(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の副走査方向に沿って変位し且つ前記副走査方向と交差する主走査方向からの信号を順次受信する受信装置を用いて得られた受信信号に基づいて、前記副走査方向に沿って得られる複数の前記受信信号の相関行列を算出する、相関行列算出部と、
前記相関行列に基づいて超解像処理を行うことで、前記副走査方向に沿って得られる前記受信信号の信号強度のスペクトラムを算出する、スペクトラム算出部と、
前記受信装置のステアリングベクトルを算出する、ステアリングベクトル算出部と、
前記相関行列の固有ベクトルを算出する固有ベクトル算出部と、
を備え、
前記スペクトラム算出部は、前記固有ベクトル、および、前記ステアリングベクトルに基づいて、前記スペクトラムを算出することを特徴とする、信号処理装置。
所定の副走査方向に沿って変位し且つ前記副走査方向と交差する主走査方向からの信号を順次受信する受信装置を用いて得られた受信信号に基づいて、前記副走査方向に沿って得られる複数の前記受信信号の相関行列を算出する、相関行列算出ステップと、
前記相関行列に基づいて超解像処理を行うことで、前記副走査方向に沿って得られる前記受信信号の信号強度のスペクトラムを算出する、スペクトラム算出ステップと、
前記受信装置のステアリングベクトルを算出する、ステアリングベクトル算出ステップと、
前記相関行列の固有ベクトルを算出する固有ベクトル算出ステップと、
を含み、
前記スペクトラム算出ステップにおいては、前記固有ベクトル、および、前記ステアリングベクトルに基づいて、前記スペクトラムを算出することを特徴とする、信号処理方法。
所定の副走査方向に沿って変位し且つ前記副走査方向と交差する主走査方向からの信号を順次受信する受信装置を用いて得られた受信信号に基づいて、前記副走査方向に沿って得られる複数の前記受信信号の相関行列を算出する、相関行列算出ステップと、
前記相関行列に基づいて超解像処理を行うことで、前記副走査方向に沿って得られる前記受信信号の信号強度のスペクトラムを算出する、スペクトラム算出ステップと、
前記受信装置のステアリングベクトルを算出する、ステアリングベクトル算出ステップと、
前記相関行列の固有ベクトルを算出する固有ベクトル算出ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記スペクトラム算出ステップにおいては、前記固有ベクトル、および、前記ステアリングベクトルに基づいて、前記スペクトラムを算出することを特徴とする、プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。本発明は、分解能を高めるための信号処理装置(到来波方向推定装置)として広く適用することができる。なお、以下では、図中同一または相当部分には、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0034】
[第1実施形態]
[レーダ装置の概略構成]
図1は、本発明の第1実施形態にかかる信号処理装置3を備えるレーダ装置1の概略構成を示すブロック図である。レーダ装置1は、漁船などの船舶に搭載される。以下、レーダ装置1が搭載される船舶を、自船という。レーダ装置1は、自船の周囲の物標を探知する。
【0035】
レーダ装置1は、送受信装置2と、信号処理装置3と、操作・表示装置4と、を有している。
【0036】
送受信装置2は、指向性を有するパルス状の電波を送信信号として送信する。また、送受信装置2は、この送信信号に対するエコー信号を受信する。送受信装置2は、後述するように、単一のアンテナを有している。送受信装置2は、アンテナで受信された受信信号S11をデジタルの受信データx(φ
i,R
j)に変換し、この受信データx(φ
i,R
j)を信号処理装置3へ出力する。
【0037】
信号処理装置3は、受信データx(φ
i,R
j)(受信信号S11)の方位φと信号強度との関係を、角度スペクトラムP
SSA(φ)として算出するように構成されている。このような構成により、レーダ装置1は、当該レーダ装置1の周囲に存在する物標を探知する。信号処理装置3は、受信データx(φ
i,R
j)の位相と強度との関係を示す画像データGを、操作・表示装置4へ出力する。
【0038】
操作・表示装置4は、操作部5と、表示部6とを有している。操作部5は、レーダ装置1のオペレータによって操作され得る。操作部5は、種々の入力キー等を備えており、電磁波の送受信、および映像表示等に必要な、種々の設定値等を入力できるように構成されている。操作部5の設定に応じて、角度スペクトラム算出に必要な定数などが設定される構成であってもよい。表示部6は、信号処理装置3から出力された画像データGに応じた映像を表示する。
【0039】
[レーダ装置の詳細な構成]
図2は、レーダ装置1の詳細な構成を示すブロック図である。
図3は、レーダ装置1が自船10に設置された状態を示す、模式的な平面図である。
図3は、自船10の周囲に1つの物標11が存在している状態を例示している。
【0040】
図2および
図3を参照して、本実施形態では、平面視において自船10を中心とする時計回り方向を、方位方向D1という。また、平面視において、自船10を中心とする径方向を、距離方向D2という。
【0041】
送受信装置2は、送信部21と、サーキュレータ22と、回転アンテナ部(受信装置)23と、受信部24と、を有している。
【0042】
送信部21は、マグネトロン等を有している。より具体的には、送信部21は、マイクロ波を発振する電子素子としてたとえばD/Aコンバータ、周波数変換器、電力増幅器を有している。送信部21は、定期的にパルス状のレーダ送信信号を生成し、このレーダ送信信号をサーキュレータ22へ出力する。
【0043】
送信部21からレーダ送信信号が出力されるタイミングを示すデータは、送信部21から信号処理装置3へ出力される。これにより、信号処理装置3は、回転アンテナ部23から出力された電磁波が反射して生じたエコー信号が回転アンテナ部23で受信されるまでの時間を、算出できる。その結果、信号処理装置3は、物標11と自船10との間の距離を算出することができる。
【0044】
サーキュレータ22は、送信部21から出力されたレーダ送信信号を、回転アンテナ部23へ出力するように構成されている。また、サーキュレータ22は、回転アンテナ部23で受信された受信信号S11を、受信部24へ出力する。
【0045】
回転アンテナ部23は、たとえば、自船10のマスト(図示せず)に設置されている。回転アンテナ部23は、たとえば、スロットアレイアンテナである。
【0046】
回転アンテナ部23は、全体として、水平方向に細長い形状(長尺形状)に形成されており、自船10の上下方向に延びる回転軸線回りを自転するように構成されている。回転アンテナ部23は、当該回転アンテナ部23の方位を示す方位信号を、信号処理装置3に出力する。
【0047】
回転アンテナ部23は、方位方向D1に変位し、且つ、方位方向D1と交差する距離方向D2において電磁波(信号)を順次送受信するように構成されている。なお、方位方向D1は、本発明の「副走査方向」の一例であり、距離方向D2は、本発明の「主走査方向」の一例である。
【0048】
前述したように、回転アンテナ部23は、スロットアレイアンテナなどであり、高い指向性を有する送信信号を送信する。また、回転アンテナ部23は、受信信号S11を受信するように構成されている。受信信号S11は、送信信号の反射信号としてのエコー信号と、ノイズ信号と、を含んでいる。
【0049】
図3は、回転アンテナ部23におけるビームパターンP1の一例を示している。ビームパターンP1は、メインローブP11と、サイドローブP12と、を有している。回転アンテナ部23は、実質的にメインローブP11で信号を受信し、この信号を受信信号S11として出力する。
【0050】
回転アンテナ部23は、所定の方位(たとえば、方位方向D1における0.1度)毎に、電磁波の送信と受信とを繰り返す。本実施形態では、レーダ装置1が電磁波を送信してから次の電磁波を送信するまでの動作を「スイープ」という。送受信装置2は、1スイープ毎に、受信信号S11を受信部24へ出力する。本実施形態では、自船10を中心とする方位方向D1に沿う、電磁波(パルス信号)の送信角度間隔Δφは、0.1度である。この角度間隔Δφは、回転アンテナ部23の回転速度と、レーダ送信信号のパルス信号の繰返周波数に依存する。
