル回路のリリーフ装置。
【請求項9】
請求項8において、前記突起部は、上流側では緩傾斜状に形成されてなることを特徴とするエンジンのオイル回路のリリーフ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧リリーフバルブと感温リリーフバルブとを具備し、オイルの温度の高低にかかわらず、狙ったオイルの圧力でのオイルリリーフ(排出)の実行を可能とし、且つその構成を簡単にできるエンジンのオイル回路のリリーフ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンに潤滑及び冷却のためのオイルを供給するためのポンプで、吐出圧が所定値を超えた場合にリリーフを行うリリーフ弁を具備したものが種々存在している。さらに、圧力変化と共に、オイルの温度変化にも対応してリリーフを実行するかしないかを判断するタイプのエンジンのオイル回路のリリーフ装置も存在する。
【0003】
この種の具体例として、特許文献1の第3の実施形態が存在する。特許文献1の第3の実施形態は、第一制御弁(4)と、第二制御弁(7)を備えたオイルポンプである。この特許文献1を概説する。なお、符号は特許文献1に使用されているものを、そのまま使用する。第一制御弁(4)は、オイルポンプX下流の吐出油路(5)における作動オイルの吐出圧が高い場合のリリーフ弁として機能する構成となっている。
【0004】
第二制御弁(7)は、作動オイルの温度に応じて動作して前記第一制御弁(4)に対する制御、具体的には第一制御弁(4)の第二弁室(44)に流入する作動オイルの油圧を制御するための弁である。第二制御弁(7)は、作動オイルの温度に応じて弁体(72)の往復動作させる弁体作動機構(73)を備えている。弁体作動機構(73)は、伸縮する感温伸縮体(73a)であり、具体的には、形状記憶合金製のバネが用いられている。
【0005】
前記第一制御弁(4)と前記第二制御弁(7)とは、第一弁間油路(91)と第二弁間油路(92)とによって連通されている。第一弁間油路(91)と第二弁間油路(92)との連通、非連通を切り替える事で第一制御弁(4)の弁体(42)での油圧の制御を行っている。このように、特許文献1では、第一制御弁(4)と第二制御弁(7)とは、単独で動作するものではなく、相互に関連しつつ動作する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006―214286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、前記第二制御弁(7)は、油温の変化に従って、膨張したり収縮したりするものであるため、第一制御弁(4)は油温に影響されて動作する。高油温時とはおよそ油温110℃〜130℃程度であり、例えば油温50℃の時は油温110℃〜130℃程度の時と比べてオイル粘度が高いため油圧は高くなっている。
【0008】
よって、油温50℃のような低油温時においては、ロータ回転数当たりの吐出圧が油温110〜130℃程度の時と比較して高くなることから、各図に記載された直線L1の傾きが急になり、そして吐出圧がある所定の値まで上昇した時に第一制御弁(4)が吐出圧のリリーフを行う。以上の動作より、低油温時の方が油圧が高くなるため、エネルギーロスが多く、低油温時での燃費向上の阻害要因となっていた。
【0009】
感温バルブである第二制御弁(7)は、第一制御弁(4)のリリーフ圧を増減させるための制御弁であり、第二制御弁(7)の制御バラツキと第一制御弁(4)の制御バラツキが直列接続により足し合わされ、大きな制御バラツキとなってしまうものであった。また、第二制御弁(7)は流量では無く油圧を制御する弁であるため、多少なりとも通すれば油圧はほぼ全てが伝播するいわゆるON・OFF式の弁であり、細かい制御は困難なものであった。
【0010】
そこで、本発明の目的(解決しようとする課題)は、極めて簡単な構成で、オイル温度の高低に係らず、ほぼ同じ油圧特性とすることができ、特に低油温時での燃費低下を抑制でき且つ安価で信頼性の高いエンジンのオイル回路のリリーフ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明をオイルポンプと、該オイルポンプの吐出部側からエンジンまで設けられた上流流路と、オイルの圧力にて弁体が移動することでオイルのリリーフを行う油圧リリーフバルブと、オイルの油温を感知して無段階に開閉することでオイルのリリーフを行う感温リリーフバルブとを具備し、前記上流流路には前記油圧リリーフバルブと前記感温リリーフバルブとが並列に配置され、前記上流流路から前記オイルポンプ側寄りの位置に第1分岐部を介して分岐する第1リリーフ分岐流路と、前記エンジン側寄りの位置で第2分岐部を介して分岐する第2リリーフ分岐流路とに分かれ、前記第1リリーフ分岐流路に前記油圧リリーフバルブが設けられると共に前記感温リリーフバルブは設けられず、前記第2リリーフ分岐流路に前記感温リリーフバルブが設けられ前記油圧リリーフバルブは設けられず、前記感温リリーフバルブは、感温弁体と感温ハウジングとを備え、前記感温弁体は感温駆動部と感温弁部とを備え、該感温弁部は流入孔を有し、前記感温ハウジングは内周側面内に第2リリーフ流出部が形成され、前記感温弁部は摺動により前記第2リリーフ流出部を開閉可能としてなり、前記流入孔は前記第2リリーフ流出部よりも開口面積が小なる構成としてなるエンジンのオイル回路のリリーフ装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0012】
請求項2の発明を、請求項1において、低油温のとき、前記感温リリーフバルブは、オイルリリーフが行われてなるエンジンのオイル回路のリリーフ装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1において、中油温のとき、前記感温リリーフバルブは低油温付近でオイルリリーフの量が多く、高油温付近でオイルリリーフの量が少なくなるように行われてなるエンジンのオイル回路のリリーフ装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項4の発明を、請求項1において、高油温のとき、前記感温リリーフバルブは、オイルリリーフは行われないエンジンのオイル回路のリリーフ装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0013】
