(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の発明においては、撮像した画像の解析に基づいて異常と検知することにより、人が目視した際に認識できる程度の大きな動きでしか異常の検知は行えず、呼吸の状態や体の微動といった微細な挙動に基づいて異常を検知することはできない。また、特許文献1に記載の発明は、老人等の被監視者の画像を撮像することになるため、被監視者のプライバシーの侵害になってしまうリスクを伴うという問題がある。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、プライバシーの保護が損なわれることなく、多様な環境における目標の状態と、その目標にかかわる事象とを確度高く識別できる測位装置、ベクトル速度算出装置、状態事象識別装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数PのFMCWレーダの覆域のうち、共通の領域に位置する目標について前記複数PのFMCWレーダによって個別に計測された距離d
1〜d
Pに亘って、複数PのFMCWレーダの位置L
1〜L
Pからそれぞれ隔たった点または領域として、前記目標の位置を特定する位置特定手段を備えたことを特徴とする。
【0008】
すなわち、目標の位置は、複数PのFMCWレーダによって個別に計測された「これらのFMCWレーダに対する相対的な位置L
1〜L
P」に該当する点もしくは領域として特定される。しかも、これらのFMCWレーダは、何れも、上記目標の状態、あるいはその目標にかかわる事象の検知が可能なレーダ信号処理に供される多様な情報を提供し得る。
【0009】
請求項
1に記載の発明
は、速度算出手段は、複数PのFMCWレーダの覆域のうち、共通の領域に位置する目標について、前記複数PのFMCWレーダによって個別にスイープの順に検知されたレンジビンR
1〜R
Pの位相φ
1〜φ
Pの変化率として、前記複数PのFMCWレーダに対する個別の速度v
1〜v
Pを求める
ことを特徴とする。
請求項1に記載の発明は、ベクトル速度算出手段は、前記複数PのFMCWレーダの位置に対する前記速度v
1〜v
Pのベクトル和として、前記目標の速度を求める
ことを特徴とする。
【0010】
すなわち、目標の速度は、複数PのFMCWレーダによって個別に計測された「これらのFMCWレーダに対する相対的な速度v
1〜v
P」のベクトル和として求められる。しかも、これらのFMCWレーダは、何れも、上記目標の状態、あるいはその目標にかかわる事象の検知が可能なレーダ信号処理に供される多様な情報を提供し得る。
【0011】
請求項1に記載の発明は、所定数N(≧1)のFMCWレーダの覆域のうち、所定の領域に位置する目標について、前記所定数NのFMCWレーダによって個別にスイープの順に検知されたK(≧1)個のレンジビン(R
11,…,R
1K)〜(R
N1,…,R
NK)のそれぞれの位相(φ
11,…,φ
1K)〜(φ
N1,…,φ
NK)の組み合わせと、前記組み合わせの履歴との双方または何れか一方の特徴として、前記目標の状態または前記目標にかかわる事象を認識する状態事象認識手段を備えたことを特徴とする。
また、請求項1に記載の発明は、前記位置特定手段により特定される前記目標の位置と、前記ベクトル速度算出手段により求められる前記目標の速度との双方または何れか一方を認識するとともに、前記状態事象認識手段は、前記K(≧1)個のレンジビン(R11,…,R1K)〜(RN1,…,RNK)のそれぞれの位相(φ11,…,φ1K)〜(φN1,…,φNK)の差分として位相変化から求められる速度のデータと、あらかじめ記憶されている前記目標の状態または前記目標にかかわる事象に対応するパターンデータとの間でパターンマッチングを行い、類似性を評価することによって前記目標の状態または前記目標にかかわる事象を認識するものであって、前記状態事象認識手段により認識される前記目標の状態または前記目標にかかわる事象は、歩く動作、立った状態から寝る動作、転ぶ動作、寝返りの動作、転落する動作、衝突する動作、座り込みの動作、咳やぜんそくの発作の動作、スリップする動作の少なくとも何れかを含む前記目標の動作の種類を表すことを特徴とする。
【0012】
すなわち、目標の状態やその目標にかかわる事象は、所定数NのFMCWレーダによって個別にスイープの順に観測されたレンジビン毎の位相の組み合わせ、またはこれらの組み合わせの履歴の特徴に基づいてパターン認識される。しかも、このようなパターン認識は、画像処理とは本質的に異なり、かつ目標の微細な動きや変位を検知可能であるレーダ信号処理として実現される。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、所定数N(≧1)のFMCWレーダの覆域に位置する目標の
所定の状態または前記目標にかかわる
所定の事象を識別する状態事象識別装置であって、下記の(1)〜(8)に示す事項の全てもしくは一部からなる組み合わせと、その組み合わせの履歴との双方または何れか一方の特徴に基づいて、前記
目標の前記所定の状態または前記
目標にかかわる前記所定の事象を識別する状態事象識別手段を備えたことを特徴とする。
(1) 前記目標について、前記所定数NのFMCWレーダによって検知された距離d
1〜d
Nに亘って、
前記所定数NのFMCWレーダの位置L
1〜L
Nからそれぞれ隔たった位置として算出された位置
(2) 前記目標について、前記所定数NのFMCWレーダによって個別にスイープの順に検知されたレンジビンR
1〜R
Nの電力
Z1〜ZNの大きさ又は電力