【0051】
受信部24は、回転アンテナ部23から受信信号S11を取り込み、増幅した後に中間周波数に変換する処理などを行うことで、受信信号S11を受信データx(φ
i,R
j)に変換する。本実施形態では、受信部24は、1つのみ設けられている。この点、複数の受信素子が備えられ且つ受信素子毎に受信部が設けられるアレイアンテナ装置とは、異なる構成である。本実施形態では、受信部24の数は、回転アンテナ部23の特性に拘らず、1つである。
【0052】
受信部24は、LNA(ローノイズアンプ)25と、ミキサ26と、とAMP(リニアアンプ)27と、A/Dコンバータ28と、局部発振器29とを有している。
【0053】
LNA25は、レーダ受信信号S11を増幅するように構成されている。LNA25で増幅された受信信号S11は、ミキサ26へ出力される。ミキサ26は、局部発振器29から出力されたローカル信号と、受信信号S11とをミキシングすることで、レーダ受信信号S11の周波数を、中間周波数に変換する。周波数変換された受信信号S11’は、AMP27へ出力される。
【0054】
AMP27は、中間周波数に変換されたレーダ受信信号S11’を対数増幅し、包絡線信号を生成する。A/Dコンバータ28は、AMP27が出力したレーダ受信信号S11’’をIQ検波等でサンプリングする。これにより、A/Dコンバータ28は、レーダ受信信号S11’’を、複素デジタル信号に変換する。即ち、A/Dコンバータ28は、レーダ受信信号S11’’を、デジタルの受信データx(φ
i,R
j)に変換する。受信データx(φ
i,R
j)は、信号強度(振幅値)を示す。また、φ
i,R
jは、それぞれ、方位方向D1と、距離方向D2に沿った位置(経過時間)とを示す。
【0055】
図4は、受信データx(φ
i,R
j)について説明するための模式的な平面図であり、各受信データx(φ
i,R
j)の方位および経過時間について、自船10を中心に視覚的に示す図である。経過時間は、たとえば、回転アンテナ部23が電磁波を送信してから受信信号S11を受信するまでの時間をいう。
【0056】
図4を参照して、図中の白抜きの丸字は、各受信データx(φ
i,R
j)の到来方位および経過時間を示している。同一方位上に存在する各受信データx(φ
i,R
j)は、自船10から延びる直線上に並んでいる。即ち、同一スイープにおける各受信データx(φ
i,R
j)は、自船10から時系列に沿って直線状に並んでいる。なお、自船10に近い位置ほど、回転アンテナ部23に対する受信データx(φ
i,R
j)の受信開始からの経過時間が短いことを示している。
【0057】
各受信データx(φ
i,R
j)の経過時間に対して、短い経過時間から順に経過時間番号j(j=1,2,3,…,B−1,B)が付されている。Bの値は、受信部24における受信データx(φ
i,R
j)のサンプリング周波数等に依存して決まる。各スイープにおいて、受信部24によるレーダ受信信号S11のサンプリングは、一定の時間間隔で行われており、各受信データx(φ
i,R
j)の時間間隔は、一定である。
【0058】
受信データx(φ
i,R
j)には、自船10回りの単位方位毎に、時計周りの順で方位番号i(i=1,2,3,…C−1,C)が付されている。上記受信データx(φ
i,R
j)は、
図5に示すように、行列として示すことができる。
図5は、受信データx(φ
i,R
j)を行列状に配置した状態を示す図である。
図5において、横方向は、方位方向D1を示し、縦方向は距離方向D2を示している。
【0059】
図2、
図3および
図5を参照して、送受信装置2は、一回のスイープによって、方位方向D1が同じである複数の受信信号S11を受信する。送受信装置2は、複数回のスイープによって、方位方向D1の位置が異なる複数の受信信号S11を取得する。
【0060】
信号処理装置3は、送受信装置2から出力された受信データx(φ
i,R
j)を用いて、超解像処理を行う。即ち、信号処理装置3は、回転アンテナ部23の解像度を超える解像度で、物標(物標11など)と物標以外とを識別するように構成されている。
【0061】
[信号処理装置の構成]
信号処理装置3は、方位領域設定部31と、相関行列算出部32と、空間平均処理部33と、固有ベクトル算出部34と、角度スペクトラム算出部35と、アンテナパターン記憶部36と、平均ステアリングベクトル算出部37と、表示用処理部38と、を有している。
【0062】
本実施形態では、信号処理装置3は、自船10を中心とする方位方向D1において区切られた所定の領域Fを単位として、超解像処理(高分解能処理)を行う。より具体的には、信号処理装置3は、所定領域Fにおいて、経過時間番号jが同じである複数の受信データx(φ
i,R
j)を用いて、超解像処理を行う。
【0063】
次に、信号処理装置3における、受信データx(φ
i,R
j)の領域化の一例を説明する。
図6は、受信データx(φ
i,R
j)の領域化の一例を説明するための図である。
図2および
図6を参照して、信号処理装置3は、方位方向D1に関して、受信データx(φ
i,R
j)を複数の領域F(F=1,2,…U)に分けた状態で、高分解能処理を行う。各領域Fは、複数の連続するスイープによって得られた受信データx(φ
i,R
j)を含んでいる。
【0064】
図6では、領域化の例が示されている。この例では、隣り合う領域F(たとえば、F1,F2)が共通の受信データx(φ
i,R
j)を有しておらず、且つ、隣り合う領域F(たとえば、F1,F2)の間には何れの領域Fにも属していない受信データx(φ
i,R
j)が存在していない。本実施形態では、方位方向D1に関して一定の間隔毎に、領域Fが分けられている。本実施形態では、信号処理装置3は、各領域F1,F2,・・・,FUに基づいて、処理を行う。
【0065】
[方位領域設定部の構成]
方位領域設定部31は、方位方向D1において複数の領域F(たとえばF1,F2,F3)を設定するように構成されている。具体的には、方位領域設定部31は、経過時間番号jが同じである受信データx
iを、受信部24から読み出す。
【0066】
図7は、受信データx
iの一例を示すグラフである。
図7では、受信データx
iで特定される信号強度が示されている。
図7では、一例として、方位番号i=1〜3n(nは自然数)までの各受信データ受信データx
iが示されている。なお、以下では、1つの経過時間番号j(距離)における受信データx
iについて説明し、経過時間番号jの記載は省略する。受信データx
1,x
2,・・・x
3nにおいては、受信データx
3n/2がピークの振幅を示している。
【0067】
図2および
図7を参照して、本実施形態では、方位領域設定部31は、たとえば、方位番号i=1〜3nまでの各受信データx
iを受信部24から読み出す。方位領域設定部31は、これらの受信データx
iを、複数の領域F(本実施形態では、F1,F2,F3)に分ける。
【0068】
領域F1は、受信データx
1〜x
nを含んでいる。領域1のベクトルデータx
{1}は、下記式で表される。
x
{1}=[x
1,x
2,x
3,・・・,x
n]
T
なお、Tは、転置を表している。
【0069】
領域F2は、受信データx
n+1〜x
2nを含んでいる。領域2のベクトルデータx
{2}は、下記式で表される。
x
{2}=[x
n+1,x
n+2,x
n+3,・・・,x
2n]
T
【0070】
領域F3は、受信データx
2n+1〜x
3nを含んでいる。領域3のベクトルデータx
{3}は、下記式で表される。
x
{3}=[x
2n+1,x
2n+2,x
2n+3,・・・,x
3n]
T
【0071】
方位領域設定部31は、ベクトルデータx(x
{1},x
{2},x
{3})を、相関行列算出部32へ出力する。
【0072】
[相関行列算出部の構成]
相関行列算出部32は、受信信号S11に基づいて、方位方向D1に沿って複数の受信信号S11の相関行列R
xxを算出する。相関行列R
xxは、1つの回転アンテナ部23による複数のスイープで得られた受信データx
iに対して、適応ビームフォーミング法を適用するために算出される。この場合、複数回のスイープで得られた受信データx
iは、複数の仮想アンテナによって一度に得られた受信データx