請求項5の発明を、請求項1,2,3又は4の何れか1項の記載において、前記感温リリーフバルブは前記エンジンに設けられてなるエンジンのオイル回路のリリーフ装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項6の発明を、請求項1,2,3,4又は5の何れか1項の記載において、前記感温駆動部はサーモワックスによる油温検知によって出没するピストンを有してなるエンジンのオイル回路のリリーフ装置としたことにより、上記課題を解決した。
【0014】
請求項7の発明を、請求項6において、前記感温弁部の流入孔は、前記感温弁部の頂部の外周とは交わらない構成としてなるエンジンのオイル回路のリリーフ装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項8の発明を、請求項1,2,3,4,5,6又は7の何れか1項の記載において、前記吐出部で且つ前記感温リリーフバルブの上流側近傍の位置には、前記感温リリーフバルブの感温駆動部にオイルの流れを集中させる突起部が膨出形成されてなるエンジンのオイル回路のリリーフ装置としたことにより、上記課題を解決した。請求項9の発明を、請求項8において、前記突起部は、上流側では緩傾斜状に形成されてなるエンジンのオイル回路のリリーフ装置としたことにより上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明では、オイルポンプの吐出部からエンジン又は該エンジンのメインギャラリに設けられた上流流路において、オイル圧力にて弁体が移動しつつリリーフを行う油圧リリーフバルブと、油温を感知して開閉する感温リリーフバルブとが並列に配置される構成としたことにより、油圧リリーフバルブと感温リリーフバルブとは相互に独立して作動するものである。
【0016】
つまり、油圧リリーフバルブは、オイルポンプの吐出圧を感知してオイルリリーフ動作を行うか否かが決定され、感温リリーフバルブは油温を感知してオイルリリーフ動作を行うか否かが決定されるものである。したがって、オイルポンプから上流流路を介してエンジンにオイルを送る場合に、エンジンの低回転数域から高回転数域に亘って生じるオイルポンプの吐出圧の変化に対しては油圧リリーフバルブが作動し、油温の変化に対しては感温リリーフバルブが作動する。
【0017】
油圧リリーフバルブと感温リリーフバルブとは、上流流路内において並列に配置されており、それぞれ個別又は両方が同時にリリーフ動作することができる。このために、オイルポンプからのオイル吐出圧と油温の何れか一方のみが変化して、オイルリリーフが必要な状況となれば、油圧リリーフバルブ又は感温リリーフバルブが対応し、オイルリリーフを行うことができるものである。
【0018】
なお、ここで並列とは、油圧リリーフバルブと感温リリーフバルブとが直列に接続されない配置のことを意味し、上流流路から分岐して並列に配置されさえすれば、一方のリリーフバルブが相対的に上流寄りに配置され、他方のリリーフバルブが相対的に下流寄りに配置される構成も並列に含まれるものとする。
【0019】
本発明の構成では、感温リリーフパルブと油圧リリーフバルブとは並列に接続されるので、それぞれのリリーフバルブが持つ制御バラツキは足し合わされること無く、より正確な制御が行える。また感温リリーフバルブは油温を感知して無段階に開閉することでオイルのリリーフを行う機能を有しているため、従来のようないわゆるON・OFF式のバルブでは無く、無段階に開閉できる。例えば感温リリーフバルブを少しだけ開けば、少しだけリリーフするので、少しだけ油圧が低減され、よって感温リリーフバルブの開閉量を調整することで無段階に油圧の調整を行うことが出来る。
【0020】
請求項2の発明では、低油温のとき、油圧リリーフバルブだけで無く、感温リリーフバルブからもオイルがリリーフされる。これによって油圧が高くなる低油温時では油圧リリーフバルブのリリーフの有無に関係なく、感温リリーフバルブから常にオイルがリリーフされる。以上より低油温時に油圧が高くなることを防止し、もって低油温時の燃費悪化を防止することが出来る。
【0021】
請求項3の発明では、中油温のとき、前記感温リリーフバルブは低油温付近でオイルリリーフの量が多く、高油温付近でオイルリリーフの量が少なくなるように行われるものである。中油温は、低油温と高油温との間の温度範囲である。そのため、中油温内において低油温側寄りと高油温側寄りとでは、大きな温度差が有る。これによって中油温の範囲内では、オイルの粘度にも大きな差が生じる。
【0022】
したがって、中油温内において、油温が低いほどオイルの粘度が大きく油圧は上昇し、油温が高いほど粘度は小さく油圧は減少する。そこで、感温リリーフバルブは、中油温内において、油温が低い範囲では、リリーフ量を増やすような制御を行っているため、油温が下がっていても油圧は上昇せず、吐出圧を略一定の低い油圧に維持することができ、燃費の悪化を引き起こさない。
【0023】
請求項4の発明では、高油温のとき、前記感温リリーフバルブは、オイルリリーフは行われない構成である。これによって、冷却や潤滑を促進することができる。請求項5の発明では、感温リリーフバルブはエンジンに設けられる構成としたことにより、感温リリーフバルブをシリンダーブロック内に配置される油路であるメインギャラリの直近の上流側であり、且つエンジンのシリンダーブロックに取り付けることで、特別に感温リリーフバルブのバルブハウジングを用意することなく、エンジンのシリンダーブロックが感温リリーフバルブのハウジングを兼ねることができ、装置の小型化及び部品点数の削減を実現できる。
【0024】
請求項6の発明では、感温リリーフバルブの構成を極めて簡単且つコンパクトにでき、本発明による装置全体を低価格にて提供することができる。請求項7の発明では、能力が異なり、且つサイズの種々異なるオイルポンプに対して、部品の共有化が図れた感温リリーフバルブを構成するこができ、よって本発明品を低価格にて提供することができる。また、感温リリーフバルブのポンプハウジングへの装着において、感温弁部の流入孔と、感温ハウジングの第2リリーフ流出部との位置又は位相関係を考慮することなく装着することができる。請求項8の発明では、感温リリーフバルブにおける油温の変化を検知し易くして、感温リリーフバルブの応答を迅速にすることができる。請求項9の発明では、感温リリーフバルブにオイルの流れを集中させるように流れが屈曲してもオイルの流れの乱流を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明において第1実施形態のリリーフ流路を有するエンジンのオイル循環回路の構成を示す略示図である。
図2】低油温且つエンジンの低回転数域におけるオイルのリリーフ動作を示す拡大略示図である。
図3】低油温且つエンジンの中回転数域から高回転数域におけるオイルのリリーフ動作を示す拡大略示図である。