Z1〜ZNの有無
(3) 前記レンジビンR
1〜R
Nの位相φ
1〜φ
N
(4) 前記φ
1〜φ
Nの変化率として与えられる前記目標の前記所定数NのFMCWレーダに対する相対速度v
1〜v
N
(5) 前記目標が位置し得る所定数Mの領域
に存在する電気機器で個別に消費される電力W
1〜W
M
(6) 前記所定数Mの領域における時間帯T
(7)
前記所定数NのFMCWレーダの位置L1〜LNからそれぞれ隔たった位置として算出された前記目標の前記位置、前記電力Z
1〜Z
Nの大きさ又は該電力Z
1〜Z
Nの有無、前記位相φ
1〜φ
N、
前記相対速度v
1〜v
N、前記電力W
1〜W
M、前記時間帯T、のうちの少なくとも何れかを有する複数の要件
(8) 前記目標の所定の状態に関する情報、あるいは前記目標にかかわる所定の事象に関する情報である
前記目標の属性A
これらの項目(1)〜(8)には、目標の状態と、その目標にかかわる事象との多様な形態のパターン認識に供され得る項目が含まれる
。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、FMCWレーダの活用の下で、所望の目標にかかわる状態や事象の項目として、その目標の位置の盛り込みが可能となる。
【0015】
また、本発明によれば、プライバシーの保護が損なわれることなく、目標の状態と、その目標に生じた事象とが精度良くかつ確度高く達成される。
【0016】
さらに、本発明によれば、既存のハードウェア資源であるFMCWレーダの活用、あるいは所定数のFMCWレーダとの連係の下で、様々な目標の監視や見守りが情報処理やレーダ信号処理として実現される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[発明の実施の形態1]
[基本構成]
図1から
図9にこの発明の実施の形態を示す。
【0019】
図1は、この実施の形態に係る状態事象識別装置1Aの全体構成を示す機能ブロック図である。この状態事象識別装置1Aは、この発明に係る「測位装置」「速度算出装置」「状態事象識別装置」としての機能を奏する。
【0020】
図1に示す通り、状態事象識別装置1Aは、「目標」としての被監視者10の各種の状態、あるいはその被監視者10にかかわる各種の事象を検知し、監視するために用いられるものである。この「状態」や「事象」は後述の[状態事象識別装置における「状態」や「事象」の検知の例]の項で具体例を挙げて説明する。
【0021】
この被監視者10は、例えば病院の入院患者、体の不自由な人等の被介護者、一人暮らしの老人等、他者による監視が必要とされる者であり、病室、介護部屋、一人暮らしの家等の部屋11の中に存在する。但し、受刑者や特定の実験の被験者やホールに集まったコンサート等の観客等、健常者であるが他者による監視が行われる者であってもよい。また、
図1においては被監視者10は一人として記載したが、被監視者10は一人に限らず複数人であってもよい。
【0022】
状態事象識別装置1Aは、複数すなわちP個(P>1)のFMCWレーダ1
1,・・・1
Pと、情報混合部4、及び状態検知部5、及び履歴情報記録部6、及び異常通報部7と、を備えている。
【0023】
FMCWレーダ1
1,・・・,1
Pは、電波送信部2
1,・・・,2
Pと、電波受信部3
1,・・・3
Pとを備えている。なお、ここでは電波送信部2
1,・・・,2
Pと電波受信部3
1,・・・,3
Pとは別々の構成としているが、同一の機器を電波送信部2
1,・・・,2
Pかつ電波受信部3
1,・・・,3
Pとして併用する構成であってもよい。
【0024】
FMCWレーダ1
1,・・・,1
Pは、送信波の周波数を変化させながら送信し、送信波と受信波の周波数差により目標(被監視者10)までの距離を検知する機能を有する。また、このFMCWレーダ1
1,・・・,1
Pは、送信波と受信波の位相や位相差を検知することで被監視者10の微少な状態や事象の変化、あるいはその変化の速度を検知できる。
【0025】
電波送信部2
1,・・・,2
Pは、それぞれFMCWレーダ1
1,・・・,1
Pの送信機としての機能を果たし、系時的に周波数が変化する電波を送信波として送信する。
【0026】
電波受信部3
1,・・・,3
Pは、それぞれFMCWレーダ1
1,・・・1
Pの受信機としての機能を果たし、電波送信部2
1,・・・,2
Pが送信し、被監視者10等に反射した電波を受信波として受信して、被監視者10の位置を特定する(詳しくは後述する。)。また、それぞれの電波受信部3
1,・・・,3
Pは、対応する(つまり、自らが受信波として受信する送信波を送信した)電波送信部2
1,・・・,2
Pと連動し、送信波と受信波の差分(ビート信号)や、受信波の周波数と、受信波を受信した際の送信波の周波数との差分(ビート周波数)を検知する機能を有する。また、電波受信部3
1,・・・,3
Pは、周波数解析機能を有し、ビート信号を周波数(距離)成分ごとの受信信号成分に分離し、それぞれの受信信号成分の振幅や位相、及びそれらの時間変化を検知する。これにより、被監視者10の状態や事象の変化、あるいはその変化の速度を検知する(詳しくは後述する。)。
【0027】
情報混合部4は、「位置特定手段」「速度算出手段」としての機能を有する。即ち、情報混合部4は、電波送信部2
1,・・・,2
Pが送信する送信波や、それぞれの電波受信部3
1,・・・,3
Pが受信した受信波に基づく複数の情報を、所定の演算に基づいて混合し、被監視者10の位置や、動く被監視者10の動作の方向や速度を検知する(詳しくは後述する)。
【0028】