iとして捉えることができる。相関行列算出部32は、領域F1,F2,F3毎に、相関行列(分散行列)R
xx(R
{1}xx,R
{2}xx,R
{3}xx)を算出する。
【0073】
ベクトルデータx
{1}の相関行列R
{1}xxは、下記(1)式で表される。
【数1】
なお、E[・]は、期待値(アンサンブル平均)を求める操作を表し、Hは複素共役転置を表す。
【0074】
ベクトルデータx
{2}の相関行列R
{2}xxは、下記(2)式で表される。
【数2】
【0075】
ベクトルデータx
{3}の相関行列R
{3}xxは、下記式(3)式で表される。
【数3】
【0076】
相関行列算出部32は、各相関行列R
{1}xx,R
{2}xx,R
{3}xxのデータを、空間平均処理部33へ出力する。なお、本実施形態では、x・x
*を算出する形態を例に説明している。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、x・x
*に代えてx・xを用いてもよい。
【0077】
[空間平均処理部の構成]
空間平均処理部33は、本発明の「相関行列平均化処理部」の一例である。空間平均処理部33は、相関行列R
{1}xx,R
{2}xx,R
{3}xxを個別に(領域F1,F2,…毎に)平均化することで、空間平均相関行列R(_)
xx(R(_)
{1}xx,R(_)
{2}xx,R(_)
{3}xx)を算出する。空間平均処理部33は、適応ビームフォーミング法におけるサブアレイの手法を用いることで、空間平均相関行列R(_)
xxを算出する。
【0078】
空間平均処理部33は、算出した空間平均相関行列R(_)
xxのデータを、固有ベクトル算出部34へ出力する。
【0079】
[固有ベクトル算出部の構成]
固有ベクトル算出部34は、領域F1,F2,F3毎に、固有値分解を行う。具体的には、固有ベクトル算出部34は、空間平均相関行列R(_)
{1}xx,R(_)
{2}xx,R(_)
{3}xxのそれぞれについて、固有値分解を行う。固有ベクトル算出部34は、たとえばべき乗法、Jacobi法、QR法などを用いて、固有値分解を行う。
【0080】
固有ベクトル算出部34は、空間平均相関行列R(_)
{1}xxの固有ベクトルq
{1}1,q
{1}2,…,q
{1}Mと、固有値λ
{1}1,λ
{1}2,…,λ
{1}Mとを算出する。なお、Mは変数である。
【0081】
上記と同様にして、固有ベクトル算出部34は、空間平均相関行列R(_)
{2}xxの固有ベクトルq
{2}1,…,q
{2}Mと、固有値λ
{2}1,…,λ
{2}Mとを算出する。また、固有ベクトル算出部34は、空間平均相関行列R(_)
{3}xxの固有ベクトルq
{3}1,…,q
{3}Mと、固有値λ
{3}1,…,λ
{3}Mとを算出する。固有ベクトル算出部34は、算出した固有ベクトルq(q
{1}1〜q
{1}M,q
{2}1〜q
{2}M,q
{3}1〜q
{3}M)のデータを、角度スペクトラム算出部35へ出力する。
【0082】
角度スペクトラム算出部35は、領域F1,F2,F3毎に、角度スペクトラムP
SSA(φ)(P
SSA{1}(φ),P
SSA{2}(φ),P
SSA{3}(φ))を算出する。角度スペクトラムP
SSA(φ)は、方位方向D1の位置と受信データx
i(受信信号S11)の信号強度(振幅)との関係を示す。角度スペクトラム算出部35は、相関行列R
xxと、平均ステアリングベクトル算出部37から与えられる平均ステアリングベクトルA(_)(φ)(A(_)
{1}(φ),A(_)
{2}(φ),A(_)
{3}(φ)]と、に基づいて超解像処理を行うことで、角度スペクトラムP
SSA(φ)を算出する。
【0083】
より具体的には、角度スペクトラム算出部35は、固有ベクトル算出部34から与えられる固有ベクトルqと、平均ステアリングベクトル算出部37から与えられる平均ステアリングベクトルA(_)(φ)と、を用いて、角度スペクトラムP
SSA(φ)を算出する。本実施形態では、平均ステアリングベクトル算出部37は、アンテナパターン記憶部36に格納されているアンテナパターンAPを基に、平均ステアリングベクトルA(_)(φ)を算出する。
【0084】
図8は、回転アンテナ部23のアンテナパターンAPを示すグラフである。
図2、
図7および
図8を参照して、本実施形態では、アンテナパターンAPは、回転アンテナ部23のメインローブP11のパターンに相当する。アンテナパターン記憶部36は、1種類のアンテナパターンAPを記憶している。
【0085】
このアンテナパターンAPは、たとえば、信号処理装置3の製造時にアンテナパターン記憶部36に記憶されている。なお、アンテナパターンAPは、信号処理装置3の流通時にアンテナパターン記憶部36に記憶されてもよい。また、アンテナパターンAPは、信号処理装置3が自船10に設置された後にアンテナパターン記憶部36に記憶されてもよい。
【0086】
アンテナパターンAPは、自船10回りの角度θと、信号の送受信強度との関係として示されている。角度θは、アンテナパターンの正面角度であり、平面視において回転アンテナ部23からの信号送信方向の角度をゼロとして規定されている。アンテナパターンAP=h
n2(φ)=h
2(θ
n,φ)である。アンテナパターンAPは、十分に強い指向性を有するように設定されている。たとえば、アンテナパターンAPのビーム幅は、−3dBにおいて2度程度に設定されている。アンテナパターン記憶部36は、アンテナパターンAPのデータを、平均ステアリングベクトル算出部37へ出力する。
【0087】
[平均ステアリングベクトル算出部の構成]
平均ステアリングベクトル算出部37は、本発明の「ステアリングベクトル算出部」の一例である。平均ステアリングベクトル算出部37は、回転アンテナ部23のステアリングベクトルとしての平均ステアリングベクトルA(_)(A(_)
{1}(φ),A(_)
{2}(φ),A(_)
{3}(φ))を算出する。本実施形態では、平均ステアリングベクトル算出部37は、アンテナパターンAP=h
n2(φ)に基づいて、平均ステアリングベクトルA(_)(φ)を算出する。
【0088】
具体的には、平均ステアリングベクトル算出部37は、領域F1,F2,F3に対応する平均ステアリングベクトルA(_)
{1}(φ),A(_)
{2}(φ),A(_)
{3}(φ)を算出する。
【0089】
平均ステアリングベクトル算出部37は、平均ステアリングベクトルA(_)(A(_)
{1}(φ),A(_)
{2}(φ),A(_)
{3}(φ))のデータを、角度スペクトラム算出部35へ出力する。
【0090】
[角度スペクトラム算出部の構成]
角度スペクトラム算出部35は、相関行列R
xxに基づく超解像処理を行うことで、領域F1,F2,F3について、個別に角度スペクトラムP
SSA(φ)を計算する。具体的には、角度スペクトラム算出部35は、領域F1の角度スペクトラムP
{1}SSA(φ)を、対応する固有ベクトルq
{1}1,…,q
{1}Mおよび平均ステアリングベクトルA(_)
{1}(φ)を用いて、算出する。同様に、角度スペクトラム算出部35は、領域F2,F3の角度スペクトラムP
{2}SSA(φ),P
{3}SSA(φ)を、対応する固有ベクトルq
{2}1,…,q
{2}M;q
{3}1,…,q
{3}Mおよび平均ステアリングベクトルA(_)
{2}(φ),A(_)
{3}(φ)を用いて、算出する。
【0091】
本実施形態では、スペクトラム算出部35は、領域F1,F2,F3毎に、予め定められた数のピークが現れる手法を選択し、この手法を用いて角度スペクトラムP
{1}SSA(φ),角度スペクトラムP
{2}SSA(φ),P
{3}SSA(φ)を算出する。この手法は、上記の予め定められた数が1の場合には後で詳述する
SSA法であり、上記の予め定められた数が複数の場合(すなわち、2以上の自然数の場合)にはMUSIC法である。
【0092】
まず、角度スペクトラム算出部35による、角度スペクトラムP
{1}SSA(φ)の算出について説明する。
図9は、角度スペクトラムP
{1}SSA(φ)の処理について説明するためのグラフである。
図9のグラフの横軸は、方位φである。また、
図9のグラフの縦軸は、信号強度を示している。
図9は、ステアリングベクトルA
{1}(φ)の各要素h
12(φ)〜h
n2(φ)のうち、h