図4】(A)は中油温範囲の低油温寄りで且つエンジンの低回転数域におけるオイルのリリーフ動作を示す拡大略示図、(B)は中油温範囲の高油温寄りで且つエンジンの低回転数域におけるオイルのリリーフ動作を示す拡大略示図である。
図5】(A)は中油温範囲の低油温寄りで且つエンジンの中回転数域から高回転数域におけるオイルのリリーフ動作を示す拡大略示図、(B)は中油温範囲の高油温寄りで且つエンジンの中回転数域から高回転数域におけるオイルのリリーフ動作を示す拡大略示図である。
図6】高油温且つエンジンの低回転数域におけるオイルのリリーフ動作を示す拡大略示図である。
図7】高油温且つエンジンの中回転数域から高回転数域におけるオイルのリリーフ動作を示す拡大略示図である。
図8】本発明において第2実施形態のリリーフ流路を有するエンジンのオイル循環回路の構成を示す略示図である。
図9】本発明の特性を示すグラフである。
図10】(A)は本発明におけるオイルポンプに油圧リリーフバルブ及び感温リリーフバルブを組み込んだ構成の実施形態の平面図、(B)は(A)のY1-Y1矢視断面図、(C)は(A)の(α)部の一部断面にした図、(D)は(B)の(β)部拡大図である。
図11】(A)は感温リリーフバルブの多量のオイルをリリーフする状態の要部拡大断面図、(B)は感温リリーフバルブの少量のオイルをリリーフする状態の要部拡大断面図、(C)は感温リリーフバルブによってオイルのリリーフをしない状態の要部拡大断面図である。
図12】感温リリーフバルブはオイルのリリーフをしない状態とし、油圧リリーフバルブにてオイルのリリーフをしている状態を示す一部断面にした要部拡大図である。
図13】(A)は感温リリーフバルブにおける感温駆動部と感温弁部との構成を示す一部断面にした側面図、(B)は長円形の流入孔を有する感温弁部の斜視図、(C)は円形の流入孔を有する感温弁部の斜視図である。
図14】(A)は感温駆動部のピストンに対して異なる外径寸法を有する複数の感温弁部から選択しピストンに接続可能であることを示す断面図、(B)はポンプハウジング内の感温ハウジング箇所の断面図である。
図15】(A)は図10(A)のX1−X1矢視断面図、(B)は(A)の(γ)部拡大図、(C)は(A)の(γ)部において別の実施形態の突起部を設けた構成の拡大図である。
図16】突起部が形成されない場合の吐出部のオイルの流れを示すポンプの要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明は、主に油圧リリーフバルブAと、感温リリーフバルブBと、オイル循環回路6と、上流流路61と、下流流路62と、オイルポンプ9とからなる(図1図8参照)。油圧リリーフバルブAは、オイルポンプ9からの吐出圧によって、リリーフ(排出)動作するものである。油圧リリーフバルブAは、弁体1と、弾性部材2と、弁ハウジング3とから構成される(図1図8参照)。
【0027】
弁体1は、円筒形状の小径部11と大径部12とから構成され、両者は、同一軸芯で且つ軸方向に一体形成される。小径部11は、略円柱状となるように軸方向に長く形成され、大径部12は扁平円筒形状に形成される。小径部11の軸方向一端の端面〔図1において弁体1の上端面〕は、受圧面11aである。
【0028】
大径部12の軸方向他端〔図1において弁体1の下端面〕には、円筒形状の突起部14が形成されている。該突起部14は、コイルバネ等の弾性部材2を支持する役目をなすものであり、突起部14は、コイルバネとした弾性部材2内に挿入される構造となる。
【0029】
弁ハウジング3は、小径弁室31と大径弁室32とから構成される。小径弁室31は、前記弁体1の小径部11が摺動する弁室であり、大径弁室32は、大径部12が摺動する弁室である。なお、小径弁室31では、小径部11のみが摺動するが、大径弁室32では、大径部12と共に小径部11も入り込む。
【0030】
弁ハウジング3の小径弁室31には、その軸方向端部(図1の弁ハウジング3の上端箇所)に第1リリーフ流入部33が形成される。該第1リリーフ流入部33は、弁ハウジング3と弁体1の頂部との間に配置され、油圧リリーフバルブAにオイルを流入させる役目をなすものである。
【0031】
また、弁ハウジング3の小径弁室31の軸方向中間箇所から、前記大径弁室32との境界箇所の間の適宜の位置には第1リリーフ流出部34が形成される。該第1リリーフ流出部34は、弁体1の小径部11の往復摺動によって開閉されるものであり、開かれたときにはオイルを弁ハウジング3から外部に排出し、オイルをオイルポンプ9の吸入側又はオイルパン101に戻す役目をなすものである。油圧リリーフバルブAは、上記の構成としたものに限らず、オイルの圧力を感知して作動するものであれば、どのようなものでもかまわない。
【0032】
また、第1リリーフ流出部34は、2個設けられることもある。この場合、2個の第1リリーフ流出部34,34は、弁体1の移動方向に所定間隔をおいて配置される。第1リリーフ流出部34が2個設けられることによって、より細かい油圧制御が可能になる。
【0033】
感温リリーフバルブBは、感温弁体4と感温ハウジング5とから構成される。感温弁体4は、感温弁部41と感温駆動部42とから構成され、感温駆動部42がオイルの温度を検知して、感温弁部41を感温ハウジング5内で摺動させる。感温ハウジング5には、第2リリーフ流入部51と第2リリーフ流出部52が形成されている。
【0034】
ここで、従来の感温センサを備えた感温リリーフバルブは動作を開始し終了するまでの油温の変化の差が5°C乃至10°C程度を意図して設計されている。しかし、本発明における感温リリーフバルブBは、オイルのリリーフを行うための動作を始めて終了するまでの温度差をさらに大きくしており、具体的には約50°C(必要に応じて約40°C)で動作を開始し、約120°C(必要に応じて約140°C程度)で動作を終了するものであり、その油温の差は約70°C(或いは約100°C)である。
【0035】
このように、本発明における感温リリーフバルブBのオイルのリリーフを行うための動作を行う温度範囲を従来のものよりも格段に拡げたものである。そして、低い油温から高い油温に向かって感温弁部41が移動方向の始端部から終端部に向かって徐々に移動することができるようになっている。つまり、従来のようなON・OFF制御ではなく、広い油温範囲で油温に追従してゆく制御とすることができるものである。
【0036】
感温駆動部42は、感温センサとしての役目を具備している。具体的には、シリンダタイプの部材で、シリンダ42aとピストン42bとから構成される。シリンダ42aには、感温センサ42cが設けられている。感温センサ42cとしては、サーモワックスが使用されている。具体的には、シリンダ42aにサーモワックスが充填された部分が設けられ(図1参照)、該サーモワックスが検知する温度の高低により膨張及び熱収縮を行い、前記ピストン42bがシリンダ42aに対して伸縮動作を行うものである。