状態検知部5は、「状態事象認識手段」「状態事象識別手段」としての機能を奏する。状態検知部5は、情報混合部4において検知された結果に基づいて、被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象を検知する(詳しくは後述する)。具体的には、検知結果と被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる各種の事象を特徴付ける値や値の集合としての「パターンデータ」とのパターンマッチング(後述)によって、被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象を検知する。また、状態検知部5は、検知された被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象が異常なものかどうかを検知する。
【0029】
履歴情報記録部6は、各種のデータ記憶装置であって、過去の電波受信部3
1,3
2,・・・3
Pの受信波や状態検知部5の検知結果などの履歴情報が記録されている。また、状態検知部5におけるパターンマッチング(後述)に用いられる「パターンデータ」も記録されている。
【0030】
なお、この実施の形態においては、履歴情報記録部6に記録された「パターンデータ」のうち、被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象が異常であることを示すもの、例えば「転ぶ」を示す「パターンデータ(
図8の(c)の速度変化グラフ36c参照)」には、異常通報部7に異常を通報させるための構成、例えば、この「パターンデータ」の属性情報として「異常情報(図示せず)」が記録され、「パターンデータ」の異常な状態を示す状態認識情報として機能する。
【0031】
異常通報部7は、被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象が所定の異常状態であることが検知された場合に、監視者(図示せず)に異常を通報する機能を有する。具体的には、例えば、状態事象識別装置1Aに各種ネットワーク(図示せず)で接続された監視者端末(図示せず)のディスプレイ(図示せず)に異常を知らせる画面(図示せず)を表示させたり、監視者(図示せず)の常駐する部屋に設けられた警報装置(図示せず)を遠隔操作でスイッチONにして警報を鳴らしたりするための構成を有する。
【0032】
図2は、この実施の形態の状態事象識別装置1Aと被監視者10の位置関係の一例を模式的に示す図である。同図に示すように、状態事象識別装置1Aは、被監視者10がいる部屋11の四隅に、複数のFMCWレーダ1
1,1
2,・・・1
P(
図2ではP=4)が配設されて、被監視者10を囲んだ状態となっている。
【0033】
図2に示す通り、この実施の形態のFMCWレーダ1
1,・・・1
Pは、被監視者10が存在する部屋11の特定の位置L
1,・・・,L
Pに設置されている。
図1は、FMCWレーダ1
1,・・・,1
Pの設置された位置L
1,・・・,L
Pから被監視者10の位置までの距離がそれぞれ距離d
1,・・・,d
Pであって、FMCWレーダ1
1,・・・,1
PのそれぞれのレンジビンR
1,・・・,R
Pに被監視者10が存在する状態を示している。
【0034】
なお、
図2はFMCWレーダ1
1,1
2,・・・1
Pの配設状態の一例であり、FMCWレーダ1
1,1
2,・・・1
Pの数は幾つであってもよいし、FMCWレーダ1
1,1
2,・・・1
Pを構成する電波送信部2
1,2
2,・・・2
Pの数や電波受信部3
1,3
2,・・・3
Pが同一位置に配設されていなくてもよい。ただし、被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象を、死角を作らずに精度良く検知するためには、複数のFMCWレーダ1
1,1
2,・・・1
Pを構成する複数の電波送信部2
1,2
2,・・・2
Pのそれぞれや、複数の電波受信部3
1,3
2,・・・3
Pのそれぞれが、被監視者10に対して角度や距離が異なる位置になるように配設され、被監視者10に対する送信波の照射方向や照射距離、受信波の受信方向や受信距離などが異なった状態になることが望ましい。
【0035】
なお、以下の説明では、特に区別の必要がある場合を除き、FMCWレーダ1
1,1
2,・・・1
P、電波送信部2
1,2
2,・・・2
P、電波受信部3
1,3
2,・・・3
PはそれぞれFMCWレーダ1、電波送信部2、電波受信部3と記載する。
【0036】
[FMCWレーダ1による被監視者の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象の検知の原理]
図3から
図5に、この実施の形態のFMCWレーダ1による被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象の検知の原理を示す。
【0037】
この実施の形態の状態事象識別装置1Aにおいて、それぞれのFMCWレーダ1を構成する電波送信部2は、周波数を連続的に変調させながら送信波を送信する。
【0038】
具体的には、電波送信部2は、
図3に示すように、所定の時間周期Ts21ごとに送信周波数を連続的に上昇させながら(下降させながら、でもよい。)送信波22を送信する。この送信波22が被監視者10に反射したのち、受信波23が電波受信部3で受信されるまでの遅延時間Δt24によって電波送信部2から被監視者10までの距離を測定する。この遅延時間Δt24は、送信波22と受信波23の周波数差であるビート周波数fb25を検知することで求められる。ビート周波数fb25は、送信波22と受信波23とを電波受信部3において合成し、ローパスフィルタ(図示せず)によって送信波22と受信波23の差分を演算することで算出される。