12(φ),h
n2(φ)を図示している。
【0093】
図2および
図9を参照して、角度スペクトラム算出部35は、ピークの数を1として設定した場合、MUSIC法に基づく次式(4)を用いて、角度スペクトラムP
{1}SSA(φ)を算出する。この場合、スペクトラムを算出するためのSSA (Single Signal Arrangement) 法と称する方法が用いられることで、角度スペクトラム算出部35は、角度スペクトラムP
{1}SSA(φ)を算出する。
【数4】
【0094】
なお、A(_)
{1}H(φ)は、平均ステアリングベクトルA(_)
{1}(φ)の複素共役転置である。
【0095】
式(4)は、固有ベクトルq
{1}2〜q
{1}Mの値に拘わらず、固有ベクトルq
{1}2〜q
{1}Mの全てを、ノイズ領域のベクトルとして扱っている。即ち、式(4)では、領域F1に含まれる到来波の波源は、予め定められた数としての1のみであるとみなして、角度スペクトラムP
{1}SSA(φ)を算出している。その結果、角度スペクトラムP
{1}SSA(φ)に含まれるピークの数は、1つである。本願発明者は、MUSIC法をベースに上述のSSA法を編み出した。なお、前述したように、上記の予め定められた数が2以上の自然数である場合、上記の式(4)に代えて、すなわち、SSA (Single Signal Arrangement) 法と称する方法に代えて、MUSIC(MUltiple SIgnal Classification)法で用いられる式を用いて、角度スペクトラムP
{1}SSA(φ)を算出する。
【0096】
角度スペクトラム算出部35が上記式(4)を計算することで得られた角度スペクトラムP
{1}SSA(φ)は、
図9に示されている。角度スペクトラムP
{1}SSA(φ)の波形は、山形形状である。なお、角度スペクトラムP
{1}SSA(φ)の波形の一端end11は、ステアリングベクトルA
{1}(φ)における1番目の要素h
12(φ)の波形の一点に重なる。また、角度スペクトラムP
{1}SSA(φ)の波形の他端end12は、ステアリングベクトルA
{1}(φ)における最後の要素h
n2(φ)の波形の一点に重なる。また、角度スペクトラムP
{1}SSA(φ)のピークは、φ=約0.1°に存在しており、φ=約0.1度に物標11が存在していることを示している。
【0097】
角度スペクトラム算出部35は、前述したのと同様の構成で、領域F2に対応する角度スペクトラムP
{2}SSA(φ)と、領域F3に対応する角度スペクトラムP
{3}SSA(φ)と、を算出する。
【0098】
次に、上記予め定められた数が1である場合の、角度スペクトラム算出部35による、角度スペクトラムP
{2}SSA(φ)の算出について説明する。
図10は、角度スペクトラムP
{2}SSA(φ)の処理について説明するためのグラフである。
図10は、ステアリングベクトルA
{2}(φ)の各要素h
n+12(φ)〜h
2n2(φ)のうち、要素h
n+12(φ),h
2n2(φ)を図示している。
【0099】
図2および
図10を参照して、角度スペクトラム算出部35は、領域F2に関する角度スペクトラムP
{2}SSA(φ)を、式(4)を用いて算出する。ただし、この場合、式(4)における
{1}は、
{2}に置き換えられる。
【0100】
角度スペクトラム算出部35が上記式(4)を計算することで、得られた角度スペクトラムP
{2}SSA(φ)は、
図10に示されている。角度スペクトラムP
{2}SSA(φ)の波形は、山形形状である。なお、角度スペクトラムP
{2}SSA(φ)の波形の一端end21は、ステアリングベクトルA
{2}(φ)における1番目の要素h
2n+1(φ)の波形の一点に重なる。また、角度スペクトラムP
{2}SSA(φ)の波形の他端end22は、ステアリングベクトルA
{2}(φ)における最後の要素h
2n2(φ)の波形の一点に重なる。また、角度スペクトラムP
{2}SSA(φ)のピークは、φ=約0.1°に存在しており、φ=約0.1度に物標11が存在していることを示している。
【0101】
次に、上記予め定められた数が1である場合の、角度スペクトラム算出部35による、角度スペクトラムP
{3}SSA(φ)の算出について説明する。
図11は、角度スペクトラムP
{3}SSA(φ)の処理について説明するためのグラフである。
図11は、ステアリングベクトルA
{3}(φ)の各要素h
2n+12(φ)〜h
3n2(φ)のうち、要素h
2n+12(φ),h
3n2(φ)を図示している。
【0102】
図2および
図11を参照して、角度スペクトラム算出部35は、領域F3に関する角度スペクトラムP
{3}SSA(φ)を、式(4)を用いて算出する。ただし、この場合、式(4)における
{1}は、
{3}に置き換えられる。
【0103】
角度スペクトラム算出部35が上記式(4)を計算することで、得られた角度スペクトラムP
{3}SSA(φ)は、
図11に示されている。角度スペクトラムP
{3}SSA(φ)の波形は、山形形状である。なお、角度スペクトラムP
{3}SSA(φ)の波形の一端end31は、ステアリングベクトルA
{3}(φ)における1番目の要素h
2n+12(φ)の波形の一点に重なる。また、角度スペクトラムP
{3}SSA(φ)の波形の他端end32は、ステアリングベクトルA
{3}(φ)における最後の要素h
3n2(φ)の波形の一点に重なる。また、角度スペクトラムP
{3}SSA(φ)のピークは、φ=約0.1°に存在しており、φ=約0.1度に物標11が存在していることを示している。
【0104】
なお、角度スペクトラムP
{1}SSA(φ),P
{2}SSA(φ),P
{3}SSA(φ)を1つのグラフで表示すると、
図12のようになる。
図12は、角度スペクトラム算出部35で算出された角度スペクトラムP
{1}SSA(φ),P
{2}SSA(φ),P
{3}SSA(φ)を説明するための図である。
【0105】
図12では、ステアリングベクトルA
{1}(φ)〜A
{3}(φ)のそれぞれの要素h
12(φ)〜h
3n2(φ)のうち、h
12(φ),h
3n/22(φ),h
3n2(φ)が例示されている。
【0106】
図2および
図12を参照して、角度スペクトラムP
{1}SSA(φ),P
{2}SSA(φ),P
{3}SSA(φ),は、何れも、1つのピークが存在していることを示している。前述したように、本実施形態では、1つの物標11を探知する場合を説明しているので、信号処理装置3は、物標11を精度よく探知できていることとなる。角度スペクトラム算出部35は、算出した各角度スペクトラムP
SSA(φ)(P
{1}SSA(φ),P
{2}SSA(φ),P
{3}SSA(φ))のデータを、表示用処理部38へ出力する。
【0107】
[表示用処理部の構成]
表示用処理部38は、各角度スペクトラムP
{1}SSA(φ),P
{2}SSA(φ),P
{3}SSA(φ)のデータを基に、表示部6に表示される画像データGを生成するように構成されている。
【0108】
表示用処理部38は、フィルタ処理部41を有している。
【0109】
[フィルタ処理部の構成]
フィルタ処理部41は、各角度スペクトラムP
{1}SSA(φ),P
{2}SSA(φ),P
{3}SSA(φ)のなかから、一部の角度スペクトラムを選択するように構成されている。
【0110】
本実施形態では、方位φ=約0.1度の位置に、各角度スペクトラムP
{1}SSA(φ),P
{2}SSA(φ),P
{3}SSA(φ)の信号強度のピークPeak
{1},Peak
{2},Peak
{3}が存在している。なお、以下では、ピークPeak
{1},Peak
{2},Peak
{3}などのピークを総称していう場合には、単に、ピークPeakという。たとえば、方位方向D1における所定角度範囲内に2つ以上のピークが存在している場合、フィルタ処理部41は、これらのピークPeakのうちの何れか1つ、たとえば、Peak
{3}を、信号強度の変化の急峻さなどに基づいて選択する。そして、フィルタ処理部41は、選択したピークPeakを有する角度スペクトラムP
SSA(φ)のデータを、操作・表示装置4の表示部6へ出力する。
【0111】
表示部6は、たとえば、PPI表示装置である。表示部6は、信号処理装置3から出力された画像データGに基づき、表示画面に画像を表示する。角度スペクトラムP