【0037】
感温センサ42cにサーモワックスが使用される構成にすることによって、装置を安価なものとすることができる。また、サーモワックスは、膨張,収縮が略正確にできることによって、感温弁体4は、より一層円滑に動作することができる。
【0038】
前述したように、感温リリーフバルブBは、従来のようなON・OFF制御ではなく、広い油温範囲で油温に追従してゆく制御とすることができるものである。そして、感温リリーフバルブBの感温弁体4は、油温の高低の変化に対して、徐々に伸縮量が変化するものである。つまり、感温弁体4は、オイルの油温が上昇することにより、第2リリーフ流入部51と第2リリーフ流出部52との開口を徐々に狭くするように閉じるものであり、第2リリーフ流入部51と第2リリーフ流出部52とを介して流れるオイルの量を徐々に減少させてゆくことができる構成である。
【0039】
また、油温が下降するときには、第2リリーフ流入部51と第2リリーフ流出部52との全閉状態から徐々に開口面積が広くなるように開き、オイルがリリーフする量を徐々に増加させることができるようにしたものである。つまり、感温弁体4の動作を制御する感温駆動部42は、油温の高低で、単に第2リリーフ流入部51と第2リリーフ流出部52とを、全開状態と全閉状態との何れか一つの状態とする構造としたものではない。
【0040】
本発明では、第2リリーフ流入部51と第2リリーフ流出部52との全閉と全開の状態に加えて、その開閉途中の状態にすることもできる構成としたものである。すなわち、感温弁体4は、第2リリーフ流入部51と第2リリーフ流出部52の開き面積を、オイルの油温に対応して最適に調整することができるようにしたものである。
【0041】
このような構造によって、油温の高低の変化により、感温弁部41が感温ハウジング5内を往復移動する。このとき、オイルが低油温の場合には前記第2リリーフ流入部51と前記第2リリーフ流出部52とを全開として、感温リリーフバルブBを通過するオイルのリリーフ量を最大とする。また、オイルが高油温の場合には第2リリーフ流入部51と第2リリーフ流出部52とを全閉として、感温リリーフバルブBによるオイルのリリーフは行われない。
【0042】
そして、油温が中油温の場合では、中油温の範囲内で低油温寄りでは第2リリーフ流入部51と第2リリーフ流出部52との開口面積は、全開状態のときよりも若干小さくなる。また、中油温の範囲内で高油温寄りでは、第2リリーフ流入部51と第2リリーフ流出部52とは全閉ではなく、開口面積が小さい状態で開く。
【0043】
つまり、油温が中油温において、低油温寄りでは、オイルのリリーフ量を多い状態にでき、高油温寄りでは、オイルのリリーフ量を少ないものにできる。このように、オイルの油温が中油温では、オイルのリリーフ量を大小に無段階に調整することができる構造としている。
【0044】
前記感温駆動部42には、感温センサ42cとしてサーモワックスを用いたが、感温駆動部42は、これに限定されることなく、たとえば形状記憶合金,バイメタル等が使用されることもある。前記感温駆動部42に使用するサーモワックス,形状記憶合金,バイメタル等は、電気系統を一切使用しないもので、本発明ではこれを非電子制御部品と称する。前記感温リリーフバルブBにおける感温駆動部42に、非電子制御部品を使用することにより、電子制御系の部品を使用しないので、電気系統の不具合からくる影響を受けることなく、安定した作動にすることができる。
【0045】
また、感温弁部41は、第2リリーフ流入部51と第2リリーフ流出部52を常時連通状態にする方向に、感温駆動部42の荷重と逆方向に荷重を加えるコイルバネ等の補助弾性部材43が具備されている。
【0046】
以上のように、感温リリーフバルブBの感温センサ42cには、非電子制御部品が使用されることによって、電子制御系の部品を使用しないので、電気系統の不具合からくる影響を受けることなく、安定した作動にすることができる。
【0047】
オイルポンプ9は、内接歯車式ポンプであって、ポンプハウジング91と、インナーロータ95と、アウターロータ96とから構成される。ポンプハウジング91内にはロータ室92が形成され、吸入ポート93と吐出ポート94とが形成されている。ポンプハウジング91において、吸入ポート93が形成されている側を吸入部9Aと称し、吐出ポート94が形成されている側を吐出部9Bと称する。そして、吸入部9Aには吸入ポート93と共に該吸入ポート93の吸入口等を含めた構成が備わっており、吐出部9Bには吐出ポート94と共に吐出ポート94の吐出口等を含めた構成が備わっている。
【0048】
前記ロータ室92には、インナーロータ95とアウターロータ96とが配置されている。インナーロータ95には、外歯が形成され、アウターロータ96には内歯が形成されており、アウターロータ96内にインナーロータ95が配置され、インナーロータ95が駆動して、アウターロータ96と共に回転し、吸入ポート93から吸入したオイルを吐出ポート94から吐出する。
【0049】
オイルポンプ9は、オイル循環回路6に組み込まれている。該オイル循環回路6は、自動車等のエンジンEにオイルポンプ9によって潤滑油を供給するものである。そして、オイル循環回路6において、オイルポンプ9の吐出部9BからエンジンEまでの流路を上流流路61と称し、エンジンEからオイルポンプ9の吸入部9Aまでの流路を下流流路62と称する。また、下流流路62内には、オイルパン101が設けられ、該オイルパン101を介してオイルポンプ9の吸入部9Aに連通する構成とすることもある。
【0050】
オイルポンプ9とエンジンEとの間、つまりオイル循環回路6の上流流路61の中間箇所とオイルポンプ9の吸入部9Aとの間には、リリーフ流路7が設けられている。該リリーフ流路7には、前記油圧リリーフバルブAと前記感温リリーフバルブBとが並列となるように設けられている。
【0051】
リリーフ流路7の構成としては、2つの実施形態が存在し、その第1実施形態では、前記上流流路61からオイルポンプ9側寄りの位置で、第1分岐部7aを介して分岐する第1リリーフ分岐流路71と、エンジンE側寄りの位置で第2分岐部7bを介して分岐する第2リリーフ分岐流路72とに分かれている(図1参照)。
【0052】
そして、第1リリーフ分岐流路71と第2リリーフ分岐流路72とは並列の流路となり、前記第1リリーフ分岐流路71に油圧リリーフバルブAが設けられ、前記第2リリーフ分岐流路72に感温リリーフバルブBが設けられ、このような構成とすることによって、油圧リリーフバルブAと感温リリーフバルブBとは並列となる。
【0053】