【0039】
この方法において、被監視者10とFMCWレーダ1との距離を算出することができる。なお、この方法によって複数の被監視者10の位置をそれぞれ検知することも可能である。
【0040】
一方、被監視者10が移動している場合の移動速度の検知を考える。これに対しては、FM−CWレーダ1は、
図4に示すドップラー周波数26の影響を無視できる間隔でスイープを繰り返し、被監視者10が同一のレンジビンにいる間に蓄積した、各スイープの当該レンジビン(周波数)成分の位相の時系列から、微細な距離変動を検知し、さらに、各スイープの当該レンジビン(周波数)成分の位相の時系列を周波数解析することで、速度成分を検知する。これにより、被監視者10の移動速度が検知できる。
【0041】
さらに、被監視者10が一箇所に留まっているが呼吸等による身体の微少な動作を行っている場合は、電波受信部3において、送信波22と受信波23との差分としてビート信号を得たのち、このビート信号を周波数分離し、被監視者10の距離に当たる周波数成分における振幅と位相を系時的に確認する。これにより、被監視者10の微少な動作や動作の速さ等を検知する。
【0042】
図5に、この実施の形態において、被監視者10に対する送信波22と受信波23の送受信によるビート信号を周波数分離し、レーダから被監視者10までの距離に当たる周波数成分の振幅と位相の系時変化をIQ平面で模式的に示す図である。ここで、被監視者10が呼吸もせず完全に静止している場合、壁や床等の静止物しか存在しない場合は
図5の(a)に示す通り、振幅28も位相29も不変である。しかし、例えば被監視者10が呼吸等により身体表面が微少に動いている場合は、レーダから身体表面までの距離に当たるビート信号の周波数成分の振幅と位相は、
図5の(b)に示す通り、スイープごとに変化する(例えば、
図5の(b)に示す、1スイープ目の特定点27
1、2スイープ目の特定点27
2、3スイープ目の特定点27
3)。
【0043】
このように、被監視者10が動くと、その距離変位はスイープ間の位相変化に反映される。例えば、レーダから被監視者10の呼吸による微細な距離変化は静止物成分27
0を原点とした位相変化として現れる(1スイープ目の特定点27
1に対しては、位相29
1、2スイープ目の特定点27
2に対しては、位相29
2)。このためスイープ毎の静止物成分を中心とした位相変化から被監視者10のスイープ間隔あたりの微細な距離変位や速度を検出することができる。また、静止物成分27
0を原点とした振幅は、電波の反射の強さを表し、レーダと被監視者10の位置関係や被監視者10の姿勢、微細変動している体の部分によって変化する。
【0044】
このように、ビート信号から得た特定周波数の受信信号成分の振幅28と位相29の変化を検知することで、被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象を検知することができる。
【0045】
以上に示す原理に基づいて、この実施の形態の状態事象識別装置1Aは、被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象を検知し、監視することができる。
【0046】
なお、この実施の形態においては、これらの処理を、FMCWレーダ1からの距離の幅(レンジ)ごとに区切って行うのが望ましい。この距離の幅は、例えば、
図3に示すように、時間帯t01、時間帯t02、・・・のような微少な時間帯(この時間帯に依存して、FMCWレーダ1と被監視者10との間の距離の幅、即ち上述のレンジビンR
1,・・・,R
P(
図2参照)が形成される。)を単位として処理を行うことで、距離の幅ごとの処理を実現できる。または、
図3に示す、周波数帯f01、周波数帯f02・・・のような微少な周波数帯(この周波数帯に依存して、FMCWレーダ1と被監視者10との間の距離の幅、即ち上述のレンジビンR
1,・・・,R
Pが形成される。)を単位として処理を行うことでも、距離の幅ごとの処理を実現できる。
【0047】
[複数のFMCWレーダ1による検知]
図2及び
図6に基づいて、この実施の形態における、複数のFMCWレーダ1による被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象の検知方法を説明する。
【0048】
この実施の形態においては、複数のFMCWレーダ1のそれぞれは、順番に送信波22の送信と受信波23の受信とを行う。
【0049】
具体的には、例えば、
図2に示す状態において、FMCWレーダ1
1,1
2,1
3,1
4の順で処理が行われる場合を考えると、下記(手順01)〜(手順02)の処理が繰り返し行われることが考えられる。
(手順01)まず、FMCWレーダ1
1の電波送信部2
1が送信波22を送信し、電波受信部3
1が受信波23を受信する。次に、FMCWレーダ1
3の電波送信部2
2による送信波22の送信と電波受信部3
2による受信波23の受信、次に、FMCWレーダ1
3の電波送信部2
3による送信波22の送信と電波受信部3
3による受信波23の受信、次に、FMCWレーダ1
4の電波送信部2
4による送信波22の送信と電波受信部3
4による受信波23の受信、と、電波の送受信が順番に行われる。この場合、
図6の(a)に示すように、時間帯t1は電波受信部3
1で、次の時間帯t2は電波受信部3
2で、次の時間帯t3は電波受信部3