{3}SSA(φ)の画像データGは、方位方向D1に沿う画像1ライン分の濃淡データになる(角度スペクトラムP
{3}SSA(φ)の信号強度が、その色と対応する)。自船10の周囲の全周に亘って、目的の距離までの角度スペクトラムP
{3}SSA(φ)を取得すれば、角度−距離の2次元濃淡画像を形成できる。たとえば、信号処理装置3が、角度−距離の2次元濃淡画像のデータを座標変換することで、水平距離−垂直距離の2次元画像データを生成することができる。これにより、
図13(a)に示されているような画像が、表示部6に表示される。
【0112】
図13(a)は、表示部6に表示される画像の一例を示している。表示部6に表示された映像では、物標11の物標像e11は、方位方向D1における幅が狭くされており、方位方向D1における分解能が高い。すなわち、信号処理装置3は、物標11を探知する分解能が十分に高い。なお、
図13(b)は、信号処理装置3に代えて、公知のマルチビームフォーマ法によって角度スペクトラムを出力する信号処理装置を用いた場合の、表示部に表示される画像の一例を示している。
図13(a)および
図13(b)は、ハッチングの斜線の間隔が短いほど、角度スペクトラムの信号強度が大きいことを示している。
図13(a)および
図13(b)から明らかなように、公知の信号処理装置を用いて得られた物標像e11’は、方位方向D1にぼやけており、方位方向D1に必要以上に広い。この場合、方位方向D1における分解能は、低い。これに対して、信号処理装置3を用いて得られた物標像e11の輪郭は、より明確である。
【0113】
[信号処理装置における処理の流れ]
次に、信号処理装置3における処理の流れの一例について、
図14を参照しつつ説明する。
図14は、信号処理装置3における処理の流れの一例を説明するためのフローチャートである。なお、フローチャートを参照して説明する場合は、フローチャート以外の図も適宜参照する。
【0114】
図14を参照して、信号処理装置3の方位領域設定部31が、受信部24から受信データx
iを読み出す(ステップS101)。次に、方位領域設定部31は、所定の経過時間番号jについて、方位方向D1における領域F(本実施形態では、F1,F2,F3)を設定する(ステップS102)。本実施形態では、方位領域設定部31は、領域F1のベクトルデータx
{1}と、領域F2のベクトルデータx
{2}と、領域F3のベクトルデータx
{3}と、を設定する。
【0115】
次に、相関行列算出部32が、相関行列を算出する(ステップS103)。より具体的には、相関行列算出部32は、ベクトルデータx
{1},x
{2},x
{3}を基に、相関行列R
{1}xx,R
{2}xx,R
{3}xxを算出する。
【0116】
次に、空間平均処理部33が、相関行列R
{1}xx,R
{2}xx,R
{3}xxのそれぞれについて、空間平均相関行列R(_)
{1}xx,R(_)
{2}xx,R(_)
{3}xxを算出する(ステップ104)。
【0117】
次に、固有ベクトル算出部34が、空間平均相関行列R(_)
{1}xx,R(_)
{2}xx,R(_)
{3}xxのそれぞれについて、固有値分解を行う。これにより、固有ベクトル算出部34は、固有ベクトルq
{1}〜q
{1}M,q
{2}1〜q
{2}M,q
{3}1〜q
{3}Mを算出する(ステップS105)。
【0118】
また、信号処理装置3において、平均ステアリングベクトル算出部37が、平均ステアリングベクトルA(_)
{1}(φ),A(_)
{2}(φ),A(_)
{3}(φ)を算出する(ステップS106)。
【0119】
次に、角度スペクトラム算出部35は、領域F1,F2,F3について、個別に角度スペクトラムP
{1}SSA(φ),P
{2}SSA(φ),P
{3}SSA(φ)を算出する(ステップS107)。
【0120】
次に、表示用処理部38のフィルタ処理部41が、表示用フィルタ処理を行う(ステップS108)。具体的には、フィルタ処理部41は、角度スペクトラムP
{1}SSA(φ),P
{2}SSA(φ),P
{3}SSA(φ)のなかから、1つの角度スペクトラムを適宜選択する。本実施形態では、たとえば、前述したように、フィルタ処理部41は、角度スペクトラムP
{3}SSA(φ)を、表示用の角度スペクトラムとして選択する。フィルタ処理部41は、この角度スペクトラムP
{3}SSA(φ)に基づく画像データGを生成し、この画像データGを表示部6へ出力する。
【0121】
信号処理装置3は、経過時間番号j毎に、上記の処理を繰り返すことで、経過時間番号毎の画像データを生成する。操作・表示装置4の表示部6は、これらの画像データを基に、自船10を中心とする、二次元のエコー画像を表示する。
【0122】
[プログラム]
本実施形態にかかるプログラムは、コンピュータに、信号処理装置3の処理を実行させるプログラムであればよい。このプログラムをコンピュータにインストールし、実行することによって、本実施形態における信号処理装置3と、信号処理方法と、を実現することができる。この場合、コンピュータのCPU(Central Processing Unit)は、方位領域設定部31、相関行列算出部32、空間平均処理部33、固有ベクトル算出部34、角度スペクトラム算出部35、平均ステアリングベクトル算出部37、および、表示用処理部38として機能し、処理を行う。なお、CPU以外に、DSP、SPU、ASIC、FPGA、PALなどが用いられてもよい。また、コンピュータのROM(Read Only Memory)は、アンテナパターン記憶部36として機能する。なお、信号処理装置3は、このようにソフトウェアとハードウェアとの協働によって実現されてもよいし、ハードウェアによって実現されてもよい。また、本実施形態にかかるプログラムは、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に記録された状態で流通されてもよいし、有線又は無線を用いた通信回線によって流通されてもよい。
【0123】
以上説明したように、信号処理装置3によると、相関行列算出部32は、方位方向D1に沿って変位し且つ距離方向D2からの信号を順次受信する回転アンテナ部23で得られた受信信号S11に基づいて、相関行列R
xx(R
{1}xx,R
{2}xx,R
{3}xx)を算出する。また、角度スペクトラム算出部35は、相関行列R
xxに基づいて超解像処理を行うことで、角度スペクトラムP
SSA(φ)(P
{1}SSA(φ),P
{2}SSA(φ),P
{3}SSA(φ))を算出する。このような構成により、信号処理装置3は、機械的に変位する回転アンテナ部23を用いて得られた受信信号S11の処理に際して、より高い分解能を実現できる。
【0124】
より具体的には、信号処理装置3は、1つの回転アンテナ部23による複数回のスイープによって得られた受信信号S11(受信データx
i)を、アレイアンテナによって得られた受信信号と同様に扱うことができる。これにより、信号処理装置3は、アレイアンテナによって得られた受信信号に対する超分解能処理と同様の処理を、1つの回転アンテナ部23によって得られた受信信号S11(受信データx
i)に対して行うことができる。したがって、信号処理装置3は、より高い分解能を有する角度スペクトラムP
SSA(φ)を算出できる。また、本実施形態では、信号処理装置3での処理によって、高分解能化を達成する構成であり、回転アンテナ部23の全長を長くすることで送信ビーム幅を狭くして高分解能化を達成する構成ではない。このため、回転アンテナ部23として、全長の比較的短いアンテナを用いることができる。これにより、小型であることから安価な回転アンテナを、回転アンテナ部23として用いることができる。さらに、全長の短い回転アンテナ部23が採用されることで、小型船舶などの設置スペースに制限がある場所への回転アンテナ部23の設置を実現できる。
【0125】
また、信号処理装置3によると、角度スペクトラム算出部35は、相関行列R
xx、およびステアリングベクトルとしての平均ステアリングベクトルA(_)(φ)(A(_)
{1}(φ),A(_)
{2}(φ),A(_)
{3}(φ)]に基づいて、角度スペクトラムP