第1リリーフ分岐流路71において油圧リリーフバルブAが設けられた位置の上流側の流路を、第1リリーフ分岐流路71の第1上流分岐流路71aと称し、下流側の流路を、第1下流分岐流路71bと称する。そして、油圧リリーフバルブAの第1リリーフ流入部33と前記第1上流分岐流路71aが接続され、第1リリーフ流出部34と前記第1下流分岐流路71bとが接続される(図1参照)。
【0054】
同様に、第2リリーフ分岐流路72において感温リリーフバルブBが設けられた位置の上流側の流路を、第2リリーフ分岐流路72の第2上流分岐流路72aと称し、下流側の流路を、第2下流分岐流路72bと称する。そして、感温リリーフバルブBの第2リリーフ流入部51と前記第2上流分岐流路72aが接続され、第2リリーフ流出部52と前記第2下流分岐流路72bとが接続される(図1参照)。
【0055】
第1リリーフ分岐流路71と第2リリーフ分岐流路72とは、共にオイルパン101を介してオイルポンプ9の吸入部9A側にオイルを送ることができるようになっている。またリリーフ流路7の第2実施形態としては、オイル循環回路6の上流流路61の中間箇所からオイルポンプ9の吐出部9B側に連通する1本の上流共有流路73が設けられ、該上流共有流路73から上流二股分岐部7cが設けられ、該上流二股分岐部7cから第1リリーフ分岐流路71と第2リリーフ分岐流路72とが並列状態で設けられる(図8参照)。
【0056】
第1リリーフ分岐流路71と第2リリーフ分岐流路72の一方側には油圧リリーフバルブAが設けられ、他方には感温リリーフバルブBが設けられる。そして、第1リリーフ分岐流路71と第2リリーフ分岐流路72との下流端部で、下流二股合流部7dが設けられ、該下流二股合流部7dから下流共有流路74が設けられる。該下流共有流路74は、オイルポンプ9の吸入部9Aにオイルパン101を介して連通している。
【0057】
このように、リリーフ流路7の第2実施形態は、上流側端部と下流側端部との間で二股状となるように第1リリーフ分岐流路71と第2リリーフ分岐流路72が設けられ、これらに、油圧リリーフバルブAと感温リリーフバルブBが並列状態となるように配置されている構成としたものである。
【0058】
第1実施形態のオイル循環回路6の上流流路61において、油圧リリーフバルブAは、オイルポンプ9側寄りの位置に設けられ、感温リリーフバルブBは、エンジンE側寄りに設けられ、特に、エンジンEのメインギャラリにおける上流側の直近又は直前の位置に設けられることが好ましい。これによって、エンジンEのメインギャラリの油温により近い油温によって、感温リリーフバルブBの制御が行なえ、正確な制御を行うことができる。
【0059】
エンジンEは、特に図示しないが、シリンダーヘッド,シリンダーブロックからなり、該シリンダーブロック内には、前記上流流路61の最下流部分であるメインギャラリ(つまりエンジンE内に設けられた油路)が形成されている。
【0060】
感温リリーフバルブBは、エンジンEと一体構造となるようにシリンダーブロック内に組み込まれることがあり、油圧リリーフバルブAは、前記オイルポンプ9は一体構造とする構成とし、ポンプハウジング91に組み込まれることもある。このような構成であっても、油圧リリーフバルブAと感温リリーフバルブBとはリリーフ流路7において並列となっている。
【0061】
オイル循環回路6におけるオイルの基本的な流れについて説明する。オイルポンプ9の吐出部9B側から吐出されたオイルは、オイル循環回路6に流れ、上流流路61を介して、エンジンEに潤滑及び冷却としてのオイルが供給される。そして、エンジンE内を循環したオイルは、下流流路62を流れ、再びオイルポンプ9の吸入部9A側に戻る。このとき、下流流路62とオイルポンプ9の吸入部9Aとの間にオイルパン101が設けられているときには、該オイルパン101に溜められる(図1参照)。
【0062】
次に、本発明におけるリリーフ装置のリリーフ動作を説明する。オイルのリリーフが行われるリリーフ流路7には、前述したように、油圧リリーフバルブAと感温リリーフバルブBとが並列に配置され、それぞれが独立してリリーフ動作を行う。そして、オイルポンプ9からのオイル吐出圧の増加或いは油温の高低によって、油圧リリーフバルブAと感温リリーフバルブBのそれぞれが個別に動作する。
【0063】
以下、オイルのリリーフ動作を、油温の高低及びエンジンEの回転数の高低に応じて、以下の場合について説明する。ここで、オイルの油温が低油温とは、約50°C以下の場合であり、この低油温には約40°Cから約60°Cより低い温度範囲を有するものである。また、中油温とは、約40°Cから約130°Cの範囲内であるが、本発明では約50°Cから約120°Cとする。また、高油温とは約120°C以上とする。また、図1乃至図8において、オイル循環回路6及びリリーフ流路7に沿って記載された矢印は、オイルの流れとその方向を示すものである。
【0064】
オイルが低油温で且つエンジンEが低回転数域のときにおけるオイルのリリーフ動作は以下の通りである(図2参照)。前記感温リリーフバルブBは、オイルのリリーフが行われ、前記油圧リリーフバルブAはオイルのリリーフが行われない。このような状況の具体例としては、例えばエンジンEの始動直後であって、オイルが十分に温まっていない場合である。したがって、オイルは低油温で、オイルの粘度は高くなっている。
【0065】
油圧は低いので、油圧リリーフバルブAによるリリーフ動作は行われない。これに対して、感温リリーフバルブBは、低い油温のときに弁体4は、第2リリーフ流入部51と第2リリーフ流出部52とが連通するように開き状態とし、第2リリーフ分岐流路72はオイルが流れ、リリーフが行われる。
【0066】
オイルが低油温で且つエンジンEが中回転数域及び高回転数域のときにおけるオイルのリリーフ動作は以下の通りである(図3参照)。感温リリーフバルブB及び油圧リリーフバルブAは、共にオイルのリリーフが行われる。つまり、エンジンEが中回転数域及び高回転数域の状態では、オイルの圧力も高くなるので、油圧リリーフバルブAが作動し、油圧によるリリーフが行われる。
【0067】
オイルが中油温で且つエンジンEが低回転数域のときにおけるオイルのリリーフ動作は以下の通りである(図4参照)。感温リリーフバルブBは、中油温の範囲内における低油温寄りでオイルのリリーフの量が多くなるようにオイルのリリーフが行われる〔図4(A)参照〕。また、中油温の範囲内における高油温寄りでオイルのリリーフの量が少なくなるように第2リリーフ流入部51と第2リリーフ流出部52との連通量を少なくする。油圧リリーフバルブAは、エンジンEが低回転数域の状態であり、オイルの圧力が低いので、オイルのリリーフは行わない〔図4(B)参照〕。
【0068】