3で、・・・と受信波が受信され、一巡したのちに時間帯t5は電波受信部3
5で、次の時間帯t2は電波受信部3
6で、・・・と順番に受信波23が受信される。
(手順02)全てのFMCWレーダ1
1,1
2,1
3,1
4による電波の送受信が一巡し完了したのち、全てのFMCWレーダ1
1,1
2,1
3,1
4の電波受信部3
1,3
2,3
3,3
4は、送信波22と受信波23の差分からビート信号を生成し、周波数ごとの受信信号成分に分離し、被監視者10の位置の周波数の受信信号成分の振幅や位相が検知され、この振幅や位相の信号は情報混合部4に送られる。
【0050】
このようにすることで、複数の電波送信部2と複数の電波受信部3によって被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象の検知を行う際に、互いの電波同士の衝突や干渉を抑止しつつ、それぞれの電波の送受信結果によって被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象を検知することができる。また、被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象の検知において死角が発生し、被監視者10の特定の状態、あるいはその被監視者10にかかわる特定の事象が検知できなくなることを抑止できる。
【0051】
なお、上記(手順01)の処理に替えて、
図6の(b)に示すように、FMCWレーダ1
1,1
2,1
3,1
4が、周波数ごとに送信波22の送信と受信波23の受信とを行うこともできる。具体的には、例えば、
図6の(b)に示すように、FMCWレーダ1
1の電波送信部2
1と電波受信部3
1が第一の周波数帯f1で、FMCWレーダ1
2の電波送信部2
2と電波受信部3
2が第一の周波数帯f2で、FMCWレーダ1
3の電波送信部2
3と電波受信部3
3が第一の周波数帯f3で、それぞれ送信波22の送信と受信波23の受信を行うような制御を行う。このようにすることで、FMCWレーダ1
1,1
2,1
3,1
4を同時並行で、かつ連続して、送信波22の送信と受信波23の受信を行わせることができる。
【0052】
[情報混合部4における「状態」や「事象」の検知の例]
情報混合部4は、所定の演算により、例えば下記[例1][例2]に示す被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象の検知を行う。
【0053】
[例1:位置の特定]
状態事象識別装置1Aは、この発明に係る「測位装置」として機能する。この場合、情報混合部4は、それぞれのFMCWレーダ1
1,・・・,1
P(の電波送信部2
1,・・・,2
P)から送信される送信波や(電波受信部3
1,3
2,・・・3
Pで)受信される受信波の方向や反射距離によって、被監視者10がどのグリッドに位置するかを3次元で特定する。
【0054】
情報混合部4は、複数PのFMCWレーダ1
1,1
2,・・・1
Pの覆域のうち、共通の領域に位置する目標について複数PのFMCWレーダ1
1,1
2,・・・,1
Pによって個別に計測された距離d
1,d
2,・・・,d
P(
図2参照)に亘って、複数PのFMCWレーダの位置L
1,L
2,・・・,L
P(
図2参照)からそれぞれ隔たった点または領域として、被監視者10の位置を特定する。
【0055】
[例2:速度の算出]
状態事象識別装置1Aは、この発明に係る「速度算出装置」として機能する。この場合、情報混合部4は、それぞれのFMCWレーダ1
1,・・・1
Pの見通し方向における送信波と受信波の位相と位相変動を検知し、これをXYZ方向の位相と位相変動に変換することで、被監視者10の状態や事象の変化、あるいはその変化の速度を検知する。
【0056】
具体的には、情報混合部4は、まず、複数PのFMCWレーダ1
1,1
2,・・・,1
Pの覆域のうち、共通の領域に位置する目標について、複数PのFMCWレーダ1
1,1
2,・・・,1
Pによって個別にスイープの順に検知されたレンジビンR
1,R
2,・・・,R
P(
図1参照)の位相φ
1,φ
2,・・・,φ
P(図示せず)の変化率として、複数PのFMCWレーダ1
1,1
2,・・・,1
Pに対する個別の速度v
1,v
2,・・・,v
P(図示せず)を求める。次いで、状態検知部5は、複数PのFMCWレーダ1
1,1
2,・・・,1
Pの位置に対する速度v
1〜v
P(図示せず)のベクトル和として、被監視者10の速度を求める。
【0057】
なお、上記[例1][例2]の処理を行うにあたり、情報混合部4は、例えば、部屋11内を所定の大きさの3次元のグリッド(例えばX方向、Y方向、Z方向とも大きさ50cmの略立方体状のグリッド)に区切り、このグリッドを基準に処理を行うことが望ましい。具体的には、どのグリッドに被監視者10が存在するかを特定することで部屋11のどの位置に被監視者10がいるかを特定したり、被監視者10が位置するグリッドに対応させて、それぞれの電波受信部3
1,3
2,3
3,3
4から供給された受信信号成分の値に重み付け等を行ったのち、それぞれの振幅や位相の総和を求めたり、平均値を求めたり等の演算を行い、振幅や位相やそれらの時間変化の値を特徴量として算出する。
【0058】
[状態検知部5における「状態」や「事象」の検知の例]
状態検知部5は、所定の演算により、上記のようなFMCWレーダ1と情報混合部4の検知結果を用いて、例えば以下[例3][例4]のような被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象の検知を行う。