SSA(φ)を算出する。より具体的には、本実施形態では、角度スペクトラム算出部35は、固有ベクトルq、および、平均ステアリングベクトルA(_)(φ)に基づいて、角度スペクトラムP
SSA(φ)を算出する。このような構成により、信号処理装置3は、アレイアンテナで得られた受信信号への処理と同様の処理で、高分解能処理を実現できる。よって、信号処理装置3は、受信信号S11に含まれるノイズを、より確実に除去できる。
【0126】
また、信号処理装置3によると、平均ステアリングベクトル算出部37は、回転アンテナ部23のアンテナパターンAPに基づいて、平均ステアリングベクトルA(_)(φ)を算出する。このような構成により、適応ビームフォーミング法を用いる場合のステアリングベクトルに相当するステアリングベクトルを、平均ステアリングベクトル算出部37で算出することができる。
【0127】
また、信号処理装置3によると、アンテナパターンAPは、回転アンテナ部23のメインローブP11のパターンに相当する。このような構成により、信号処理装置3は、適切なステアリングベクトル(本実施形態では、平均ステアリングベクトルA(_)(φ))を算出できる。
【0128】
また、信号処理装置3によると、角度スペクトラム算出部35は、方位方向D1に沿った領域F毎に、角度スペクトラムP
SSA(φ)を算出する。より具体的には、信号処理装置3において、角度スペクトラム算出部35は、領域F毎に、対応する固有ベクトルqと平均ステアリングベクトルA(_)(φ)とを用いて、各角度スペクトラムP
SSA{1}(φ),P
SSA{2}(φ),P
SSA{3}(φ)を算出する。このような構成により、角度スペクトラム算出部35は、方位方向D1に沿った範囲が狭く設定された領域F毎に角度スペクトラムP
SSA(φ)を算出すればよい。よって、角度スペクトラム算出部35の単位時間あたり計算負荷を、より少なくできる。
【0129】
また、信号処理装置3によると空間平均処理部33は、領域F毎に相関行列R
xxを平均化することで、空間平均相関行列R(_)
xxを算出する。また、平均ステアリングベクトル算出部37は、各領域Fにおいて平均化された平均ステアリングベクトルA(_)(φ)を算出する。このような構成により、信号処理装置3は、相関行列R
xxに関するランクが回復された状態で、角度スペクトラムP
SSA(φ)を算出することができる。これにより、信号処理装置3は、より正確に、受信信号S11で特定される到来波の到来方向を検出することができる。
【0130】
また、信号処理装置3によると、角度スペクトラム算出部35は、領域F毎に、予め定められた数(たとえば、1)のピークが現れるように角度スペクトラムP
SSA(φ)を算出する。このような構成により、角度スペクトラム算出部35の計算負荷を、より少なくできる。
【0131】
より具体的には、信号処理装置3によると、角度スペクトラム算出部35は、相関行列R
xxにおける固有ベクトルqの数に拘わらず、1つのピークが現れるとみなして、角度スペクトラムP
SSA(φ)を算出する。このような構成により、ヌル走査の手法を用いた、より分解能が高く且つ計算負荷の小さい、信号処理装置3を実現できる。
【0132】
また、信号処理装置3によると、フィルタ処理部41は、領域F毎に算出された複数の角度スペクトラムP
SSA{1}(φ),P
SSA{2}(φ),P
SSA{3}(φ)のなかから、一部の角度スペクトラムP
SSA{3}(φ)を選択する。このような構成により、信号処理装置3は、表示部6での表示に適した角度スペクトラムP
SSA{3}(φ)を選択できる。
【0133】
[第2実施形態]
図15は、本発明の第2実施形態にかかるレーダ装置1Aの信号処理装置3Aの構成を示すブロック図である。本実施形態では、信号処理装置3Aの表示用処理部38Aの構成が、第1実施形態における表示用処理部38の構成と異なっている。この点以外について、信号処理装置3Aは、信号処理装置3と同様の構成を有している。
【0134】
表示用処理部38Aは、ビームパターン加工部39を有している。ビームパターン加工部39は、角度スペクトラムP
SSA(φ)で特定される包絡線の形状を加工するように構成されている。
【0135】
図16(a)は、自船10および自船10の周囲に存在する物標13,14を示す、模式的な平面図である。第2実施形態では、
図16(a)に示すように、自船10から所定の距離に2つの物標13,14が存在している状態での、レーダ装置1Aを例に説明する。
図16(b)は、送受信装置2の回転アンテナ部23の回転に伴って得られた受信データxA(φ
i,R
j)の包絡線を示している。
【0136】
信号処理装置3Aの方位領域設定部31は、方位方向D1に沿った方位領域を設定する。これにより、第2実施形態では、たとえば、2つの領域F1A,F2Aが設定される。次に、相関行列算出部32は、領域F1Aのベクトルデータx
{1A}の相関行列R
{1A}xxと、領域F2Aのベクトルデータx
{2A}の相関行列R
{2A}xxと、を算出する。
【0137】
次に、空間平均処理部33は、領域F1Aにおける空間平均相関行列R(_)
{1A}xxと、領域F2Aにおける空間平均相関行列R(_)
{2A}xxと、を算出する。固有ベクトル算出部34は、空間平均相関行列R(_)
{1A}xx,R(_)
{2A}xxのそれぞれについて、固有値分解を行う。これにより、固有ベクトル算出部34は、固有ベクトルq
{1A}1〜q
{1A}Mと、固有ベクトルq
{2A}1〜q
{2A}Mとを算出する。
【0138】
一方、平均ステアリングベクトル算出部37は、アンテナパターン記憶部36に格納されているアンテナパターンAPを基に、平均ステアリングベクトルA(_)
{1A}(φ),A(_)
{2A}(φ)を算出する。
【0139】
角度スペクトラム算出部35は、上記固有ベクトルq
{1A}1〜q
{1A}Mと、平均ステアリングベクトルA(_)
{1A}(φ)と、を式(4)に適用することで、角度スペクトラムP
{1A}SSA(φ)を算出する。ただし、この場合、式(4)における
{1}は、
{1A}に置き換えられる。同様に、角度スペクトラム算出部35は、上記固有ベクトルq
{2A}1〜q
{2A}-
Mと、平均ステアリングベクトルA(_)
{2A}(φ)と、を式(4)に適用することで、角度スペクトラムP
{2A}SSA(φ)を算出する。ただし、この場合、式(4)における
{1}は、
{2A}に置き換えられる。
【0140】
角度スペクトラム算出部35は、角度スペクトラムP
{1A}SSA(φ),P
{2A}SSA(φ)のデータを、表示用処理部38のビームパターン加工部39へ出力する。
【0141】
なお、角度スペクトラムP
{1A}SSA(φ)は、
図17に示されている。角度スペクトラムP
{1A}SSA(φ)の包絡線は、ピークPeak
{1A}と、2つの極小値Min
{1A1},Min
{1A2}と、を有している。以下では、角度スペクトラムP
SSA(φ)の包絡線のことを、単に角度スペクトラムという場合がある。方位方向D1において、極小値Min
{1A1},Min
{1A2}が存在している方位の間に、ピークPeak
{1A}の方位が存在している。このため、方位方向D1において、極小値Min
{1A1},Min
{1A2}で挟まれた領域ΔF1Aは、物標13を特定する角度スペクトラムとして重要である。一方、方位方向D1において、領域ΔF1A以外の領域は、角度スペクトラムとして重要ではない。
【0142】
そこで、ビームパターン加工部39は、角度スペクトラムP
{1A}SSA(φ)について、領域ΔF1A以外の成分を、削除する。この削除処理が行われた後の角度スペクトラムP
{1A’}SSA(φ)は、
図18に示されている。このように、角度スペクトラムP
{1A’}SSA(φ)の形状は、角度スペクトラムP
{1A}SSA(φ)の形状の一部を省略した形状となっている。
【0143】
また、角度スペクトラムP
{2A}SSA(φ)は、
図17に示されている。
図17に示されているように、角度スペクトラムP
{2A}SSA(φ)の曲線は、ピークPeak
{2A}と、2つの極小値Min
{2A1},Min
{2A2}と、を有している。角度スペクトラムP
{2A}SSA(φ)においても、方位方向D1において、極小値Min
{2A1},Min
{2A2}で挟まれた領域ΔF2Aは、ピークPeak