オイルが中油温で且つエンジンEが中回転数域及び高回転数域のときにおけるオイルのリリーフ動作は以下の通りである(図5参照)。感温リリーフバルブBは、中油温の範囲内における低油温寄りでオイルのリリーフの量が多くなるようにオイルのリリーフが行われる〔図5(A)参照〕。また、中油温の範囲内における高油温寄りでオイルのリリーフの量が少なくなるようにオイルのリリーフが行われる。油圧リリーフバルブAは、エンジンEが中回転数域及び高回転数域ではオイルの圧力も上昇するので、オイルのリリーフを行うものである〔図5(B)参照〕。
【0069】
オイルが高油温で且つエンジンEが低回転数域のときにおけるオイルのリリーフ動作は以下の通りである(図6参照)。感温リリーフバルブBは、高油温では、全閉となりオイルのリリーフは行わない。また、油圧リリーフバルブAは、エンジンEが低回転数域の状態であり、オイルの圧力が低いので、オイルのリリーフは行わない。
【0070】
オイルが高油温で且つエンジンEが中回転数域及び高回転数域のときにおけるオイルのリリーフ動作は以下の通りである(図7参照)。感温リリーフバルブBは、高油温では、全閉となりオイルのリリーフは行わない。また、油圧リリーフバルブAは、オイルポンプ9からの吐出圧は高いので、オイルのリリーフは行われる。
【0071】
以上のように、本発明におけるリリーフ装置では、オイルの低油温,中油温,高油温及びエンジンEの低回転数域,中回転数域及び高回転数域でのそれぞれの状況に応じて、適正なオイルのリリーフが行われるものである。これによって、本発明の油圧特性を示すグラフ(図9参照)に示されているように、本発明の油圧特性は、低油温であっても中油温であっても、高油温と同等の低い油圧特性にできる。
【0072】
以下、本発明の主要な構成を述べる。リリーフ流路7は、第1リリーフ分岐流路71と第2リリーフ分岐流路72とが並列をなすように設けられ、前記第1リリーフ分岐流路71には油圧リリーフバルブAが設けられ、前記第2リリーフ分岐流路72には感温リリーフバルブBが設けられている。
【0073】
前記感温リリーフバルブBの油温を感知するセンサ(感温センサ42c)は、非電子部品が使用される。さらに、前記感温リリーフバルブBは、油温を感知して移動する感温弁体4の動作は油温の高低の変化に対して徐々に滑らかに移動するものである。
【0074】
本発明におけるリリーフ装置は以上述べたように、低油温のとき、前記感温リリーフバルブBは、オイルリリーフが行われ、中油温のとき、前記感温リリーフバルブBは低油温寄りでオイルのリリーフの量が多く、高油温寄りでオイルのリリーフの量が少なくなるように行われ、高油温のとき、前記感温リリーフバルブBは、オイルのリリーフは行われないことを特徴としたものである。
【0075】
また、本発明の実施形態においては、前記オイルポンプ9は内接歯車式ポンプとしたが、これに限定されるものではなく、外接歯車式ポンプ、ベーンポンプ等が使用されても構わない。つまり油圧発生源としてのポンプであればポンプの種類は問わないものである。
【0076】
さらに、本発明の実施形態においては、感温センサ42cによる制御をより正確に、且つより応答性を良くするため、感温センサ42cは上流流路61に対して隣接又は一部突入して配置されると良い。また、本発明の第2実施形態において、弁ハウジング3と感温ハウジング5とを鋳造等により一体形成される構造にすることにより、部品点数が削減される。
【0077】
次に、油圧リリーフバルブA及び感温リリーフバルブBの具体的な構成を説明する。ここで、油圧リリーフバルブA及び感温リリーフバルブBは、ポンプハウジング91内に組み込まれ、油圧リリーフバルブA及び感温リリーフバルブBを一体的に組み合わせてユニットとしたオイルポンプ9の構造として説明する〔図10(A)参照〕。
【0078】
また、説明を理解し易くするために、ポンプハウジング91に上下方向を設定する。ポンプハウジング91の上下方向は、図10(A)において、インナロータ95及びアウターロータ96の回転する方向を垂直面としたときの垂直方向を上下方向とする。上下方向については、図10に記載されている。図中において、98は駆動軸であり、該駆動軸98は、エンジンEの動力によって回転し、インナーロータ95及びアウターロータ96を回動させる。
【0079】
油圧リリーフバルブAは、前述したように、弁体1と、弾性部材2と、弁ハウジング3とから構成される。感温リリーフバルブBは、上流流路61に設けられる。該上流流路61は、ポンプハウジング91の吐出部9Bに続く流路であるが、ここでは、上流流路61は、ポンプハウジング91内に一体的に形成されて組み込まれる構造としている〔図10(A)参照〕。
【0080】
このように上流流路61におけるポンプハウジング91内に形成された部分をハウジング内上流流路611と称する。該ハウジング内上流流路611は、吐出部9Bを構成する流路であり、吐出ポート94からポンプハウジング91の外部へオイルを吐出する吐出口までの油路である。また、ハウジング内上流流路611は、ポンプハウジング91の上下方向に対して水平方向に延在する流路となっている〔図10(A),(C),図12参照〕。
【0081】
前記ハウジング内上流流路611の下端面には、弁ハウジング3が形成され、弁ハウジング3には弁体1及び弾性部材2が装着され、弁体1は弾性部材2によって常時上方に弾性付勢されている。弁ハウジング3の上端箇所は、前記ハウジング内上流流路611に交わる部分で、開口3aとなっている。該開口3aは、前記リリーフ流路7と前記第1リリーフ流入部33に相当する部分として使用される部位である。
【0082】
つまり、リリーフ流路7の第1分岐部7a,第1リリーフ分岐流路71の上流分岐流路71aの部分が前記開口3aにまとめて備わったものである。弁ハウジング3の開口3a部分の内径は、弁体1の外径よりも小さく形成されており、弁体1は、開口3aから上方に突出できない構成となっている。
【0083】
前記弁ハウジング3の内周側面3bの適宜の位置に第1リリーフ流出部34が形成されている。該第1リリーフ流出部34は、吸入ポート93に接続され、第1リリーフ流出部34から流出するリリーフオイルは、第1リリーフ分岐流路71の下流分岐流路71bによって、吸入ポート93に送り込まれる。前記下流分岐流路71bは、ポンプハウジング91内に一体的に形成されている。前記第1リリーフ流出部34は、2個が弁ハウジング3の上下方向に沿って並列状に設けられている〔図10(A)参照〕。
【0084】
感温リリーフバルブBは、前述したように、感温弁体4と感温ハウジング5とから構成される。感温リリーフバルブBは、前記ハウジング内上流流路611で且つ前記油圧リリーフバルブAに対して下流側に隣接して設けられている。感温ハウジング5は、ハウジング内上流流路611から分岐するようにして形成されている。