【0059】
[例3:状態又は事象の認識(その1)]
状態事象識別装置1Aは、この発明に係る「状態事象識別装置」として機能する。この場合、状態事象識別装置1Aは一又は複数即ち所定数N(N≧1)のFMCWレーダ1
1,1
2,・・・,1
Nの検知結果を用いる。以下、説明の便宜上、
図1等に示すP個(P>1)のFMCWレーダ1
1,1
2,・・・,1
Pのうち少なくとも一つであるFMCWレーダ1
1,1
2,・・・,1
Nが用いられるものとして例3を説明する。
【0060】
例3において、状態事象識別装置1Aの状態検知部5は「状態事象認識手段」として機能する。具体的には、状態検知部5は、所定数N(≧1)のFMCWレーダ1
1,1
2,・・・,1
Nの覆域のうち、所定の領域に位置する目標について、所定数NのFMCWレーダ1
1,1
2,・・・,1
Nによって個別にスイープの順に検知されたK(≧1)個のレンジビン(R
11,…,R
1K)〜(R
N1,…,R
NK)(図示せず)のそれぞれの位相(φ
11,…,φ
1K)〜(φ
N1,…,φ
NK)(図示せず)の組み合わせと、組み合わせの履歴との双方または何れか一方の特徴として、被監視者10の状態または被監視者10にかかわる事象を認識する。
【0061】
[例4:状態又は事象の認識(その2)]
状態事象識別装置1Aは、この発明に係る「状態事象識別装置」として機能する。この場合、状態事象識別装置1Aは一又は複数即ち所定数N(N≧1)のFMCWレーダ1
1,1
2,・・・,1
Nの検知結果を用いる。以下、説明の便宜上、
図1等に示すP個(P>1)のFMCWレーダ1
1,1
2,・・・,1
Pのうち少なくとも一つであるFMCWレーダ1
1,1
2,・・・,1
Nが用いられるものとして例4を説明する。
【0062】
例4において、状態事象識別装置1Aの状態検知部5は「状態事象識別手段」として機能する。具体的には、状態検知部5は、被監視者10について、下記(要件1)〜(要件7)のうち少なくとも何れか一つ、及び/又は、これら(要件1)〜(要件7)のうち少なくとも何れか一つの履歴に基づいて、被監視者10の状態または前記事象を識別する。
(要件1)所定数NのFMCWレーダ1
1,・・・1
Nによって検知された距離d
1,・・・,d
N(
図1に示す距離d
1,・・・,距離d
Pに対応)に亘って、所定数NのFMCWレーダ1
1,・・・,1
Nの位置L
1,・・・,L
N(
図1に示す位置L
1,・・・,位置L
Pに対応)からそれぞれ隔たった位置として算出された被監視者10の位置
(要件2)被監視者10について、所定数NのFMCWレーダ1
1,・・・,1
Nによって個別にスイープの順に検知されたレンジビンR
1〜R
N(
図1に示すR
1,・・・,R
Pに対応)の電力Z
1,・・・,Z
Nの大きさ又は電力Z
1,・・・,Z
Nの有無(この電力Z
1,・・・,Z
Nは、それぞれのFMCWレーダ1
1,・・・1
Nにおいて送信又は受信された電波の強度を示す。)
(要件3)レンジビンR
1〜R
Nの位相φ
1〜φ
N
(要件4)位相φ
1〜φ
N(図示せず)の変化率として与えられる、所定数NのFMCWレーダ1
1,・・・,1
Nに対する被監視者10の相対速度v
1〜v
N(図示せず)
(要件5)被監視者10が位置し得る所定数Mの領域で個別に消費される電力W
1〜W
M(図示せず。なお、この電力W
1〜W
Mは、例えば「夜」「朝」「○月×日」等、被監視者10の生活の基準となるような時間の幅を示す。)
(要件6)所定数Mの領域における時間帯T(図示せず。この時間帯Tは、例えば「夜」「朝」「○月×日」等、被監視者10の生活の基準となるような時間の幅を示す。)
(要件7)被監視者10の属性A(図示せず。この属性Aは、例えば被監視者10の疾病及びその症状の程度や形態等、被監視者10の状態に関する情報、あるいはその被監視者10にかかわる事象に関する情報を示す。)
【0063】
[パターンマッチング]
状態事象識別装置1Aの状態検知部5は、パターンマッチングによって被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象を検知する。このパターンマッチングは、上記[例3]や[例4]に示す処理において特に有効である。
【0064】
なお、[例1]や[例2]における処理にこのパターンマッチングを用いることもできる。具体的には、状態検知部5が、情報混合部4の演算結果について、パターンマッチングを用いて[例1]に示す位置の特定や[例2]に示す速度の算出を行う。この場合は、情報混合部4と状態検知部5とがこの発明に係る「測位装置」や「速度算出装置」として機能する。
【0065】
具体的には、履歴情報記録部6には、過去の実測データや統計データ等に基づいた特定の状態、あるいはその被監視者10にかかわる特定の事象における受信波23の状態、ビート信号の状態、送信波22と受信波23との変化の状態、ビート信号の変化の状態、位相の状態、位相の変化率、等のパターンデータが記録されている。状態検知部5は、情報混合部4で得られた特徴量と、パターンデータとの類似性を評価し、被監視者10がそのパターンデータの動作情報であることを検知する。(類似性評価には、線形判別器を用いる。)
【0066】
図7、
図8に、パターンデータを模式的に示す。
図7は、ビート信号の位相の履歴
図31を模式的に示す図である。同図は、部屋11に被監視者10がいる状態で電波送信部2から送信波22を、電波受信部3で受信波23を受信して得たビート信号の系時的な変化を示し、縦軸が位相、横軸が時間を示す。履歴