{2A}の方位を含んでおり、物標14を特定する角度スペクトラムとして重要である。一方、方位方向D1において、領域ΔF2A以外の領域は、角度スペクトラムとして重要ではない。
【0144】
そこで、表示用処理部38Aのビームパターン加工部39は、角度スペクトラムP
{2A}SSA(φ)について領域ΔF2A以外の成分を、削除する。この削除処理が行われた後の角度スペクトラムP2
{2A’}SSA(φ)は、
図19に示されている。
図19は、角度スペクトラムP
{1A’}SSA(φ),P
{2A’}SSA(φ)を示すグラフである。このように、角度スペクトラムP2
{2A’}SSA(φ)の形状は、角度スペクトラムP
{2A}SSA(φ)の形状の一部を省略した形状となっている。
【0145】
図20は、角度スペクトラムP
SSA(φ)A(P
{1A’’}SSA(φ),P
{2A’’}SSA(φ))を示すグラフである。
図19および
図20を参照して、更に、本実施形態では、角度スペクトラムP2
{1A’’}SSA(φ),P2
{2A’’}SSA(φ)のそれぞれの一部は、方位方向D1における位置が重なっている。この場合、ビームパターン加工部39は、角度スペクトラムP2
{1A’’}SSA(φ),P2
{2A’’}SSA(φ)における互いの重なり領域RAを削除する。これにより、ビームパターン加工部39は、適宜角度スペクトラムP
{1A}SSA(φ),P
{2A}SSA(φ)の包絡線の形状を加工することで、
図20に示すような角度スペクトラムP
SSA(φ)Aを算出する。角度スペクトラムP
SSA(φ)Aは、表示対象となる物標13,14のエコー像の輪郭をより明確にするように構成されたスペクトラムである。
【0146】
次に、表示用処理部38Aは、物標13,14のそれぞれに対応するピークPeak
{1A},ピークPeak
{2A}を示す画像データGAを生成し、この画像データGAを表示部6へ出力する。
【0147】
図21(a)は、信号処理装置3Aからの映像信号GAによって表示部6に表示される画像の一例を示す図である。
図21(a)を参照して、表示部6には、物標13に対応する物標像e13と、物標14に対応する物標像e14と、が示されている。
図21(a)から明らかなように、物標像e13の中心と、物標像e14の中心とは、明確に区別されている。よって、オペレータは、表示部6を通じて、隣接する物標13,14を、明確に識別できる。
【0148】
なお、
図19(b)は、受信データxA
iが超解像処理されることなく表示部6へ出力された場合の、表示部6に表示される画像の一例を示す図である。この場合、物標像e13’と物標像e14’とは、区別不能な程度に融合している。このため、オペレータは、表示部を通じて、隣接する物標を識別することが困難である。
【0149】
以上説明したように、本発明の第2実施形態にかかる信号処理装置3Aによると、ビームパターン加工部39は、角度スペクトラムP
SSA{1A}(φ),P
SSA{2A}(φ)で特定される包絡線の形状を加工するように構成されている。このような構成により、信号処理装置3Aは、隣接する2つの物標13,14についての物標像e13,e14を、より明確に区別できる態様で表示部6に表示させることができる。
【0150】
[第3実施形態]
図22は、本発明の第3実施形態における信号処理装置3Bの構成を示すブロック図である。信号処理装置3Bが信号処理装置3Aと異なっているのは、角度スペクトラムP
{1A}SSA(φ),P
{2A}SSA(φ)が、表示部6での表示のために、より一層適した波形に変換される点にある。
【0151】
より具体的には、
図20および
図21(a)を参照して、信号処理装置3Aが用いられた場合、表示部6において、隣接する物標像e13,e14は、明確に識別可能に表示される。しかしながら、角度スペクトラムP
{1A’’}SSA(φ),P
{2A’’}SSA(φ)の波形において、ピークPeak
{1A},ピークPeak
{2A}への立ち上がり部分は、方位方向D1に沿った範囲が狭い。その結果、物標像e13,e14は、それぞれ、表示部6において、方位方向D1に沿った幅が極めて狭くなる。一方で、物標13,14の実際の形状は、方位方向D1に広がりを有している。このため、オペレータに対する違和感の少ない表示を表示部6で行うためには、物標像e13,14の形状についても、物標13,14の形状に対応して方位方向D1に広がりを有していることが好ましい。このような効果を発揮するための構成が、信号処理装置3Bに設けられている。
【0152】
図20を参照して、具体的には、信号処理装置3Bは、信号処理装置3Aの表示用処理部38Aに代えて、表示用処理部38Bを有している。表示用処理部38Bは、ビームパターン加工部39Bを有している。また、信号処理装置3Bは、表示用パターン記憶部42を有している。
【0153】
ビームパターン加工部39Bは、角度スペクトラムP
SSA(φ)の形状を、予め定められたパターン形状に置き換える。また、ビームパターン加工部39Bは、置き換えたパターン形状の信号強度のピークを、角度スペクトラムP
SSA(φ)の信号強度のピークPeakと同じに設定する。
【0154】
たとえば、第2実施形態の場合と同様に、自船10の周囲に物標13,14が存在している場合、信号処理装置3Bは、受信データxA
iを読み出す。そして、信号処理装置3Bは、信号処理装置3Aと同様に、角度スペクトラムP
{1A’}SSA(φ),P
{2A’}SSA(φ)(
図19参照)を算出する。
【0155】
次に、フィルタ処理部41Bのビームパターン加工部39Bは、各角度スペクトラムP
{1A’}SSA(φ),P
{2A’}SSA(φ)のピークPeak
{1A},Peak
{2A}の値および方位φ1A,φ2Aを検出する。なお、
図23は、Peak
{1A},Peak
{2A}の大きさと方位φ1A,φ2Aとの関係を示すグラフである。
【0156】
ビームパターン加工部39Bは、表示用パターン記憶部42に記憶されているパターンPTのデータを読み出す。パターンPTのデータは、1又は複数の波形のパターンのデータである。
【0157】
本実施形態では、表示用パターン記憶部42は、3つのパターンPT(PT1,PT2,PT3)のデータを記憶している。
【0158】
パターンPT1は、回転アンテナ部23に関するアンテナパターンAPと同様のパターンである。パターンPT2は、矩形波のパターンである。パターンPT3は、三角波のパターンである。
【0159】
パターンPT1,PT2,PT3のビーム幅は、それぞれ、方位方向D1に所定の長さを有している。これにより、表示部6で方位方向D1に十分な長さのエコー像を表示させることが可能である。より具体的には、パターンPT1,PT2,PT3のピークを中心とする所定範囲のビーム幅は、角度スペクトラムP
SSA{1A’}(φ)のピークPeak
{1A}を中心とする上記所定範囲のビーム幅よりも大きい。同様に、パターンPT1,PT2,PT3のピークを中心とする所定範囲のビーム幅は、角度スペクトラムP
SSA(φ)
{2A’}のピークPeak
{2A}を中心とする上記所定範囲のビーム幅よりも大きい。
【0160】
パターンPTのデータは、たとえば、信号処理装置3Bの製造時に表示用パターン記憶部42に記憶される。なお、パターンPTのデータは、信号処理装置3Bの流通時に表示用パターン記憶部42に記憶されてもよい。また、パターンPTのデータは、信号処理装置3Bが自船10に設置された後に表示用パターン記憶部42に記憶されてもよい。
【0161】
ビームパターン加工部39Bは、パターンPT1,PT2,PT3の何れかを選択する。この場合、ビームパターン加工部39Bは、たとえば、予めオペレータによって設定されたパターンPTを選択する。なお、ビームパターン加工部39Bは、角度スペクトラムP
{1A’}SSA(φ),P
{2A’}SSA(φ)の波形に応じて、適宜パターンPTを設定してもよい。本実施形態では、ビームパターン加工部39Bは、パターンPT1を設定する。
【0162】
次に、
図24に示すように、ビームパターン加工部39Bは、パターンPT1のピークの大きさおよび方位を、ピークPeak
{1A}の大きさおよび方位φ1Aに設定する。同様に、ビームパターン加工部39Bは、もう一つのパターンPT1のピークの大きさおよび方位を、ピークPeak
{2A}の大きさおよび方位φ2Aに設定する。