【0085】
感温ハウジング5は、ポンプハウジング91の上下方向に沿って形成され、円筒状の内周側面5bと、円形状の底面5cとによって円筒状の空間に形成されている。感温ハウジング5の上端箇所は、前記ハウジング内上流流路611に交わる部分で、開口5aとなっている。
【0086】
該開口5aは、前記リリーフ流路7と前記第2リリーフ流入部51に相当する部分として使用される部位である。つまり、リリーフ流路7の第2分岐部7b,第2リリーフ分岐流路72の第2上流分岐流路72aの部分が前記開口5aにまとめて備わったものである。前記内周側面5bの適宜の位置に第2リリーフ流出部52が形成されている。
【0087】
該第2リリーフ流出部52は、オイルパン101又は吸入ポート93に接続され、第2リリーフ流出部52から流出するリリーフオイルは、第2リリーフ分岐流路72の第2下流分岐流路72bによって、オイルパン101又は吸入ポート93に送り込まれる。前記第2下流分岐流路72bは、ポンプハウジング91内に一体的に形成されることもある。
【0088】
感温弁体4の感温弁部41は、円筒部411と頂部412とから形成されており、円筒部411の上端に頂部412が一体形成され、略円筒カップ状となしている〔図10(D)参照〕。該頂部412には、感温駆動部42のピストン42bの軸端が挿入接続される接続部413が形成されている。該接続部413は、ピストン42bが挿入可能な円筒形状に形成されたものである〔図13(B),(C)参照〕。
【0089】
前記頂部412には、流入孔414が形成されている〔図10(D),図11図13(B),(C),図14(A)等参照〕。該流入孔414は、前記接続部413の周囲の適宜の箇所に1又は複数個が形成されたものである。流入孔414は、オイルが感温弁部41を介して感温ハウジング5に送り込む役目をなすものである。
【0090】
流入孔414は、種々の形状が存在する。その第1の形状としては、長円〔図13(B)参照〕或いは楕円状である。長円としたものでは、全体の形状が略弧状に形成されている。流入孔414の第2の形状としては、円形状に形成されたものである〔図13(C)参照〕。
【0091】
流入孔414は、2個形成されるときには、前記接続部413を中心として、2個の流入孔414,414が点対称の位置となるように形成されることが好ましい。流入孔414は、その開口の総面積が前記第2リリーフ流出部52の開口面積よりも小さく形成されている〔図10(D),図11図13(B),(C),図14(A)等参照〕。
【0092】
感温弁部41の流入孔414と、第2リリーフ流出部52が直列状に配置される場合は、リリーフ量は、流入孔414と第2リリーフ流出部52におけるその開口面積が小さい方の面積で略決定される。油温が低い場合は、第2リリーフ流出部52は全開である。
【0093】
よって油温が低い場合は、感温弁部41の流入孔414の総面積のみでリリーフ量を決めることができる。また、油温が高い時は感温ハウジング5内の第2リリーフ流出部52は、感温弁部41によって全閉しているため、感温リリーフバルブBによる油圧低減は行われない制御とすることが出来る。
【0094】
感温駆動部42は、前述したように、シリンダ42aとピストン42bとから構成され、前記シリンダ42aには、サーモワックスが充填されている。該サーモワックスは、検知する油温の高低により膨張及び熱収縮を行い、前記ピストン42bがシリンダ42aに対して出没することによる伸縮動作を行うものである。油温を検知する部分を感温センサ42cとする。
【0095】
感温駆動部42は、前記ハウジング内上流流路611で、且つ前記感温ハウジング5が形成された箇所に対応する位置に装着される〔図10(C),図12参照〕。ハウジング内上流流路611には、感温駆動部42が装着される装着部97が形成されている。具体的には、ハウジング内上流流路611の感温ハウジング5形成箇所に対して、その直上の位置に感温駆動部42が配置可能な程度の空隙とした装着部97が形成されている〔図10(C),図12参照〕。
【0096】
感温駆動部42は、ホルダ44を介して前記装着部97に装着される。ホルダ44は、感温駆動部42を保持する保持部44aと外螺子44bを有し、装着部97には内螺子97aが形成されている。そして、前記保持部44aに感温駆動部42のシリンダ42aが装着され、外螺子44bと内螺子97aとが螺合し、感温駆動部42が装着部97に装着される。感温ハウジング5及び感温駆動部42が備えられる位置は、ハウジング内上流流路611の吐出側端部の近傍である〔図10(A),(C),図12参照〕。
【0097】
次に、感温リリーフバルブBの動作を説明する。感温弁部41の頂部412には流入孔414が形成されており、ハウジング内上流流路611を流れる吐出オイルの一部は、常時流入孔414から感温ハウジング5に流れ込む。また、感温リリーフバルブBの感温弁体4は、油温の高低の変化に対して、徐々に伸縮量が変化するものであり、低油温の場合は、感温駆動部42のピストン42bは、感温弁部41を感温ハウジング5の上方に位置させ、第2リリーフ流出部52を全開した状態にある〔図11(A)参照〕。
【0098】
これによって、低油温では、流入孔414と第2リリーフ流出部52をオイルが流れ、常時吐出オイルのリリーフが行われる。前記頂部412に形成された流入孔414は、頂部412の外周寄りに形成されず、該頂部412の中心寄りの領域で且つ軸方向に貫通形成される。つまり、流入孔414は、頂部412の外周寄りに交わることはなく、外周から離間した位置に形成される。
【0099】
これは、流入孔414は、その一部が頂部412の外周縁に交わり、円筒部411側面に溝となる構成にしないものである。これによって、感温弁部41を感温駆動部42のピストン42bに装着すると共に感温弁部41を感温ハウジング5に挿入するときに、該感温ハウジング5内の第2リリーフ流出部52の位置又は位相を考慮することなく、前記ピストン42bを中心軸として水平面上を何れの角度であっても装着することができ、組付け作業が簡単となる。さらに、この組付け作業において、特別な治具や角度(位相)測定装置等を用意する必要もない。
【0100】
ハウジング内上流流路611のオイルの油温が上昇することにより、感温弁部41は感温ハウジング5内で下方に摺動し、第2リリーフ流出部52との開口を徐々に狭くしてゆく。これによって、第2リリーフ流出部52に流れ込むオイルの量が徐々に減少し、オイルのリリーフは少量となる〔図11(B)参照〕。
【0101】
そして、さらに油温が上昇して高油温になると、感温弁部41は、下方に摺動して第2リリーフ流出部52を完全に閉じ(全閉)、第2リリーフ流出部52からのオイルのリリーフはしなくなる〔図11(C)参照〕。オイルが高油圧のときは、油圧リリーフバルブAが第1リリーフ流出部34を開いて、オイルのリリーフが行われる(図12参照)。