図31中に存在する「パターンデータ」としての履歴線32は、被監視者10の呼吸や微動による系時的な位相の変動が曲線となって示されている。
【0067】
この履歴線32に示すような位相と時間の情報をフーリエ変換等により振幅特性に変換すると、振幅分布
図33a〜33fに模式的に示すような、「パターンデータ」としての振幅分布グラフ34a〜34fを形成する。同図は、縦軸が電波受信部3で受信した受信波23の電波の強度、横軸がビート周波数の大きさ(つまり右にいくほどビート周波数が大きい(つまり室内の電波受信部3が設けられた天井から遠い位置である))ことを示す。同振幅分布グラフ34a〜34fに示す通り、同じ姿勢(例えば立った状態、しゃがんだ状態、寝た状態)であれば、動いていても静止していても、振幅分布グラフ34a,34b、振幅分布グラフ34c,34dなどのパターンは略等しくなる。即ち、振幅分布グラフ34a〜34fのようなグラフは被監視者10の姿勢を検知するのに有用である。
【0068】
一方、
図8の(a)〜(c)は、ビート信号の変化速度特性図を模式的に示したものである。この速度変化特性
図35a〜35cは、縦軸が位相変化の速度(特定のビート信号の位相とその直前のビート信号の位相角の差分を系時的に示した情報)、横軸が時間、からなる、「パターンデータ」としての速度変化グラフ36a〜36cが示されている。同図に示す通り、動作の種類によって速度変化グラフ36a〜36cは大きく異なる。そして、被監視者10の動作をこの速度変化グラフ36a〜36cに照合させれば、被監視者10の動作を識別できる。そして、速度変化グラフ36cの「転ぶ」のような、異常な状態を示す「パターンデータ」に「異常情報」としての属性情報(図示せず)が記録されていれば、この速度変化グラフ36cを、被監視者10の異常を通報させるための状態認識情報として機能させることができる。
【0069】
なお、パターンマッチングにおける計算量削減のため、「パターンデータ」および情報混合部4で得られる特徴量は、それぞれ波形データそのものでなく、その周期や形状を表す統計量(平均や分散、尖度)として数値化したデータとして保持してもよい。
【0070】
[処理手順]
図9に、この実施の形態の状態事象識別装置1Aの処理手順を示す。
【0071】
まず、状態事象識別装置1Aは、被監視者10に対して複数PのFMCWレーダ1(
図1に示すFMCWレーダ1
1,・・・,1
P)の電波送信部2(
図1に示す電波送信部2
1,・・・,2
P)から順番に送信波22を送信し、反射した受信波23をそれぞれのFMCWレーダ1の電波受信部3(
図1に示す電波受信部3
1,・・・,3
P)で受信する(ステップS1)。
【0072】
それぞれの電波受信部3はそれぞれの送信波22とそれぞれの受信波23の変動量を検知し、ビート信号やビート周波数の情報を生成し、周波数成分ごとの受信信号成分に分離し、それぞれの受信信号成分の周波数毎の振幅や位相を検知する(ステップS2)。それぞれのFMCWレーダ1は、設置された位置(
図1に示す位置L
1,・・・位置L
P)からの距離(
図1に示す距離d
1,・・・,距離d
P)と方位により被監視者10の位置をそれぞれ検知する。また、それぞれのFMCWレーダ1は、個別にスイープの順に検知されたレンジビンR
1〜R
Pの位相φ
1〜φ
Pの変化率として、被監視者10の動きの速度v
1〜v
Pをそれぞれ検知する。
【0073】
それぞれのFMCWレーダ1において検知された受信信号成分の距離毎の振幅や位相は情報混合部4に供給される。情報混合部4は、それぞれのFMCWレーダ1の位置L
1,・・・位置L
Pからの方位と距離d
1,・・・距離d
Pに基づいて、部屋11内の3次元のグリッドに対応付けて被監視者10の位置を特定する。また、情報混合部4は、それぞれのFMCWレーダ1で個別に検知された、被監視者10の動作の方向や、動作の速度v
1,・・・速度v
P(図示せず)のベクトル和として、被監視者10の速度を求める被監視者10の位置の特定や、被監視者10の動きの方向や速度の算出を行う(ステップS3)。
【0074】
次に、情報混合部4で生成された信号やデータは状態検知部5に供給される。状態検知部5は、取得された信号やデータを、履歴情報記録部6から取得された、履歴線32、振幅分布グラフ34a〜34f、速度変化グラフ36a〜36c等の「パターンデータ」とパターンマッチングを行う(ステップS4)。パターンマッチングの結果、特定の「パターンデータ」に一致することが検知された場合(ステップS4の“Yes”)、状態検知部5は、被監視者10が「パターンデータ」に示す状態であること、又は、被監視者10にかかわる事象が「パターンデータ」に示す特定の事象であるものとして扱う。なお、マッチングの結果、情報混合部4から状態検知部5が取得した信号やデータがどの「パターンデータ」にも一致しなかった場合は、被監視者10が特定の状態であったり、その被監視者10にかかわる特定の事象が起きていたりするものとしては扱わず、ステップS1から処理が繰り返される(ステップS4の“No”)。
【0075】
一方、ステップS4において一致した「パターンデータ」に「異常情報」が属性情報として記録され、異常な状態に該当する場合(ステップS6の“Yes”)、異常通報部7は、監視者(図示せず)の監視者端末(図示せず)のディスプレイ(図示せず)に異常を知らせる画面(図示せず)を表示する等により、監視者(図示せず)に異常を通報する(ステップS7)。なお、ステップS4において一致した「パターンデータ」に「異常情報」が属性情報として記録されていない場合(ステップS6の“No”)、監視者(図示せず)への異常の通報は行わず、ステップS1から手順が繰り返される。