【0163】
これにより、ビームパターン加工部39Bは、物標13,14の数と同じ数(2つ)のパターンPT1,PT1を基にしたパターンのデータを生成する。次に、ビームパターン加工部39Bは、このパターンにおいて方位方向D1の位置が重なる領域を削除する。その結果、ビームパターン加工部39Bは、
図25に示すような、角度スペクトラムP
SSA(φ)Bを算出する。この角度スペクトラムP
SSA(φ)Bのデータに基づく画像データGBが表示部6に与えられた場合、表示部6は、
図26に示すような画像を表示する。
【0164】
図26は、信号処理装置3Bからの画像データGBによって表示部6に表示される画像の一例を示す図である。
図21(a)および
図26を参照して、表示部6の表示画面には、物標13に対応する物標像e13Bと、物標14に対応する物標像e14Bと、が示されている。
図26から明らかなように、物標像e13B,e14Bは、方位方向D1の幅が適度に確保されている。このため、信号処理装置3Aの処理に基づいて得られる物標像e13,14と比較して、物標像e13B,e14Bは、より自然な態様で、表示部6に表示される。
【0165】
なお、たとえば、物標13,14のなかで物標13のみが、自船10の周囲に存在している場合、角度スペクトラム角度スペクトラムP
SSA(φ)Bの波形は、
図27に示されるパターンPT1のように、方位方向D1に対称となる。
【0166】
以上説明したように、本発明の第3実施形態にかかる信号処理装置3Bによると、ビームパターン加工部39Bは、角度スペクトラムP
SSA(φ)の包絡線の形状を、予め定められたパターンPTの形状に置き換える。さらに、ビームパターン加工部39Bは、パターンPTの形状の信号強度のピークを、角度スペクトラムP
SSA(φ)のピークPeakと同じに設定する。このような構成により、ビームパターン加工部39は、角度スペクトラムP
SSA(φ)のピークPeak
{1A},Peak
{2A}の値を変更することなく、物標13,14の物標像e13,e14を、より自然な形状となるようにすることができる。
【0167】
また、信号処理装置3Bによると、パターンPT(PT1,PT2,PT3)のピークを中心とする所定範囲のビーム幅は、角度スペクトラムP
SSA(φ)の包絡線におけるピークPeak
{1A},Peak
{2A}を中心とする所定範囲の幅よりも大きく設定されている。角度スペクトラム算出部35で算出された角度スペクトラムP
SSA{1A}(φ),P
SSA{2A}(φ)の形状は、ピークPeak
{1A},Peak
{2A}の周辺で信号強度が急峻に変化する形状である。その結果、角度スペクトラムP
SSA(φ)で特定される物標像の形状は、方位方向D1に広がりの少ない形状となり、オペレータに違和感を与えてしまう。そこで、ビームパターン加工部39Bが、ピークPeak
{1A},Peak
{2A}の周辺でのビーム幅を広くなるような処理を施す。これにより、角度スペクトラムP
SSA(φ)Bで特定される物標像e13B,e14Bの形状は、方位方向D1に広がりのある形状となり、表示部6で表示されたときに、オペレータに違和感を与えることを抑制できる。
【0168】
また、信号処理装置3Bによると、ビームパターン加工部39Bは、オペレータの指示などに基づいて、複数のパターンPTのなかから、1つのパターンを選択することができる。その結果、画像データで表示される画像が、表示部6での表示に適した画像となるように、最適なパターンPTを選択できる。
【0169】
[第4実施形態]
図28は、本発明の第4実施形態にかかる水中探知装置100の構成を示すブロック図である。
図28を参照して、水中探知装置100は、超音波探知装置であり、たとえば、自船に備えられる。水中探知装置100は、水中の物標を探知するために用いられる。本実施形態において、水中探知装置100は、サーチライトソナーであり、自船を中心とする所定の単位方位毎に、超音波の送受信を繰り返す。
【0170】
水中探知装置100は、送受信装置2Hと、信号処理装置3Hと、操作・表示装置4Hと、を備えている。
【0171】
送受信装置2Hは、超音波を送受信する機能を有している。送受信装置2Hは、自船の船底に配置された取り付けられた受信装置としての超音波振動子101を、1つ有している。超音波振動子101は、鉛直軸線回りの方位方向を副走査方向として、自転するように構成されている。超音波振動子101は、自転した状態で、方位方向と交差する距離方向に向かって超音波を水中に送信するとともに、水中からのエコーを受信する。送受信装置2Hは、このエコー信号に基づく受信信号を電気信号に変換することで、受信データxH(φ
i,R
j)信号を生成する。
【0172】
このような構成により、送受信装置2は、自船回りの各方位において、距離方向に沿う超音波を順次送受信する。この受信データxH(φ
i,R
j)は、単位方位毎に生成される。この受信データxH(φ
i,R
j)は、信号処理装置3Hへ出力される。信号処理装置3Hは、受信データxH(φ
i,R
j)を基に、画像データGHを生成する。信号処理装置3GHは、この画像データGHを、操作・表示装置4へ出力する。操作・表示装置4は、画像データに基づく画像を表示する。
【0173】
このような構成によると、受信データxH(φ
i,R
j)の処理に際し、より高い分解能を実現できる。
【0174】
なお、本実施形態では、超音波振動子の数が1である形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、複数の超音波振動子と、これらの超音波振動子が受信した信号の位相を一致させる整相器と、を設けてもよい。
【0175】
なお、第4実施形態では、超音波探知装置の一例として、水中探知装置100を例に説明した。しかしながら、この形態に限定されない。本発明は、超音波探知装置としての魚群探知機に適用されてもよい。
【0176】
以上、本発明の実施形態について複数説明したけれども、本発明は上述の実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能である。たとえば、次のように変更して実施してもよい。
【0177】
(1)上述の各実施形態では、信号処理装置に種々の構成が備えられる形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。信号処理装置は、少なくとも、相関行列算出部と、角度スペクトラム算出部とを備えていればよく、他の構成は、設けられていなくてもよい。
【0178】
(2)また、上述の各実施形態では、角度スペクトラム算出部が、MUSIC法をベースとした評価関数を用いて角度スペクトラムを算出する構成を説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。角度スペクトラム算出部は、たとえば、Capon法、Pisarenko法、最小ノルム法など他の適応ビームフォーミング法を用いて、角度スペクトラムを算出してもよい。
【0179】
(3)また、上述の各実施形態では、信号処理装置が、方位方向において複数の領域を設定する形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、信号処理装置は、方位方向の360度に設定された1つの領域について、角度スペクトラムを算出してもよい。
【0180】
(4)また、上述の各実施形態のうち、レーダ装置では、回転アンテナ部が、方位方向において1回に1つの受信信号を出力する形態を例に説明した。この限りにおいて、回転アンテナ部は、アレイアンテナであってもよいし、アレイアンテナでなくてもよい。また、上述の実施形態のうち、水中探知装置では、超音波振動子が方位方向において1回に1つの受信信号を出力する形態を例に説明した。この限りにおいて、超音波振動子は、アレイであってもよいし、アレイでなくてもよい。
【0181】
(5)また、上述の各実施形態では、信号処理装置が、レーダ装置または水中探知装置に適用された形態を例に説明した。しかしながら、この通りでなくてもよい。たとえば、信号処理装置は、超音波などを利用する医療機器、通信機器、ネットワーク機器、または、GNSS(Global Navigation Satellite System)システムの利用者受信機など、他の機器に備えられていてもよい。