【0102】
感温リリーフバルブBにおいて、一つの感温駆動部42に対して、異なる外径寸法を有する複数の感温弁部41,41,…を備える実施形態が存在する〔図14(A)参照〕。これは、感温弁部41が摺動する感温ハウジング5の内径寸法が、オイルポンプ9の吐出量等の能力によって、種々変化することに対応できるようにしたものである〔図14(B)参照〕。
【0103】
まず、異なる外径寸法D1,D2,D3,Dn,…(nは個数を示す正の整数)を有する感温弁部41を複数個備えられる〔図14(A)参照〕。これらの異なる外径寸法を有する感温弁部41の接続部413の内径寸法hは、全て同一である。そして、接続部413の内径hは、感温駆動部42のピストン42bの軸径(直径)dに合わせて、圧入或いはカシメによる接続手段による接続が可能となるようにしておく。
【0104】
オイルポンプ9内の感温リリーフバルブBを装着するときには、感温ハウジング5の内径Hの大きさに合わせて、複数の感温弁部41,41,…から適正な外径寸法のものを選択し、選択した感温弁部41を感温駆動部42のピストン42bと接続して使用する。これによって、多種の内径寸法の感温ハウジング5に対して、感温駆動部42は、一種類のみとしておくことができ、感温リリーフバルブBにかかる費用を低減することができる。
【0105】
油温が低い場合のリリーフ量を変更したい場合は、感温弁部41の流入孔414の開ロ面積を変えるだけで良く、感温駆動部42は一種類のみとすることができるという効果も有する。このように、感温リリーフバルブBは、感温センサ42c,シリンダ42a及びピストン42bは、機種ごとに同じ物を用い、機種ごとの油圧特性自体はピストン42bに固定された感温弁部41の流入孔414の面積を変えるだけで多くの機種に広く用いることが出来る。つまり、感温センサ42c,シリンダ42a及びピストン42bは同じ物が使用できるため、量産効果で費用を安くすることが出来る。
【0106】
次に、吐出部9Bで且つ前記感温リリーフバルブBの上流側近傍の位置には、前記感温リリーフバルブBの感温駆動部42にオイルの流れを集中させる突起部612が膨出形成される実施形態が存在する。具体的には、吐出部9Bを構成するハウジング内上流流路611において、突起部612は、感温駆動部42の感温センサ42c箇所にオイルの流れ方向を合わせる役目をなすものである。突起部612は、感温リリーフバルブBの上流側に極めて近接した状態で形成されている。
【0107】
前記突起部612は、ハウジング内上流流路611に上下方向に直交する断面が略直角三角形の山形状となるように形成されたものである。山形状とした突起部612の頂面部612aは、円弧状に形成されたものである。そして、突起部612の上流側では、傾斜面612bが形成されている。
【0108】
該傾斜面612bは、弧状に形成され、内方に凹む形状としたり〔図15(A),(B)参照〕、外方に膨らむ形状〔図15(C)参照〕としている。さらに、傾斜面612bは、急傾斜面としたり〔図15(A),(B)参照〕、緩傾斜面としている〔図15(C)参照〕。
【0109】
突起部612の頂部612aの位置は、感温駆動部42の感温センサ42cに最も接近した位置であることが好ましい。突起部612によって、流れの方向が感温センサ42cに向けられることで、突起部612が存在しない場合(図16参照)に比較してオイルの流れを感温センサ42cに集中させることができる〔図15(B),(C)参照〕。
【0110】
ポンプハウジング91は、ハウジング本体部911とカバー部912とから構成される。通常では、ハウジング本体部911側に、ロータ室92,吸入ポート93,吐出ポート94等のポンプを構成する主要部が設けられ、ハウジング本体部911にカバー部912が装着されることにより、オイルポンプ9が構成される。また、前記ハウジング本体部911又はカバー部912の何れか一方がエンジン等のケーシングに一体形成されることもある。
【0111】
そして、ハウジング内上流流路611もポンプハウジング91にカバー部912を装着することにより形成されることもあり、このときには、カバー部912に突起部612が形成される(図15参照)。該突起部612は、カバー部912とは別部材とし、突起部612がカバー部912に固着される構造としたり、或いはカバー部912に突起部612が一体形成されることもある。
【0112】
感温リリーフバルブBの感温駆動部42及び感温弁部41は、これらをポンプハウジング91内に装着するために、その装着スペースが必要であり、通常は、吐出部9Bのハウジング内上流流路611等の流路が屈曲する部分に設けられることが多く、且つ流路の長手方向に直交する断面の中央ではなく、端部側寄りの位置となる。そのために、感温駆動部42の感温センサ42cに対してオイルの流れが集中し難くなり、油温の変化を検知する速度が遅くなりがちである(図16参照)。
【0113】
このように、吐出部9Bで且つ前記感温リリーフバルブBの上流側近傍の位置に突起部612を形成して、感温駆動部42の特に感温センサ42c箇所にオイルの流れを集中させることで、感温駆動部42の感温センサ42cが油温の変化を早く検知し、感温リリーフバルブBの油温に対する応答を迅速にすることができる。また、突起部612の傾斜面612bを緩傾斜とすることにより、ハウジング内上流流路611を流れるオイルに乱流が発生し難い構造にでき、騒音を低減できる。感温リリーフバルブBは、特に図示しないが、前記ホルダ44に感温駆動部42のピストン42bの軸端部が当接され、ピストン42bの下方に感温センサ42cが配置され、該感温センサ42cの下方に感温弁部41が配置される構成としてもよい。これは、例えば特開2014−145468号公報の図3に示されたサーモバルブのような構成である。この場合でもピストン42bの伸縮によって、感温弁部41及び感温センサ42cは共に上下動する構成となり、この構成についても、本発明は成立し、本発明の技術思想の範囲内である。
【符号の説明】
【0114】
A…油圧リリーフバルブ、1…弁体、B…感温リリーフバルブ、4…感温弁体、
41…感温弁部、414…流入孔、42b…ピストン、42…感温駆動部、
5…感温ハウジング、52…第2リリーフ流出部、6…オイル循環回路、
61…上流流路、612…突起部、62…下流流路、9…オイルポンプ、
7…リリーフ流路、71…第1リリーフ分岐流路、72…第2リリーフ分岐流路、
9A…吸入部、9B…吐出部、E…エンジン。
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