【0076】
[検知対象として想定される状態や事象]
この実施の形態の状態事象識別装置1Aによって検知できる被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象として、例えば、被監視者10の寝返り(寝床上の動きの頻度や速度で検知)、部屋11内の所定位置(例えばトイレ)への移動(移動先にて検知)、転倒や転落、複数の被監視者10(例えば個々の家族構成員)のうち特定の被監視者10の識別(例えば身長や部屋11内の居住位置で識別)、部屋11内での衝突(移動方向の急激な変化や停止で検知)、座り込み(高さや移動速度の急落で検知)、咳、ぜんそく等の発作(身体特に上半身の特徴的な動作で検知)、入浴時の状態(浴室内の存否や浴槽内での高さの急減等で検知)、スリップ(高さの急減で検知)、立入禁止区域への侵入(位置情報で検知)、立ち往生(移動速度の急減等で検知)、落下物への衝突(急激な高さの減少等で検知)、体の各部の動き(位相情報の変動状況で検知)、所在(位置情報で検知)、移動経路(位置情報の履歴で検知)、通常と異なる状態やその状態にかかわる事象(履歴との照合等で検知)、等が挙げられる。
【0077】
[応用例]
なお、上記の構成及び手順に加え、この実施の形態に係る状態事象識別装置1Aは、下記に示す<応用例1><応用例2>の少なくとも何れか一方の構成を付加した形で実現することもできる。
【0078】
<応用例1>
状態検知部5は、送信波22や受信波23に基づいて取得された周波数や振幅や位相等、及び、付随情報としての「異常情報」等に基づいて被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象を検知したが、さらに、状態検知部5は、被監視者10の周辺環境の情報や、被監視者10の周辺環境に影響を及ぼす所定の影響要因の情報や、被監視者10の所定の属性情報を取得して、被監視者10の状態認識情報として機能させることができる。具体的には、例えば、周辺環境の情報としては、スイープの順に検知された、FMCWレーダ1からの距離の幅(レンジ)ごとに対応する時間帯(
図3の時間帯t01・・・参照)ごとに存在する電気機器(たとえば電灯)等の消費電力量、被監視者10の置かれている時間帯(例えば朝、夜等の一日の時間帯や春、夏等の季節)等があげられる。また、属性情報としては、被監視者10の年齢、性別、趣味、職業、疾病等があげられる。これらの情報は例えば履歴情報記録部6に記録され、被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象が異常かどうかを検知するための情報(例えば異常かどうかを認識する演算における、各種の値に重み付けを与える情報)として用いられる。また、被監視者10について、上述の周辺環境の情報や属性情報、さらにその他の状態認識情報についての履歴情報を例えば履歴情報記録部6に記録しておき、この履歴情報を被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象が異常かどうかを検知するための情報として用いることもできる。このようにすることで、個々の被監視者10の特性に応じた形で、異常かどうかを検知する精度をより高めることができる。
【0079】
<応用例2>
状態検知部5は、被監視者10の状態、あるいはその被監視者10にかかわる事象の検知が必要な場合、FMCWレーダ1に対する被監視者10の距離や位置の状況や移動速度に依存して、複数のFMCWレーダ1のうち少なくとも一部の送信波22の占有帯域幅(
図3に示す「B」の大きさ)を調整できる構成にすることもできる。例えば被監視者10がFMCWレーダ1から遠い位置に居る場合、状態検知部5は、そのFMCWレーダ1の占有帯域幅を平常時よりも大きくする制御を行う。また、状態検知部5は、FMCWレーダ1に対する被監視者10の距離や位置の状況や移動速度に依存して、複数のFMCWレーダ1のうち少なくとも一部の送信波22のスイープ周期(
図3に示す「Ts」の大きさ)を調整できる構成にすることもできる。例えば被監視者10がFMCWレーダ1から遠い位置に居る場合、状態検知部5は、そのFMCWレーダ1のスイープ周期を平常時よりも大きくする制御を行う。これにより、FMCWレーダ1からの距離の幅(レンジ)を細かく区分したり、被監視者10の微少な振動や移動を検知しやすくしたりして、検知の精度を高めることができる。
【0080】
以上、この実施の形態においては、FMCWレーダ1の活用の下で、所望の目標にかかわる状態や事象の項目として、その目標の位置の盛り込みが可能となる。
【0081】
また、この実施の形態においては、プライバシーの保護が損なわれることなく、目標の状態と、その目標に生じた事象とが精度良くかつ確度高く達成される。
【0082】
さらに、この実施の形態においては、既存のハードウェア資源であるFMCWレーダ1の活用、あるいは所定数のFMCWレーダ1との連係の下で、様々な目標の監視や見守りが情報処理やレーダ信号処理として実現される。
【0083】
なお、上記実施の形態においては、状態事象識別装置1Aが複数P個(P>1)のFMCWレーダ1
1,1
2,・・・,1
Pを備えた構成としたが、1個以上即ちN個(N≧1)のFMCWレーダ1
1,1
2,・・・,1
Nを備えた構成であってもよい。
【0084】
上記実施の形態においては、「目標」を被監視者10としたが、これのみに限定されず、人間以外の動物や、植物、各種機械等であってもよい。
【0085】
上記実施の形態は本発明の例示であり、本発明が上記実施の形態のみに限定されることを意味するものではないことは、いうまでもない。